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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】しょうゆ含有液体調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20230911BHJP
   A23L 27/21 20160101ALI20230911BHJP
   A23L 27/24 20160101ALI20230911BHJP
【FI】
A23L27/50 E
A23L27/21 Z
A23L27/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209981
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2020089358
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018221434
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】清水 将夫
(72)【発明者】
【氏名】小池 真
(72)【発明者】
【氏名】白幡 登
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/007892(WO,A1)
【文献】特開2011-45247(JP,A)
【文献】特開2009-044984(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108208744(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2011-0072577(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含有するしょうゆ含有液体調味料であって、
(A)ナトリウム 2.2質量%以上3.5質量%以下
(B)カリウム 0.8質量%以上4.0質量%以下
(C)フェニルアラニン 0.26質量%以上0.60質量%以下
(D)プロリン 0.15質量%以上0.28質量%未満
前記プロリンの含有量に対する前記フェニルアラニンの含有量の比の値が、質量比で1.1以上4.0以下である、しょうゆ含有液体調味料。
【請求項2】
前記フェニルアラニンの含有量に対する前記カリウムの含有量の比の値が、質量比で1.7以上7.5以下である、請求項1記載のしょうゆ含有液体調味料。
【請求項3】
しょうゆを30質量%以上含有する、請求項1又は2記載のしょうゆ含有液体調味料。
【請求項4】
容器詰しょうゆ含有液体調味料である、請求項1~3のいずれか1項記載のしょうゆ含有液体調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しょうゆ含有液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取は、高血圧症、脳血管疾患、心臓疾患などの循環器系疾患を招き易いことが明らかとなってきている。食塩摂取量を低減するため、食塩含量の高い食品、特にしょうゆやしょうゆ加工品などのしょうゆ含有液体調味料の摂取に対する関心が増加している。しかし、食塩含量の低い減塩しょうゆや低塩しょうゆを使用すると塩味不足により、しょうゆを継ぎ足して使用して、食塩の摂取低減につながらないという問題がある。
そこで、調味料の成分のうち、食塩の一部を塩化カリウムで代替して塩味を増強する技術が知られている。また、塩化カリウムには特有の異味がある為、その異味をマスキングして塩味を付与する技術も提案されている(特許文献1~3)。このほか塩味を増強するために、プロリンなどのアミノ酸や、オルニチン、グリシンエチルエステル等の塩味増強物質を添加する技術が知られている(特許文献4、非特許文献1、2)。
【0003】
また、しょうゆに含まれる大豆ペプチドは血圧上昇抑制に効果的であることが知られており、抗血圧上昇作用の有効成分であるセリルチロシン(Seryl-tyrosine)やグリシルチロシン(Glycyl-tyrosine)などの大豆ペプチドに富んだしょうゆの製造方法が報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-55165号公報
【文献】特開2006-166750号公報
【文献】国際公開第2006/114918号
【文献】国際公開第2011/007892号
【0005】
【文献】Agric. Biol. Chem., 1989, 53(6), 1625
【文献】Biosci. Biotech. Biochem., 1995, 59(1), 35
【文献】J. Biosci. Bioeng., 2012, 113(3), 355-359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
減塩しょうゆは様々な方法で製造することができるが、本発明者らが検討したところ、低プロリン含量のしょうゆを用いて減塩しょうゆを製造した場合、カリウムを加えて塩味を増強してもしょうゆ感(中味、厚み)に劣り、また、カリウム由来の異味を感じやすく、好ましい風味を有する減塩しょうゆを得ることが難しいことがわかってきた。
本発明は、低食塩含量であり、かつ低プロリン含量でありながら、適度な塩味と味の厚みを呈し、さらに異味の発現を抑えたしょうゆ含有液体調味料の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた。
その結果、カリウムにより塩味を増強した減塩しょうゆにおいて、プロリンの含有量を特定範囲に抑え、かつフェニルアラニンを特定量含有させることにより、得られる減塩しょうゆが適度な塩味を呈し、しょうゆ本来の好ましい醸造風味(中味、厚み)も呈し、さらにカリウム由来の異味も発現しにくいことを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(A)~(D)を含有するしょうゆ含有液体調味料であって、
(A)ナトリウム 2.2質量%以上3.5質量%以下
(B)カリウム 0.8質量%以上4.0質量%以下
(C)フェニルアラニン 0.26質量%以上0.60質量%以下
(D)プロリン 0.15質量%以上0.28質量%未満
