(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ファスナー、ドライバービット、および穴形成用パンチ
(51)【国際特許分類】
F16B 23/00 20060101AFI20230911BHJP
B25B 15/00 20060101ALI20230911BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20230911BHJP
B21K 1/48 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
F16B23/00 U
B25B15/00 610A
B21J5/02 B
B21K1/48 B
(21)【出願番号】P 2022037006
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506317200
【氏名又は名称】寛仕工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】リン チァオ ウェイ
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-364619(JP,A)
【文献】特開2015-180835(JP,A)
【文献】特表2016-539807(JP,A)
【文献】特開昭50-024656(JP,A)
【文献】実開平04-028206(JP,U)
【文献】実開平07-019611(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102004026769(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00
B25B 15/00
B21J 5/02
B21K 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にドライバービットを受け入れて該ドライバービットにより駆動されるビット嵌合穴が形成される頭部と、前記頭部の下面から延伸し、且つ、表面にらせん状に延伸するねじ山が形成された本体部と、を有するファスナーであって、
前記ビット嵌合穴は、それぞれ突起するように湾曲し且つ互いに直接的に連続しない6つの円弧壁部と、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続する6つの接続壁部とにより、中央穴部と、それぞれ隣り合う前記円弧壁部同士の間に形成され該中央穴部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの受動溝とを有するように画成されたものであり、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記受動溝の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクションと、
前記円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、凹陥するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有
し、
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きく、
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とするファスナー。
【請求項2】
前記連続セクションは平面もしくは曲面であり、
更に、前記ねじ山と前記ビット嵌合穴の前記受動溝の形状は、前記ビット嵌合穴がドライバービットにより駆動されて前記本体部が固定対象にねじ込まれる際に、前記ビット嵌合穴が前記連続セクション及び該連続セクションが連続する前記円弧壁部で前記ドライバービットからの駆動力を受けられるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
ファスナーが有する頭部の上面に形成されたビット嵌合穴に挿入し、該ファスナーを回転操作するドライバービットであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの駆動アームとを有し、且つ、
前記6つの駆動アームは、前記ドライバービットの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記駆動アームの先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで
延伸する連続セクションと、を有
し、
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きく、
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とするドライバービット。
【請求項4】
前記連続セクションは平面もしくは曲面であることを特徴とする請求項
3に記載のドライバービット。
【請求項5】
ファスナーが有する頭部の上面に打ち込まれて該上面にビット嵌合穴を形成する穴形成用パンチであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの突起部とを有し、且つ、
前記6つの突起部は、前記穴形成用パンチの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記突起部の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで
延伸する連続セクションと、を有
し、
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きく、
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とする穴形成用パンチ。
【請求項6】
前記連続セクションは平面もしくは曲面であることを特徴とする請求項
5に記載の穴形成用パンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファスナーと、ドライバービットと、穴形成用パンチとに関し、特に、ファスナーと、該ファスナーに対応するドライバービットと、前記ファスナーの製造用の穴形成用パンチとに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や
