(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08F 299/06 20060101AFI20230911BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230911BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230911BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20230911BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20230911BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C08F299/06
C08F290/06
C08G18/67
C08G18/73
C08G18/78 031
C08G18/79 020
C08G18/79 080
(21)【出願番号】P 2019089751
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石田 久憲
(72)【発明者】
【氏名】西田 恵子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
(72)【発明者】
【氏名】田村 要
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-330847(JP,A)
【文献】特開2011-190326(JP,A)
【文献】特開平07-228648(JP,A)
【文献】特開2011-190324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08G 18/00-18/87
C08F 2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記イソシアネート化合物(a1)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)と
が水の非存在下で反応した反応物である
、ポリオールで変性されていないウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含有する重合体で構成され
た樹脂粒子であって、
最大圧縮変形率が、5%以下であ
り、前記重合体に、前記ウレタン(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位が含まれない、樹脂粒子。
イソシアネート化合物(a1):分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する
、芳香族イソシアネートモノマー以外のイソシアネートモノマー。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
<最大圧縮変形率>
前記最大圧縮変形率(%)は、下式(Y)により算出される値である。
最大圧縮変形率(%)=100-(保持率) ・・・式(Y)
式(Y)中、「保持率」は、下記式(X)で算出される値である。
保持率(%)=
[{(初期ビーズ径)-(収縮量)}/(初期ビーズ径)]×100 ・・・式(X)
前記「初期ビーズ径」は、製造した樹脂粒子を無作為に抜き取りサンプルとし、荷重を加える前のサンプルの粒子径(μm)について測定される値である。
前記「収縮量」は、熱機械分析装置を使用し、100mN/分で前記サンプルの樹脂粒子に定速荷重をかけ、前記サンプルの樹脂粒子が破断するまで荷重を加え、荷重が1000mNとなったときの粒子径(μm)を「初期ビーズ径」から引いた値である。
【請求項2】
前記イソシアネートモノマーが、脂環族イソシアネートモノマーである、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルモノマー(b)が2-ヒドロキシエチルアクリレートである、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
下記イソシアネート化合物(a2)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)と
が水の非存在下で反応した反応物である
、ポリオールで変性されていないウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含有する重合体で構成され、最大圧縮変形率が、5%以下である、樹脂粒子。
イソシアネート化合物(a2):ビウレット構造、ウレトジオン構造又はヌレート構造を有する
、芳香族イソシアネートモノマー以外のポリイソシアネート。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
<最大圧縮変形率>
前記最大圧縮変形率(%)は、下式(Y)により算出される値である。
最大圧縮変形率(%)=100-(保持率) ・・・式(Y)
式(Y)中、「保持率」は、下記式(X)で算出される値である。
保持率(%)=
[{(初期ビーズ径)-(収縮量)}/(初期ビーズ径)]×100 ・・・式(X)
前記「初期ビーズ径」は、製造した樹脂粒子を無作為に抜き取りサンプルとし、荷重を加える前のサンプルの粒子径(μm)について測定される値である。
前記「収縮量」は、熱機械分析装置を使用し、100mN/分で前記サンプルの樹脂粒子に定速荷重をかけ、前記サンプルの樹脂粒子が破断するまで荷重を加え、荷重が1000mNとなったときの粒子径(μm)を「初期ビーズ径」から引いた値である。
【請求項5】
前記重合体が、前記(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有する、請求項
4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が、500~3000である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
平均粒子径が1~100μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、プラスチック、粘着剤、化粧品等の種々の製品に使用される粒子として、アクリルビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリウレタンビーズ等の樹脂粒子;ガラスビーズ、シリカビーズ等の無機粒子が知られている。
特許文献1にはウレタン化合物とアクリル酸エステルとを含有するモノマーの重合体で構成されているアクリル樹脂からなる樹脂粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの粒子にあっては、製品に含まれる油分を吸収することがあり、耐汚染性が充分ではない場合がある。例えば、ポリウレタンビーズは、柔らかく、弾力性に優れる。しかし、ポリウレタンビーズは、汚染物質を吸着しやすいため、耐汚染性が充分ではない。シリカビーズも、吸油性が高いため、耐汚染性が充分ではない。特許文献1に記載の樹脂粒子は、最大圧縮変形率が60%以上であり、柔らかいため、耐汚染性が充分ではない。
ポリウレタンビーズ、シリカビーズに対し、アクリルビーズ、ガラスビーズ等は、硬く、吸油量が少ないため、耐汚染性に優れる。しかし、ガラスビーズは無機化合物であるため、バインダー樹脂等の有機化合物との相溶性がよくない。また、アクリルビーズは硬いため、汚染性に優れるが、脆く、機械特性が充分ではない。
【0005】
