(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】液状着色剤供給装置及び着色成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/18 20060101AFI20230911BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B29C45/18
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2019237422
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】細越山 広
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 雅充
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-068668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/00 - 31/10
B29C 45/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段内の原料樹脂に液状着色剤を供給する液状着色剤供給装置であって、
前記搬送手段内の原料樹脂に向けて液状着色剤を吐出するノズルに、複数の吐出口が形成されて
おり、
前記ノズルは、液状着色剤が供給される着色剤用配管に接続される基端部と、該基端部から分岐する複数の分岐筒部とを有し、
前記複数の分岐筒部にそれぞれ前記吐出口が形成されていることを特徴とする、液状着色剤供給装置。
【請求項2】
それぞれの前記分岐筒部に、複数の前記吐出口が形成されている、請求項
1に記載の液状着色剤供給装置。
【請求項3】
それぞれの前記分岐筒部は、該分岐筒部の先端を閉塞する閉塞壁を有し、該分岐筒部の側面に前記吐出口が形成されている、請求項
1又は
2に記載の液状着色剤供給装置。
【請求項4】
着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段内の原料樹脂に、液状着色剤供給装置のノズルから液状着色剤を供給する際に、
前記ノズルに形成された複数の吐出口から液状着色剤を吐出
し、
前記ノズルは、液状着色剤が供給される着色剤用配管に接続される基端部と、該基端部から分岐する複数の分岐筒部とを有し、
前記複数の分岐筒部にそれぞれ前記吐出口が形成されていることを特徴とする、着色成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状着色剤供給装置及び着色成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の着色成形品を製造する場合には、原料となる樹脂材料に液状着色剤を混合して着色してから成形用の金型に搬送し、当該金型を用いて成形する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような着色成形品の製造方法に用いる装置としては、例えば
図3に示すように、熱可塑性を有する成形用原料樹脂を貯留し、供給する原料樹脂供給手段111と、この原料樹脂供給手段111の下方に接続された原料樹脂を移送する筒状部材112と、この筒状部材112内に配置されたノズル121の先端の吐出口122から液状着色剤を供給する液状着色剤供給装置120と、筒状部材112を経て送られてくる原料樹脂と着色剤とを混合しつつ金型に向けて搬送する搬送手段113とを備えたものが知られている。このような装置を用いて原料樹脂に着色剤を混合するとともに金型で成形することにより、所望の色彩に着色された着色成形品を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、搬送手段内で原料樹脂に混合される液状着色剤の濃度に局所的な偏り(濃度ムラ)が生じると、成形過程での樹脂の密着強度が不均一になり、着色成形品に層間剥離が生じる虞がある。
【0006】
それゆえ、本発明は、原料樹脂に液状着色剤を混合して成形される着色成形品の層間剥離を抑制可能な液状着色剤供給装置及び着色成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の液状着色剤供給装置は、着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段内の原料樹脂に液状着色剤を供給する液状着色剤供給装置であって、
前記搬送手段内の原料樹脂に向けて液状着色剤を吐出するノズルに、複数の吐出口が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の液状着色剤供給装置にあっては、前記ノズルは、液状着色剤が供給される着色剤用配管に接続される基端部と、該基端部から分岐する複数の分岐筒部とを有し、
前記複数の分岐筒部にそれぞれ前記吐出口が形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の液状着色剤供給装置にあっては、それぞれの前記分岐筒部に、複数の前記吐出口が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の液状着色剤供給装置にあっては、それぞれの前記分岐筒部は、該分岐筒部の先端を閉塞する閉塞壁を有し、該分岐筒部の側面に前記吐出口が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の着色成形品の製造方法は、着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段内の原料樹脂に、液状着色剤供給装置のノズルから液状着色剤を供給する際に、
