(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ブロックマット用樹脂シート、ブロックマット、およびブロックマットの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/14 20060101AFI20230911BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
E02B3/14 301
E02D17/20 103B
(21)【出願番号】P 2019014735
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
(72)【発明者】
【氏名】東 郁乃
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 司
(72)【発明者】
【氏名】関下 啓誠
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117974(JP,A)
【文献】特開昭56-089611(JP,A)
【文献】特開2009-229694(JP,A)
【文献】特開2017-119971(JP,A)
【文献】特開2002-059523(JP,A)
【文献】特開2014-190036(JP,A)
【文献】特許第5711474(JP,B2)
【文献】特開平11-303086(JP,A)
【文献】特開2009-062674(JP,A)
【文献】特開2017-218561(JP,A)
【文献】特開2013-005623(JP,A)
【文献】特開2000-109102(JP,A)
【文献】特開2000-212345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/14
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートと、前記支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合される、ブロックマット用樹脂シートであって、
遮水性を有する基材層と、
前記基材層の一方の面に
設けられた不織布層からなり、前記支持シートとの接合強度を高める接合層と、
を備える、
ブロックマット用樹脂シート。
【請求項2】
支持シートと、
前記支持シートに接着されるブロックと、
前記支持シートの前記ブロックが接着されていない側に接合されたブロックマット用樹脂シートと、
を備え、
前記ブロックマット用樹脂シートは、
遮水性を有する基材層と、
前記基材層の一方の面に設けられ、前記支持シートとの接合強度を高める接合層と、を備え、
前記接合層が、前記支持シートに接合されており、
前記支持シート内に接着剤が浸透しており、前記接合層および前記ブロックが、前記接着剤により前記支持シートに接合されている、
ブロックマット。
【請求項3】
前記接着剤は、前記ブロック1つあたり1か所以上配置されている、
請求項2に記載のブロックマット。
【請求項4】
遮水性を有する基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた接合層とを備えるブロックマット用樹脂シートの前記接合層上に、支持シートの第一面を配置し、
前記第一面と反対側の第二面側から接着剤を供給し、
前記接着剤を供給した箇所にブロックを配置することにより、前記第二面と前記ブロックとの間、前記支持シート内、および前記第一面と前記接合層との間に前記接着剤を配置し、
前記ブロックと前記支持シートとを前記接着剤により接合するとともに、前記支持シートと前記ブロックマット用樹脂シートとを前記接着剤により接合する、
ブロックマットの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である、
請求項4に記載のブロックマットの製造方法。
【請求項6】
支持シートと、前記支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合される、ブロックマット用樹脂シートであって、
遮水性を有する基材層と、
前記基材層の一方の面に設けられ、前記ブロックがエポキシ樹脂系接着剤により前記支持シートに接合された際に前記支持シートとの接合強度を高める、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートの共重合体である接着性樹脂を主成分とする接合層と、
を備える、
ブロックマット用樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックマット用樹脂シート、ブロックマット、およびブロックマットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の護岸や造成地等の法面(のりめん)の保護のために、施工性が良く運搬容易なブロックマットが広く用いられている。
一般にブロックマットは、可撓性を有する支持シート上に多数のコンクリートブロックが接着された構成を有する。ブロックマットは、整地した斜面にクレーン等を用いて敷かれ、アンカーピン等で固定されることで、迅速かつ簡便に施工できる。
