(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】原木移送機構およびスライス装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20230911BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20230911BHJP
B26D 7/32 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B26D3/28 610K
B26D7/02 Z
B26D7/32 A
(21)【出願番号】P 2021093394
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博志
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0143552(US,A1)
【文献】特開2000-288983(JP,A)
【文献】特開平08-118288(JP,A)
【文献】特開2001-270720(JP,A)
【文献】特開昭60-177885(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2529284(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 7/02
B26D 7/32
B25J 15/04
A22C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーシリンダを用いて少なくとも一対のツメを旋回させることにより、柱状の食品原木の後端部を把持するグリッパと、
前記グリッパが、先端に着脱可能に取り付けられた棒状のロッドを、リニアアクチュエータを用いて軸方向に前進または後退させることにより、前記グリッパに把持された食品原木を、当該食品原木の軸方向に移送する第1移送手段と、を備え、
前記ロッドには、前記エアーシリンダにエアーを供給する空気孔が、当該ロッドの軸方向に形成されており、空気圧源から供給されるエアーを、前記空気孔を通して前記エアーシリンダに供給することを特徴とする原木移送機構。
【請求項2】
前記ロッドの先端には、当該ロッドの空気孔と連通する配管を有する第1のコネクタが取り付けられ、また前記グリッパには、前記エアーシリンダと連通する配管を有する第2のコネクタが取り付けられ、
前記ロッドと前記グリッパは、前記第1および第2のコネクタによって機械的に結合され、前記空気圧源からのエアーは、前記ロッドの空気孔および前記第1および第2のコネクタの配管を通して前記エアーシリンダに供給される、請求項1に記載の原木移送機構。
【請求項3】
前記第1移送手段を前記原木の軸方向に移送する第2移送手段を更に備え、当該第2移送手段のテーブルには、前記第1移送手段が複数台取り付けられている、請求項1または2に記載の原木移送機構。
【請求項4】
前記第1移送手段は、前記リニアアクチュエータを収容する筐体を備え、当該筐体のうち前記グリッパと対向しない面には、前記空気圧源のエアーを前記ロッドの空気孔に供給する配管を通す開口が形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の原木移送機構。
【請求項5】
前記グリッパのツメを旋回する手段としてラックピニオンシステムを用い、当該ラックピニオンシステムのラックは、前記エアーシリンダのピストンロッドに取り付けられる、請求項1乃至4のいずれかに記載の原木移送機構。
【請求項6】
前記第2のコネクタは、前記エアーシリンダにエアーを供給する第1および第2の配管と、前記グリッパの筐体内にエアーを供給する第3の配管を有し、 かつ前記グリッパの先端には、食品原木の軸方向にスライド可能な検知板が取り付けられ、当該検知板が前記食品原木に当接して後退したとき、当該検知板によって前記第3の配管が閉じられてエアーの圧力が上昇する、請求項2乃至5のいずれかに記載の原木移送機構。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載の原木移送機構を有する原木移送ステーションと、
前記原木移送機構により移送された複数本の食品原木を、円板状の切断刃を用いて一定の幅でスライスするスライスステーションと、
少なくとも3台のコンベアで構成され、前記スライスステーションでスライスされた食品原木を積層して、当該食品原木に対応した数のスライス食品を作製すると共に、作製された複数個のスライス食品を、搬送方向およびそれと直交する方向に整列させる整列ステーションと、を備えたことを特徴とするスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハム等の食品原木を移送する原木移送機構、およびその移送機構が組み込まれたスライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハムやベーコンの製品の多くは、それらの食品原木をスライスした後、パック詰めした状態で販売される。具体的には、一定の速度で回転する切断刃に対して食品原木を移送・供給することにより、先端から順次所定の厚みにスライスし、それらをフィルム状のパッケージに封入している。
