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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】搬送容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/12 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
B65D19/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021007476
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111808
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-130555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0250459(US,A1)
【文献】特開2007-176573(JP,A)
【文献】実開昭57-088723(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0491835(KR,Y1)
【文献】特開平09-309529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状をなす4本の角パイプからなるフレームと、
このフレームの開口部を塞ぐように前記角パイプの上面に設置されている底板と、
この底板に直交するように前記フレームの四隅に設置されている4本の支持脚と、
この4本の支持脚によってそれぞれ支持されている4本の支柱と、
この4本の支柱にそれぞれ設置されている4つの扉受け具と、
平面視矩形状をなし、横方向の両端に扉固定具がそれぞれ設けられるとともに、4本の前記角パイプの上にそれぞれ設置されている4枚の側板と、を備え、
前記扉受け具は、前記支柱の長手方向と平行に細長く形成されており、内部に上方から挿入配置された前記扉固定具を保持する嵌合溝を有しており、
前記側板は、両端が前記扉受け具を介して2本の前記支柱に対してそれぞれ着脱可能に連結され
前記側板の下端の横方向の両側に扉回動具がそれぞれ設けられるとともに、
前記支持脚は、扉保持具を備えており、
この扉保持具には、
内部に設置された前記扉回動具を回動可能に保持するガイド孔が長手方向と平行に細長く形成されるとともに、
前記扉回動具を前記ガイド孔に案内する第2のガイド溝が前記ガイド孔の長手方向に平行な一方の内壁面の一部から側方に向かって形成されていることを特徴とする搬送容器。
【請求項2】
前記扉回動具は、前記ガイド孔及び前記第2のガイド溝の内部に配置され、断面が矩形状をなす係合接続部を有し、
前記ガイド孔の幅は、前記係合接続部の前記断面の対角線よりも長く、
2つの内壁面が平行をなす前記第2のガイド溝の幅は、前記係合接続部の少なくともどちらか一方の幅よりも長く、かつ、前記係合接続部の前記対角線よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の搬送容器
【請求項3】
前記支柱は、角筒状又は角柱状をなして側面に係合部が前記長手方向へ細長く形成されるとともに、下端に前記長手方向と直交するように軸部材が設けられ、
前記支持脚は、前記係合部を内部に配置可能な係合溝及び前記軸部材が挿通される軸挿通孔が長手方向へ細長く形成されるとともに、互いに平行をなすように配置された長方形状の一対の軸保持部と、一対の前記軸保持部を繋ぐ接続部と、からなり、側面視コの字状をなす軸保持具が前記底板に対して前記軸保持部の前記長手方向が直交するように設けられ、
前記係合部は、前記軸部材が前記軸挿通孔の上端側にある場合に前記係合溝の外部に配置され、前記軸部材が前記軸挿通孔の下端側にある場合に前記係合溝の内部に配置されるように前記軸部材から所望の距離を隔てた位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送容器。
【請求項4】
前記支柱の前記下端には前記軸部材が挿設される円形の軸孔が穿設されており、
この軸孔の内径は、前記軸部材の外径よりも大きく、
前記軸孔の内周面から前記支柱の前記下端の角部までの最短距離は、前記軸挿通孔の内面から前記接続部の内面までの最短距離よりも短いことを特徴とする請求項に記載の搬送容器。
【請求項5】
前記扉受け具は、前記扉固定具を前記嵌合溝に案内する第1のガイド溝が前記嵌合溝の長手方向に平行な一方の内壁面の一部から斜め上方に向かって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の搬送容器。
【請求項6】
平面視矩形状をなすベース板と、
このベース板の直交する2側面から前記ベース板に対して鈍角をなすように下方へ延設される一対の傾斜板と、からなる傾斜カップを備え、
前記傾斜カップは、前記ベース板の中心が前記支持脚の中心軸上に配置されるとともに、前記フレームを上方から見た場合に一対の前記傾斜板が前記フレームの下方に配置されるように前記支持脚の下端に設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の搬送容器。
【請求項7】
前記扉固定具は、一対の第1の扉固定具及び一対の第2の扉固定具の2種類からなるとともに、
前記扉受け具は、前記第1の扉固定具に係合する第1の扉受け具及び前記第2の扉固定具に係合する第2の扉受け具の2種類からなり、
前記側板は、平面視矩形状をなし、上端の横方向の両側に前記第1の扉固定具及び前記第2の扉固定具がそれぞれ設けられた上扉及び下扉からなり、
前記支柱には、前記第1の扉受け具及び前記第2の扉受け具が設置され、
前記上扉の下端と前記下扉の上端は、連結具を介して揺動可能に連結されており、
前記上扉及び前記下扉は、両端が前記第1の扉受け具及び前記第2の扉受け具を介して2本の前記支柱に対してそれぞれ着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の搬送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用しないときには折り畳んで嵩張らない状態にすることが可能な搬送容器に係り、特に、側板が下端を中心として回動可能かつ着脱可能に容器本体に取り付けられた搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品などの重量物を客先等に納入する場合、高い剛性を有するとともに、フォークリフトやハンドリフトによって持ち上げ可能な構造であることが望ましいことから、底部にパレットを有し、スチールやアルミニウム等の金属によって形成された搬送容器が用いられることが多い。この搬送容器は重量物の運搬には適しているものの、一般に直方体状をなしており、保管の際には広いスペースを必要とする。このような課題に対処するものとして、使用しない場合には折り畳んで小型化できる構造の搬送容器について既に幾つかの発明や考案がなされている。
【0003】
組み立て可能な構造の容器に関しては、例えば、特許文献1には「輸送用容器およびその輸送方法」という名称で、工具を用いずに組み立てたり分解したりすることができる金属製の輸送用容器に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、脚体を兼ねる支持部材が四隅の角部に取り付けられた底板と、この底板に対して垂直をなすように支持部材で支持される正面板及び背面板並びに左右の側面板からなる輸送用容器であり、正面板及び背面板並びに左右の側面板が底板から離脱可能であって、かつ、底板に重なるようにして折り畳まれた状態となるように左右の側面板が下端を中心としてそれぞれ回動可能な構造を備えている。また、正面板及び背面板がそれぞれ中央で折り曲げ可能に蝶番を介して連結された2枚の平板によって構成されていることを特徴とする。
このような構造の輸送用容器においては、収納される物品の形状に応じて、左右の側面板を底板に対して起立した状態か、又は折り畳まれて重なり合う状態のいずれかの状態にすることができる。さらに、正面板及び背面板並びに左右の側面板を底板から取り外すことができるため、清掃が容易である。
【0004】
