(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】土砂搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 53/30 20060101AFI20230911BHJP
B65G 11/14 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B65G53/30 Z
B65G11/14 Z
(21)【出願番号】P 2019195275
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391008320
【氏名又は名称】株式会社初田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和寛
(72)【発明者】
【氏名】寺本 健
(72)【発明者】
【氏名】筒井 信行
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-327602(JP,A)
【文献】特開2019-027047(JP,A)
【文献】実開昭53-089725(JP,U)
【文献】特開昭52-049563(JP,A)
【文献】実開昭57-131928(JP,U)
【文献】実開昭47-033010(JP,U)
【文献】実開昭58-056707(JP,U)
【文献】特開昭53-146471(JP,A)
【文献】実開昭62-168011(JP,U)
【文献】特開2008-267112(JP,A)
【文献】米国特許第04171852(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 53/30
B65G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込み構造により長手方向に連結可能な樋と、吐水口の向きを任意の角度に調節可能であって水量調節機能を有するノズルと、少なくとも一つの前記ノズルを支持し、前記樋の任意の位置に着脱可能な支持部材と、を有する土砂搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時等に発生した土砂を搬出し除去するのに適した土砂搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば災害等で発生した土砂を排除する場合、現地の状況によっては重機を使用することができないことがあり、人力によって作業をする場合が多い。
【0003】
作業はスコップ等で堆積している土砂を掘り起こし、土のう袋や運搬用容器などに移し(掘削作業)、一定量が溜まれば搬出する(運搬作業)ということを繰り返す。
【0004】
しかし、搬出作業では、容器等に移した土砂の量が多いと、一人で持ち運ぶのが困難であり、二人以上を要することになるため、限られた人数で作業を行わなければならない状況では、一人で運べる程度の少量の土砂を繰り返し運搬しなければならず、作業者の肉体的な負担が大きくなる。
【0005】
さらに、運搬用に十分な通路を確保できない住居内の場合、運搬用容器等を人伝いに送らざるを得ず、多くの人員が必要となるだけでなく、容器はバケツ等の持ちやすく小さなものを使用するため、一回に搬出できる量が少なく、作業効率が低くなる。
【0006】
運搬には一輪車等の軽便な運搬車両を使用することもあるが、人力で運び出す場合より広い通路の確保が必要であり、建物内部で使用することは難しく、屋外であっても急傾斜地や狭隘な通路では、滑落や転倒など却って危険な状況になることもあるため、使用できる場所や状況は限られている。
【0007】
また、運搬するため土砂を土のう袋や容器に移す際には、ガラスや瀬戸物の破片によってケガをするなどの危険が存在しており、体力の消耗に伴い、注意力が低下することで事故の発生も増加する。
【0008】
この作業については、既にいくつかの先行技術(例えば特許文献1,2)が考案されているが、いずれも複数人で作業を行わなければならないこととケガや事故の防止を解決すべき課題として取り上げている。
【0009】
このような状況は一般市民だけでなく、災害直後に消防隊が現地で土砂に埋まった人を救出する場合でも同じような作業を行っている。
【0010】
公設の消防機関や自衛隊等には、ベルトコンベアー等の機材が配備されていることもあるが、高価であるため一般市民が購入するのは困難であり、管理も難しいだけでなく、操作には知識が必要であるとともに、機器自体が大型であるため、却って搬入作業に人員を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-43831号公報
【文献】特開2014-177839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、堆積した土砂を速やかに搬出し、且つ作業者の肉体的な負担の軽減と安全を確保するために、軽量で、搬入、組み立てが容易な土砂搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る土砂搬送装置は、差込み構造により長手方向に連結可能な樋と、吐水口の向きを任意の角度に調節可能であって水量調節機能を有するノズルと、少なくとも一つの前記ノズルを支持し、前記樋の任意の位置に着脱可能な支持部材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る土砂搬送装置によれば、差込み構造により長手方向に連結可能な樋は、軽量にすることができるため、搬入及び連結による組み立てが容易である。樋は下り勾配の傾斜を持つように配置される。ノズルを支持させた支持部材を樋に取り付け、ノズルにホースを連結し、ホースを通じてノズルの吐出口から水を吐出させることで、水流により樋上を土砂が押し流される。それにより、土砂の運搬に要する労力をできるだけ少なくすることで、土砂の掘削により多くの人員を配置して土砂の排出能力を大幅に改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る土砂搬送装置の構成要素である樋と、ノズルを取り付けた支持部材を樋に設置する前の状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の構成要素である樋を連結した状態図である。