本発明は、耐汚染性に優れながら、機械特性にも優れる樹脂粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の態様を有する。
[1] 下記イソシアネート化合物(a1)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含有する重合体で構成され、最大圧縮変形率が、5%以下である、樹脂粒子。
イソシアネート化合物(a1):分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
[2] 前記イソシアネートモノマーが、脂環族イソシアネートモノマーである、[1]の樹脂粒子。
[3] 下記イソシアネート化合物(a2)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含有する重合体で構成され、最大圧縮変形率が、5%以下である、樹脂粒子。
イソシアネート化合物(a2):ビウレット構造、ウレトジオン構造又はヌレート構造を有するポリイソシアネート。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
[4] 前記重合体が、前記(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかの樹脂粒子。
[5] 前記(メタ)アクリルモノマー(b)の官能基数が、4以上である、[1]~[4]のいずれかの樹脂粒子。
[6] 前記ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が、500~3000である、[1]~[5]のいずれかの樹脂粒子。
[7] 平均粒子径が1~100μmである、[1]~[6]のいずれかの樹脂粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐汚染性に優れながら、機械特性にも優れる樹脂粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの総称である。
本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の総称である。
本明細書において「最大圧縮変形率」は、実施例に記載の方法によって求める。
本明細書において「ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレン換算で算出される値である。
本明細書において「(メタ)アクリルモノマーの官能基数」とは、一分子の(メタ)アクリルモノマーが有する、水酸基の数と(メタ)アクリロイル基の数との合計数である。
本明細書において「体積平均粒子径」は、実施例に記載の方法によって求める。
【0009】
<第1の態様>
本発明の第1の態様の樹脂粒子は、下記の重合体A1で構成され、最大圧縮変形率が5%以下である。
重合体A1:下記イソシアネート化合物(a1)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位を含有する重合体。
イソシアネート化合物(a1):分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
【0010】
イソシアネート化合物(a1)は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基(-NCO)を有するイソシアネートモノマーである。
イソシアネート化合物(a1)としては、機械特性がさらに優れることから、脂肪族イソシアネートモノマー、脂環族イソシアネートモノマーが好ましく、脂環族イソシアネートモノマーがより好ましい。
加えて、イソシアネート化合物(a1)としては、分子内に2つのイソシアネート基(-NCO)を有するジイソシアネートモノマーが好ましい。
【0011】
脂肪族イソシアネートモノマーの好適な具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート等が挙げられる。ただし、脂肪族イソシアネートモノマーはこれらの例示に限定されない。
これらの中でも、本発明の効果が得られやすいことから、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
脂肪族イソシアネートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
脂環族イソシアネートモノマーの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネート-1-1-メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。ただし、脂環族イソシアネートモノマーはこれらの例示に限定されない。
これらの中でも、本発明の効果が得られやすいことから、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
脂環族イソシアネートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
(メタ)アクリルモノマー(b)は、分子内に少なくとも1つの水酸基と、分子内に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
(メタ)アクリルモノマー(b)の官能基数は、2以上である。(メタ)アクリルモノマー(b)の官能基数は、樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなることから、4以上が好ましく、6以上がより好ましい。
【0014】
(メタ)アクリルモノマー(b)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(官能基数:2)、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(官能基数:2)、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(官能基数:2)、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート(官能基数:2)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(官能基数:4)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(官能基数:6)等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。ただし、(メタ)アクリルモノマー(b)は、これらの例示に限定されない。
これらの中でも、樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなることから、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリルモノマー(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
重合体A1は、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位を含有する。重合体A1は、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有してもよい。また、重合体A1は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位及び(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位以外の他の構成単位をさらに含有してもよい。