前記プロリンの含有量に対する前記フェニルアラニンの含有量の比の値が、質量比で1.1以上4.0以下である、しょうゆ含有液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のしょうゆ含有液体調味料は、低食塩含量であり、かつ低プロリン含量でありながら、適度な塩味と味の厚みを呈し、さらに異味も感じにくい。したがって、本発明のしょうゆ含有液体調味料は、低プロリン含量しょうゆをベースとする減塩調味料としても好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における「低食塩含量」とは、しょうゆ含有液体調味料100g中の食塩含有量が9g以下(ナトリウム量換算で3.54g以下)である場合を言う。また、本明細書における「低プロリン含量」とは、しょうゆ含有液体調味料100g中のプロリンの含有量が0.30g以下である場合を言う。
【0011】
本発明のしょうゆ含有液体調味料(以下、単に「本発明の液体調味料」とも記載する)は、しょうゆを含有し、更に前記(A)~(D)をそれぞれ特定量含有する。
【0012】
本発明の液体調味料中における(A)ナトリウム(以下、Naとも記載する)の含有量は2.2~3.5質量%である。塩味の向上、ナトリウムの過剰摂取抑制、中味の発現、及び工業的生産性の観点から、上記ナトリウムの含有量は2.6~3.5質量%であることが好ましく、2.8~3.5質量%であることがより好ましく、2.9~3.5質量%であることが更に好ましく、2.9~3.2質量%であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本発明において、ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、液体調味料中にイオンの形態で含有されているものをいう(以下に記載するカリウムについても同様である)。
【0014】
本発明の液体調味料にナトリウムを含有させる場合には、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、もしくはグアニル酸ナトリウム、又はこれらの2種以上の混合物を用いることができる。ナトリウムの供給源として、しょうゆ及び食塩を主に使用し、補助的に他のナトリウム塩等を併用することが、風味バランス、及びコストの観点から好ましい。
【0015】
前記食塩として、様々なものが市販されている。乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)あたり、塩化マグネシウムを0.01~2部、塩化カルシウムを0.01~2部、及び塩化カリウムを0.01~2部含有する食塩が、風味、工業的生産性の観点から好ましい。
【0016】
本発明の液体調味料中における(B)カリウム(以下、Kとも記載する)の含有量は0.8~4.0質量%である。塩味の向上、中味の発現、及びカリウム由来の異味の発現を抑制する観点から、上記カリウムの含有量は0.8~3.0質量%であることが好ましく、0.8~2.5質量%であることがより好ましく、0.8~2.0質量%であることが更に好ましく、1.0~2.0質量%であることが特に好ましい。
また、少なくとも一部が塩化カリウム由来であることが好ましい。本発明の液体調味料中の総カリウム量に占める塩化カリウム由来のカリウムの割合は特に制限されないが、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の液体調味料中の総カリウム量に占める塩化カリウム由来のカリウムの割合は、100質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、92質量%以下であってもよく、90質量%以下とすることも好ましい。
【0017】
本発明において、液体調味料中のナトリウム(Na)並びにカリウム(K)の含有量は原子吸光光度計(Z-6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定することができる。
【0018】
本発明の液体調味料中における(C)フェニルアラニン(以下、Pheとも記載する)の含有量は0.26~0.60質量%である。カリウム由来の異味抑制、塩味の向上、及び中味の発現の観点から、上記フェニルアラニンの含有量は0.26~0.53質量%であることが好ましく、0.26~0.43質量%であることがより好ましく、0.29~0.43質量%であることが更に好ましく、0.32~0.43質量%であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の液体調味料中のフェニルアラニンの含有量は、しょうゆ由来の遊離フェニルアラニン量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料にフェニルアラニンが含まれる場合には当該原料由来の遊離フェニルアラニン量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。アミノ酸として添加するフェニルアラニンは、L-フェニルアラニン、D-フェニルアラニン、DL-フェニルアラニンを使用することができるが、D-フェニルアラニンは甘味を呈することから、L-フェニルアラニンを使用することが好ましい。
【0020】
本発明の液体調味料中の(D)プロリン(以下、Proとも記載する)の含有量は0.15質量%以上0.28質量%未満である。カリウム由来の異味抑制、塩味の向上、及び中味の発現の観点から、上記プロリンの含有量は0.16質量%以上0.28質量%未満であることが好ましく、0.18質量%以上0.28質量%未満であることがより好ましく、0.20質量%以上0.28質量%未満であることが更に好ましい。
【0021】
本発明の液体調味料中のプロリンの含有量は、しょうゆ由来の遊離プロリン量と、しょうゆ以外に新たに添加した原料にプロリンが含まれる場合には当該原料由来の遊離プロリン量との合計量をいい、ペプチド体を含まない。すなわち、しょうゆ以外に新たに添加した原料とは、調味料の原料として用いられる日本酒、ワイン等の酒、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料(しょうゆを除く)の他、植物エキス、動物エキス、酵母エキス等の各種エキス、蛋白加水分解物等の調味料、又はアミノ酸そのもの等をいう。アミノ酸として添加するプロリンは、L-プロリン、D-プロリン、DL-プロリンを使用することができるが、L-プロリンを使用することが好ましい。
