(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】流動剤
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20230911BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230911BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
A23L27/00 Z
(21)【出願番号】P 2018568441
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2017066258
(87)【国際公開番号】W WO2018002297
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ダブリュ. ドネリー
(72)【発明者】
【氏名】アナンダラマン サブラマニアム
(72)【発明者】
【氏名】リュトガー ファン スレーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ヂァン
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-1154(JP,A)
【文献】特開平6-172624号(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0527414(KR,B1)
【文献】特開2009-298653(JP,A)
【文献】特開平11-9199(JP,A)
【文献】特開2001-211843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0217420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
C11D 1/00-19/00
A61K 9/00-47/69
A23L 9/00- 9/22
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A23L 7/00- 7/104
B02C13/00-18/38
B02B 9/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動剤用籾殻粒子であって、該粒子の総重量の50重量%(d
50)が5μm未満の直径を有し、該粒子の総重量の75重量%(d
75)が10μm未満の直径を有し、かつ該粒子の総重量の90重量%(d
90)が15μm未満の直径を有
し、該流動剤がフレーバーまたはフレグランスと、担体とを含む噴霧乾燥粉末用である、前記流動剤用籾殻粒子。
【請求項2】
4.8~7.1μmの体積平均径を有する、請求項1記載の籾殻粒子。
【請求項3】
フレーバーまたはフレグランスと、担体と、最大で5%の流動剤用籾殻粒子とを含む噴霧乾燥粉末であって、1,000パスカル/kg以下の流動性を有し、かつ前記流動剤用籾殻粒子において、該粒子の総重量の50重量%(d
50)が5μm未満の直径を有し、該粒子の総重量の75重量%(d
75)が10μm未満の直径を有し、かつ該粒子の総重量の90重量%(d
90)が15μm未満の直径を有する、前記噴霧乾燥粉末。
【請求項4】
流動剤用籾殻粒子の製造方法であって、該粒子の総重量の50重量%(d
50)が5μm未満の直径を有し、該粒子の総重量の75重量%(d
75)が10μm未満の直径を有し、かつ該粒子の総重量の90重量%(d
90)が15μm未満の直径を有するように籾殻をボールミル処理またはジェットミル処理で粉砕することを含
み、該流動剤がフレーバーまたはフレグランスと、担体とを含む噴霧乾燥粉末用である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、フレーバーまたはフレグランスの噴霧乾燥配合物に関する。
【0002】
背景技術
フレーバーまたはフレグランス化合物を徐放させるための送達システムおよびその製造方法が報告されている。噴霧乾燥粒子をより容易に処理し、また取り扱うために、流動剤が用いられる。市場では、粉末の流動性を向上させるための天然由来の流動剤が求められている。コメの副産物(籾殻、例えばRIBUS,Inc.のNu-Flow(登録商標))が市販されている。しかし、Nu-Flow(登録商標)は、流動性に乏しい噴霧乾燥粉末用の流動剤として効果的に機能するとは報告されていない。本発明は、天然由来の流動剤としての籾殻の機能性を顕著に向上させる、特定の粒子径および粒子径分布を有する籾殻粒子の組成物を記載するものである。天然由来成分を含有する流動剤の発見が望まれている。
【0003】
発明の概要
本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の少なくとも90重量%が25μm未満の直径を有する籾殻粒子が提供される。
【0004】
