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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/08 20060101AFI20230911BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20230911BHJP
   B41F 15/00 20060101ALI20230911BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B65H20/08
B65H5/02 H
B41F15/00 C
D06B11/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021501867
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004931
(87)【国際公開番号】W WO2020170868
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019027155
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008833
【氏名又は名称】東伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ノ▲瀬▼ 孝一
(72)【発明者】
【氏名】土肥 克己
(72)【発明者】
【氏名】西口 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】山城 和俊
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144671(JP,A)
【文献】特開2017-144680(JP,A)
【文献】実開平04-085465(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/08
B65H 5/02
B41F 15/00
D06B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物を下方より支持して水平方向へ搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを間欠送り動作させるベルト駆動機構と、
前記搬送ベルトの走行経路上に配置され、印刷対象物への印刷を施す印刷機構と、
前記印刷機構による印刷時に前記搬送ベルトを下方より支持する支持台と、
前記ベルト駆動機構による前記搬送ベルトの間欠送り動作を支援するベルト送り支援機構とを有し、
前記ベルト送り支援機構は、前記支持台に形成された空気孔と、前記空気孔から前記搬送ベルトの下面に向けて送り込む空気を供給する空気供給機構とを有する、印刷装置。
【請求項2】
前記ベルト送り支援機構は、前記ベルト駆動機構により前記搬送ベルトの間欠送り動作が行われる毎に前記間欠送り動作を支援する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ベルト送り支援機構は、前記搬送ベルトの下面と前記支持台との間に空隙を形成する空隙形成機構である請求項1または2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、詳しくは、印刷対象物を搬送する搬送ベルトの間欠送り動作を支援する機能を備えた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すようなスクリーン版を用いた印刷装置が提供されている。特許文献1に記載の印刷装置は、表面に布地が貼付けられて布地を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトを駆動させる駆動ローラと、布地の表面に位置決めされ印刷する図柄が形成されたスクリーン版と、スキージを有する印刷ユニットと、印刷ユニットによる布地への印刷時に搬送ベルトを下面から支持する支持台とを備えている。スクリーン版には製版領域が形成されている。製版領域は、インクが遮蔽される領域とインクが通過する孔とを有する。スクリーン版上にインクを流し、スクリーン版を布地に押し当てた状態でスキージをスクリーン版の表面で移動させることにより、インクがスクリーン版の孔を通過し、スクリーン版下の布地に印刷が施される。スキージの動作が完了すると、駆動ローラ及び搬送ベルトにより布地が間欠送りされ、スクリーン版の下に次に印刷が施される布地の表面領域が位置し、順次布地の表面に印刷が施される。
【0003】
