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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】食品容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/02 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
B65D53/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022107849
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2019219586の分割
【原出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2022153402
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2015255018
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000158116
【氏名又は名称】岩崎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐生
(72)【発明者】
【氏名】伊達 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 能久
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特表昭63-502266(JP,A)
【文献】特開2009-029512(JP,A)
【文献】特開昭59-093660(JP,A)
【文献】特開平10-120043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容器本体と、該容器本体の該開口を閉塞する蓋体と、を備えているとともに、前記蓋体には前記蓋体によって前記容器本体の開口を閉塞した状態で該開口の周縁部を密封状態にするシール部が設けられている食品容器であって、
前記シール部は、全体が平面状に形成された当接部と、前記当接部の両側縁のうち前記食品容器の内部側の一側縁にのみ隣接して設けられた凸部と、を有する断面形状で横L字状をなすように、前記蓋体の内側のみに、前記蓋体と一体に形成されており、
前記蓋体によって前記容器本体の開口を閉塞した場合に、前記シール部は、前記容器本体の周壁の上端面を前記当接部に当接させた状態で、前記蓋体と前記容器本体の周壁の上端面との間に配置され
前記凸部は、前記蓋体によって前記容器本体の開口を閉塞した場合に、前記容器本体の周壁の上端内面から隙間を介して離れた位置に配されていることを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記当接部の幅が、前記凸部の幅に比べて幅広である請求項1に記載の食品容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食品容器に用いられる蓋体であって、
板状の平板部と、前記平板部の周縁を囲む環状に形成された外周部とを備え、
前記外周部は、断面形状で逆凹字状に形成されて、その下面に環状溝を有し、
前記シール部は、前記環状溝内に形成されており、前記凸部が前記環状溝の内側面に沿って設けられていることを特徴とする蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等による加熱しても変形の起き難い食品容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保存容器や弁当箱等のような、内部を密閉することが可能な種々の食品容器が提案されている。一般に、該食品容器は、開口を有する容器本体と、該開口を閉塞する蓋体とを備えているとともに、容器本体内の食品を密封状態で保存するために、該容器本体と該蓋体との間に該開口の周縁部を密閉する弾性材料からなるシール部が設けられている構成とされている。
例えば、特許文献1に記載の電子レンジ用容器は、容器本体及び蓋体と、該容器本体の開口端と蓋体との間に配設されたパッキング(シール部)とを具備している。更に、該特許文献1には、容器本体、蓋体及びパッキング(シール部)に誘電加熱されない材料を用いることで、電子レンジでの使用を可能とした旨が開示されている。
特許文献2に記載の容器蓋は、羽部を含むパッキング(シール部)が一体で形成されている。更に、該特許文献2には、インサート成形などの方法でパッキング(シール部)が一体で形成される、パッキング(シール部)には弾力性と接着性が優秀なコマというプラスチック材料が用いられている旨が開示されている。
特許文献3に記載のパッキン材あるいはパッキン材用熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィンブロック共重合体に対し、所定量のポリエチレンを配合することにより、優れたシール性、耐熱性、成形性、摺動性を付与してなるものである。更に、該特許文献3には、該パッキン材用熱可塑性エラストマー組成物が、殺菌のためのレトルト処理(120℃で30分間)に耐える旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-120043号公報
【文献】特開2009-29512号公報
【文献】特開2010-150499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の食品容器にあって、例えば特許文献1の電子レンジ用容器のように、電子レンジでの使用を可能としたものは、該電子レンジで食品を温め直す際に、収容された該食品を別容器等に移し替える手間がいらず、有用である。
