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特許7345858大規模エネルギー貯蔵のための金属-水素バッテリー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】大規模エネルギー貯蔵のための金属-水素バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20230911BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20230911BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230911BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20230911BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20230911BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20230911BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20230911BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20230911BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01M12/08 S
H01M4/90 M
H01M4/86 M
H01M4/80 C
H01M4/24 Z
H01M4/74 C
H01M4/52
H01M4/50
H01M4/66 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020505397
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2018045816
(87)【国際公開番号】W WO2019032704
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】62/544,508
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ツイ, イー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ウェイ
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102534283(CN,A)
【文献】特表昭61-501352(JP,A)
【文献】特開平06-093486(JP,A)
【文献】特表2007-518244(JP,A)
【文献】特公昭47-012458(JP,B1)
【文献】I.ARUL RAJ et al.,Transition metal-based cathodes for hydrogen evolution in alkaline solution: electrocatalysis on nickel-based ternary electrolytic codeposits,Journal of Applied Electrochemistry,1992年,Vol.22,pp.471-477
【文献】Wenchao Sheng et al.,Non-precious metal electrocatalysts with high activity for hydrogen oxidation reaction in alkaline electrolytes,Energy & Environmental Science,2014年,Vol.7, Issue 5,pp. 1719-1724
【文献】Di Gao et al.,Three-Dimensional Dendritic Structures of NiCoMo as Efficient Electrocatalysts for the Hydrogen Evolution Reaction,ACS Appl. Mater. Interfaces,2017年,Vol.9 Issue 27,pp.22420-22431
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06-08
H01M 10/24-30
H01M 4/02-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-水素バッテリーであって、該金属-水素バッテリーは、
第1の電極;
充電の際に水素ガスを生成させそして放電の際に水素ガスを酸化させる第2の電極;および
該第1の電極と該第2の電極との間に配置された電解質、
を含み、
ここで、該第2の電極は、該第2の電極において水素放出反応および水素酸化反応の両方を触媒するように、第2の導電性基材および該第2の導電性基材上に配置された二元機能触媒を含み、
ここで、該二元機能触媒は、ニッケル-モリブデン-コバルト合金を含み、そして相互連絡したナノ粒子の形態であり、該相互連絡したナノ粒子の間に形成されたナノ孔を有する、
金属-水素バッテリー。
【請求項2】
前記第2の電極は、前記第2の導電性基材を覆う第2のコーティングを含み、該第2のコーティングは、前記二元機能触媒を含む、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項3】
前記第2の導電性基材は多孔性である、請求項2に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項4】
前記第2の導電性基材は、発泡金属または発泡合金を含む、請求項2に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項5】
前記第1の電極は、第1の導電性基材および該第1の導電性基材を覆う第1のコーティングを含み、該第1のコーティングは、遷移金属を含むレドックス反応性材料を含む、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項6】
前記第1の導電性基材は多孔性である、請求項5に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項7】
前記第1の導電性基材は、発泡金属または発泡合金を含む、請求項5に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項8】
前記第1の導電性基材は、金属メッシュまたは金属合金メッシュを含む、請求項5に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項9】
前記遷移金属はニッケルである、請求項6に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項10】
前記遷移金属はコバルトである、請求項6に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項11】
前記遷移金属はマンガンである、請求項6に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項12】
前記第1のコーティングは、前記レドックス反応性材料のマイクロ構造体を含む、請求項6に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項13】
前記第1の電極は、遷移金属を含む金属箔を含む、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項14】
前記電解質は水性電解質である、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項15】
前記電解質はアルカリ性である、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項16】
前記第1の電極、前記第2の電極、および前記電解質が内部に配置される囲いをさらに含み、該囲いは、入口バルブ、該入口バルブに流体接続されている入口、出口バルブ、および該出口バルブに流体接続されている出口を含む、請求項1に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項17】
水素ガスを貯蔵するための貯蔵タンク、および前記出口と、前記出口バルブを経て、該貯蔵タンクとの間で流体接続されるポンプをさらに含む、請求項16に記載の金属-水素バッテリー。
【請求項18】
金属-水素バッテリーであって、該金属-水素バッテリーは、
遷移金属を含むレドックス反応性材料を含むカソード;
導電性基材および該導電性基材上に配置された二元機能触媒を含む触媒性水素アノードであって、ここで、該二元機能触媒がニッケル-モリブデン-コバルト合金を含みそして相互連絡したナノ粒子の形態であり、該相互連絡したナノ粒子の間に形成されたナノ孔を有し、ここで、該触媒性水素アノードが、充電の際に水素ガスを生成させそして放電の際に水素ガスを酸化させる、触媒性水素アノード;および
該カソードと該触媒性水素アノードとの間に配置されたアルカリ性電解質、
を含む金属-水素バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、米国仮特許出願第62/544,508号(2017年8月11日出願)の利益を主張し、その内容は、その全体において本明細書に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
再生可能エネルギー源(例えば、風力および太陽)が旧来の化石燃料と競合するには、大規模エネルギー貯蔵システムを、それらの本質的な間欠性を軽減するために開発するべきである。そのコスト(1キロワット-時間あたりの米ドル($ kWh-1))および長時間寿命が、大規模エネルギー貯蔵の長所の最大の姿である。現在は、揚水式水力発電は、電力網によるエネルギー貯蔵市場で優勢である。なぜならそれは、長期(約50年間)にわたって大量のエネルギーを貯蔵するために安価な方法(約$100kWh-1)であるからである。しかし、それは、適切な場所の欠如および環境フットプリントによって制限されている。圧縮空気エネルギー貯蔵およびフライホイールエネルギー貯蔵のような他の技術は、いくつかの異なる利点を示すが、それらの比較的低い効率および高コストは、電力網による貯蔵のために大きく改善されるべきである。充電式バッテリーは、大規模エネルギー貯蔵のための低コスト、高容量かつ高い信頼性のシステムを目標とする大きな機会を提供する。バッテリー技術の代表としては、鉛蓄電池、レドックスフロー電池、リチウムイオンバッテリー、ナトリウム硫黄電池および液体金属電池が挙げられる;しかし、これらの技術は、種々の未解決課題に起因して、大きな公益事業市場の全体的な経済的基準をほとんど満たすことはできない。電力網による貯蔵に関して$100kWh-1という米国エネルギー省(DOE)目標を達成するために、改善されたバッテリー技術および進歩した材料は非常に望ましいが、非常に難題である。
【0003】
本開示の実施形態を開発する必要性が生じたのは、この背景に対してである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
いくつかの実施形態において、金属-水素バッテリーは、(1)第1の電極、(2)第2の電極、および(3)上記第1の電極と上記第2の電極との間に配置された電解質を含む。上記第2の電極は、上記第2の電極において水素放出反応および水素酸化反応の両方を触媒するように二元機能触媒を含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、金属-水素バッテリーは、(1)遷移金属を含むレドックス反応性材料を含むカソード、(2)遷移金属合金を含む二元機能触媒を含む触媒性水素アノード、および(3)上記カソードと上記触媒性水素アノードとの間に配置されたアルカリ性電解質を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、触媒性水素電極の製造方法は、(1)導電性基材および上記導電性基材と接触した状態にある析出溶液を提供する工程であって、ここで上記析出溶液は、二元機能触媒の前駆物質を含む工程、ならびに(2)電着を行って、上記導電性基材を覆う上記二元機能触媒のコーティングを形成する工程を包含する。
【0007】
本開示の他の局面および実施形態がまた、企図される。前述の要旨および以下の詳細な説明は、本開示を何らかの特定の実施形態に限定することを意味するのではなく、本開示のいくつかの実施形態を記載することを意味されるに過ぎない。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態の性質および目的をよりよく理解するために、添付の図面とともに以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】先進的Ni-H円筒形バッテリー。a,そのNi-H円筒形電池デザインの模式図。b,そのNi-H電池の電極構成および仕様。c,断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、そのカソードの厚みが約700μmであることを示す;スケールバー,100μm。その挿入SEM画像は、そのカソードがNi(OH)マイクロスフェアから構成されることを示す;スケールバー,5μm。その緻密Ni(OH)カソードは、約2.6g cm-3という高タップ密度および活性Ni(OH)に関して約182mg cm-2という質量負荷を有する。d,3D NiMoCoアノードのSEM;スケールバー,100μm。その挿入SEMは、発泡ニッケル上のNiMoCoナノ粒子を示す;スケールバー,1μm。そのNiMoCoアノードは、約200μmの厚みを有する。
【0010】
図2】先進的Ni-H円筒形電池の電気化学性能。a,約50mAの電流でのその電池のガルバノスタット充放電曲線。b,約100mAの定電流でのその電池のサイクル安定性.