【0022】
本発明において、液体調味料中のフェニルアラニン(Phe)並びにプロリン(Pro)の含有量はアミノ酸分析装置(「しょうゆ試験法」、(財)日本しょうゆ研究所編集、(株)醤油通信社販売)を用いて測定することができる。
【0023】
プロリンの添加は中味を増強させる一方で、カリウム由来の異味の抑制を緩和させる。フェニルアラニンとプロリンの含有量が本発明の規定の範囲内であっても、例えばフェニルアラニンの含有量がその下限値付近であり、かつプロリンの含有量がその上限値付近である場合(フェニルアラニンとプロリンの含有量の比が本発明の範囲外である場合)には、カリウム由来の異味の緩和作用が低減し、風味の良いしょうゆ含有液体調味料を得ることができない。本発明では、フェニルアラニンの含有量とプロリンの含有量の比(質量比)を所定の範囲内とすることにより、本発明のしょうゆ含有液体調味料を風味の良いもの(塩味、異味、中味の全てに優れたもの)とすることができる。
【0024】
本発明の液体調味料中の(D)プロリンの含有量に対する(C)フェニルアラニンの含有量の比の値(Phe/Pro)は、質量比で1.1以上4.0以下である。塩味の向上、カリウム由来の異味の抑制、及び中味の発現の観点から、Phe/Proの値は質量比で1.1以上3.0以下であることが好ましく、1.1以上2.2以下であることがより好ましく、1.3以上2.0以下であることが更に好ましく、1.4以上2.0以下であることが特に好ましい。
【0025】
フェニルアラニンは塩味の向上、カリウム由来の異味抑制、及び中味の発現に効果的である一方で、フェニルアラニンの含有量が本発明で定めるフェニルアラニンの含有量の上限値付近である場合には、塩味の向上作用が低減する。このことから、フェニルアラニンが本発明で定める範囲のうち上限値付近である本発明の液体調味料の場合、カリウムを多く含有させることにより、塩味を向上させることが好ましい。すなわち、本発明において、塩味向上の観点から、フェニルアラニンの含有量に対するカリウムの含有量の比が一定値以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の液体調味料中の(C)フェニルアラニンの含有量に対する(B)カリウムの含有量の比の値(K/Phe)は、塩味の向上の観点から、質量比で1.7以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
また、本発明の液体調味料中の(C)フェニルアラニンの含有量に対する(B)カリウムの含有量の比の値(K/Phe)は、カリウム由来の異味の抑制の観点から、7.5以下であることが好ましく、7.0以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の液体調味料は、上記(A)~(D)の他に、通常のしょうゆに含まれる種々のアミノ酸を含有している。また、通常は大豆ペプチドを含有している。大豆ペプチドとは、原料となる大豆蛋白質に由来し、上述のように抗血圧上昇作用を有するものも知られている。このような大豆ペプチドとして具体的には、セリルチロシンやグリシルチロシンなどが知られている。
【0028】
また、本発明の液体調味料のpHは、中味の発現、カリウム由来の異味抑制、及び保存性の観点から、2.0以上7.0未満の酸性であることが好ましく、2.5~6.5であることがより好ましく、3.0~6.0であることが更に好ましく、3.5~5.5であることが特に好ましく、4.0~5.0であることが殊更好ましい。酸味料等を添加することより、本発明の液体調味料のpHを所望の範囲に調製することができる。
【0029】
本発明の液体調味料において、酸味料としては、乳酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0~2%が好ましく、更に0.01~1%、特に0.02~0.5%、殊更0.04~0.1%であることが好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸の含有量は0~0.2%であることが好ましく、0.02~0.1%であることがより好ましい。工業的には、食酢や柑橘果汁を使用し、pHを所定の範囲とすることが、風味、生産効率、及びコストの観点から好ましい。食酢としては、米酢等の穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢等の果実酢、醸造酢の他、合成酢などを使用することができる。
【0030】
本発明の液体調味料は、しょうゆに(A)ナトリウム、(B)カリウム、(C)フェニルアラニン、及び(D)プロリンを所定量となるよう必要に応じて配合し、攪拌、混合、溶解した調味液を容器に充填することにより、製造することができる。また必要に応じて、その他の成分として、酸味料、無機塩、酸、賦形剤、香辛料、うま味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、野菜等の食品に使用可能な原料や、水を配合してもよい。
上記の原料として用いるしょうゆに特に制限はない。
【0031】
また、塩分(ナトリウム含量)を低下させた減塩しょうゆや低塩しょうゆを原料として使用し、本発明の液体調味料とする場合は、生しょうゆを電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量を低下させた生しょうゆ(減塩生しょうゆ、低塩生しょうゆ)を調製し、火入れ工程後、成分(A)~(D)の含有量及びその含有量比が本発明の規定の範囲内になるよう、必要により成分(A)~(D)を配合する方法、又は、火入れ工程後のしょうゆを電気透析、又は塩析/希釈することにより食塩含量を低下させたしょうゆ(減塩しょうゆ、低塩しょうゆ)を調製し、成分(A)~(D)の含有量及びその含有量比が本発明の規定の範囲内になるよう、必要により成分(A)~(D)を配合する方法等により製造することができる。更に、容器に充填する際には、加熱処理を行うのが好ましい。この場合には、(1)加熱処理した後、液体調味料の温度が低下しないうちに容器に充填する、(2)加熱処理しながら容器に充填する、(3)容器に充填した後、加熱処理するのが風味、安定性、及び色の観点から好ましい。
【0032】