しかし、上記特許文献1の電子レンジ用容器は、シール部が蓋体又は容器本体と一体に形成されていないことから、該シール部と蓋体又は容器本体との隙間に水や汚れが入り込み、該隙間がカビや黴菌の温床となりやすいため、該シール部を蓋体又は容器本体から取り外して洗浄する必要がある。故に、上記特許文献1のようにシール部を取り外し可能とした食品容器は、蓋体又は容器本体に対するシール部の着脱が面倒である、取り外した該シール部を紛失するおそれがある、取り付けミス等によるシール部の変形によって密封状態が不良になるおそれがあるなどといった問題を有している。
なお、上記のようなシール部を取り外し可能とした食品容器において、該シール部の材料には、一般的に軟質シリコーン樹脂が多用されている。しかし、該軟質シリコーン樹脂は、蓋体や容器本体の材料として一般的に多用されている熱可塑性樹脂等のような異種材料との一体成形に不向きな材料であるから、該軟質シリコーン樹脂製のシール部を蓋体や容器本体と一体化することは難しいという問題を有する。
一方、特許文献2の容器蓋は、シール部が一体化して形成されているため、上記特許文献1のような問題は起こらない。しかし、シール部に使用されているコマという材料については具体的開示がなく、更に該シール部が一体化して形成された容器蓋が電子レンジによる加熱に使用可能であるとの記載がなく、電子レンジでの使用が可能であるか明確でないという問題がある。
また、特許文献3のパッキン材用熱可塑性エラストマー組成物は、実施例に示された耐熱性が何れも130℃未満であり、JIS S 2029 プラスチック製食器類 に定められた、電子レンジに使用できる食器類としての表示耐熱温度140℃以上を満足できるものではないという問題があった。
即ち、上記従来の食品容器にあっては、シール部が蓋体又は容器本体と一体に形成されているうえで、電子レンジでの使用が明確に可能なものは提案されていない。実際に、インサート成形などの方法でシール部が蓋体又は容器本体と一体に形成された既存の食品容器を電子レンジで使用した場合、蓋体又は容器本体の一部、特にシール部との接合箇所に変形が生じ、密封状態を保てなくなるという問題が生じており、こうした問題が本質的に解消されていなかった。
本発明は、上記従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、シール部が蓋体又は容器本体と一体に形成されているうえで、電子レンジ等による加熱時に変形し難く、密封状態を保つことができる食品容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の食品容器の発明は、開口を有する容器本体と、該容器本体の該開口を閉塞する蓋体と、を備えているとともに、前記蓋体又は前記容器本体には前記蓋体によって前記容器本体の開口を閉塞した状態で該開口の周縁部を密封状態にするシール部が設けられている食品容器であって、前記シール部は、重量平均分子量が10万~50万の水添スチレン系ブロック共重合体A、重量平均分子量が500以上のゴム用軟化剤B、及び、オレフィン系樹脂Cを含有してなり、A硬さが5以上で70以下、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)が60%以下のエラストマー組成物からなるものであり、ポリプロピレンからなる前記蓋体又は前記容器本体と一体に形成されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の食品容器の発明において、前記ポリプロピレンには、融点が155℃以上のものが用いられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の食品容器の発明において、前記エラストマー組成物中における配合量は、前記水添スチレン系ブロック共重合体Aが100質量部に対して、前記ゴム用軟化剤Bが50~300質量部、前記オレフィン系樹脂Cが2~100質量部であり、また、前記水添スチレン系ブロック共重合体Aには、スチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)と、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(b)と、からなるブロック共重合体A’の水素添加物であって、スチレン系単量体の含有率が10~40質量%のものが用いられており、更に、前記ゴム用軟化剤Bには、分子量分布指数(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が4.0以下のものが用いられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の食品容器の発明において、前記蓋体又は前記容器本体と一体に形成されている前記シール部には、前記容器本体前又は記蓋体の所定箇所に当接される当接部が設けられているとともに、該当接部は、全体が平面状をなすように所定幅で形成されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の食品容器の発明において、前記当接部の所定幅は、前記蓋体及び前記容器本体において、前記シール部が一体に形成されている箇所の幅と前記当接部が当接される所定箇所の幅とを比較して狭い方の幅を1とした場合に、1~20になるように設定されていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の食品容器において、前記シール部は、前記蓋体又は前記容器本体において該シール部が設けられる部位の肉厚を1とした場合に、その肉厚が1~4になるように設定されていることを要旨とする。
請求項7に記載の食品容器の製造方法の発明は、請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の食品容器の製造方法であって、二色成形用型を用い、蓋体又は容器本体の成形用キャビティ内にポリプロピレンを射出して、蓋体又は容器本体を所定形状に成形した後、シール部用キャビティ内にエラストマー組成物を射出し、前記蓋体又は前記容器本体において開口の周縁部となる所定の部位にシール部が該蓋体又は該容器本体と一体に形成されるように二色成形を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
