(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】皮膚観察方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230911BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2017229467
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 宏達
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 麦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】上田 泰
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/01
G02B 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野長さが1~12mmであり、水平分解能を視野の長さで割った値が、0.8[μm/mm]以下である、観察対象を撮像するための撮像光学系と、観察対象に照明光を照射する照明系を具備する顕微鏡システムを用いて、皮膚表層の表面と内部の状態を同時に観察する方法であって、光源と観察対象との距離を10~60mmとし、指向角が15~60°の
白色光を、レンズの光軸に対して40~75°の入射角で観察対象の表面に斜入射させて観察する工程を含み、皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔及びシワから選ばれる皮膚表面の状態及び毛細血管、メラニン顆粒及び汗腺から選ばれる皮膚内部の状態を一斉に観察する、皮膚状態の観察方法。
【請求項2】
化粧料が塗布された後の皮膚状態を観察する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
皮膚上の特徴点を利用して、同一か所の観察を行う請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表層の内外状態を観察する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、表皮、真皮およびその付属器官(汗腺等)より構成されている。表皮は最表層に位置する厚さ100~200μm程度の組織であり、体内側より順に、基底層・有棘層・顆粒層・角層の4層より構成されている。最も上層に位置する角層は、外界からの刺激に対する防御の最前線であり、生体の恒常性を維持する上で重要な役割を担っている。また角層は美容的にも重要な部位である。即ち、皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔、シワ、シミ、日焼けといった状態や現象は、角層構造の乱れや角層組成の変化等と密接に関連する。従って健康な肌や、美しい肌を実現するには、角層を良い状態に維持する必要がある。
【0003】
基底層で作られたケラチノサイトが角化し、有棘層、顆粒層を経て扁平な角層細胞に分化することによって角層は形成される。表皮(基底層・有棘層・顆粒層・角層)には毛細血管が存在しないため、ケラチノサイトの代謝・分化に必要な酸素や栄養素は、表皮下にある真皮の血管系より供給される。具体的には、表皮・真皮境界にある乳頭構造中の毛細血管や、乳頭外にある表皮近傍の毛細血管が、供給の最終段の役割を担っている。
【0004】
これらの毛細血管には、常に血液が流れているわけではない。皮膚の状況に応じて、毛細血管に流れる血液量は制御されていると考えられている。例えば、表皮代謝が活発な部位では、毛細血管に流れる血液量が大きくなっていると考えられる。
【0005】
このように表皮近傍の毛細血管における血流挙動は、1)表皮におけるケラチノサイトの代謝や分化に直接的な影響を及ぼす因子であり、2)角層の状態に間接的に寄与する因子であり、3)最終的には、健康で美しい肌の実現に寄与する因子であると考えられている。従って、皮膚の健康状態の把握、肌荒れ等の皮膚トラブルの原因の究明の他、皮膚の状態を改善する物質や物理的作用を評価するためには、角層表面の肌状態と内側の毛細血管の存在や状態を同時に観察することが理想的である。
【0006】
一般に、皮膚表面の状態を観察する装置としては、被観察物を、レンズ・カメラからなる撮像光学系と、被観察物に照明光を照射する照明系を備えた撮像装置が用いられる。例えば、特許文献1には、レンズの一部又は全部を撮像光軸方向に沿って低倍率観察位置と高倍率観察位置に往復移動させて観察倍率を切り換えるレンズ駆動モータと、該駆動モータでレンズの位置を移動させたときに、これに連動して、大口径の低倍率観察アパーチャ及び小口径の高倍率観察アパーチャを回動させ、撮像光軸上に進退させて観察孔の口径を調整する口径調整機構とを備えた拡大撮像装置が開示されている。