【0016】
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)は、イソシアネート化合物(a1)と(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物である。
(メタ)アクリルモノマー(b)は分子内に少なくとも1つの水酸基を有するため、水酸基(-OH)とイソシアネート化合物(a1)のイソシアネート基(-NCO)とが反応し、ウレタン結合(-NH-CO-)が形成される。ウレタン結合の形成により、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)が生成する。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)の数平均分子量は、500~1500が好ましく、500~1000がより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)の数平均分子量が前記下限値以上であると、樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。ウレタン(メタ)アクリレート(c1)の数平均分子量が前記上限値以下であると、樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)の数平均分子量は、例えば、イソシアネート化合物(a1)と(メタ)アクリルモノマー(b)との組合せの選択によって調節できる。
【0018】
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)は、機械特性がさらに優れることから、トルエンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートモノマー以外のイソシアネート化合物(a1)と(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物が好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)は、耐汚染性がさらに優れることから、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオールとイソシアネート化合物(a1)との反応物以外のウレタン樹脂が好ましい。
【0019】
重合体A1における他の構成単位としては、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)と共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位であれば、特に限定されない。
他のモノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、他のモノマーは、これらの例示に限定されない。
他のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合体A1において、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位の割合は、重合体A1:100質量%に対して、10~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、40~100質量%がさらに好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位の割合が前記下限値以上であると、本発明の樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位の割合が前記上限値以下であると、本発明の樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。
重合体A1が、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有する場合、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合は、重合体A1:100質量%に対して、0~90質量%が好ましく、0~70質量%がより好ましく、0~60質量%がさらに好ましい。
(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合が前記下限値以上であると、本発明の樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合が前記上限値以下であると、本発明の樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。
【0021】
本発明の第1の態様の樹脂粒子の最大圧縮変形率は、5%以下であり、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。最大圧縮変形率の下限値は、特に限定されない。
本発明の第1の態様の樹脂粒子においては、最大圧縮変形率が5%以下であることから、樹脂粒子が硬くなり、耐汚染性がよくなる。
【0022】
本発明の第1の態様の樹脂粒子の平均粒子径は、1~100μmが好ましく、1~30μmがより好ましく、1~10μmがさらに好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径が前記下限値以上であると、本発明の樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。樹脂粒子の平均粒子径が前記上限値以下であると、本発明の樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。
【0023】
(樹脂粒子の製造方法)
本発明の樹脂粒子は、例えば、下記の重合工程と溶媒除去工程とを有する製造方法によって製造できる。
重合工程:ウレタン(メタ)アクリレート(c1)を含む樹脂液を調製し、樹脂液と溶媒とラジカル重合開始剤とを含む樹脂混合液を水性分散媒に懸濁させて重合用懸濁液を調製し、重合用懸濁液を重合反応に使用する工程。
溶媒除去工程:重合工程で得られた重合液から溶媒を除去し、次いで、水分を除去して樹脂粒子を回収する工程。
【0024】
重合工程で使用する樹脂液は、イソシアネート化合物(a1)と(メタ)アクリルモノマー(b)とを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(c1)を合成し、調製する。
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)を合成する際には、耐汚染性がさらに優れることから、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオールを使用しないことが好ましい。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレート(c1)を合成する際には、ウレタン化触媒を添加してもよい。ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチルスズラウレート等の金属系触媒、トリエチルアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。
【0026】
重合の際には、水等の水性分散媒に懸濁安定剤を添加してもよい。懸濁安定剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド系、第3燐酸塩類等が挙げられる。