[作用]
本発明の食品容器は、数あるエラストマー組成物の中から、A硬さが5以上で70以下、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)が60%以下のものを、シール部の材料に選択したうえで、該エラストマー組成物からなるシール部をポリプロピレンからなる蓋体又は容器本体と一体に形成したことが、一の特徴として挙げられる。
即ち、上記食品容器において、蓋体又は容器本体は、木材、金属、ガラス、プラスチック等、多くの材料が使用可能であるが、これらの中でもプラスチック、特にポリプロピレンは、成形性、衛生性、軽量性、経済性、耐熱性等の観点で優れており、多くの食品容器で蓋体又は容器本体の材料として採用されている。そこで、本発明は、多くの食品容器で蓋体又は容器本体の材料に採用されるポリプロピレンとの一体化が可能なエラストマー組成物を得るべく、特定の材質を組み合わせてなるエラストマー組成物を見出したことを特徴とする。
そこで、本発明のエラストマー組成物は、シール部の材料に使用するものであることを鑑みて、A硬さを5以上で70下とすることにより、シール部による密封状態を保つために必要な弾性を保持していることを第1の特徴とする。
さらに、上記ポリプロピレンと上記エラストマー組成物のように異なる材料を一体化した場合、各材料の物性の違いから、加熱冷却、湿潤乾燥、圧縮引張変形等のような外部環境の変化によって変形や剥離、亀裂などの問題が起き得る。そこで、本発明のエラストマー組成物は、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)を60%以下とし、圧縮永久ひずみが生じにくいものとする、言い換えれば、耐圧縮永久ひずみ性の向上を図ることにより、電子レンジ等による加熱時に変形の問題が起きない食品容器を実現したことを第2の特徴とする(以上、請求項1)。
また、前記シール部と一体に形成される前記蓋体又は前記容器本体の材料に用いる前記ポリプロビレンには、融点が155℃以上のものを用いることにより、電子レンジ等による加熱時に、より変形し難いものとすることが可能である(請求項2)。
また、前記エラストマー組成物は、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)を好適に60%以下とするべく、その配合比を、水添スチレン系ブロック共重合体Aの100質量部に対して、ゴム用軟化剤Bを50~300質量部、オレフィン系樹脂Cを2~100質量部とすることが好ましい。さらに、前記水添スチレン系ブロック共重合体Aは、スチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)と、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(b)と、からなるブロック共重合体A’の水素添加物であって、スチレン系単量体の含有率が10~40質量%のものとし、前記ゴム用軟化剤Bは、分子量分布指数(Mz)(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が4.0以下のものとすることにより、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)を、より好適に60%以下とすることが可能である(請求項3)。
また、電子レンジ等による加熱の際、形状や材質による熱収縮差により、容器本体又は蓋体に対するシール部の当接部がずれる可能性がある。そこで、前記蓋体又は前記容器本体と一体化されている前記シール部には、前記容器本体又は前記蓋体の所定箇所に当接する当接部を設け、該当接部を、全体が平面状をなすように所定幅で形成することにより、熱収縮の差によって当接位置にずれが生じても密封状態を保つことができるので好ましい(請求項4)。
また、前記当接部の所定幅を、前記蓋体及び前記容器本体において、前記シール部が一体に形成されている箇所の幅と前記当接部が当接される所定箇所の幅とを比較して狭い方の幅を1とした場合に、1~20になるように設定することにより、密封状態を好適に保つことができるのでより好ましい(請求項5)。
また、前記蓋体又は前記容器本体において該シール部が設けられる部位の肉厚を1とした場合に、前記シール部の肉厚を1~4に設定する、つまり該シール部は、その肉厚を薄くすることで、電子レンジ等による加熱時にひずみが生じることを良好に抑制することが可能である(請求項6)。
そして、本発明においてシール部の材料であるエラストマー組成物と、前記シール部と一体に形成される前記蓋体又は前記容器本体の材料であるポリプロピレンとは、高温環境下における物性のバランスに優れるため、蓋体又は容器本体を所定形状に成形した後、キャビティ内にエラストマー組成物を射出してシール部を所定部位に所定形状で成形する二色成形によって、容易に製造することが可能である(請求項7)。
【0007】
[効果]
本発明によれば、シール部が蓋体又は容器本体と一体に形成されているうえで、電子レンジ等による加熱時に変形し難く、密封状態を保つことができる食品容器を得ることができるとともに、該食品容器を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の食品容器を示す斜視図。
図2】実施形態の容器本体を示す斜視図。
図3】実施形態の容器本体を示す断面図。
図4】実施形態の蓋体を示す平面図。
図5】実施形態のシール部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、食品容器10は、上面に開口111を有する容器本体11と、該開口111を塞ぐように容器本体11に取り付けられる蓋体12とを備えている。
