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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】レーザーブランキング装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20230911BHJP
   B65H 20/10 20060101ALI20230911BHJP
   B65H 20/08 20060101ALI20230911BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20230911BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B65H20/10 B
B65H20/10 Z
B65H20/08
B23K26/08 D
B23K26/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022049415
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朗
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章一郎
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147240(JP,A)
【文献】特開2010-142842(JP,A)
【文献】特開2007-160375(JP,A)
【文献】特開2007-105775(JP,A)
【文献】特開2003-164989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードロールから搬入されるコイル材をレーザー加工により切断してブランク材とするためのレーザーブランキング装置において、
前記コイル材の長手方向をY軸方向、前記コイル材の幅方向をX軸方向とした場合に、
少なくとも、上流側前ロール及び上流側後ロールに架設され、前記コイル材を搬送するための上流側ベルト部と、
少なくとも、下流側前ロール及び下流側後ロールに架設され、前記ブランク材を搬送するための下流側ベルト部と、
前記上流側後ロール及び前記下流側前ロールの間の空隙部の上方に配置され、前記コイル材にレーザー加工を施すためのレーザーヘッドと、
前記上流側ベルト部の上方に配置され、前記フィードロールから外れた前記コイル材の末端片を搬送するための補助コンベアと、
を備え、
前記上流側後ロール及び前記下流側前ロールが、前記レーザーヘッドの前記Y軸方向への移動に追従して、前記Y軸方向に移動するものであり、
前記補助コンベアが、一対のロールと、該ロールに架設された無端ベルトと、前記ロールの間であり且つ前記無端ベルトの内側に、前後方向に沿って並設された複数の吸着部とを有し、
前記吸着部が、磁力に基づいて前記末端片を吸着するための磁石部と、吸引力に基づいて前記末端片を吸着するための吸引部とを有し、
前記補助コンベアが、前記上流側ベルト部上の前記末端片の上面を吸着保持しながら該末端片を後方向に搬送可能なレーザーブランキング装置。
【請求項2】
前記末端片の搬送時には、該末端片と前記上流側ベルト部との間に隙間が形成されている請求項1記載のレーザーブランキング装置。
【請求項3】
前記末端片の搬送時において、前記上流側ベルト部が、前記無端ベルトに同期して、該無端ベルトと同じ速度で走行するものである請求項1又は2に記載のレーザーブランキング装置。
【請求項4】
前記磁石部が、電磁マグネットである請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザーブランキング装置。
【請求項5】
前記補助コンベアが、支持フレームに昇降装置を介して吊設され、該昇降装置により昇降移動可能となっており、
前記末端片ではない前記コイル材の搬送時には、前記補助コンベアが上昇して退避位置に位置しており、前記末端片の搬送時には、前記補助コンベアが下降して該末端片を吸着可能な吸着位置に位置している請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザーブランキング装置。
【請求項6】
前記補助コンベアが幅方向に複数並設されており、
該補助コンベアをそれぞれ独立に幅方向に移動させるための幅位置調整機構を更に備える請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザーブランキング装置
【請求項7】
前記レーザーヘッドを前記X軸方向に案内するためのX軸レールと、
該X軸レールを前記Y軸方向に案内するための一対のY軸レールと、
を更に備え、