【0011】
図3】水素放出/酸化反応(HER/HOR)のための二元機能NiMoCo電極の電気触媒性能。a,発泡ニッケル、NiMoCoおよび発泡ニッケル上のPt/CのHER分極曲線。b,約20mA cm-2という定電流密度下でのNiMoCoおよびPt/C電極のクロノポテンシオメトリー安定性試験。そのHER試験を、約30%のKOHの電解質中で3電極設定において行った。c,ArおよびH雰囲気下での発泡ニッケル、NiMoCoおよび発泡ニッケル上のPt/CのHOR分極曲線。d,約0.3Vという定電位でのNiMoCoおよびPt/C電極のクロノアンペロメトリー安定性試験。そのHOR試験を、約30%のKOHの電解質中で、H雰囲気下で2電極設定において行った。
【0012】
図4】異なる金属-水素スウェージロック式電池。a,約5mA cm-2という電流密度下でのNi-Hスウェージロック式電池のガルバノスタット充放電曲線。b,約10mA cm-2という電流密度でのNi-H電池の長期サイクル安定性挙動。そのNi-Hスウェージロック式電池を、約30%のKOH電解質中でNi(OH)カソード、Pt/CおよびNiMoCoアノードを使用して製作した。c,1mA cm-2という電流密度下でのCo-Hスウェージロック式電池のガルバノスタット充放電曲線。d,約5mA cm-2という電流密度でのCo-H電池の長期サイクル安定性。そのCo-Hスウェージロック式電池を、約30%のKOH電解質中でZnCoカソードおよびNiMoCoアノードを使用して製作した。e,約1mA cm-2という電流密度下でのZn-Hスウェージロック式電池のガルバノスタット充放電曲線。f,約5mA cm-2という電流密度でのZn-Hスウェージロック式電池の長期サイクル安定性。そのZn-Hスウェージロック式電池は、約0.5MのZnOを添加した約30%のKOHの電解質中でNiMoCoカソードおよびZn箔アノードを使用して製作した。
【0013】
図5】プロトタイプNi-H円筒形試験電池。
【0014】
図6】カソード上のNi(OH)マイクロスフェアのSEM,スケールバー:20μm。
【0015】
図7】Ni(OH)カソードのX線回折(XRD)。アスタリスク付きのピークは、発泡ニッケルに起因する。
【0016】
図8】NiMoCo合金ののXRD。
【0017】
図9】NiMoCo合金の透過型電子顕微鏡(TEM)画像。
【0018】
図10】NiMoCoの走査型透過電子顕微鏡(STEM)マッピング。a,NiMoCo合金のSTEM画像(スケールバー,100nm)。b,Ni、c,Moおよびd,Coの元素マッピング(スケールバー,50nm)。
【0019】
図11】600サイクルにわたる円筒形Ni-H電池の放電容量およびクーロン効率。
【0020】
図12】約50mA、約80mA、約100mAおよび約120mAの種々の電流密度下でのNi-H円筒形電池の充放電。
【0021】
図13】Ni-H円筒形電池の急速充電速度。約50mA、約80mA、約100mA、約120mAおよび約150mAという種々の充電電流ならびに約50mAという一定の放電電流の下でのその電池の充放電曲線。
【0022】
図14】半流動型Ni-H円筒形電池の模式図。
【0023】
図15】半流動型および非流動型のNi-H電池の充電挙動。
【0024】
図16】電着による大規模NiMoCo電極製作。a,電着装置の2電極設定。b,焼き鈍し処理前およびc,焼き鈍し処理後の発泡ニッケル上のNiMoCoのデジタル写真。
【0025】
図17】カーボンクロス上のNiMoCo触媒。a,NiMoCo-カーボンクロスのデジタル写真。b、c、およびd,カーボンクロス上のNiMoCoのSEM画像。
【0026】
図18】プロトタイプスウェージロック式電池。
【0027】
図19】Mn-Hスウェージロック式電池の電気化学性能。a,約1mA cm の電流密度下でのルバノスタット充放電曲線。b,そのMn-H電池のサイクリング性能。
【0028】
図20】Co-H電池のZnCoカソード。a、b、c、およびd,そのZnCoカソードのSEM画像。e,発泡ニッケル上のZnCoのエネルギー分散型X線分光法(EDX)およびf,XRD。
【0029】
図21】Mn-H電池のNiおよびCoをドープした電解二酸化マンガンカソード。a、b、c、およびd,そのMnOカソードのSEM画像。e,カーボンクロス上のMnOのEDXおよびf,XRD。
【0030】
図22】いくつかの実施形態に従う金属-水素バッテリーの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
説明
図22は、いくつかの実施形態に従う金属-水素バッテリー100の模式図を示す。その金属-水素バッテリー100は、第1の電極102、第2の電極104、その第1の電極102とその第2の電極104との間に配置されたセパレーター106、およびその第1の電極102とその第2の電極104との間に配置された電解質108を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、その第2の電極104は、触媒性水素電極である。いくつかの実施形態において、その第2の電極104は、導電性基材110およびその導電性基材110を覆うコーティング112を含み、ここでそのコーティング112は、その第2の電極104において水素放出反応および水素酸化反応の両方を触媒するように二元機能触媒を含む。いくつかの実施形態において、その導電性基材110は多孔性である(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の、そして約80%まで、約90%まで、またはこれより高い多孔性を有する)。いくつかの実施形態において、その導電性基材110は、発泡金属(例えば、発泡ニッケル、発泡銅、発泡スチール、発泡アルミニウムなど)である。いくつかの実施形態において、その導電性基材110は、発泡合金(例えば、発泡ニッケル-モリブデン、発泡ニッケル-銅、発泡ニッケル-コバルト、発泡ニッケル-タングステン、発泡ニッケル-銀、発泡ニッケル-モリブデン-コバルトなど)である。他の導電性基材は、本開示によって包含される(例えば、金属箔、金属メッシュ、および繊維状導電性基材)。いくつかの実施形態において、その導電性基材は、炭素ベースの材料(例えば、炭素繊維紙、カーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンマット、カーボンナノチューブフィルム、グラファイト箔、発泡グラファイト、グラファイトマット、グラフェン箔、グラフェン繊維、グラフェンフィルム、および発泡グラフェン)である。いくつかの実施形態において、その二元機能触媒は、白金とは異なるかまたは白金を欠いている。いくつかの実施形態において、その二元機能触媒は、ニッケル-モリブデン-コバルト合金である。二元機能触媒としての他の遷移金属合金は、本開示によって包含される(例えば、ニッケル-モリブデン、ニッケル-タングステン、ニッケル-タングステン-コバルト、ニッケル-カーボンベースの複合材)。二元機能触媒としての他の貴金属およびそれらの合金は、本開示によって包含される(例えば、白金、パラジウム、イリジウム、金、ロジウム、銀、ならびに貴金属および卑金属の遷移金属(例えば、白金、パラジウム、イリジウム、金、ロジウム、銀、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステンなど)とのそれらの合金)。いくつかの実施形態において、二元機能触媒は、水素放出反応触媒と水素酸化反応触媒との組み合わせである。いくつかの実施形態において、その金属-水素バッテリー100の二元機能触媒は、異なる材料の混合物を含み、これは、全体として水素放出および酸化反応に寄与する。いくつかの実施形態において、その第2の電極104は、アノードまたはカソードである。いくつかの実施形態において、そのコーティング112は、その二元機能触媒のナノ構造体を含む(例えば、約1nm~約100nm、約1nm~約80nm、または約1nm~約50nmの範囲のサイズ(または平均サイズ)を有する)。