しかしながら、この装置は、低倍率観察と高倍率観察とを切り替えて行うものであり、皮膚表面と内部を同時に観察するものではない。また、この装置を用いた観察は、平行偏光観察、すなわち偏光した光を入射し、検出側で入射と平行な偏光のみを受光して、表面反射光を選択的に観察する条件、又は直交偏光観察、すなわち偏光した光を入射し、検出側で入射と直交した偏光のみを受光して、内部散乱光を選択的に観察する条件の二つの観察条件からなるものであり、皮膚表面と内部の両方を観察するには偏光切り替えが必要となる。また、この装置では、広い視野を拡大する際に中心を拡大するという技術が採用されており、簡便に同一箇所の高解像度観察は困難である。
【0007】
また、特許文献2には、複数のLED照明を、光を拡散させる表面を持つ先端部に照射し、間接的に皮膚に均一に照明することを特徴とした皮膚観察法が開示されている。斯かる方法は、皮膚の内部を観察する際には、測定プローブ先端に窓材を取り付け、観察対象を装置と接触させることで表面からの反射光をより低減することで観察が行われ、皮膚表面を観察する際には、逆に測定プローブ先端に窓材を用いず、観察対象を非接触で測定するものであり、皮膚表面と内部を同時に観察できるものではない。
【0008】
また、皮膚表層の毛細血管の血流状態は、光学顕微鏡を用いて直接観察する手法が知られているが、毛細血管(直径10~50μm)の血流を観測できる解像度を得るには、観察視野は通常数mm2しか確保できない。一般に毛細血管の形状や分布は不均一であり、このように狭い領域の一回の観察結果からは、その皮膚の毛細血管の特性(毛細血管の形状や分布)を的確に把握することができない。そのため有意な結果を得るには多数回の観察が必要となり、測定者や被験者に多大な負担を強いることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4695930号公報
【文献】国際特許公開第2015/075177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、皮膚表層の外側(表面)と内側を同時に直接的に観察できる皮膚状態の観察方法及びそれに用いる装置を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)広視野且つ高解像度で観察対象を撮像するための撮像光学系と、観察対象に照明光を照射する照明系を具備する顕微鏡システムを用いて、皮膚表層の表面と内部の状態を同時に観察する方法であって、指向性光源から出射された光を観察対象の表面に斜入射させて観察する工程を含む、皮膚状態の観察方法。
2)1)の方法に用いられる装置であって、
被写体配置部を介して被写体と反対側に配置された顕微鏡システム、画像データを表示する画像表示部、及び画像データを処理する画像処理部を備え、前記顕微鏡システムが、指向性光源から出射した光を観察対象の表面に斜入射させる照明系を有する、皮膚状態の観察装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔、シワ等の皮膚表面の状態や現象と、毛細血管、メラニン顆粒(シミ)等の皮膚内部の微細構造物の存在や状態を一斉に、直接的且つ連続的に可視化することができる。これにより、皮膚表面の肌状態(例えば、肌荒れ)や皮膚内部に生じた色素沈着を、毛細血管の存在や状態と関連付けて評価することができる。したがって、本発明の方法及び装置を用いることにより、例えば皮膚の状態を改善する物質他、皮膚に対して何からの影響を与える物質や物理的刺激の評価や、皮膚の健康状態の把握、肌荒れ等の皮膚トラブルの原因の究明を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】A:斜入射リング照明系の外観図、B:斜入射照明系の外観図、C:指向角及び入射角の定義
【
図4】皮膚状態の観察画像(下段:四角枠内の部分の拡大画像)。
【
図6】処理前後での肌あれの評価を示す観察画像(左:処理前、右:処理後、下段:四角枠内の部分の拡大画像)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、観察される皮膚状態とは、皮膚表層の表面と内部の状態を含み、皮膚表面の状態としては、皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔、シワ等の皮膚表面の状態や現象が挙げられ、皮膚内部の状態としては、毛細血管、メラニン顆粒(シミ)等の皮膚内部の微細構造物の存在や状態が挙げられる。本発明によれば、斯かる皮膚表層の表面と内部の状態や現象を、一斉に、直接的且つ連続的に可視化することができる。
本発明において、皮膚表面の状態の観察対象となる身体部位としては、特に限定されないが例えば、手、足、腕、脚、胴体、顔等が挙げられる。斯かる身体部位は、化粧品や薬剤塗布後の身体部位であってもよい。
【0015】