前記上流側後ロール及び前記下流側前ロールが、前記レーザーヘッドの前記X軸方向への移動には追従しない請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザーブランキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル材をレーザー加工により切断してブランク材とするためのレーザーブランキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィードロールから搬入されるコイル材を搬送しながら、レーザーノズル(レーザーヘッド)から照射されるレーザー光で当該コイル材を切断し、ブランク材とするレーザーブランキング装置が知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。
これらのレーザーブランキング装置においては、上流側のベルト部を案内するロールのうち、後ろ側に位置するロール(上流側後ロール)、及び、下流側のベルト部を案内するロールのうち、前側に位置するロール(下流側前ロール)が、レーザー加工を施す際のレーザーノズルの前後方向へのスライドに追従して前後方向にスライドするようになっている。
【0003】
ところで、コイル材は、一般に、フィーダ(送り装置)のフィードロールに挟持され、当該フィードロールが回転駆動することにより、レーザーブランキング装置に順次送り出される。そのため、レーザーブランキング装置に送り出されるコイル材は、振動が少なく、位置精度にも優れるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/037162号パンフレット
【文献】国際公開第2020/121946号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コイル材は、最終的にはフィードロールから外れることになる。そうすると、従来のレーザーブランキング装置においては、上流側のベルト部によりコイル材の末端片を搬送することが可能であるものの、振動が大きく、搬送の精度も低くなるという欠点がある。そのため、従来のレーザーブランキング装置においては、フィードロールから外れた末端片、すなわち、フィードロールからレーザーヘッドの位置までの長さの末端片は、使用できず、廃棄処分としている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、末端片の振動を抑えつつ精度良く搬送することができ、且つ、末端片にもレーザー加工を施すことが可能なレーザーブランキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上流側ベルト部の上方に、末端片を搬送するための補助コンベアを配置することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、フィードロールから搬入されるコイル材をレーザー加工により切断してブランク材とするためのレーザーブランキング装置において、コイル材の長手方向をY軸方向、コイル材の幅方向をX軸方向とした場合に、少なくとも、上流側前ロール及び上流側後ロールに架設され、コイル材を搬送するための上流側ベルト部と、少なくとも、下流側前ロール及び下流側後ロールに架設され、ブランク材を搬送するための下流側ベルト部と、上流側後ロール及び下流側前ロールの間の空隙部の上方に配置され、コイル材にレーザー加工を施すためのレーザーヘッドと、上流側ベルト部の上方に配置され、フィードロールから外れたコイル材の末端片を搬送するための補助コンベアと、を備え、上流側後ロール及び下流側前ロールが、レーザーヘッドのY軸方向への移動に追従して、Y軸方向に移動するものであり、補助コンベアが、一対のロールと、該ロールに架設された無端ベルトと、ロールの間であり且つ無端ベルトの内側に、前後方向に沿って並設された複数の吸着部とを有し、吸着部が、磁力に基づいて末端片を吸着するための磁石部と、吸引力に基づいて末端片を吸着するための吸引部とを有し、補助コンベアが、上流側ベルト部上の末端片の上面を吸着保持しながら該末端片を後方向に搬送可能なレーザーブランキング装置である。
【0009】
本発明においては、末端片の搬送時には、該末端片と上流側ベルト部との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、末端片の搬送時において、上流側ベルト部が、無端ベルトに同期して、該無端ベルトと同じ速度で走行するものであることが好ましい。
【0011】
本発明においては、磁石部が、電磁マグネットであることが好ましい。
【0012】
本発明においては、補助コンベアが、支持フレームに昇降装置を介して吊設され、該昇降装置により昇降移動可能となっており、末端片ではないコイル材の搬送時には、補助コンベアが上昇して退避位置に位置しており、末端片の搬送時には、補助コンベアが下降して該末端片を吸着可能な吸着位置に位置していることが好ましい。