特許文献1には、支持シートの一例として、透水性および可撓性を有する土砂粒子不透過性の繊維シートからなるブロックマット用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温暖化の影響もあり、全国各地で豪雨による被害が増えている。豪雨により河川が増水すると、河岸の土砂が運び去られることにより、河岸の決壊や氾濫等が起こる。増水による決壊や氾濫等を防止する観点から、遮水性、防水性を備えたブロックマットの必要性が高まっている。
【0005】
特許文献1に記載のブロックマットは、遮水性を有さない。ブロックマットに遮水性、防水性を付与する方法として、施工時に、地面の上に塩化ビニルやエチレン酢酸ビニル等で形成された遮水シートを敷き、その上にブロックマットを施工することが知られている。
しかしながら、この方法は煩雑であるため、施工性が著しく低下する。さらに、施行後に支持シートが遮水シートからはがれてブロックマットが滑り落ちるなどの不具合が発生することがある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、遮水性が良好であり、かつ施工性のよいブロックマットを製造することができるブロックマット用樹脂シートを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、遮水性が良好であり、かつ施工性のよいブロックマットおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、支持シートと、支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合される、ブロックマット用樹脂シートである。このブロックマット用樹脂シートは、遮水性を有する基材層と、基材層の一方の面に設けられた不織布層からなり、支持シートとの接合強度を高める接合層とを備える。
【0008】
本発明の第二の態様は、支持シートと、支持シートに接着されるブロックと、支持シートの前記ブロックが接着されていない側に接合されたブロックマット用樹脂シートとを備えるブロックマットである。
ブロックマット用樹脂シートは、遮水性を有する基材層と、基材層の一方の面に設けられ、支持シートとの接合強度を高める接合層とを備える。
ブロックマット用樹脂シートの接合層は、支持シートに接合されている。支持シート内には接着剤が浸透しており、接合層およびブロックが、接着剤により支持シートに接合されている。
【0009】
本発明の第三の態様は、遮水性を有する基材層と、基材層の一方の面に設けられた接合層とを備えるブロックマット用樹脂シートの接合層上に、支持シートの第一面を配置し、第一面と反対側の第二面側から接着剤を供給し、接着剤を供給した箇所にブロックを配置することにより、第二面とブロックとの間、支持シート内、および第一面と接合層との間に接着剤を配置し、ブロックと支持シートとを接着剤により接合するとともに、支持シートとブロックマット用樹脂シートとを接着剤により接合する、ブロックマットの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遮水性が良好であり、かつ施工性のよいブロックマットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るブロックマット用樹脂シートの模式的断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るブロックマットの斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るブロックマットの製造方法の一過程を示す図である。
【
図6】同製造方法における接着剤の塗布箇所の一例を示す図である。
【
図8】同ブロックマットの変形例における部分模式断面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係るブロックマット用樹脂シートの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態について、
図1から
図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態のブロックマット用樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」と称する。)1を模式的に示す断面図である。樹脂シート1は、遮水性を有する基材層10と、基材層10の一方の面に設けられた接合層20とを備えている。
【0013】
基材層10の材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」)、エチレン酢酸ビニル(以下、「EVA」)、塩化ビニル(以下「PVC」)などを例示することができる。基材層10は、単層であってもよいし、複数の層で構成されてもよい。
【0014】
接合層20の材料としては、各種接着性樹脂を用いることができ、後述する支持シートや接着剤の材質等を考慮して適宜決定することができる。接着剤としてエポキシ樹脂系接着剤が用いられる場合は、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートの共重合体をもちいて接合層20を形成すると、極性官能基の作用により接着剤と強固に結合するため好ましい。
【0015】