また、印刷装置として、例えば特許文献2に示すようなインクジェット機構による印刷装置が知られている。この印刷装置はプリントヘッドに収容された複数のノズルを有しており、各ノズルは複数色のインクをそれぞれ噴射する。搬送ベルトはプリントヘッドの印刷ピッチの間隔で間欠的に布地を搬送する。布地を間欠的に搬送する毎に、布地の搬送方向に直交する方向(布地の幅方向)に沿ってプリントヘッドを移動させ、ノズルからインクを噴射し、布地の表面に図柄の印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-044330号公報
【文献】特許5116542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン版やインクジェット機構による印刷装置においては、布地の間欠送りの精度が荒く搬送誤差が生じる場合がある。印刷ピッチの長さよりも短い距離で布地が搬送されると、先に印刷された部分と後に印刷された部分とに大きな重なりが生じて色むらが発生することがある。また、印刷ピッチの長さよりも長い距離で布地が搬送されると、先に印刷された部分と後に印刷された部分との間に隙間が空いてしまうことがある。このように、搬送誤差があると布地に精度の良い印刷を施すことができない。このため、搬送誤差をできるだけ小さくし、搬送精度を向上させることが要望されている。
【0006】
搬送誤差が生じる原因の一つに、搬送ベルト自体の伸縮がある。印刷装置の搬送ベルトは、一般に無端状ベルトであり、布地の搬送方向の上流側と下流側とに設けられた駆動ローラ及び従動ローラの間に掛け渡されている。駆動ローラにはサーボモータなどの駆動源が接続されている。駆動源を間欠動作させることで、駆動ローラが回転し搬送ベルトが間欠送りされる。駆動ローラの駆動には誤差がない場合であっても、搬送ベルト自体が伸縮すると布地の搬送位置が所望の位置からずれ、結果として搬送誤差が生じる。特に、搬送ベルトの搬送方向の中央部は、上流側又は下流側の両端部のように駆動ローラ又は従動ローラに支持されておらず伸縮が生じやすくなる。また、搬送ベルトの中央部の下面を支持台と接触させて支持台により支持しながら搬送ベルトを間欠的に移動させると、搬送ベルトの下面と支持台の上面との間の摩擦力により搬送ベルトの中央部に伸びが生じる。搬送ベルトの材質にもよるが、±0.3mm程度の誤差が生じる場合がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、搬送ベルトの間欠送り動作時に搬送ベルトの伸縮を抑制する機能を有する印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による印刷装置は、印刷対象物を下方より支持して水平方向へ搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを間欠送り動作させるベルト駆動機構と、前記搬送ベルトの走行経路上に配置され、印刷対象物への印刷を施す印刷機構と、前記印刷機構による印刷時に前記搬送ベルトを下方より支持する支持台と、前記ベルト駆動機構による前記搬送ベルトの間欠送り動作を支援するベルト送り支援機構とを有する。
【0009】
上記の構成によれば、ベルト送り支援機構により搬送ベルトの間欠送り動作が支援されるので、搬送ベルトの伸縮を抑制し、布地に精度の良い印刷を施すことができる。
【0010】
一実施形態においては、前記ベルト送り支援機構は、前記ベルト駆動機構により前記搬送ベルトの間欠送り動作が行われる毎に、前記搬送ベルトの間欠送り動作を支援する。
【0011】
前記ベルト送り支援機構は、前記搬送ベルトの下面と前記支持台との間に空隙を形成する空隙形成機構であってもよい。
【0012】
前記ベルト送り支援機構は、前記支持台に形成された空気孔と、前記空気孔から前記搬送ベルトの下面に向けて送り込む空気を供給する空気供給機構とを有するものであってもよい。
【0013】
他の実施形態においては、前記ベルト送り支援機構は、前記搬送ベルトを押し上げて前記搬送ベルトを前記支持台から離反させる押上機構である。
【0014】
上記の他の実施形態においては、前記押上機構は、前記搬送ベルトの下面に当接して前記搬送ベルトを押し上げる押上部材と、前記押上部材の上端が前記支持台の上面に対して出没するように前記押上部材を昇降させる昇降機構とを備えたものであってもよい。
【0015】
前記押上部材は、前記搬送ベルトの移動とともに回転する押上ローラであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベルト送り支援機構により搬送ベルトの間欠送り動作が支援されるので、搬送ベルトの伸縮を抑制することができ、布地の搬送誤差を小さくして精度の良い印刷を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の全体の概略構成を示す側面図である。