【0003】
食品原木をスライスする従来のスライス装置においては、グリッパとリニアアクチュエータで構成された原木移送機構を用いて、食品原木を切断刃に向けて移送している。
【0004】
具体的には、先端に爪が取り付けられたグリッパで食品原木の後端部を把持し、かつ当該グリッパを、リニアアクチュエータを用いて一定速度で移送しており、グリッパの爪は、エアー駆動のシリンダーを用いて開閉している。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したスライス装置では、衛生上の観点から、使用の都度、リニアアクチュエータからグリッパを取り外して洗浄している。
【0007】
しかし、グリッパの外面にはエアー供給用の複数の配管が取り付けられているため、清潔さを保ち難く、また配管が邪魔になって洗浄に時間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、清潔さを保ち易く、かつ洗浄にかかる時間を短縮できる原木移送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る原木移送機構は、
エアーシリンダを用いて少なくとも一対のツメを旋回させることにより、柱状の食品原木の後端部を把持するグリッパと、
前記グリッパが、先端に着脱可能に取り付けられた棒状のロッドを、リニアアクチュエータを用いて軸方向に前進または後退させることにより、前記グリッパに把持された食品原木を、当該食品原木の軸方向に移送する第1移送手段と、を備え、
前記ロッドには、前記エアーシリンダにエアーを供給する空気孔が、当該ロッドの軸方向に形成されており、空気圧源から供給されるエアーを、前記空気孔を通して前記エアーシリンダに供給することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記ロッドの先端には、当該ロッドの空気孔と連通する配管を有する第1のコネクタが取り付けられ、また前記グリッパには、前記エアーシリンダと連通する配管を有する第2のコネクタが取り付けられ、
前記ロッドと前記グリッパは、前記第1および第2のコネクタによって機械的に結合され、前記空気圧源からのエアーは、前記ロッドの空気孔および前記第1および第2のコネクタの配管を通して前記エアーシリンダに供給されることが好ましい。
【0011】
また前記第1移送手段を前記原木の軸方向に移送する第2移送手段を更に備え、当該第2移送手段のテーブルには、前記第1移送手段が複数台取り付けられていることが好ましい。
【0012】
前記第1移送手段は、前記リニアアクチュエータを収容する筐体を備え、当該筐体のうち前記グリッパと対向しない面には、前記空気圧源のエアーを前記ロッドの空気孔に供給する配管を通す開口が形成されていることが好ましい。
【0013】
前記グリッパのツメを旋回する手段としてラックピニオンシステムを用い、当該ラックピニオンシステムのラックは、前記エアーシリンダのピストンロッドに取り付けられることが好ましい。
【0014】
前記第2のコネクタは、前記エアーシリンダにエアーを供給する第1および第2の配管と、前記グリッパの筐体内にエアーを供給する第3の配管を有し、 かつ前記グリッパの先端には、食品原木の軸方向にスライド可能な検知板が取り付けられ、当該検知板が前記食品原木に当接して後退したとき、当該検知板によって前記第3の配管が閉じられてエアーの圧力が上昇することが好ましい。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明に係るスライス装置は、上述したいずれかに記載の原木移送機構を有する原木移送ステーションと、
前記原木移送機構により移送された複数本の食品原木を、円板状の切断刃を用いて一定の幅でスライスするスライスステーションと、
少なくとも3台のコンベアで構成され、前記スライスステーションでスライスされた食品原木を積層して、当該食品原木に対応した数のスライス食品を作製すると共に、作製された複数個のスライス食品を、搬送方向およびそれと直交する方向に整列させる整列ステーションと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る原木移送機構を用いれば、グリッパには、エアー配管等の外部に露出する部材がないため、清潔さを保ち易く、また洗浄に係る時間を短縮することができる。結果として、衛生面および保守面のそれぞれにおいて優れた効果を発揮する原木移送機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る原木移送機構が組み込まれたスライス装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】同スライス装置の原木移送ステーションの平面図である。