本発明の液体調味料は、加熱処理を施して製造することが好ましい。調味液を容器に充填後、加熱処理を施したり、調味液を予めプレート式熱交換器などで加熱処理した後に、容器に充填したりすることにより製造することができる。加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70~130℃、更に75~120℃、特に80~100℃、殊更85~95℃で加熱することが、風味、安定性、色等の観点から好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、60℃の場合は10秒~120分、更に30秒~60分、特に1分~10分、殊更2分~5分であることが、風味、安定性、色等の観点から好ましい。80℃の場合は、2秒~60分、更に5秒~30分、特に10秒~10分、殊更30秒~5分であるのが、風味、安定性、色等の観点から好ましい。90℃の場合は、1秒~30分、更に2秒~10分、特に5秒~5分、殊更10秒~2分であるのが、風味、安定性、色等の観点から好ましい。また、加熱温度と加熱時間を組合せて、60~70℃で10分以上加熱した後、80℃で1分以上加熱する方法であってもよい。
【0033】
本発明の液体調味料は、しょうゆ含有液体調味料を容器に充填したもの(容器詰しょうゆ含有液体調味料)であることが好ましい。本発明に使用される容器の容量は5mL~20Lであることが好ましく、次に好ましくは10mL~5L、より好ましくは50mL~2L、更に100mL~1L、特に200mL~800mL、殊更300~600mLであるのが、安定性、使い勝手の観点から好ましい。本発明に使用される容器は、一般の液体調味料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、紙容器、合成樹脂製の袋、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。紙容器としては、紙基材とバリア性層(アルミニウム等の金属箔、エチレン-ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン系重合体など)とヒートシール性樹脂層とを含む積層材を製函したものなどが挙げられる。
【0034】
更に、本発明において使用する容器は、その酸素透過指数が0.8(cm/day・m)以下であることが好ましい。本発明でいう「酸素透過指数」とは、JIS法(K 7126 B法)により求められる「酸素透過度」(単位:cm/day・bottle)を容器の表面積で除して、その材料1m当たりに換算した値をいう。酸素透過度は、具体的にはMOCON社製装置を用いて、試験片(容器)の一方に酸素を供給し、もう一方に等圧で窒素キャリアーガスを流し、透過した酸素を酸素検知器を用いて測定された値(20℃、相対湿度60%)のことである。本発明に用いる容器の酸素透過指数は、好ましくは0~0.6、より好ましくは0~0.4、更に0.01~0.2、特に0.02~0.15、殊更0.05~0.12であるのが、保存性、風味維持の観点から好ましい。
【0035】
本発明に用いる容器は、上記バリア性能を有するよう内層/中間層/外層の材質を適宜選択し、必要に応じて接着剤で接着することにより得ることができる。内層及び外層の材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、これらの延伸物、密度変更物、又はこれら素材と他素材とを組合わせた物を用いるのが、バリア性、外観、作業性、保存性、使用感、及び強度の観点から好ましい。これらのうち、ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、延伸ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポレエチレン、又は延伸ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましく、ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、又は高密度ポリエチレンを用いることが更に好ましく、高密度ポリエチレンを用いることが特に好ましい。
【0036】
また、内層及び外層の材質としては、上記バリア性能を有するように上記記載の単層樹脂容器や多層樹脂容器の内外部に炭素膜や珪素膜をコーティングしたものを用いてもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートに炭素膜や珪素膜をコーティングしたものが挙げられる。更に、上記バリア性能を有するようにPET樹脂に、メタキシレン基含有ポリアミド樹脂等の各種ナイロン樹脂(例えばMXD-6ナイロン樹脂(MxD-6Ny))をドライブレンドして成形した単層プリホームを用いてもよい。
【0037】
本発明に用いる容器の中間層としては、酸素透過バリア性の高いエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いることが、バリア性、保存性及び使用感の観点から好ましい。例えば、エチレン含有量が20~60モル%、好ましくは25~50モル%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは99モル%以上となるようにして得られる共重合体ケン化物が使用される。このエチレン-ビニルアルコール共重合体は、フィルムを十分形成できる分子量を有することが好ましい。
【0038】
また、エチレン-ビニルアルコール共重合体以外の例としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6/6,6共重合体、メタキシリレンアジパミド、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等のポリアミド類が挙げられる。
エチレン-ビニルアルコール共重合体を用いる場合のように、他層との接着性が十分に得られない場合は、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては、カルボン酸、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル基を主鎖又は側鎖にもつ熱可塑性樹脂が挙げられる。具体的には、エチレン-アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、共重合体ポリエステル、共重合体ポリアミド等の1種又は2種以上の組合せが挙げられる。これらの接着剤樹脂は、同時押出し或いはサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。また、予め形成された酸素透過バリア性フィルムと水分透過バリア性フィルムとの接着積層には、イソシアネート系或いはエポキシ系等の熱硬化性接着剤樹脂も使用される。