【0033】
いくつかの実施形態において、その第1の電極102は、導電性基材114およびその導電性基材114を覆うコーティング116を含み、ここでそのコーティング116は、遷移金属を含むレドックス反応性材料を含む。いくつかの実施形態において、その導電性基材114は多孔性である(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の、そして約80%まで、約90%まで、またはこれより高い多孔性を有する)。いくつかの実施形態において、その導電性基材114は、発泡金属(例えば、発泡ニッケル)または発泡合金である。他の導電性基材は、本開示によって包含される(例えば、金属箔、金属メッシュ、および繊維状導電性基材)。いくつかの実施形態において、そのレドックス反応性材料中に含まれる遷移金属は、ニッケルである。いくつかの実施形態において、ニッケルは、水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化ニッケルとして含まれる。いくつかの実施形態において、そのレドックス反応性材料中に含まれる遷移金属は、コバルトである。いくつかの実施形態において、コバルトは、酸化コバルトまたは亜鉛コバルト酸化物として含まれる。いくつかの実施形態において、そのレドックス反応性材料中に含まれる遷移金属は、マンガンである。いくつかの実施形態において、マンガンは、酸化マンガンまたはドープした酸化マンガンとして含まれる(例えば、ニッケル、銅、ビスマス、コバルトまたは他の遷移金属もしくはポスト遷移金属(post-transition metal)でドープされる)。他の遷移金属は、本願によって包含される(例えば、銀)。いくつかの実施形態において、その第1の電極102はカソードであり、その第2の電極104はアノードである。いくつかの実施形態において、そのコーティング116は、そのレドックス反応性材料のマイクロ構造体を含む(例えば、約1μm~約100μm、約1μm~約50μm、または約1μm~約10μmの範囲のサイズ(または平均サイズ)を有する)。
【0034】
いくつかの実施形態において、その第1の電極102は、遷移金属を含む金属箔を含む。いくつかの実施形態において、その遷移金属は亜鉛である。他の遷移金属は、本開示によって包含される(例えば、銀)。いくつかの実施形態において、その第1の電極102はアノードであり、その第2の電極104はカソードである。
【0035】
いくつかの実施形態において、その電解質108は、水性電解質である。いくつかの実施形態において、その水性電解質は、アルカリ性であり、7より大きい(例えば、約7.5もしくはこれより大きい、約8もしくはこれより大きい、約8.5もしくはこれより大きい、または約9もしくはこれより大きい)pHを有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、そのバッテリー100はまた、第1の電極102、第2の電極104、セパレーター106、および電解質108が内部に配置される囲い118を含む。いくつかの実施形態において、その囲い118は、入口120(これは、入口バルブ122に流体接続される)および出口124(これは、出口バルブ126に流体接続される)を含むかまたは規定する。いくつかの実施形態において、そのバッテリー100はまた、水素ガスを貯蔵する貯蔵タンク128、およびその出口124と、その出口バルブ126を経て、その貯蔵タンク128との間に流体接続される必要に応じたポンプ130を含み、ここでそのポンプ130は、水素ガスの流れをその囲い118からその貯蔵タンク128へと方向付けるように構成される。その貯蔵タンク128はまた、その入口120に、その入口バルブ122を経て流体接続されて、その貯蔵タンク128からその囲い118への水素ガスの流れを可能にする。
【0037】
本開示のさらなる実施形態は、導電性基材およびその導電性基材と接触した状態にある析出溶液を提供する工程であって、ここでその析出溶液は、二元機能触媒の前駆物質を含む工程を包含する触媒性水素電極の製造方法に関する。いくつかの実施形態において、その方法はまた、電着を行って、その導電性基材を覆うその二元機能触媒のコーティングを形成する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その二元機能触媒は、ニッケル-モリブデン-コバルト合金であり、その析出溶液は、ニッケル含有前駆物質、モリブデン含有前駆物質、およびコバルト含有前駆物質を含む。
【実施例
【0038】
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態の特定の局面を記載して、当業者のために説明を例証しかつ提供する。実施例は、本開示を限定すると解釈されるべきではない。なぜならその実施例は、本開示のいくつかの実施形態を理解しかつ実施するにあたって有用な具体的方法論を提供するに過ぎないからである。
【0039】
概観:大規模エネルギー貯蔵は、電力網へと再生可能エネルギーを統合するために重要である。電力網によるエネルギー貯蔵の市場において揚水発電が優勢であるにも拘わらず、それは、適切な場所の選択およびフットプリントの影響によって制限されている。充電式バッテリーは、大規模エネルギー貯蔵においてますます興味を引きつけている;しかし、無視できる程度に容量が次第に減少してサイクルする低コスト材料の困難な基準は、電力網による貯蔵における使用のための大部分の電池の化学技術(リチウムイオン電池;鉛蓄電池;レドックスフロー電池;ナトリウム硫黄電池など)を制限する。そこで、この実施例は、地球上に豊富な遷移金属カソード(例えば、ニッケル、マンガン、コバルトなど)と低コスト二元機能ニッケル-モリブデン-コバルト合金触媒性水素アノードとをアルカリ性電解質中で対にすることによる、「金属-水素」バッテリーといわれる1つのクラスの電池化学技術に関する。そのバッテリーは、カソードにおける金属酸化物のレドックス反応およびアノードにおける高度に可逆的な水素放出/酸化反応によって作動する。開発されたNi-H、Co-H、Mn-H、およびZn-Hバッテリーの中でも、Ni-Hバッテリーは、約140Wh kg-1(またはこれより高い)という高エネルギー密度および1500サイクル(またはこれより多い)にわたって無視できる程度の容量崩壊での優れた再充電性を示す。そのNi-H電池のコストは、1キロワット時あたり約$83程度の低さを達成し、大規模エネルギー貯蔵にとって魅力的な特性を示す。
【0040】
結果および考察:この実施例は、大規模エネルギー貯蔵にとって大きな見込みを示す低コスト遷移金属ベースの水素バッテリーのカテゴリーに関する。その提唱される金属-水素(M-H)バッテリーは、アルカリ性電解質中のレドックス反応性金属カソードおよび触媒性水素アノードを含む。そのバッテリーは、そのカソードにおける電気化学的レドックス反応およびそのアノードにおける高度に可逆的な水素放出/酸化反応(HER/HOR)によって作動する。成功裡の適用は、低コストアノードとしてのニッケル-モリブデン-コバルト(NiMoCo)二元機能HER/HOR触媒について行われる。その一方で、一連の地球上に豊富な遷移金属(例えば、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、およびコバルト(Co))は、安価な遷移金属によるM-Hバッテリーの開発を行って、カソードとして利用されてきている。その開発されたM-Hバッテリーの中でも、先進的ニッケル-水素(Ni-H)電池は、特に重要である。なぜならそのカソードでの水酸化ニッケル/オキシ水酸化ニッケル(Ni(OH)/NiOOH)反応は、アルカリ性条件下で高度に再充電可能であるからである。