【
図3】同スライス装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1移送手段とグリッパとが接続された状態を示す斜視図である。
【
図5】第1移送手段とグリッパとが分離された状態を示す斜視図である。
【
図7】第1移送手段の概略の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る原木移送機構について、図面を参照して説明する。最初に、本実施の形態に係る原木移送機構が組み込まれたスライス装置の構成と各部の機能について説明する。
【0019】
<スライス装置の構成と機能>
スライス装置1は、食品原木Wをスライスした後、それを重畳してスライス食品Sを作製するものである。
図1に、原木を所定の幅でスライスするスライス装置の全体構成を示し、
図2に、そのうち原木移送ステーション2を上方から見た図を示す。
【0020】
スライス装置1は、ベース10上に設置された原木移送ステーション2、スライスステーション3および整列ステーション4で構成されている。本実施の形態で用いるスライス装置1は、3本の食品原木W(以降、「原木W」と略す。)を同時にスライスする機能を備えている。
【0021】
原木移送ステーション2はガイド部20と、その上に設置され、3本の原木Wをスライスステーション3に向けて移送する原木移送機構21とで構成されている。このうち原木移送機構21は、3本の原木Wのそれぞれを移送する第1移送手段22と、3台の第1移送手段22をまとめて移送する第2移送手段23とで構成されている。
【0022】
3本の原木Wを、3台の第1移送手段22を用いて個別に移送することも可能であるが、このような構成を採用した場合、第1移送手段の全長が長くなり、また第1移送手段を構成するリニアアクチュエータの製造コストが高くなる。
【0023】
これを避けるために、本実施の形態では、原木移送機構21の機能を2つに分け、3本の原木Wをスライスステーション3に向けて移送する機能は第2移送手段23に担当させ、第1移送手段22には、3本の原木Wの相互の位置を調整する機能を担当させている。このように第1移送手段22と第2移送手段23で機能を分担することにより、比較的低額で原木移送機構21を実現できる。
【0024】
原木移送ステーション2のうちガイド部20は、支柱11および12によってベース10上に傾斜して設置され、当該ガイド部20には、円柱状の3本の原木Wのそれぞれを収容する、断面が船底状の3本の支持レーン201が形成されている。
【0025】
支持レーン201に載置された原木Wは、
図1に矢印で示したように、スライスステーション3の円板状の切断刃31に向けて移送され、一定の厚みにスライスされる。
【0026】
スライスされた3枚の食品は、整列ステーション4のコンベア41上に落下した後、コンベア42および43で整列、すなわち搬送方向およびそれと直交する方向の位置が調節された後、包装機(図示せず)に向けて搬送される。以下、各ステーションについて具体的に説明する。
【0027】
図2に示すように、第2移送手段23は、ガイド部20の両端に設置されたボールねじ231とリニアガイド232、およびこれらを跨ぐように設置された平板状のテーブル233で構成されている。テーブル223は、ボールねじ231のナット(図示せず)と連結されており、モータ234によってボールねじ231が回転すると、テーブル233が切断刃31に向けて(
図2の紙面に向かって左側)移動する。
【0028】
一方、3台の第1移送手段22A~22Cは、テーブル233の下面に取付部材(図示せず)を介して固定されており、テーブル233が切断刃31に向けて移送されると、第1移送手段22A~22Cも、テーブル233と一体となって移送される。
【0029】
第2移送手段23に対して第1移送手段22A~22Cの位置を調節できるようにした理由は、原木Wの長さの違いを吸収するためである。
図2に示すように、原木Wは、第1移送手段22A~22Cのそれぞれの先端に取り付けられたグリッパ24で把持される。
【0030】
第1移送手段22A~22Cがない場合、原木Wの長さの違いを吸収できない。具体的に説明すると、原木Wのスライスを開始する際、第2移送手段23に対する第1移送手段22A~22Cの位置を調節して、スライスされる3本の原木Wの先端位置を一致させる。その後、第2移送手段23を前進させながら、切断刃31によるスライスを繰り返せば、原木を無駄なくスライスできる。
【0031】
第2移送手段23の移送量は、後述するコントローラ5(
図3参照)によって調節が可能である。また第1移送手段22A~22Cの構成と動作については、後に図面を参照して詳述する。
【0032】
図1の説明に戻って、支柱12に支持されたスライスステーション3は、原木Wをスライスする円板状の切断刃31、および切断刃31を自転させながら公転させる切断刃駆動部材32を備えている。