図1に示されるように、ネジなどのファスナーの頭部1に形成されるビット嵌合穴11(リセス)の形状が、六角星形状(トルクス(登録商標))のものがあるが、このようなビット嵌合穴が形成される場合、該ビット嵌合穴に対応するドライバービットとの寸法の誤差によって、噛み合わずにファスナーに駆動力がうまく伝わらない場合がある。また、このような場合、ドライバービットがファスナーの頭部から不意に外れると共に、ドライバービットの先端もしくはビット嵌合穴が損壊される可能性もあり、そしてこのような損壊により、コストの上昇や工期の長引きにも繋がる。また、ファスナーには防錆剤などの被覆が施される場合があるが、このようの場合には被覆材がビット嵌合穴に溜まりこむことで、ドライバービットとの噛み合い具合が損なわれる状況が起きやすいという問題もあり、そしてドライバービットがビット嵌合穴に挿入できない可能性もある。
従って、このような従来のファスナーと、該ファスナーに対応するドライバービットと、前記ファスナーの製造用の穴形成用パンチとには改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来のファスナーと、該ファスナーに対応するドライバービットと、前記ファスナーの製造用の穴形成用パンチとの少なくとも1つの欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点に鑑みて、本発明は、上面にドライバービットを受け入れて該ドライバービットにより駆動されるビット嵌合穴が形成される頭部と、前記頭部の下面から、延伸し、且つ、表面にらせん状に延伸するねじ山が形成された本体部と、を有するファスナーであって、
前記ビット嵌合穴は、突起するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しない6つの円弧壁部と、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続する6つの接続壁部とにより、中央穴部と、該中央穴部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの受動溝とを有するように画成されたものであり、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記受動溝の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、凹陥するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とするファスナーを提供する。
【0006】
また、本発明は、ファスナーが有する頭部の上面に形成されたビット嵌合穴に挿入し、該ファスナーを回転操作するドライバービットであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの駆動アームとを有し、且つ、
前記6つの駆動アームは、前記ドライバービットの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記駆動アームの先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とするドライバービットをも提供する。
【0007】
更に、本発明は、ファスナーが有する頭部の上面に打ち込まれて該上面にビット嵌合穴を形成する穴形成用パンチであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの突起部とを有し、且つ、
前記6つの突起部は、前記穴形成用パンチの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記突起部の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とする穴形成用パンチをも提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明のファスナーの各前記接続壁部は対応する前記円弧壁部に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクションが形成されることにより、対応のドライバービットで操作される際、たとえ両者の間に寸法の誤差が存在しても、該対応のドライバービットと接触する面積が従来よりも増えるので、両者の噛み合い具合がよくなり、ドライバービットがファスナーの頭部から外れる状況の発生も防がれ、これにより駆動中にトルクが消失する問題も解決され、そしてドライバービットの先端もしくはビット嵌合穴が損壊されるような状況の発生も防がれ、工程の効率が向上される上、コストも節約できる。また、本発明のファスナーの頭部に被覆材がコーティングされる場合において、平面セクションと連続セクションとが互いに連続する箇所に余分な被覆材が収容されるので、被覆材がビット嵌合穴に溜まり込んでドライバービットとの噛み合い具合が損なわれる状況の発生も回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】六角星形状(トルクス(登録商標))のビット嵌合穴(リセス)が形成される従来のファスナーの上面図である。
【
図2】本発明のファスナーの実施形態の上面図である。
【
図3】本発明のファスナーの実施形態の斜視図である。
【
図4】本発明のファスナーの頭部に形成されるビット嵌合穴の形状について示される説明図である。
【
図5】本発明のファスナー及び該ファスナーに対応するドライバービットの先端部分の構成が示される側面一部断面図である。
【
図6】本発明のファスナー及び該ファスナーに対応するドライバービットの先端部分の構成が示される斜視図である。
【
図7】本発明のドライバービットの先端部分の形状について示される説明図である。
【
図8】本発明のドライバービットの先端部分が本発明のファスナーの頭部に形成されるビット嵌合穴に差し込まれる様子が示される断面説明図である。
【
図9】本発明のファスナーの頭部にビット嵌合穴を形成する穴形成用パンチの実施形態が示される側面断面図である。
【
図10】本発明のファスナー及び該ファスナーにビット嵌合穴を形成する穴形成用パンチの先端部分の構成が示される斜視図である。
【
図11】本発明の穴形成用パンチの先端部分の形状について示される説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明をより詳細に説明する前に、適切と考えられる場合において、同様の特性もしくは機能を有する要素を示すために、同じ符号を用いて各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい。
