(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチを用いたヒアルロン酸フィラー
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20230911BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230911BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230911BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230911BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230911BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230911BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230911BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230911BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K8/02
A61K8/60
A61K8/73
A61K9/70 405
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P17/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020516406
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2017010259
(87)【国際公開番号】W WO2019059425
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ソク・ヨム
(72)【発明者】
【氏名】ウ-ソン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ミン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ミン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ソル-フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ギュ・カン
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189432(JP,A)
【文献】特開2016-93325(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0145475(KR,A)
【文献】特表2020-500173(JP,A)
【文献】特開2009-201956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
A61K8/00-8/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)マイクロニードルを形成する物質と、
(ii)架橋されたヒアルロン酸
からなるフィラー粒子と、
(iii)糖と、
を含むフィラー粒子投与用溶解性マイクロニードルであって、
前記糖と架橋されたヒアルロン酸とは、1:0.00001~0.5(糖:架橋されたヒアルロン酸)の重量比で含ま
れ、
前記糖が、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸、ラムノース、マンノース、フコース、アラビノース、アセチルグルコサミン、イノシトール、トレハロース、イソマルト、キシリトール、エリトリトールまたはこれらのうち2つ以上の混合物であり、
前記フィラー粒子が皮内または皮下に投与された後、架橋されたヒアルロン酸が膨潤する、マイクロニードル。
【請求項2】
前記マイクロニードルを形成する物質が肌内で溶解される、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記糖が、マイクロニードルの総重量に対して1~70重量%で含まれる、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記マイクロニードルを形成する物質が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム (Na-CMC)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの2つ以上の混合物を含む、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記マイクロニードルが、マイクロニードルを形成する物質の外に、可塑剤をさらに含む、請求項
4に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
前記糖が、前記フィラー粒子内
の架橋されたヒアルロン酸の膨潤性を向上させる、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記マイクロニードルがしわ改善用である、請求項1から