【0033】
切断刃駆動部材32を用いて、切断刃31を自転させながら公転させることにより、支持レーン201上を移送されてきた原木Wは一定の厚さにスライスされる。そのため、切断刃31の回転軸33は、回転板34の一端に、切断刃駆動部材32の回転軸より所定距離離した状態で、回転自在に支承されている。
【0034】
切断刃31でスライスされた食品が落下する位置には、スライス食品Sを受け取ると共に、それを下流の包装機(図示せず)まで搬送する整列ステーション4が設置されている。
【0035】
整列ステーション4は、3台のコンベア41、42および43で構成されている。コンベア41~43は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトが捲回されて構成されており、一方のプーリの軸に回転駆動用のモータが取り付けられている。
【0036】
第2移送手段23によって、支持レーン201上を一定のピッチで移送された3本の原木Wは、切断刃31を自転させながら公転させることにより、設定された厚さにスライスされ、コンベア41上に落下する。
【0037】
コンベア41を静止させた状態でスライスを繰り返せば、コンベア上に複数のスライス食品Sが重なった状態で積層される。一方、コンベア41を若干移動させながらスライスを繰り返すと、コンベア上にスライス食品Sがずらした状態で積層される。いずれの形態で積層するかは、包装用フィルムへの実装状態にあわせて決定される。
【0038】
コンベア41上に積層されたスライス食品Sは、コンベア42に移送され、搬送方向と直交する方向の位置が調整される。包装機においてスライス食品Sは搬送方向と直交する方向に3列並んだ状態で包装される。そのため、包装用フィルムには、搬送方向と直交する方向にスライス食品Sを収納する3列のポケットが均等な位置に形成されている。
【0039】
スライス装置1で3本の原木Wをスライスする際には、単一の切断刃31を用いて3本の原木Wを切断する制約上、コンベア41に落下した3枚のスライス食品間のピッチは、フィルムに形成されたポケットのピッチより狭い。このため、コンベア42で、スライス食品間のピッチを拡げると共に、フィルムのポケットの位置と一致させる必要がある。
【0040】
本実施の形態では、コンベア42を搬送方向と直交する方向に分割された3台の小コンベアで構成し、小コンベアで搬送する間に、スライス食品Sの各位置を、搬送方向と直交する方向にずらして、フィルムのポケットの位置と一致させている。
【0041】
コンベア43も、コンベア42と同様に3台の小コンベアで構成されている。それぞれの小コンベアは、コンベア42によって搬送方向と直交する方向の位置が調節されたスライス食品Sを受け取り、搬送方向のスライス食品Sの位置を調節する。切断刃31が前方に傾斜していることから、スライスされた3枚のスライス食品Sがコンベア41上に落下する位置が異なる。このため、下流側に配置されたコンベア(図示せず)に引き渡すまでに、コンベア43でスライス食品Sの搬送方向の位置を揃える。
【0042】
整列ステーション4の3台のコンベア41~43で搬送方向および搬送方向と直交する方向の位置が調節されたスライス食品Sは、図示しないコンベアによって包装機まで搬送される。
【0043】
図3に、スライス装置1の制御系の構成を示す。コントローラ5は、CPU、ROM、RAMおよび不揮発性メモリで構成され、原木移送ステーション2、スライスステーション3および整列ステーション4の各部の動作は、コントローラ5のメモリに格納されたプログラムによって制御される。
【0044】
図3に示すように、コントローラ5は、各ステーションに設置された位置センサ61や回転センサ62の出力信号に基づいて、各ステーションを駆動するモータ63やアクチュエータ64の動作タイミングを調節して、上述した一連の動作を実現する。位置センサ61には、後述する検知板243(
図6参照)の位置を検出するセンサが含まれ、アクチュエータ64には、後述するエアーシリンダ242(
図6参照)や電磁弁等が含まれる。
【0045】
<第1移送手段およびグリッパの構成と動作>
次に、
図4~
図7を参照して、第1移送手段22A~22Cおよび、それぞれの先端に取り付けられたグリッパ24の構成と動作を説明する。第1移送手段22A~22Cの構成と機能は同一であるため、以後の説明では、第1移送手段22Aを代表して説明し、符号の添え字“A”は省略する。
【0046】
最初に、
図4および
図5を参照して、第1移送手段22とグリッパ23との接続構造について説明する。
図4は、第1移送手段22とグリッパ23とが接続された状態を示し、
図5は、第1移送手段22とグリッパ23とが分離された状態を示す。
【0047】
グリッパ24は、清潔さを保つため、原木Wのスライスが終了する都度、洗浄する必要がある。このため、グリッパ24は、第1移送手段22から分離できるように構成されている。
【0048】