【0013】
本発明は、補助コンベアが幅方向に複数並設されており、該補助コンベアをそれぞれ独立に幅方向に移動させるための幅位置調整機構を更に備えることが好ましい。
【0014】
本発明は、レーザーヘッドをX軸方向に案内するためのX軸レールと、X軸レールをY軸方向に案内するための一対のY軸レールと、を更に備え、上流側後ロール及び下流側前ロールが、レーザーヘッドのX軸方向への移動には追従しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレーザーブランキング装置においては、レーザーヘッドでレーザー加工を施すことにより、コイル材を所望の形状のブランク材とすることができる。なお、レーザーブランキング装置がX軸レール及びY軸レールを備えることにより、レーザーヘッドをXY平面において所望の位置に容易に移動させることが可能となる。
また、レーザー加工の際には、上流側後ロール及び下流側前ロールを、レーザーヘッドのY軸方向への移動に追従して、Y軸方向に移動させることにより、ベルト部がレーザー光により破損することを抑制することができる。なお、上流側後ロール及び下流側前ロールを、レーザーヘッドのX軸方向への移動には追従させないことで、レーザーブランキング装置の構造をシンプルなものとすることができる。
【0016】
本発明のレーザーブランキング装置においては、上流側ベルト部の上方に、補助コンベアが配置されているので、フィードロールから外れた末端片であっても、当該補助コンベアにより下流側に搬送することができる。
このとき、末端片は、その上面が補助コンベアの吸着部に吸着されて搬送されるので、搬送時に末端片が振動することを抑えつつ精度良く搬送することが可能となる。
また、末端片の搬送時においては、末端片と上流側ベルト部との間に隙間が形成されるようにすることで、上流側ベルト部からの振動が末端片に伝わることをより抑制することができる。
また、末端片の搬送時においては、上流側ベルト部を、無端ベルトに同期して、無端ベルトと同じ速度で走行させることで、末端片と上流側ベルト部とが擦れて傷が付くことを抑制することができる。
【0017】
これらのことにより、レーザーブランキング装置においては、フィードロールから外れた末端片にもレーザーヘッドによるレーザー加工を施すことが可能となる。その結果、廃棄する末端片の長さを極力小さくすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0018】
本発明のレーザーブランキング装置においては、補助コンベアが、磁力に基づいて末端片を吸着するための磁石部と、吸引力に基づいて末端片を吸着するための吸引部とを有しているので、末端片が磁性体である場合だけでなく、非磁性体である場合も搬送することができる。ちなみに、末端片が磁性体である場合は、重量が大きくなるため、吸引部よりも磁石部で吸着保持することが望ましい。
このとき、磁石部として、電磁マグネットを採用することにより、レーザー加工の際に発生する溶接ヒュームやスパッタ等が磁石部に付着することを抑制することができる。なお、永磁マグネットを採用すると、これに溶接ヒュームやスパッタが付着して除去し難い。
【0019】
本発明のレーザーブランキング装置においては、補助コンベアが、支持フレームに昇降装置を介して吊設された構成となっているので、既存のレーザーブランキング装置に対し、後付けで設置することが可能となる。
また、補助コンベアを昇降移動可能とすることにより、不使用時には、補助コンベアを退避位置に退避させることができる。
【0020】
本発明のレーザーブランキング装置においては、補助コンベアが幅方向に複数並設されており、該補助コンベアをそれぞれ独立に幅方向に移動させるための幅位置調整機構を更に備えることにより、コイル材の幅に合わせて、各補助コンベアを好適な位置に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を模式的に示す側面図である。
図2図2は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を模式的に示す説明図である。
図3図3は、図1に示すレーザーブランキング装置のA矢視背面図である。
図4図4は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置の補助コンベアを示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置における補助コンベアの吸着部をX軸方向に切断した概略断面図である。
図6図6の(a)~(c)は、他の実施形態に係るレーザーブランキング装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
