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特許7345918ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20230911BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230911BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230911BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230911BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20230911BHJP
   C12R 1/23 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
A23L33/135 ZNA
A61K35/747
A61P29/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P19/02
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/02
A61P1/04
C12N1/20 Z
C12R1:23
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076851
(22)【出願日】2022-05-09
(65)【公開番号】P2022174016
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】110116826
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 33990
(73)【特許権者】
【識別番号】522181119
【氏名又は名称】我的輕食有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江欣樺
(72)【発明者】
【氏名】劉博鈞
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277381(JP,A)
【文献】特開2014-217372(JP,A)
【文献】特開2010-209015(JP,A)
【文献】特開2008-169198(JP,A)
【文献】国際公開第2006/073145(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0268715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、炎症関連障害を軽減する組成物であって、
前記ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbHに寄託番号DSM 33990で寄託されているものである、組成物。
【請求項2】
食品または医薬組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、経口剤形、非経口剤形及び局所剤形からなる群から選択される剤形である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記炎症関連障害は、アレルギー、喘息、関節炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患及びこれらの組み合わせからなる群から選択される障害である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、腸内環境を改善する組成物であって、
前記ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbHに寄託番号DSM 33990で寄託されているものである、組成物。
【請求項6】
食品または医薬組成物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、経口剤形、非経口剤形及び局所剤形からなる群から選択される剤形である、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)に寄託番号DSM 33990で寄託されているラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株に関する。また、本開示は、炎症関連障害を軽減し且つ腸内環境を改善する、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、腸管に常在する正常な細菌叢で、腸内細菌叢のバランスを整えることにより、腸管免疫や消化を適切に調整する重要な役割を果たすと考えられている。そのような有益な微生物は、生きている微生物の栄養補助食品として広く利用されており、腸管微生物叢のバランスを回復させることに役立つ。乳酸菌(LAB)の多くの種は、一般的に安全と認められている(GRAS)ステータスを有し、プロバイオティクスとして広く利用されている。
【0003】
一般的なLABは、ラクトバシラス種、ラクトコッカス種、ペディオコッカス種、ストレプトコッカス種、エンテロコッカス種、ビフィドバクテリウム種、バシラス種、ロイコノストック種などを含む。LABは、消化管内の病原菌の増殖の抑制や乳糖不耐症の緩和が示され、抗がん作用、抗菌作用、抗疲労作用、血圧降下作用を有する。