図2】搬送ベルト、支持台の一部を切り欠いた要部の概略構成を示す平面図である。
図3】搬送ベルト、支持台の一部を切り欠いた要部の拡大斜視図である。
図4】印刷装置の要部の拡大断面図である。
図5】第2の実施形態に係る印刷装置の全体の概略構成を示す側面図である。
図6】印刷装置の概略構成を示す平面図である。
図7】押上機構の斜視図である。
図8】押上機構の他の例を示す側面図である。
図9】押上機構の他の例を示す側面図である。
図10】印刷装置の全体の概略構成の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1図4は、本発明の第1の実施形態の印刷装置10を示す。印刷装置10は、印刷対象物を下方より支持して水平方向へ搬送する搬送ベルト11と、搬送ベルト11を間欠送り動作させるベルト駆動機構12と、搬送ベルト11の走行経路上に配置され、印刷対象物への印刷を施す印刷機構13と、印刷機構13による印刷時に搬送ベルト11を下方より支持する支持台14と、ベルト駆動機構12により搬送ベルト11の間欠送り動作が行われる毎に搬送ベルト11の間欠送り動作を支援するベルト送り支援機構20とを有する。なお、間欠送り動作とは、搬送ベルト11を所定の距離搬送させる動作と停止させる動作とを含み、搬送動作と停止動作とを繰り返す動作をいう。
【0019】
印刷対象物は例えば布地Cである。布地Cの素材は特に限定されるものではなく、綿、絹などの天然繊維や、ポリエステル、レーヨン、アセテートなどの人造繊維などで構成された種々のものを用いることができる。布地は、図1において左側から右側に向けて搬送されており、布地が搬送される方向を搬送方向といい、搬送方向に直交する方向を布地の幅方向という。
【0020】
ベルト駆動機構12は、搬送方向の上流側及び下流側に設けられて回転駆動する駆動ローラ12a、12aと、駆動ローラ12a、12aの回転軸と連結されるサーボモータなどの駆動源(図示せず)とを備えている。駆動ローラ12a、12a間に無端状の搬送ベルト11が架けられており、駆動源により駆動ローラ12a、12aが回転して搬送ベルト11を間欠送り動作させる。なお、一方の駆動ローラ12aに替えて従動ローラを用いてもよい。
【0021】
搬送ベルト11は、ウレタンゴム等の弾性体により構成されており、上面に粘着層(図示せず)が設けられて布地Cを支持している。ロール状に巻かれた長尺の布地Cが搬送ベルト11の上流側に配置されており、繰り出しローラ15aにより繰り出され、貼付ローラ15bにより搬送ベルト11上に貼付けられる。搬送ベルト11によって搬送された布地Cは、表面に印刷が施された後、下流側で巻取ローラ15cにより巻き取られる。また、搬送ベルト11の表面は、下流側の駆動ローラ12aから上流側の駆動ローラ12aに向かう復路の途中に設置されている洗浄装置(図示せず)によって洗浄され、糊付装置(図示せず)によって表面に粘着層が形成される。
【0022】
印刷機構13は、例えばスクリーン印刷を行うものであり、搬送ベルト11に貼付けられた布地Cの上方であって、支持台14と上下に向き合うように、印刷装置10のフレーム16(図2)上に設けられている。印刷機構13は、版13aと、印刷ユニット13bと、版13a及び印刷ユニット13bとを移動させる移動機構(図示せず)とを備えている。版13aは、矩形状の枠の内側にスクリーン(図示せず)を取り付けたものである。スクリーンには、印刷される図柄に応じた微小の孔が穿孔されている。印刷ユニット13bは、版13aを挟んで布地Cの幅方向に沿って延びる2本のガイドフレームに沿って、一対のスキージキャリアが幅方向に往復動するものであり、スキージキャリアに支持されたスキージが、往動および復動時に版13aのスクリーンにスキージ圧を作用させる。このような印刷機構13による印刷は、まず、布地Cの表面に版13aのスクリーンが押しつけられ、次に、スクリーン上をスキージが移動する。これにより、スクリーン上のインクがスクリーンの微小孔を通過して布地Cに到達し、所望の図柄が布地Cに印刷される。印刷機構13は、使用するインクの色の数に応じて設けられ、例えば10色のインクを用いる場合には、10つの印刷機構13が搬送方向に沿って並べられる。なお、図1には、説明の便宜上、印刷機構13は1つのみを示している。印刷機構13は本実施形態の構成に限定されず、例えば、インクジェット印刷機構であってもよい。
【0023】