6のいずれかに記載のマイクロニードル。
【請求項8】
請求項1から
6のいずれかに記載のマイクロニードルを含むマイクロニードルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ改善効果に優れた溶解性マイクロニードル及びフィラー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医学及び美容の目的から、ボトックスのように顔面神経を麻痺させてしわ筋肉を退化させるか、または、ヒアルロン酸、コラーゲン、微細高分子などを用いて軟組織を増強させ顔面のしわを改善する方法が使用されてきた。特に、ヒアルロン酸は、身体の内部組織を構成する成分であって副作用がないため、眼科用手術補助剤、関節機能改善剤、薬物伝達物質、点眼剤、しわ改善剤などの医療及び医療用具や化粧品用途として広く使用され、美容の目的では近年約10年間ヒアルロン酸市場が急激に増加している。肌内のヒアルロン酸含量が多ければ、水分持続力、肌弾力が高まり、ヒアルロン酸の水分を保持する能力及び細胞活性化による肌ボリューム増強効果によってしわ改善の効果がある。しかし、ヒアルロン酸自体は、体内でわずか数時間という短い半減期を有するため体内への注入には限界があるため、架橋結合させてヒドロゲルの形態で半減期(体内持続性)を増大させる肌増強用充填剤(deraml filler)として開発され、代表的な製品としてはガルデルマ製のRestylane、アラガン製のHylaformが販売されている。
【0003】
しかし、ヒアルロン酸フィラーを含む各種のフィラーは、架橋された高分子物質であるため、肌内に注入するためには殆どの場合専門医の処方と熟練した注射技術が必要である。したがって、誰もが容易に肌に適用可能な方法が求められる。体内に外部物質を注入する方法には、注射、パッチ、マイクロニードル、マイクロジェット方式があるが、パッチ方式では架橋されたヒアルロン酸が角質層を通り難く、架橋されたヒアルロン酸の粘度及び大きさのためマイクロジェット方式には適用し難い。したがって、マイクロニードル方式で肌に注入する方法を考案した。ヒアルロン酸フィラーを注射で注入すれば、フィラーが膨潤して肌ボリュームが増加し、しわ改善の効果が現れる。しかし、膨潤する性質のため、フィラーを注射した初期には激しい痛みを伴うため、フィラー成分に麻酔剤が含まれることもある。
【0004】
したがって、ヒアルロン酸フィラー物質として架橋されたヒアルロン酸を使用しながら、簡単に適用可能であって優れた効果を奏する新たなシステムの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、フィラー物質である架橋されたヒアルロン酸を肌内に導入するための特定の剤形及び/またはシステムを提供することである。特に、架橋されたヒアルロン酸の乾燥後の膨潤性低下を解決できる特定の剤形及び/またはシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、架橋されたヒアルロン酸及び糖を含む溶解性マイクロニードルを提供し、望ましくは、前記マイクロニードルを形成する物質が肌内で溶解され、マイクロニードルが肌に適用されるときマイクロニードルが溶解または崩壊する。
【0007】
本発明者らは、長年にわたる研究の結果、溶解性マイクロニードル内に架橋されたヒアルロン酸及び糖を含浸させることで、架橋されたヒアルロン酸が肌内に伝達されて優れたしわ改善効果を奏するだけでなく、糖を含むことで、架橋されたヒアルロン酸の乾燥後に膨潤性が低下する従来の問題点を解決する方法を確認し、本発明の完成に至った。これによって、注射器を用いて美容整形外科的な施術のみに使われた従来の架橋されたヒアルロン酸を、より簡便に適用できる手段を開発した。
【0008】
本明細書で使われる用語「肌しわ」とは、これに限定されないが、肌が老化して生じる小じわを意味する。
【0009】
本明細書で使われる用語「肌しわ改善」とは、これに限定されないが、肌にしわが生じることを抑制及び/または阻害するか、または、既に生じたしわを緩和させることを意味する。
【0010】
本明細書で使われる用語「架橋されたヒアルロン酸」とは、ヒアルロン酸分子と架橋剤との間の反応によって形成されたヒアルロン酸架橋結合体を意味し、本発明で使用可能なヒアルロン酸は、これに限定されないが、鶏冠から抽出したヒアルロン酸、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)を通じて生産して抽出したヒアルロン酸、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を通じて生産して抽出したヒアルロン酸、化学的に合成したヒアルロン酸、または市販のヒアルロン酸などをいずれも使用できる。
【0011】
前記架橋されたヒアルロン酸の分子量は、これに限定されないが、多様な物性と生体適合性を具現するため100,000~5,000,000であることが望ましい。
【0012】
前記架橋されたヒアルロン酸は、これに限定されないが、ジビニルスルホン(DVS)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、またはこれらのうち2つ以上の架橋剤と結合された架橋結合体であり得る。
【0013】
望ましくは、ジビニルスルホン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはこれらのうち2つ以上であり得る。
