(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20230911BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
B60R16/02 623U
(21)【出願番号】P 2019011019
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】大塚 竜也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 省悟
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136810(JP,A)
【文献】特開2019-1492(JP,A)
【文献】特開2014-15108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアに設けられてスライド体に電力を供給する給電装置であって、
前記スライド体に給電するためのワイヤハーネスを収容するケースを備え、
前記ケースは、車両フロアの周縁部の上面を覆うカバー部材の端部の下方に位置して当該端部を支持する支持部を有
し、
前記支持部は、前記ケースの上板部と一体に形成されており、
前記ケースは、前記ワイヤハーネスを収容するための収容空間を形成する側面部を有し、
前記上板部が前記側面部から突出するように延長されていることで、前記支持部が形成されていることを特徴とする給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロアに設けられてスライド体に電力を供給する給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスと、ワイヤハーネスを収容するケースと、を備え、自動車(車両)のスライドシート(スライド体)に給電する給電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された給電装置では、ケースが扁平に形成されるとともに車両フロア上に配置され、スライドシートの移動に伴ってケースからワイヤハーネスが引き出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両フロア上には、給電装置以外にも種々の装置や機器が配置され、これらがフロアカーペットによって覆われる。また、車両フロアにおける周縁部には、樹脂製のフィニッシュプレート(カバー部材)が設けられることがある。このようなフィニッシュプレートは、搭乗者によって踏まれたり荷物が載置されたりすることにより、荷重が加わることがある。そこで、荷重が加わった際にフィニッシュプレートを撓みにくくするために、車両フロア上に、フィニッシュプレートの端部を下方から支持する支持部材を設ける構成が考えられる。
【0005】
スライド体に給電するための給電装置の周辺には、ケースから引き出されてスライド体に向かうワイヤハーネスだけでなく、車載電源に接続されてケースに向かうワイヤハーネスも配索される。しかしながら、給電装置の周辺に、上記のようにフィニッシュプレートを支持する支持部材を設けると、ケースの外側に配置されるワイヤハーネスや他の機器等の周辺物と干渉しやすくなり、ケースの外側の空間を利用しにくくなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ケースの外側の空間を利用しやすくすることができる給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の給電装置は、車両フロアに設けられてスライド体に電力を供給する給電装置であって、前記スライド体に給電するためのワイヤハーネスを収容するケースを備え、前記ケースは、車両フロアの上面を覆うカバー部材の端部の下方に位置して当該端部を支持する支持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような本願発明の給電装置によれば、ケースに設けられた支持部によってカバー部材の端部を支持することで、別体の支持部材を車両フロア上に配置する必要がない。従って、ケースの外側且つ支持部の下方の空間を利用しやすくすることができ、例えばケースの外側においてワイヤハーネスを配索しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る給電装置を示す斜視図である。
【
図3】前記給電装置のケースの概略形状を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の給電装置1は、車両フロアに設けられてスライド体としてのスライドシートに電力を供給する給電装置であって、
図1に示すように、ケース2と、第1のワイヤハーネス3と、第2のワイヤハーネスと、を備える。本実施形態では、車両における前後方向をX方向とし、幅方向をY方向とし、上下方向をZ方向とする。
【0011】
車両フロアには、給電装置1が設けられるとともに、適宜な位置に複数のワイヤハーネスが配索され、これらのワイヤハーネスおよびケース2を上方から覆うようにフロアカーペット6(
図2参照)が設けられる。また、給電装置1に対して後方側には、カバー部材としてのフィニッシュプレート4が設けられ、フィニッシュプレート4によって車両フロアの上面(フロアパネルの上面)が覆われるようになっている。
【0012】
フィニッシュプレート4は、例えば樹脂製であって、車両の後方側開口部から前方側に向かって延びるように形成されている。フィニッシュプレート4は、後端部がフロアパネルに対して固定されており、前方側に向かうにしたがって上方に向かうように延びる全体形状を有している。これにより、フィニッシュプレート4の前端部41は、フロアパネルの上面に対して離隔している。また、前端部41は、下方側に向かうように屈曲されている。
【0013】
ケース2は、第2のワイヤハーネスを収容するためのものであって、例えば樹脂によって形成され、XY平面に沿うとともにX方向を長手方向とする扁平な形状を有している。即ち、ケース2は、XY平面に沿った底板部21と、底板部21から立設された側面部22と、底板部21の上方に離隔して配置されるとともにXY平面に沿った上板部23と、を有する。底板部21と側面部22と上板部23とによって囲まれる空間が、第2のワイヤハーネスを収容する収容空間(