【0041】
その先進的Ni-Hバッテリーの製作およびエネルギー貯蔵機構は、図1aに模式図として書かれる。そのバッテリーは、特注の円筒形電池において、市販のAAバッテリーの製作に類似して、Ni(OH)カソード、ポリマーセパレーターおよびNiMoCo触媒アノードを巻き付けることによってスチール容器の中に構築される。約30%の水酸化カリウム(KOH)溶液を電解質として使用する。そのスチール容器にガスの入口および出口を装備して、空気を除去し、望ましい場合には、その電池の水素流の出入りを方向付ける。プロトタイプNi-H試験電池を図5に示す。充電する間に、そのカソードNi(OH)は、NiOOHへと酸化され、その間に水素ガスは、NiMoCo触媒HERを介してそのアノード上でアルカリ性電解質から放出される。放電する間に、カソードNiOOHは、Ni(OH)へと還元されて戻り、水素ガスは、NiMoCo触媒HORを介してアノード上で酸化される。充放電の間の先進的Ni-H電池のレドックス反応は、以下のように記載され得る:
【化1】
【0042】
図1bは、そのNi-H電池の電極構成および仕様を図示する。そのカソードを、マイクロメートルサイズにしたNi(OH)スフェア(図1cの挿入図)を発泡ニッケルへと多量にコーティングして、緻密電極を形成することによって作製した(図6)。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、そのNi(OH)カソードが約700μmの平均厚を有することを示す(図1c)。そのNi(OH)マイクロスフェアが高密度であることに起因して、そのカソードのタップ密度は約2.6g cm-3であり、約182mg cm-2という高質量負荷に相当する。そのNi(OH)は、X線回折(XRD)によって、そのNi(OH)ファミリーにおいて最も安定な相であるβ相であるとさらに特徴付けられた(図7)。そのNi(OH)電極の大きい厚み、高い質量負荷およびタップ密度は、産業レベル内であり、そのNi-H電池を実用的なエネルギー貯蔵に適用できる。対照的に、そのアノードは、いかなる導電性添加剤(conducting additive)も結合剤もなしに、多孔性発泡ニッケル上で直接成長させたNiMoCo触媒の三次元(3D)の薄い層から構成される(図1b)。XRDによって、NiMoCo合金の結晶相が確認された(図8)。高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、そのNiMoCoが多くの相互連絡したナノ粒子から構成されることを明らかにする(図1d中の挿入図)。そのNiMoCoナノ粒子が数十ナノメートルの範囲にあることが、透過型電子顕微鏡(TEM)によってさらに開示される(図9)。そのNiMoCo合金の走査型透過電子顕微鏡(STEM)および元素マッピングは、Ni、MoおよびCoの個々の元素の均一な分布を示す(図10)。その開発したNiMoCo電極は、M-Hバッテリーに特有のいくつかの特徴を有する。1)その発泡ニッケルの3D特性に起因して、その得られるNiMoCo電極は、マクロ多孔性の階層的性質を保持する(図1d)。一方で、その相互連絡したNiMoCoナノ粒子は、間にナノ孔の形成を生じ、急速なバッテリー充放電反応のための高度にアクセス可能な表面を有する多孔性NiMoCo電極を作製する。2)その生成した水素ガスは、充電プロセスにおいて多孔性アノード上で容易に放出され得、放電プロセスにおいて効果的に酸化され得る。3)その発泡ニッケル骨格は、実質的に接合点なしに相互連絡され、良好なバッテリー作動のために電極の高い導電性を保証する。
【0043】
図2は、その緻密Ni(OH)カソードおよび3D NiMoCoアノードを使用する先進的Ni-H円筒形電池の電気化学性能を示す。約50mAという定電流(約2.78mA cm-2)でのガルバノスタット充放電試験は、それぞれ、約1.55Vおよび約1.25Vでの別個の充電プラトーおよび放電プラトーを表す(図2a)。これは、Ni(OH)/NiOOHとHER/HORとの間の反応電位と十分に一致する。そのNi-H円筒形電池は、約195mAh g-1の比容量(Ni(OH)の質量に基づく)および約35.5mAh cm-2の面積容量に相当する、約640mAhという高放電容量を達成し得る。印象的なことには、その先進的Ni-H電池は、約100mAの電流(約5.56mA cm-2)で600サイクル後に、初期容量(図2b)およびクーロン効率(図11中、充電容量に対する放電容量の比)の約95%を上回って保持する、優れた再充電性を示す。一方で、顕著な速度能力が、種々の電流密度下でそのNi-H電池を充放電することによって証明されるように、そのNi-H電池において達成される(図12)。そのNi-H電池は、急速充電モードの下で作動され得る。一連の充放電測定は、約50mAの電流密度でのそのNi-H電池の放電容量が、種々の充電電流密度(約50mAから約150mAまで)の下でほぼ同じに維持されたことを示す(図13)。そのNi-H円筒形電池のエネルギー密度は、ニッケル-カドミウム電池(40~60Wh kg-1)および鉛蓄電池(30~50Wh kg-1)より高い、約140Wh kg-1(電池における全構成要素の質量(しかしスチール容器を除く)に対して正規化した)であると計算される。電気化学性能に基づけば、その先進的Ni-H円筒形電池における物質利用のエネルギーコストは、約$83kWh-1であると概算され、大規模エネルギー貯蔵適用に関する$100kWh-1というDOEコスト目標を達成している。顕著なことには、そのNi-Hシステムの資本コストは、電極材料およびバッテリー作動システムの最適化によってさらに低減され得る。
【0044】
半流動型バッテリーシステムは、全体的な電池性能の改善のために先進的Ni-H電池を管理することが提唱される。図14に図示されるように、その半流動型電池は、1または複数の個々のNi-H電池と水素貯蔵タンクとを接続することによって構築される(詳細は、補足情報を参照)。その水素貯蔵タンクは、その接続された電池のうちの1またはこれより多くに対する外部エネルギーコレクターおよび貯留槽として働く。その先進的半流動型の構成は、そのシステムに、いくつかの特定の利点を与える。1)その半流動型Ni-H電池の充電プロセスは、周囲圧の下で作動し、その電池の高圧容器に対する依存性を低くする。従って、それは、圧力容器の利用に関する製造コストの低減に効率的な道筋を提供する。2)周囲圧充電プロセスは、充電過電位に都合が良い。例えば、約27mVの充電過電位の減少は、水素生成の速度論的に都合の良い反応に起因して、その流動可能なNi-H電池において達成される(図15)。その過電位の低減は、システム効率の改善に寄与すると考えられる。3)その半流動型Ni-H電池の放電は、その電池への水素ガスの流れによって制御され得る。4)その先進的半流動型システムは、その電池の過充電/過放電に耐え、過充電/過放電誘導性ガス(主にはO)をそのシステムから放散させることによって実現される。5)そのシステムにおける水素ガスの流れは、内部ガス圧によって自己運転される。レドックスフロー電池における外部ポンプを代表的には特定する液体の流れとは異なり、Ni-Hバッテリーシステムにおけるガスの流れは、自動的に起こるものであり、制限された空間の中で自己平衡される。さらに、ガスの流れの速度は、液体より速く、エネルギー消費がより少ない。これは、ポンプまたは他の外力が省かれ得る流動型Ni-Hバッテリーシステムの大きな利点である。これは、システムデザインの簡素性およびコスト低減をもたらす。6)そのNi-H電池および水素タンクは、種々の適用のために完全に分離され得る。このようにして、低水素圧を有する充電されたNi-H電池は、その水素タンクを持ち運びすることなく、より良好な輸送のための調整可能な電源として取り扱われ得る。一方で、高純度水素ガス貯蔵を伴う水素タンクは、他の適用のための独立した燃料資源として取り扱われ得る。(7)その個々の電池は、高出力電圧または電流を提供するために、それぞれ、直列または並列で電気接続され得る。
