(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】端子付き電線、端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20230911BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2019172631
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉江 和彦
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-067577(JP,A)
【文献】特開平08-115755(JP,A)
【文献】特開2003-243058(JP,A)
【文献】特開2019-009101(JP,A)
【文献】実開昭50-052490(JP,U)
【文献】特開昭62-147669(JP,A)
【文献】特開2010-140694(JP,A)
【文献】特開平05-152011(JP,A)
【文献】実開平06-048173(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線から成る芯線部を有する電線と、
平型端子と、を備え、
前記
平型端子は、
基底部及び該基底部の幅方向両端部に連なった一対の圧着片を備えて前記芯線部に圧着された圧着部と、
前記基底部の長手方向一端部から平板状に延びた
相手側端子と接続する平型接続部と、
前記平型接続部の一部が
前記基底部の長手方向一端部を残して切り起され、前記基底部と平行になるように
前記圧着部側に折り返して曲げられることで前記電線の長手方向に延び、前記素線間に挿入された挿入部と、を有している
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記素線間における前記挿入部の周囲に導電性粉体が介在している
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記挿入部が、前記電線の長手方向と交差する先端面を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
複数の素線から成る芯線部を有する電線と、該電線の端末に接続された
平型端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、
前記
平型端子が、基底部及び該基底部の幅方向両端部に連なった一対の圧着片を備えて前記芯線部に圧着される圧着部と、前記基底部の長手方向一端部から平板状に延びた
相手側端子と接続する平型接続部と、前記平型接続部の一部が
前記基底部の長手方向一端部を残して切り起され、前記基底部と平行になるように
前記圧着部側に折り返して曲げられることで前記電線の長手方向に延び、前記素線間に挿入される挿入部と、を有し、
前記挿入部に導電性粉体を含んだ導電性ペーストを塗布し、該挿入部を前記素線間に挿入した後、前記圧着部を加締めて前記芯線部に圧着する
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端末に端子が接続された端子付き電線及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端末に圧着端子が接続された「端子付き電線」が知られている。
図2は、従来の端子付き電線の分解図である(特許文献1を参照)。
【0003】
図2に示す電線310は、端末部分の被覆311が剥ぎ取られて芯線部313が露出している。この芯線部313は、アルミニウム製の素線314が複数本撚り合わされ形成されたものである。芯線部313の表面には硬質粉体315が付着されている。この硬質粉体315は、芯線部313の表面に形成されている酸化被膜を破壊・除去するためのものである。
【0004】
図2に示す圧着端子316は、貫通孔319が形成された締結部317と、芯線部313に圧着される圧着部318と、を備えている。圧着部318は、基底部320と、一対の圧着片321a,321bと、を備えている。これら基底部320及び一対の圧着片321a,321bの内表面には、圧着される電線310の長手方向と直交する方向に延びた溝部322が複数形成されている。
【0005】
上記芯線部313は、予め硬質粉体315が付着された状態で基底部320に載置され、一対の圧着片321a,321bが加締められることで圧着部318が圧着される。また、この圧着時に硬質粉体315が芯線部313表面の酸化被膜に食い込んで酸化被膜が破壊・除去される。そしてその部分において新たに露出された芯線部313の清浄な金属面と圧着端子316とが接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示した従来の端子付き電線は、芯線部313表面の酸化被膜については硬質粉体315によって破壊・除去されるものの、芯線部313の中心部に位置する素線314間の酸化被膜までは破壊・除去することが難しいという問題があった。
【0008】
なお、電線径が太くなれば、圧着部に直接接触して接続する素線(即ち芯線部表面に位置する素線)よりも、他の素線を介して圧着部に接続する素線の方が多くなるため、太物電線に端子を圧着する場合は、素線間の酸化被膜対策が特に重要であった。
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、素線間の酸化被膜を破壊・除去することが可能な端子付き電線及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の端子付き電線は、複数の素線から成る芯線部を有する電線と、平型端子と、を備え、前記平型端子は、基底部及び該基底部の幅方向両端部に連なった一対の圧着片を備えて前記芯線部に圧着された圧着部と、前記基底部の長手方向一端部から平板状に延びた相手側端子と接続する平型接続部と、前記平型接続部の一部が前記基底部の長手方向一端部を残して切り起され、前記基底部と平行になるように前記圧着部側に折り返して曲げられることで前記電線の長手方向に延び、前記素線間に挿入された挿入部と、を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の端子付き電線の製造方法は、複数の素線から成る芯線部を有する電線と、該電線の端末に接続された平型端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、前記平型端子が、基底部及び該基底部の幅方向両端部に連なった一対の圧着片を備えて前記芯線部に圧着される圧着