(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】高効率且つ角度に耐性のある太陽光発電デバイス用色付きフィルタ組立体
(51)【国際特許分類】
H01L 31/054 20140101AFI20230911BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230911BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01L31/04 620
G02B5/26
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2020525876
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 US2018060147
(87)【国際公開番号】W WO2019094810
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ、リンチー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チー、チェンガン
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由貴
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511502(JP,A)
【文献】特表2016-500799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電デバイスと共に使用する色付きフィルタであって、前記フィルタは、
シリコンを含み、15nm以下の厚さを有し、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層と、
前記極薄反射層の前記第1の側面に隣接する、誘電体材料の透明な第1のペアであって、前記第1のペアは、誘電体材料の第1の層、及び別個の誘電体材料の第2の層を備える、第1のペアと、
前記極薄反射層の前記第2の側面に隣接する、誘電体材料の透明な第2のペアであって、前記第2のペアは、誘電体材料の第3の層、及び別個の誘電体材料の第4の層を備える、第2のペアと
を備え、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する前記電磁スペクトルの第2の部分を反射して反射出力を生成することができる色付きフィルタ。
【請求項2】
前記反射出力は、前記波長の第2の範囲が、前記色付きフィルタに対して0°から60°までの範囲の入射角で80nm以下の変化となるような、最小の角度依存性を示し、角度の影響を受けない色付きフィルタを形成する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項3】
前記極薄反射層は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項4】
前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項5】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は可視光範囲内にあり、赤、緑、青、及びその組合せで構成される群から選択される色を有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項6】
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、及び前記第4の層のそれぞれを形成する前記誘電体材料は、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化チタン(TiO
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、三酸化タングステン(WO
3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、及び屈折率が1.6以上のポリマーで構成される群から別々に選択される、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項7】
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、及び前記第4の層のそれぞれを形成する前記誘電体材料は、窒化ケイ素(Si
3N
4)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化チタン(TiO
2)、及び二酸化ケイ素(SiO
2)で構成される群から別々に選択される、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項8】
前記第1の層は、二酸化ケイ素(SiO
2)を含み、前記第2の層は酸化チタン(TiO
2)を含み、前記第3の層は酸化チタン(TiO
2)を含み、前記第4の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含むか、又は
前記第1の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含み、前記第2の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、前記第3の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、前記第4の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含む、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項9】
前記第1の層は、50nm以上300nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は50nm以上300nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項10】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、青色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、50nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上150nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上150nm以下の厚さを有し、前記第4の層は50nm以上200nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項11】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、緑色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、100nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は100nm以上200nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項12】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、赤色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、100nm以上300nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は100nm以上300nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の色付きフィルタ。
【請求項13】
色付き反射フィルタであって、
シリコンを含み、15nm以下の厚さを有し、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層と、
前記極薄反射層の前記第1の側面に隣接する、誘電体材料の透明な第1のペアであって、前記第1のペアは、誘電体材料の第1の層、及び別個の誘電体材料の第2の層を備える、第1のペアと、
前記極薄反射層の前記第2の側面に隣接する、誘電体材料の透明な第2のペアであって、前記第2のペアは、誘電体材料の第3の層、及び別個の誘電体材料の第4の層を備える、第2のペアと
を具備し、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する前記電磁スペクトルの第2の部分を反射して反射出力を生成することができる色付き反射フィルタ、並びに
前記色付き反射フィルタに隣接し、少なくとも1種類の太陽光発電材料を含む太陽光発電デバイス
を備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項14】
前記太陽光発電デバイスの電力変換効率は18%以上である、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項15】
前記太陽光発電材料は結晶シリコン(c-Si)材料を含む、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項16】
前記極薄反射層は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項17】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は可視光範囲内にあり、赤、緑、青、及びその組合せで構成される群から選択される色を有する、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項18】
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、及び前記第4の層のそれぞれを形成する前記誘電体材料は、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化チタン(TiO
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、三酸化タングステン(WO
3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、及び屈折率が1.6以上のポリマーで構成される群から別々に選択される、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項19】
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、及び前記第4の層のそれぞれを形成する前記誘電体材料は、窒化ケイ素(Si
3N
4)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化チタン(TiO
2)、及び二酸化ケイ素(SiO
2)で構成される群から別々に選択される、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項20】
前記第1の層は、二酸化ケイ素(SiO
2)を含み、前記第2の層は酸化チタン(TiO
2)を含み、前記第3の層は酸化チタン(TiO
2)を含み、前記第4の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含むか、又は
前記第1の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含み、前記第2の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、前記第3の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、前記第4の層は窒化ケイ素(Si
3N
4)を含む、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項21】