本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の少なくとも75重量%が15μm未満の直径を有する籾殻粒子がさらに提供される。
【0005】
また本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の少なくとも50重量%が10μm未満の直径を有する籾殻粒子も提供される。
【0006】
本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の少なくとも50重量%が10μm未満の直径を有し、該粒子の総重量の少なくとも75重量%が15μm未満の直径を有し、該粒子の総重量の少なくとも90重量%が25μm未満の直径を有する籾殻粒子が提供される。
【0007】
本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の70重量%が5μm未満から最大で約15μmまでの直径を有する籾殻粒子が提供される。
【0008】
本明細書において、籾殻粒子であって、該粒子の総重量の90重量%が5μm未満から最大で約25μmまでの直径を有する籾殻粒子がさらに提供される。
【0009】
また、本明細書において、噴霧乾燥粉末であって、フレーバーまたはフレグランスと、担体と、最大で約5%の籾殻粒子とを含み、かつ約1,000パスカル/kg以下の流動性を有する噴霧乾燥粉末も提供される。
【0010】
本明細書において、籾殻粒子の製造方法であって、該粒子の総重量の70重量%の粒子が5μm未満から最大で約15μmまでの直径を有するように籾殻を粉砕することを含む方法がさらに提供される。
【0011】
籾殻粒子の製造方法であって、該粒子の総重量の90重量%の籾殻粒子が5μm未満から最大で約25μmまでの直径を有するように籾殻を粉砕することを含む方法がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】流動剤として加えられた籾殻または二酸化ケイ素を含むオレンジの噴霧乾燥粉末のアバランシェエネルギーを示す。対照には、流動剤が加えられていない。
【
図3】72時間のボールミル処理(第1段階)後の、籾殻の電子顕微鏡写真を示す。
【
図4】144時間のボールミル処理(第2段階)後の、籾殻の電子顕微鏡写真を示す。
【
図5】ボールミル処理前ならびに72時間の第1段階のボールミル処理後および144時間の第2段階のボールミル処理後の、籾殻の粒子径分布を示す。
【
図6】流動剤として加えられた第1段階のボールミル処理済み籾殻を含むオレンジの噴霧乾燥粉末のアバランシェエネルギーを示す。対照は、ボールミル処理をしていない籾殻である。
【
図7】流動剤として加えられた第2段階のボールミル処理済みNu-Flow(登録商標)を含むオレンジの噴霧乾燥粉末のアバランシェエネルギーを示す。対照は、ボールミル処理をしていないNu-Flow(登録商標)である。
【0013】
発明の詳細な説明
発明の概要、発明を実施するための形態および特許請求の範囲について、「または」の使用は、特に断らない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は互換的であって、限定的であることを意図しない。
【0014】
種々の実施形態の説明において、「含む(comprising)」という用語が使用される場合、当業者であれば、一部の具体的な例において、実施形態が「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」の語を使用して代替的に記載され得ると理解するであろうことを、さらに理解されたい。
【0015】
一実施形態において、粒子の総重量の少なくとも50重量%が、10μm未満の直径を有し、粒子の総重量の少なくとも75重量%が、15μm未満の直径を有し、粒子の総重量の少なくとも90重量%が、25μm未満の直径を有する。
【0016】
一実施形態において、粒子の少なくとも70重量%が、8μm未満から最大で約12μmまでの直径を有し、特に約10μmの直径を有する。
【0017】
一実施形態において、粒子の少なくとも90重量%が、8μm未満から約22μmまでの直径を有し、特に約20μmの直径を有する。
【0018】
一実施形態において、ここでは、籾殻粒子の製造方法であって、該粒子の総重量の少なくとも70重量%の粒子が約8μm未満から最大で約12μmまでの直径を有するように、とりわけ約10μmの直径を有するように籾殻を粉砕することを含む方法が提供される。
【0019】
一実施形態において、ここでは、籾殻粒子の製造方法であって、該粒子の総重量の90重量%の粒子が約8μm未満から最大で約22μmまでの直径を有するように、とりわけ約20μmの直径を有するように籾殻を粉砕することを含む方法が提供される。
【0020】