本発明に係るレーザーブランキング装置は、フィードロールから搬入されるコイル材を搬送しながら、レーザーヘッドから照射されるレーザー光で切断して所望の形状のブランク材とすると共に、当該ブランク材を後方に搬送するための装置である。
上記レーザーブランキング装置は、コイル材を搬送させながら、連続的にレーザー加工を行うので、切断効率が高く、生産性にも優れる。
【0024】
ここで、コイル材の材質としては、レーザー光で切断可能なものであれば、特に限定されず、鉄、アルミニウム、チタン等の金属、鋼(ハイテン材、超ハイテン材を含む)等の合金、アクリル等の樹脂、木材、これらの複合材等を利用することができる。
また、板材が金属又は合金である場合、板材の厚さは、高精度で、確実にレーザー光で切断する観点から、20mm以下のものが好ましく用いられ、0.1~5mmのものがより好ましく用いられる。
また、レーザー切断された後のブランク材の形状は、特に限定されない。
【0025】
本発明において、「末端片」とは、搬送時にフィールドロールから外れた、一定の長さを有するコイル材の末端部分の片を意味する。
また、コイル材の長手方向(搬送方向)をY軸方向、コイル材の幅方向をX軸方向ともいう。
また、「Y軸方向への移動」とは、Y軸の一方向への移動のみならず、その逆方向への移動も含む。「X軸方向への移動」についても同様である。
また、レーザーブランキング装置においては、搬送方向の上流側を「前」、下流側を「後」としている。
【0026】
図1は、本発明に係るレーザーブランキング装置と、当該レーザーブランキング装置にコイル材を搬入するためのフィーダとを示す概略図である。
図1に示すように、コイル材Xのレーザーブランキング装置100への搬入は、フィーダFを介して行われる。
【0027】
具体的には、コイル材Xは、図示しない供給源からフィーダFに搬入さると、当該フィーダFのフィードロールFRにより挟持される。そして、フィーダFは、フィードロールFRを回転駆動させることにより、コイル材XをフィーダFからレーザーブランキング装置100に送り出すようになっている。
【0028】
レーザーブランキング装置100においては、コイル材X(末端片)の終端がフィードロールFRから外れた場合、補助コンベア10がその末端片を下流側に搬送するようになっている。なお、補助コンベア10の詳細については後述する。
その結果、末端片に対しても可及的にレーザー加工を施すことが可能となるので、図1に示すように、廃棄する末端片の長さを、補助コンベア10を用いない場合のフィードロールFRから外れる位置からレーザーヘッド20によりレーザー加工が施される位置まで長手方向の長さD1から、補助コンベア10を用いる場合の補助コンベア10から外れる位置からレーザーヘッド20によりレーザー加工が施される位置までの長手方向の長さD2にまで、小さくすることができる。すなわち、廃棄する末端片を極力少なくすることができるので、コイル材の歩留まりを向上させることができる。
【0029】
図2は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置を模式的に示す説明図である。
図2に示すように、本実施形態に係るレーザーブランキング装置100は、コイル材Xを搬送するための上流側ベルト部1と、ブランク材を搬送するための下流側ベルト部2と、上流側ベルト部1及び下流側ベルト部2の間の空隙部Sの上方に配置され、コイル材Xにレーザー加工を施すためのレーザーヘッド20と、空隙部Sに配設されたスパッタ受け箱Gと、レーザーヘッド20をX軸方向に案内するためのX軸レール31と、X軸レール31をY軸方向に案内するための一対のY軸レール32と、フィードロールFRから外れたコイル材Xの末端片を搬送するための補助コンベア10と、を備える。
【0030】
レーザーブランキング装置100においては、レーザーヘッド20に対して、上流側の上流側ベルト部1と、下流側の下流側のベルト部2とを有しており、これらは直列に配列されている。すなわち、レーザーヘッド20は、上述したように、上流側ベルト部1と、下流側ベルト部2との間の空隙部Sの上方に配設される。
したがって、上流側ベルト部1により搬送されるコイル材Xは、空隙部Sの上方でレーザーヘッド20によりレーザー加工が施され、切断されたブランク材が下流側ベルト部2により搬送されることになる。
【0031】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、上流側ベルト1と下流側ベルト部2とは、それぞれ別体となっている。このため、上流側ベルト部1の駆動と、下流側ベルト部2の駆動とをそれぞれ独立して行うことが可能となっている。