本発明の皮膚状態の観察方法は、広視野且つ高解像度で観察対象を撮像するための撮像光学系と、観察対象に照明光を照射する照明系を具備する顕微鏡システムを用いて、皮膚表層の表面と内部の状態を同時に観察する方法である。以下、本発明の方法について、これを実施するための装置の一例(
図1及び
図2)を示して説明するが、本発明の方法はこれに限定されるものではない。
図1に、開口部を有する被写体配置部1を備えた撮影台2と、前記被写体配置部を介して被写体と反対側に配置された顕微鏡システム3を備えた装置の態様を示す。
被写体配置部1は、被写体である身体部位を配置する撮影台の部位であり、被写体と反対側に設置される顕微鏡システム3により被写体を観察可能であれば、開口部は透明な部材で埋められていてもよく、その部材は特に限定されないが、通常ガラス板を用いるのが好ましい。
撮影台2は、前記被写体配置部1を備え、被写体配置部を介して被写体と反対側に顕微鏡システム3を配置することができればその形状や構成は特に限定されない。例えば、被写体配置部を含む平板を支柱6で支持した構造体であってもよく(
図1)、面の1つに被写体配置部が配置され、顕微鏡システムをその内部に配置、或いは顕微鏡システムと連結して配置可能な直方体、立方体、円筒等の形状の筐体(鏡筒2a)であってもよい(
図2)。
撮影台として被写体配置部を含む平板を支柱で支持した構造体を用いる場合、顕微鏡システム3は位置が固定されていてもよいが、顕微鏡システム3と被写体との距離や観察視野を調整できるような可動式のステージ(XYZ軸ステージ)やジャッキ等の位置調整機構7と接続され、位置が調整可能とされているのが好ましい。
【0016】
顕微鏡システム3は、広視野且つ高解像度で観察対象を撮像するための撮像光学系(レンズ3aとカメラ3c)、観察対象の表面に指向性光源の斜入射光を照射する照明系(光源)3bを具備するものであればその種類は限定されず、実体顕微鏡、偏光顕微鏡、マイクロスコープ等を用いることができる。
【0017】
本発明において用いられるレンズとしては、皮膚表層の表面構造と内部の毛細血管を含む微細構造を観察可能な高解像度のものが使用される。斯かる点から、レンズの水平分解能は、20μm以下、且つ好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。このレンズの倍率は、装置が大型化し観察が困難になることを避けるため及び十分な観察範囲を確保するためにも、好ましくは0.25倍以上、より好ましくは0.5倍以上、より好ましくは0.75倍以上であり、且つ好ましくは15倍以下である。
【0018】
カメラとしては、顕微鏡の観察画像を広視野且つ高解像度で撮像(動画又は静止画)可能なものであれば限定されないが、例えばCCD、CMOS等の撮像素子を採用するデジタルカメラ等が挙げられる。撮像素子の画素数は、十分な解像度を得るために、400万画素以上であるのが好ましく、800万画素以上であるのがより好ましい。
またその撮像素子のサイズは、装置が大型化し観察が困難になることを避けるため及び十分な解像度を得るためにも、好ましくは1/4型(3.6x2.7mm)以上で、且つ好ましくは4/3型(17.3x13mm)以下、より好ましくは1型(13.2x8.8mm)以下、より好ましくは2/3型(8.8x6.6mm)以下である。
【0019】
本発明の撮像光学系において、視野長さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは6mm以上であり、且つ好ましくは12mm以下、より好ましくは11mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。また、好ましくは1~12mm、より好ましくは3~11mm、さらに好ましくは6~10mmである。
また、水平分解能を視野長さで割った値[μm/mm]が、0.8以下であるのが好ましく、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0020】
ここで、「視野長さ」は、視野を構成する四角形の対角線とする。多角形であれば対角線および辺の内、最も長い線分の長さとする。円形/楕円であった場合は直径/長径とする。不定形であれば閉曲線内における最長の二点間の距離とする。また、「水平分解能[μm]」は、撮像面内の解像力、2つの点を区別可能な最短の距離を指す。
【0021】
本発明の方法においては、指向性光源から出射された光を観察対象の表面に斜入射させて観察することにより、皮膚表層の表面と内部の両方の観察が可能となる。この時、観察対象の表面は、被写体配置部に接触させることによってレンズに正対しているものとする。
指向性光源として用いる光源の種類は、通常可視光が用いられるが、波長280~400nm程度の紫外線を用いてもよく、また波長800~1800nm程度の近赤外光を用いてもよい。可視光としては、400nm以上800nm未満の波長の光を含むものであればよく、白色光の他、青色光、赤色光、緑色光などを用いることができるが、波長の異なる可視光が混在する白色光を用いるのが好ましい。例えば、白色LED光源、ハロゲンランプ等を使用することができる。