部と、前記基底部の長手方向一端部から平板状に延びた相手側端子と接続する平型接続部と、前記平型接続部の一部が前記基底部の長手方向一端部を残して切り起され、前記基底部と平行になるように前記圧着部側に折り返して曲げられることで前記電線の長手方向に延び、前記素線間に挿入される挿入部と、を有し、前記挿入部に導電性粉体を含んだ導電性ペーストを塗布し、該挿入部を前記素線間に挿入した後、前記圧着部を加締めて前記芯線部に圧着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、素線間に挿入部が挿入された状態の芯線部に圧着部を圧着することで、素線間の酸化被膜を破壊・除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる端子付き電線の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかる端子付き電線及びその製造方法について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる端子付き電線の分解図である。
【0015】
図1に示す端子付き電線1は、電線2と、電線2の端末に接続された端子3と、電線2の素線21間に挿入されることとなる挿入部4と、素線21間における挿入部4の周囲に介在した導電性粉体と、を備えている。
【0016】
電線2は、複数の素線21から成る芯線部22と、この芯線部22を覆った被覆23と、を有する丸型電線である。また、本例では、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る素線21を用いている。この電線2は、端末部分の被覆23が剥ぎ取られて芯線部22が露出している。
【0017】
端子3は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、芯線部22に圧着される圧着部33と、平型接続部37と、挿入部4と、を一体に有している。即ち本例では、挿入部4が端子3の一部として形成されている。
【0018】
圧着部33は、基底部31と、基底部31の幅方向両端部に連なった一対の圧着片32と、を備えている。これら基底部31及び一対の圧着片32の内表面には、接続される電線2の長手方向と直交する方向に延びた溝部34が複数形成されている(当該構成は、一般的にセレーションと呼ばれている。)。
【0019】
平型接続部37は、基底部31の長手方向一端部から平板状に延びている。平型接続部37には円形の貫通孔36が形成されている。
【0020】
挿入部4は、平型接続部37の一部が切り起され、一対の圧着片32間において基底部31と平行になるように曲げられて形成されている。挿入部4は、接続される電線2の長手方向に延びた四角柱状に形成されており、接続される電線2の長手方向と交差する先端面41を有している。
【0021】
上記導電性粉体は、端子3の圧着前に挿入部4に塗布される導電性ペーストに含まれるものである。この導電性ペーストは、硬質の金属粉から成る導電性粉体と有機溶剤とを含んでいる。
【0022】
上記端子付き電線1は、以下の工程を経て製造される。まず、挿入部4に上記導電性ペーストを塗布する。続いて、この挿入部4を芯線部22の中心に挿入する。そして、一対の圧着片32を加締めることにより圧着部33を芯線部22に圧着する。なお、圧着部33は、従来の圧着設備で圧着可能である。
【0023】
上述した圧着部33の圧着時には、芯線部22の中心に挿入された挿入部4のエッジが複数の素線21の酸化被膜に食い込んでこれら酸化被膜が破壊・除去される。そして、その部分において新たに露出された素線21の清浄な金属面と挿入部4とが接触する。また、これと同時に、挿入部4に塗布された導電性ペーストに含まれる導電性粉体が素線21間に拡がり、これら導電性粉体が複数の素線21の酸化被膜に食い込んでこれら酸化被膜が破壊・除去される。そして、新たに露出された各素線21の清浄な金属面同士が接触する。さらに、圧着部33の内表面において、複数の溝部34のエッジが複数の素線21の酸化被膜に食い込んでこれら酸化被膜が破壊・除去される。そして、その部分において新たに露出された素線21の清浄な金属面と圧着部33内表面とが接触する。
【0024】
このように、端子付き電線1は、挿入部4によって芯線部22の中心部に位置する素線21の酸化被膜を破壊・除去できる上、挿入部4によって中心部の素線21との導通をとることができる。また、本例の挿入部4は、先端面41を構成する各エッジが素線21の酸化被膜に食い込み易く、酸化被膜の破壊・除去に特に好適な形状となっている。
【0025】
また、端子付き電線1は、挿入部4に塗布された導電性ペーストに含まれる導電性粉体によって芯線部22の中心部に位置する素線21の酸化被膜を破壊・除去でき、中心部の素線21-素線21間の抵抗値を低くできる。また、本例のように導電性ペーストが塗布された挿入部4を芯線部22の中心に挿入し、圧着部33を加圧することで、少量の導電性ペーストで酸化被膜の破壊・除去に大きな効果が得られる。
【0026】
上述した実施形態では、アルミニウム製の素線21を用いていたが、本発明においては素線の材質はアルミニウムに限定されない。アルミニウムは他の金属よりも酸化被膜が形成され易いため、アルミ電線に本発明を適用することは特に有効であるが、酸化被膜は他の金属素線においても生じるものであり、アルミ電線以外の電線に本発明を適用しても勿論よい。
【0027】
上述した実施形態では、端子3が挿入部4を一つのみ有していたが、本発明においては端子が挿入部を複数有していてもよい。また、挿入部は端子と別体で形成されていてもよい。さらに、挿入部は、先端部を先細形状にしてもよい。
【0028】
上述した実施形態では、端子3の圧着前に挿入部4に導電性ペーストを塗布していたが、本発明においては導電性ペーストを使用せずに端子3を圧着してもよい。その場合においても、圧着部33の圧着時には、芯線部22の中心に挿入された挿入部4のエッジが複数の素線21の酸化被膜に食い込んでこれら酸化被膜が破壊・除去される。
【0029】
上述した実施形態では、端子3の圧着前に挿入部4に導電性ペーストを塗布していたが、本発明においては、圧着部33の内表面に導電性ペーストを塗布してもよいし、芯線部22の表面に導電性ペーストを塗布してもよい。また、挿入部4、圧着部33内表面、芯線部22表面、の全てに導電性ペーストを塗布してもよい。
【0030】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 端子付き電線
2 電線
3 端子
4 挿入部
21 素線
22 芯線部
33 圧着部