図2、3参照)2Aとなる。尚、底板部21と側面部22とが一体に形成されていてもよいし、側面部22と上板部23とが一体に形成されていてもよいし、これら3つが全て別体に形成されていてもよい。
【0014】
第1のワイヤハーネス3は、一端が車両の電源に対して電気的に接続され、他端がケース2に接続されるものである。即ち、第1のワイヤハーネス3の他端に設けられたコネクタと、ケース2に設けられたコネクタと、が嵌合するようになっている。第2のワイヤハーネスは、ケース2内に収容されるとともに、一端が第1のワイヤハーネス3に対して電気的に接続され、他端がスライドシート内の電装品に対して電気的に接続される。
【0015】
ケース2に対してY方向に隣り合う位置には、X方向に沿って延びるレール5が設けられている。レール5は、スライドシートをX方向に沿って案内するとともに、第2のワイヤハーネスの他端を保持する保持部材をX方向に沿って案内する。このように保持部材がX方向に沿って移動する際に、スライド位置に応じてケース2から第2のワイヤハーネスが適宜に引き出されるようになっている。
【0016】
ここで、給電装置1の要部の形状および位置関係について、
図2、3も参照して説明する。ケース2の上板部23は、側面部22からX方向後方側に突出するように延長されており、この延長された部分が支持部231となる。即ち、支持部231は上板部23と一体に形成されている。また、支持部231は、第1のワイヤハーネス3の少なくとも一部を、Z方向における上方側から覆うように延長されている。
【0017】
上板部23には、支持部231を補強するための複数のリブ232が形成されている。リブ232は、ZX平面に沿って延び、支持部231の先端部と側面部22とを接続するように、Y方向から見て三角形状に形成されている。即ち、リブ232は、XY平面に沿って延びる支持部231と略直交し、YZ平面に沿って延びる側面部22と略直交する。
図2には1つのリブ232のみが示されているが、Y方向に並ぶように複数のリブ232が設けられている。
【0018】
上板部23の上面は、フロアカーペット6によって覆われる。尚、
図2には2枚のフロアカーペット6が設けられた例を示しているが、フロアカーペットは1枚であってもよいし、3枚以上であってもよく、異なる種類の複数のフロアカーペットが重ねられてもよい。フロアカーペット6のうちX方向後方側の端縁部61は、フィニッシュプレート4によってZ方向上方から覆われ、フィニッシュプレート4の前端部41がフロアカーペット6に当接する。
【0019】
このとき、前端部41に対し、フロアカーペット6を挟んでZ方向下方側に、支持部231が設けられている。即ち、支持部231は、フィニッシュプレート4の前端部41の下方に位置し、フロアカーペット6を介して前端部41を下方から支持する。これにより、フィニッシュプレート4に対してZ方向上方側から荷重が加わった場合に、支持部231によってこの荷重を受けることができ、フィニッシュプレート4の変形が抑制される。
【0020】
また、フィニッシュプレート4のうち前端部41に連続してXY平面に沿って延びる水平部42の下方側には、車両フロアとフロアカーペット6との間に、ワイヤハーネス収容空間S1が形成されている。第1のワイヤハーネス3は、ワイヤハーネス収容空間S1を通るように配索される。
【0021】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、ケース2に設けられた支持部231によってフィニッシュプレート4の前端部41を支持することで、別体の支持部材を車両フロア上に配置する必要がない。従って、ケース2の外側且つ支持部231の下方の空間(ワイヤハーネス収容空間S1)を有効利用することができ、ケース2の外側において第1のワイヤハーネス3を配索しやすくすることができる。
【0022】
また、支持部231がケース2の上板部23と一体に形成されていることで、別体の支持部材を車両フロア上に配置する構成や、上板部とは別体の支持部をケースに設ける構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0023】
また、ケース2において上板部23が側面部22から突出するように延長されて支持部231が形成されていることで、フィニッシュプレート4をX方向前方側に延長しなくても前端部41を支持させることができ、フィニッシュプレート4を形状変更する必要がない。
【0024】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0025】
例えば、前記実施形態では、支持部231がケース2の上板部23と一体に形成されているものとしたが、上板部とは別体の支持部を設けてもよい。例えば、従来形状のケースに対し、別体の支持部を固定する(取り付ける)構成とすれば、従来形状のケースを流用することができる。
【0026】
また、前記実施形態では、ケース2において上板部23が側面部22から突出するように延長されて支持部231が形成されるものとしたが、支持部は、側面部から突出していなくてもよい。即ち、フィニッシュプレート4がX方向前方に延長されたり、ケース全体をX方向後方側に延長したりすることにより、前端部41がケースの上板部の上方に位置する場合には、ケースの上板部が支持部として機能してもよい。
【0027】
また、前記実施形態では、ケース2の支持部231によってカバー部材としてのフィニッシュプレート4の前端部41が支持されるものとしたが、このような構成に限定されない。即ち、ケース2に対してY方向に並ぶようにカバー部材が配置される場合には、カバー部材のY方向の端部を支持部によって支持してもよいし、ケース2に対してX方向前方側に並ぶようにカバー部材が配置される場合には、カバー部材の後端部を支持部によって支持してもよい。
【0028】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 給電装置
2 ケース
22 側面部
23 上板部
231 支持部
4 フィニッシュプレート(カバー部材)
41 前端部
S1 ワイヤハーネス収容空間