【0004】
ラクトバチルスアシドフィルス菌は、LABで最も一般的に認識されているラクトバチルス種の1種であって、ヒトや動物の消化管や膣内に存在する。ラクトバチルスアシドフィルス菌の健康効果は、乳糖不耐症の胃腸症状の軽減、便秘症状の緩和、病原性細菌に対する競争力、コレステロールの生合成の抑制、乳児下痢の治療、ヘリコバクターピロリ、カンジダアルビカンス及び各種カビに対する抗菌活性などを含む。更に、WO2001015715A2には、ラクトバチルスアシドフィルス菌が、骨または歯の健康の維持または骨または歯の障害疾患の治療のために使用できることが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本開示は、少なくとも1つの従来技術の欠点を軽減でき、且つラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、炎症関連障害を軽減する組成物を提供する。該ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbHに寄託番号DSM 33990で寄託されているものである。
【0006】
第2の態様において、本開示は、少なくとも1つの従来技術の欠点を軽減でき、且つ上記のラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、腸内環境を改善する組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
【0008】
図1】後述の実施例3の各グループにおけるインターロイキン-10(IL-10)含有量を示す図である。
【0009】
図2】後述の実施例3の各グループにおけるIL-12含有量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、何らかの先行技術文献が本明細書において引用されても、台湾またはいかなる国においても、該先行技術文献の内容が本発明の属する分野における一般知識であることを示すものではないことを理解されたい。
【0011】
また、「含む」という用語は「含むが、これに限定されない」ことを意味し、「有する」という用語もこれに対応する意味を有することも理解されたい。
【0012】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者であれば、本開示の実施において、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識し、利用することができる。実際、本開示は記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0013】
本開示は、2021年3月5日付けで台湾の財団法人食品工業發展研究所(FIRDI)のバイオソース収集・研究センター(BCRC)(No.331,Shih-Pin Rd.,Hsinchu City 300,Taiwan)に寄託番号BCRC911039で寄託され、且つブダペスト条約に基づいて、2021年8月2日付けでドイツ微生物および細胞培養コレクション(DSMZ)GmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託番号DSM 33990で寄託されているラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を提供する。
【0014】
本開示によれば、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、生細胞または死細胞、濃縮または非濃縮、液体、ペースト、半固体、固体(例えば、ペレット、顆粒または粉末)であってもよく、熱不活性化、冷凍、乾燥または凍結乾燥(例えば、凍結乾燥形態またはスプレー/流動床乾燥形態であり得る)であってもよい。例示的な実施形態において、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、液体形態である。他の例示的な実施形態において、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、生細胞で存在する。
本開示は、上記のラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、炎症関連障害を軽減する組成物も提供する。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「軽減」または「緩和」は、疾患または障害の1つ以上の臨床症状を少なくとも部分的に低減、改善、緩和、制御、治療または除去すること、及び治療される状態または症状に関する重症度の進行を低下、遅延、停止または逆転させ、その可能性または確率を防止または低下させることを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「炎症関連障害」及び「免疫関連障害」は、互換的に使用することができる。
【0016】
本開示によれば、炎症関連障害は、アレルギー(アレルギー性鼻炎など)、喘息、関節炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(IBD)(例:大腸炎、クローン病など)またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれることができる。