前記第1の層は、50nm以上300nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は50nm以上300nm以下の厚さを有する、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項22】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、青色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、50nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上150nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上150nm以下の厚さを有し、前記第4の層は50nm以上200nm以下の厚さを有する、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項23】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、緑色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、100nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は100nm以上200nm以下の厚さを有する、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【請求項24】
前記所定の波長の第2の範囲を有する前記反射出力は、赤色を示し、前記極薄反射層は、5nm以上12nm以下の厚さを有し、前記第1の層は、100nm以上300nm以下の厚さを有し、前記第2の層は、10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第3の層は10nm以上200nm以下の厚さを有し、前記第4の層は100nm以上300nm以下の厚さを有する、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/583,966号の利益を主張する。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、高効率且つ角度に耐性のある、角度の影響を受けない色付きフィルタ組立体、並びに受動色付き反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体に関し、また能動色付き反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
この段落では、必ずしも先行技術ではない、本開示に関連する背景情報を提示する。
【0004】
太陽光発電(PV:photovoltaic)には、無尽蔵の太陽光エネルギーを収集する機能を提供することにより、伝統的な化石燃料に取って代わるという、大いなる将来性がある。PVの可能性を高めるために、電力変換効率(PCE:power conversion efficiency)を向上させ、製造コストを下げる努力が続けられている。最大約1,100nmの波長まで吸収する、結晶シリコン(c-Si:crystalline silicon)光活性材料をベースとするPVは、材料の豊富さ及び入手しやすさだけでなく、達成可能な高いPCE(たとえば、20%を超える)のために、大いなる可能性をもたらす。しかし、c-Si光活性材料を組み込んだ太陽電池/PVは、黒くくすんだ外観をしており、非限定的な実例として、車両及び建物の外装の装飾目的を含む、様々な用途での使用を著しく妨げている。現在の太陽電池の望ましからざる美観ゆえに、現在浪費されている利用可能な太陽エネルギーを利用する多くの機会が失われている。
【0005】
色付きの太陽電池を作成するために、色素増感太陽電池(DSSC:dyed sensitized solar cell)及び有機PV(OPV:organic PV)など、様々なシナリオが提案されてきた。しかしその色は、使用する材料の種類に大きく依存し、さらに、色調整の可能性は極めて限定される。さらに、かかる構造体に含まれる有機成分は非常に影響を受けやすく、また寿命の問題があり、たとえば酸素及び湿気に耐える特別な不動態化技法を必要とする。最近、吸収された光を同時に収集することにより電力を発生させることができる、PVパネル内に色付きフィルタを導入する方式が開発されている。しかし、こうした太陽電池に含まれる色付きフィルタは、ファブリペロー(F-P:Fabry-Perot)干渉計キャビティ又はプラズモン共振に基づいており、それらは視野角に非常に影響を受けやすく(たとえば、視野角及び入射光の偏光によって変わる)、したがって装飾用コーティングには望ましくない色を生成する。加えて、かかるナノ構造のプラズモン色付きフィルタを、大面積に拡張することも課題である。さらに、色が角度及び偏光の影響を受けないことを特徴とするアモルファス・シリコン(a-Si:amorphous silicon)をPV組立体内に統合する、1次元(1D:one dimensional)積層太陽電池が使用されてきた。光線で色が変化しない(non-iridescent)色付きの外観は、a-Siと金属との界面における小さくない反射位相の変化が、結果として、極薄a-Si層(<30nm)を通って伝搬する光の伝搬位相を補償することに起因すると考えられ得る。しかし、かかる半透明のPVパネルの電力変換効率(PCE)は、吸収される光量が少ないので、わずか約2%に制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、魅力的な装飾的美観及び設計上の機能も実現しながら、高いPCEで優れた性能を提供できる、多機能太陽電池/PVを開発することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この段落は、本開示の概括的な要約を提示し、その全範囲又はその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0008】
本開示は、一変形形態では、太陽光発電デバイスと共に使用する色付きフィルタを企図する。フィルタは、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層を備える。フィルタはまた、極薄反射層の第1の側面に隣接する誘電体材料の透明な第1のペアを備え、第1のペアは、誘電体材料の第1の層及び別個の誘電材料の第2の層を備える。誘電体材料の透明な第2のペアは、極薄反射層の第2の側面に隣接して配置され、第2のペアは、誘電体材料の第3の層及び別個の誘電体材料の第4の層を備える。フィルタは、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトルの第2の部分を反射して、反射出力を生成することができる。
【0009】
一態様では、反射出力は、波長の第2の範囲が、色付きフィルタに対して約0°から約60°までの範囲の入射角で約80nm以下の変化となるような、最小の角度依存性を示し、角度の影響を受けない色付きフィルタを形成する。
【0010】
一態様では、極薄反射層は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む。
【0011】
一態様では、超薄反射層は、約15nm以下の厚さを有する。
【0012】
一態様では、極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。
【0013】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は可視光範囲内にあり、赤、緑、青、及びその組合せで構成される群から選択される色を有する。
【0014】
一態様では、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層のそれぞれを形成する誘電体材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO2)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、三酸化タングステン(WO3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al2O3)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及び屈折率が約1.6以上のポリマーで構成される群から別々に選択される。
【0015】
一態様では、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層のそれぞれを形成する誘電体材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)で構成される群から別々に選択される。
【0016】
一態様では、第1の層は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み、第2の層は酸化チタン(TiO2)を含み、第3の層は酸化チタン(TiO2)を含み、第4の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。
【0017】
一態様では、第1の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含み、第2の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第3の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第4の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。
【0018】
一態様では、第1の層は、約50nm以上約300nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約50nm以上約300nm以下の厚さを有する。
【0019】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、青色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約50nm以上約200nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約150nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約150nm以下の厚さを有し、第4の層は約50nm以上約200nm以下の厚さを有する。
【0020】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、緑色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約100nm以上約200nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約100nm以上約200nm以下の厚さを有する。
【0021】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、赤色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約100nm以上約300nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約100nm以上約300nm以下の厚さを有する。
【0022】
本開示はまた、特定の変形形態において、色付き反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体も提供する。色付き反射フィルタは、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層を備える。誘電体材料の透明な第1のペアは、極薄反射層の第1の側面に隣接して配置され、第1のペアは、誘電体材料の第1の層及び別個の誘電体材料の第2の層を備える。誘電体材料の透明な第2のペアは、極薄反射層の第2の側面に隣接して配置され、第2のペアは、誘電体材料の第3の層及び別個の誘電体材料の第4の層を備える。フィルタは、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトルの第2の部分を反射して、最小の角度依存性を示す反射出力を生成することができる。太陽光発電デバイスは、色付き反射フィルタに隣接して配置される。太陽光発電デバイスは、少なくとも1種類の太陽光発電材料を含む。