また、特許文献2には「折り畳み式パレットコンテナ」という名称で、底部にパレットを有するとともに分解及び組み立てが簡単なコンテナに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、フォークリフト等を用いて運搬することが可能なパレットコンテナであって、平面視矩形状をなし、対向する2辺にそれぞれヒンジが取り付けられた樹脂製パレットと、この樹脂製パレット上に降り畳み自在にヒンジを用いて樹脂製パレットに取り付けられた2枚のヒンジ側板と、このヒンジ側板の両端に形成された縦溝内に端部が挿入される2枚のフリー側板と、直角をなすように配置されたヒンジ側板とフリー側板を固定するロック機構と、2セットのヒンジ側板及びフリー側板によって形成される箱の上に被せられる天板を備えている。
このような構造のパレットコンテナにおいては、2枚の側板のみが樹脂製パレットにヒンジを介して連結されて折り畳み可能な構造となっていることから、4枚の側板が樹脂製パレットにヒンジを介して連結された構造に比べて製作コストが安いというメリットがある。また、上記構造であれば、4枚の側板が樹脂製パレットからバラバラに取り外し可能な構造に比べて、折り畳みや組み立てが容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-76646号公報
【文献】特開2008-24344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、左右の側板によって底板に対する正面板及び背面板の起立状態が維持される構造であり、左右の側板を取り外した場合には容器としての機能が発揮されない。すなわち、この輸送用容器は、底板の上に載置した場合に底板からはみ出る部分を有する物品を収容する際に、当該部分との干渉を避ける目的で正面板又は背面板を底板から取り外してしまうと容器として機能しないため、そのような物品の輸送には用いることができないという課題があった。また、内部に物品が収容された状態で他の輸送用容器を上に積み重ねることが可能な構造となっていないため、当該発明には、保管や輸送の際に広いスペースが必要となるという課題があった。
【0007】
特許文献2に開示された発明についても、上述の物品を収容する際に上記部分との干渉を避ける目的でヒンジ側板及びフリー側板の少なくともいずれか一方を樹脂製パレットから取り外してしまうと、容器として機能しないため、そのような物品の輸送には用いることができないという課題があった。また、当該発明は、内部に物品が収容された状態で他のパレットコンテナを上に積み重ねることが可能な構造となっていないため、保管や輸送の際に広いスペースが必要となるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、4枚の側板が着脱可能であるとともに、側板を全て取り外した状態でも使用可能であって、保管や搬送の際に広いスペースを必要としない搬送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る搬送容器は、平面視矩形状をなす4本の角パイプからなるフレームと、このフレームの開口部を塞ぐように角パイプの上面に設置されている底板と、この底板に直交するようにフレームの四隅に設置されている4本の支持脚と、この4本の支持脚によってそれぞれ支持されている4本の支柱と、この4本の支柱にそれぞれ設置されている4つの扉受け具と、平面視矩形状をなし、横方向の両端に扉固定具がそれぞれ設けられるとともに、4本の角パイプの上にそれぞれ設置されている4枚の側板と、を備え、扉受け具は、支柱の長手方向と平行に細長く形成されており、内部に上方から挿入配置された扉固定具を保持する嵌合溝を有しており、記側板は、両端が扉受け具を介して2本の支柱に対してそれぞれ着脱可能に連結されていることを特徴とするものである。
第1の発明では、4枚の側板がそれぞれ支柱によって個別に支持される構造であるため、どの側板が取り外された場合でも残りの側板の起立状態が支柱によって維持されるという作用を有する。また、第1の発明においては、側板を取り外すことにより小型化されて嵩張らない状態になるとともに、重量が軽減されるという作用を有する。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、支柱は、角筒状又は角柱状をなして側面に係合部が長手方向へ細長く形成されるとともに、下端に長手方向と直交するように軸部材が設けられ、支持脚は、係合部を内部に配置可能な係合溝及び軸部材が挿通される軸挿通孔が長手方向へ細長く形成されるとともに、互いに平行をなすように配置された長方形状の一対の軸保持部と、一対の軸保持部を繋ぐ接続部と、からなり、側面視コの字状をなす軸保持具が底板に対して軸保持部の長手方向が直交するように設けられ、係合部は、軸部材が軸挿通孔の上端側にある場合に係合溝の外部に配置され、軸部材が軸挿通孔の下端側にある場合に係合溝の内部に配置されるように軸部材から所望の距離を隔てた位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
第2の発明では、支柱が支持脚と平行な場合、支柱を上下に移動させることができ、この支柱の移動に伴って軸部材が軸挿通孔の内部で移動する。そして、軸部材が軸挿通孔の下端側にある場合には、支柱の側面に設けられた係合部が支持脚の係合溝に係合するため、軸部材を中心とする支柱の回動が係合溝によって拘束される。これにより、支柱は軸部材を中心とする回動が不能となって底板に対する起立状態が維持される。一方、軸部材が軸挿通孔の上端側にある場合には、係合部が係合溝に係合せず、支柱の回動が係合溝によって拘束されないため、支柱は軸部材を中心とする回動が可能となる。
すなわち、第2の発明においては、第1の発明の作用に加えて、支柱が支持脚と平行であって、かつ、係合部が係合溝に係合している場合には支柱は回動不能であるが、支柱を上方へ移動させることで係合部と係合溝の係合状態が解消された場合には支柱が軸部材を中心として回動可能になるという作用を有する。
また、第2の発明においては、支柱に対して接続部の方へ回動させるような力が加わった場合、その力の一部が支柱の側面から接続部へ直に加わることにより、係合部から係合溝に加わる力が低減されるという作用を有する。さらに、係合部が係合溝に係合している状態で支柱に対して接続部と反対の方向へ回動させるような力が加わった場合、その力を接続部が受けることにより、係合部から係合溝に加わる力が低減されるという作用を有する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、支柱の下端には軸部材が挿設される円形の軸孔が穿設されており、この軸孔の内径は、軸部材の外径よりも大きく、軸孔の内周面から支柱の下端の角部までの最短距離は、軸挿通孔の内面から接続部の内面までの最短距離よりも短いことを特徴とするものである。
軸孔の内径が軸部材の外径と略等しい場合、通常、支柱の下端及びその近傍の側面の一部は、軸孔の中心から軸保持具の接続部の内面までの距離を半径とする円弧状に形成される。しかし、この場合には支柱の製造コストが高くなる。一方、軸孔の内周面から支柱の下端の角部までの最短距離が軸挿通孔の内面から接続部の内面までの最短距離よりも短い場合には、支柱の下端を上述のような円弧状に形成しなくとも良い。しかし、この場合には、支柱が細くなってしまう。
これに対し、第3の発明では、軸孔の内周面から支柱の下端の角部までの最短距離が軸挿通孔の内面から接続部の内面までの最短距離よりも短いことから、支柱の下端を上述のような円弧状に形成する必要がない。そして、軸孔の内径が軸部材の外径よりも大きいことから、支柱の下端を上述のような円弧状に形成しない場合でも軸孔の内径が軸部材の外径と略等しい場合のように支柱が細くならない。
【0013】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、扉受け具は、扉固定具を嵌合溝に案内する第1のガイド溝が嵌合溝の長手方向に平行な一方の内壁面の一部から斜め上方に向かって形成されていることを特徴とするものである。
第4の発明では、扉固定具が第1のガイド溝を経て嵌合溝内に配置される構造であり、嵌合溝を構成する内壁の一部が嵌合溝内に配置された扉固定具の上方に突き出した状態となっている。したがって、第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、運搬時の振動によって側板が跳ね上がった場合でも、上述の内壁の一部が扉固定具に当接することで、扉固定具の嵌合溝からの離脱が防止されるという作用を有する。