前記ノズルに形成された複数の吐出口から液状着色剤を吐出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原料樹脂に液状着色剤を混合して成形される着色成形品の層間剥離を抑制可能な液状着色剤供給装置及び着色成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である液状着色剤供給装置を含む着色成形品の製造装置の一部を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である液状着色剤供給装置を示す斜視図である。
【
図3】参考例としての着色成形品の製造装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態をより具体的に例示説明する。
【0015】
図1に示す着色成形品の製造装置10は、原料樹脂供給手段としてのホッパー11と、筒状部材12を介してホッパー11と連通する搬送手段13と、筒状部材12の内部に配置されたノズル21の吐出口22から搬送手段13の内部に液状着色剤(リキッドマスターバッチ)を供給する液状着色剤供給装置20とを備える。液状着色剤は、液状で例えば赤、青、黄等の各種の色彩を有する。
【0016】
ホッパー11は、熱可塑性を有する成形用の原料樹脂(ペレット、粉末)を貯留し、下端に設けた放出口11aから原料樹脂を放出可能に構成されている。ホッパー11からの原料樹脂は、筒状部材12を通して搬送手段13の内部に供給される。
【0017】
筒状部材12は、ホッパー11の放出口11aと、搬送手段13の上部開口14aとを接続する筒状の部材である。筒状部材12は、ホッパー11または搬送手段13のシリンダ14と一体に形成されていてもよい。筒状部材12の側面には、ノズル21を挿入するためのノズル差込口12bを有するノズル保持部12aが設けられている。ホッパー11及び筒状部材12は、例えば、中心軸線が鉛直方向に延在するように配置される。
【0018】
搬送手段13は、例えば
図1に示すように筒状部材12の下端部に接続される筒状のシリンダ14と、このシリンダ14内に配置されたスクリュー15とを備える。シリンダ14は、軸線が水平方向に延在するように配置され、スクリュー15は、シリンダ14と同軸配置されている。シリンダ14の側壁には、筒状部材12の内部に連通する上向きの上部開口14aが形成されている。
【0019】
搬送手段13の一方の端部にはスクリュー15を回転させるための駆動部(図示省略)が設けられており、他方の端部には液状着色剤を混合した原料樹脂を用いて着色成形品を成形するための金型(図示省略)等が設けられている。また、搬送手段13は、金型に向けて搬送される原料樹脂を加熱可能な加熱手段(ヒータ)を備えることができる。なお、液状着色剤を混合した原料樹脂を用いて着色成形品を成形する方法としては、例えば射出成形、またはブロー成形等とすることができるが、これに限定されず、種々の成形方法を採用可能である。
【0020】
液状着色剤供給装置20は、例えば液状着色剤を収容する袋状またはボトル状等の着色剤収容容器24と、着色剤収容容器24とノズル21の間に接続され、液状着色剤をノズル21に送出可能なチューブ23(着色剤用配管)と、を備える。ノズル21は、筒状部材12のノズル保持部12aに対して着脱可能である。
【0021】
液状着色剤供給装置20は、着色剤収容容器24に収容された液状着色剤を、チューブ23を通してノズル21に送出するためのポンプ25を備える。ポンプ25の形態は特に限定されず、着色剤収容容器24に収容された液状着色剤を、チューブ23を通してノズル21に送出可能であればよい。また液状着色剤供給装置20は、ポンプ25の駆動を制御して液状着色剤の供給量を調整する制御手段(図示省略)を備えることができる。
図1に示すノズル21は先端が閉塞された円筒形状であり、側面に下向きの吐出口22が3つ形成されている。
【0022】
なお、ノズル21は、複数の吐出口22を有していればよく、その形状は適宜変更可能である。例えば
図2に示すノズル21は、チューブ23に直接または間接的に接続される1つの基端部21aと、当該基端部21aから分岐する2本の円筒状の分岐筒部21b、21bとを有し、それぞれの分岐筒部21b、21bには複数の吐出口22が形成されている。本例では、それぞれの分岐筒部21b、21bに3つの吐出口22が形成されており、ノズル21は、合計6つの吐出口22を有する。6つの吐出口22は、全て同一直径の円形の貫通孔である。なお、ノズル21を構成する基端部21a及び分岐筒部21b、21bの内部には、液状着色剤の流路となる空間が形成されている。すなわち、チューブ23を通して着色剤収容容器24からノズル21に送出される液状着色剤は、当該流路を通って各吐出口22から吐出される。
【0023】
図2に示す各分岐筒部21bは、分岐筒部21bの先端(基端部21aとは逆側の端)を閉塞する閉塞壁21cを有する。また、吐出口22は、分岐筒部21bの側面に形成されている。また、本例の2本の分岐筒部21b、21bは、互いに直径及び軸方向長さが同一の円筒形状であり、且つ、相互に平行に配置されている。なお、分岐筒部21bは閉塞壁21cを有しなくてもよいし、2本の分岐筒部21b、21bの形状が異なっていてもよく、また、平行でなくてもよい。
【0024】
また、
図2に示すそれぞれの分岐筒部21bにおいて、3つの吐出口22は、分岐筒部21bの軸方向に沿って相互に間隔をあけて一直線上に配列されている。また、2本の分岐筒部21b、21bに形成された吐出口22は、同一の向き(下向き)に開口している。各分岐筒部21b、21bに形成する吐出口22の数、位置等は適宜変更可能である。また、本例では、2本の分岐筒部21b、21bにそれぞれ形成された各3つの吐出口22の軸方向位置は、2本の分岐筒部21b、21bで互いに一致しているが、当該軸方向位置がずれていてもよい。
【0025】