これらのうち特に、エチレン-ビニルアルコール共重合体を接着する三井化学株式会社製のアドマーや三菱化学株式会社製のモディックを使用することが好ましい。
【0039】
また、本発明に用いる容器に上記バリア性だけでなく透明性も付与するためには、例えば、内層及び外層が透明性の高い配向性熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP)層からなり、中間層に環状オレフィンポリマー(COP)層とエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)層とを含んだ4層構造とするのが好ましい。また、内層及び外層を構成するPPと、中間層を構成するCOP及びEVOHの各層の間には、接着層が介在している。
ここで、環状オレフィンポリマー(COP)は、透明性及び水分バリア性に優れた樹脂であり、このCOPとしては、例えば日本ゼオン株式会社製のゼオノア(シクロ・オレフィン・ポリマー)や三井化学株式会社製のアベル(環状・オレフィン・コポリマー)等を用いることができる。
【0040】
本発明に用いる容器は、上記バリア性及び透明性を有していれば、それ自体公知の方法で製造することができる。例えば、多層押出成形体の製造には、各樹脂層に対応する押出機で溶融混練した後、多層多重ダイスを用いて押出成形を行う方法が挙げられる。また、多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により射出成形を行う方法が挙げられる。
【0041】
本発明において、しょうゆ含有液体調味料とは、しょうゆ、だししょうゆ等の通常、しょうゆを含有する液体状の調味料をいい、しょうゆを1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、殊更好ましくは70質量%以上含有するものをいう。また本発明のしょうゆ含有液体調味料は、しょうゆを100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、特に好ましくは93質量%以下、殊更好ましくは90質量%以下含有することが好ましい。また、「しょうゆ」に調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加した、「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料を含む。すなわち、しょうゆ含有液体調味料とは、しょうゆ、しょうゆ加工品、つゆ、又はたれのことで、本発明においては、好ましくはしょうゆ、又はしょうゆ加工品であり、更にしょうゆ加工品であることが好ましい。
【0042】
本発明において、しょうゆとは、しょうゆ品質表示基準(平成16年9月13日農林水産省告示第1704号)の定義による液体調味料のことである。
本発明において、しょうゆ加工品とは、しょうゆを原料とした液体調味料のうち、「○○しょうゆ」等と品名にしょうゆ(若しくは醤油)が付くもので、主原料であるしょうゆに、補助的に調味料、酸味料、香料、果汁、風味原料、だし等が配合されたものである。例えば、だししょうゆ、昆布しょうゆ、土佐しょうゆ、かつおしょうゆ、ぽん酢しょうゆ、ステーキしょうゆ、かきしょうゆ、しそしょうゆ、にんにくしょうゆ、わさびしょうゆ等が挙げられる。
本発明において、つゆとは、しょうゆに糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等をいう。)から抽出した「だし」を加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたものであって、直接又は希釈して、めん類、惣菜等のつけ汁、かけ汁として用いる液体をいい、めんつゆ、煮物つゆ、鍋物つゆ、天つゆ、汎用つゆ等が挙げられる。めんつゆとしては、そばつゆ、うどんつゆ、そうめんつゆ、冷麦つゆ、中華めんつゆ、冷やし中華つゆ等が例示される。
本発明において、たれとは、「しょうゆ」を原料としたもので、上記「しょうゆ加工品」、「つゆ」以外のものをいい、例えば、蒲焼のたれ、焼き鳥のたれ、焼肉のたれ、しゃぶしゃぶのたれ、すきやきのたれ、照り焼きのたれ、唐揚げのたれ、みたらし団子のたれの他、ノンオイルドレッシング等が挙げられる。
【0043】
本発明の液体調味料は、原料として使用するしょうゆとしては、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、たまりしょうゆ、さいしこみしょうゆ、しろしょうゆ、又はこれらの低塩しょうゆ及び減塩しょうゆ等を挙げることができるが、製品100g中の食塩量が9g以下(ナトリウム量換算で3.54g以下)である減塩しょうゆを用いるのが、食塩摂取量、風味バランスの観点から好ましい。
本発明の液体調味料を、容器から出して食品の製造・加工・調理に使用することで、カリウム由来の異味抑制、中味の発現、良好な風味バランスなどの改善効果を得ることができる。従って、本発明は、食品の風味改善方法、食品の加工・調理方法、及び食品の製造方法としても有用である。
本発明の液体調味料は、各種食品に使用することができる。本発明の液体調味料を用いることで、食塩含量が低いにもかかわらず強い塩味を呈することから、塩分量が少ない食品の設計が可能となる。
【0044】
本発明の液体調味料を使用した食品としては、喫食時に食塩が含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、サラダ、刺身、お浸し、冷奴、湯豆腐、鍋物、煮物、揚げ物、焼き物、蒸し物、酢の物等の調理食品が挙げられる。すなわち、本発明の液体調味料の食品への用途(使用方法)としては、これらの食品に直接液体調味料をかける用途、これらの食品を液体調味料につける用途、液体調味料と食材を用いて調理する用途、及び液体調味料を用いて加工食品を製造する用途などが例示される。
【0045】
