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特許7345920生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20230911BHJP
   A61B 5/0537 20210101ALN20230911BHJP
【FI】
A61B5/053
A61B5/0537 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022080863
(22)【出願日】2022-05-17
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】111113094
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】507114990
【氏名又は名称】啓徳電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲蔡▼ 傳忠
(72)【発明者】
【氏名】謝 坤昌
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-130142(JP,A)
【文献】国際公開第02/047548(WO,A1)
【文献】特開2010-095841(JP,A)
【文献】特開2012-183229(JP,A)
【文献】特開2004-180939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053
A61B 5/0537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の抵抗およびリアクタンスを生体インピーダンス測定装置で測定すると同時に前記測定対象の年齢、性別およびインピーダンス係数(h/Z)を記録するステップa)と、
(式1)
CMBIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex
測定対象のコアマッスルの断面積を前記式1によって算出するステップb)と、を含み、
a、b、cおよびdは回帰分析における回帰係数であることを特徴とする生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法。
【請求項2】
前記コアマッスルは大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋および腹筋を含むか、それらのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法。
【請求項3】
(式2)
AMBIA=CMBIA-PMBIA-QMBIA-ESBIA
前記コアマッスルは、大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋および腹筋を含み、前記腹筋の断面積は前記式2によって計算されることを特徴とする請求項に記載の生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体インピーダンス技術に関し、詳しく言えば生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手足が運動する際、体幹筋によって安定性およびバランスを維持することができる。丈夫で安定した体幹は手足の運動に伴ってトルクを生じる際の強固な基盤になる。体幹筋において、コアマッスル(core muscles,CM)の大腰筋(psoas major,PM)のみは腰椎と下肢を連結する筋肉である。言い換えれば、コアマッスルは体幹および手足が運動する際に重要な役割を果たすことが明確である。
【0003】
形態計測分析(morphometric analysis)技術によって健康状況を評価する際、コアマッスルの断面積(cross-section area,CSA)は重要な指標である。有酸素運動と筋力トレーニングは筋線維断面積を明確に増加させる。また股関節の横回転(lateral rotation)および外転(abduction)はコアマッスルの運動に関連がある。従って、全身の筋肉量、心肺持久力(cardiorespiratory fitness)、サルコペニア(sarcopenia)および術後高齢患者の転帰をコアマッスルの断面積に基づいて評価する研究は多くなることが確実である。
【0004】
筋肉は表層筋(surface muscles)および深層筋(deep muscles)に分けられる。コアマッスルは深層筋である。深層筋は接触測定できないため、深層筋の部位を測定する際、電子信号処理およびイメージング技術を応用することしかできない。それに対し、コアマッスルの大きさおよび解剖学的異変にかかわる実質的なデータ(substantial data)を提供する際、超音波ガイダンス(ultrasound guidance)でコアマッスルの位置を測定し、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography,CT)または核磁気共鳴画像(Magnetic resonance imaging,MRI)などのイメージング技術でコアマッスルを測定する方法が最も正確であるため、多くの研究に採用される。しかし、大腰筋の正常状態および病変(石灰化および膿瘍内の気泡)を測定する際、コンピュータ断層撮影による測定方法および核磁気共鳴画像による測定方法は測定結果が必ずしも同じではない。またコンピュータ断層撮影または核磁気共鳴画像による測定方法を採用する設備はコストが高く、測定時間がかかるだけでなく、操作に不便である。言い換えれば、上述した欠点を効果的に改善する方法は未だなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法を提供することを主な目的とする。詳しく言えば、本発明は生体インピーダンス法(Bioelectrical impedance analysis, BIA)に基づいてコアマッスルの断面積を測定することによってコアマッスルを評価する方法であるため、従来の核磁気共鳴画像またはコンピュータ断層撮影による測定方法に対し、測定コストおよび測定時間を効果的に削減し、測定作業の利便性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法は下記のステップを含む。