支持台14は、往路の搬送ベルト11の下方に設けられており、印刷装置10のフレーム16に支持されている。図2図4に示すように、支持台14は、上下方向に貫通する複数の空気孔21を有している。支持台14の下面には空気孔21と連通する上面が開口したダクト22が取付けられ、ダクト22は例えば送風ファンからなる空気供給機構23に空気管24を介して連結されている。空気供給機構23から供給される空気は、ダクト22を通って空気孔21から吹き出し、搬送ベルト11の下面に向けて送り込まれる。この空気により支持台14上に位置する搬送ベルト11の荷重が支持される。吹き出させる空気の所定時間当たりの量や各空気孔21から噴出される空気の速度は調整することができる。これらを調整することで、搬送ベルト11を支持台14から浮き上がらせ、搬送ベルト11の下面と支持台14との間に空隙を形成して支持台14の上面が搬送ベルト11の下面と接触しない状態とする。なお、図2図3において、印刷機構、布地、ベルト駆動機構は図示していない。
【0024】
支持台14に設けられた空気孔21と、空気管24と、空気供給機構23とは、ベルト送り支援機構20を構成しており、本実施形態ではベルト送り支援機構20は、搬送ベルト11の下面と支持台14との間に空隙を形成させる空隙形成機構である。しかし、ベルト送り支援機構20は空隙を形成するものに限定されるものではなく、送り込まれる空気の所定時間当たりの量や各空気孔21から噴出される空気の速度によっては、搬送ベルト11は支持台14から浮き上がらずに搬送ベルト11が支持台14と接触した状態であってもよい。
【0025】
本実施形態では、支持台14は、搬送方向の長さが1200mm、搬送方向に直交する方向(布地Cの幅方向)の長さが2400mm、厚みが3mmの9枚の支持板14A~14Iを、搬送方向に連続して配置したものである。しかし、支持台14はこの構成に限定されず、1枚の平板から形成されていてもよく、支持板の枚数やサイズも任意である。本実施形態では、各空気孔21の直径は、約2mmに設定している。
【0026】
本実施形態では、図1図3に示すように、2枚目、5枚目、8枚目の各支持板14B、14E、14Hそれぞれに、布地Cの幅方向に計4つのダクト22が取付けられており、4つのダクト22は空気管24を介して1つの空気供給機構23に連結されている。すなわち、本実施形態においては、支持台14に、1つの空気供給機構23と4つのダクト22との組が計3組設けられている。各支持板14B、14E、14Hの各ダクト22に対応する領域には、搬送方向に7つ、布地Cの幅方向に4つの空気孔21が設けられている。すなわち、1枚の各支持板14B、14E、14Hにはそれぞれ計48個の空気孔21が設けられている。
【0027】
空気孔21が形成される支持板、空気孔21の数や設けられる領域は本実施形態に限定されず適宜選択されるものであり、支持台14上に位置する搬送ベルト11の荷重を支持して搬送ベルト11と支持台14との間の摩擦力を低減することができればよい。空気孔21は支持台14のいずれの領域に形成されていてもよい。また、空気孔21に空気を供給することができれば、ダクト22の大きさや数、空気管24の数、空気供給機構23の数は限定されず、例えば、各支持板14B、14E、14Hに1つのダクト22が設けられていてもよい。また、複数のダクト22にそれぞれ空気供給機構23が設けられていてもよい。この場合、ダクト22と連通する空気孔22から供給される空気の量を空気供給機構23毎に調整することができる。
【0028】
本実施形態においては、空気孔21の設けられていない1、3、4、6、7、9枚目の支持板14A、14C、14D、14F、14G、14Iの上方に印刷機構13を設けているが、空気孔21の直径が印刷機構13による布地Cへの印刷に影響を与えない程度の大きさであれば、支持板14B、14E、14Hの上方に印刷機構13を設けていてもよい。なお、図1においては、支持板14Aの上方の印刷機構13のみを示している。
【0029】
駆動ローラ12a、12aを駆動する駆動源、印刷機構13、空気供給機構23は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置によりその動作が制御されている。
【0030】
第1の実施形態の印刷装置10の印刷動作は以下の通りである。まず、布地Cが搬送ベルト11の間欠送り動作により印刷機構13の下方に搬送されて停止する。そして、印刷機構13の版13aが布地Cに上方から押し付けられ、スキージの移動によりインクが版13aに設けられた微細孔から布地Cに移されることにより、布地Cに印刷が施される。このとき、支持台14の支持板14Aの表面は搬送ベルト11の下面と接触して布地Cを支持する。次に、搬送ベルト11の間欠送り動作により、次に印刷が施される布地Cの領域が印刷機構13の下に位置するよう、布地Cが搬送されて停止する。そして、印刷機構13の下に送られた領域に印刷が施される。これらの動作を繰り返して布地Cに印刷が施される。