食品中における本発明の液体調味料の含有量は、風味バランス、ナトリウムや食塩摂取量の観点から、0.01~50%であることが好ましく、0.05~20%であることがより好ましく、0.1~10%であることがさらに好ましく、0.5~5%であることが特に好ましい。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
減塩しょうゆA(ヤマサ醤油製)、塩化ナトリウム(関東化学製)、塩化カリウム(関東化学製)、L-フェニルアラニン(協和発酵製)、L-プロリン(協和発酵製)、及び水を用いて減塩しょうゆ試験品を調整した。各原料をガラス製バイアル瓶(100ml)に入れて閉栓し、次いで、90℃の温浴で10分間加熱し、溶解することで、減塩しょうゆ試験品を得た。試験品の食塩相当量、ナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、及びL-プロリンの各含有量は、表1に示す各原料のナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、及びL-プロリンの含有量から算出した。原料である減塩しょうゆAの成分は前述の方法により分析した。
なお、本実施例において「食塩相当量」とは、ナトリウムの質量に2.54を乗じることにより(すなわち、ナトリウムがすべてNaClの構成成分であると仮定して)算出した。
【0048】
【表1】
【0049】
(1)本発明品1~5、及び比較品1~8
各原料を下記表2に示す割合で配合し、ナトリウム含有量が2.25質量%(食塩相当量5.72質量%)の減塩しょうゆ試験品(本発明品1~5、及び比較品1~8)を得た。各試験品の風味を、下記評価基準により評価した。評価項目は、塩味、異味、及び中味で、専門パネル5名の合議により各評価項目の点数を決定した。総合評価は、全ての評価項目の点数が4点以上の場合に合格とし、1項目でも3点以下の評価がある場合には不合格とした。
なお、本明細書において、「異味」とは、カリウム由来の苦味や渋味を意味する。さらに、「中味」とは、しょうゆ本来の好ましい醸造風味、ないし味の厚みを意味し、「中味」がないと水っぽく感じてしまうものである。以下の評価についても同様である。
【0050】
<塩味>
10 比較品4と同等、もしくはそれ以上の強い塩味を感じる。
9 比較品3と比較品4の間の塩味で、比較品4に近い塩味を感じる。
8 比較品3と比較品4の間の塩味で、比較品3に近い塩味を感じる。
7 比較品3と同等のやや強い塩味を感じる。
6 比較品2と比較品3の間の塩味で、比較品3に近い塩味を感じる。
5 比較品2と比較品3の間の塩味で、比較品2に近い塩味を感じる。
4 比較品2と同等のしっかりとした塩味を感じる。
3 比較品1と比較品2の間の塩味で、比較品2に近い塩味を感じる。
2 比較品1と比較品2の間の塩味で、比較品1に近い塩味を感じる。
1 比較品1と同等の、弱い塩味である。
評価1から10に向けて順に塩味が強いことを意味する。
【0051】
<異味>
10 比較品1と同様に全く異味を感じない。
9 比較品1と比較品2の間の異味で、比較品1に近く異味をほとんど感じない。
8 比較品1と比較品2の間の異味で、比較品1に近いが異味をわずかに感じる。
7 比較品1と比較品2の間の異味で、やや異味を感じる。
6 比較品1と比較品2の間の異味で、比較品2にやや近い異味を感じる。
5 比較品1と比較品2の間の異味で、比較品2に近い異味を感じる。
4 比較品2と同等で、異味を感じるが、あまり気にならない。
3 比較品2と比較品3の中間程度の異味を感じる。
2 比較品3と同等の、やや強い異味を感じる。
1 比較品4と同等の、強い異味を感じる。
評価10から1に向けて順に異味が強いことを意味する。
【0052】
<中味>
7 比較品4と同等、もしくはそれ以上の厚みのある中味を感じる。
6 比較品3と比較品4の間の中味で、比較品4に近い中味を感じる。
5 比較品3と比較品4の間の中味で、比較品3に近い中味を感じる。
4 比較品3と同等の中味を感じる。
3 比較品2と比較品3の中間程度の中味を感じる。
2 比較品2と同等で、中味がやや弱い。
1 比較品1と同等で、中味が弱い。
評価1から7に向けて順に中味が強いことを意味する。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、水で希釈した減塩しょうゆAに何も添加しない試験品では、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味と中味をあまり感じられない結果となった(比較品1)。また、水で希釈した減塩しょうゆAに塩化カリウムのみを添加した試験品では、カリウム量にしたがって塩味及び中味が増強されたが、カリウム由来の異味を強く感じる結果となった(比較品2~4)。
また、水で希釈した減塩しょうゆAに、L-フェニルアラニンのみを本発明の規定の範囲内となるように添加した場合、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味と中味で劣る結果となった(比較品5)。
さらに、水で希釈した減塩しょうゆAに、カリウムを本発明の規定の範囲内となるように塩化カリウムを添加した場合であっても、L-フェニルアラニンの含有量が本発明の規定の範囲を下回るように添加されている場合は、カリウム由来の異味を感じ(比較品6)、L-フェニルアラニンの含有量が本発明の規定の範囲を上回るように添加されている場合は、塩味に劣る結果となった(比較品7及び8)。
これに対し、ナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、L-プロリンを本発明で規定する範囲に調整した本発明品1~5では、ナトリウムの含有量を2.25質量%に抑えた減塩しょうゆであってもしっかりとした塩味が感じられ、塩化カリウム由来の異味をあまり感じず、中味が十分に感じられる結果となった。
【0055】
(2)本発明品6~16、及び比較品9~15
各原料を下記表3に示す割合で配合し、ナトリウム含有量が2.64質量%(食塩相当量6.71質量%)の減塩しょうゆ試験品(本発明品6~16、及び比較品9~15)を得た。各試験品の風味を、下記評価基準により評価した。評価項目は、塩味、異味、及び中味で、専門パネル5名の合議により各評価項目の点数を決定した。総合評価は、全ての評価項目の点数が4点以上の場合に合格とし、1項目でも3点以下の評価がある場合には不合格とした。
【0056】
<塩味>
10 比較品12と同等、もしくはそれ以上の強い塩味を感じる。