【0023】
一態様では、太陽光発電デバイスの電力変換効率は、約18%以上である。
【0024】
一態様では、請求項13に記載の角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体において、太陽光発電材料は結晶シリコン(c-Si)材料を含む。
【0025】
一態様では、極薄反射層は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む。
【0026】
一態様では、超薄反射層は、約15nm以下の厚さを有する。
【0027】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は可視光範囲内にあり、赤、緑、青、及びその組合せで構成される群から選択される色を有する。
【0028】
一態様では、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層のそれぞれを形成する誘電体材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO2)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、三酸化タングステン(WO3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al2O3)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及び屈折率が約1.6以上のポリマーで構成される群から別々に選択される。
【0029】
一態様では、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層のそれぞれを形成する誘電体材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)で構成される群から別々に選択される。
【0030】
一態様では、第1の層は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み、第2の層は酸化チタン(TiO2)を含み、第3の層は酸化チタン(TiO2)を含み、第4の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。
【0031】
一態様では、第1の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含み、第2の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第3の層はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第4の層は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。
【0032】
一態様では、第1の層は、約50nm以上約300nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約50nm以上約300nm以下の厚さを有する。
【0033】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、青色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約50nm以上約200nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約150nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約150nm以下の厚さを有し、第4の層は約50nm以上約200nm以下の厚さを有する。
【0034】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、緑色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約100nm以上約200nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約100nm以上約200nm以下の厚さを有する。
【0035】
一態様では、所定の波長の第2の範囲を有する反射出力は、赤色を示す。極薄反射層は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層は、約100nm以上約300nm以下の厚さを有し、第2の層は、約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第3の層は約10nm以上約200nm以下の厚さを有し、第4の層は約100nm以上約300nm以下の厚さを有する。
【0036】
特定の他の変形形態では、本開示は、能動色付き反射フィルタを太陽光発電デバイスと共に使用することを企図する。フィルタは、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層を備える。能動反射色付きフィルタは、第1の極性を有する第1の透明電極、及び第1の極性と反対の第2の極性を有する第2の透明電極をさらに備える。能動色付き反射フィルタは、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトルの第2の部分を反射して反射出力を生成することができる。
【0037】
一態様では、反射出力は、所定の波長の第2の範囲が、能動色付き反射フィルタに対して約0°から約60°までの範囲の入射角で約80nm以下の変化となるような、最小の角度依存性を示し、角度の影響を受けない能動反射色付きフィルタを形成する。
【0038】
一態様では、能動色付き反射フィルタは、第1の透明電極と極薄反射層との間に配置される第1のドープ層、並びに極薄反射層と第2の透明電極との間に配置される第2のドープ層をさらに備える。
【0039】
一態様では、極薄反射層は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む。第1のドープ層は、n型のドープされた酸化シリコン(SiOX)を含む。第2のドープ層は、p型のドープされた酸化シリコン(SiOX)を含む。第1の透明電極及び第2の透明電極は、アルミニウムのドープされた酸化亜鉛(AZO)、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、マグネシウム及びガリウムの共ドープされた酸化亜鉛(MGZO)、ホウ素のドープされた酸化亜鉛(BZO)、及びその組合せで構成される群から選択される材料を、別々に含む。
【0040】
一態様では、第1の透明電極は、約50nm以上約200nm以下の厚さを有する。第2の透明電極は、約750nm以上約1.5マイクロメートル以下の厚さを有する。第1のドープ層は、約10nm以上約20nm以下の厚さを有する。第2のドープ層は、約5nm以上約20nm以下の厚さを有する。極薄反射層は、約5nm以上約55nm以下の厚さを有する。
【0041】
本開示はまた、能動色付き反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体も企図する。能動色付き反射フィルタは、第1の側面及び第2の側面を画定する極薄反射層を備える。第1の透明電極は第1の極性を有し、一方第1の極性と反対の第2の極性を有する第2の透明電極も備える。能動色付き反射フィルタは、所定の波長の第1の範囲を有する電磁スペクトルの第1の部分を透過し、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトルの第2の部分を反射して反射出力を生成することができる。太陽光発電デバイスは、能動色付き反射フィルタに隣接する。太陽光発電デバイスは、少なくとも1種類の太陽光発電材料を含む。
【0042】
一態様では、反射出力は、所定の波長の第2の範囲が、能動色付き反射フィルタに対して約0°から約60°までの範囲の入射角で約80nm以下の変化となるような、最小の角度依存性を示す。
【0043】
一態様では、第1の透明電極及び第2の透明電極は、インジウム・スズ酸化物(ITO)及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)で構成される群から別々に選択される材料を含み、極薄反射層はアモルファス・シリコン(a-Si)材料を含み、且つ太陽光発電材料は結晶シリコン(c-Si)を含む。
【0044】
一態様では、能動色付き反射フィルタは、第1の透明電極と極薄反射層との間に配置される第1の電荷輸送層、並びに極薄反射層と第2の透明電極との間に配置される第2の電荷輸送層をさらに備える。
【0045】
一態様では、能動色付き反射フィルタは、第1の透明電極と極薄反射層との間に配置される第1のドープ層、並びに極薄反射層と第2の透明電極との間に配置される第2のドープ層をさらに備える。
【0046】
さらなる適用分野は、本明細書で提供する説明から明らかとなろう。この概要の説明及び具体的な実例は、例示のみを目的とすることを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0047】
本明細書で説明する図面は、選択された実施例の例示のみを目的としており、可能なすべての実施態様ではなく、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本開示の特定の態様にしたがって作製した、角度の影響を受けない受動色付き反射フィルタの断面図である。
【
図2】本開示の特定の態様による、
図1の角度の影響を受けない受動色付き反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを組み込んだ、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体の断面図である。
【
図3】本開示の特定の代替態様による、角度の影響を受けない能動色付き反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを組み込んだ、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体の断面図である。
【
図4】受動色付き反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを備える角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体の、電流密度-電圧(J-V)データを取得するための設定を示す概略図である。左上及び右下の挿入図はそれぞれ、c-Si太陽光発電デバイス/太陽光パネル及び上面のアルミ箔の開口部の寸法を提示する。
【
図5A】本開示の特定の態様による、青を反射する、角度の影響を受けない受動色付きフィルタを示す図である。青の受動フィルタは、シリコン太陽電池へ向かう451nmの波長で、反射ピーク強度が約40%である。
【
図5B】
図5Aに示す、青を反射する角度の影響を受けない受動色付きフィルタの、シミュレーション及び測定した反射及び透過スペクトルを示す図である。
【
図5C】CIE1931色度図上に描いた、シミュレーション及び測定した反射スペクトルの両方からの色座標の例を示す図である。
【
図6】a-Si層の中間半導体層が、2.5~4.5の範囲の相異なる屈折率の材料で置き換えられた、青色の構造体の反射スペクトルのグラフである。
【
図7A】緑の受動フィルタについてシミュレーションした、反射及び透過スペクトルのグラフである。
【
図7B】赤の受動フィルタについてシミュレーションした、反射及び透過スペクトルのグラフである。
【
図7C】緑の受動フィルタの、シミュレーションした角度の作用を示す図である。
【
図7D】赤の受動フィルタの、シミュレーションした角度の作用を示す図である。
【
図8】分光エリプソメータ(M-2000、J. A. Woollam)を使用した、誘電体材料Si
3N
4、TiO
2、a-Si、及びSiO
2の屈折率のグラフである。
【
図9A】非偏光の照明下での、本開示の特定の態様にしたがって作製した青色フィルタについて計算した、角度分解した反射のグラフである。
【
図9B】非偏光の照明下での、本開示の特定の態様にしたがって作製した青色フィルタについて測定した、角度分解した反射のグラフである。
【