【0011】
図2~
図4に本発明のファスナー2の実施形態が示されている。
図2はその上面図であり、
図3は斜視図であり、
図4は本発明のファスナー2の頭部21に形成されるビット嵌合穴212の形状について示される説明図である。
【0012】
図示のように、本実施形態のファスナー2は、上面211にドライバービットを受け入れて該ドライバービットにより駆動されるビット嵌合穴212が形成される頭部21と、頭部21の下面から延伸し、且つ、表面にらせん状に延伸するねじ山221が形成された本体部22と、を有する。
【0013】
ビット嵌合穴212は、突起するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しない6つの円弧壁部215と、反対する両端がそれぞれ1つの円弧壁部215に連続する6つの接続壁部216とにより囲まれて、中央穴部2120と、それぞれ隣り合う円弧壁部215同士の間に形成されて該中央穴部2120から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの受動溝2121とを有するように画成されたものである。
【0014】
各接続壁部216は、いずれも、1つの受動溝2121の先端に位置し、且つ、所定の一側にある1つの円弧壁部215に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクション217と、該円弧面セクション217の円弧壁部215から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクション218と、円弧面セクション217から延伸する平面セクション218の先端から、凹陥するように湾曲し、前記所定の一側にある円弧壁部215の反対側にある他の1つの円弧壁部215にまで延伸する連続セクション219と、を有する。
【0015】
平面セクション218と連続セクション219とが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つに形成することができるが、この実施形態において、平面セクション218と連続セクション219とが接する部分の形状は丸面Aであり、丸面Aとすることにより、ドライバービットから駆動力を受ける際において平面セクション218と連続セクション219とが接する部分にかかる応力を丸面Aの構成で分散させることができ、ドライバービットもしくはビット嵌合穴の該当箇所がダメージを受ける状況を回避できる。また、
図4に示されるように、円弧面セクション217の曲率半径は該丸面Aの曲率半径より大きく、円弧壁部215の曲率半径は円弧面セクション217の曲率半径より大きい。
【0016】
また、連続セクション219は平面もしくは曲面である。
【0017】
更に、受動溝2121に対応する円弧面セクション217が連続する円弧壁部215がある前記所定の一側につき、接続壁部216の左右両側のいずれの側がこの所定の一側となるかは、本体部22に形成されるねじ山221の巻き方向に対応する。すなわち、ねじ山221とビット嵌合穴212の受動溝2121の形状は、ビット嵌合穴212がドライバービットにより駆動されて本体部22が固定対象にねじ込まれる際に、ビット嵌合穴212が連続セクション219及び該連続セクション219が連続する円弧壁部215でドライバービットからの駆動力を受けられるように形成される構成になっている。
【0018】
図5は本発明のファスナー及び該ファスナーに対応するドライバービットの先端部分の構成が示される側面一部断面図であり、
図6はその斜視図であり、
図7は本発明のドライバービットの先端部分の形状について示される説明図であり、
図8は本発明ドライバービットの先端部分が本発明のファスナーの頭部21に形成されるビット嵌合穴に差し込まれる様子が示される断面説明図である。
【0019】
図6に示されるように、本発明のドライバービット3は、ファスナー2が有する頭部21の上面211に形成されたビット嵌合穴212に挿入し、該ファスナー2を回転操作するものである。
【0020】
従って、該ドライバービット3の先端の形状はファスナー2に形成されるビット嵌合穴212に対応し、所定の軸線Lに沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部31と、該中央軸棒部31から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの駆動アーム32とを有する。
【0021】
該6つの駆動アーム32は、ドライバービット3の外表面に形成された6つの円弧壁部321と、6つの接続壁部322と、により構成されており、6つの円弧壁部321は、該外表面から凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、6つの接続壁部322は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部321に連続する。
【0022】
各接続壁部322は、いずれも、1つの駆動アーム32の先端に位置し、且つ、所定の一側にある1つの円弧壁部321に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクション323と、該円弧面セクション323の円弧壁部321から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクション324と、円弧面セクション323から延伸する平面セクション324の先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある円弧壁部321の反対側にある他の1つの円弧壁部321にまで延伸する連続セクション325と、を有するように構成されている。
【0023】
平面セクション324と連続セクション325とが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つであり、この実施形態において、平面セクション324と連続セクション325とが接する部分の形状は丸面Bである。
【0024】
また、
図7に示されるように、円弧壁部321の曲率半径は円弧面セクション323の曲率半径より大きく、円弧面セクション323の曲率半径は丸面Bの曲率半径より大きい。