【0027】
重合溶媒を除去する際には、重合後の重合液を加熱してもよい。その後、水分を除去する際には、固液分離によって樹脂粒子を分離し、乾燥して回収してもよい。
用途に応じて、乾燥した樹脂粒子以外の形態が望ましい場合には、場合によっては溶媒除去工程等を省き、樹脂粒子を含む水分散液を得てもよい。
【0028】
(作用効果)
本発明の第1の態様の樹脂粒子は、ウレタン(メタ)アクリレート(c1)に基づく構成単位を含有する重合体A1で構成されるため、ポリウレタンビーズの特長である弾力性とアクリルビーズの特長である硬さをともに具備する。そのため、樹脂粒子の弾力性と硬さが維持され、樹脂粒子の機械特性がよくなるとともに、耐汚染性がよくなる。加えて、樹脂粒子の最大圧縮変形率が5%以下であるため、樹脂粒子が適度な硬さを具備し、耐汚染性がよくなる。
したがって、本発明の第1の態様の樹脂粒子は、耐汚染性に優れながら、機械特性にも優れる。
【0029】
<第2の態様>
本発明の第2の態様の樹脂粒子は、下記の重合体A2で構成され、最大圧縮変形率が、5%以下である。
重合体A2:下記イソシアネート化合物(a2)と下記(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位を含有する重合体。
イソシアネート化合物(a2):ビウレット構造、ウレトジオン構造又はヌレート構造を有するポリイソシアネート。
(メタ)アクリルモノマー(b):分子内に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー。
【0030】
イソシアネート化合物(a2)は、ビウレット構造、ウレトジオン構造又はヌレート構造を有するポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、分子内に少なくとも2以上のイソシアネート基(-NCO)を有するジイソシアネートモノマーのプレポリマーであると言える。
例えば、3分子のジイソシアネートモノマーをジイソシアネートポリマーの3量体として、ビウレット構造又はヌレート構造を有するプレポリマーを合成してもよい。ジイソシアネートモノマーのプレポリマーは、通常、末端にイソシアネート基(-NCO)を有する。
イソシアネート化合物(a2)であるポリイソシアネートとしては、機械特性がさらに優れることから、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが好ましく、脂環族ポリイソシアネートがより好ましい。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートの誘導体が好ましい。脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート等が挙げられる。ただし、脂肪族ジイソシアネートはこれらの例示に限定されない。
これらの中でも、本発明の効果が得られやすいことから、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体であるヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートが好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
脂環族ポリイソシアネートとしては、脂環族ジイソシアネートの誘導体が好ましい。脂環族ジイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネート-1-1-メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。ただし、脂環族ジイソシアネートはこれらの例示に限定されない。
これらの中でも、本発明の効果が得られやすいことから、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネートの誘導体であるイソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネートが好ましい。
脂環族ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート化合物(a2)は、合成したポリイソシアネートでも、市販のポリイソシアネートでもよい。
【0033】
重合体A2は、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位を含有する。重合体A2は、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有してもよい。また、重合体A2は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位及び(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位以外の他の構成単位をさらに含有してもよい。
第2の態様における(メタ)アクリルモノマー(b)の詳細及び好ましい態様は、上述の<第1の態様>において(メタ)アクリルモノマー(b)について説明した内容と同内容である。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)は、イソシアネート化合物(a2)と(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物である。
(メタ)アクリルモノマー(b)が分子内に少なくとも1つの水酸基を有するため、水酸基(-OH)と、イソシアネート化合物(a2)が有するイソシアネート基(-NCO)とが反応し、ウレタン結合(-NH-CO-)が形成される。ウレタン結合の形成により、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)が生成する。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)の数平均分子量は、500~3000が好ましく、500~1500がより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)の数平均分子量が前記下限値以上であると、樹脂粒子の機械特性がよくなる。ウレタン(メタ)アクリレート(c2)の数平均分子量が前記上限値以下であると、樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)の数平均分子量は、例えば、イソシアネート化合物(a2)と(メタ)アクリルモノマー(b)との組合せの選択によって調節できる。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)は、機械特性がさらに優れることから、トルエンジイソシアネートの誘導体等の芳香族ポリイソシアネート以外のイソシアネート化合物(a2)と(メタ)アクリルモノマー(b)との反応物が好ましい。すなわち、イソシアネート化合物(a2)は、芳香族ポリイソシアネート以外のポリイソシアネートが好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)は、耐汚染性がさらに優れることから、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオールとイソシアネート化合物(a2)との反応物以外のウレタン樹脂が好ましい。すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)は、ポリオール由来の化学構造を有さないことが好ましい。