図9C】黒い背景を使用して4種類の相異なる視野角で、周囲光照明下で撮影された、製造した青色フィルタの写真を示し、安定した青色が広い角度範囲にわたって維持できることを示す図である。
【
図10A】受動フィルタの多層積層体の各誘電体層内の、計算され正規化された位相シフトの合計であり、透過率の向上をもたらす透過F-P共振の位置を示すグラフである。
【
図10B】これらの4つの誘電体層を後で追加していく、フィルタ構造体のシミュレーションした反射スペクトルのグラフである。
【
図11】本開示の特定の態様による、300nm、400nm、450nm、600nm、800nm、及び1000nmそれぞれの波長での、角度の影響を受けない受動色付き反射フィルタの光学アドミタンス図である。
【
図12】AM1.5照明(100mWcm
-2)下での、角度の影響を受けない青色受動反射フィルタを組み込んだ太陽光発電デバイス組立体の、測定した電流密度-電圧(J-V)特性を、反射フィルタのない、元のc-Si太陽光発電セルの、測定した電流密度-電圧特性と比較したグラフである。
【
図13A】本開示の特定の態様にしたがって作製した、反射性を向上させた青を反射する、角度の影響を受けない受動色付きフィルタの概略図である。
【
図13B】
図13Aの新しい青の受動フィルタの、反射及び透過スペクトルを示す図である。
【
図13C】製造したサンプルの、優れた角度の影響を受けない性能を提示する、様々な視野角での光学画像を示す図である。
【
図13D】AM1.5照明下での、青色の反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを組み込んだ、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体の測定したJ-V性能を、フィルタのない、元のc-Si太陽光発電セルの測定したJ-V性能と比較した図である。
【
図14A】
図14A~
図14Dは、本開示の特定の態様にしたがって作製した、角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体を示す。
図14Aは、本開示の特定の代替態様による、角度の影響を受けない能動色付き反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体の断面図である。
【
図14C】角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体の光学的性能を示す図である。
【
図14D】角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体の電気的性能を示す図である。
【
図15】本開示の特定の態様にしたがって作製した、相異なるRGBの色のa-Si太陽電池を備える、角度の影響を受けない能動太陽光発電デバイス組立体のシミュレーションした光学的性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面のいくつかの図を通して、一致する参照番号は一致する部分を指す。
【0050】
例示的な実施例は、この開示が完全であり、その範囲を当業者に完全に伝えるように提示する。本開示の実施例の完全な理解をもたらすように、特定の組成物、構成要素、デバイス、及び方法の実例など、多数の特定の詳細を示す。特定の詳細を使用する必要がないこと、例示的な実施例が多くの相異なる形態で具現化され得ること、且つどちらも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきでないことが、当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施例では、周知のプロセス、周知のデバイス構造、及び周知の技術は、詳細には説明しない。
【0051】
本明細書で使用する用語は、具体的で例示的な実施例を説明することだけを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないと示していない限り、複数の形態も同様に含むことを意図する場合がある。用語「comprises」、「comprising」、「including」、及び「having」は包括的であり、したがって、述べられた特徴、要素、組成物、ステップ、整数、動作、及び/又は構成要素の存在を特定するが、他の1つ又は複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はその群の、存在又は追加を排除しない。「comprising」という制限のない用語は、本明細書に示す様々な実施例を説明及び特許請求するために使用する非限定的な用語と理解されるべきであるが、特定の態様では別法として、該用語は、その代わりに、より限定的且つ制限的な「consisting of」、又は「consisting essentially of」などの用語と理解される場合がある。したがって、組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、及び/又はプロセスのステップを列挙する任意の所与の実施例では、本開示はやはり、具体的には、かかる列挙された組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、及び/又はプロセスのステップで構成される、又は基本的に構成される実施例を含む。「consisting of」の場合、代替の実施例は、任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、及び/又はプロセスのステップを除外し、一方、「consisting essentially of」の場合、基本的且つ新規の特性に重大な影響を及ぼす任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、及び/又はプロセスのステップはかかる実施例から除外されるが、基本的且つ新規の特性に重大な影響を及ぼさない任意の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、及び/又はプロセスのステップは、その実施例に含まれる可能性がある。
【0052】
本明細書で説明するどの方法のステップ、プロセス、及び動作も、実行順序として具体的に特定されない限り、論じられた又は例示された特定の順序での実行を必ずしも必要とすると解釈されるべきではない。また、別段の指示がない限り、追加又は代替のステップを使用できることも理解されたい。
【0053】
構成要素、要素、又は層が、別の要素又は層に「on」、「engaged to」、「connected to」、又は「coupled to」と称される場合、他の構成要素、要素、又は層に直接オンされ、係合され、接続され、若しくは結合されてもよく、又は介在する要素若しくは層が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は層に「directly on」、「directly engaged to」、「directly connected to」、又は「directly coupled to」と称される場合、介在する要素又は層は存在し得ない。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様に解釈されるべきである(たとえば、「between」対「directly between」、「adjacent」対「directly adjacent」など)。本明細書で使用されるとき、用語「and/or」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の、ありとあらゆる組合せを含む。
【0054】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を使用して、様々なステップ、要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションを説明することができるが、こうしたステップ、要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションは、別段の指示がない限り、こうした用語によって制限されるべきではない。こうした用語は、1つのステップ、要素、構成要素、領域、層、又はセクションを別のステップ、要素、構成要素、領域、層、又はセクションと区別するためにしか使用され得ない。「first」、「second」、及び他の数値用語などの用語は、本明細書で使用するとき、文脈で明確に示されていない限り、シーケンス又は順序を含意しない。したがって、以下で論じる第1のステップ、要素、構成要素、領域、層、又はセクションは、例示的な実施例の教示から逸脱することなく、第2のステップ、要素、構成要素、領域、層、又はセクションと表現してもよい。
【0055】
「before」、「after」、「inner」、「outer」、「beneath」、「below」、「lower」、「above」、「upper」などの空間的又は時間的相対用語は、本明細書では、説明を容易にするために、図に示すように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するために使用することができる。空間的又は時間的相対用語は、図に描かれている向きに加えて、使用中又は動作中のデバイス又はシステムの様々な向きを包含することを意図している場合がある。
【0056】
この開示全体を通して、数値は、所与の値、及び言及された値を正確に有する実施例ばかりでなく言及されたおおよその値を有する実施例からのわずかな差を包含する、おおよその測定値又は範囲の限度値を表す。詳細な説明の最後に提供する、動作する実例以外では、添付の特許請求の範囲を含め、この明細書における(たとえば、量又は条件の)パラメータのすべての数値は、「about」が実際に数値の前にあるかどうかにかかわらず、すべての場合において用語「about」によって修飾されていると理解されるべきである。「about」は、記載された数値が多少の不正確さを許容すること(値の正確さへの何らかのアプローチを有する、おおよそ又は合理的に値に近い、ほぼ)を示す。「about」によってもたらされる不正確さが、普通なら当該技術分野においてこの通常の意味で理解されない場合、本明細書で使用される「about」は、少なくとも、かかるパラメータを測定及び使用する通常の方法から生じ得るばらつきを示す。たとえば、「about」には、5%以下、任意選択で4%以下、任意選択で3%以下、任意選択で2%以下、任意選択で1%以下、任意選択で0.5%以下、特定の態様では任意選択で0.1%以下であるばらつきが含まれ得る。
【0057】
別段の指示がない限り、組成物は、質量/重量パーセントで示される。
【0058】
加えて、範囲の開示は、範囲について与えられた端点及び部分範囲を含む、全体の範囲内のすべての値及びさらに分割された範囲の開示を含む。
【0059】
ここで、添付図面を参照して、例示的な実施例をより完全に説明することとする。
【0060】
様々な態様において、本開示は、太陽光発電デバイスと組み合わせる受動反射型色付きフィルタとの両方を備える、高効率な色付き太陽電池組立体を企図する。たとえば、本明細書で説明するように、本開示は、色付き反射フィルタ及び太陽光発電デバイスを備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体を企図する。以下でさらに論じるように、太陽光発電デバイスは、色付き反射フィルタの片側に隣接し、任意選択で接触している。
【0061】
本開示の特定の態様による、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50を
図1に示す。フィルタ50は、多層の積層体又は組立体を形成する複数の層を備える。フィルタ50は、このように、第1の側面54及び第2の側面56を画定する極薄反射層52を備える。極薄反射層52は、高屈折率材料、半導体材料、又は金属層であり得る。特定の態様では、極薄反射層52は、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む。アモルファス・シリコンの屈折率は、波長が300nmから約400nmに増加すると実数部が約3.3から約5.0に増加し、波長が約400nmから1100nmに増加すると約5.0から約3.5に低下し、波長が300nmから1100nmに増加すると、虚数部が約3.5から0に低下する。「超薄」とは、層が約20nm以下の厚さを有することを意味する。特定の変形形態では、超薄反射層52は、約15nm以下の厚さを有する。特定の変形形態では、極薄反射層52は、約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。一態様では、極薄反射層52は、約5nm以上約10nm以下の厚さを有する。別の変形形態では、超薄反射層52は、約10nm以上約12nm以下の厚さを有する。