【0010】
〔容器本体〕
図2及び図3に示すように、上記容器本体11は、上面が開放された有底直方体状に形成されている。該容器本体11において、上記開口111は、容器本体11の上端部からなる環状の周縁部によって規定され、平面視で略矩形状を為している。
上記容器本体11において、周壁の外面で上端よりも下方寄りの位置には、フランジ112が水平方向の外側へ突出して板状に形成されている。該フランジ112は、周壁の全周にわたって連続して設けられており、該容器本体11の周壁を補強している。
また、上記フランジ112の外周縁で下面には、突起113が下方へ突出するように形成されている。該突起113は、容器本体11に蓋体12をしっかりと固定するべく蓋体12に設けられた後述するフック124を引っ掛けるためのものである。
【0011】
〔蓋体〕
図4に示すように、蓋体12は、平面視で略矩形板状の平板部12Aと、該平板部12Aの周縁を囲むように連続する環状に形成された外周部12Bとを有する。該外周部12Bは、断面形状が逆凹字状をなすように形成されることで、その下面に環状溝121が設けられている。
上記蓋体12において、外周縁を構成する4つの辺のそれぞれには、容器本体11に蓋体12をしっかりと固定するための固定部122が設けられている。該固定部122は、板状をなし、ヒンジ123を介して該蓋体12の外周縁に繋がることで、該ヒンジ123を中心に該蓋体12に対して上下方向に回動できるように構成されている。
図5に示すように、上記固定部122の内面上には、フック124が断面横L字状をなすように形成されている。該フック124は、上記固定部122を下方に回動させた際、上記容器本体11のフランジ112に設けられた突起113に引っ掛かり、ロックされるように構成されており、これにより、容器本体11に蓋体12をしっかりと固定することが可能となる。
【0012】
〔シール部〕
上記蓋体12において、上記環状溝121内には、シール部13が設けられている。該シール部13は、弾性を有するエラストマー組成物を材料に用い、上記蓋体12と一体に形成されている。このため、シール部13と蓋体12(環状溝121)との間に水や汚れの入り込む隙間がなく、衛生が保たれている。
図5に示すように、上記蓋体12と一体に形成されている上記シール部13には、上記容器本体11の周壁の上端面に当接される当接部13Aが設けられている。該当接部13Aは、全体が平面状をなすように、所定幅で形成されている。
上記容器本体11に対し、その開口111を閉塞するように、上記蓋体12を取り付けた際、上記シール部13の当接部13Aには、上記容器本体11の周壁の上端面が当接された状態となる。該状態で、上記蓋体12の上記固定部122のフック124を上記容器本体11のフランジ112の突起113にロックすると、エラストマー組成物からなるシール部13は、上記環状溝121の内面と上記容器本体11の周壁の上端面との間で押しつぶされた状態となる。該状態でシール部13は、上記容器本体11の周壁の上端面に圧接され、密着することで、上記開口111の周縁部を密封状態にする。
【0013】
上記シール部13は、上記当接部13Aを所定幅の平面状に形成することにより、電子レンジ等で加熱された際に、熱収縮差等によって上記シール部13と上記容器本体11とが相互に位置ずれして密封状態が解除されることを抑制することができる。即ち、該当接部13Aにおいて、前記所定幅は、加熱時において密封状態を好適に保つべく、上記シール部13の当接部13Aを当接箇所に確実に当接させるという観点から、該当接部13Aが当接箇所と等幅あるいは幅広となるように設定されることが好ましい。
具体的に上記当接部13Aの所定幅は、上記蓋体12及び上記容器本体11において、前記シール部13が一体に形成されている箇所の幅と前記当接部13Aが当接される所定箇所の幅とを比較して狭い方の幅を1とした場合に、1~20になるように設定することが好ましい。本実施形態であれば、上記シール部13が一体に形成されている箇所は、上記蓋体12の外周部12Bの環状溝121であり、また上記当接部13Aが当接される所定箇所は、上記容器本体11の周壁の上端面である。そして、該環状溝121の幅と、該容器本体11の周壁の上端面の幅(厚さ)とを比較すると、該容器本体11の周壁の上端面の幅(厚さ)の方が狭いことから、該容器本体11の周壁の上端面の厚さを1として、当接部13Aの所定幅は1~20に設定することが好ましい。
なお、上記のようなシール部13の当接部13Aを平面状にすることによる密封状態の保持は、後述する圧縮永久ひずみ(CS)に係る性能を高めた(CS値を低くした)エラストマー組成物を材料に使用して初めて為し得る。即ち、圧縮永久ひずみ(CS)が劣る(CS値が高い)従来の材料を使用した場合、平面状とした当接部には、加熱時に回復不可能な凹みが生じやすくなり、密封状態を保持しにくくなるため、通常は当接部を凹状とし、その内側に容器本体の周壁上端が収容される構成としている。
一方、本発明にあっては、シール部13に用いるエラストマー組成物の耐圧縮永久ひずみ性が高く、加熱時においても、平面状とした上記当接部13Aには凹みが殆ど生じない。従って、上記シール部13にあっては、上記当接部13Aを所定幅の平面状とし、上記容器本体11の周壁上端に当接させることが可能な面積を拡げることで、密封状態の保持に係る性能向上を図ることができる。
また、上記シール部13は、該シール部13が設けられる上記蓋体12の部位、つまり外周部12Bの肉厚を1とした場合に、その肉厚を1~4に設定することが好ましい。即ち、該シール部13は、所定の肉厚に設定することで、上記開口111の周縁部の密封状態を保持しつつも、電子レンジ等による加熱時にひずみが生じることを良好に抑制することが可能である。外周部12Bの肉厚1に対して該シール部13の肉厚が1に満たない場合、シール部13が容器本体11(蓋体12)に十分密着されずに密封状態が不十分になるおそれがある。外周部12Bの肉厚1に対して該シール部13の肉厚が4を超える場合、厚みが増した分、シール部13がひずみやすくなり、変形抑制が不十分になるおそれがある。