【0037】
重合体A2における他の構成単位としては、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)と共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位であれば、特に限定されない。
他のモノマーの具体例としては、上述の<第1の態様>において説明した他のモノマーと同様の化合物が挙げられる。
【0038】
重合体A2において、ウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位の割合は、重合体A2:100質量%に対して、40~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、60~100質量%がさらに好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位の割合が前記下限値以上であると、本発明の樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。
ウレタン(メタ)アクリレート(c2)に基づく構成単位の割合が前記上限値以下であると、本発明の樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。
重合体A2が、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位をさらに含有する場合、(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合は、重合体A2:100質量%に対して、0~60質量%が好ましく、0~50質量%がより好ましく、0~40質量%がさらに好ましい。
(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合が前記下限値以上であると、本発明の樹脂粒子の機械特性がさらによくなる。(メタ)アクリルモノマー(b)に基づく構成単位の割合が前記上限値以下であると、本発明の樹脂粒子の耐汚染性がさらによくなる。
【0039】
本発明の第2の態様の樹脂粒子の平均粒子径の詳細及び好ましい態様は、第1の態様の樹脂粒子について説明した内容と同内容である。
【0040】
本発明の第2の態様の樹脂粒子は、上述の<第1の態様>で説明した樹脂粒子の製造方法において、イソシアネート化合物(a1)の代わりに、イソシアネート化合物(a2)を使用して、(メタ)アクリルモノマー(b)と反応させてウレタン(メタ)アクリレート(c2)を得て樹脂液を調製する点以外は、第1の態様の樹脂粒子と同様にして製造できる。
【0041】
(作用効果)
本発明の第2の態様の樹脂粒子は、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含有する重合体A2で構成されるため、ポリウレタンビーズの特長である弾力性とアクリルビーズの特長である硬さをともに具備する。そのため、樹脂粒子の弾力性と硬さが維持され、樹脂粒子の機械特性がよくなるとともに、耐汚染性がよくなる。加えて、樹脂粒子の最大圧縮変形率が5%以下であるため、樹脂粒子が適度な硬さを具備し、耐汚染性がよくなる。
したがって、本発明の第2の態様の樹脂粒子は、耐汚染性に優れながら、機械特性にも優れる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0043】
<略号>
(イソシアネート化合物)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン株式会社製「IPDI」)。
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー株式会社製「HDI」)。
・TDI:トルエンジイソシアネート(東ソー株式会社製「コロネート T-100」)。
・IPDIヌレート:ヌレート構造を有するイソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート(エボニックジャパン株式会社製「VESTANAT T1890/100」)。
・HDIヌレート:ヌレート構造を有するヘキサメチレンイソシアネート系ポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネート TKA-100」)。
・HDIビウレット:ビウレット構造を有するヘキサメチレンイソシアネート系ポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネート 24A-100」)。
【0044】
((メタ)アクリルモノマー)
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(官能基数:2)。
・PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(官能基数:4)。
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(官能基数:6)。
【0045】
・PTMG650:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製「グレード:PTMG650」)。
・UB-1921S:ガラスビーズ(ユニチカ株式会社製「Sシリーズ、UB-1921S」)。
・SE-006T:アクリルビーズ(根上工業株式会社製「アートパール、SEシリーズ、SE-006T」)。
【0046】
<測定方法>
(ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量)
ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレン換算で求めた。測定条件を以下に示す。
・装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
・カラム:東ソー株式会社製、「TSKgel G4000HXL・G3000HXL・G2000HXL・G2000HXL」、サンプル用4本、リファレンス用2本
・ガードカラム:東ソー株式会社製、「TSK guardcolumn HXL-L」
・サンプル濃度:各例で得たウレタン(メタ)アクリレートの濃度が0.3質量%になるようにテトラヒドロフランで希釈した。
・移動相溶媒:THF
・流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
【0047】
(体積平均粒子径)
樹脂粒子の体積平均粒子径は、粒度分布測定機(株式会社島津製作所社製「SALD-2100」)を使用して測定した。
【0048】
(保持率)
樹脂粒子の保持率(%)は、下式(X)により算出した。
保持率(%)=[{(初期ビーズ径)-(収縮量)}/(初期ビーズ径)]×100 ・・・式(X)
ここで、「初期ビーズ径」は、製造した樹脂粒子から1粒を無作為に抜き取りサンプルとし、荷重を加える前のサンプルの粒子径(μm)について測定した。
次いで、熱機械分析装置(株式会社リガク社製「Thermo plus EVO TMA 8310」)を使用して、100mN/分でサンプルに定速荷重をかけ、サンプルの樹脂粒子が破断するまで荷重を加え、荷重が1000mNとなったときの粒子径(μm)を「初期ビーズ径」から引いて、「収縮量」を算出した。
【0049】
(最大圧縮変形率)
最大圧縮変形率(%)は、下式(Y)により算出した。
最大圧縮変形率(%)=100-(保持率) ・・・式(Y)
式(Y)中、「保持率」は、前記式(X)で算出される値である。