【0031】
上記の印刷動作においては、空気供給機構23がベルト駆動機構12による搬送ベルト11の間欠送り動作毎に空気を支持台14の空気孔21に供給する。すなわち、搬送ベルト11の搬送動作の直前の停止動作中に、図4の矢印A1に示すように、空気供給機構23により空気が空気管24を介してダクト22に供給され、矢印A2に示すように支持台14(図示例では支持板14E)の空気孔21に供給される。これにより、矢印A3のように空気孔21から搬送ベルト11の下面に向けて空気が送り込まれ、搬送ベルト11が支持台14から持ち上げられて搬送ベルト11と支持台14との間に空隙が形成され、支持台14に接触しない状態となる。この状態で、ベルト駆動機構12により搬送ベルト11が搬送動作され、所定の距離を移動して停止動作した後、空気供給機構23による空気の供給が停止される。これにより、搬送ベルト11が支持台14に降ろされ、支持台14と接触した状態となる。この後、印刷機構13により布地Cに印刷が施される。このように、搬送ベルト11の搬送動作の間は、空気孔21から搬送ベルト11の下面に向けて空気が送り込まれ、搬送ベルト11が支持台14から持ち上げられて搬送ベルト11と支持台14との間に空隙が形成され、支持台14に接触しない状態となる。
【0032】
上記の構成によれば、空気供給機構23が空気を支持台14の空気孔21に供給することで、搬送ベルト11は支持台14から浮きつつ空気により下方から支持され、搬送ベルト11の移動時に搬送ベルト11の下面と支持台14の上面との間に生じる摩擦力が低減するため、搬送ベルト11の中央部に伸びが生じるのを防ぐことができ、搬送誤差を小さくすることができる。このように、本実施形態の印刷装置10によれば、搬送ベルト11の間欠送り動作を支援することができる。
【0033】
なお、搬送ベルト11と支持台14との間に空隙が形成されずに搬送ベルト11が支持台14と接触した状態のまま、ベルト駆動機構12により搬送ベルト11が間欠送り動作されてもよい。この場合であっても、搬送ベルト11は空気により下方から支持され、搬送ベルト11の移動時に搬送ベルト11の下面と支持台14の上面との間に生じる摩擦力が低減するため、搬送ベルト11の中央部に伸びが生じるのを防ぐことができ、搬送誤差を小さくすることができる。
【0034】
本実施形態では、空気供給機構23は搬送ベルト11の間欠送り動作に同期して動作しており、搬送ベルト11の搬送動作の間はベルト送り支援機構20により搬送ベルト11の下面に向けて空気が供給され、搬送ベルト11の停止動作中であって印刷機構13による印刷が施されている間は空気が供給されていない。しかし、供給される空気が印刷機構13による布地Cへの印刷に影響を与えない場合には、印刷装置10の印刷動作中においてもベルト送り支援機構20により搬送ベルト11の下面に向けて空気が供給され続けていてもよい。すなわち、搬送ベルト11が間欠送り動作して布地Cを搬送し、布地印刷装置10によるロール状の布地Cへの印刷が開始されて終了するまでの印刷動作の間、常に、ベルト送り支援機構20により搬送ベルト11の下面に向けて空気が供給され続けていてもよい。この場合、印刷装置10の動作中に空気供給機構23を制御する必要がない。
【0035】
なお、ベルト送り支援機構20は上記の構成に限定されず、搬送ベルト11の荷重を支持して搬送ベルト11の下面と支持台14の間の摩擦力を低減することができればいずれの形態でもよい。例えば、支持台14の幅方向の両側であって、支持台14の上面と揃う高さ位置に空気噴射装置を配置し、搬送ベルトの搬送動作時に空気噴射装置により空気を噴射させて搬送ベルト11を持ち上げて空隙を形成する空隙形成機構であってもよい。
【0036】
図5図7は本発明の第2の実施形態の印刷装置10を示す。本実施形態の印刷装置10において、第1の実施形態と同一の構成については、対応する構成に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、支持台14は、支持板14A~14Cの組14aと支持板14D~14Fとの組14bとを搬送方向に間隔を開けて配置したものである。組14aと組14bとは、それぞれ、第1の実施形態と同様の支持板14A~14Fを搬送方向に3枚連続して配置することで構成されている。しかし、この構成に限定されず、各組の支持板14A~14Fは1枚の平板から形成されていてもよく、任意の枚数の平板から形成されていてもよく、支持板14A~14Fのサイズも任意である。
【0038】