【0025】
また、連続セクション325は平面もしくは曲面である。
【0026】
図5、
図6、及び
図8に示されるように、ドライバービット3の先端がビット嵌合穴212に差し込まれる際、ドライバービット3が有する各アーム32の連続セクション325はそれぞれビット嵌合穴212が有する各受動溝2121の連続セクション219に当接する上、ビット嵌合穴212の各受動溝2121の平面セクション218と連続セクション219とが接する部分の形状(本実施形態では丸面A)と、ドライバービット3の平面セクション324と連続セクション325とが接する部分の形状(本実施形態では丸面B)との対応により、ドライバービット3とビット嵌合穴212とが接触可能な面積が拡大されているので、これにより、本発明のドライバービット3を用いて本発明のファスナー2を回転駆動する際、たとえ両者の間に寸法の誤差が存在しても対応可能となって、両者の噛み合い具合が改善される。従って、駆動の際におけるトルクの消失を抑えることができる上、ドライバービット3がファスナー2の頭部21から不意に外れる状況の発生も防がれ、また不意に外れることでドライバービット3の先端もしくはビット嵌合穴212が損壊されて損壊箇所が外気にさらされて錆が発生するといった状況も回避できる。また、駆動の際におけるトルクの消失がなくなることによって、電力を用いてドライバービット3を駆動する際においては電力を節約することもできる。また、手動でドライバービット3を操作する場合においても、ドライバービット3がファスナー2の頭部21から外れる状況の発生が防がれるので、片手でファスナー2を保持しながら、もう片手でドライバービット3を回す必要もなくなり、片手のみを使用してドライバービット3を安定に回すことが可能になる。更に、受動溝2121の平面セクション218と連続セクション219とが接する部分の形状を丸面Aとすれば、ドライバービット3の先端をビット嵌合穴212に挿入することが簡単になるので、応力の集中を回避して摩耗を抑えることもできる。この他、ファスナー2の頭部21に被覆材がコーティングされる場合において、平面セクション218と連続セクション219とが互いに連続する箇所に余分な被覆材が収容されるので、被覆材がビット嵌合穴212に溜まり込んでドライバービット3との噛み合い具合が損なわれる状況の発生も回避できるようになる。
【0027】
更に、
図9は本発明のファスナー2の頭部21にビット嵌合穴212を形成する穴形成用パンチ4の実施形態が示される側面断面図であり、
図10は本発明のファスナー2及び該ファスナー2にビット嵌合穴212を形成する穴形成用パンチ4の先端部分の構成が示される斜視図であり、
図11は本発明穴形成用パンチの先端部分の形状について示される説明図である。
【0028】
図示のように、本発明の穴形成用パンチ4はファスナー2が有する頭部21の上面211に打ち込まれて該上面211にビット嵌合穴212を形成するものであり、従って、所定の軸線Lに沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部41と、該中央軸棒部41から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの突起部42とを有する。
【0029】
該6つの突起部42は、穴形成用パンチ4の外表面に形成された6つの円弧壁部421と、6つの接続壁部422と、により構成されたものである。
【0030】
6つの円弧壁部421は、該外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、6つの接続壁部422は、反対する両端が1つの前記円弧壁部421にそれぞれ連続する。
【0031】
各接続壁部422は、いずれも、1つの突起部42の先端に位置し、且つ、所定の一側にある1つの円弧壁部421に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクション423と、該円弧面セクション423の円弧壁部421から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクション424と、円弧面セクション423から延伸する平面セクション424の先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある円弧壁部421の反対側にある他の1つの円弧壁部421にまで延伸する連続セクション425と、を有する。
【0032】
平面セクション424と連続セクション425とが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つであり、この実施形態において、平面セクション424と連続セクション425とが接する部分の形状は丸面Cである。
【0033】
また、
図11に示されるように、円弧壁部421の曲率半径は円弧面セクション423の曲率半径より大きく、そして円弧面セクション423の曲率半径は丸面Cの曲率半径より大きい。
【0034】
また、連続セクション425は平面もしくは曲面である。
【0035】
なお、
図10においてねじ山221が描かれてないのは、この時点で本体部22にねじ山221は未だ形成されていないからである。
【0036】
上記をまとめると、本願発明におけるビット嵌合穴212はドライバービット3との接触面積が増えるので、噛み合い具合が向上して駆動の際におけるトルクの消失がなくなり、そして駆動中にドライバービット3がファスナー2の頭部21から外れるような状況も発生しなくなり、操作の難易度も下げられ、ドライバービット3及びファスナー2の使用寿命も延長されるので、本願発明の目的を確実に達成することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記のように、本発明のファスナーの各前記接続壁部は対応する前記円弧壁部に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクションが形成されることにより、対応のドライバービットで操作される際、たとえ両者の間に寸法の誤差が存在しても、該対応のドライバービットと接触する面積が従来よりも増えるので、両者の噛み合い具合がよくなり、ドライバービットがファスナーの頭部から外れにくく、ドライバービットの先端もしくはビット嵌合穴が損壊されるような状況も起きにくい。よって使いやすく、また使用寿命がより長いファスナーとドライバービットとを提供できる。