本開示によれば、該組成物は、当業者によく知られた標準的な技術を用いて、食品として配合することができる。例えば、該組成物は、食用材料に直接添加してもよく、後に食用材料に添加することに適した中間組成物(例えば、食品添加物又はプレミックス)を調製することに使用してもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「食品」は、対象によってその体内に摂取され得る任意の物品又は物質を指す。食品の例としては、液状乳製品(例えば、牛乳及び濃縮乳)、発酵乳(例えば、ヨーグルト、サワーミルク及びフローズンヨーグルト)、粉乳、バター、飲料(例えば、茶及びコーヒー)、機能性飲料、小麦粉製品、焼き食品、菓子、キャンディ、健康食品、動物飼料及び栄養補助食品などが挙げられ得るが、それらに限定されるものではない。
【0018】
本開示によれば、該組成物は、医薬組成物の形態で調製してもよい。該医薬組成物は、当業者によく知られた技術により、経口投与、非経口投与または局所投与のための適切な剤型に製剤化してもよい。
本開示によれば、経口投与の適切な剤形は、滅菌粉末、錠剤、トローチ、ロゼンジ、持続性フィルムコーティング錠剤、口腔軟膏、ペレット、カプセル、分散性粉末または顆粒、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル剤、スラリー、ドロップなどがあるが、それらに限定されない。
【0019】
非経口投与用について、本開示による医薬組成物は、注射剤、例えば無菌水溶液または分散液に処方することができる。
【0020】
本開示による医薬組成物は、以下の非経口経路の1つを介して投与され得る:腹腔内注射、胸腔内注射、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射、関節内注射、滑液嚢内注射、くも膜下腔内注射、頭蓋内注射、表皮内注射、皮下注射、皮内注射、病巣内注射及び舌下投与。特定の実施形態において、医薬組成物は、病巣内注射を介して投与され得る。
【0021】
本開示によれば、医薬組成物は、当業者によく知られた技術を用いて、皮膚への局所適用に適した外用剤に製剤化することができる。外用剤には、エマルション、ゲル、軟膏、クリーム、パッチ、塗布薬、パウダー、エアゾール、スプレー、ローション、セラム、ペースト、フォーム、ドロップ、懸濁液、硬膏及び包帯などを含むが、それらに限定されない。
【0022】
本開示による医薬組成物は、医薬製造の技術分野で広く採用されている薬学的に許容される担体を更に含んでもよい。例えば、薬学的に許容される担体は、以下の薬剤:溶媒、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、分解剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、保存剤、充填剤、湿潤剤、滑剤、吸収遅延剤、リポソーム等の1つまたはそれ以上を含むことができる。前記の薬剤の選択及び量は、当業者の専門知識及び通常の技術の範囲内である。
【0023】
本開示は、更に前記ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株を含み、腸内環境を改善する組成物を提供する。
【0024】
特定の実施形態において、腸内環境を改善する組成物は、医薬組成物である。該医薬組成物は、経口または非経口投与のための適切な剤型に製剤化してもよい。該医薬組成物の経口剤型、非経口剤型及び薬学的に許容される担体は、上記の炎症関連障害を軽減する医薬組成物と類似する。
【0025】
他の実施形態において、腸内環境改善用組成物は、上記のような食品である。
【0026】
本開示による組成物の投与量及び投与頻度は、以下の要因:治療すべき疾患又は障害の重症度、投与経路、並びに治療すべき対象の年齢、身体状態及び反応によって変化し得る。一般的に、該組成物は単回で投与してもよいし、数回に分けて投与してもよい。
【0027】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0028】
実施例
一般実験材料
1.以下の実験で使用したウシ胆汁(脱水精製した新鮮な胆汁)、塩化ナトリウム、グリセロールは、Sigma-Aldrich社から購入したものである。
2.以下の実験で使用した寒天、BD Difco(商標)ラクトバチルスMRS(De Man,Rogosa and Sharpe)ブロス,トリプシン大豆ブロスは、BD(Becton,Dickinson and Company)Biosciences社から購入したものである。
3.API50CHL微生物同定キットは、台湾のCreative Life Science Co, Ltd.社から購入したものである。
4.以下の実験で使用したラクトバチルスMRS寒天培地は、BD Difco(商標)ラクトバチルスMRSブロスに1.5%の寒天を加えて調製した。