【0014】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、側板の下端の横方向の両側に扉回動具がそれぞれ設けられるとともに、支持脚は、扉保持具を備えており、この扉保持具には、内部に設置された扉回動具を回動可能に保持するガイド孔が長手方向と平行に細長く形成されるとともに、扉回動具をガイド孔に案内する第2のガイド溝がガイド孔の長手方向に平行な一方の内壁面の一部から側方に向かって形成されていることを特徴とするものである。
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ガイド孔内に配置された扉回動具を第2のガイド溝から抜き取ることで扉保持具に対する扉回動具の係合状態が解消されるという作用を有している。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、扉回動具は、ガイド孔及び第2のガイド溝の内部に配置され、断面が矩形状をなす係合接続部を有し、ガイド孔の幅は、係合接続部の断面の対角線よりも長く、2つの内壁面が平行をなす第2のガイド孔の幅は、係合接続部の少なくともどちらか一方の幅よりも長く、かつ、係合接続部の対角線よりも短いことを特徴とするものである。
第6の発明では、第2のガイド溝の幅よりも間隔の短い係合接続部の2つの側面が第2のガイド溝の内壁面と平行な場合のみ、第2のガイド溝内を係合接続部が移動できる構造となっている。したがって、第6の発明においては、第5の発明の作用に加え、扉回動具が支持脚の長手方向に対して予め定められた角度をなすように側板を回動させた場合にのみ、支持脚からの取外しが可能になるという作用を有する。
【0016】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかにおいて、平面視矩形状をなすベース板と、このベース板の直交する2側面からベース板に対して鈍角をなすように下方へ延設される一対の傾斜板と、からなる傾斜カップを備え、傾斜カップは、ベース板の中心が支持脚の中心軸上に配置されるとともに、フレームを上方から見た場合に一対の傾斜板がフレームの下方に配置されるように支持脚の下端に設置されていることを特徴とするものである。
第7の発明においては、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明の作用に加えて、1つの搬送容器をクレーンやリフトなどによって吊り上げて他の搬送容器の上に積み重ねる際に、左右いずれかの支柱が傾斜カップの下方に配置されていれば、下側の搬送容器の支柱の上端縁に傾斜カップの傾斜板の内面が当接した段階で、下側の搬送容器から受ける反作用によって上側の搬送容器が両者の左右方向のずれが小さくなる方向へ移動するという作用を有する。また、第7の発明においては、傾斜カップの傾斜板がフレームの内側へ先端が突出するように設置されているため、傾斜板の先端がフレームの外側へ突出している場合に比べて、設置スペースが節約されるという作用を有する。
【0017】
第8の発明は、第1の発明乃至第7の発明のいずれかにおいて、扉固定具は、一対の第1の扉固定具及び一対の第2の扉固定具の2種類からなるとともに、扉受け具は、第1の扉固定具に係合する第1の扉受け具及び第2の扉固定具に係合する第2の扉受け具の2種類からなり、側板は、平面視矩形状をなし、上端の横方向の両側に第1の扉固定具及び第2の扉固定具がそれぞれ設けられた上扉及び下扉からなり、支柱には、第1の扉受け具及び第2の扉受け具が設置され、上扉の下端と下扉の上端は、連結具を介して揺動可能に連結されており、上扉及び下扉は、両端が第1の扉受け具及び第2の扉受け具を介して2本の支柱に対してそれぞれ着脱可能に連結されていることを特徴とするものである。
第8の発明においては、第1の発明乃至第7の発明のいずれかの発明の作用に加えて、上扉の上端の横方向の両側に設けられている一対の第1の扉固定具を一対の第1の扉受け具からそれぞれ取り外した状態で上扉を下扉に重ねるように揺動させると、下扉のみが支柱に取り付けられた状態となり、その下扉の上方が開放された状態になるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明は、4枚の側板が着脱可能であって、どの側板が取り外された場合でも残りの側板の起立状態が支柱によって維持されるとともに、全ての側板を取り外した状態でも使用可能な構造であるため、第1の発明によれば、底板の上に載置した場合に底板からはみ出る部分を有する物品についても当該部分に干渉しそうな側板を取り外すことにより、問題なく収容することができる。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の効果を有することに加え、物品の搬送時には支柱を回動不能にして支持脚に対する支柱の固定状態を確実なものにするとともに、保管時には支柱を折り畳んで嵩張らない状態にすることが可能である。そして、第2の発明では、支柱を上下させるという簡単な操作によって、支柱の回動不能な状態と回動可能な状態が切り換わるため、支柱を折り畳んだり、起立させたりする作業を効率良く行うことができる。
また、第2の発明によれば、支柱に対して回動させるような力が加わった場合でも係合溝にかかる負担が低減されることにより係合溝が破損し難い構造となっていることから、長期間、安全に使用することができる。
【0020】
第3の発明によれば、支柱の下端を円弧状に形成する必要がないため、第2の発明の効果に加え、製造コストが削減されるという効果を奏する。また、第3の発明では支柱の下端を円弧状に形成しない場合でも支柱が細くならないため、支柱が破損し難い。
【0021】
第4の発明によれば、運搬時の振動によって側板が跳ね上がったときでも側板が支柱から外れてしまうおそれがないため、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの効果に加え、車両等に積載して安全に運搬することができるという効果を奏する。
【0022】
特許文献1や特許文献2に開示された発明や考案において、輸送用容器やコンテナを折り畳んだ状態で運搬する場合、底板から取り外した正面板及び背面板を底板や左右の側面板に固定したり、ヒンジ側板から取り外したフリー側板をヒンジ側板や樹脂製パレットに対して固定したりする必要がある。
これに対し、第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、側板を支持脚から取り外さずに底板の上に重ねることにより、嵩張らない状態にできるため、取り外した正面板やフリー側板を底板やヒンジ側板に固定する必要がある特許文献1又は特許文献2に記載された発明に比べて格段に運搬時の作業性が良いという効果を奏する。
【0023】
第6の発明では、支持脚に対して所定の角度をなすように側板を回動させた場合にのみ、側板が支持脚から取り外し可能となっている。そのため、側板が支持脚から不用意に外れてしまうおそれがない。したがって、第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、使用時の安全性が高いという効果を奏する。
【0024】
第7の発明によれば、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明の効果に加えて、積み重ねられる際にずれが生じ難く、また、保管や搬送の際に広いスペースを必要としないという効果を奏する。
【0025】
第8の発明によれば、第1の発明乃至第7の発明のいずれかの発明の効果に加えて、底板の上に載置した場合に底板からはみ出る部分を有する物品を収容する場合に、当該部分と干渉しそうな上扉のみを下扉に重ねるように揺動させるだけで良いため、側板全体を支柱から取り外す場合に比べて作業性が良いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は本発明の実施の形態に係る搬送容器の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した容器本体の外観斜視図である。