【0014】
〔ポリプロピレン〕
上記シール部13が一体に形成される蓋体12は、その材料にポリプロピレンが使用されている。
上記ポリプロピレンには、単独重合体であるホモポリマーに限らず、透明性や耐衝撃性の向上を図るという観点から、他のα-オレフィンとの共重合体を用いてもよい。他のα-オレフィンとの共重合体としては、例えば、透明性の高いエチレン-プロピレン共重合体が挙げられる(但し、耐熱性の観点からエチレンの含有量は20質量%以下が好ましい)。また、共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れを用いてもよい。
また、上記ポリプロピレンには、JIS S 2029 プラスチック製食器類 に定められた電子レンジに使用できる食器類としての表示耐熱温度140℃以上を満足できるという観点から、融点が155℃以上のものを用いることが好ましい。
そして、上記ポリプロピレンとしては、耐熱性の観点から、融点が155℃以上であるホモポリマー又はブロック共重合体を用いることがさらに好ましい。
【0015】
〔エラストマー組成物〕
上記シール部13は、その材料に弾性を有するエラストマー組成物が使用されている。
上記エラストマー組成物は、重量平均分子量が10万~50万の水添スチレン系ブロック共重合体A、重量平均分子量が500以上のゴム用軟化剤B、及び、オレフィン系樹脂Cを含有してなる。
【0016】
<水添スチレン系ブロック共重合体A>
上記水添スチレン系ブロック共重合体Aには、柔軟性と成形性の観点から、スチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)と、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(b)と、からなるブロック共重合体A’の水素添加物を使用することが好ましい。
上記重合体ブロック(a)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
上記重合体ブロック(b)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
上記水添スチレン系ブロック共重合体Aとして好ましくは、トリブロック共重合体であり、具体的にはSEBS、SEPS、SEEPS、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)-エチレン・ブチレン-(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられる。
【0017】
上記水添スチレン系ブロック共重合体Aにあっては、重量平均分子量(Mw)が高いものを用いることで、得られるエラストマー組成物の100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)が良好になり、耐圧縮永久ひずみ性が向上する傾向を有する。
このCSが良好になるとは、即ち、CSの値が小さくなることであり、該CSの値が小さくなれば、シール部13に繰り返し圧縮力をかけて変形させても、該シール部13が元の形状に復帰しやすくなり、特に密封状態を保持する効果が高くなる。
具体的に、CSを良好にするという観点から、使用する上記水添スチレン系ブロック共重合体Aは、Mwが10万~70万のものが好ましく、15万~50万のものがより好ましく、20万~45万のものがさらに好ましい。
【0018】
また、上記水添スチレン系ブロック共重合体Aにあっては、スチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)の含有率が低くなることで、得られるエラストマー組成物中における上記ゴム用軟化剤Bの保持力が高くなる傾向を有する。
具体的に、ゴム用軟化剤Bの保持力を高めるという観点から、水添スチレン系ブロック共重合体A中におけるスチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)の含有率は、10~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましい。
なお、スチレン系単量体からなる重合体ブロック(a)の含有率は、モノマーの仕込み量から算出することが可能であり、共重合体のNMR測定によって決定することも可能である。
【0019】
<ゴム用軟化剤B>
上記ゴム用軟化剤Bとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等が挙げられる。これらの中でもパラフィンオイルは、上記水添スチレン系ブロック共重合体Aとの親和性が良好であり、例えばエラストマー組成物からポリプロピレンへの移行等のような他樹脂への移行が起きにくいという観点から、好ましい。
上記ゴム用軟化剤Bには、他樹脂への移行を抑える、及び得られるエラストマー組成物の耐圧縮永久ひずみ性を向上させるという観点から、重量平均分子量(Mw)が500以上のものが使用される。該ゴム用軟化剤Bの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは700以上、より好ましくは900以上であり、また、粘性による取り扱いの容易さという観点から、好ましくは1500以下である。
また、上記ゴム用軟化剤Bに含まれる低分子量成分は、得られるエラストマー組成物の耐圧縮永久ひずみ性に悪影響を及ぼすおそれがあるとともに、他樹脂へ移行することで、該他樹脂の熱収縮等による変形を助長する可能性がある。こうした低分子量成分を少なくするという観点から、上記ゴム用軟化剤Bは、分子量分布指数(Mz)(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が4.0以下のものを用いることが好ましい。該分子量分布指数(Mz=(Mw/Mn))は、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。また、分子量分布指数(Mz)(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、入手が容易であるという観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.2以上である。