5.マウスマクロファージ細胞株RAW 264.7は、財団法人食品工業發展研究所(FIRDI)のバイオソース収集・研究センター(BCRC)(No.331,Shih-Pin Rd.,Hsinchu City 300,Taiwan)から購入したものである。RAW264.7細胞(BCRC 60001)は、10%牛胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Cat.No.D0819、Sigma-Aldrich)を含む10cmペトリ皿で増殖させた。RAW264.7細胞は、培養条件を37℃、5%COに設定した培養器で培養した。培地交換は2~3日おきに行った。細胞継代は、培養細胞が80%~90%のコンフルエンスに達した時点で行った。
【0029】
基本手順
1. 統計分析
実験データは、平均±標準偏差(SD)で表した。すべてのデータは、グループ間の差異を評価するために、SASソフトウェアを使用して分析された。
【0030】
実施例1. 乳酸菌(LAB)分離株の予備審査
A. テストされた菌株の出所と分離
古坑郷(雲林、台湾)で購入したコーヒー粉を発酵反応させ、そして、得られたコーヒー発酵ブロスを適切な量の0.85%の生理食塩水と混合して希釈物を得た(希釈倍率10倍で調製)。0.1mLの希釈液をラクトバチルスMRS寒天培地に均一に広げた後、嫌気性条件下、37℃の培養器で72時間培養した。
【0031】
MRS寒天培地から無作為に6株のLABを分離し、そして、それぞれをF2-2、F3-4、S2-1、K1-2、B-1、D-1と称する。これらの分離株について、以下の分析を行った。
B. LAB分離株の細菌懸濁液の調製
この実施例のセクションAで得られた6つのLAB分離株のそれぞれをBD Difco(商標)ラクトバチルスMRSブロスに接種し、そして嫌気性条件下、37℃の培養器で24時間培養した。1200g、10分間の遠心分離を行った後、得られた細胞ペレットを収集してから0.85%の滅菌生理食塩水で洗浄した後、1200g、10分間の遠心分離を行った。前記洗浄及び遠心分離のステップを2回繰り返した。
上澄みを除去した後、1x10CFU/mLの細菌濃度を有する細菌懸濁液を有するように細菌細胞を適切な量の0.85%の滅菌生理食塩水に再懸濁させた。上記のように得られた6つの細菌懸濁液を以下の実験に使用した。
【0032】
実施例2.LAB分離株の耐酸性試験及び耐胆汁酸塩試験
実験手順
A. 耐酸性試験
0.85%の滅菌生理食塩水に5Nの塩酸溶液と0.1Nの滅菌水酸化ナトリウム溶液を加えてpH2.0に調整して、耐酸性試験溶液を得た。実施例1のセクションBで得られた6つの細菌懸濁液のそれぞれ1mLずつを、1.5mLの0.85%の滅菌生理食塩水及び5mLの耐酸性試験溶液と混合した後、培養器(37℃)で合計60分間培養する。培養後の第30分と第60分とに、得られた細胞培養物を100mL収集し、当業者によく知られた平板塗抹法を用いて生存菌数を計数した。更に、コロニー形成単位(CFU)の対数値を算出し、生細胞数をlogCFU/mLで示す。
B.耐胆汁酸塩試験
0.3%(w/v)ウシ胆汁(脱水精製した新鮮な胆汁)含有の滅菌生理食塩水に0.1Nの滅菌水酸化ナトリウム溶液を加えてpH8.0に調整して、模擬胆汁酸塩溶液を得た。実施例1のセクションBで得られた6つの細菌懸濁液のそれぞれ1mLずつを、1.5mLの0.85%の滅菌生理食塩水及び5mLの模擬胆汁酸塩溶液と混合した後、培養器(37℃)で240分間培養する。得られた細胞培養物を100mL収集し、当業者によく知られた平板塗抹法を用いて生存菌数を計数した。更に、コロニー形成単位(CFU)の対数値を算出し、生細胞数をlogCFU/mLで示す。
【0033】
結果:
下記の表1に示されるように、酸性環境(pH2)で培養後の第30分において、LAB分離株B-1の生細胞数は、LAB分離株F3-4、S2-1、K1-2及びD-1の生細胞数より多い。酸性環境(pH2)で培養後の第60分において、LAB分離株F3-4、K1-2及びB-1は、依然として良好な生存性を示した。
【0034】
更に、0.3%(w/v)ウシ胆汁含有の環境で240分間培養した後、LAB分離株F2-2、F3-4、S2-1、B-1及びD-1は、良好な生存性を示した。これらの結果は、LAB分離株F3-4、S2-1、B-1及びD-1が人間の胃腸管によってもたらされる環境圧力を克服することができ、従って摂取後に腸に到達してコロニーを形成できることを示す。
【0035】
これらの結果により、本願出願者は、これらの菌株の抗炎症活性を評価するためのさらなる実験のためにLAB分離株F3-4、S2-1、B-1及びD-1を選択した。
【表1】
【0036】
実施例3.マクロファージによるインターロイキン-10(IL-10)及びインターロイキン-12(IL-12)の分泌を刺激するLAB分離株の能力の評価
実験手順
A.LAB分離株の試験サンプルの調整
実施例1のセクションBで得られた各LAB分離株F3-4、S2-1、B-1及びD-1の細菌懸濁液を凍結乾燥処理させて、LAB分離株F3-4の凍結乾燥粉末、LAB分離株S2-1の凍結乾燥粉末、LAB分離株B-1の凍結乾燥粉末及びLAB分離株D-1の凍結乾燥粉末を得た。4つの凍結乾燥粉末のそれぞれを、適切な量のBD Difco(商標)ラクトバチラスMRSブロスと混合し、得られた試験サンプルを以下の実験にかけた。
B.IL-10及びIL-12の含有量の測定
「一般実験材料」のセクション5で調製したRAW264.7細胞を、ブランク対照群1つ、陽性対照群1つ、実験群8つ(実験群1~8)を含む10のグループに分けた。RAW264.7細胞の各グループを、10%FBSを添加した5mLのDMEM含有の24ウェル培養皿のそれぞれのウェルで6.25×10細胞/ウェルで培養した後、培養器(37度、5%CO)で48時間培養した。その後、8つの実験群と陽性対照群の各細胞培養物を対応する処理剤で処理し、各グループの細胞培養物が表2に示す対応する処理剤の最終濃度になるようにした。ブランク対照群は処理を受けなかった。