【0062】
フィルタ50は、極薄反射層52の第1の側面54に隣接する誘電体材料の透明な第1のペア60を備える。第1のペア60は、誘電材料の第1の層70及び別個の誘電体材料の第2の層72を備える。フィルタ50は、極薄反射層52の第2の側面56に隣接する誘電体材料の透明な第2のペア62も備える。第2のペア62は、誘電体材料の第3の層74及び別個の誘電体材料の第4の層76を備える。誘電体材料の第2のペア62は、基板78上に配置される。基板78は、シリカ(たとえば、溶融シリカ又はガラス)、石英、及びポリマー(たとえば、ポリカーボネート、又はアクリレート)など、光のある所定の波長に対して透過的な材料で形成され得る。代替の変形形態では、追加の層又は構成要素がフィルタ50内に備えられ得ることに留意されたい。実例として、図示していないが、屈折率整合層が、基板78の側面に面して、第4の層76とは反対側に備えられ得る。
【0063】
層70~74の誘電体材料はそれぞれ、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO2)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、三酸化タングステン(WO3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al2O3)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及び/又は類似した好適な屈折率を持つポリマーで構成される群から別々に選択することができる。一変形形態では、第1の層70、第2の層72、第3の層74、及び第4の層76のそれぞれを形成するために選択される誘電体材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)で構成される群から別々に選択する。特定の態様では、層70~74のうちの1層又は複数の層は高屈折率材料であり得、約1.6以上、任意選択で約1.7以上、任意選択で約1.8以上、任意選択で約1.9以上、任意選択で約2以上、任意選択で約2.1以上、特定の変形形態では、任意選択で約2.2以上の屈折率であり得る。本開示にしたがって使用するのに好適な高屈折率材料には、非限定的な実例として、屈折率が2.0の窒化ケイ素(Si3N4)、屈折率が約2.2の酸化チタン(TiO2)、及び屈折率が約2.6のセレン化亜鉛(ZnSe)が含まれる。
【0064】
他の考えられる高屈折率材料は、光学メタマテリアルである。メタマテリアルは、わずかな不均一性を使用して効果的で巨視的な作用を生み出すことにより、材料自体の組成ではなく、その構造に基づいた特性を持つよう設計された合成材料であり、一般に異方性で不均一である。かかる多くの光学メタマテリアルは、高い屈折率を有するか、又は依然として目標とするスペクトル範囲内で最小の吸収性を有しながらも高い屈折率を有するよう設計され得る。たとえば、メタマテリアルは、約2以上の屈折率を持ち、任意選択で約3以上、任意選択で3.5以上、任意選択で約4以上、特定の態様では任意選択で最大5又は5を超える屈折率であり得る。以下に説明する特定の追加の実施例では、かかるメタマテリアルを代替の光学フィルタ処理デバイスの実施例で使用して、角度への依存性を最小限に抑えたカラー・フィルタ処理を提供することができる。
【0065】
特定の態様では、第1の層70は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み、第2の層72は酸化チタン(TiO2)を含み、第3の層74は酸化チタン(TiO2)を含み、第4の層76は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。特定の他の態様では、第1の層70は窒化ケイ素(Si3N4)を含み、第2の層72はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第3の層74はセレン化亜鉛(ZnSe)を含み、第4の層76は窒化ケイ素(Si3N4)を含む。特定の態様では、第1の層70は、約50nm以上約300nm以下、特定の変形形態では、任意選択で、約145nm以上約245nm以下の厚さを有する。第2の層72は、約10nm以上約200nm以下、特定の変形形態では、任意選択で、約100nm以上約195nm以下の厚さを有する。第3の層74は、約10nm以上約200nm以下、特定の変形形態では、任意選択で、約25nm以上約75nm以下の厚さを有する。第4の層76は、約50nm以上約300nm以下、特定の変形形態では、任意選択で、約100nm以上約155nm以下の厚さを有する。
【0066】
図1に示すように、太陽光などの電磁波80が、フィルタ50の方へ向けられる。様々な態様では、フィルタ50は、矢印82で示す、所定の波長の第1の範囲を有するその電磁波80の第1の部分を透過することができる。フィルタ50はさらに、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトル/電磁波80の第2の部分を反射して、フィルタ50がそこから(たとえば、人間又は機械によって)見られるか又は観察され得る入射角又は視野角86に対する角度依存性を最小に抑える、反射出力84を生成する。視野角86は、
図1に示すように90°であるが、0°より大きく180°より小さい(たとえば±90°)どこの観察位置かに応じて変わる可能性がある。
【0067】
シリコン太陽光発電パネルは、おおよそ、約300nmから1100nmの範囲の波長を持つ光に応答する。具体的には、好適な紫外線、可視、及び赤外線の電磁放射には、約300nmから約390nmの範囲の紫外線放射、約390から約750nmの範囲の波長を持つ可視光、及び赤外線放射(IR:infrared radiation)(約0.75から約1.4μmの範囲の近赤外線(NIR:near infrared)を含む)が含まれる。電磁放射の可視範囲では、約625nmから740nmの範囲の波長は赤、オレンジは約590nmから約625nm、黄は約565nmから約590nm、緑は約520nmから約565nm、青又はシアンは約500nmから約520nm、青又は藍は約435nmから約500nm、紫は約380nmから約435nmである。特に、本明細書で使用する青は、青/シアン、青/藍、及び紫を包含し得る。
【0068】
特定の実施例では、反射出力84は、赤、緑、青、及びその組合せで構成される群から選択される色を含み得る可視光範囲内で、フィルタ50によって生成される所定の範囲の波長を有する。特定の態様では、電磁放射の反射出力84は、赤では、約625nm以上約740nm以下の範囲、緑では、約520nm以上約565nm以下の範囲、青又はシアンでは、約500nm以上約520nm以下の範囲、青又は藍では、約435nm以上約500nm以下の範囲の波長を有することができる。さらに、特定の態様では、反射光は、スペクトル外(extra-spectral)又はいくつかの相異なる波長の混合であり得る。たとえば、マゼンタは赤(625nmから740nm)と青(435nmから500nm)の波長のスペクトル外の混合である。
【0069】
一変形形態では、角度の影響を受けない色付きフィルタ50は、青に相当する所定の波長範囲を持つ反射出力84を有し、ここで極薄反射層52は約5nm以上約12nm以下の厚さを有し、第1の層70は約50nm以上約200nm以下、任意選択で約145nm以上約170nm以下の厚さを有する。第2の層72は、約10nm以上約150nm以下、任意選択で約100nm以上約120nm以下の厚さを有する。第3の層74は、約10nm以上約150nm以下、任意選択で約25nm以上約50nm以下の厚さを有する。第4の層76は、約10nm以上約150nm以下、任意選択で約100nm以上約120nm以下の厚さを有する。
【0070】
他の特定の変形形態では、角度の影響を受けない色付きフィルタ50は、緑に相当する所定の波長範囲を持つ反射出力84を有し、ここで極薄反射層52は約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層70は、約100nm以上約200nm以下、任意選択で約185nm以上約195nm以下の厚さを有する。第2の層72は、約10nm以上約200nm以下、任意選択で約145nm以上約155nm以下の厚さを有する。第3の層74は、約10nm以上約200nm以下、任意選択で約35nm以上約45nm以下の厚さを有する。第4の層76は、約100nm以上約200nm以下、任意選択で約135nm以上約145nm以下の厚さを有する。
【0071】
さらに他の変形形態では、角度の影響を受けない色付きフィルタ50は、赤に相当する所定の波長範囲を持つ反射出力84を有し、ここで極薄反射層52は約5nm以上約12nm以下の厚さを有する。第1の層70は、約100nm以上約300nm以下、任意選択で約235nm以上約245nm以下の厚さを有する。第2の層72は、約10nm以上約200nm以下、任意選択で約185nm以上約195nm以下の厚さを有する。第3の層74は、約10nm以上約200nm以下、任意選択で約65nm以上約75nm以下の厚さを有する。第4の層76は、約100nm以上約300nm以下、任意選択で約145nm以上約155nm以下の厚さを有する。
【0072】
特定の態様では、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50は、最小の角度依存性を示し、0°の入射角又は視野角での第1の波長と、60°の入射角での第2の波長との差を比較すると、約80nm以下、任意選択で70nm以下、任意選択で60nm以下の変化である、第2の所定の波長範囲を有する反射出力84に対応する。反射出力の最小の差は、最小の角度依存性と表現することができる。特定の具体的に有利な変形形態では、フィルタ50は、最小の角度依存性を有し、フィルタが0から60°の範囲の入射角から観察される場合、起こり得る入射角の範囲に基づいて(入射角0°で観測された対象の第1波長と、入射角又は視野角60°で観測された第2波長との差を比較すると)50nm以下、任意選択で約45nm以下、任意選択で40nm以下、任意選択で35nm以下、任意選択で30nm以下の差である所定の範囲の波長を有する(たとえば、波長シフトを有する)反射出力を生成することができる。特定の態様では、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50は、上記の最大±60°での最小の波長のばらつきを伴う、光線で色が変化しない外観を有する。
【0073】
図2は、太陽光発電組立体100と共に
図1と同様の色付き反射フィルタ50を備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体90を示す。簡潔にするために、
図1に関連して上記で説明した特徴及び詳細は、ここでは繰り返さないこととする。例示的な太陽光発電デバイス組立体100は、光活性材料層を具備し得る太陽光発電セル110を備える。特定の変形形態では、少なくとも1つの光活性層114は、結晶シリコン(c-Si)材料を含む。したがって、太陽光発電セルには、結晶シリコン(c-Si)パネル、バック・コンタクト型の太陽光発電セル、又は第1の極性を有する第1の電極、第1の電極と反対の極性を有する第2の電極、及び第1の電極と第2の電極との間に配置された少なくとも1つの光活性材料層(たとえば、c-Siを含む)を備える太陽光発電セルが含まれ得る。太陽光発電組立体100はまた、保護層又は封止層などの、太陽光発電セル110を挟む追加の層も備え得る。このように、太陽光発電組立体100の第1の層112は、色付き反射フィルタ50の基板78と太陽光発電セル110との間に配置され、一方太陽光発電セルの反対側には、第2の層114がある。第2の層114は、バックシート116上に配置される。第1及び第2の層は、実例として、エチレン-酢酸ビニル(EVA:ethylene-vinyl acetate)などの、太陽光発電セル110に望ましく入る所定の範囲の波長を有する光に対して、透過的な材料で形成することができる。バックシート116は、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、アルミニウムなどの材料で形成することができる。図示していないが、他の層又は構成要素を備える、さらなる種類の太陽光発電デバイスが、例示的な太陽光発電組立体100に含まれ得ることに留意されたい。