9 比較品11と比較品12の間の塩味で、比較品12に近い塩味を感じる。
8 比較品11と比較品12の間の塩味で、比較品11に近い塩味を感じる。
7 比較品11と同等のやや強い塩味を感じる。
6 比較品10と比較品11の間の塩味で、比較品11に近い塩味を感じる。
5 比較品10と比較品11の間の塩味で、比較品10に近い塩味を感じる。
4 比較品10と同等のしっかりとした塩味を感じる。
3 比較品9と比較品10の間の塩味で、比較品10に近い塩味を感じる。
2 比較品9と比較品10の間の塩味で、比較品9に近い塩味を感じる。
1 比較品9と同等の、弱い塩味である。
評価1から10に向けて順に塩味が強いことを意味する。
【0057】
<異味>
10 比較品9と同様に全く異味を感じない。
9 比較品9と比較品10の間の異味で、比較品9に近く異味をほとんど感じない。
8 比較品9と比較品10の間の異味で、比較品9に近いが異味をわずかに感じる。
7 比較品9と比較品10の間の異味で、やや異味を感じる。
6 比較品9と比較品10の間の異味で、比較品10にやや近い異味を感じる。
5 比較品9と比較品10の間の異味で、比較品10に近い異味を感じる。
4 比較品10と同等で、異味を感じるが、あまり気にならない。
3 比較品10と比較品11の中間程度の異味を感じる。
2 比較品11と同等の、やや強い異味を感じる。
1 比較品12と同等の、強い異味を感じる。
評価10から1に向けて順に異味が強いことを意味する。
【0058】
<中味>
7 比較品12と同等、もしくはそれ以上の厚みのある中味を感じる。
6 比較品11と比較品12の間の中味で、比較品12に近い中味を感じる。
5 比較品11と比較品12の間の中味で、比較品11に近い中味を感じる。
4 比較品11と同等の中味を感じる。
3 比較品10と比較品11の中間程度の中味を感じる。
2 比較品10と同等で、中味がやや弱い。
1 比較品9と同等で、中味が弱い。
評価1から7に向けて順に中味が強いことを意味する。
【0059】
【表3-1】
【0060】
【表3-2】
【0061】
表3-1、3-2に示すように、水で希釈した減塩しょうゆAに塩化ナトリウムのみを、ナトリウムの含有量が2.64質量%となるように添加した試験品では、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味と中味をあまり感じられない結果となった(比較品9)。また、水で希釈した減塩しょうゆAに、塩化ナトリウムに加え塩化カリウムを添加した試験品では、添加する塩化カリウム量にしたがって塩味及び中味が増強されたが、それに伴いカリウム由来の異味を感じやすい結果となった(比較品10~12)。
また、水で希釈した減塩しょうゆAに、塩化ナトリウム及びL-フェニルアラニンを本発明の規定の範囲内となるように添加した場合であっても、カリウムの含有量が本発明の規定の範囲を下回る場合、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味が劣る結果となった(比較品13)。
さらに、水で希釈した減塩しょうゆAに、カリウム及びL-フェニルアラニンを本発明の規定の範囲内となるように添加した場合であっても、L-プロリンの含有量が本発明の規定の範囲を下回る場合は塩味に劣り、またL-プロリンの含有量が本発明の規定の範囲を上回る場合は、カリウム由来の異味をやや強く感じる結果となった(比較品14及び15)。
これに対し、ナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、L-プロリンを本発明で規定する範囲に調整した本発明品6~16では、ナトリウムの含有量が2.64質量%である減塩しょうゆであってもしっかりとした塩味が感じられ、塩化カリウム由来の異味をあまり感じず、中味が感じられる結果となった。
【0062】
(3)本発明品17~21、及び比較品16~22
各原料を下記表4に示す割合で配合し、ナトリウム含有量が2.98質量%(食塩相当量7.57質量%)の減塩しょうゆ試験品(本発明品17~21、及び比較品16~22)を得た。各試験品の風味を、下記評価基準により評価した。評価項目は、塩味、異味、及び中味で、専門パネル5名の合議により各評価項目の点数を決定した。総合評価は、全ての評価項目の点数が4点以上の場合に合格とし、1項目でも3点以下の評価がある場合には不合格とした。
【0063】
<塩味>
10 比較品19と同等、もしくはそれ以上の強い塩味を感じる。
9 比較品18と比較品19の間の塩味で、比較品19に近い塩味を感じる。
8 比較品18と比較品19の間の塩味で、比較品18に近い塩味を感じる。
7 比較品18と同等のやや強い塩味を感じる。
6 比較品17と比較品18の間の塩味で、比較品18に近い塩味を感じる。
5 比較品17と比較品18の間の塩味で、比較品17に近い塩味を感じる。
4 比較品17と同等のしっかりとした塩味を感じる。
3 比較品16と比較品17の間の塩味で、比較品17に近い塩味を感じる。
2 比較品16と比較品17の間の塩味で、比較品16に近い塩味を感じる。
1 比較品16と同等の、弱い塩味である。
評価1から10に向けて順に塩味が強いことを意味する。
【0064】
<異味>
10 比較品16と同様に全く異味を感じない。
9 比較品16と比較品17の間の異味で、比較品16に近く異味をほとんど感じない。
8 比較品16と比較品17の間の異味で、比較品16に近いが異味をわずかに感じる。
7 比較品16と比較品17の間の異味で、やや異味を感じる。
6 比較品16と比較品17の間の異味で、比較品17にやや近い異味を感じる。
5 比較品16と比較品17の間の異味で、比較品17に近い異味を感じる。
4 比較品17と同等で、異味を感じるが、あまり気にならない。
3 比較品17と比較品18の中間程度の異味を感じる。
2 比較品18と同等の、やや強い異味を感じる。
1 比較品19と同等の、強い異味を感じる。
評価10から1に向けて順に異味が強いことを意味する。
【0065】
<中味>
7 比較品19と同等、もしくはそれ以上の厚みのある中味を感じる。
6 比較品18と比較品19の間の中味で、比較品19に近い中味を感じる。
5 比較品18と比較品19の間の中味で、比較品18に近い中味を感じる。
4 比較品18と同等の中味を感じる。
3 比較品17と比較品18の中間程度の中味を感じる。
2 比較品17と同等で、中味がやや弱い。
1 比較品16と同等で、中味が弱い。