図2】(a)は図1(b)において底板を取り外した状態を示した図であり、(b)及び(c)は同図(a)に示した支持脚の拡大図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ図2(b)及び図2(c)において支持脚から下扉保持具と補強具を取り外した状態を示した図である。
図4】(a)及び(b)はそれぞれ図2(b)及び図2(c)に示した下扉保持具及び補強具の拡大図であり、(c)及び(d)は図2(b)及び図2(c)に示した軸部材の拡大図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ上扉受け具及び下扉受け具の拡大図であり、(c)及び(d)は図1に示した支柱の拡大図である。
図6】(a)及び(b)は図2(b)の支持脚に図5(a)の支柱が連結された状態を示した側面図であり、(c)及び(d)は図2(c)の支持脚に図5(b)の支柱が連結された状態を示した側面図である。
図7】(a)及び(b)は図6(b)において支持脚と支柱の連結部分を拡大して示した断面図である。
図8】(a)及び(b)は図7(a)又は図7(b)に示した支柱において軸孔の内径が軸部材の外径と略等しい状態を表した図である。
図9】(a)は図1(a)に示した上扉及び下扉の平面図であり、(b)は上扉と下扉の連結部分を拡大した斜視図であり、(c)は同図(a)の側面図であり、(d)は同図(c)において下扉に重なるように上扉を揺動させた状態を示す図である。
図10】(a)及び(d)は図5(c)又は図5(d)の支柱において上扉受け具が取り付けられた部分を拡大して示した図であり、(b)は上扉の扉固定具の外観斜視図であり、(c)及び(e)は上扉受け具を嵌合溝が設けられた面に対して垂直に見た状態を表した図である。
図11】(a)は図5(c)の支柱において下扉受け具が取り付けられた部分を拡大して示した図であり、(b)は下扉受け具を嵌合溝が設けられた面に対して垂直に見た状態を表した図である。
図12】(a)及び(d)は図2(a)の支持脚において下扉保持具が取り付けられた部分の拡大図であり、(b)は扉回動具の外観斜視図であり、(c)は下扉保持具をガイド孔が設けられた面に対して垂直に見た状態を表した図である。
図13】(a)乃至(c)はそれぞれ図2(b)又は図2(c)に示した傾斜カップの斜視図、平面図及び側面図である。
図14】(a)は1つの搬送容器の上に他の搬送容器が積み重ねられる途中の状態を示した図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)におけるF部及びG部を拡大して示した図である。
図15】(a)及び(b)は図14(b)及び図14(c)において搬送容器が左方向へ移動した状態を示した図であり、(c)は横方向のずれが少ない状態で2つの搬送容器が積み重ねられた様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の搬送容器について図1乃至図15を用いて具体的に説明する。
なお、以下の説明では、本発明の搬送容器を金属製としているが、本発明の搬送容器は金属製に限定されるものではない。例えば、軽量物の搬送を用途として剛性や強度が求められない場合にはプラスチック製であっても良いし、軽量化と強度が必要な場合や重量物の搬送で剛性や強度が要求される場合等でも繊維強化プラスチック製とすることも可能である。そして、プラスチック製の搬送容器についても、以下に説明する金属製の搬送容器における作用及び効果は、同様に発揮される。また、以下の説明では、搬送容器が実際に使用されている状態、すなわち、水平な場所に置かれている状態を想定して、「上部」及び「下部」並びに「上下方向」及び「横方向」などの表現を用いている。
【実施例
【0028】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る搬送容器1の外観の一例を示した斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示した容器本体2の外観を示している。また、図2(a)は図1(b)において底板8を取り外した状態を示しており、図2(b)及び図2(c)は図2(a)に示した支持脚3a、3bを拡大した図である。
図3(a)及び図3(b)はそれぞれ図2(b)及び図2(c)において支持脚3a、3bから下扉保持具11と補強具13を取り外した状態を示している。また、図4(a)及び図4(b)はそれぞれ図2(b)及び図2(c)に示した下扉保持具11及び補強具13を拡大した図であり、図4(c)及び図4(d)は図2(b)及び図2(c)に示した軸部材10を拡大した図である。さらに、図5(a)及び図5(b)はそれぞれ上扉受け具22及び下扉受け具24を拡大した図であり、図5(c)及び図5(d)は図1に示した支柱4a、4bを拡大した図である。
【0029】
図1(a)及び図1(b)に示すように、平面視矩形状をなす搬送容器1は上面が開口した鉄製の箱であり、フレーム2aの上面に矩形状の底板8が接合された容器本体2には二対の支持脚3a、3bが四隅に設置されている。また、支持脚3a、3bには支柱4a、4bがそれぞれ連結されており、この支柱4a、4bを介してそれぞれ一対の上扉5a、5b及び下扉6a、6bが容器本体2に取り付けられている。すなわち、上扉5a、5b及び下扉6a、6bは搬送容器1の側板を構成している。
一対の支持脚3a、3bは、互いに平行をなすように設置された細長い平板材7aによって下端同士が連結されている。また、フレーム2aと平板材7aの間の空間は、平板材7aの長手方向の略中央部に鉛直方向と平行をなすように立設されて上端がフレーム2aの下面に接続された筒状の連結部材7bによって仕切られることにより、フォークリフトやハンドリフトの爪を刺し通すための挿通孔が形成されている。すなわち、搬送容器1には、フォークリフトやハンドリフトによる搬送を可能とするため、フレーム2a及び支持脚3a、3b並びに平板材7a及び連結部材7bによって構成されるパレットが容器本体2の底部に設けられている。
なお、上記パレットは、フォークリフトやハンドリフトの爪を2方向から差し込むことが可能となっているが、このような構造に限らず、例えば、さらに一対の平板材7aと連結部材7bを設置することによりフォークリフトやハンドリフトの爪を4方向から差し込み可能な構造としても良い。また、本実施例では搬送容器1を鉄製としているが、その材質は鉄に限らず、例えば、搬送容器1はステンレスやアルミニウムなどのように鉄以外の金属によって形成されたものであっても良い。
【0030】
図2(a)に示すように、フレーム2aは平面視した場合に矩形の各辺を構成するように設置された4本の角パイプ9aと、格子状をなすように上述の矩形の内部に設置されて平行な2本の角パイプ9a、9aを互いに連結する4本の角パイプ9bからなる。なお、角パイプ9bの本数は4本に限らず、適宜、変更可能である。
また、平面視した場合に矩形の各頂点となる箇所に設置された支持脚3a、3bは、角パイプ9aを介して互いに連結されている。そして、前述の底板8は上述の矩形の開口部を塞ぐように4本の角パイプ9aの上面に接合されている。
図2(b)及び図2(c)に示すように、支持脚3a、3bは支柱4a、4bと容器本体2の連結に用いられる軸部材10と、図4(a)を用いて後述するように角パイプ9a、9aの端部の上面に下端11a(図4(a)参照)が接合された下扉保持具11と、下扉保持具11が接合された軸保持具12a、12bと、下扉保持具11と軸保持具12a、12bの間に設置される補強具13と、軸保持具12a、12bの下端に設置された傾斜カップ14を備えている。
さらに、支持脚3a、3bは、図3(a)及び図3(b)に示すように、平面視略矩形平板状をなし、中央に貫通孔15aを有する蓋15と、上部を閉塞するように蓋15が上端に接合されるとともに傾斜カップ14の上面14aに立設された角パイプ9cを備えている。
軸保持具12a、12bは板材が折り曲げられた構造であり、側面視コ字状をなす上部は、平行に配置された平面視長方形状の一対の軸保持部16a、16bと、軸保持部16a、16bを繋ぐ平面視長方形状の接続部16cからなる。また、側面視L字状をなす軸保持具12a、12bの下部は、垂直に配置された2枚の支持部16d、16eによって構成されている。
【0031】
一対の軸保持部16a、16bには、軸部材10が挿通される軸挿通孔16fと、平面視U字状をなす係合溝16gが上端から長手方向と平行に細長く形成されている。なお、軸挿通孔16fも長手方向と平行に細長く形成されており、軸挿通孔16fの上端及び下端は、軸部材10の外径よりも大きい曲率半径を有する円弧状に形成されている。すなわち、軸挿通孔16fは軸部材10を回動可能に、かつ、上端から下端までの間で軸保持部16a、16bの長手方向に沿ってスライド可能に保持する構造となっている。