また、上流側ベルト部1及び下流側ベルト部2は、何れも、幅方向に並設されている(図3参照)。これにより、コイル材やブランク材の搬送を高速化することが可能となる。
【0032】
上流側ベルト部1は、少なくとも、上流側前ロール1a及び上流側後ロール1bに架設されており、その上面に配置されるコイル材Xを搬送することが可能となっている。なお、上流側ベルト部1は、必要に応じて、上流側前ロール1a及び上流側後ロール1b以外のロールに更に架設されていてもよい。
上流側前ロール1aは、上流側ベルト部1内の前側に位置しており、その軸が固定フレームF1に支持固定されている(図3参照)。
上流側後ロール1bは、上流側ベルト部1内の後ろ側に位置しており、その軸が後述する移動フレーム21に支持固定されている。
【0033】
下流側ベルト部2は、少なくとも、下流側前ロール2a及び下流側後ロール2bに架設されており、その上面に配置されるブランク材を搬送することが可能となっている。なお、下流側ベルト部2は、必要に応じて、下流側前ロール2a及び下流側後ロール2b以外のロールに更に架設されていてもよい。
下流側前ロール2aは、下流側ベルト部2内の前側に位置しており、その軸が後述する移動フレーム21に支持固定されている。
下流側後ロール2bは、下流側ベルト部2内の後ろ側に位置しており、その軸が固定フレームF1に支持固定されている(図3参照)。
【0034】
レーザーブランキング装置100においては、Y軸方向に延びる移動用レール21aが移動フレーム21の下方に配置されており、移動フレーム21は、その移動用レール21aに沿って、前後方向(Y軸方向)に移動可能となっている。
すなわち、レーザーブランキング装置100においては、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aが移動フレーム21と一体となり、且つ、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aの間の空隙部Sが維持された状態で、前後方向に移動可能となっている。
【0035】
レーザーブランキング装置100においては、空隙部Sに、スパッタ受け箱Gが配設される。
スパッタ受け箱Gは、上方に開口部を有する箱状であり、少なくとも、開口部がX軸方向に沿って開口された構造となっている。これにより、レーザーブランキング装置100においては、レーザー加工により発生する溶接ヒュームやスパッタが、当該開口部からスパッタ受け箱G内に回収されるようになっている。その結果、レーザーブランキング装置100においては、溶接ヒュームやスパッタが、ベルト部等に付着することを抑制することができる。
【0036】
このとき、スパッタ受け箱Gには、当該スパッタ受け箱G内を吸引するための図示しないバキューム装置装置が取り付けられていることが好ましい。この場合、レーザー加工により発生する溶接ヒュームやスパッタが、積極的にスパッタ受け箱G内に収容されることになる。
その結果、レーザーブランキング装置100においては、溶接ヒュームやスパッタがベルト部等に付着することを抑制することができ、且つ、溶接ヒュームやスパッタの回収の効率をより向上させることができる。
【0037】
レーザーブランキング装置100において、スパッタ受け箱Gは、移動フレーム21に支持固定される。これにより、スパッタ受け箱Gは、移動フレーム21と一体となり、且つ、空隙部Sに配設された状態で、前後方向(Y軸方向)に移動可能となっている。
【0038】
レーザーブランキング装置100においては、レーザーヘッド20をX軸方向に案内するためのX軸レール31と、X軸レール31をY軸方向に案内するための一対のY軸レール32とを備える。
図3は、図1に示すレーザーブランキング装置のA矢視背面図である。
図2及び図3に示すように、レーザーブランキング装置100において、一対のY軸レール32は、Y軸方向に延びており、レーザーブランキング装置100両側の固定フレームF1の上面に取り付け固定されている。
一方で、X軸レール31は、X軸方向に延びており、その両端がY軸レール32に取り付けられている。
また、レーザーヘッド20は、X軸レール31に取り付けられている。
【0039】
レーザーヘッド20は、上述したように、空隙部Sの上方に配設される。
そして、レーザーヘッド20は、下方にレーザー光を照射することが可能となっており、コイル材Xは、レーザー光が照射されることにより切断され、ブランク材となる。
ここで、レーザー光の種類としては、特に限定されないが、例えば、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等を用いることができる。
【0040】
レーザーブランキング装置100においては、レーザーヘッド20が、X軸レール31に案内されて摺動可能となっており、X軸レール31が、Y軸レール32に案内されて摺動可能となっている。