【0007】
ステップa)は測定対象の抵抗およびリアクタンスを生体インピーダンス測定装置で測定すると同時に測定対象の年齢、性別およびインピーダンス係数(h/Z)を記録する。
【0008】
(式1)
BIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex
【0009】
ステップb)は測定対象のコアマッスルを式1によって算出する。
【0010】
上述した通り、本発明は生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法、即ち生体インピーダンス測定装置で検出した生体インピーダンス数値と、数式によって算出した測定対象のコアマッスルの断面積とに基づいて測定対象のコアマッスルを評価する方法であるため、従来のコンピュータ断層撮影または核磁気共鳴画像による測定方法に対し、測定コストおよび測定時間を効果的に削減し、測定作業の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示す模式図である。
図2A】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図2B】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図2C】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図2D】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図2E】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図2F】本発明の一実施形態において測定対象に測定を行う状態を示す模式図である。
図3A】本発明の一実施形態のうちの第3および第4腰椎椎体高レベルにおける腹部および除脂肪筋の断面積を示す画像である。
図3B】本発明の一実施形態のうちの第3および第4腰椎椎体高レベルにおける腹部および除脂肪筋の断面積をコンピュータ断層撮影法で撮った画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0013】
(一実施形態)
図1から図3Bに示すように、本発明の一実施形態において、生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法10はステップa)およびステップb)を含む。
【0014】
ステップa)は測定対象の抵抗およびリアクタンスを生体インピーダンス測定装置で測定すると同時に測定対象の年齢、性別およびインピーダンス係数(h/Z)を記録する。生体インピーダンス測定装置は生体インピーダンス技術の分野においてよく使用される装置であるため、詳細な説明および図面を省略する。本実施形態において、生体インピーダンス測定装置はスタンド式八極板生体インピーダンス測定技術を採用する。
【0015】
(式2)
CMBIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex(r=0.910,SEE=13.42cm,n=286,p<0.001)
【0016】
ステップb)は測定対象のコアマッスルの断面積を式2によって算出する。本実施形態において、コアマッスルは大腰筋、腰方形筋(quadratus muscle,QM)、脊柱起立筋(erector spinae,ES)および腹筋(abdominal muscle,AM)を含む。式2において、a、b、cおよびdは回帰分析における回帰係数である。
【0017】
本発明の測定方式は複数のタイプに分けられる。図2Aから図2Fに示すように、図面の左側は測定対象の右側に相当する。図面の右側は測定対象の左側に相当する。生体インピーダンス測定装置の電流電極E1、E3、E5、E7は白い円形で表示される。生体インピーダンス測定装置の検出電極E2、E4、E6、E8は黒い円形で表示される。
【0018】
図2Aに示すように、測定回路を電流電極E1、E5および検出電極E2、E6に切り替えれば測定対象の右側の全体部位のインピーダンスを検出することができる。
【0019】
図2Bに示すように、測定回路を電流電極E1、E3および検出電極E2、E6に切り替えれば測定対象の右上肢のインピーダンスを検出することができる。
【0020】
図2Cに示すように、測定回路を電流電極E1、E5および検出電極E6、E8に切り替えれば測定対象の右下肢のインピーダンスを検出することができる。
【0021】
図2Dに示すように、測定回路を電流電極E1、E6および検出電極E4、E8に切り替えれば測定対象の胴体のインピーダンスを検出することができる。
【0022】
図2Eに示すように、測定回路を電流電極E1、E3および検出電極E4、E8に切り替えれば測定対象の左上肢のインピーダンスを検出することができる。
【0023】
図2Fに示すように、測定回路を電流電極E3、E7および検出電極E6、E8に切り替えれば測定対象の左下肢のインピーダンスを検出することができる。
【0024】
(式3)
PMBIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex(r=0.919,SEE=3.31cm,n=286,p<0.001)
【0025】
(式4)
QMBIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex(r=0.920,SEE=5.07cm,n=286,p<0.001)
【0026】
(式5)
ESBIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex(r=0.934,SEE=13.07cm,n=286,p<0.001)
【0027】
(式6)
AMBIA=CMBIA-PMBIA-QMBIA-ESBIA
【0028】
別の実施形態において、コアマッスルは大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋および腹筋のいずれか一つである。大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋および腹筋の断面積は式3から式6によって別々に算出される。
【0029】
コンピュータ断層撮影(CTScanning)
本実施形態において、CTスキャナーで検出したコアマッスルの断面積は本発明の推定目標であるとされる。本発明は人体の人間のパラメータ測定や生体インピーダンス測定などを行う際の測定変数を生体インピーダンス測定装置で検出することによってコアマッスルの断面積の推定モデルを確立および検証することである。別の実施形態において、MRIで検出したコアマッスルの断面積は本発明の推定目標にされてもよい。
【0030】
本実施形態において、64スライスCT(Somatom Sensation 64 CT system, Siemens Corp., Germany)によってそれぞれの測定対象の腹部を検査し、ソフトウェアSyngo CT2005Aによってデータを分析する。CTで測定した部位はそれぞれの測定対象の第2腰椎から第5腰椎までの間に位置する腹部であるが、これに限定されない。
【0031】
画像分析(Image analysis)
図3Aおよび図3Bに示すように、本実施形態はそれぞれの測定対象の第3および第4腰椎椎体高レベルにおける腹部および除脂肪筋の断面積(cross section area,CSA)を固定画像解析プログラムによって算出する。本実施形態は一枚のCTで撮った画像によって説明を進める。続いて、Slice-O-Matic version 4.3ソフトウェア(Tomovision)によって除脂肪筋の組織を選択し、その面積を計算する。続いて、第3および第4腰椎の間で大腰筋および腹部の断面積を手動で分割する。本実施形態において、コアマッスルの断面積の数値は大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋または腹筋の断面積の総和に相当する。大腰筋は身長に関係があるため、大腰筋と身長の数値はCSA(cm)およびCSA/height2 (mm/m)で表示される。
【0032】
【表1】
【0033】
統計分析(Statistical analysis)
表1に示すように、本実施形態は平均と標準偏差で記述データを表示し、範囲を明確する。本実施形態はスチューデントのt検定(Student's t-test)によって分布タイプを比較し、コルモゴロフ・スミルノフ検定(Kolmogorov-Smirnov test)によってデータの正規分布(normal distribution)をテストする。すべての統計分析はSPSS Ver.20(Statistical Package for the Social Sciences, IBM SPSS statistics for Windows(登録商標), Armonk, NY: IBM Corp)を採用する。有意水準はp<0.05(two-tailed)に設定される。変数間の相関はスピアマン(Spearman)の相関係数の分析によって表示される。性別、年齢、インピーダンス係数とコアマッスル(impedance factor)、大腰筋、腹部筋、腰方形筋、脊柱起立筋および面積との関係はステップワイズ回帰分析法によって分析される。
【0034】
表1において、平均および標準偏差の関係はmean±SD (Standard Deviation)で表示される。ウエスト・ヒップ比はWHR (Waist-hip ratio)で表示される。ボディマス指数はBMI (Body Mass Index, BMI)で表示される。コアマッスルはCM (core muscles)で表示される。腹部の断面積はACSA (abdominal cross-sectional area)で表示される。
【0035】
上述した通り、本発明は生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法10、即ちCTまたはMRIに頼らず生体インピーダンス測定装置で検出した生体インピーダンス数値と、数式によって算出した測定対象のコアマッスルの断面積とに基づいて測定対象のコアマッスルを評価することであるため、従来のCTまたはMRIによる測定方法に対し、測定コストおよび測定時間を効果的に削減し、測定作業の利便性を向上させることができる。
【0036】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0037】
10:生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法
E1、E3、E5、E7:電流電極
E2、E4、E6、E8:検出電流
【要約】
【課題】生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法を提供する。
【解決手段】生体インピーダンス技術によってコアマッスルを評価する方法は下記のステップを含む。ステップa)は測定対象の抵抗およびリアクタンスを生体インピーダンス測定装置で測定すると同時に測定対象の年齢、性別およびインピーダンス係数(h/Z)を記録する。ステップb)は測定対象のコアマッスルを(式)
BIA=a-b×age+c×h/Z+d×Sex
によって計算する。上述した通り、本発明は生体インピーダンス法に基づいてコアマッスルの断面積を測定することによってコアマッスルを評価するため、測定コストおよび測定時間を効果的に削減し、測定作業の利便性を向上させることができる。
【選択図】 図1
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B