【
図3】本発明に係る土砂搬送装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る土砂搬送装置の構成要素であるノズルの一実施形態を拡大して示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る土砂搬送装置のノズル2本を支持部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5の支持部材の一部を切り欠き、ボルトを外した状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係る土砂搬送装置の構成要素である樋を示し、
図7(a)は側面図、
図7(b)は正面図、
図7(c)は平面図である。
【
図8】本発明に係る土砂搬送装置の構成要素である支持部材を示し、
図8(a)は側面図、
図8(b)は正面図、
図8(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る土砂搬送装置の実施形態について、以下に
図1~
図8を参照して説明する。
【0017】
土砂搬送装置1は、差込み構造により長手方向に連結可能な樋2と、吐水口3aの向きを任意の角度に調節可能であって水量調節機能を有するノズル3と、少なくとも一つの前記ノズル3を支持し、前記樋2の任意の位置に着脱可能な支持部材4と、を有する。
【0018】
樋2は、上部が解放された樋本体2aと、差込み構造の差し口2bと、差込み構造の受け口2cとを備えることができる。差し口2bは、樋本体2aの長さ方向の一方の端部に設けられる。受け口2cは、樋本体2aの長さ方向の他方の端部に設けられる。差し口2bを受け口2cに差し込むことにより、同一形状の樋2を連結することができる構造とされている。
【0019】
差し口2bは角パイプまたは丸パイプとし、受け口2cは差し口のパイプが挿入できる径を有した同一形状のパイプ状とすることができる。なお、差込み構造であれば、差し口と受け口の他の構造でもよい。
【0020】
樋本体2aの一方の端部には、樋2を長さ方向に連結した際に段差が生じることを防ぐとともに、継ぎ目からの漏水を軽減させるため、樋本体2aの形状に沿って成型した受け板2dが樋本体2aの外周に沿って取り付けられる。
【0021】
樋2は、多角形又は半円形又は多角形と半円形を組み合わせた断面形状とすることができる。樋2は、金属あるいは樹脂の薄板で形成することができ、軽量化が可能である。
【0022】
ノズル3を固定した支持部材4は、樋2の上部から樋2の長手方向の任意の位置に設置される。
【0023】
支持部材4は、金属板の両端を略直角に折り曲げて、コ形状とし、折り曲げた辺に六角ナット4a等を取付け、ボルト4bで樋2に固定できるようにすることができる。支持部材4は、ノズル3を挿入する孔4c及びノズル3を固定するボルトを通す穴4dが形成されている(
図8)。
【0024】
ノズル3は一次側にホース5が接続できる構造とされ、先端の吐水口3aは自在継手構造を有し、吐水口3aの向きを任意の角度に動かして角度調整し、任意の方向に向かって放水することができる。
【0025】
また、ノズル3には、必要な水圧、水量を確保できるよう調節するためのレバーハンドル式ボールバルブ3bが設けられている。
【0026】
ホース5は、例えば水道管或いはポンプ機能を持った車両(消防ポンプ車等)に接続された配水管又はホースに接続される。
【0027】
樋2の設置の際は、樋2の下部に木片やブロック6等を設置し、流路の長さや土砂の状況に合わせた勾配にする。
【0028】
現場はさまざまな状況であり、流路を曲げる必要がある場合、曲がり部材を使用すると効果的な流路を確保できないだけでなく、足場が不安定な状態で使用することになった場合、安全に作業することが担保されなくなる。
【0029】
このような状況では、
図3に示すように、上流の樋2の終端部を下流の樋2の側端部に乗せることで、任意の角度で流路を設定することができる。
【0030】
流路が長い場合、勾配が取れないことも考えられるが、例えば終端部に網等の水切りのできる泥受け容器を設置し、改めて勾配を持たせた流路を追加して設置すれば解決できる。
【0031】
上記構成を有する土砂搬送装置によれば、樋2は軽量に形成することができるため、土砂などの搬出現場への搬入が容易であり、また、差込み構造により連結による組み立ても容易である。ノズル3を支持させた支持部材4は、樋2の任意の位置に取り付けることができるため、土砂が流れやすい位置に適宜調節して取り付けることができる。
【0032】
土砂搬送装置を使用して土砂の運搬に要する人員を削減又は無くすことで、掘削作業に人員をより多く割り当てることができるため、現状に比べて作業を短時間で終わらせることができる。
【0033】
特に消防隊、自衛隊等の救助作業においては、要救助者を短時間で土砂から救出することで、人命救助の効果を高めることが期待できる。
【0034】
次に、作業者の疲労に伴う注意力の低下によるケガや事故の発生という問題は、掘削作業に人員を多く配置し、作業者の肉体的負担を分散、軽減させることで減少させる効果が期待できる。
【0035】
さらに、高齢化地域では、住民だけでなく消防団員の高齢化や不足が原因となる、住民が行う復旧作業の長期化に対しても、効果を期待することができる。
【0036】
また、土砂だけでなく火山噴火による降灰が発生した場合、災害派遣等の公的機関の援助は期待できないため、水道管のような給水設備に被害が及んでいない場合にあっては、組立て及び操作方法が単純であることから、一般市民でも容易に使用することができる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 土砂搬送装置
2 樋
3 ノズル
4 支持部材