【0022】
指向性光源から出射された光の指向角は、皮膚からの表面反射を観察する点から、好ましくは15度以上、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは25度以上であり、且つ好ましくは60度以下、より好ましくは50度以下、さらに好ましくは40度以下である。また、好ましくは15~60度、より好ましくは25~50度、さらに好ましくは30~40度である。
【0023】
また、観察対象の表面に斜入射させる入射角は、レンズの光軸に対して、好ましくは40度以上、より好ましくは42.5度以上、さらに好ましくは45度以上であり、且つ好ましくは75度以下、より好ましくは65度以下、さらに好ましくは60度以下である。また、好ましくは40~75度、より好ましくは42.5~65度、さらに好ましくは45~60度である。
【0024】
好ましい態様として、光の照射は、光源と観察対象との距離を、10~60mm、好ましくは10~40mm、より好ましくは10~30mmに設定した上で、指向角が15~60度、好ましくは25~50度、より好ましくは30~40度の光を、レンズの光軸に対して40~75度、好ましくは42.5~65度、より好ましくは45~60度の入射角で、観察対象の表面に斜入射させるのが好ましく、光源と観察対象との距離を10~30mmとし、指向角が、30~40°の光を、レンズの光軸に対して、45~60°の入射角で、観察対象の表面に斜入射させるのが更に好ましい。
【0025】
斯かる指向性光源から出射した光を観察対象の表面に斜入射させるための照射系の一態様(A:斜入斜リング照明系、B:斜入射照明系)、並びに指向角及び入射角の定義を
図3に示す。
【0026】
斯くして、上記顕微鏡システムにより、皮膚表層の表面及び内部の顕微画像(動画及び/又は静止画)が同時に撮像される。撮像された画像データはテレビモニター等の画像表示部5により表示され、人により皮膚表面の状態(皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔、シワ等)、皮膚内部の状態(毛細血管、メラニン顆粒(シミ)等)が観察され、さらには画像処理部4(コンピュータ)を用いて当該皮膚の外側と内側の状態について更に詳しい分析・解析がされる。尚、毛細血管の状態とは、毛細血管の数、分布(均一・不均一)、形状、血流速等が挙げられる。
【0027】
上記顕微鏡システムの特徴である高解像度かつ広視野での観察を活用すると、キメ形状、毛穴、汗腺、シミ、毛細血管といった皮膚微細構造を、視野長さが1mm以上の広視野で明瞭に画像化することができる。また画像表示部において拡大して表示することで、微細な構造をより明瞭に観察することもできる。当該画像情報から任意の特徴点を決め、これを利用することにより、経日観察等の再測定時において容易に同一視野を特定することができ、定点観察が可能となる。
【0028】
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>広視野且つ高解像度で観察対象を撮像するための撮像光学系と、観察対象に照明光を照射する照明系を具備する顕微鏡システムを用いて、皮膚表層の表面と内部の状態を同時に観察する方法であって、指向性光源から出射された光を観察対象の表面に斜入射させて観察する工程を含む、皮膚状態の観察方法。
<2>光源と観察対象との距離を10~60mmとし、指向角が15~60°の光を、レンズの光軸に対して40~75°の入射角で観察対象の表面に斜入射させる、<1>の方法。
<3>皮膚状態の観察が、皮溝、皮丘、キメ又は肌荒れ、毛孔及びシワから選ばれる皮膚表面の状態及び毛細血管及びメラニン顆粒から選ばれる皮膚内部の状態を一斉に観察する、<1>又は<2>の方法。
<4>化粧料が塗布された後の皮膚状態を観察する、<1>~<3>のいずれかの方法。
<5>皮膚上の特徴点を利用して、同一か所の観察を行う<1>~<4>のいずれかの方法。
<6>視野長さが1~12mmである撮像光学系を用いる、<1>~<5>のいずれかの方法。
<7>水平分解能を視野の長さで割った値が、0.8[μm/mm]以下となる撮像光学系を用いる、<1>~<6>のいずれかの方法。
<8>撮像のための撮像素子の画素数が、400万画素以上、好ましくは、800万画素以上である、<1>~<7>のいずれかの方法。
<9>撮像のための撮像素子のサイズが、好ましくは1/4型(3.6x2.7mm)以上で、且つ好ましくは4/3型(17.3x13mm)以下、より好ましくは1型(13.2x8.8mm)以下、より好ましくは2/3型(8.8x6.6mm)以下である、<1>~<8>のいずれかの方法。
<10>撮像のためのレンズの倍率が、好ましくは0.25倍以上、より好ましくは、0.5倍以上、より好ましくは0.75倍以上であり、且つ好ましくは15倍以下である、<1>~<9>のいずれかの方法。