一実施形態において、粒子の総重量の少なくとも40重量%の籾殻粒子が、10μm未満の直径を有する。より好ましくは、粒子の総重量の少なくとも50重量%が、10μm未満の直径を有する。より好ましくは、粒子の総重量の少なくとも60重量%が、10μm未満の直径を有する。より好ましくは、粒子の総重量の少なくとも70重量%が、10μm未満の直径を有する。さらにより好ましくは、粒子の総重量の少なくとも80重量%が、10μm未満の直径を有する。さらにより好ましくは、粒子の総重量の少なくとも90重量%が、10μm未満の直径を有する。
【0021】
一実施形態において、粉砕プロセスは、ボールミル処理を含む。
【0022】
一実施形態において、粉砕プロセスは、ジェットミル処理を含む。
【0023】
一実施形態において、特許請求の範囲に記載された粒子および方法は、フレーバーまたはフレグランス配合物の製造に有用である。
【0024】
一実施形態において、本明細書では、噴霧乾燥粉末であって、フレーバーまたはフレグランスと、担体と、最大で約5%の籾殻粒子とを含み、かつ約1,000パスカル/kg以下の流動性を有する噴霧乾燥粉末が提供される。「フレーバーまたはフレーバリング組成物」とは、ここでは、フレーバリング配合物、すなわちその感覚受容性、特にそのフレーバーおよび/または味を付与し、向上させ、または改良するために食用組成物またはチュワブル生成物に加えられることが意図された成分の特定の混合物の調製のために現在使用されている、フレーバリング成分またはフレーバリング成分、溶媒もしくは補助剤の混合物を意味する。フレーバリング成分は当業者に周知であり、その性質についてはここでは詳細には説明しない。同性質は、何ら排他的なものではないものとし、熟練のフレーバリストであれば、それらを、自身の一般知識に基づき、意図した使用または用途および達成が望まれる感覚受容効果に従って選択することができる。これらのフレーバリング成分の多くは、参考文献、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N.J., USAの参考書もしくはその最新版または同様の性質の他の著作物、例えばFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients, 1975、CRC Press or Synthetic Food Adjuncts, 1947, by M. B. Jacobs, van Nostrand Co., Inc.に列記されている。フレーバリング配合物の調製に現在使用されている溶媒および補助剤も、当技術分野において周知である。
【0025】
特定の実施形態では、フレーバーは、リモネンフレーバーである。別の実施形態では、フレーバーは、レモンフレーバーである。
【0026】
別の実施形態では、フレーバーは、ベリーフレーバーである。
【0027】
別の実施形態では、フレーバーは、ペパーミントフレーバーである。
【0028】
別の実施形態では、フレーバーは、メントールフレーバーである。
【0029】
クエン酸が主な天然由来の酸である果実から得られるまたは同果実をベースとするフレーバーには、例えば柑橘類(例えばレモン、ライム)、リモネン、ストロベリー、オレンジおよびパイナップルが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、フレーバーは、果実から直接搾られたレモン、ライムまたはオレンジの果汁である。フレーバーのさらなる実施形態には、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キーライム、シトロン、クレメンタイン、マンダリン、タンジェリンおよび任意の他の柑橘類またはそれらの変種もしくはハイブリッドから搾られた果汁または液体が含まれる。特定の実施形態では、フレーバーには、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キーライム、シトロン、クレメンタイン、マンダリン、タンジェリン、任意の他の柑橘類またはそれらの変種もしくは雑種、ザクロ、キウイフルーツ、スイカ、リンゴ、バナナ、ブルーベリー、メロン、ショウガ、ピーマン、キュウリ、パッションフルーツ、マンゴー、セイヨウナシ、トマトおよびストロベリーから搾られまたは蒸留された液体が含まれる。
【0030】
特定の実施形態では、フレーバーには、リモネンを含む組成物が含まれ、特定の実施形態では、該組成物は、リモネンをさらに含む柑橘類である。
【0031】
別の特定の実施形態では、フレーバーには、ストロベリー、オレンジ、ライム、トロピカル、ベリーミックスおよびパイナップルを含む群から選択されるフレーバーが含まれる。
【0032】
フレーバーという表現には、食品の匂いを付与しまたは改良するフレーバーのみではなく、味を付与しまたは改良する成分も含まれる。後者は、それ自体が味または匂いを必ずしも有する必要はないが、他の成分が提供する味を改良することができるものであり、例えば塩味向上成分、甘味向上成分、旨味向上成分、苦味遮断成分などである。
【0033】