上記ゴム用軟化剤Bの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法を用い市販のポリスチレン分子量標準を用いて測定することが可能である。
上記エラストマー組成物中における上記ゴム用軟化剤Bの含有量は、過剰に少ないとエラストマー組成物の柔軟性が低下して耐水漏れ性に影響を及ぼすおそれがあるという観点から、上記水添スチレン系ブロック共重合体Aが100質量部に対し、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは150質量部以上である。また、含有量は、過剰に多いとブリードが生じやすくなって、上記エラストマー組成物と一体化された他樹脂の加熱時における変形を助長する可能性があるという観点から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。
【0020】
<オレフィン系樹脂C>
上記オレフィン系樹脂Cとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体やその他のα-オレフィンのポリマー等が挙げられる。これらの中で、耐熱性及び相溶性の観点から、上記オレフィン系樹脂Cとしては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
また、上記オレフィン系樹脂Cには、単独重合体であるホモポリマーに限らず、透明性や耐衝撃性の向上を図るという観点から、他のα-オレフィンとの共重合体を用いてもよい。他のα-オレフィンとの共重合体としては、例えば、透明性の高いエチレン-プロピレン共重合体が挙げられる(但し、耐熱性の観点からエチレンの含有量は20質量%以下が好ましい)。
即ち、上記オレフィン系樹脂Cにおいて、共重合体には、ホモ重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れを用いてもよいが、これらの内で好ましいのはホモ重合体及びブロック共重合体から選択される1つ以上の重合体である。上記オレフィン系樹脂Cとしては、得られるエラストマー組成物の耐圧縮永久ひずみ性が向上することから、融点が155℃以上の重合体がさらに好ましい。
上記エラストマー組成物中における上記オレフィン系樹脂Cの含有量は、過剰に少ないとA硬さが低くなるという観点から、上記水添スチレン系ブロック共重合体Aが100質量部に対し、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。また、含有量は、過剰に多いとA硬さが高くなるという観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
【0021】
<性能>
上記エラストマー組成物は、上記シール部13のベタツキを抑えるという観点から、A硬さを5以上とする。該A硬さは、好ましくは10以上、より好ましくは30以上である。また、上記シール部13の柔軟性とシール性を保持するという観点から、該A硬さは、70以下とされ、好ましくは60以下、より好ましくは50以下とされる。
上記エラストマー組成物は、上記シール部13と一体に形成された上記蓋体12(場合によっては容器本体)の加熱時における変形を抑制するという観点から、100℃で24時間の圧縮永久ひずみ(CS)が60%以下、好ましくは50%以下とされる。
ここで、上記CSと、加熱による変形との関係について説明する。エラストマー組成物は、室温ですでにガラス転移温度を超えているため、通常、その線膨張係数は、複合成形体とした際の被着体(本実施形態では蓋体)の材料(本発明ではポリプロピレン)の方が小さく、引張強度又は圧縮強度は該材料(本発明ではポリプロピレン)の方が大きくなる。そうすると、ポリプロピレンとエラストマー組成物とを材料に用いた複合成形体に熱履歴を与えた場合、高温ではエラストマー組成物からなるシール部が圧縮された状態となり、エラストマー組成物の圧縮永久ひずみが0でない限りは圧縮ひずみが保持される。このため、室温に戻る際には、エラストマー組成物の圧縮ひずみが解放されることで、ポリプロピレンに引っ張り力が加わることになる。そして、該引っ張り力が、熱履歴による複合成形体の変形現象の原動力になると考えられ、かかる観点から、エラストマー組成物は、圧縮永久ひずみが小さい程、変形を起こし難く、好ましい。
【0022】
〔その他成分〕
上記ポリプロピレンや上記エラストマー組成物には、成形時の熱劣化や長期使用の観点から、酸化防止剤を含有させてもよい。また、加熱条件下での樹脂特性の変化が抑制される観点から、熱安定剤を含有させてもよい。
上記酸化防止剤は、硫黄系、ヒンダートフェノール系、リン系等の公知の酸化防止剤から任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤としては、リン含有化合物、ヒドラジド化合物、有機イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられるが、その他エステル交換触媒とキレート形成する等して該触媒の活性を低減させる化合物も利用可能である。本発明では、リン含有化合物及びヒドラジド化合物が好ましい。これらは、併用されていてもよい。