支持板の組14a、14bの間には、ベルト送り支援機構を構成する押上機構30が配置されている。押上機構30は、搬送ベルト11を押し上げて搬送ベルト11を支持台14から離反させるものであり、図7に示すように、搬送ベルト11の下面に当接して搬送ベルト11を押し上げる押上部材31と、押上部材31の上端が支持台14の上面に対して出没するように押上部材31を昇降させる昇降機構32とを備える。
【0039】
押上部材31は支持台14の幅方向の長さと略同じ長さの2本の押上ローラ31A、31Aを備えている。各押上ローラ31A、31Aは搬送方向に直交する方向、すなわち布地Cの幅方向に沿って、搬送方向に間隔を開けて並べられている。各押上ローラ31A、31Aは内部にベアリング等を備え、回転軸31aに回転自由に支持されており、搬送ベルト11の下面と接触して搬送ベルト11の移動により回転する。なお、押上ローラ31A、31Aの数は、1本でもよく3本以上であってもよいが、搬送ベルト11の移動時の搬送ベルト11と押上ローラ31A、31Aとの間の摩擦力を低減する観点からは数が少ない方が好ましく、搬送ベルト11を安定して持ち上げる観点からは数が多い方が好ましく、本実施形態では2本としている。
【0040】
昇降機構32は押上ローラ31A、31Aの長さ方向(布地の幅方向)の両端側にそれぞれ設けられ、図7に示すように、可動板33と、フレーム16や印刷装置10の基台(図示せず)などに固定された一対のガイドフレーム34、34と、例えば油圧シリンダ35からなるアクチュエータとを備えている。可動板33は内面に軸支溝33aが形成されており、各押上ローラ31A、31Aの回転軸31aの両端が軸支溝33aに支持されている。可動板33の長さ方向(搬送方向)の端部は、ガイドフレーム34、34に設けられたガイド溝34aにスライド自由に支持されている。油圧シリンダ35は、シリンダ本体35aと、シリンダ本体35aに対して出没動作するロッド35bを備え、ロッド35bの先端が可動板33の下面に接続されている。ロッド35bの出没動作により、ガイドフレーム34、34に沿って可動板33に取付けられた押上ローラ31A、31Aが昇降する。ロッド35bがシリンダ本体35aに引き込まれた状態では、押上ローラ31A、31Aの上端は支持台14の上面よりも下方に位置し、ロッド35bがシリンダ本体35aから伸張した状態では、押上ローラ31A、31Aの上端は支持台14の上面よりも上方に位置する。押上ローラ31A、31Aが搬送ベルト11の下面に当接して搬送ベルト11を押し上げた状態で、支持台14の上面から押上ローラ31A、31Aの上端までの高さは、約5~10mmに設定されているがこれに限定されるものではない。
【0041】
駆動ローラ12a、12aを駆動する駆動源、印刷機構13、昇降機構32のアクチュエータ(油圧シリンダ35)は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置によりその動作が制御されている。
【0042】
第2の実施形態の印刷装置10の印刷動作について、第1の実施形態の印刷装置10と異なる点を説明する。
【0043】
印刷動作において、搬送ベルト11の搬送動作の直前の停止動作中に、昇降機構32の油圧シリンダ35のロッド35bが伸張して可動板33が上昇し、押上ローラ31A、31Aの上端が支持台14の上面よりも上に持ち上げられ、搬送ベルト11は支持台14から離反する。押上ローラ31A、31Aの上昇により、搬送ベルト11が支持台14から持ち上げられて支持台14に接触しない状態となる。この状態で、ベルト駆動機構12により搬送ベルト11が搬送動作され、所定の距離を移動するが、このとき、押上ローラ31A、31Aは搬送ベルト11の移動に伴って回転する。この回転により押上ローラ31A、31Aと搬送ベルト11との間の摩擦力が小さくなり、搬送ベルト11が押上ローラ31A、31Aの影響を受けて伸縮するのを防いでいる。搬送ベルト11が所定の距離を移動して停止動作をすると、油圧シリンダ35のロッド35bがシリンダ本体35aに引き込まれて可動板33が下降し、押上ローラ31A、31Aは支持台14の上面よりも下位置となる。これにより、搬送ベルト11が支持台14に降ろされ、支持台14と接触した状態となる。この後、印刷機構13により布地Cに印刷が施される。このように、搬送ベルト11の搬送動作の間は、昇降機構32により搬送ベルト11が支持台14から持ち上げられて搬送ベルト11が支持台14に接触しない状態となる。
【0044】
上記の構成によれば、押上ローラ31A、31Aが搬送ベルト11の間欠送り動作毎に搬送ベルト11を持ち上げて支持台14から離反させることで、搬送ベルト11の移動時に搬送ベルト11の下面と支持台14の上面との間に摩擦力が生じないため、搬送ベルト11の中央部に伸びが生じるのを防ぐことができ、搬送誤差を小さくすることができる。このように、本実施形態の印刷装置10によれば、搬送ベルト11の間欠送り動作を支援することができる。