なお、本開示の態様には以下のものも含まれる。
〔態様1〕
上面にドライバービットを受け入れて該ドライバービットにより駆動されるビット嵌合穴が形成される頭部と、前記頭部の下面から延伸し、且つ、表面にらせん状に延伸するねじ山が形成された本体部と、を有するファスナーであって、
前記ビット嵌合穴は、それぞれ突起するように湾曲し且つ互いに直接的に連続しない6つの円弧壁部と、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続する6つの接続壁部とにより、中央穴部と、それぞれ隣り合う前記円弧壁部同士の間に形成され該中央穴部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの受動溝とを有するように画成されたものであり、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記受動溝の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、凹陥するように湾曲する円弧面セクションと、
前記円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、凹陥するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とするファスナー。
〔態様2〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つであることを特徴とする態様1に記載のファスナー。
〔態様3〕
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きいことを特徴とする態様1に記載のファスナー。
〔態様4〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とする態様3に記載のファスナー。
〔態様5〕
前記連続セクションは平面もしくは曲面であり、
更に、前記ねじ山と前記ビット嵌合穴の前記受動溝の形状は、前記ビット嵌合穴がドライバービットにより駆動されて前記本体部が固定対象にねじ込まれる際に、前記ビット嵌合穴が前記連続セクション及び該連続セクションが連続する前記円弧壁部で前記ドライバービットからの駆動力を受けられるように形成されたことを特徴とする態様1に記載のファスナー。
〔態様6〕
ファスナーが有する頭部の上面に形成されたビット嵌合穴に挿入し、該ファスナーを回転操作するドライバービットであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの駆動アームとを有し、且つ、
前記6つの駆動アームは、前記ドライバービットの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており、
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記駆動アームの先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とするドライバービット。
〔態様7〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つであることを特徴とする態様6に記載のドライバービット。
〔態様8〕
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きいことを特徴とする態様6に記載のドライバービット。
〔態様9〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とする態様8に記載のドライバービット。
〔態様10〕
前記連続セクションは平面もしくは曲面であることを特徴とする態様6に記載のドライバービット。
〔態様11〕
ファスナーが有する頭部の上面に打ち込まれて該上面にビット嵌合穴を形成する穴形成用パンチであって、
所定の軸線に沿って延伸する略棒状体に形成された中央軸棒部と、該中央軸棒部から放射状にそれぞれ外側へ延伸する6つの突起部とを有し、且つ、
前記6つの突起部は、前記穴形成用パンチの外表面に形成された6つの円弧壁部と、6つの接続壁部と、により構成されており、
前記6つの円弧壁部は、前記外表面において凹陥するように湾曲し、且つ、互いに直接的に連続しないようになっており、
前記6つの接続壁部は、反対する両端がそれぞれ1つの前記円弧壁部に連続しており
各前記接続壁部は、いずれも、1つの前記突起部の先端に位置し、且つ、
所定の一側にある1つの前記円弧壁部に連続すると共に、突起するように湾曲する円弧面セクションと、
該円弧面セクションの前記円弧壁部から延伸する先端から該先端の接線方向へ真っすぐに延伸する平面セクションと、
前記円弧面セクションから延伸する前記平面セクションの先端から、突起するように湾曲し、前記所定の一側にある前記円弧壁部の反対側にある他の1つの前記円弧壁部にまで延伸する連続セクションと、を有することを特徴とする穴形成用パンチ。
〔態様12〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は、鋭角状と直角状と鈍角状と丸面状とからなるグループから選ばれたいずれか1つであることを特徴とする態様11に記載の穴形成用パンチ。
〔態様13〕
前記円弧壁部の曲率半径は前記円弧面セクションの曲率半径より大きいことを特徴とする態様11に記載の穴形成用パンチ。
〔態様14〕
前記平面セクションと前記連続セクションとが接する部分の形状は丸面状であり、そして前記円弧面セクションの曲率半径は前記丸面の曲率半径より大きいことを特徴とする態様13に記載の穴形成用パンチ。
〔態様15〕
前記連続セクションは平面もしくは曲面であることを特徴とする態様11に記載の穴形成用パンチ。
【符号の説明】
【0039】
2 ファスナー
21 頭部
211 上面
212 ビット嵌合穴
2120 中央穴部
2121 受動溝
215 円弧壁部
216 接続壁部
217 円弧面セクション
218 平面セクション
219 連続セクション
22 本体部
221 ねじ山
3 ドライバービット
31 中央軸棒部
32 駆動アーム
321 円弧壁部
322 接続壁部
323 円弧面セクション
324 平面セクション
325 連続セクション
4 穴形成用パンチ
41 中央軸棒部
42 突起部
421 円弧壁部
422 接続壁部
423 円弧面セクション
424 平面セクション
425 連続セクション
A 丸面
B 丸面
C 丸面