したがって、レーザーブランキング装置100においては、これらを組合せてプログラム制御することにより、レーザーヘッド20を、XY平面において、前後方向、左右方向、斜め方向、曲線方向等の所望の位置に容易に移動させることが可能となる。これにより、搬送されるコイル材Xに対し、所望の形状にレーザー加工を行うことが可能となっている。
【0041】
上述したように、レーザーブランキング装置100において、レーザーヘッド20によるレーザー加工は、空隙部Sの上方で行われる。
このとき、移動フレーム21は、レーザーヘッド20の真下に空隙部Sが位置するように、レーザーヘッド20のY軸方向への移動に追従して摺動する。すなわち、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aが、レーザーヘッド20のY軸方向への移動に追従して、Y軸方向に移動する。なお、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aを、レーザーヘッド20のX軸方向への移動には追従させない。これにより、ベルト部がレーザー光により破損することを抑制することができる。
【0042】
図2に戻り、レーザーブランキング装置100においては、上流側ベルト部1の上方に、補助コンベア10が配置されている。
したがって、レーザーブランキング装置100において、末端片は、上流側ベルト部1と補助コンベア10との間を走行することになる。
なお、補助コンベア10は、上述したように、フィードロールFRから外れた末端片を下流側に搬送するためのものである。
【0043】
図4は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置の補助コンベアを示す斜視図である。
図4に示すように、レーザーブランキング装置100において、補助コンベア10は、幅方向に複数並設されている。なお、これらの補助コンベア10は、何れも同じ構造であり、好適には、ロール11の駆動を同期させて用いられる。
また、レーザーブランキング装置100は、各補助コンベア10の位置をそれぞれ独立に幅方向に移動させるための幅位置調整機構15を備えている。
【0044】
幅位置調整機構15は、各補助コンベア10のロール11が取り付けられたX軸方向に延びるバー15aと、各補助コンベア10を、ロール11を介してバー15aに沿って移動させるための補助コンベア駆動部15bとを有する。なお、補助コンベア駆動部15bの駆動源としては、公知のモータ等が用いられる。
レーザーブランキング装置100においては、幅位置調整機構15を備えることにより、コイル材Xの幅に合わせて、各補助コンベア10を好適な位置に移動させることができる。その結果、コイル材Xをバランス良く、吸着保持することが可能となり、搬送の位置精度をより向上させることができる。
【0045】
補助コンベア10及び幅位置調整機構15は、昇降装置16を介して、支持フレーム18に吊設されている。
具体的には、補助コンベア10及び幅位置調整機構15は、ステージ部17の下面に取り付けられている。そして、ステージ部17は、その四隅に取り付けられた昇降装置16を介して、支持フレーム18に吊設されている。
【0046】
ここで、支持フレーム18は、正面視逆U字状であり、固定フレームF1の外側からベルト部等を跨ぐようにして配置される(図3参照)。このため、補助コンベア10が吊設された支持フレーム18は、既存のレーザーブランキング装置に対し、後付けで設置することが可能となっている。
【0047】
昇降装置16は、油圧式のジャッキ16aと、ジャッキ16aを駆動させるためのモータ16bとからなる。
したがって、レーザーブランキング装置100においては、昇降装置16により、ステージ部17を介して、補助コンベア10及び幅位置調整機構15が昇降移動可能となっており、且つ、上昇若しくは下降した位置で固定されるようになっている。
【0048】
図2に戻り、補助コンベア10は、上述した昇降装置16により、末端片ではないコイル材Xの搬送時には、退避位置P2で固定され、末端片の搬送時には、補助コンベアが下降して該末端片を吸着可能な吸着位置P1で固定される。
このように、補助コンベア10は、昇降移動可能となっているので、不使用時には、補助コンベアを退避位置に退避させることで、不要なエネルギー消費を回避することができる。
【0049】
補助コンベア10は、一対のロール11と、該ロール11に架設された無端ベルト12と、ロール11の間であり且つ無端ベルト12の内側に、前後方向に沿って並設された複数の吸着部13とを有する。
図5は、本実施形態に係るレーザーブランキング装置における補助コンベアの吸着部をX軸方向に切断した概略断面図である。
図5に示すように、補助コンベア10の吸着部13は、磁石部13aと吸引部13bとを有する。
【0050】