【0045】
押上ローラ31A、31Aは搬送ベルト11の移動に伴って回転せず、棒状部材であってもよい。この場合、ベルト駆動機構12により搬送ベルト11が搬送動作され、所定の距離を移動するとき、押上ローラ31A、31Aは搬送ベルト11の下面と接触するが回転はしない。この場合であっても、従来技術に比べ、押上ローラ31A、31Aと搬送ベルト11との間の摩擦力が小さくなる。
【0046】
また、昇降機構32の構成は本実施形態に限られず、押上ローラ31A、31Aを持ち上げることができればいずれの構成であってもよい。例えば、図8に示すように、昇降機構32がロッドレスシリンダ40であってもよい。ロッドレスシリンダ40は、例えば、フレーム16や印刷装置10の基台(図示せず)などに固定された上下位置の基部40a、40aの間にシリンダチューブ40bが配置されたものであり、シリンダチューブ40b内にはピストン(図示せず)が収容され、シリンダチューブ40bの外周面に、スライド体40cがシリンダチューブ40bに沿ってスライド可能に設けられている。ピストンとスライド体40cとは磁気結合力で一体に移動し、例えばエアによりピストンを移動させることにより、ピストンの移動にスライド体40cが追従して移動する。
【0047】
1本の押上ローラ31Aにつき一対のロッドレスシリンダ40を備え、この一対のロッドレスシリンダ40を各押上ローラ31Aの両端側(布地Cの幅方向)に配置し、押上ローラ31A、31Aの回転軸31aの両端の先端部をそれぞれスライド体40cに固定する。スライド体40cが昇降することにより、押上ローラ31A、31Aは、その上端が支持台14の上面に対して上方の位置と下方の位置との間となるように昇降移動する。なお、一対のロッドレスシリンダ40のスライド体40cにそれぞれ可動板を取付け、各可動板に2本の押上ローラ31A、31Aの回転軸31aの両端の先端部がそれぞれ固定され、一対のロッドレスシリンダ40で2本の押上ローラ31A、31Aを同時に移動させてもよい。
【0048】
昇降機構32は、図9に示すカム機構50であってもよい。カム機構50は、モータ(図示せず)の回転により回転する原動カムとしての回転体51と、回転体51の上側に配置された従動カムとしての棒状部材52を有している。回転体51は、中央部がモータの出力軸51cに取付けられた円形の円盤部51aと、円盤部51aから外方に突出した突出部51bとを有している。棒状部材52の下端には、棒状部材52と回転体51との間の摩擦力の低減のために、回転体51の回転によって回転自由なコロ52aが設けられ、棒状部材52の上端部には押上ローラ31A、31Aの回転軸31aの先端が固定されている。モータの出力軸51cの回転により、突出部51bが上方向に向くと棒状部材52が持ち上げられ、棒状部材52に固定された押上ローラ31A、31Aが上昇する。突出部51bが上方向以外の方向、例えば横方向や下方向に向くと、棒状部材52と棒状部材52に固定された押上ローラ31A、31Aが下降する。
【0049】
また、押上部材31は押上ローラ31A、31Aに限定されず、搬送ベルト11の下面に当接して搬送ベルト11を押し上げて搬送ベルト11が支持台14の上面に接触しない状態とすることが可能であればいずれの形態であってもよい。例えば、押上部材31は、基部に回転自由に支持された球状体であってもよく、複数の球状体を備えていてもよい。
【0050】
さらに、図5に示す実施形態では、2組の支持板の組14a、14bの間に押上機構30を配置しているが、押上機構30の配置位置はこれに限定されず、例えば、図10に示すように、支持台14が3つの支持板の組14a~14cを備え、各支持板の組14a~14cの間にそれぞれ押上機構30を配置してもよい。図10においては、支持板14A、14Bの組14aと支持板14C、14D、14Eの組14bとの間、支持板14C、14D、14Eの組14bと支持板14F、14Gの組14cとの間にそれぞれ押上機構30が配置されている。また、押上機構30を支持台14の搬送方向の両端側に配置してもよい。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 印刷装置
11 搬送ベルト
12 ベルト駆動機構
13 印刷機構
14 支持台
20 ベルト送り支援機構
21 空気孔
22 ダクト
23 空気供給機構
30 押上機構
31 押上部材
31A、31A 押上ローラ
32 昇降機構
33 可動板
35 油圧シリンダ
C 布地(印刷対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10