【0045】
その先進的Ni-H電池の傑出した電気化学性能は、HERおよびHORの両方に向かうNiMoCo電極の電気触媒特性に起因する。過去数十年にわたって、途方もない努力がHERまたはHORのための低コスト高活性水素触媒を開発するために捧げられてきた。しかし、HERおよびHOR両方のための低コスト二元機能電気触媒の製作の需要は、未だにある。HER/HORのための二元機能水素電極としてのNiMoCo合金の電気触媒性能の評価がなされる。その触媒のHER活性を、代表的な3電極構成において試験した。発泡ニッケル基材およびPt/Cコーティングした発泡ニッケルを、比較に含める。図3aに示されるように、Pt/CおよびNiMoCoは、発泡ニッケルのものより顕著に高い電流密度を示す。これは、その発泡ニッケルの無視できる程度のHER活性ならびにPt/C触媒およびNiMoCo触媒の顕著な活性を示す。NiMoCoの例外的なHER活性は、ベンチマークPt/C触媒に近い。NiMoCoに関する約80mVという過電位は、約10mA cm-2という水素生成電流密度を駆動し、これは、約71mVという過電位を有するPt/C触媒のものに大いに匹敵する。約200mA cm-2という高電流密度に達するために、そのNiMoCo電極の適用された過電位は、約180mV程度の低さであり、これは、そのそのNiMoCoをアルカリ性溶液中でのHERに向かう最も活性な卑金属電気触媒のうちの1つにする。顕著なことには、そのNiMoCoは、傑出した長期安定性を示し、約20mA cm-2という電流密度で約1500時間の加水分解にわたって目立った活性低下を示さない(図3b)。比較として、Pt/C触媒は、多すぎるほどの水素放出気泡によって引き起こされる発泡ニッケルからのPt/Cの脱離におそらく起因して、約800時間の加水分解にわたって段階的な活性低下を示す。
【0046】
2電極設定は、触媒のHOR活性を試験するために適用される。図3cは、種々のガス条件下での発泡ニッケル、Pt/Cおよび発泡ニッケル上のNiMoCoの分極曲線を示す。0を上回るアノード電流は、水素酸化の指標である。それは、Pt/CおよびNiMoCoが、試験電池における水素ガスの限られた利用可能性が実質的に原因で、アルゴン雰囲気下でHORに向かう無視できる程度の活性を有することを示す。発泡ニッケルは、水素雰囲気下で検出可能なHOR活性を示さない。比較において、Pt/CおよびNiMoCoはともに、水素雰囲気下での大きな電流密度に伴う典型的な分極曲線を示す。これは、それらの優れたHOR活性を示す。そのNiMoCoは、HORに向かう0Vの立ち上がり電位を有することが見出された。これは、Pt/Cのものと同じであり、その前例のないHOR触媒性能を確認する。長期安定性試験を、NiMoCoのHOR活性に対して行う。印象的なことに、そのNiMoCo電極は、約1000時間の逐次的水素酸化にわたって、無視できる程度の活性低下を示す(図3d)。対照的に、そのPt/C電極は、長期にわたってわずかな活性崩壊を示す(図3d)。そのNiMoCoの傑出したHER/HOR活性は、そのNiMoCoをM-Hバッテリー適用の例外的な二元機能水素触媒にする。
【0047】
3D水素電極としてのNiMoCo触媒の開発は、スラリーコーティングしたPt/C触媒を超える多くの利点を提供する。1)コストのかかるPt/Cと比較して、水素触媒としての低コストNiMoCoの使用は、バッテリーコストを劇的に低減し得、その低コストNiMoCoを大規模エネルギー貯蔵適用にとって非常に望ましくする。2)発泡ニッケル上のNiMoCo触媒の電気化学析出は、炭素添加剤またはポリマー結合剤なしの3D電極を生じ、これは、電極の導電性を改善し、炭素酸化誘導性の触媒不足または考えられる触媒毒をも回避する。3)DC電源供給の2電極析出は、大規模製作のものであり(図16)、大規模適用のためのNi-H電池の開発を可能にする。4)NiMoCoの電着は、任意の導電性基材に適用可能である。この点において、そのNiMoCo合金は、発泡ニッケルおよびニッケル箔、ステンレス鋼メッシュおよび箔、ならびに炭素繊維クロス上に成功裡に析出される(図17)。5)そのNiMoCoの組成、形態および厚みは、電着によって十分に制御され得、これは、そのNiMoCo触媒の最適化へのおよび多くの幅広い適用のための他の金属/合金の製作への包括的アプローチを提供する。
【0048】
M-Hバッテリー化学技術の一般性を示すために、小サイズにしたスウェージロック式電池を開発して(図18)、一連の低コスト金属(Ni、Co、Mn、およびZn)-Hシステムを試験する。金属電極、セパレーターおよびNiMoCoまたはPt/C触媒の水素電極を、スウェージロック式電池の組み立てのために積み重ねて積層する。図4は、4種の異なるM-H電池の電気化学性能を示す。Ni-Hスウェージロック式電池を、Ni(OH)カソードおよびNiMoCoまたはPt/Cアノードを使用することによって製作した。そのガルバノスタット充放電曲線は、NiMoCoおよびPt/Cアノードの配置によって、Ni-Hスウェージロック式電池の類似の電気化学的挙動を示す(図4a)。Pt/Cアノードと比較して、NiMoCoアノードを有する電池は、より良好な放電特性およびわずかにより高い放電容量を示す。印象的なことには、そのNiMoCoアノードを有するNi-Hスウェージロック式電池は、傑出した長期サイクル安定性を示し、1500サイクルにわたって無視できる程度の容量崩壊を示す(図4b)。しかし、そのPt/Cアノードを有するNi-H電池は、サイクリングにわたって段階的な容量低下を示す。図4cおよびdは、ZnCoカソード(図20)およびNiMoCoアノードを使用することによるCo-Hスウェージロック式電池の電気化学的挙動を示す。そのCo-H電池は、それぞれ、約1.3~1.4Vおよび約1.2~1.3Vの範囲の別個の充電電圧プラトーおよび放電電圧プラトーを示す。(約100mAh g-1での)約110mVという小さな過電位は、急速充電貯蔵速度論を有するナノ構造体化したZnCoカソードに起因して、Ni-H電池のものより優れている。そのCo-H電池の逐次的充放電サイクリングは、非常に安定な長期再充電性を示し、5000サイクルにわたって容量が失われないことを示す。そのMn-Hスウェージロック式電池の場合、少量のニッケルおよびコバルトをドープした電解質二酸化マンガンを、NiMoCoアノードと対にすることによってカソードとして選択した(図21)。そのMn-H電池の充放電プロフィールは、MnOアルカリ電池のものと類似の電気化学的挙動を示す。そのMn-H電池は、1200サイクル後に約100mAh g-1という容量を保持して、逐次サイクリングにわたってゆっくりとした容量崩壊を示す(図19)。それにも拘わらず、それは、Mnベースのアルカリ電池からのサイクル安定性の顕著な改善であり、Mn-H電池の優れた容量を示す。さらに、そのNiMoCo電気触媒は、Zn析出/溶解反応(plating/stripping reaction)に対するHER/HORのその適切なレドックス電位に起因して、M-H電池(例えば、Zn-H電池)のカソードとして使用され得る。よって、Zn-H電池を、約0.5MのZnOを添加した約30%のKOHの電解質中で、アノードとしてZn箔およびカソードとしてNiMoCoを使用することによって製作した。そのZn-H電池は、約0.4Vの放電プラトーを示し(図4e)、これは、そのZnアノードとそのNiMoCoカソードとの間の電位差に相当する。そのNiMoCo電極の優れた電気触媒性能に起因して、そのZn-H電池は、1000サイクルにわたって容量崩壊を示さない。そのNiMoCoの適用によるM-H電池の電気化学性能は、アルカリ性電解質における汎用的二元機能HER/HOR触媒としてのNiMoCoの顕著な電気触媒活性を示す。