以上の通り、本実施形態の液状着色剤供給装置20は、着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段13内の原料樹脂に液状着色剤を供給する液状着色剤供給装置20であって、搬送手段13内の原料樹脂に向けて液状着色剤を吐出するノズル21に、複数の吐出口22が形成されている。このように液状着色剤がノズル21の複数の吐出口22から吐出される構成とすることにより、液状着色剤が1か所の吐出口22のみから吐出される場合に比べて、シリンダ14内の原料樹脂に液状着色剤が分散して広範囲に供給されることとなる。このようにして、シリンダ14内の原料樹脂に混合される液状着色剤の濃度に局所的な偏り(濃度ムラ)が生じることを抑制することができる。その結果、成形後の着色成形品に層間剥離が生じることを抑制することができる。
【0026】
なお、本実施形態の液状着色剤供給装置20にあっては、ノズル21が、液状着色剤が供給されるチューブ23に接続される基端部21aと、当該基端部21aから分岐する複数の分岐筒部21bとを有し、複数の分岐筒部21bにそれぞれ吐出口22が形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、例えば1本の円筒状のノズルに複数の吐出口を設けるよりも、搬送手段13内の原料樹脂に対して、より広範囲に液状着色剤を吐出し易くなる。そのため、着色成形品に層間剥離が生じることをより確実に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態の液状着色剤供給装置20にあっては、それぞれの分岐筒部21bに、複数の吐出口22が形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、各分岐筒部21bに吐出口22が1つのみ形成される場合に比べて、より広範囲に液状着色剤を吐出し易くなる。そのため、着色成形品に層間剥離が生じることをさらに確実に抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の液状着色剤供給装置20にあっては、それぞれの分岐筒部21bが、分岐筒部21bの先端を閉塞する閉塞壁21cを有し、分岐筒部21bの側面に吐出口22が形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、分岐筒部21bの側面の吐出口22からバランスよく液状着色剤を吐出することができるので、より液状着色剤を分散して吐出し易くなる。
【0029】
なお、本実施形態の液状着色剤供給装置20にあっては、ノズル21に設けた複数の吐出口22から液状着色剤を広範囲に吐出し易くする観点から、隣接する2つの吐出口22の間隔が、15mm以上、ホッパー11の内径以下であることが好ましく、また、それぞれの吐出口22の面積は、1.19mm2以上、3.14mm2以下であることが好ましい。また、同様の観点から、本実施形態の液状着色剤供給装置20に使用する液状着色剤の濃度は、0.1wt%以上、0.2wt%以下であることが好ましく、液状着色剤の供給速度は、0.039g/sec以上、0.078g/sec以下であることが好ましい。
【0030】
以下に、本発明の着色成形品の製造方法の一例について説明する。なお、当該着色成形品の製造方法は、上述の着色成形品の製造装置10を用いて行うことができる。
【0031】
着色成形品の製造方法は、着色成形品を成形する金型に向けて原料樹脂を搬送する搬送手段13内の原料樹脂に、液状着色剤供給装置20のノズル21から液状着色剤を供給する際に、ノズル21に形成された複数の吐出口22から液状着色剤を吐出することを特徴とする。
【0032】
より具体的には、ホッパー11に貯留された熱可塑性を有する成形用の原料樹脂を放出口11aから放出し、筒状部材12を通して搬送手段13のシリンダ14の内部に供給する。また、ポンプ25の駆動により、着色剤収容容器24からチューブ23を通して供給された液状着色剤を、ノズル21に形成された複数の吐出口22から同時に吐出する。これにより、シリンダ14の内部の原料樹脂の上方から液状着色剤が供給(散布)される。液状着色剤がノズル21の複数の吐出口22から吐出されることにより、液状着色剤は、1か所の吐出口22のみから吐出される場合に比べてシリンダ14内の原料樹脂に分散して広範囲に供給されることとなる。このようにして、シリンダ14内の原料樹脂に混合される液状着色剤の濃度に局所的な偏り(濃度ムラ)が生じることを抑制することができる。その結果、成形後の着色成形品に層間剥離が生じることを抑制することができる。
【0033】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々
変更可能であることはいうまでもない。例えば、
図2のノズル21は2方向に分岐する構成であり、T字状の基端部21aと2本の分岐筒部21b、21bとを有しているが、その形状は適宜変更可能であり、例えば基端部21aがY字状に2方向に分岐していてもよいし、あるいは3方向以上に分岐する構成であってもよい。なお、ノズル21は、分岐していなくてもよい。また、上記の例では吐出口22が全て同一の直径を有する円形の貫通孔であるが、これに限られず、例えば各吐出口22は楕円形や多角形であってもよいし、複数の異なる形状の吐出口22を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10:着色成形品の製造装置
11:ホッパー(原料樹脂供給手段)
11a:放出口
12:筒状部材
12a:ノズル保持部
12b:ノズル差込口
13:搬送手段
14:シリンダ
14a:上部開口
15:スクリュー
20:着色剤供給装置
21:ノズル
21a:基端部
21b:分岐筒部
21c:閉塞壁
22:吐出口
23:チューブ(着色剤用配管)
24:着色剤収容容器
25:ポンプ