【0037】
各グループは、培養器(37℃)で合計48時間培養した。培養後の第24時間と第48時間とに、得られた細胞培養物を5mL収集し、3000rpm、15分間の遠心分離にかけた。得られた上澄みを収集し、そして、メーカーの指示に従ってIL-10酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(カタログ番号EHIL10、Invitrogen)及びIL-12ELISAキット(カタログ番号KAC1568、Invitrogen)を使用してIL-10及びIL-12含有量の測定を行った。
【0038】
【表2】
【0039】
結果:
図1及び図2に示されているように、実験群5及び6で測定されたIL-10及びIL-12の含有量は、実験群1~4及び7~8および陽性対照群で測定されたものよりも高く、即ち、LAB分離株B-1の、マクロファージによりIL-10及びIL-12の分泌を刺激する能力は、他のLAB分離株よりも優れていることを示している。従って、LAB分離株B-1は、高い開発の可能性を有し、以下に説明する特性分析を行った。
【0040】
実施例4.LAB分離株B-1の特性分析
LAB分離株B-1の細菌種を特定するために、以下の予備的な特性決定、16SrDNA配列分析及び炭水化物発酵プロファイリングを実施した。
A.予備試験
LAB分離株B-1に対して実施された予備試験の項目は、グラム染色、形態学的観察、可動性、カタラーゼ試験、好気状態および嫌気状態下での成長、及び内生胞子を生成する能力を含む。
前記予備試験の結果により、LAB分離株B-1は、グラム陽性、非運動性、且つカタラーゼ陰性、嫌気状態下で成長、且つ内生胞子生成無しと示された。LAB分離株B-1細胞は、球菌型または棒状である。
B.16S rDNA配列分析
LAB分離株B-1のゲノムDNAは、ゲノムDNA精製キット(BioVision、カタログ番号K1457)を使用して抽出した。上記のように得られたゲノムDNAをテンプレートとして使用し、16SリボソームDNA(rDNA)に特異に設計されたプライマー対と表3に示す反応条件とを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、約1460bpのサイズを有するPCR産物を得た。
【0041】
【表3】
【0042】
得られたPCR産物を分子量検証のために2%アガロースゲル電気泳動分析にかけた。
その後、台湾のSeeing Bioscience Co.、Ltd.に委託して配列解析によりPCR産物を検証して、LAB分離株B-1の16S rDNA配列(SEQ ID No:3)を得た。NCBIの遺伝子データベースのデータとの比較を通じて、LAB分離株B-1の16S rDNA配列は、ラクトバチルスアシドフィルス菌のそれと最も一致する。
前記の実験結果を考慮して、本開示のLAB分離株B-1は、ラクトバチルスアシドフィルス菌であると分かった。
C. 炭水化物発酵プロファイリング
ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株(即ちLAB分離株B-1)の炭水化物発酵プロファイリングは、API(登録商標)50CHL識別システム(bioMerieux)を使用して決定した。その結果は、下記の表4に示される。
【0043】
【表4-1】

【表4-2】
【0044】
註:“+”は、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株が試験された炭水化物を発酵させて酸を生成することができることを示し、それに対して、“-”は、菌株がそのような能力はないことを示す。
【0045】
前述の特性評価の結果に基づいて、本願出願者は、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株はラクトバチルスアシドフィルス菌株であると確信する。そのため、ラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、2021年3月5日付けで台湾の財団法人食品工業發展研究所(FIRDI)のバイオソース収集・研究センター(BCRC)(No.331,Shih-Pin Rd.,Hsinchu City 300,Taiwan)に寄託番号BCRC 911039で寄託され、且つ、ブダペスト条約に基づいて、2021年8月2日付けでドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託番号DSM 33990で寄託されている。
【0046】
上記の試験結果をまとめると、本開示のラクトバチルスアシドフィルス菌TW01分離株は、抗炎症関連IL-10及びIL-12を増加させることができ、従って、炎症関連障害を軽減し、腸免疫を調節することができることは明らかである。
【0047】
上記においては、説明のため、実施形態の完全な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
図1
図2
【配列表】
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