上記酸化防止剤や上記熱安定剤の他、本発明の効果を損なわない範囲であれば、各種プラスチック添加剤や顔料、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを他の添加剤として含有させてもよい。該他の添加剤としては、重金属不活性化剤、脂肪酸エステル等の滑剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート化合物やヒンダードフェノール系化合物等の光安定剤;カルボジイミド化合物やオキサゾリン化合物等の加水分解防止剤;フタル酸エステル系化合物、ポリエステル化合物、(メタ)アクリルオリゴマー、プロセスオイル等の可塑剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤;ニトロ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維等の充填剤;テトラブロモフェノール、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃剤;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤や酸変性ポリオレフィン樹脂等の相溶化剤;そのほか顔料や染料等が挙げられる。
【0023】
〔製造方法〕
上記蓋体12及び上記シール部13は、二色成形によって一体に形成される。該二色成形では、上記蓋体12を成形するための一次成形用キャビティと、上記シール部13を成形するための二次成形用キャビティとを有する二色成形用型を用いる。
上記二色成形にあっては、まず一次成形用キャビティ内にポリプロピレンを射出し、冷却硬化して、該一次成形用キャビティ内で上記蓋体12を成形する。次いで、二次成形用キャビティ内にエラストマー組成物を射出し、冷却硬化して、上記蓋体12の所定の部位にシール部13を一体的に成形する。
上記二色成形用型には、コアの一部を可動させることで一次成形用キャビティと二次成形用キャビティとを形作るコアバック方式のものと、固定型に対して可動型をターンテーブル等によって位置替えするロータリー方式のものとがあり、何れの方式のものを使用してもよい。
上記二色成形は、一次成形体である蓋体を一旦型内から取り出して別の金型にセットしなおすインサート成形に比べて成形サイクル時間や手間が少なく経済的であるという利点を有する。
なお、通常の食品容器で用いられるような高温環境下における物性のバランスが良好でない2種以上の材料の場合、一次成形体に部分的な歪みが発生したりするので、二色成形は好ましい製造方法と成り得ないが、本発明のポリプロピレンとエラストマー組成物であれば、高温環境下における物性のバランスが良好であり、二色成形が好ましい製造方法となる。
【0024】
〔変更例〕
本発明の食品容器は、上記した構成のものに限定されず、例えば、以下に示すように構成を変更してもよい。
上記シール部は、上記蓋体と一体に形成することに限らず、上記容器本体と一体に形成してもよい。この場合、該シール部と一体に形成される該容器本体の材料には、ポリプロピレンが用いられる。また、該シール部を該容器本体と一体に形成する場合、該シール部は、容器本体の周壁の上端面に設けられる。また、シール部を容器本体と一体に形成する場合、当接箇所は蓋体の周縁部分となるが、この場合のシール部の当接部の所定幅は、容器本体の周壁の上端面の幅(厚み)と、蓋体の周縁部分の幅とを比較し、狭い方の幅を1として、1~20に設定することが好ましく、容器本体の周壁の上端面の幅(厚み)と略等幅に設定されることがより好ましい。
なお、上記シール部と一体に形成されるものについては、その材料がポリプロピレンに限定されるが、上記実施形態の容器本体11あるいは変更例の蓋体のように、該シール部と一体に形成されないものの材料は、特に限定されず、金属、ガラス、プラスチック等、通常、食品容器に使用される材料であればいずれでも使用可能である。なお、こうした材料として好ましいものは、衛生性と耐熱性から、ガラス、プラスチックであり、プラスチックの中でもポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート等が好ましく、また容器本体と蓋体とは略常に共に使用されるものであり、使用者による取り扱いを簡易なものにするという観点から、ポリプロピレンがさらに好ましい。
上記食品容器の製造方法は、上記二色成形以外の、従来公知の成形方法を採用してもよい。
【実施例
【0025】
〔使用原料リスト〕
1.エラストマー組成物(シール部の材料)
<水添スチレン系ブロック共重合体A(表中は「A」と記載)>
[実施例]
(1) 水添SEBS共重合体、G1651H〔商品名〕、クレイトンポリマー社製、Mw=32万、スチレン系重合体ブロックの含有率=33%。
[比較例]
(1’) 水添SEBS共重合体、G1652〔商品名〕、クレイトンポリマー社製、Mw=7.8万、スチレン系重合体ブロック(a)の含有率=30%。
【0026】
<ゴム用軟化剤B(表中は「B」と記載)>
[実施例]
(1) パラフィンオイル、PW-380〔商品名〕、出光興産社製、Mw=1100、Mz(Mw/Mn)=1.1。
(2) パラフィンオイル、ハイドロブライト1000〔商品名〕、ソネボン社製、Mw=900、Mz(Mw/Mn)=2.2。
[比較例]
(1’) パラフィンオイル、ケイドール〔商品名〕、ソネボン社製、Mw=310、Mz(Mw/Mn)=6.9。
【0027】
<オレフィン系樹脂C(表中は「C」と記載)>
[実施例及び比較例]
(1) ポリプロピレン樹脂、PM600A〔商品名〕、サンアロマー社製。
【0028】
2.ポリプロピレン(蓋体の材料)
(1) ホモPP(プロピレンホモポリマー)、PM802〔商品名〕、サンアロマー社製、融点162℃。
(2) ランダムPP(エチレン・プロピレンランダム共重合体)、PB222A〔商品名〕、サンアロマー社製、融点146℃。
(3) ブロックPP(エチレン・プロピレンブロック共重合体)、PM870A〔商品名〕、サンアロマー社製、融点161℃。
<ポリプロピレン樹脂の融点>
試料約10mgをアルミパンに入れてアルミ蓋を圧着し、該アルミパンを示差走査熱量分析計(パーキンエルマー社のDSC8000)の装置測定部に設置し、空気中・昇温速度20℃/分の条件で測定した。得られる融解ピークをJIS K 7121で規定される方法に準拠して解析し、融点を決定した。