評価1から7に向けて順に中味が強いことを意味する。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示すように、水で希釈した減塩しょうゆAに塩化ナトリウムのみを、ナトリウムの含有量が2.98質量%となるように添加した試験品では、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味と中味をあまり感じられない結果となった(比較品16)。また、水で希釈した減塩しょうゆAに、塩化ナトリウムに加え塩化カリウムを添加した試験品では、添加する塩化カリウム量にしたがって塩味及び中味が増強されたが、それに伴いカリウム由来の異味を感じやすい結果となった(比較品17~19)。また、比較品17にL-プロリンを本発明の規定の範囲で添加した比較品22では、L-プロリンの添加に伴い塩味と中味の評価が向上したが、カリウム由来の異味をやや強く感じる結果となった。
これに対し、ナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、L-プロリンを本発明で規定する範囲で調整した本発明品17~19では、ナトリウムの含有量が2.98質量%である減塩しょうゆであってもしっかりとした塩味が感じられ、塩化カリウム由来の異味をあまり感じず、中味が感じられる結果となった。
また、本発明品17に、さらにL-プロリンを本発明の規定の範囲内で含有させ、Phe/Proの値のみを本発明の範囲外とした比較品20では、カリウム由来の異味をやや強く感じる結果となった。さらに、比較品20に対し、L-フェニルアラニンを本発明の範囲内で、さらにPhe/Proの値も本発明の範囲内となるように添加した本発明品20では、比較品20と比べてカリウム由来の異味の発現が抑制される結果となった。
さらに、本発明品17に、L-フェニルアラニンを、本発明の規定の範囲内でさらに添加した本発明品21は、しっかりとした塩味を感じるものであったが、本発明の規定を超える量のL-フェニルアラニンを添加した比較品21では、比較品16に近い弱い塩味を呈する結果となった。
【0068】
(4)本発明品22~24、及び比較品23~26
各原料を下記表5に示す割合で配合し、ナトリウム含有量が3.37質量%(食塩相当量8.56質量%)の減塩しょうゆ試験品(本発明品22~24、及び比較品23~26)を得た。各試験品の風味を、下記評価基準により評価した。評価項目は、塩味、異味、及び中味で、専門パネル5名の合議により各評価項目の点数を決定した。総合評価は、全ての評価項目の点数が4点以上の場合に合格とし、1項目でも3点以下の評価がある場合には不合格とした。
【0069】
<塩味>
10 比較品26と同等、もしくはそれ以上の強い塩味を感じる。
9 比較品25と比較品26の間の塩味で、比較品26に近い塩味を感じる。
8 比較品25と比較品26の間の塩味で、比較品25に近い塩味を感じる。
7 比較品25と同等のやや強い塩味を感じる。
6 比較品24と比較品25の間の塩味で、比較品25に近い塩味を感じる。
5 比較品24と比較品25の間の塩味で、比較品24に近い塩味を感じる。
4 比較品24と同等のしっかりとした塩味を感じる。
3 比較品23と比較品24の間の塩味で、比較品24に近い塩味を感じる。
2 比較品23と比較品24の間の塩味で、比較品23に近い塩味を感じる。
1 比較品23と同等の、弱い塩味である。
評価1から10に向けて順に塩味が強いことを意味する。
【0070】
<異味>
10 比較品23と同様に全く異味を感じない。
9 比較品23と比較品24の間の異味で、比較品23に近く異味をほとんど感じない。
8 比較品23と比較品24の間の異味で、比較品23に近いが異味をわずかに感じる。
7 比較品23と比較品24の間の異味で、やや異味を感じる。
6 比較品23と比較品24の間の異味で、比較品24にやや近い異味を感じる。
5 比較品23と比較品24の間の異味で、比較品24に近い異味を感じる。
4 比較品24と同等で、異味を感じるが、あまり気にならない。
3 比較品24と比較品25の中間程度の異味を感じる。
2 比較品25と同等の、やや強い異味を感じる。
1 比較品26と同等の、強い異味を感じる。
評価10から1に向けて順に異味が強いことを意味する。
【0071】
<中味>
7 比較品26と同等、もしくはそれ以上の厚みのある中味を感じる。
6 比較品25と比較品26の間の中味で、比較品26に近い中味を感じる。
5 比較品25と比較品26の間の中味で、比較品25に近い中味を感じる。
4 比較品25と同等の中味を感じる。
3 比較品25と比較品24の中間程度の中味を感じる。
2 比較品24と同等で、中味がやや弱い。
1 比較品23と同等で、中味が弱い。
評価1から7に向けて順に中味が強いことを意味する。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示すように、水で希釈した減塩しょうゆAに塩化ナトリウムのみを、ナトリウムの含有量が3.37質量%となるように添加した試験品では、カリウム由来の異味は感じないものの、塩味と中味をあまり感じられない結果となった(比較品23)。また、水で希釈した減塩しょうゆAに、塩化ナトリウムに加え塩化カリウムを添加した試験品では、添加する塩化カリウム量にしたがって塩味及び中味が増強されたが、カリウム由来の異味を強く感じる結果となった(比較品24~26)。
これに対し、ナトリウム、カリウム、L-フェニルアラニン、L-プロリンを本発明で規定する範囲で調整した本発明品22~24では、ナトリウムの含有量が3.37質量%である減塩しょうゆであってもしっかりとした塩味が感じられ、塩化カリウム由来の異味をあまり感じず、中味が感じられる結果となった。
【0074】
(5)参考例
上記(1)~(4)について、L-フェニルアラニン、及びL-プロリンに代えて、他のアミノ酸を用い、同様の試験行った。その結果、L-フェニルアラニン、及びL-プロリンに代えて他のアミノ酸を使用した場合では、上記のような所望な効果を得ることができなかった。
【0075】
以上のように、ナトリウムを所定量含有し、かつカリウムの所定量の配合により塩味を増強したしょうゆ含有液体調味料において、フェニルアラニン及びプロリンを本発明に規定する範囲内の濃度で含有する場合、ナトリウムの含有量が抑えられた減塩しょうゆであっても、塩味及び中味を感じ、さらにカリウム由来の異味を感じないことが示された。