軸保持具12aでは、軸保持部16aが支持部16dに対して直角をなしているが、接続部16c及び軸保持部16bはそれぞれ支持部16d、16eと同一平面を形成している。また、軸保持具12bでは、軸保持部16bが支持部16eに対して直角をなしているが、軸保持部16a及び接続部16cはそれぞれ支持部16d、16eと同一平面を形成している。
そして、軸保持具12a、12bは、一対の軸挿通孔16f、16fの長手方向が角パイプ9cの長手方向に一致した状態で軸保持部16a、16b及び接続部16cが角パイプ9cの3つの側面を囲むように配置されるとともに、その3つの側面のうち、垂直に配置された2つの側面に対して支持部16d、16eの一部がそれぞれ接合された構造となっている。
【0032】
図4(a)に示すように、下扉保持具11は長方形の板材が片面側に複数回折り曲げられるようにして形成されており、ガイド孔18a及びガイド溝18bがそれぞれ設けられるとともに一端が直角に折り曲げられて接合部17bがそれぞれ設けられた一対の下扉保持部17a、17aの他端同士が接続部17cを介して連結された構造となっている。
一対の下扉保持部17a、17aは、それぞれに平行な2つの平面が直交するように配置されており、ガイド孔18aは、それら2つの平面と平行な方向へ細長く形成されており、ガイド溝18bは、ガイド孔18aの長手方向に平行な内壁面の一方から分岐して一部が接合部17bに達するように形成されている。
【0033】
図4(b)に示すように、補強具13は一方の端部13aの2つの角が面取りされた略長方形の板材において、端部13aが約45度折り曲げられた構造となっている。なお、下扉保持具11は、角パイプ9a、9bの端部の上面に一対の下扉保持部17a、17aの下端11aがそれぞれ接合されるとともに、角パイプ9cの2つの側面に一対の接合部17b、17bがそれぞれ接合されている。そして、補強具13は、下扉保持具11の下扉保持部17aと角パイプ9cの側面の間に設置されている。
図4(c)及び図4(d)に示すように、軸部材10は一端に頭部19aが設けられるとともに他端に直径方向に貫通孔(図示せず)が穿設された円柱状の軸本体19と、内径が軸本体19の外径よりも大きく、頭部19aの外径よりも小さく、かつ、外径が頭部19aの外径よりも大きい一対のワッシャ20、20と、軸本体19の上記貫通孔に挿設される抜け止め具21を備えている。また、軸本体19の内径は、軸保持具12a、12bの軸挿通孔16f、16fの幅よりも小さく、ワッシャ20の外径は軸保持具12a、12bの軸挿通孔16f、16fの幅よりも大きい。
【0034】
図5(a)に示すように、上扉受け具22は長方形の板材が片面側に複数回折り曲げられるようにして形成されており、嵌合溝23a及びガイド溝23bがそれぞれ設けられるとともに一端が直角に折り曲げられて接合部22bがそれぞれ設けられた一対の上扉受け部22a、22aの他端同士が接続部22cを介して連結された構造となっている。
一対の上扉受け部22a、22aは、それぞれに平行な2つの平面が直交するように配置されており、嵌合溝23aは、それら2つの平面と平行な方向へ細長く形成されている。また、ガイド溝23bは、嵌合溝23aの長手方向に平行な一方の内壁面の一部に設けられた第1の開口部23c(図10(a)参照)と、上扉受け部22aの上端に設けられた第2の開口部23d(図10(a)参照)を繋ぐように嵌合溝23aから斜め上方に向かって形成されている。
【0035】
図5(b)に示すように、下扉受け具24は長方形の板材が片面側に複数回折り曲げられるようにして形成されており、嵌合溝25がそれぞれ設けられるとともに一端が直角に折り曲げられて接合部24bがそれぞれ設けられた一対の下扉受け部24a、24aの他端同士が接続部24cを介して連結された構造となっている。
一対の下扉受け部24a、24aは、それぞれに平行な2つの平面が直交するように配置されており、嵌合溝25は、それら2つの平面と平行な方向へ細長く形成されている。なお、嵌合溝25は、長手方向に平行な2つの内壁面のうち、接続部24c側の内壁面の長手方向に沿った長さが接合部24b側の内壁面の長手方向に沿った長さよりも短い構造となっている。
【0036】
図5(c)及び図5(d)に示すように、支柱4a、4bは平面視略矩形平板状をなし、中央に貫通孔(図示せず)を有する蓋26と、半球状の頭部を露出した状態で蓋26の貫通孔に挿設されたボルト27と、上部を閉塞するように蓋26が上端に接合された角パイプ9dと、上扉受け具22及び下扉受け具24を備えている。なお、角パイプ9dの下端の近傍には、平行な一対の側面に軸部材10の軸本体19が遊挿される円形の軸孔28aがそれぞれ穿設されている。また、軸孔28aが穿設されている2つの側面のうちの一方には、係合部28bが支柱4a、4bの長手方向と平行に細長く形成されており、係合部28bの上方には下扉受け具24が設置されるとともに各パイプ9dの上端の近傍には上扉受け具22が設置されている。
上扉受け具22は、角パイプ9dの4つの側面のうち、垂直に配置された2つの側面に対して一対の接合部22b、22bがそれぞれ接合されており、下扉受け具24は、上扉受け具22の一対の接合部22b、22bが接合された上記2つの側面に対して一対の接合部24b、24bがそれぞれ接合されている。さらに、角パイプ9dの4つの側面のうち、上扉受け具22の一対の嵌合溝23a、23aがそれぞれ近接配置された2つの側面に対して下扉受け具24の一対の嵌合溝25、25がそれぞれ近接配置されている。
上扉受け具22及び下扉受け具24は、一対の嵌合溝23a、23a及び一対の嵌合溝25、25がそれぞれ近接配置された上記2つの側面の一方が、係合部28bが形成された角パイプ9dの側面と一致するように、支柱4a、4bに対してそれぞれ取り付けられている。ただし、支柱4a、4bでは、上扉受け具22の一対の嵌合溝23a、23a及び下扉受け具24の一対の嵌合溝25、25が近接配置される側面が角パイプ9dを上方から見た場合に90度ずれた状態となっている。
【0037】
図6(a)及び図6(b)は図2(b)の支持脚3aに図5(c)の支柱4aが連結された状態を示した側面図であり、図6(c)及び図6(d)は図2(c)の支持脚3bに図5(d)の支柱4bが連結された状態を示した側面図である。なお、図6(b)及び図6(d)では、支柱4a、4bが軸部材10を中心として回動した状態を破線で示している。
既に述べたように、支持脚3a、3bは支柱4a、4bに対して軸部材10を介して連結されており、軸部材10は軸保持具12a、12bの軸挿通孔16fの内部において軸挿通孔16fの上端から下端までの間で上下方向へスライド可能となっている。図6(a)及び図6(c)に示すように、軸部材10が軸挿通孔16fの内部において下端の位置にあると、係合部28bの下部が係合溝16gの内部に配置される。この場合、係合溝16gが係合部28bの上下方向への移動のみを許容し、係合部28bの回動を拘束するため、支持脚3a、3bは支柱4a、4bに対して上方への移動のみが可能となり、軸部材10を中心とする回動が不能な状態となる。
これに対し、図6(b)及び図6(d)に示すように、軸部材10が軸挿通孔16fの内部において上端の位置にあると、係合部28bの下部は係合溝16gの外部に配置されるため、係合部28bの回動は係合溝16gによって拘束されない。これにより、支持脚3a、3bは角パイプ9dの側面が補強具13の端部13a(図4(b)参照)に接するまで軸部材10を中心として回動可能な状態となる。
【0038】
すなわち、搬送容器1では、支柱4a、4bが支持脚3a、3bと平行な状態にあれば、支柱4a、4bを上下方向に移動させることが可能であり、支柱4a、4bを移動させた場合、それに伴って軸部材10が軸挿通孔16fの内部を上下方向に移動する。そして、軸部材10が軸挿通孔16fの下端側にある場合には、支柱4a、4bの側面に設けられた係合部28bが支持脚3a、3bの係合溝16gに係合するため、軸部材10を中心とする支柱4a、4bの回動が係合溝16gによって拘束される。これにより、支柱4a、4bは軸部材10を中心とする回動が不能となって底板8に対する起立状態が維持される。これに対し、軸部材10が軸挿通孔16fの上端側にある場合には、係合部28bが係合溝16gに係合せず、支柱4a、4bの回動が係合溝16gによって拘束されないため、支柱4a、4bは軸部材10を中心とする回動が可能となる。