【0050】
(TMA:熱機械分析)
製造した樹脂粒子から1粒を無作為に抜き取り、サンプルとした。サンプルについて、熱機械分析装置(株式会社リガク社製「Thermo plus EVO TMA 8310」)を用い、下記の手順にて樹脂粒子の破断の有無を記録した。
1)温度が30℃で一定の条件下で、サンプルに100mN/分で定速荷重をかけ、荷重を1000mNまで上昇させた。
2)荷重が1000mNに達した際のサンプルの破断の有無を肉眼で観察した。
【0051】
(吸油量)
製造した樹脂粒子をオレイン酸に分散させて、樹脂粒子とオレイン酸との混合物に流動性が生じるときの、樹脂粒子40gあたりのオレイン酸の質量(g)を吸油量(g)とした。
【0052】
<実施例1(参考例1)>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、PETA:648gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.2gと、IPDI:72gと、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.4gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:716の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:6)と多官能アクリルモノマー(PETA)とを含有する樹脂液(I)を得た。樹脂液(I)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(I)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
次に、2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水:600gを仕込み、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製「メトローズ90SH-100」):24.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、トルエン:100g、樹脂液(I):300g、ラジカル重合開始剤であるベンゾイルパーオキサイド:0.3g及び2,2’-アゾビス(2,2-ジメチルバレロニトリル):1.2gを混合して、樹脂混合液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数:400rpmで攪拌しながら、前記樹脂混合液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を50℃に昇温し、2時間反応させ樹脂粒子を得た(重合工程)。次いで、100℃に昇温し、1時間保持して、粒子内部からトルエンを揮発させた(溶媒除去工程)。これにより、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した固形物を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、体積平均粒子径:7.4μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例1で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して40質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して60質量%であった。
【0053】
<実施例2>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、HEA:368gと、IPDI:352gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:536の2官能ウレタンアクリレートで構成されている樹脂液(II)を得た。樹脂液(II)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(II)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(II):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:5.4μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例2で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して100質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して0質量%であった。
【0054】
<実施例3>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、DPHA:626gと、IPDIヌレート:151gと、トルエン:333gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):1.1g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):1.1gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:1361の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:15)で構成されている樹脂液(III)を得た。樹脂液(III)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(III)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(III):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:6.2μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例3で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して70質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して30質量%であった。
【0055】
<実施例4(参考例4)>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、DPHA:691gと、HDI:29gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:957の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:10)で構成されている樹脂液(IV)を得た。樹脂液(IV)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(IV)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(IV):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:6.2μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例4で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して35質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して65質量%であった。