【0074】
図1に関連して述べたように、フィルタ50は、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体90の方に向けられた、所定の波長の第1の範囲を有する電磁波80の第1の部分を透過させることができる。透過された電磁エネルギーを、矢印82で示す。このように、透過された電磁エネルギー82は、フィルタ50を通過し、太陽光発電デバイス100に入る。上記のように、フィルタ50は、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトル/電磁波80の第2の部分を反射して、反射出力84を生成する。透過された電磁エネルギー82の大部分が太陽光発電デバイス100に入るので、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体90は、約15%以上、任意選択で約16%以上、任意選択で約17%以上、特定の態様では、任意選択で約18%以上の電力変換効率(PCE)を生じさせることができる。
【0075】
したがって、特定の変形形態では、本開示は、結晶シリコン(c-Si)PVパネルと、角度の影響を受けないことを示す新しいタンデム型の構成を有しながらも、装飾又は美観をアピールする、望ましい1色又は複数の色を反射する受動色付きフィルタとを具備し得る、PVデバイスを備える組立体を提供する。受動反射フィルタは、上記で論じたように5つの層を備えることができ、ここで半導体(たとえばa-Si)は、屈折率分布型プロファイルを採用することで、下にあるc-SiのPVモジュールによって収集されるべき太陽光スペクトルの大部分を透過できる、透明な誘電体の2つのペア/積層体間に挟まれ、それによって全体的な高効率を実現することができる。このようにして、結晶シリコン(c-Si)太陽光パネル/PVデバイスを、PVデバイスの上に配置される受動色付きフィルタと統合することにより、高効率(たとえば、特定の変形形態では約18%以上)の、角度に耐性のある/角度の影響を受けない色付き太陽電池/太陽光発電デバイス組立体が提供される。さらに、色付きフィルタ・モジュールに備えられる半導体層(たとえばa-Si)の高い屈折率により、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体は、優れた明るさ(ピーク反射率約55%)で、最大±60°の光線で色が変化しない外観を示す。
【0076】
したがって、本開示は、典型的には少なくとも10層の別個の層を備える1次元(1D)フォトニック結晶(PC:photonic crystal)と比較して、層の総数を大幅に減少させながらも、典型的な色付き太陽電池の、角度の影響を受ける問題及び低効率の問題をも克服する、角度の影響を受けない受動色付きフィルタを備える、角度の影響を受けない受動太陽光発電デバイス組立体を提供する。このようにして、この角度の影響を受けない受動太陽光発電デバイス組立体は、建設、自動車、海洋、航空、及び農産業を含む、また、太陽光を収集する表面/コーティング、革新的なソーラ・ビル/ビル統合型太陽光発電(BIPV:building-integrated photovoltaic)、及び太陽光発電式車両(たとえば自動車、オートバイ、ボート)を含む、太陽光発電デバイスを使用できる様々な用途に向けて大きな可能性を有している。本技術は、大規模に実施され、容易に大量生産され得る。
【0077】
図3に示すような特定の代替変形形態では、(
図2に示すような)太陽光発電デバイス100と共に能動色付き反射組立体152を備える、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体150を示す。簡潔にするために、
図2に関連して上記で説明した特徴及び詳細は、それが共通している場合、ここでは繰り返さないこととする。例示的な太陽光発電デバイス組立体100は、図示していないが、非限定的な実例として、第1の極性を有する第1の電極、第1の電極と反対の極性を有する第2の電極、及び第1の電極と第2の電極との間に配置される少なくとも1つの光活性材料層(たとえば、c-Siを含む)を具備することができる、太陽光発電セル110を備える。第1の層112及び第2の層114は、太陽光発電セル110を挟む。第2の層は、
図2に関連して以前に説明したように、バックシート116上に配置される。能動色付き反射組立体152は、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50から、誘電体材料の少なくとも一部を透明電極と置き換えるよう構成されている。したがって、能動色付き反射組立体152は、第3の極性を有する第3の電極160と、第3の極性と反対の第4の極性を有する第4の電極162とを備える。極薄反射層170は、第3の電極160と第4の電極162との間に配置される。極薄反射層170は、たとえば、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む半導体であってもよく、高い屈折率を有し得る。第3の電極160及び第4の電極162は、インジウム・スズ酸化物(ITO)及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの導電性で透過性の材料で形成することができる。図示していないが、追加の層又は構成要素(たとえば、端子など)が、例示的な角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体150内に設けられ得ることに留意されたい。
【0078】
図1及び
図2に関連して述べたように、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体150は、太陽光発電デバイス組立体150の方に向けられた、所定の波長の第1の範囲を有する電磁波80の第1の部分を透過させることができる。透過された電磁エネルギーを、矢印82で示す。このように、透過された電磁エネルギー82は、能動色付き反射組立体152を通過し、太陽光発電デバイス100に入る。以前の実施例と同様に、能動色付き反射組立体152は、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトル/電磁波80の第2の部分を反射して、角度の影響を受けないこと、及び明るいことを含む上記の特性を有する反射出力84を生成する。このように、特定の実施例では、第1の電極(図示せず)、第2の電極(図示せず)、第3の電極160、及び第4の電極162を設けた設計を有する角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体150は、能動色付き反射組立体152及び太陽光発電デバイス100の両方において光子から電流へのさらなる変換を起こす、4端子の太陽光発電デバイス(端子は示していないが、それぞれの電極と電気的に接続されている)を形成することができる。したがって、この角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体150は、所定の色が角度の影響を受けず、且つ所定の色の反射性があることを示すが、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50を組み込む角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体90に関連して説明したものを超えて、太陽光発電デバイス組立体150のPCEをさらに高めることができると考えられる。
【0079】
図14Aに示す別の変形形態では、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体200は、フィルタと太陽光発電デバイスとの両方を規定する能動色付き反射組立体210を備える。簡潔にするために、
図1~
図3に関連して上記で説明した特徴及び詳細は、それが共通している場合、ここでは繰り返さないこととする。例示的な太陽光発電デバイス組立体200は、第1の極性を有する第1の電極220、第1の電極220と反対の極性を有する第2の電極222を備える。第1のドープ層230は、第1の電極220に隣接して配置された正孔輸送層として機能する電荷輸送層であり、一方第2のドープ層232は、第2の電極222に隣接して配置された電子輸送層として機能する電荷輸送層である。
【0080】
第1の電極220及び第2の電極222は、アルミニウムのドープされた酸化亜鉛(AZO)、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、マグネシウム及びガリウムの共ドープされた酸化亜鉛(MGZO)、ホウ素のドープされた酸化亜鉛(BZO)、その組合せなどの、透過的な導電性材料で形成することができる。一変形形態では、第1の電極220は、電子ビーム堆積プロセスによって形成され得るインジウム・スズ酸化物(ITO)を含む。第2の電極222は、アルミニウムのドープされた酸化亜鉛(AZO)で形成することができる。アルミニウムのドープされた酸化亜鉛(AZO)及びインジウム・スズ酸化物(ITO)は、その透過性及び対応する界面層との適合性のため、それぞれアノード及びカソードとして使用できる。図示していないが、さらなる好適な輸送層を使用する場合に、マグネシウム及びガリウムの共ドープされた酸化亜鉛(MGZO)、ホウ素のドープされた酸化亜鉛(BZO)などを含む他の透明電極も使用できることに留意されたい。
【0081】
上記のように、第1のドープ層230は、電荷(たとえば、電子)輸送層であり得る。たとえば、第1のドープ層230は、n型酸化シリコン(SiOX)などのドープされたn型シリコンベースの材料であり得る。実例として、ドープされたn型酸化シリコンは、酸化シリコン(SiOX)材料中に、その外側のレベルにシリコンが有するよりも1個又は複数個電子が多い、リン(P)などのドーパント原子を含めることによって作成できる。この電子は、励起時に供給される。図示のように、第1のドープ層230は単一の層であるが、複数の層を備えてもよい。一変形形態では、n-SiOXを含む第1のドープ層230は、約15nmの厚さを有することができる。
【0082】
第2のドープ層232は、電荷(たとえば、正孔)輸送層であり得る。たとえば、第2のドープ層232は、p型酸化シリコン(SiOX)などのドープされたp型シリコンベースの材料であり得る。実例として、ドープされたp型酸化シリコンは、酸化シリコン(SiOX)材料中に、その外側のレベルにシリコンが有するよりも1個又は複数個電子が少ない、ホウ素(B)又はガリウム(Ga)などのドーパント原子を含めることによって作成できる。ドーパントは、周囲のシリコン原子との結合を形成するために必要な数より少なくとも1個少ない電子を有しているので、電子の空孔又は正に帯電した正孔が励起時に生成される。図示のように、第2のドープ層232は単一の層であるが、複数の層を備えてもよい。一変形形態では、p型SiOXを含む第2のドープ層232は、約10nmの厚さを有することができる。
【0083】
極薄反射層240は、第1のドープ層230と第2のドープ層232との間に配置される。極薄反射層240は、たとえば、アモルファス・シリコン(a-Si)材料を含む半導体であってもよく、高い屈折率を有し得る。極薄反射層240は、上記の材料で形成され、上記の厚さのいずれを有することもできる。一実施例では、極薄反射層240は、アモルファス・シリコン(a-Si)を含み、約11nmの厚さであり得る。
【0084】
このようにして、第1の電極220、第1のドープ層230、超薄反射層240、第2のドープ層232、及び第2の電極222は、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体200を規定するために、太陽光発電セルを備える能動色付き反射組立体210を規定する。第2の電極222は、
図2に関連して以前に説明したように、基板又はバックシート242上に配置される。バックシート242は、一実例として、ガラス材料で形成され得る。能動色付き反射組立体210は、角度の影響を受けない受動色付きフィルタ50から、誘電体材料の少なくとも一部を透明な電極及びn型ドープ層又はp型ドープ層のいずれかと置き換えるよう構成されている。