さらなる実施形態では、本明細書に記載された粒子には、適切な甘味成分が含まれてもよい。特定の実施形態では、甘味成分は、糖類(例えばショ糖を含むがこれに限定されない)、ステビア成分(例えばステビオシドまたはレバウジオシドAを含むがこれらに限定されない)、シクラミン酸ナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンナトリウムおよびアセスルファムKまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
本明細書で提供される乾燥粒子は、フレーバーを、飲料、液状乳製品、調味料、焼成品、砂糖衣、ベーカリーフィリング、飴、チューインガムおよび他の食品に含ませるのに適し得る。
【0035】
飲料には、炭酸入りのソフトドリンク(コーラ、レモンライム、ルートビア、ヘビーシトラス(heavy citrus)(「デュータイプ」)、果実フレーバー付きのソーダおよびクリームソーダを含む);粉末状ソフトドリンクならびに濃縮液、例えばファウンテンシロップおよびコーディアル;コーヒーおよびコーヒー系飲料、コーヒー代用物および穀物系飲料;茶(乾燥混合生成物およびすぐ飲める茶(ハーブ系および茶葉系)を含む);果汁および野菜汁ならびに果汁フレーバー付きの飲料ならびに果汁飲料、ネクター、濃縮液、ポンチおよび「エード」;甘味付きおよびフレーバー付きの水(炭酸入りおよび無炭酸の双方);スポーツ/エネルギー/健康飲料;アルコール系飲料、加えて、アルコール不含のおよび他の低アルコール製品(ビールおよび麦芽飲料、サイダーおよびワイン(無発泡性の、発泡性の、添加物入りのワインおよびワインクーラー)を含む);加熱(煎じ出し、加熱殺菌、超高温、オーム加熱または商業的な滅菌)処理および高温充填包装処理が施された他の飲料;ならびに、ろ過または他の保存技術により製造された低温充填製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
液状乳製品には、凍結させていない、部分凍結させたおよび凍結させた液状乳製品、例えばミルク、アイスクリーム、ソルベおよびヨーグルトが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
調味料には、ケチャップ、マヨネーズ、サラダドレッシング、ウスターソース、果実風味ソース、チョコレートソース、トマトソース、チリソースおよびマスタードが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
焼成品には、ケーキ、クッキー、パン菓子、パン、ドーナッツなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
ベーカリーフィリングには、低pHまたは中性pHフィリング、高固形分の、中程度の固形分のまたは低固形分のフィリング、果実またはミルクをベースとする(プリンタイプまたはムースタイプの)フィリング、高温または低温飾付け用フィリングおよび無脂肪ないし全脂肪のフィリングが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態において、封入フレーバーは、フレーバーの最初の破裂と、それに続くフレーバーの持続的放出とを提供する。
【0041】
別の態様では、原形質分離した微生物固形物および該固形物を封入するガラス粒子は、例えば典型的な押出しプロセスにより典型的に達成されるものより、高負荷のフレーバーまたはフレグランスを含有する。
【0042】
本明細書で使用されることができる特定のフレグランスは、1-ペンチル-2-プロペニルアセテート、ヘキシルケイ皮酸アルデヒド、8,12-エポキシ-13,14,15,16-テトラノルラブダン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ-3,4-エン-1-イルアセテート、クマリン、2-ペンチル-1-シクロペンタノール、シクラメンアルデヒド、α-ダマスコン、ジヒドロミルセノール、ペンタデセノリド、メチルイオノン、Lilial(登録商標)、リナロール、シス-4-(1,1-ジメチル)-1-シクロヘキシルアセテート、3-メチル-(4,5)-シクロペンタデセン-1-オン、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、γ-メチル-ベンゼンペンタノール、ヘキシルサリチレートおよびベルトフィックスカール(Vertofix Coeur)からなる群から選択される。
【0043】
以下の実施例は説明のみを目的としたものであり、特許請求の範囲、発明の概要または本明細書に示すいずれの発明の範囲の限定をも意図するものではない。
【0044】
例
導入
RIBUS Inc.により製造されたNu-Flow(登録商標)籾殻を流動剤として評価した。Nu-Flow(登録商標)の組成を、表1に示す。ミネラル含量は、約16~22%である。Firmenichの噴霧乾燥粉末を、流動性が乏しい粉末の例(対照)として使用した。
【0045】
【0046】