<11><1>~<10>のいずれかの方法に用いられる装置であって、
被写体配置部を備えた撮影台と、前記被写体配置部を介して被写体と反対側に配置された顕微鏡システム、画像データを表示する画像表示部、及び画像データを処理する画像処理部を備え、前記顕微鏡システムが、指向性光源から出射した光を観察対象の表面に斜入射させる照明系を有する、皮膚状態の観察装置。
【実施例】
【0029】
実施例1(
図4参照)
CMOSカメラ(BU1203、1200万画素、1/1.7型センサ、東芝テリー)に作動距離68mm、倍率1倍のレンズ(VS-TCT1-65/S、VSオプティクス社製)を上向きに配置して接続した。カメラはXY軸ステージ(TSD-602C、シグマ光機株式会社)とZ軸ステージ(B33-60KGA、駿河精機株式会社)を組み合わせたXYZ軸ステージと接続し、皮膚表面との距離や視野を調整可能とした。レンズの光軸(Z軸)上部に、観察対象との距離が45mmになるように、指向角が45°で、レンズ光軸に対して入射角60°で斜入射が可能な光源ユニット(リング状の白色LED光源(OPDR-LA74-48W-2、オプテックス・エフエー社製)、
図3A参照)を配置した。レンズの焦点位置に皮膚表面が位置するよう、撮影台の被写体配置部(15mm開口を有する板)に被験者の前腕内側部を載せ撮影した。結果を
図4Aに示す。上の図は、視野全体を示し、下の図は上の図中の四角で囲われた実線部を拡大した図である。
図4Aより、皮膚表面の情報としてキメの形状が観察されていること、および皮膚内部の情報として、汗腺や毛細血管が観察されている。この様に、表面および内部の微細構造が同時に観察できている。
【0030】
実施例2~5(
図4参照)
CMOSカメラ(BU1203、1200万画素、1/1.7型センサ、東芝テリー)に作動距離68mm、倍率1倍のレンズ(VS-TCT1-65/S、VSオプティクス社製)を上向きに配置して接続した。レンズ先端部にΦ12mmの開口部と壁面に4つの照明差し込み口をもつ鏡筒を取り付けた。照明差し込み口に、所定の入射角を持つように調整した所定の指向角(実施例2:入射角60°・指向角30°、実施例3:入射角45°・指向角15°、実施例4:入射角45°・指向角30°、実施例5:入射角45°・指向角30°)を持つ3mm砲弾型白色LED(OptoSupply社製)を取り付けた(
図3B参照)。鏡筒の開口部に被験者の前腕内側部を載せ撮影した。結果を
図4B~Eに示す。
図4B、C、D、Eより、皮膚表面の情報としてキメの形状が観察されていること(各図上段)、および皮膚内部の情報として、毛細血管が観察されている(各図下段)。この様に、表面および内部の微細構造が同時に観察できている。
【0031】
比較例1
CMOSカメラ(BU1203、1200万画素、1/1.7型センサ、東芝テリー)に作動距離68mm、倍率1倍のレンズ(VS-TCT1-65/S、VSオプティクス社製)を上向きに配置して接続した。カメラはXY軸ステージ(TSD-602C、シグマ光機株式会社)とZ軸ステージ(B33-60KGA、駿河精機株式会社)を組み合わせたXYZ軸ステージと接続し、皮膚表面との距離や視野を調整可能とした。レンズの先端に内部に光を拡散する物質が塗工されたドームを有する白色LED光源による拡散照明(HPD2-150SW、シーシーエス株式会社)を配置した。レンズの焦点位置に皮膚表面が位置するよう、撮影台の被写体配置部(15mm開口を有する板)に被験者の前腕内側部を載せ撮影した(
図5参照)。結果を
図4Fに示す。
図4Fより、皮膚表面の情報としてキメの形状が観察できているが(上段)、毛細血管等の構造は見られず皮膚内部の情報は観察できていない(下段)。
【0032】
実施例6 同一部位でのあれ肌(キメの乱れ、炎症)の評価
カップシェイク法によって、あれ肌を誘導した。φ30mmのカップを被験者の前腕内側部の肌に密着させた状態にして、3wt%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液10mLを、カップに注ぎ15分間肌に接触させた後、液を取り除いた後にカップを外し、タオルで肌を軽く拭って、さらに15分間自然乾燥させた。あれ肌処理前の肌及びあれ肌処理後の肌を、実施例1と同様の装置を用いて、レンズの焦点位置に肌表面が位置するよう、撮影台の被写体配置部(15mm開口を有する板)に被験者の前腕内側部を載せ撮影した。結果を
図6に示す。
図6より、あれ肌処理前に比較し、あれ肌処理後にキメが乱れ、微細構造が増え、光の反射が増えたことによって輪郭の輝度が高く(白く)なる現象が明確に観察された。また、輝度の低く(暗く)観察されている毛細血管が、あれ肌処理後の血流の増大に伴って輝度がより低くなることも明瞭に観察された。
【符号の説明】
【0033】
1 被写体配置部
2 撮影台
2a 鏡筒
3 顕微鏡システム
3a レンズ
3b 光源
3c カメラ
4 画像処理部
5 画像表示部
6 支柱
7 位置調整機構