【0049】
結論として、金属-水素バッテリーの1つのクラスを、レドックス活性金属(Ni、Co、およびMn)カソードおよび低コストNiMoCo触媒性水素アノードを使用して開発する。先進的Ni-H電池は、1500サイクルにわたって優れた再充電性とともに、約140Wh kg-1という高エネルギー密度を示す。約US$83kWh-1という低エネルギーコストは、US$100kWh-1というDOE目標を達成し、これは、その電池を大規模エネルギー貯蔵適用に望ましいものにする。材料およびシステムのさらなる最適化は、改善された電気化学性能のために行われ得る。
【0050】
補足情報:
【0051】
方法
【0052】
NiMoCoおよびPt/C電極の調製
【0053】
2電極カソード析出を使用して、3D多孔性発泡ニッケル基材上にNiMoCo合金を合成した。その析出を、カソードとして発泡ニッケル片をおよびアノードとしてチタンメッシュを、そのカソードに対して約80mA cm-2の電流密度下で利用することによって、DC電源(Dr.Meter DC Power Supply HY5020E)で行った。その析出溶液を、塩化ニッケル(II)六水和物(NiCl.6HO,約11.9g L-1)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(NaMoO.2HO,約2.42g L-1)、塩化コバルト(II)六水和物(CoCl.6HO,約0.35g L-1)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO,約74.77g L-1)およびピロリン酸ナトリウム四塩基性(Na,約34.57g L-1)をDI水へと室温において溶解することによって調製した。ヒドラジン一水和物(約1.2mL L-1)を、析出する直前にその溶液に添加した。その発泡ニッケルをプレスし、電着前に別個に、アセトンおよびDI水中で約10分間超音波処理することによって清浄にした。冷ウォーターバスをその析出溶液に適用した。その析出溶液を、析出プロセス全体の間に撹拌したままにした。電着後に、そのNiMoCoコーティングした発泡ニッケルを、DI水によって清浄にし、約10MのKOH中に約24時間浸漬した。次いで、それをDI水によって清浄にし、風乾した。その後、そのNiMoCoコーティングした発泡ニッケルを、約450℃において1時間、フォーミングガス雰囲気(約95%のArと約5%のH)下で管状炉の中で焼き鈍しした。その管状炉を自然冷却し、そのNiMoCoコーティングした発泡ニッケルを取り出し、さらに使用するまで真空ボックスの中で維持した。Pt/C電極の調製において、市販のPt/C粉末(炭素上のHiSPEC白金40%,Fuel cell store,USA)を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と約9:1の比において、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混合して、約20mg mL-1の濃度を有するスラリーを形成した。その懸濁物を少なくとも約24時間撹拌し、次いで、その発泡ニッケル上にコーティングする前に、約30分間のバス超音波処理に供した。その発泡ニッケルをそのPt/C懸濁物へと約1分間浸漬し、次いで、約80℃の真空オーブン中で乾燥させるために取り出した。その浸漬-ソーキング-乾燥プロセスを複数回適用して、その発泡ニッケル上のPt/Cの負荷を増大させた。
【0054】
Ni(OH)、ZnCo、およびMnOカソードの調製
【0055】
180mg cm-2という産業レベルの質量負荷を有するNi(OH)カソードを、発泡ニッケル上へのNi(OH)マイクロスフェア(Panasonic)のスラリーコーティングによって調製した。そのZnCoカソードを、水熱反応によって発泡ニッケル集電体上に直接成長させた。代表的には、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO.6HO,約1mmol)、硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO.6HO,約2mmol)、フッ化アンモニウム(NHF,約2mmol)および尿素(CO(NH,約5mmol)を、DI水(約35mL)へと激しく撹拌しながら溶解した。エタノールおよび水によって予め清浄にした発泡ニッケル片(約3cm×4cm)を、その溶液に浸漬し、テフロン(登録商標)を裏打ちしたステンレスオートクレーブの中に入れた。その密封したオートクレーブを、約150℃へと約0.5時間以内で加熱し、約150℃で約5時間維持した。室温へと自然冷却した後、その発泡ニッケルを取り出し、大量の水およびエタノールによって、約10秒間のバス超音波処理の助けを借りて清浄にした。次いで、そのサンプルを真空下で乾燥させ、約350℃において約2時間、空気中でか焼した。NiおよびCoをドープしたγ-MnO(電解質二酸化マンガン)を、3電極析出によって調製した。ここでカーボンクロス、Ag/AgCl電極およびグラファイトロッドを、それぞれ作業電極、基準電極および対向電極として供した。その析出溶液を、硫酸マンガン(II)一水和物(MnSO.HO,約48g L-1)、硫酸(HSO,約95~98%,約24g L-1)を硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO.6HO,MnSOの約2%)および硫酸コバルト(II)七水和物(CoSO.7HO,MnSOの約2%)とともにDI水へと溶解することによって調製した。約20mA cm-2という電流密度を適用して、NiおよびCoをドープしたMnOを導電性カーボンクロスへと90(±3)℃の温度において、約5分間析出させた。その後、そのサンプルをDI水によって清浄にし、真空中で乾燥させた。
【0056】
スウェージロック式電池および円筒形電池の製作
【0057】
スウェージロック式電池を、PTFEが中心に置かれたOリングの中に2つのKFをスウェージロック式アダプターへとクランプ留めすることによって構築した(図18)。そのアダプターに入口バルブおよび出口バルブを装備して、捕捉された空気をその電池から除去し、望ましい場合、そのアダプターを半流動型電池のための外部水素タンクと接続した。カソード(発泡ニッケル上のNi(OH)、発泡ニッケル上のZnCo、カーボンクロス上のEMD)、セパレーター(ZYK-15、Zircar Zirconia,Inc.USA)、およびアノード(発泡ニッケル上のNiMoCo/Pt/C)を、ボタン型電池の積み重ねで積層し、スウェージロック式電池へと組み立てた。絶縁PTFEフィルムの薄い層を、ステンレス鋼アダプターとアルミニウムクランプとの間に挿入して、そのカソードとそのアノードとの接触を回避した。約30wt.%のKOHをDI水に溶解することによって、その電解質をあらたに調製した。