以下の実験において、噴霧乾燥粉末の動的流動性を、Revolution Powder Analyzer(Mercury Scientific Inc.,Newtown)を使用して評価した。該粉末の流動性を、アバランシェエネルギーを使用して直接測定した。粉末分析器を、回転速度:0.6RPM、画像化速度:1秒あたり30フレーム、合計128回のアバランシェに設定した。
【0047】
粒子径分布を、粉末モジュールを備えたBeckman Coulter LS 13 320により調べた。
【0048】
例1
Firmenich対照粉末(「対照」)に二酸化ケイ素または籾殻を加えて混合した。得られた粉末混合物を、均一に混合されるまで手作業でブレンドした(この粉末を小型の袋の中で振った)。サンプルを採取して、流動性を分析した。
図1に、この粉末の流動性の概要を示す。対照は、1400パスカル/kgを上回るアバランシェエネルギーを有しており、これは流動性が乏しいことを示す。対照粉末に0.05%の二酸化ケイ素を加えた場合、アバランシェエネルギーは約300パスカル/kgに低下した。このことは、二酸化ケイ素が効果的な流動剤であることを示している。一方で、対照粉末にNu-Flow(登録商標)を加えた(最大4重量%)場合には、アバランシェエネルギーは1100パスカル/kg(4%添加)であった。このことは、籾殻が流動剤としては効果的に機能しないことを示している。
【0049】
例1に示すように、籾殻は、流動性に乏しい噴霧乾燥粉末用の流動剤としては効果的に機能しなかった。籾殻は、フレーバーおよびフレグランスを含む粉末用の流動剤として典型的に使用される二酸化ケイ素と比較してその粒子径が大きいために、効果的に機能しなかったものと推定された。ボールミルを使用して、この籾殻のサイズを小さくした。ボールミル処理を2段階で行った。第1段階のボールミル処理のパラメータは、以下のように提供される。
【0050】
1)1230cc容量のステンレス鋼製ミルジャー、
2)ミルジャーの回転速度:210RPM、
3)ステンレス鋼製ビーズ(W.W.Grainger Inc.):25.4mm(ボール2個)、9.5mm(ボール151個)および6.4mm(ボール99個)、組み合わせたボール一式の総容量:約100cc、
4)Nu-Flow(登録商標)粉末対ステンレス鋼製ビーズの体積比:50:50、
5)第1段階のボールミル処理時間:72時間。
【0051】
ボールミル処理により、Nu-Flow(登録商標)の粒子径および粒子径分布が明らかに小さくなった(表2、
図2および3、5を参照のこと)。
【0052】
72時間の第1段階のボールミル処理後に、籾殻の粒子径を測定した。72時間のボールミル処理後に、77.9重量%の粒子が10μm未満であることが分かり、90重量%の粒子が14.8μm未満であることが分かった。サイズが小さくなったこれらの籾殻を、流動剤として評価した。対照に、ボールミル処理済みのNu-Flow(登録商標)を、該粉末の0~2重量%の範囲の様々なレベルで加えた。得られた粉末混合物を、均一に混合されるまで手作業でブレンドした。サンプルを採取して、流動性を分析した。Nu-Flow(登録商標)籾殻の粒子径を低下させたことによって、流動剤としてのその機能性が大幅に向上したことが分かった。2%のボールミル処理済みNu-Flow(登録商標)をオレンジの噴霧乾燥粉末に加えた場合、アバランシェエネルギーは、1484パスカル/kgから678パスカル/kgに低下した。2%の元のNu-Flow(登録商標)を加えた場合、アバランシェエネルギーは、1453パスカル/kgであった。このことは、流動剤として効果的に機能させるためには、Nu-Flow(登録商標)の粒子径および粒子径分布が重要であることを明確に証明している。
【0053】
第1段階のボールミル処理後に採取したサンプルを、第2段階のボールミル処理に供した。この第2段階のボールミル処理では、装置は同一であったが、より小型のボール(直径4mmのステンレス鋼製ボール3100個)を使用した。この第2段階のボールミル処理により、Nu-Flow(登録商標)籾殻の粒子径および粒子径分布がさらに低下した(表2、
図2および4、5を参照のこと)。144時間の第2段階の粉砕後には、89.0重量%の粒子が10μm未満であり、90重量%の粒子が10.2μm未満である。
【0054】
第2段階のボールミル処理後のNu-Flow(登録商標)を、流動剤として評価した。対照に、ボールミル処理済みのNu-Flow(登録商標)を、0~1重量%の範囲の様々なレベルで加えた。得られた粉末混合物を、均一に混合されるまで手作業でブレンドした。サンプルを採取して、流動性を分析した。0.75%の第2段階のボールミル処理済みのNu-Flow(登録商標)籾殻を対照に加えた場合、アバランシェエネルギーは、1484パスカル/kgから825パスカル/kgに低下した(
図6を参照のこと)。2%のNu-Flow(登録商標)籾殻を粉砕せずに加えた場合、アバランシェエネルギーは、1453パスカル/kgであった。このことから、Nu-Flow(登録商標)は、サイズ低下後に効果的な流動剤であり得たことが確認された。
【0055】