【0014】
本発明において、前記架橋されたヒアルロン酸は、マイクロニードルの総重量に対して0.0001~70重量%で含まれ、望ましくは0.001~50重量%、より望ましくは0.01~40重量%で含まれ得る。0.0001重量%未満に含まれる場合、有効な効果を発揮できず、40重量%を超えて含まれると、マイクロニードルの物性及び耐久性に影響を及ぼし、過量使用による副作用をもたらすおそれがあって望ましくない。
【0015】
乾燥したマイクロニードルに架橋されたヒアルロン酸が含まれると、ヒアルロン酸分子同士の水素結合によって堅く結合し、肌内に適用されても膨潤性が低下して、優れたしわ改善効果を発揮し難い。しかし、本発明では、マイクロニードルに前記架橋されたヒアルロン酸とともに糖を含むことで、ヒアルロン酸分子同士の水素結合を糖が阻止し、肌内に適用されて水分が供給されるとき膨潤性が向上する効果を発揮する。すなわち、前記糖は、架橋されたヒアルロン酸の膨潤性を向上させることができる。
【0016】
前記糖は、これに限定されないが、例えば、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸、ラムノース、マンノース、フコース、アラビノース、アセチルグルコサミン、イノシトール、トレハロース、イソマルト、キシリトール、エリトリトールまたはこれらのうち2つ以上であり、望ましくは、単糖類または二糖類、すなわち、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸、ラムノース、マンノース、フコース、アラビノース、アセチルグルコサミン、イノシトール、トレハロース、イソマルトまたはこれらのうち2つ以上であり得、より望ましくはトレハロースであり得る。
【0017】
前記糖は、マイクロニードルの総重量に対して1~70重量%で含まれ得、望ましくは10~50重量%で含まれ得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記糖と架橋されたヒアルロン酸とは、1:0.00001~0.5(糖:架橋されたヒアルロン酸)の重量比で含まれ得、望ましくは1:0.0001~0.1の重量比で含まれ得る。
【0019】
本発明者らは、多様な投与システムを研究した。特に、ヒアルロン酸フィラーは、注射器を用いてのみ体内に注入できるため、熟練した施術者でなければ注入することができなかった。本発明者らは、多大な努力の末、溶解性マイクロニードルに架橋されたヒアルロン酸及び糖を含浸させてマイクロニードルを肌に適用することで、簡便に架橋されたヒアルロン酸を効果的に伝達して優れた肌しわ改善効果を発揮できるという驚くべき発明を完成した。すなわち、本発明によるマイクロニードルは、しわ改善用であり得る。
【0020】
本明細書で使われる用語「含浸」とは、架橋されたヒアルロン酸及び糖がマイクロニードルに含有され得る形態を意味し、望ましくはi)マイクロニードルを形成する物質とともに、架橋されたヒアルロン酸及び糖を含有させる(マイクロニードルを形成する物質同士の間に架橋されたヒアルロン酸及び糖が分散した形態を含む)か、または、ii)マイクロニードルに穴を開けて該穴内に架橋されたヒアルロン酸及び糖を含ませ得る。前記i)またはii)の形態でマイクロニードルを製造する場合、架橋されたヒアルロン酸及び糖が肌内へと効果的に浸透することができ、i)の形態でマイクロニードルを製造することが望ましい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記マイクロニードルを形成する物質は肌内で溶解されて、マイクロニードルが肌に適用されるときマイクロニードルが溶解または崩壊することで、マイクロニードルの内部に含まれた架橋されたヒアルロン酸が肌内部で効果的に再膨潤して優れたしわ改善効果を発揮する。
【0022】
本発明において、前記マイクロニードルは、望ましくは肌内で溶解性であり得、溶解性マイクロニードルを形成するため、例えば、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム (Na-CMC)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;またはこれらの混合物が使用され得る。特に、マイクロニードルの肌透過強度、肌内での溶解速度などを総合的に考慮すれば、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースナトリウム (Na-CMC)との混合物が望ましく、グリセリンまで混合されたものがさらに望ましい。
【0023】
望ましくは、本発明のマイクロニードルは、マイクロニードルを形成する前記成分の外に、可塑剤、界面活性剤、保存剤、抗炎剤などをさらに含み得る。
【0024】
前記可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどのポリオールが単独でまたは混合して使用され得る。
【0025】
本発明によるマイクロニードルの長さは、特に限定されないが、角質層を通過して肌細胞をターゲットとする本発明の目的上、マイクロニードルの先端(tip)を基準にして高さが10~2000μmであり得、望ましくは50~500μmであり得る。
【0026】
また、本発明は、前記マイクロニードルを含むマイクロニードルパッチを提供し、すなわち前記マイクロニードルが取り付けられている、架橋されたヒアルロン酸及び糖の投与用(または伝達用)マイクロニードルパッチを提供する。