【0058】
その先進的Ni-H円筒形電池を、PTFEが中心に置かれたOリングの中にKFをスウェージロック式アダプターへとステンレス鋼シリンダーとともにクランプ留めすることによって構築した(図5)。そのアダプターおよびステンレス鋼シリンダーを、機械工場で仕上げた。そのアダプターを、その外側で3方向バルブと接続すると同時に、その内側を、カソード端子として働くスチールロッドと溶接した。ポリマーセパレーター(Freudenberg,Germany)をその両側に巻き付けているNi(OH)電極片およびNiMoCoアノード片を積み重ね、スチールロッドを取り囲んで、シリンダー様電池構成を作製した。そのカソードを、良好な導電性のためにそのステンレス鋼ロッドへとスポット溶接した。次いで、その電極を、そのステンレス鋼シリンダーの中に入れ、ここではそのNiMoCoアノードは、シリンダーと直接接触し、アノード端子として働いた。あらたに調製した約30wt.%のKOH電解質をその電池に添加した。そのNi-H円筒形電池を高純度水素ガス(約99.99%,Airgas)でパージして、捕捉された空気を除去した。その密封した電池を、電気化学的測定の前に、約12時間にわたって静置させた。
【0059】
半流動型Ni-H円筒形バッテリーの製作および作動
【0060】
その半流動型Ni-Hバッテリーシステムを、より多くの個々のNi-H電池のうちの1個と水素貯蔵タンクとをスチールパイプラインを通じて接続することによって形成した(図14)。その水素貯蔵タンクは、Ni-H電池に関して特定されたものより高い圧力を有する。充電の間、そのカソードNi(OH)はNiOOHへと酸化され、その間に水素ガスは、NiMoCo触媒性水素放出反応を介してそのアノード上で生成される。生成したガスを電池から水素貯蔵タンクへと流すために、全充電プロセスにおいて、そのガス入口バルブはオフのままにされ、一方でその出口バルブはオンのままにされる。その半流動型Ni-Hバッテリーの充電を、周囲圧下で行った。放電の間、その電池を水素で満たすために、そのガス出口バルブはオフにされ、一方でその入口バルブはオンにされる。従って、放電プロセスにおいて、そのカソードは、Ni(OH)へと戻るように還元され、水素ガスは、NiMoCo触媒性水素酸化反応を介してそのアノード上で酸化される。
【0061】
電気化学的測定
【0062】
M-Hバッテリーの電気化学的試験を、Biologic VMP3マルチチャネル電気化学ワークステーション(Bio-Logic Inc.France)およびLandHeバッテリーテスター(Wuhan,China)において室温で行った。ガルバノスタット充放電測定を、その電池を種々の電流において、設定したカットオフ容量へと充電し、そしてその電池を設定したカットオフ電圧へと放電することによって行った。
【0063】
HERに向かうNiMoCoおよびPt/Cアノードの電気触媒活性を、作業電極として発泡ニッケル上のNiMoCoまたはPt/Cを、基準電極として飽和カロメル電極(SCE)を、および対向電極としてグラファイトロッドを利用することによって、3電極構成において行った。その基準電極を、Hを飽和させた約0.1MのKOH電解質中で可逆的水素電極(RHE)に関して較正し、E(RHE)=E(SCE)+1.01Vという関係を得た。線形掃引ボルタンメトリー曲線を、約-0.9~約-1.6V(対SCE)の間で約1mV/sで記録した。長期クロノポテンシオメトリー安定性試験を、約20mA cm-2という定電流密度を適用することによって、Hg/HgO基準電極を使用して行った。その電解質は、約30wt.%のKOHである。その報告される電流密度を、電極の幾何学的面積に対して正規化する。
【0064】
HORに向かうNiMoCoおよびPt/Cアノードの電気触媒活性を、作業電極として発泡ニッケル上のNiMoCoまたはPt/Cを、および対向電極としてグラファイトロッドを使用することによって、2電極構成において行った。HOR試験電池の製作は、スウェージロック式電池のものと同一である。その触媒を、水素およびアルゴン雰囲気下で、密閉したスウェージロック式電池において、別個に試験した。線形掃引ボルタンメトリー曲線を、約-0.1~約0.4Vの間で約1mV/sで記録した。長期クロノアンペロメトリー安定性試験を、約0.3Vという定電位の下で行った。
【0065】
材料特徴付け
【0066】
材料を、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)によって特徴付けた。その材料の結晶性および構造を、銅K吸収端X線(copper K-edge X-rays)を使用するPANalytical X’Pert回折計によって決定した。その生成物の形態を、FEI XL30 Sirion SEMによって観察した。TEMおよびエネルギー分散型X線分光法(EDX)を、FEI Tecnai G2 F20 X-TWIN TEMで行った。
【0067】
Ni-H円筒形電池のコスト評価
【0068】
電池のエネルギー資本コストを、以下の式に基づいて評価する:
【数1】
ここでCは、1キロワット時あたりの米国ドル(US$ kWh-1)単位の放電エネルギーあたりのエネルギー資本コストであり、Pは、US$ kg-1単位の各構成要素の具体的コストであり、mは、kg単位のその具体的構成要素の質量であり、Eは、kWh単位の放電エネルギーである。遷移金属の価格(Ni:US$14kg-1、Mo:US$26kg-1、Co:US$90kg-1)を、www.infomine.comから得る。セパレーターの価格(US$2m-2)およびKOHの価格(US$1kg-1)を、Alibaba.comから得る。その電池の詳細なコスト計算は、表1に示される。
【表1】
【0069】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」は、その文脈が別段明らかに規定しなければ、複数の対象物を含み得る。従って、例えば、1つの物体への言及は、その文脈が別段明らかに規定しなければ、複数の物体を含み得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に(substantially)」、「実質的な「substantial」」、および「約(about)」とは、小さな変動を記載しかつ説明するために使用される。事象または状況とともに使用される場合、その用語は、その事象または状況が正確に起こる場合、ならびにその事象または状況がごく近似して起こる場合をいい得る。例えば、数値とともに使用される場合、その用語は、その数値の±10%未満もしくは±10%(例えば、±5%未満もしくは±5%、±4%未満もしくは±4%、±3%未満もしくは±3%、±2%未満もしくは±2%、±1%未満もしくは±1%、±0.5%未満もしくは±0.5%、±0.1%未満もしくは±0.1%、または±0.05%未満もしくは±0.05%)の変動の範囲を包含し得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「サイズ(size)」とは、物体の特徴的な寸法をいう。従って、例えば、円形または球形である物体のサイズは、その物体の直径に言及し得る。非円形または非球形である物体の場合には、その物体のサイズは、相当する円形または球形の物体の直径に言及し得、ここでその相当する円形または球形の物体は、その非円形または非球形の物体のものと実質的に同じである導出可能または測定可能な特徴の特定のセットを示すかまたは有する。物体のセットが特定のサイズを有すると言及する場合、その物体がその特定のサイズあたりのサイズ分布を有し得ることが、企図される。従って、本明細書で使用される場合、物体のセットのサイズは、サイズ分布のうちの代表的なサイズ(例えば、平均サイズ、メジアンのサイズ、またはピークサイズ)に言及し得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「接続する(connect)」、「接続される(connected)」および「接続(connection)」とは、作動上の連結または繋がりをいう。接続される物体は、互いに直接的に連結され得るか、または互いに間接的に(例えば、1もしくはこれより多くの他の物体を介して)連結され得る。