一方、グリッパ24の筐体240には、原木Wを把持するツメ241を開閉させるエアーシリンダ242(
図6参照)が内蔵されており、エアーシリンダ242を駆動するエアーは、第1移送手段22を介して空気圧源であるコンプレッサ(図示せず)から供給される。
【0049】
更に、グリッパの筐体240の前部には、原木Wの存在を検知する検知板243が取り付けられており、図示しないが、筐体240内には、検知板243にエアーを吹き付けるパイプ(配管)が内蔵されている。
【0050】
第1移送手段22が前進してグリッパ24の先端が原木Wに当接すると、検知板243が後退し、図示しないパイプの先端が検知板243によって閉じられ、エアーの圧力が上昇する。すると、エアー配管の途中に設置されたセンサが圧力の変化を検知し、これによってグリッパ24の先端が原木Wに当接したことを検知する。
【0051】
第1移送手段22の筐体220から突き出し、かつ軸受222によって支持されたロッド221は、グリッパ24によって把持された原木Wの位置を調節するものであり、筐体220に収容されたリニアアクチュエータによって前進および後退が可能に構成されている。リニアアクチュエータについては、後に図面を用いて詳述する。
【0052】
ロッド221は金属製の棒で作成され、内部には、グリッパ24に内蔵されたエアーシリンダ242にエアーを供給する2本の空気孔、更に、検知板243に吹き付けるエアーを供給する1本の空気孔、合計3本の空気孔701(
図6参照)が、ロッド221を軸方向に貫通するように形成されている。
【0053】
図5(a)に示すように、ロッド221の先端には、エアー供給用のコネクタ702が取り付けられており、コネクタ702には、3本の空気孔701に対応して3個のプラグ703が取り付けられている。
【0054】
一方、
図5(b)に示すように、グリッパ24の筐体240の後部には、第1移送手段22のコネクタ702に対応した形状のコネクタ711が取り付けられており、コネクタ711には、プラグ703と対応した形状の3個のソケット712が取り付けられている。3個のソケット712のうち2個は、シリンダー242にエアーを供給するパイプ713(
図6参照)に接続され、残りの1個は、検知板243にエアーを吹き付けるパイプ(図示せず)に接続されている。
【0055】
後述するように、ロッド221の他方の端面に形成された3本の空気孔701のポート705は、図示しないコンプレッサと接続された3本の配管(ここではチューブ)704と連結されている(
図7参照)。
【0056】
従って、
図4に示すように、コネクタ702のそれぞれのプラグ703と、コネクタ711のそれぞれのソケット712とを結合させた状態で、ボルト706によってコネクタ702と711を締結すると、ロッド221に形成された3本の空気孔701を介して、図示しないコンプレッサから供給されるエアーを、グリッパ24のシリンダー242と検知板243に供給する3本のエアー配管が形成される。
【0057】
次に、
図6を参照して、グリッパ24の構造と機能を説明する。
図6に、グリッパ24の概略の構造を示す。
図4に示した外観では、対向する2対のツメ241が直交する状態で、かつ検知板243と交錯した状態で配置されている。これに対し、
図6では、一対のツメ241が対向し、かつ検知板243と重ね合わさった状態で配置されており、構造が異なっているが、これは、グリッパ24の動作を分りやすく説明するため、構成部材を簡略化して示したものである。
【0058】
グリッパ24の筐体240内には、前述したエアーシリンダ242が収容され、ピストンロッド244の先端には、ツメ241を旋回して開閉させるラックピニオンシステム(ラック245、ピニオンギア246)が配置されている。
【0059】
検知板243は、原木Wに当接しない状態では、バネの力によって
図6(a)に示す状態に保持され、グリッパ24が前進して左方に移動すると、検知板243の先端が原木Wに当接し、検知板243が後退する。
【0060】
検知板243が後退して、図示しないパイプ(配管)の先端が閉鎖されると、配管内のエアーの圧力が上昇する。コントローラ5は、センサによってエアーの圧力上昇を検知し、ツメ241を旋回させて原木Wの後端部を把持する。
【0061】
具体的には、
図6(b)に示すように、2本のパイプ713のうち第1のパイプを通して供給されるエアーによって、シリンダー242のピストンロッド244が矢印で示す方向に後退すると、ピストンロッド244の前部に取り付けられたラック245が後退し、左右に配置されたピニオンギア246を回転させる。
【0062】
ピニオンギア246の回転軸にはツメ241が固定されており、ピニオンギア246が回転すると一対のツメ241が旋回し、ツメ241の先端が原木Wの後端部に食い込んで原木Wを把持する。この状態で第2移送手段23のテーブル233を前進させ、原木Wをスライスする。
【0063】
一方、ツメ231の把持から原木Wを開放する際には、