このように、搬送容器1では、物品の搬送を行う際には、支柱4a、4bを回動不能にして支持脚3a、3bに対する支柱4a、4bの固定状態を確実なものにすることができる一方で、保管の際には、支柱4a、4bを折り畳んで嵩張らない状態にすることが可能である。そして、搬送容器1を用いることによれば、支柱4a、4bを上下させるという簡単な操作によって、支柱4a、4bの回動が不能な状態と、回動が可能な状態が切り換わるため、支柱4a、4bを折り畳んだり、起立させたりする作業を効率良く行うことができる。
【0039】
また、上記構造の搬送容器1において、支柱4a、4bに対して支持脚3a、3bに設けられた軸保持具12a、12bの接続部16cの方へ回動させるような力が加わった場合、その力の一部が支柱4a、4bの側面から接続部16cへ直に加わることにより、係合部28bから係合溝16gに加わる力が低減される。さらに、係合部28bが係合溝16gに係合している状態で支柱4a、4bに対して接続部16cと反対の方向へ回動させるような力が加わった場合に、その力を接続部16cが受けることにより、係合部28bから係合溝16gに加わる力が低減される。このように、搬送容器1では、支柱4a、4bに対して回動させるような力が加わった場合でも係合溝16gにかかる負担が低減されることにより係合溝16が破損し難い構造となっていることから、長期間、安全に使用することができる
【0040】
図7(a)及び図7(b)は図6(b)における支持脚3aに支柱4aが連結された部分を拡大して示しており、軸保持部16a、16bに平行な平面による支持脚3a及び支柱4aの断面図に相当する。また、図8(a)及び図8(b)は図7(a)又は図7(b)に示した支柱4a、4bにおいて軸孔28aの内径が軸部材10の外径と略等しい状態を表した図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、支柱4a、4bの角パイプ9dに設けられた軸孔28aの内径は、軸部材10の軸本体19の外径よりも大きい。また、軸孔28aの内周面から角パイプ9dの下端の角部までの最短距離Lは、軸挿通孔16fの内面から接続部16cの内面までの最短距離Lよりも短い。すなわち、支柱4a、4bの角パイプ9dは、軸部材10を中心として回動させる際に、下端の角部が接続部16cの内面と干渉しない構造となっている。
軸孔28aの内径が軸部材10の軸本体19の外径と略等しい場合、図8(a)に示すように支柱4a、4bを構成する角パイプ9dの下端及びその近傍の側面の一部を軸孔28aの中心から軸保持具12aの接続部16cの内面までの距離Lを半径とする円弧状に形成することによっても角パイプ9dの下端の接続部16cの内面に対する干渉が回避される。ただし、この場合には支柱4a、4bの製造コストが高くなる。
図7(a)及び図7(b)を用いて既に説明したように、軸孔28aの内周面から角パイプ9dの下端の角部までの最短距離Lが軸挿通孔16fの内面から接続部16cの内面までの最短距離Lよりも短い場合には、角パイプ9dの下端を図8(a)に示したような円弧状に形成しなくとも良い。しかし、この場合には、図8(b)に示すように角パイプ9dが細くなってしまう。
【0041】
これに対し、図7(a)又は図7(b)に示したように軸孔28aの内径が軸部材10の外径よりも大きければ、角パイプ9dの下端を図8(a)に示したような円弧状に形成しない場合でも図8(b)に示した状態ほど角パイプ9dが細くならない。このように、本発明の搬送容器1では、支柱4a、4bを構成する角パイプ9dの下端を円弧状に形成する必要がないため、製造コストを安くすることができる。さらに、搬送容器1では、軸孔28aの内径が軸部材10の外径と略等しい場合のように角パイプ9dを細くする必要がないため、支柱4a、4bが破損し難い。
【0042】
図9(a)は図1(a)に示した上扉5a及び下扉6aの平面図であり、図9(b)は上扉5aと下扉6aの連結部分を拡大した斜視図である。また、図9(c)は図9(a)の側面図であり、図9(d)は図9(c)において下扉6aに重なるように上扉5aを揺動させた状態を示している。なお、図9(a)乃至図9(d)では上扉5a及び下扉6aのみが示されているが、上扉5a及び下扉6aと上扉5b及び下扉6bは横方向の長さのみが異なり、それ以外の構造は同一である。したがって、ここでは上扉5b及び下扉6bについての説明は省略するが、以下に説明する上扉5a及び下扉6aにおける作用及び効果は上扉5b及び下扉6bにおいても同様に発揮される。
図9(a)に示すように、上扉5a及び下扉6aは、平面視した場合に矩形の各辺を構成するように設置された4本の角パイプ9eをそれぞれ備えており、4本の角パイプ9eの片面には矩形状のパネル29a、29bがそれぞれ接合されている。
上扉5aのパネル29aには、直角に折り曲げられた板材からなる取っ手30が上部の2つの角部にそれぞれ設置されている。また、上扉5aの上側の角パイプ9eの両端には扉固定具31aがそれぞれ設置されており、上扉5aの下側の角パイプ9eの両端の近傍には、略U字状をなす連結棒32がそれぞれ設置されている。なお、連結棒32は、両端を上方に向けるとともに上扉5aの横方向と平行な部分が上扉5aよりも下方へ突出するように、上記両端近傍の側面がそれぞれ角パイプ9eの側面に接合されている。
下扉6aのパネル29bには、両端がそれぞれ直角に折り曲げられた板材からなるコの字部材33が上部の2つの角部にそれぞれ設置されている。また、下扉6aの上側の角パイプ9eの両端には扉固定具31bがそれぞれ設置されており、下扉6aの下側の角パイプ9eの両端には扉回動具34がそれぞれ設置されている。
【0043】
図9(b)に示すように、コの字部材33は、連結棒32の一部をなす上述の上扉5aの横方向と平行な部分が内部に配置された状態で、両端がパネル29bにそれぞれ接合されている。このように、上扉5aと下扉6aは連結棒32及びコの字部材33を介して連結されているため、上扉5aは下扉6aに対して横方向及び上下方向に対して移動不能な状態となっている。ただし、上扉5aの下扉6aに対する揺動は連結棒32及びコの字部材33によって規制されていない。したがって、上扉5aを揺動させることにより、例えば、図9(c)に示すように上端が上側に配置された状態の上扉5aを図9(d)に示すように上端が下側に配置された状態にすることができる。
すなわち、上扉5a及び下扉6aは連結棒32及びコの字部材33からなる連結具を介して揺動可能に連結された構造となっているため、上扉5aの両端に設けられている一対の扉固定具31a、31aを一対の上扉受け具22、22からそれぞれ取り外すと、上扉5aを下扉6aに重ねるように揺動させることができる。このようにすると、下扉6aのみが支柱3a、3bに取り付けられた状態となり、その下扉6aの上方が開放された状態になる。したがって、底板8の上に載置した場合に底板8からはみ出る部分を有する物品を搬送容器1に収容する場合には、当該部分と干渉しそうな上扉5a又は上扉5bのみを下扉6a又は下扉6bに重ねるように揺動させるだけで、上扉5a又は上扉5bに対する当該部分の干渉を防ぐことができる。このように、搬送容器1では、上扉5a又は上扉5bを取り外すことなく、上述の物品の当該部分との干渉を防止できることから、側板全体を支柱から取り外す必要のある従来技術に比べて作業性が良い。
【0044】
図10(a)及び図10(d)は図5(c)又は図5(d)の支柱4a、4bにおいて上扉受け具22が取り付けられた部分を拡大して示しており、図10(b)は上扉5a、5bに設置された扉固定具31aの外観を示している。また、図10(c)及び図10(e)は上扉受け具22を嵌合溝23aが設けられた面(上扉受け部22a)に対して垂直に見た状態を表している。なお、図10(c)及び図10(e)では、扉固定具31aの断面(図10(b)におけるA-A線矢視断面)の外形を実線と破線で示すとともに、図10(d)では上扉5b及び扉固定具31aの外形を破線で示している。また、図10(a)及び図10(d)では支柱4aに上扉5bが取り付けられる様子又は支柱4bに上扉5aが取り付けられる様子が示されているが、支柱4aに上扉5aが取り付けられる場合や支柱4bに上扉5bが取り付けられる場合も扉固定具31aの機能は同一であるため、それらについての説明は省略する。