【0073】
さらに、量、比、および他の数値はときおり、範囲形式において本明細書で提示される。このような範囲形式が便宜および簡潔さのために使用されることは理解されるべきであり、範囲の限度として明確に特定された数値を含むのみでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲を、各数値および部分範囲が明確に特定されるかのように含むことも、柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲は、約1および約200という明示的に記載される限度を含むのみでなく、個々の値(例えば、約2、約3、および約4)ならびに部分範囲(例えば、約10~約50、約20~約100など)をも含むことは、理解されるべきである。
【0074】
本開示は、その具体的実施形態を参照して記載されてきたが、添付の請求項によって定義されるとおりの本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得、均等物が置き換えられ得ることは、当業者によって理解されるべきである。さらに、多くの改変は、特定の状況、材料、組成物、方法、作動(単数または複数)を、本開示の目的、趣旨および範囲に適合するように行われ得る。全てのこのような改変は、本明細書に添付された請求項の範囲内にあることが意図される。特に、ある種の方法は、特定の順序で行われる特定の作動に言及して記載されていることもあるが、これらの作動が、本開示の教示から逸脱することなく均等な方法を形成するために、組み合わされ得るか、細分され得るか、または再度順序づけされ得ることは、理解される。よって、本明細書で具体的に示されなければ、その作動の順序およびグループ化は、本開示の限定ではない。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
金属-水素バッテリーであって、該金属-水素バッテリーは、
第1の電極;
第2の電極;および
該第1の電極と該第2の電極との間に配置された電解質、
を含み、ここで該第2の電極は、該第2の電極において水素放出反応および水素酸化反応の両方を触媒するように二元機能触媒を含む、金属-水素バッテリー。
(項2)
前記第2の電極は、導電性基材および該導電性基材を覆うコーティングを含み、該コーティングは、前記二元機能触媒を含む、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項3)
前記導電性基材は多孔性である、上記項2に記載の金属-水素バッテリー。
(項4)
前記導電性基材は、発泡金属または発泡合金を含む、上記項2に記載の金属-水素バッテリー。
(項5)
前記二元機能触媒は、ニッケル-モリブデン-コバルト合金を含む、上記項2に記載の金属-水素バッテリー。
(項6)
前記コーティングは、前記二元機能触媒のナノ構造体を含む、上記項2に記載の金属-水素バッテリー。
(項7)
前記第1の電極は、導電性基材および該導電性基材を覆うコーティングを含み、該コーティングは、遷移金属を含むレドックス反応性材料を含む、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項8)
前記導電性基材は多孔性である、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項9)
前記導電性基材は、発泡金属または発泡合金を含む、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項10)
前記遷移金属はニッケルである、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項11)
前記遷移金属はコバルトである、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項12)
前記遷移金属はマンガンである、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項13)
前記コーティングは、前記レドックス反応性材料のマイクロ構造体を含む、上記項7に記載の金属-水素バッテリー。
(項14)
前記第1の電極は、遷移金属を含む金属箔を含む、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項15)
前記電解質は水性電解質である、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項16)
前記電解質はアルカリ性である、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項17)
前記第1の電極、前記第2の電極、および前記電解質が内部に配置される囲いをさらに含み、該囲いは、入口バルブ、該入口バルブに流体接続されている入口、出口バルブ、および該出口バルブに流体接続されている出口を含む、上記項1に記載の金属-水素バッテリー。
(項18)
水素ガスを貯蔵するための貯蔵タンク、および前記出口と、前記出口バルブを経て、該貯蔵タンクとの間で流体接続されるポンプをさらに含む、上記項17に記載の金属-水素バッテリー。
(項19)
金属-水素バッテリーであって、該金属-水素バッテリーは、
遷移金属を含むレドックス反応性材料を含むカソード;
遷移金属合金を含む二元機能触媒を含む触媒性水素アノード;および
該カソードと該触媒性水素アノードとの間に配置されたアルカリ性電解質、
を含む金属-水素バッテリー。
(項20)
前記遷移金属合金は、ニッケル-モリブデン-コバルト合金である、上記項19に記載の金属-水素バッテリー。
(項21)
前記触媒性水素アノードは、導電性基材および該導電性基材を覆うコーティングを含み、該コーティングは、前記二元機能触媒のナノ構造体を含む、上記項19に記載の金属-水素バッテリー。
(項22)
触媒性水素電極の製造方法であって、該製造方法は、
導電性基材および該導電性基材と接触した状態にある析出溶液を提供する工程であって、ここで該析出溶液は、二元機能触媒の前駆物質を含む工程;ならびに
電着を行って、該導電性基材を覆う該二元機能触媒のコーティングを形成する工程、
を包含する製造方法。
(項23)
前記析出溶液は、ニッケル含有前駆物質、モリブデン含有前駆物質、およびコバルト含有前駆物質を含む、上記項22に記載の製造方法。
(項24)
前記コーティングは、前記二元機能触媒のナノ構造体を含む、上記項22に記載の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図10d
図11
図12
図13
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図15
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図17a
図17b
図17c
図17d
図18
図19
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図22