吸引部13bは、底部に開口部を有するサクションボックス13b1と、該サクションボックス13b1の内部を吸引するためのバキューム装置13b2とを有する。なお、無端ベルト12には、サクションボックス13b1の開口部に合致する位置に、貫通孔12aが設けられている。
一方、磁石部13aは、サクションボックス13b1内部の底部に配置された一対の電磁マグネット13a1と、該電磁マグネット13a1に連結されたケーブル13a2とを有する。磁石部13aにおいて、電磁マグネット13a1を採用することにより、レーザー加工の際に発生するヒュームやスパッタ等が磁石部に付着することを抑制することができる。
【0051】
吸引部13bにおいては、バキューム装置13b2がサクションボックス13b1の内部を吸引することにより、開口部及び貫通孔12aを介して、末端片を無端ベルト12に吸着させることが可能となっている。
また、磁石部13aにおいては、電磁マグネット13a1に磁力を発生させることにより、磁性を有する末端片を無端ベルト12に吸着させることが可能となっている。
これらのことにより、レーザーブランキング装置100においては、末端片が磁性体である場合だけでなく、非磁性体である場合も搬送することが可能となる。
【0052】
図2に戻り、レーザーブランキング装置100において、末端片は、その上面が補助コンベア10の吸着部13に吸着された状態で搬送される。これにより、末端片が振動することを抑えつつ精度良く搬送することが可能となる。
また、末端片の搬送時においては、末端片と上流側ベルト部との間に隙間が形成されていることが好ましい。すなわち、末端片を極力浮かせた状態で搬送することが好ましい。これにより、上流側ベルト部からの振動が末端片に伝わることをより抑制することができる。
また、このとき、上流側ベルト部1は、無端ベルト12に同期して、該無端ベルト12の下側と同じ方向に同じ速度で走行することが好ましい。これにより、末端片と上流側ベルト部1とが仮に接触したとしても、擦れて傷が付くことを抑制することができる。
【0053】
これらのことから、レーザーブランキング装置100においては、フィードロールFRから外れた末端片であっても、可及的に、レーザーヘッド20によるレーザー加工を施すことが可能となる。
その結果、廃棄する末端片の長さを極力小さくすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、上流側ベルト部1が少なくとも上流側前ロール1a及び上流側後ロール1bに架設され、下流側ベルト部2が少なくとも下流側前ロール2a及び下流側後ロール2bに架設され、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aの間の空隙部Sの上方にレーザーヘッド20が配置され、上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aが取り付けられた移動フレーム21がY軸方向に移動可能となっており、上流側ベルト部1の上方に補助コンベア10が配置されているが、これら以外の構造は、図2に示す構造に限定されない。
【0056】
図6の(a)~図6の(c)は、他の実施形態に係るレーザーブランキング装置を模式的に示す説明図である。
例えば、図6の(a)に示すレーザーブランキング装置101においては、上流側ベルト部1xが少なくとも上流側前ロール1a1及び上流側後ロール1b1に架設され、下流側ベルト部2xが少なくとも下流側前ロール2a1及び下流側後ロール2b1に架設され、上流側後ロール1b1及び下流側前ロール2a1の間の空隙部の上方にレーザーヘッド20が配置され、上流側後ロール1b1及び下流側前ロール2a1が取り付けられた移動フレーム211がY軸方向に移動可能となっており、上流側ベルト部1xの上方に補助コンベア10が配置されている。
これに加え、移動フレーム211を移動させた際の上流側ベルト部1xの張力を調整するために上下移動可能な第1張力調整ロールR1と。移動フレーム211を移動させた際の下流側ベルト部2xの張力を調整するために上下移動可能な第2張力調整ロールR2が設けられている。
【0057】
また、図6の(b)に示すレーザーブランキング装置102においては、上流側ベルト部1yが少なくとも上流側前ロール1a2及び上流側後ロール1b2に架設され、下流側ベルト部2yが少なくとも下流側前ロール2a2及び下流側後ロール2b2に架設され、上流側後ロール1b2及び下流側前ロール2a2の間の空隙部の上方にレーザーヘッド20が配置され、上流側後ロール1b2及び下流側前ロール2a2が取り付けられた移動フレーム212がY軸方向に移動可能となっており、上流側ベルト部1yの上方に補助コンベア10が配置されている。