【0027】
本発明において、前記パッチとは、前記本発明の架橋されたヒアルロン酸及び糖が含浸されたマイクロニードルが一つ以上取り付けられており、前記マイクロニードルが取り付けられている面が肌に貼り付けられるように製作されたシートを意味し得る。前記シートの大きさは、特に限定されず、肌に吸収される架橋されたヒアルロン酸及び糖の量または貼り付け部位によって適切に調節可能である。また、肌に貼り付けられるシートの面には一つ以上、望ましくは多数のマイクロニードルが取り付けられ得る。
【0028】
また、パッチの肌に貼り付けられる面にも架橋されたヒアルロン酸及び糖を含有させることで、マイクロニードルによって形成された穴に架橋されたヒアルロン酸及び糖を浸透可能にし、優れたしわ改善効果を達成するため、架橋されたヒアルロン酸及び糖はマイクロニードルに含浸させることが望ましい。
【0029】
また、本発明は、S1)架橋されたヒアルロン酸及び糖をモールドに満たして混合する段階、及びS2)前記モールドを加温して乾燥した後、分離する段階を含む、しわ改善用マイクロニードルの製造方法を提供する。
【0030】
前記マイクロニードルの製造方法で使われる用語は、前記マイクロニードルに関連した説明と同一である。
【0031】
本発明者らは、架橋されたヒアルロン酸及び糖を先に混合してから残りの構成成分を混合する段階を経ずに、すべての構成成分を所定の順序なく混合すると、本発明が達成しようとする効果を完全に果たすことができないことを確認した。したがって、本発明によるマイクロニードルを製造するためには、架橋されたヒアルロン酸及び糖を先にモールドに満たして混合する段階を経る。
【0032】
また、本発明は、架橋されたヒアルロン酸、及び糖としてキシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸、ラムノース、マンノース、フコース、アラビノース、アセチルグルコサミン、イノシトール、トレハロース、イソマルト、キシリトール、エリトリトールまたはこれらのうち2つ以上を含み、望ましくは単糖類または二糖類、すなわち、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸、ラムノース、マンノース、フコース、アラビノース、アセチルグルコサミン、イノシトール、トレハロース、イソマルトまたはこれらのうち2つ以上を含むフィラー組成物を提供し、前記糖は、より望ましくはトレハロースであり得る。
【0033】
前記フィラー組成物は、皮内または皮下への投与後に、架橋されたヒアルロン酸が膨潤することができ、これを通じて優れたしわ改善効果を発揮することができる。すなわち、前記フィラー組成物は、しわ改善用であり得る。
【0034】
本発明によるフィラー組成物において、前記糖は、組成物の総重量に対して0.001~20重量%で含まれ得、望ましくは0.01~15重量%、より望ましくは0.05~10重量%で含まれ得る。
【0035】
また、前記糖と架橋されたヒアルロン酸とは、1:0.00001~0.5(糖:架橋されたヒアルロン酸)の重量比で含まれ得、望ましくは1:0.0001~0.1の重量比で含まれ得る。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるマイクロニードルを用いる場合、簡単な方法で架橋されたヒアルロン酸(ヒアルロン酸フィラー物質)を皮内または皮下に投与することができ、投与後に架橋されたヒアルロン酸の膨潤性が向上して優れたしわ改善効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明によるマイクロニードルを製造する多様な方法のうち一例を示した図である。
【
図2】本発明による架橋されたヒアルロン酸(左)、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物(右)が乾燥後、再膨潤する現象を示した写真である。
【
図3】本発明による架橋されたヒアルロン酸(左)、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物(右)が乾燥後、再膨潤する現象を顕微鏡で観察した写真である。
【
図4】本発明による架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物の乾燥前(上)(255μm)、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物の乾燥後(下)(182μm)に再膨潤する現象を粒度分析機で分析した結果である。
【
図5】本発明による架橋されたヒアルロン酸(上)、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物(下)を乾燥して豚肌に注入した後、豚肌が膨潤する現象を示した写真である。
【
図6】本発明による架橋されたヒアルロン酸、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物で製造したマイクロニードルパッチ内の、架橋されたヒアルロン酸の形態を示した写真である。
【