【0085】
図示していないが、追加の層又は構成要素(たとえば、端子など)が、例示的な角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体200内に設けられ得ることに留意されたい。
【0086】
図1~
図3に関連して述べたように、角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体200は、太陽光発電デバイス組立体200の方に向けられた、所定の波長の第1の範囲を有する電磁波80の第1の部分を透過させることができる。透過された電磁エネルギーを、矢印82で示す。このように、透過された電磁エネルギー82は、太陽光発電デバイスを規定する能動色付き反射組立体210を通って、その中に入る。以前の実施例と同様に、能動色付き反射組立体210は、所定の波長の第2の範囲を有する電磁スペクトル/電磁波80の第2の部分を反射して、角度の影響を受けないこと、及び明るいことを含む上記の特性を有する反射出力84を生成する。このように、特定の実施例では、第1の電極220及び第2の電極222を設けた設計を有する角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体200は、能動色付き反射組立体/太陽光発電デバイス210において光子から電流へのさらなる変換を起こす、太陽光発電デバイス(端子は示していないが、それぞれの電極と電気的に接続されている)を規定する。したがって、この角度の影響を受けない能動色付き太陽光発電デバイス組立体210は、所定の色が角度の影響を受けず、且つ反射性があることを示すが、角度の影響を受けない受動色付きフィルタを備える角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体に関連して説明したものを超えて、一体型太陽光発電デバイス組立体又は補助的な太陽光発電組立体のPCEを高めることもできる。したがって、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体200は、(たとえば、
図3に示すものなどの)能動色付き反射組立体210の下に配置される別の太陽光発電デバイスと結合できる、能動色付き反射組立体210を備える。
【0087】
角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体200が能動色付き反射組立体210を備える場合、誘電体材料のペア(たとえば、ZnSe及びSi3N4)は、好適な正孔/電子輸送層及び透明電極と置き換えられ、それによりデバイスを、能動太陽電池に適合させることができる。ここで、第1のドープ層230及び第2のドープ層232(すなわち、それぞれ電子及び正孔輸送層としてのn型及びp型SiOX)は、極薄反射層240のa-Siと共に、ほぼ完全なバンドの配向(band alignment)を考慮して選択される。アルミニウムのドープされた酸化亜鉛(AZO)及びインジウム・スズ酸化物(ITO)は、それらの透過性及び対応する界面層との適合性のため、それぞれ透明のアノード(たとえば、第1の電極220)及びカソード(たとえば、第2の電極222)として使用される。各層の厚さは、最適な電気的性能のために慎重に選択される。
【0088】
非限定的な実例として、第1の電極220は、約50nm以上約200nm以下、任意選択で約75nm以上約170nm以下の厚さを有することができる。第2の電極222は、約750nm以上約1,500nm(1.5μm)以下、任意選択で約1,000nm(1μm)の厚さを有することができる。第1のドープ層230又は輸送層は、約10nm以上約20nm以下、任意選択で約15nm以上約19nm以下の厚さを有することができる。第2のドープ層232又は輸送層は、約5nm以上約20nm以下、任意選択で約10nm以上約19nm以下の厚さを有することができる。極薄反射層240は、約5nm以上約55nm以下、任意選択で約10nm以上約55nm以下、また任意選択で10nm以上13nm以下の厚さを有することができる。
【0089】
一変形形態では、約75nmの厚さを有する電子ビーム堆積ITOの第1の電極220、約15nmの厚さを有するn型SiO
Xを含む第1のドープ層230、約11nmの厚さを有するa-Siの極薄反射層240、p型SiO
Xを含む第2のドープ層232、約1マイクロメートルの厚さを有する第2の電極222を
図14Aに示す。
【0090】
本発明の技術の様々な実施例は、本明細書に含まれる具体的な実例によってさらに理解することができる。具体的な実例は、本教示による組成物、デバイス、及び方法をどのように作製して使用するかを例示する目的で提供し、特に明記しない限り、この発明の所与の実施例が作製又はテストされたか又はされていないかを表すことを意図していない。
【0091】
実例
【0092】
角度の影響を受けない受動色付きフィルタは、溶融シリカ基板上に層を堆積させることにより製造した。TiO2は、室温で3.0Å/秒の速度で、電子ビーム蒸着によって堆積した。Si3N4、a-Si、及びSiO2は、それぞれ260℃、260℃、及び200℃の温度で4.0Å/秒、0.7Å/秒、及び7.0Å/秒の速度で、プラズマ化学気相堆積(PECVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)を用いて堆積した。
【0093】
スペクトル反射及び透過、角度分解スペクトル、電界強度分布、並びに各誘電体層内の正味位相シフトを計算するための光学シミュレーションは、分光エリプソメータ(M-2000、J. A. Woollam)を使用して調整された材料の屈折率を用いたトランスファ・マトリックス法に基づいた。
【0094】
光学的及び電気的特性評価は、以下のように行った。垂直入射での反射スペクトルは、分光計及び白色光源を統合した薄膜測定装置(F20、Filmetrics)を使って取得した。45°から60°の角度分解反射スペクトル、並びに垂直入射での透過スペクトルの測定は、分光エリプソメータ(M-2000、J. A. Woollam)を使って行った。
【0095】
アルミ箔を使用して、市販のバック・コンタクト型c-Si太陽光パネル(約125mm四方、MAXEON(登録商標)、Sunpower Corporation)の表面を覆い、25mm四方の受動フィルタの中心に22mm
2の開口部を残した。次いで、AM1.5シミュレーション太陽光(100mWcm
-2)の照明下で、電極にMP-160(EKO Instruments)を接続して、統合された色付き太陽電池の電流密度-電圧(J-V)性能を記録した(詳細な設定を
図4に示す)。
【0096】
図5A~
図5Dは、本開示の特定の態様による角度に耐性のある受動フィルタ及びその性能を示す。角度の影響を受けない受動フィルタは、青色を別個に反射させるだけでなく、ただ5つの薄い層内で光学干渉を使用して、全体で高い透過率を生成できる。
図5Aに示すように、極薄a-Si層(約5nm)は、屈折率分布プロファイルを形成する、透過性の誘電体の層の2つの積層体又はペア(窒化ケイ素(Si
3N
4)/二酸化チタン(TiO
2)及びTiO
2/二酸化ケイ素(SiO
2))間に挟まれている。この設計の結果、下の方に結晶シリコン(c-Si)光活性層を組み込んだ太陽光発電デバイスによって収集されるべき太陽光スペクトル全体にわたって、顕著な透過性が得られた(
図5Bに示すように)。角度の影響を受けない受動フィルタで使用されるa-Siの高い屈折率は、設計された色の最終的な強い反射に直接貢献し、
図6でさらに説明しているように、反射のピークは452nmで約40%であった。
【0097】
図6では、中間層として相異なる屈折率の材料を使用する構造体の反射スペクトルを比較している。ここで、青色は動作原理を明確にするための実例として使用し、Si
3N
4、下部のTiO
2、上部のTiO
2、及びSiO
2の対応する厚さはそれぞれ、100nm、50nm、120nm、及び150nmであった。別法として、a-Siの厚さを5nmに維持しながら、これら4種類の誘電体層の厚さを調整することにより、緑と赤の反射出力を簡単に実現できる。
【0098】
多層積層体内の残りの層の厚さは、いずれの場合も同じままであった。a-Si(n=4.80+i0.95、ピーク強度は452nmで約40%)を除いて、そのすべての材料のばらつきは無視した。反射強度のピークは、約450nmのままであり、449nmで26%(n=2.5)、449nmで29%(n=3.0)、450nmで31%(n=3.5)、450nmで35%(n=4.0)、451nmで38%(n=4.5)と、屈折率につれて増加したことは明らかであり、したがって、高い反射性は中間層の高い屈折率によるものであることを証明している。
【0099】
受動フィルタ構造体における様々な誘電体層の厚さを、RGBの色ごとに表1に列挙した。
【0100】
【0101】
図7A~
図7Dは、緑色(
図7A及び
図7C)並びに赤色(
図7B及び
図7D)を反射するフィルタについて、シミュレーションした反射及び透過スペクトル、並びにシミュレーションした角度の作用を提示する。高屈折率の極薄a-Si半導体層が反射ピークの主な要因であり、a-Siの屈折率の実数部は波長が長くなるほど低下することを考慮すると、ピーク反射強度は、a-Siの厚さが5nmで一定の場合、緑色(538nmで37%)及び赤色(666nmで32%)では、対応してより小さくなる。挿入図は、フィルタごとの視覚化された反射色であり、緑色及び赤色を別個に提示している。各層の寸法の概要を、表1に示す。
図7C及び
図7Dでは、緑及び赤のフィルタのシミュレーションした角度の作用を示し、ここで平坦な分散スペクトルは、装飾用途に必要な、角度に耐性のある優れた性能を示した。
【0102】
すべての材料(a-Si、Si
3N
4、TiO
2、及びSiO
2)の屈折率は、分光エリプソメータ(M-2000、J. A. Woollam)を使用することによって特徴づけられ、
図8に提示する。
【0103】
シミュレーション結果と測定結果との間の優れた一貫性は
図5Bから観察することができるが、400nmから600nmまでの測定で観察された透過率が、計算した透過率よりわずかに高いのは、シミュレーション用に調整した材料の屈折率と、製造されたデバイスの屈折率との差に起因する可能性がある。c-Si太陽光発電モジュールと統合するときに追加の屈折率整合層を導入すると、溶融シリカ基板の裏面反射から生じる約3.5%の「バックグラウンド」反射(すなわち、プロットの600nmを超える波長の弱い反射)を抑制することができ、これによって、下にあるc-Siパネル/PVデバイスの吸収性が高まり、反射色純度ばかりでなくデバイス全体のPCEがさらに向上することは、注目に値する。
図5Cでは、シミュレーションしたスペクトル及び測定したスペクトルから計算された反射の色座標(x、y)をCIE1931色度図上に描いており、互いによく一致していることを示している。
【0104】
次に、非偏光の照明下での平坦な分散特性を特徴とする計算された角度分解反射スペクトルを
図9Aに表しており、
図9Bの測定結果との良好な一致を示した。シミュレーションと測定結果との両方から、最大±60°までの視野角に対して、反射ピークはまずまず一定のままであった。これは、本開示が提供する角度の影響を受けない受動フィルタの設計に組み込まれた材料(すなわち、a-Si、TiO
2、及びSi
3N
4)の高い屈折率の直接的な結果である。材料堆積プロセスしか必要でないことを考えると、提案する構造体は、製造コストが低い装飾用PV用途の優れた候補である。
図9Cの周囲光の照明下での黒い背景に対する製造したサンプルの写真は、周囲光の照明下で様々な視野角(0°から60°までの範囲の入射角)で安定した青色が見られ得ることを明確に示した。これは、本受動フィルタ設計の、角度の影響を受けない性能をさらに証明している。黒い背景は、透過光を吸収する、c-Si太陽光発電パネルを模倣するために利用していることに留意されたい。
【0105】
広帯域にわたる透過性及び反射する色付きの外観は、誘電体の積層体における様々な波長での複数の共振によって説明することができる。
図10Aでは、誘電体層ごとに、界面からの2つの反射位相シフト及び伝搬位相の累積を含む、正味の位相シフトをプロットしている。正味の位相シフトが2πの倍数に等しい、すなわち、ファブリペロー(F-P)共振を作り出して反射を低減し、その結果として透過を引き起こす、そうした波長で透過性が効率的に向上した。具体的には、約300nmでの反射の下落は、SiO