図6(a)に示すように、3本のパイプ713のうち第2のパイプからエアーシリンダ242にエアーを供給して、ピストンロッド244およびラック245を前進させ、一対のツメ241を旋回させて開く。
【0064】
この状態で、第2移送手段23のテーブル233を後退させると、原木Wがツメ241から解放され、また検知板243はバネの力で当初の位置に戻り、第3のパイプ(図示せず)から供給されるエアーが開放され、圧力が低下する。
【0065】
なお、
図6では、ラック245の両側に一対のツメ241が配置された場合に基いてグリッパ24の動作を説明したが、実際には、
図4(a)に示すように、グリッパ24の前部には、互いに直交する2対のツメ241が配置されており、ラック245を前進および後退させることによって、2対の爪241が開閉する。
【0066】
次に、
図7を参照して第1移送手段22の構成と動作を説明する。
図7は、第1移送手段22の構成を示す概略断面図である。前述の
図6と同様に、動作を分りやすく説明するため、構成部材を簡略化して示している。
【0067】
第1移送手段22の筐体220内には、前述したロッド221以外に、ロッド221を前進・後退させるボールネジ223とスライダ224、ボールネジ223を回転させるモータ225が内蔵されている。ボールネジ223とモータ225は、軸受けが内蔵されたブラケット226および軸受227によって、筐体220に支持されている。
【0068】
ボールネジ223、スライダ224およびモータ225によってリニアアクチュエータを構成しており、モータ225を駆動してボールネジ223を回転させると、スライダ224に固定されたロッド221が原木Wの軸方向に前進し、または後退する。
【0069】
原木Wを前進させるときは、
図7(a)に示すように、ボールネジ223を時計回りに回転させてスライダ224を前進させ、逆に、原木Wを後退させるときは、
図7(b)に示すように、ボールネジ223を反時計回りに回転させてスライダ224を後退させる。
【0070】
外部に設置されたコンプレッサ(図示せず)から供給されるエアーは、開口228に挿入された3本のチューブ704を通り、ロッド221の後端部に形成されたポート705を介してロッド221内の3本の空気孔701に供給される。更にエアーは、ロッド221の先端に取り付けられたコネクタ702、およびグリッパ24の筐体240に取り付けられたコネクタ711を介して、グリッパ24内の3本のパイプ713に供給される。
【0071】
上述したように、本実施の形態では、ロッド221は、グリッパ24によって把持された原木Wの位置を調節する手段の一部として機能し、また外部コンプレッサから供給されるエアーをグリッパ24に供給する配管の一部としても機能している。
【0072】
グリッパ24との間は、ロッド221の先端に取り付けられたコネクタ702を介して接続されており、またロッド221の後端部に接続されたチューブ704は、第1移送手段22の筐体220に形成された開口228を通ってコンプレッサと接続されており、エアー配管が外部に露出することはない。更に、開口228は、グリッパ24から原木Wの飛沫がかからないよう、筐体220のうちグリッパ24と対向しない面に形成されている。
【0073】
グリッパ24を洗浄する際には、第1移送手段22のコネクタ702とグリッパ24のコネクタ711を分離するが、グリッパ24の外面にはエアー配管が取り付けられておらず、コネクタ711のソケット712が露出しているだけであるため、洗浄の妨げとなるものはほとんどない。従って、グリッパ24の清潔さを保ち易く、また洗浄にかかる時間を短縮できる。
【0074】
なお、本実施の形態では、ボールネジを用いてリニアアクチュエータを構成しているが、他の部材、例えばリニアモータやベルト等を用いてリニアアクチュエータを構成してもよい。
【0075】
また本実施の形態では、ロッドに3本の空気孔を形成したが、空気孔の数は3本に限定されない。グリッパにエアー駆動のアクチュエータを組み込んだ場合には、当該アクチュエータにエアーを供給する空気孔をロッドに追加形成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
S スライス食品
W 原木
1 スライス装置
2 原木移送ステーション
3 スライスステーション
4 整列ステーション
5 コントローラ
10 ベース
11、12 支柱
21 原木移送機構
22 第1移送手段
23 第2移送手段
24 グリッパ
31 切断刃
32 切断刃駆動部材
33 軸
34 円板
41、42、43 コンベア
220、240 筐体
221 ロッド
222、227 軸受
223、231 ボールネジ
224 スライダ
225 モータ
228 開口
232 リニアガイド
233 テーブル
241 ツメ
242 エアーシリンダ
243 検知板
244 ピストンロッド
245 ラック
246 ピニオンギア
701 空気孔
702,711 コネクタ
703 プラグ
704 チューブ
705 ポート
712 ソケット
713 パイプ