図7】本発明による架橋されたヒアルロン酸、及び架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物で製造したマイクロニードルパッチ内の架橋されたヒアルロン酸を豚肌に注入したときに現れる構造を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態で変形でき、本発明の範囲が下記実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0039】
<溶解性マイクロニードルの製造>
溶解性マイクロニードルは、溶液流延(solution casting)法で製造され、溶液をモールドにキャスティングして真空あるいは遠心分離で満たした後、乾燥して製造した。
【0040】
マイクロニードル構造体を形成する物質は、一般的な合成及び天然水溶性高分子を使用した。
【0041】
<架橋されたヒアルロン酸を含む溶解性マイクロニードル製造(実施例1)>
【0042】
【0043】
トレハロース及び架橋されたヒアルロン酸(Hylasome EG10、Vantage)を先に精製水に溶解した後、Oligo-HA(ヒアルロン酸)、Na-CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、グリセリン及びPEG-40ヒマシ硬化油(HCO-40)を添加してマイクロニードル溶液を製造した。製造した溶液をシリコーンマイクロニードルモールドにキャスティングした後、3000rpmで10分間遠心分離して微細モールドに液を充填した。溶液充填の後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニードルをシリコーンモールドから分離した(実施例1)。
【0044】
<実験例1>
架橋されたヒアルロン酸の乾燥後の再膨潤性の評価
本発明者らは、架橋されたヒアルロン酸(Hylasome EG10、Vantage)の再膨潤性を評価するため、Hyalsome EG10、Hyalsome EG10+トレハロース10重量%を混合した溶液を60℃のオーブンで乾燥した後、精製水を混合して再膨潤性を評価した。
【0045】
水分が多いため、目視で確認するためにアルシアンブルー8GX(sigma-aldrich)0.1%を混ぜて架橋されたヒアルロン酸を染色してから測定した。
【0046】
その結果、
図2のように、架橋されたヒアルロン酸のみを乾燥した場合は(左)、再膨潤せず濃い青色のフィルム状の切れが漂うことが確認されたが、トレハロースを混ぜた混合物の場合は(右)、架橋されたヒアルロン酸がよく膨潤して溶液全体が青色を帯びることが確認された。
【0047】
また、
図3のように、顕微鏡で観察した結果、乾燥前の架橋されたヒアルロン酸を染色した場合(左)、及び架橋されたヒアルロン酸をトレハロースと混ぜた溶液を乾燥した場合(右)において、再膨潤したとき模様の変化がほとんどなかった。また、
図4のように、粒度分析した結果、架橋されたヒアルロン酸とトレハロースとの混合物の乾燥前のヒアルロン酸粒子の平均大きさは約250μm(上)であり、架橋されたヒアルロン酸をトレハロースと混ぜた溶液を乾燥してから再膨潤したときの粒子の大きさは約190μm(下)であって、乾燥後に再膨潤したとき約80%の粒子大きさの回復度を見せた。
【0048】
これは、乾燥が起きるとき、トレハロースがヒアルロン酸分子同士の間に入り込んでヒアルロン酸分子間の強力な水素結合を妨害し、水が再度流入すると、トレハロースが水に溶けて再膨潤が起きるためであると予測された。このような性質を用いて優れたしわ改善用マイクロニードルパッチを開発することができる。
【0049】
<実験例2>
架橋されたヒアルロン酸が含有された組成物による肌ボリューム増強効果の評価
本発明者らは、架橋されたヒアルロン酸(Hyalsome EG10、Vantage)が含有された組成物の肌ボリューム増強効果を評価するため、架橋されたヒアルロン酸が含有された組成物を60℃のオーブンで乾燥した後、豚肌を切開して乾燥物を入れて縫合した。
【0050】
その結果、
図5のように、架橋されたヒアルロン酸が含有された物質を入れた豚肌が、その以前に比べてぷっくりと膨らむことを確認した。したがって、本発明によれば、上述した方法のように架橋されたヒアルロン酸の再膨潤性を高め、マイクロニードルパッチ法で簡便に肌に注入できることを確認した。
【0051】
<実験例3>
マイクロニードルパッチ内の架橋されたヒアルロン酸の含有形態の評価
架橋されたヒアルロン
酸(Hyalsome EG10、Vantage)がマイクロニードルパッチ内で如何なる形態で存在するかを評価した。まず、架橋されたヒアルロン酸がマイクロニードルに均一に含浸されるように、架橋されたヒアルロン酸をUltra Turrax(T-18、IKA)を用いて5分間細かく粉砕した。その後、架橋されたヒアルロン酸は透明であって確認し難いため、目視で確認するためにアルシアンブルー8GX(sigma-aldrich)0.1%を混ぜて架橋されたヒアルロン酸を染色した後、マイクロニードルパッチを製作し、顕微鏡(Leica DM 1000)を用いてマイクロニードルパッチに存在する架橋されたヒアルロン酸を確認した。
【0052】
その結果、
図6に示したように、マイクロニードルパッチのベッドに30~50μm大きさの架橋されたヒアルロン酸が青色の球状で存在していることを確認した。したがって、本発明によれば、上述した方法のように架橋されたヒアルロン酸がマイクロニードルパッチの剤形から解けずに構造を確実に有するため、肌に注入するとき、しわ改善効果を奏することができることを確認できた。