【0045】
図10(a)及び図10(b)に示すように、扉固定具31aは角パイプ9eの端部に後面35aが接合される略直方体状の接合部35の前面35bから前方へ突出するように係合接続部37aと係合部36が形成されており、接合部35と係合部36を繋ぐ係合接続部37aは、断面が矩形状をなしている。
なお、係合接続部37aの横幅は上扉受け具22のガイド溝23bの間隔の最小幅よりも短いため、図10(c)に破線で示すように、扉固定具31aは係合接続部37aがガイド溝23bを通過可能となっている。また、係合接続部37aの横幅が嵌合溝23aの幅よりも短いため、ガイド溝23bから嵌合溝23aに移動させられた係合接続部37aは、図10(c)に実線で示すような状態で嵌合溝23aの内部に配置される。さらに、係合接続部37aは対角線の長さが嵌合溝23aの幅よりも長いため、係合接続部37aは嵌合溝23aによって回動が拘束される。この場合、扉固定具31aは上扉受け具22に対して回動不能となる。これにより、上扉5bは支柱4aに対して、あるいは、上扉5aは支柱4bに対して、扉固定具31aを介して回動不能に連結される(図10(d)参照)。
【0046】
このとき、嵌合溝23aを構成する内壁の一部(図10(e)に示した係止部23e)は扉固定具31aの係合接続部37aの上方に突き出した状態となっている。したがって、例えば、搬送容器1を車両等に積載して運搬する際などに車両の走行に伴って発生する振動によって上扉5a、5bが跳ね上がった場合、係合接続部37aは係止部23eに当接する。これにより、扉固定具31aが嵌合溝23aから離脱して上扉受け具22から外れてしまうという事態が防止される。
すなわち、上扉受け具22においては、上扉5a、5bが上方に跳ね上がった場合に上扉受け具22の係止部23eが係合接続部37aに当接することによって扉固定具31aの嵌合溝23aからの離脱が阻止される。このように、搬送容器1は、上扉5a、5bが上方に跳ね上がった場合でも支柱4a、4bとの連結状態が解消され難いため、車両等で運搬する際の安全性が高いという効果を有している。
また、図10(d)に示した状態では、係合部36の先端36aが上扉受け具22の上扉受け部22aに係合することにより、上扉固定具31aは上扉受け具22から離れる方向への移動が拘束される。その結果、上扉5bは支柱4aに対して、あるいは、上扉5aは支柱4bに対して、離れる方向へ移動不能な状態となる。
【0047】
図11(a)は図5(c)の支柱4aにおいて下扉受け具24が取り付けられた部分を拡大して示した図であり、図11(b)は下扉受け具24を嵌合溝25が設けられた面(下扉受け部24a)に対して垂直に見た状態を表している。なお、図11(b)では、下扉6bの角パイプ9eの断面(図11(a)におけるB-B線矢視断面)の外形及び扉固定具31bの外形を実線や破線で示している。また、図11(a)では支柱4aを例にとって下扉受け具24に下扉6bが取り付けられる様子が示されているが、支柱4aに下扉6aが取り付けられる場合や支柱4bに下扉6a、6bが取り付けられる場合も下扉受け具24の機能は同一であるため、それらについての説明は省略する。
図11(a)に示すように、角パイプ9eの断面は略矩形状をなしており、この矩形の横幅は略直方体状をなす扉固定具31bの横幅よりも短い。したがって、扉固定具31bは、横方向の両端が角パイプ9bの側面よりも突出した状態で片面が角パイプ9eの端部に接合されている。
また、角パイプ9eの断面の横幅は下扉受け具24の嵌合溝25の間隔の最小幅よりも短いため、図11(b)に矢印Cで示すように、角パイプ9eは下扉受け具24の上方から嵌合溝25の内部へ真っ直ぐ差し入れるようにして角パイプ9e及び扉固定具31bを図11(b)に実線で示すような状態に配置することができる。
なお、角パイプ9eは、断面の最大幅L図11(b)参照)が嵌合溝25の幅よりも長く、角パイプ9eの回動が嵌合溝25によって拘束されるため、嵌合溝25の内部に角パイプ9eを配置することにより、下扉受け具24を介して支柱4aに連結される下扉6bは支柱4aに対して回動不能な状態となる。また、図11(b)に示した状態では、扉固定具31bにおいて角パイプ9eの左右に突出した部分が下扉受け具24の下扉受け部24aに係合することにより、扉固定具31bは下扉受け具24から離れる方向への移動が拘束される。その結果、下扉6bは支柱4aから離れる方向へ移動不能な状態となる。
【0048】
図12(a)及び図12(d)は図2(a)の支持脚3bに下扉保持具11が取り付けられた部分を拡大して示しており、図12(b)は扉回動具34の外観を示している。また、図12(c)は下扉保持具11をガイド孔18aが設けられた面(下扉保持部17a)に対して垂直に見た状態を表している。なお、図12(c)では、扉回動具34の断面(図12(b)におけるD-D線矢視断面)の外形を実線や破線で示すとともに、図12(d)では下扉6a及び扉回動具34の外形を破線で示している。また、図12(a)及び図12(d)では支持脚3bに下扉6aが取り付けられる様子が示されているが、支持脚3bに下扉6bが取り付けられる場合や支持脚3aに下扉6a、6bが取り付けられる場合も下扉保持具11の機能は同一であるため、それらについての説明は省略する。
図12(a)及び図12(b)に示すように、扉回動具34は角パイプ9eの端部に後面38aが接合される略直方体状の接合部38の前面38bから前方へ突出するように係合接続部37bと略直方体状の係合部39が形成された構造となっており、接合部38と係合部39を繋ぐ係合接続部37bは、断面が矩形状をなしている。
係合接続部37bの横幅は下扉保持具11のガイド溝18bの幅よりも短いため、図12(c)に破線で示すように、扉回動具34は係合接続部37bがガイド溝18bを通過可能となっている。係合接続部37bは対角線の長さがガイド溝18bの幅よりも長いため、ガイド溝18bの内部では係合接続部37bを回転させることができないが、ガイド溝18bとガイド孔18aの接続部分には、係合接続部37bを回転させることができるように幅広部18cが設けられている。
【0049】
ガイド溝18bからガイド孔18aに移動させられた係合接続部37bは、図12(c)に実線で示すような状態でガイド孔18aの内部に配置される。このとき、 係合接続部37bは、上記対角線の長さがガイド孔18aの幅よりも短いため、ガイド孔18aの内部では回転可能となっている。一方、矩形状をなす係合部39の断面は対角線の長さがガイド孔18aの幅よりも長く、係合部39が下扉保持具11の下扉保持部17aに係合することから、扉回動具34は下扉保持具11から離れる方向への移動については拘束される。
このように、搬送容器1においては、下扉保持具11が下扉6aを扉回動具34の係合接続部37bを軸として回動可能に保持するという作用を有している。
【0050】
既に述べたように係合接続部37bはガイド孔18aからガイド溝18bに移動可能となっている。そこで、ガイド溝18bの内部で係合接続部37bを矢印Eで示す方向へ移動させると、係合接続部37bをガイド溝18bから抜き取ることができる。そして、係合接続部37bをガイド溝18bから抜き取ると、下扉保持部17aと係合部39の係合状態が解消されるため、下扉6aは支持脚3bから容易に取り外し可能となる。
すなわち、搬送容器1では、上扉5aの扉固定具31aを上扉受け具22から抜き取るとともに下扉6aの扉固定具31bを下扉受け具24から抜き取ると、下扉6aが下端を中心として回動可能となる。そして、図12(d)に示すように下扉6aを倒して所定の角度まで回動させると、扉回動具34が下扉保持具11から抜き取り可能となる。そして、扉回動具34を下扉保持具11から抜き取ると、下扉6aは支持脚3bから取り外し可能となる。このように、搬送容器1では下扉6aを回動させるという簡単な操作により、下扉6aが支持脚3bから容易に取り外し可能となるため、上扉5a及び下扉6aを支柱4b及び支持脚3bから取り外す作業を短時間で効率良く行うことができる。なお、ガイド溝18bは水平に対して傾斜しており、下扉6aは水平状態を超えて更に上端側が下端側よりも低くなるように所定の角度まで回動された場合にのみ、支持脚3bからの取り外しが可能となっている。したがって、下扉6aは支持脚3bから不用意に外れるおそれがない。
【0051】