2(298nmで共振)及びSi
3N
4(285nmで共振)内部での共振に起因する。400nm及び600nm付近の光の透過率は、すべての層内で同時に複数の共振を励起することで大幅に向上した(SiO
2内では381nm、579nm、及び623nmでの共振、上部のTiO
2内では381nm及び577nmでの共振、下部のTiO
2内では396nm及び572nmでの共振、並びにSi
3N
4内では394nm及び578nmでの共振)。同様に反射は、プロットに提示するように、約800nm、約1000nm、約1100nmを含むより長い波長で、対応する共振によって十分に抑制された(SiO
2内では839nm、943nm、及び1132nmでの共振、上部のTiO
2内では1132nmでの共振、下部のTiO
2内では799nm、974nm、及び1133nmでの共振、並びにSi
3N
4内では803nm、1035nm、及び1134nmでの共振)。太陽光スペクトルのほぼ全体に及ぶ複数の共振により、5層だけを備える本開示の特定の態様にしたがって作製された受動フィルタを使って、広帯域にわたる透過性が達成され、これにより、最終的な統合された太陽電池/PVシステムの全体的なPCEが高まる。
【0106】
一方、隣接する共振間には抑制されない反射が依然として存在した(347nm(16%)、452nm(40%)、662nm(7%)、及び946nm(4%)での反射ピークなど)。というのは、そうした共振が、範囲全体にわたるすべてのポイントをカバーすることはできないからである。他の波長での反射強度と比較してより大きい452nmでの反射強度は、400nm未満の短い波長及び650nmを超えるより長い波長それぞれでの、a-Siの強い吸収性及び低い屈折率の両方に起因し、この場合の構造体の青い反射の外観を直接的にもたらしている。
【0107】
図10Bは、これらの4つの誘電体材料層を後で追加する構造体の、スペクトルの進展を提示する。単一の5nmのa-Si層(黒線)のスペクトルでの波長と共に低減する反射強度は、高い屈折率が直接的に強い反射をもたらすことを明確に示したが、これは上記で提示した説明と一貫している。TiO
2のみを上に置いた直後に、青色の範囲にすぐに強い反射ピークが現れ、約400nmと約600nmとの両方で反射が抑制された。a-Si層の裏側にSiO
2及び他の2つの誘電体を追加することにより、400~500nmの範囲外の反射は、他の透過共振を励起することによってさらに減少し、それによって最適化された構造体が実現した。上部の2つの誘電体(TiO
2及びSiO
2)を使ったスペクトルが、既に、最終結果に非常に近いことは注目に値する。これは、最終的な高い透過率の実現において、上部の誘電体が、下部の積層体よりも重要な要因となることを意味する。
【0108】
一方、広帯域にわたる透過性の高い効率は、屈折率分布型プロファイルを特徴とする誘電体層の反射防止(AR:anti-reflection)効果に起因する。これは、多層構造体の光学表面アドミタンスを視覚的に表す効果的なやり方を提供する、光学アドミタンス図をプロットすることで実証できる。光学アドミタンス
【数1】
は、インピーダンスの逆数で、ε及びμはそれぞれ誘電率及び透磁率であり、光周波数では磁気の影響を無視できるため、材料の複素屈折率に等しい。アドミタンスの軌跡は、透明な誘電体及び完全な導電体に対する円であり、半導体及び実際の金属などの吸収材に対する螺旋である。構造体のアドミタンスは、基板から始まり、厚みが増すにつれて円形又は螺旋状の軌道上を回転する。層状構造体の終端点のアドミタンスと空気のアドミタンス(1,0)との間の距離により、反射強度は
【数2】
で決定され、ここで、Y
0及びY
1はそれぞれ、空気のアドミタンス及び構造体の終端点のアドミタンスを指す。
図11では、300nm、400nm、450nm、600nm、800nm、1000nm、及び1100nmを含む様々な波長における、本開示の特定の態様にしたがって作製された受動反射青色フィルタ構造体のアドミタンス図をプロットした。構造体の終端点のアドミタンスと空気とを結ぶ黒線の長さが、構造体の反射率の測定値を提示している。最終的なアドミタンス位置は、(0.76,-0.07)、(1.04,-0.71)、(4.33,0.40)、(1.22,-0.07)、(1.07,0.07)、(1.16,0.04)、及び(1.04,0.03)であり、それぞれ約2.01%、10.84%、39.37%、1.08%、0.23%、0.58%、及び0.06%の反射に相当する。話を簡単にするために、シリカ基板の裏面反射は、ここでの計算では無視した。450nmでの唯一の強い反射強度は、青い外観及び広帯域にわたる高い透過率をよく説明している。
【0109】
図12は、角度の影響を受けない青色受動反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを組み込んだ、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体(PVシステム)を、受動フィルタがない状態のc-Siパネル太陽光発電と比較した、電流密度-電圧(J-V)特性を測定したものを示す。上部にあるフィルタを通ってc-Siセルで収集される、全体的な透過率が高いため、PVシステム全体で、短絡回路電流密度J
SCは約38.44mAcm
-2、開回路電圧V
OCは約585.0mV、及び曲線因子(FF)は約75.69%を示し、約17.02%のPCEに相当する。これは、色付きフィルタでカバーされない、元のc-Si太陽電池の効率(J
SCは約42.21mAcm
-2、V
OCは約611.2mV、FFは約78.23%で、約20.18%のPCEに相当する)よりも、約3.16%しか低くなかった。この高効率の色付き太陽電池は、従来の色付きPVの低効率の制限を効果的に克服している。前述のように、受動フィルタと下にあるc-Si太陽光発電セルとの間に屈折率整合層を使用し、シリカ基板の背面からの、約3.5%の「バックグラウンド」反射を低減すると、全体のPCEをさらに向上させることができる。
【0110】
昼光への露出を含む実際の用途では、多くの場合、装飾面として使用するためにさらに明るい反射色が必要であり、これは、高屈折率層(たとえば、a-Si層)の厚さを、たとえば5nmから10nmに増やし、より強い反射を生じさせることによって達成できる。青色を実例にとると、416nmで55%のピーク強度を有する(
図13B)青の反射を生成する、様々な層の厚さを有する構造体の概略図を
図13Aに示す。このフィルタ設計では、a-Siの極薄反射層の厚さは約10nm、SiO
2の第1の層の厚さは約145nm、TiO
2の第2の層の厚さは約100nm、TiO
2の第3の層の厚さは約25nm、Si
3N
4の第4の層の厚さは約110nmである。
【0111】
図13Cに、黒の下地と共に、明るい青の反射を示す作製したサンプルの写真を提示する。これは、より大きい反射強度を有する新しい設計の、角度の影響を受けない優れた性能を示している。広帯域の波長範囲にわたって影響を受けない高い透過率に起因して、新しいPVシステムでは、J
SCが約35.23mAcm
-2、V
OCが約582.90mV、FFが約75.43%であるc-Siセルの上部に、より高輝度のフィルタを統合した後で、PCE約15.49%が維持された(
図13D)。さらに、4層の誘電体層(Si
3N
4/TiO
2/TiO
2/SiO
2)の厚さを単に調整することにより、相異なる種類の青色も実験的に実証され、それぞれ455nmで56%、477nmで55%の共振反射であった。これにより、実用的な使用のためのより多くの選択肢を提供する。反射を強化した受動フィルタによって生成された、そうした3種の青色用の構造体の詳細を表2に列挙する。
【0112】
【0113】
様々な態様において、本開示は、角度の影響を受けない受動色付き反射フィルタ及び統合された太陽光発電デバイスを組み込んだ、角度の影響を受けない色付き太陽光発電デバイス組立体を提供する。かかる色付きタンデム型太陽電池システムは、c-Si太陽光パネル/太陽光発電デバイスの上部に受動色付きフィルタを統合することにより、18%を上回るPCEを有する可能性がある。受動色付き反射フィルタには、わずか5つの層しか備えられず、ここで高屈折率の損失が大きい半導体は、2つの誘電体の積層体又はペア間に挟まれている。受動色付き反射フィルタは、屈折率分布型プロファイルを利用する。別個の反射色は、太陽光スペクトル全体にわたる全体的な高い透過率と共に、続いて後者がフィルタの下のc-Si太陽光発電パネルによって収集されると、高いPCEをもたらす。フィルタ・モジュールには高い屈折率の半導体材料が含まれているため、システム全体で、高輝度、及びたとえば最大±60°までの角度の影響を受けない優れた外観を実現する。加えて、誘電体層及び半導体層の厚さを調整することにより、制御可能な強度を持つ様々な反射色を簡単に実現できる。高いPCEを特徴とする本開示が提供する構造体の製造に、単純な堆積方法しか関係しないことを考えると、本教示は、典型的な色付き太陽電池に関連する多くの制限を克服している。
【0114】
角度の影響を受けない緑色の能動太陽電池を実証するために、
図14B(電気的測定のためのパターン化領域)に示すように、
図14Aで説明した設計にしたがって製造した。太陽電池は、
図14Cに提示するように、色を生成するために使用される波長を除いて広帯域にわたる高い透過率を維持し、且つ11nmのa-Siを備えるだけで、追加の2.80%のPCEが得られた(
図14D)。これにより、タンデム型太陽光パネル全体の効率をさらに高めることができる(角度の影響を受けない能動フィルタが、第2の太陽光発電セル/デバイスに結合されている場合)。他の色(青及び赤)も、
図15のシミュレーション結果で示すように、各層の厚さをわずかに調整することで実現できる。本開示にしたがって作製したすべての赤-緑-青(RGB:red-green-blue)色のa-Si太陽電池の詳細な設計は、表1に要約している。
【0115】
【0116】
表3は、本開示の特定の態様にしたがって作製した反射RGB色能動フィルタ付きa-Si太陽電池の、各層の厚さを示す。こうした色付きa-Si太陽電池の形成に関係するすべての材料の堆積条件は以下のとおりであった。最初に、n型SiOXが、210℃の温度でのRF(f=13.56MHz)プラズマ化学気相堆積技法によって作製された。SiH4、H2、及びCO2の流量は、それぞれ2sccm、300sccm、及び3sccmであった。PH3は、SiOX層のn型ドーパントとして使用され、その流量は2sccmであった。堆積圧力及び電力密度は、173.3Pa(1.3Torr)及び69mW/cmであった。堆積速度は、0.8nm/分であった。基板と電極との距離は約20mmであった。
【0117】
p型SiOX層は、200℃の温度でRFプラズマ化学気相堆積技法によって製造された。SiH4、H2、及びCO2の流量は、それぞれ400sccm、2sccm、及び0.5sccmであった。B2H6は、SiOX層のn型ドーパントとして使用され、その流量は0.75sccmであった。堆積圧力及び電力密度は、173.3Pa(1.3Torr)及び69mW/cm2であった。基板と電極との距離は約20mmであった。
【0118】
ITO薄膜は、175℃の基板温度での、反応性熱蒸着によって成長させた。In/Sn合金(Snが10ウェイト%)及び酸素を、ソース材料として使用した。酸素分圧は、0.25Paであった。厚さは75nmで、堆積速度は0.625nm/秒であった。
【0119】
a-Siは、160℃の温度でRFプラズマ化学気相堆積技法によって製造した。SiH4及びH2の流量は、250sccm及び20sccmであった。堆積圧力及び電力密度は、253.3Pa(1.9Torr)及び49mW/cm2であった。
【0120】
AZO電極は、温度:325℃、圧力:0.20Pa(1.5mTorr)、電力:150w、時間:8時間のスパッタリング条件で形成した。
【0121】
本実施例の前述の記載は、例示及び説明の目的で提示してきた。網羅的であること、又は本開示を制限することを意図しない。特定の実施例の個々の要素又は特徴は、全体的に、その特定の実施例に限定されず、適用可能な場合、交換することができ、具体的に図示又は説明されていない場合でも、選択された実施例で使用することができる。同じものが、多くのやり方で変更される場合もある。かかる変形形態は、本開示から外れたものと見なされるべきではなく、すべてのかかる修正形態は、本開示の範囲内に含まれることを意図する。