これに加え、移動フレーム212を移動させた際の上流側ベルト部の張力を調整するための第1張力調整ロールR3と。移動フレーム212を移動させた際の下流側ベルト部の張力を調整するための第2張力調整ロールR4が設けられており、第1張力調整ロールR3及び第2張力調整ロールR4が一体となって左右方向に移動可能となっている。
【0058】
また、図6の(c)に示すレーザーブランキング装置103においては、上流側ベルト部1zが少なくとも上流側前ロール1a3及び上流側後ロール1b3に架設され、下流側ベルト部2zが少なくとも下流側前ロール2a3及び下流側後ロール2b3に架設され、上流側後ロール1b3及び下流側前ロール2a3の間の空隙部の上方にレーザーヘッド20が配置され、上流側後ロール1b3及び下流側前ロール2a3が取り付けられた移動フレーム213がY軸方向に移動可能となっており、上流側ベルト部1zの上方に補助コンベア10が配置されている。
かかるレーザーブランキング装置103においては、上流側ベルト部1zと下流側ベルト部2zとが1つのベルト体からなっている。すなわち、ベルト体の上流側部分が上流側ベルト部1z、下流側部分が下流側ベルト部2zとなっている。
【0059】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、上流側ベルト部1及び下流側ベルト部2が、何れも、幅方向に並設されているが(図3参照)、必須ではなく、それぞれが1条のみ設けられていてもよく、それぞれが3条以上並設されていてもよい。また、上流側ベルト部1の条数と、下流側ベルト部2の条数とは一致していなくてもよい。
【0060】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、上流側前ロール1aが支持固定された固定フレームF1と、下流側後ロール2bが支持固定された固定フレームF1とは同じフレームとなっているが、別体であってもよい。
【0061】
本実施形態に係るレーザーブランキング装置100においては、補助コンベア10が、幅方向に複数並設されているが、1条のみ設けられていてもよい。
また、レーザーブランキング装置100は、幅位置調整機構15を備えているが、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、コイル材をレーザー加工により切断してブランク材とするためのレーザーブランキング装置として利用することができる。
本発明のレーザーブランキング装置によれば、末端片の振動を抑えつつ精度良く搬送することができ、且つ、末端片にもレーザー加工を施すことが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1,1x,1y,1z・・・上流側ベルト部
10・・・補助コンベア
100,101,102,103・・・レーザーブランキング装置
11・・・ロール
12・・・無端ベルト
12a・・・貫通孔
13・・・吸着部
13a・・・磁石部
13a1・・・電磁マグネット
13a2・・・ケーブル
13b・・・吸引部
13b1・・・サクションボックス
13b2・・・バキューム装置
15・・・幅位置調整機構
15a・・・バー
15b・・・補助コンベア駆動部
16・・・昇降装置
16a・・・ジャッキ
16b・・・モータ
17・・・ステージ部
18・・・支持フレーム
1a,1a1,1a2,1a3・・・上流側前ロール
1b,1b1,1b2,1b3・・・上流側後ロール
2,2x,2y,2z・・・下流側ベルト部
20・・・レーザーヘッド
21,211,212,213・・・移動フレーム
21a・・・移動用レール
2a,2a1,2a2,2a3・・・下流側前ロール
2b,2b1,2b2,2b3・・・下流側後ロール
31・・・X軸レール
32・・・Y軸レール
F・・・フィーダ
F1・・・固定フレーム
FR・・・フィードロール
G・・・スパッタ受け箱
P1・・・吸着位置
P2・・・退避位置
R1,R3・・・第1張力調整ロール
R2,R4・・・第2張力調整ロール
S・・・空隙部
X・・・コイル材
【要約】      (修正有)
【課題】末端片の振動を抑えつつ精度良く搬送することができ、且つ、末端片にもレーザー加工を施すことが可能なレーザーブランキング装置を提供すること。
【解決手段】上流側後ロール1b及び下流側前ロール2aが、レーザーヘッド20のY軸方向への移動に追従して、Y軸方向に移動するものであり、補助コンベア10が、一対のロール11と、該ロール11に架設された無端ベルト12と、ロール11の間であり且つ無端ベルト12の内側に、前後方向に沿って並設された複数の吸着部13とを有し、吸着部13が、磁石部と、吸引部とを有し、補助コンベア10が、上流側コンベア1上の末端片の上面を吸着保持しながら該末端片を後方向に搬送可能なレーザーブランキング装置である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6