【0056】
<実施例5>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、DPHA:612gと、IPDIヌレート:197gと、トルエン:346gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):1.1g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):1.1gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:2794の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:15)で構成されている樹脂液(V)を得た。樹脂液(V)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(V)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(V):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:7.9μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例5で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して90質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して10質量%であった。
【0057】
<実施例6>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、HEA:274gと、HDIヌレート:446gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:1309の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:3)で構成されている樹脂液(VI)を得た。樹脂液(VI)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(VI)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(VI):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:5.3μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例6で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して100質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して0質量%であった。
【0058】
<実施例7>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、HEA:283gと、HDIビウレット:437gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:1218の多官能ウレタンアクリレート(官能基数:3)で構成されている樹脂液(VII)を得た。樹脂液(VII)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(VII)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(VII):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:5.2μmの球状の樹脂粒子を得た。
ここで、実施例7で製造した樹脂粒子を構成する重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して100質量%であった。また、(メタ)アクリルモノマーに基づく構成単位の割合は、重合体100質量%に対して0質量%であった。
【0059】
<比較例1>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、HEA:126gと、IPDI:241gと、PTMG650:353gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:1698の2官能ウレタンアクリレートで構成されている樹脂液(VIII)を得た。樹脂液(VIII)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(VIII)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(VIII):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:5.6μmの球状の樹脂粒子を得た。
【0060】
<比較例2>
まず、温度計と冷却管と攪拌装置とを備えた1Lの4口フラスコに、HEA:411gと、TDI:309gと、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤):0.8g、ジブチルスズジラウレート(ウレタン化触媒):0.8gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させ、数平均分子量:486の2官能ウレタンアクリレートで構成されている樹脂液(IX)を得た。樹脂液(IX)の赤外線吸収スペクトルを測定し、樹脂液(IX)中にイソシアネート残基が観測されなくなったことを確認した。
このようにして得られた樹脂液(IX):300gを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合液を調製し、重合工程、溶媒除去工程を行い、水中に樹脂粒子が分散したスラリーを得た後、体積平均粒子径:3.3μmの球状の樹脂粒子を得た。
【0061】
<比較例3、4>
市販のガラスビーズ:UB-1921Sを比較例3のサンプルとして使用した。
市販のアクリルビーズ:SE-006Tを比較例4のサンプルとして使用した。
【0062】
各例で使用したイソシアネート化合物、(メタ)アクリルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量、官能基数を表1に示した。
各例で得られた樹脂粒子について、上述の記載方法にしたがって、各性状値を測定した結果、TMAの結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
実施例1~7では、得られた樹脂粒子の最大圧縮変形率が本発明で規定する範囲内である。実施例1~7ではいずれも吸油量が50g以下であり、比較例3、4のガラスビーズ、アクリルビーズと同水準の吸油量であった。このことから、耐汚染性に優れる樹脂粒子が得られたことを確認できた。加えて、実施例1~7では、TMAを行った後に粒子に破断が観察されなかったことから、機械特性に優れる樹脂粒子が得られたことを確認できた。
比較例1、2では、最大圧縮変形率が5%を超えるため、本発明で規定する範囲外である。比較例1では、吸油量が実施例1~7と比較して高くなり、耐汚染性が不充分であった。比較例2では、TMAを行った後に粒子に破断が観察され、機械特性が不充分であった。
以上の実施例の結果から、耐汚染性に優れながら、機械特性にも優れる樹脂粒子が得られたことを確認した。