このように、搬送容器1では、上扉5a及び下扉6aを支柱4b及び支持脚3bから取り外すことができるだけでなく、下扉6aを支持脚3bに取り付けた状態で上扉5a及び下扉6aを底板8に重ねるように回動させることができる。すなわち、搬送容器1では、上扉5a及び下扉6aや上扉5b及び下扉6bを支持脚3a、3bから取り外さずに底板8の上に重ねることにより、嵩張らない状態にできるため、取り外した正面板やフリー側板を底板やヒンジ側板に固定しなければならない特許文献1又は特許文献2に記載された発明や考案に比べて格段に運搬時の作業性が良い。
また、搬送容器1では、支持脚3a、3bに対して所定の角度をなすように下扉6a、6bを回動させた場合にのみ、上扉5a及び下扉6aや上扉5b及び下扉6bを支持脚3a、3bから取り外すことができる構造となっている。そのため、上扉5a及び下扉6aや上扉5b及び下扉6bが支持脚3a、3bから不用意に外れてしまうおそれがない。したがって、搬送容器1は使用時の安全性が高い。
さらに、搬送容器1では、全ての上扉5a、5b及び下扉6a、6bが支柱4a、4bによってそれぞれ個別に支持される構造であるため、二対の上扉5a、5b及び下扉6a、6bのうちのどの扉が取り外された場合でも残りの扉の起立状態が支柱4a、4bによって維持される。すなわち、搬送容器1は、全ての上扉5a、5b及び下扉6a、6bを取り外した状態でも使用可能な構造であるため、底板8の上に載置した場合に底板8からはみ出る部分を有する物品についても、当該部分に干渉しそうな場所の扉を取り外すことにより、対応が可能である。
【0052】
図13(a)乃至図13(c)はそれぞれ図2(b)又は図2(c)に示した傾斜カップ14の斜視図、平面図及び側面図である。また、図14(a)は搬送容器1bの上に搬送容器1aが積み重ねられる途中の状態を示した図であり、図14(b)及び図14(c)はそれぞれ図14(a)におけるF部及びG部を拡大して示した図である。さらに、図15(a)及び図15(b)は図14(b)及び図14(c)において上方の搬送容器1aが左方向へ移動した状態を示した図であり、図15(c)は横方向のずれが少ない状態で2つの搬送容器1a、1bが積み重ねられた様子を示した図である。
なお、図14(a)乃至図14(c)及び図15(a)乃至図15(c)では、上扉5b及び下扉6bに対して垂直に搬送容器1a及び搬送容器1bを見た場合を例にとって、傾斜カップ14の作用について説明しているが、上扉5a及び下扉6aに対して垂直に搬送容器1a及び搬送容器1bを見た場合にも以下に説明する傾斜カップ14の作用及び効果は同様に発揮される。
図13(a)乃至図13(c)に示すように、傾斜カップ14は、円形の貫通孔40aを有し、平面視略矩形状をなすベース板40と、ベース板40の厚さよりも幅の広い板材が直角に折り曲げられるようにして形成されるとともに、下端がベース板40の下面40bよりも下方へ突出するようにL字の内側に位置する2つの面がベース板40の2つの側面に接合された補強材41と、ベース板40の直交する2つの側面のうち、補強材41が接合されていない方の2つの側面から下面40bに対して鈍角をなすように下方へ延設されるとともに境界部42aが接合された一対の傾斜板42、42を備えている。
また、傾斜カップ14は、ベース板40の貫通孔40aの中心が支持脚3a、3bの角パイプ9cの中心軸上に配置されるとともに、フレーム2aを上方から見た場合に傾斜板42、42がフレーム2aの下方に配置されるように支持脚3a、3bの下端に設置されている。なお、貫通孔40aの中心はベース板40の中心(矩形の対角線の交点)と一致しており、角パイプ9cの中心軸は、支柱4a、4bを支持脚3a、3bと平行な状態にした場合における角パイプ9dの中心軸と一致している。
1つの搬送容器1の上に他の搬送容器1を積み重ねる場合、まず、積み重ねられる方の搬送容器1(便宜上、搬送容器1aとする。)をクレーンやリフトなどによって吊り上げて、積み重ねようとする搬送容器1(便宜上、搬送容器1bとする。)の上方に移動させた後、搬送容器1aを下方へ移動させる。
このとき、搬送容器1aの搬送容器1bに対する位置合わせが不十分であっても、支柱4a、4bのいずれか一方が傾斜カップ14の下方に配置されていれば、以下に説明するように、搬送容器1aは搬送容器1bに対して、ずれが小さくなる方向へ移動する。
【0053】
例えば、図14(a)乃至図14(c)に示すように、搬送容器1bの支柱4aが搬送容器1aの傾斜カップ14の内部に配置されていなくとも、搬送容器1bの支柱4bが搬送容器1aの傾斜カップ14の内部に配置されている場合、搬送容器1aの下方への更なる移動に伴って、搬送容器1bの支柱4bに設置された蓋26の上面端部に搬送容器1aの傾斜カップ14の傾斜板42の内面が当接する。その結果、搬送容器1aの傾斜板42は、搬送容器1bの蓋26から矢印Hで示すような力を受ける。そのため、搬送容器1aについて横方向の移動が規制されていなければ、この力の水平成分の作用により、搬送容器1aは下方に移動しつつ、紙面右側に向かって移動する。
図14(a)乃至図14(c)に示した状態から搬送容器1aがさらに下方へ移動すると、図15(a)及び図15(b)に示すように、搬送容器1bの蓋26の上面に露出しているボルト27の頭部に搬送容器1aの傾斜カップ14のベース板40の貫通孔40aの下側の縁が当接する。この場合、搬送容器1aのベース板40が搬送容器1bのボルト27の頭部から受ける矢印Iで示すような力の水平成分の作用により、搬送容器1aは下方へ移動しつつ、ベース板40の貫通孔40aの内部にボルト27の頭部が完全に収まるまで紙面右側へ向かって移動する。その結果、搬送容器1bに積み重ねられた搬送容器1aは、搬送容器1bに対する横方向のずれが少ない状態となる(図15(c)参照)。
【0054】
このように、本発明の搬送容器1(図14(a)及び図15(c)では搬送容器1a)は、他の搬送容器1(図14(a)及び図15(c)では搬送容器1b)に積み重ねられる際にずれが生じ難いという効果を有している。
なお、保管や搬送の際に搬送容器1の隣に他の装置が並べて配置されることがあるが、このとき、傾斜板42の先端がフレーム2aの外側へ突出していると、その分だけ、隣りに設置される装置との間隔を広くとらなければならない。これに対し、傾斜板42の先端がフレーム2aの内側へ突出するように傾斜カップ14が支持脚3a、3bの下端に設置されている場合には、上述の場合のように、隣りに設置される装置との間隔を広くとる必要がない。すなわち、搬送容器1では傾斜カップ14の傾斜板42がフレーム2aの内側へ先端が突出するように設置された構造であるため、保管や搬送の際に広いスペースを必要としないというメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の搬送容器は、各種の部品を搬送する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1a、1b…搬送容器 2…容器本体 2a…フレーム 3a、3b…支持脚 4a、4b…支柱 5a、5b…上扉 6a、6b…下扉 7a…平板材 7b…連結部材 8…底板 9a~9e…角パイプ 10…軸部材 11…下扉保持具 11a…下端 12a、12b…軸保持具 13…補強具 13a…端部 14…傾斜カップ 14a…上面 15…蓋 15a…貫通孔 16a、16b…軸保持部 16c…接続部 16d、16e…支持部 16f…軸挿通孔 16g…係合溝 17a…下扉保持部 17b…接合部 17c…接続部 18a…ガイド孔 18b…ガイド溝 18c…幅広部 19…軸本体 19a…頭部 20…ワッシャ 21…抜け止め具 22…上扉受け具 22a…上扉受け部 22b…接合部 22c…接続部 23a…嵌合溝 23b…ガイド溝 23c…第1の開口部 23d…第2の開口部 23e…係止部 24…下扉受け具 24a…下扉受け部 24b…接合部 24c…接続部 25…嵌合溝 26…蓋 27…ボルト 28a…軸孔 28b…係合部 29a、29b…パネル 30…取っ手 31a、31b…扉固定具 32…連結棒 33…コの字部材 34…扉回動具 35…接合部 35a…後面 35b…前面 36…係合部 36a…先端 37a、37b…係合接続部 38…接合部 38a…後面 38b…前面 39…係合部 40…ベース板 40a…貫通孔 40b…下面 41…補強材 42…傾斜板 42a…境界部
図1
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