【0029】
〔配合組成〕
実施例1~3の配合組成を表1、実施例4~6の配合組成を表2、比較例1,2の配合組成を表3に示す。
なお、各表の2(ポリプロピレン)の欄においては、ホモPP、ランダムPP又はブロックPPのうち各実施例又は各比較例で使用したものを○印で示した。
【0030】
〔性能評価〕
以下の各項目で述べた方法によって、各実施例及び各比較例について試験を行い、性能を評価した。その結果を表1から表3に示す。
【0031】
<A硬さ>
エラストマー組成物を用いた射出成形により、厚さ2mmのプレートを得た。射出成形後、該プレートは、恒温恒湿室(温度23℃、相対湿度50%)に24時間以上静置し、状態を安定させた。その後、該プレートを3枚重ねて試験片とし、この試験片について、JIS K 7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じてA硬さを測定した。
【0032】
<圧縮永久ひずみ(CS)>
エラストマー組成物を用いた射出成形により、厚さ2mmのプレートを得た。次いで、該プレートを円盤状にカットし、さらに6枚重ねて試験片とした。該試験片について、JIS K 6262に規定される圧縮永久ひずみ試験に従い、圧縮永久ひずみ(CS)を測定した。
具体的に、上記圧縮永久ひずみ試験は、標準温度(23.2±2℃)において、試験片の直径が29.0±0.5mm、厚さが12.5±0.5mm)であることを確認し、その結果を標準値としたうえで、スペーサ(厚さ:9.3~9.4mm)を介して該試験片を圧縮板に挟み、25体積%圧縮の状態にて100℃で24時間保持した後、標準温度の条件下で圧縮板を外し、30分放置後の試験片の中央部の厚さを測定した。そして、その測定結果を下記の圧縮永久歪算出式にあてはめて、圧縮永久ひずみ(CS)を算出した。
CS(%)=[(t0-t2)÷(t0-t1)]×100
なお、上記式中で、t0は試験片の元の厚さ(mm)、t1はスペーサの厚さ(mm)、t2は圧縮装置から取り外してから30分後の試験片の厚さ(mm)を示す。
圧縮解放後、エラストマーが完全に圧縮前の寸法形状に戻ったときのCSの値は0%であり、圧縮から開放しても圧縮されたままの形状で寸法形状が元に戻らない場合のCSの値は100%であるから、CSの値は0から100%の間で小さいほど回復が優れていることを意味する。
【0033】
<耐熱試験>
図4に示す蓋体12について、各実施例又は各比較例の配合組成で得られたエラストマー組成物からなるシール部13を一体に形成した。次いで、該蓋体12を、140℃±1℃の温度雰囲気のギヤーオーブン(強制循環形熱老化試験機、型番STD45-P、東洋精機製作所製)中に1時間静置した後、取り出し、室温で1時間放冷したものを、パッキン側が接地するように水平の台上に置き、蓋体12の長径側の横幅10cm以内での、接地面からの最大の浮き上がり高さをmm単位で測定し、熱変形量を測定した。
【0034】
<耐熱試験後の水漏れ試験>
(JIS目視)
JIS S 2029に定められたシール容器の水漏れ試験に準拠し、図2に示す容器本体11(内容量880mL)に264mLの水を入れ、該容器本体11に上記耐熱試験後の蓋体12を取り付けたものを10個準備し、25℃の室温下で長径側を接地して垂直に30分保持し、さらに180°回転してさらに30分保持して、1個でも水漏れ(水滴)が見つかったものは×、1個も水滴が見えなかったものを〇とした。
(ろ紙による検出)
さらに、上記JIS目視で〇となったものについて、水漏れをより厳しく評価するために、ろ紙(品名:No.5C、アドバンテック社製)を10mm×40mmに切ったものを検出紙とし、該検出紙をシール部13と容器本体11との合わせ目から蓋体隅のシール部の当接面まで差し込んで10秒間つき当て、つき当てる前後の検出紙の重さを0.1mg単位で秤量し、検出紙の重さが1mg以上増加したものは水分を検出したものであるとして、10個中における水分を検出したものの個数を計測した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
〔まとめ〕
実施例1~6については、A硬さ、CS、耐熱試験の全てについて良好な結果が得られた。
比較例1については、エラストマー組成物の水添スチレン系ブロック共重合体Aとして、重量平均分子量が10万~50万の範囲外のもの(Mw=7.8万)を用いた結果、実施例1のA硬さ36に比べ、A硬さ31の柔らかいものとなった。このような柔らかさは、通常であれば耐水漏れ性に有利に働くが、水漏れが生じたことと、CSが100%と非常に大きいことから鑑みて、耐圧縮永久ひずみ性が悪いためにシール部の当接面に隙間ができて水漏れが生じたことと推測した。
比較例2については、エラストマー組成物のゴム用軟化剤Bとして重量平均分子量が500に満たないもの(Mw=310)を用いた結果、実施例1のA硬さ36と同じく、A硬さ36となった。しかし、CSの値が65%と大きく、さらに熱変形量が9mmと、実施例1の2mmに比べても尚一層大きく、水漏れも生じた。この結果から鑑みて、耐圧縮永久ひずみ性が悪いことによる変形力に加え、さらに、ゴム用軟化剤Bの低分子量成分がシール部から蓋体へ移行することによって、変形が助長されたと推測した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の食品容器は、シール部が蓋体又は容器本体と一体に形成されているうえで、電子レンジ等による加熱時に変形し難く、密封状態を保つことができるから産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 食品容器
11 容器本体
12 蓋体
13 シール部
111 開口
112 フランジ
113 突起
12A 平板部
12B 外周部
121 環状溝
122 固定部
123 ヒンジ
124 フック
図1
図2
図3
図4
図5