樹脂シート1の製造方法には特に制限はなく、公知の各種方法を適宜選択することができる。例えば、基材層10となる樹脂フィルムと接合層20となる樹脂フィルムとを、熱ラミネーションやドライラミネーションにより貼りあわせる方法や、基材層10となる樹脂材料と、接合層20となる樹脂材料とを、共押し出しすることによりシート状に成型する方法などを例示することができる。
【0016】
樹脂シート1は、基材層10が遮水性を有することにより、全体として遮水性を発揮する。したがって、ブロックマットを製造する過程で支持シートに貼りあわせることにより遮水性を有するブロックマットを製造することができる。他の使用法として、既に完成したブロックマットの支持シートに樹脂シート1を接合することにより、ブロックマットに遮水性を付与することもできる。
【0017】
樹脂シート1の厚みは適宜設定できるが、200μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。樹脂シート1は、折り重ねられて保管・運搬等されているときや、ブロックマットが地面に設置された後などに、摩擦によりダメージを受ける。樹脂シート1が破れてしまうと、樹脂シート1自身、あるいは樹脂シート1が接合されたブロックマットの遮水性が損なわれるが、樹脂シート1の厚みが200μm以上、より好ましくは300μm以上あれば、これらの摩擦にも十分に耐えて、遮水性を好適に維持することができる。
【0018】
図2に、樹脂シート1を備えた本実施形態のブロックマット51を示す。
図3は、ブロックマット51の一部分を示す模式断面図である。
図2および
図3に示すように、ブロックマット51は、支持シート30と、支持シート30の第一面30aに接合された樹脂シート1と、支持シート30の第二面30bに接着された複数のブロック40とを備えている。
【0019】
支持シート30およびブロック40は、公知のブロックマットに用いられているものと同様である。支持シート30としては、液体透過性を有し、かつ柔軟性を有する網目状のフィルタークロス、繊維シート、多孔質樹脂シートなどの織布や不織布、樹脂製シート等を用いることができ、特許第5711474号公報に記載されたブロックマット用織布または編物シートを例示できる。ブロック40としては、例えばコンクリートブロックを用いることができる。ブロック40の形状や数について、特に制限はない。また、各々形状が異なる複数の自然石がブロック40として用いられてもよい。
例えば、縦200mm×横200mm×高さ100mmの5kg以上のブロックを1m2当り25個、125kg以上/m2となるように配置することができる。
ブロックは、ブロックマットの使用地域の状況、環境に応じてブロックの材質、大きさ、重さ、個数、平方メートル当りの荷重を適宜設定することができる。
【0020】
ブロック40および樹脂シート1は、接着剤52により支持シート30に接合されている。塗布される接着剤52は、支持シート30を透過して第一面30aと樹脂シート1との間に位置する第一部分52aと、第二面30bとブロック40との間に位置する第二部分52bと、支持シート30内に浸透して位置する第三部分52cとを有する。樹脂シート1と支持シート30とは、第一部分52aにより一体に接合されている。ブロック40と支持シート30とは、第二部分52bにより一体に接合されている。さらに、ブロック40と樹脂シート1とは、接着剤52の第一部分52a、第三部分52c、および第二部分52bにより一体に接合されるため、強固に一体化されている。その結果、ブロック40や支持シート30が樹脂シート1から剥がれ落ちることが防止される。
【0021】
本実施形態のブロックマット51の製造方法について説明する。
まず、
図4に示すように、接合層20を上側にして樹脂シート1を置く。次に、
図5に示すように、第一面30aを樹脂シート1側にして、支持シート30を樹脂シート1上に配置する。支持シート30において、第一面と第二面とで、構造等が同一である場合は、単に樹脂シート1上に支持シート30を配置すればよい。この場合は、樹脂シート1と接触している側の面を第一面30aと定義する。
【0022】
次に、第二面30b側から液状の接着剤52を供給する。第二面30b側から供給された接着剤52は、その流動性により、一部が支持シート30の繊維の間等を通過して第一面30aと接合層20との間に移動したり、概ねすべてが第二面30b上に留まったりする。
接着剤52の種類は、ブロック40や接合層20の材質を考慮して適宜決定できる。接合層20が無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートの共重合体である場合は、接着剤52としてエポキシ樹脂系接着剤を用いるとよい。
【0023】
接着剤52の供給の仕方は適宜設定できる。例えば、
図6に示すように、ブロック載置予定箇所R1内の4点に接着剤52を塗布して浸透させてもよい。塗布領域の数も4点には限られず、ブロック40の寸法等を考慮して任意に設定できる。
【0024】
次に、第二面30b上の各ブロック載置予定箇所R1に、ブロック40を配置する。第二面30b上に位置する接着剤52は、ブロック40に押されることで、一部支持シート30内に移動しつつ圧縮される。さらに、支持シート30内に移動した接着剤52や、ブロック配置前に支持シート30内に位置していた接着剤の一部が、第一面30aと接合層20との間に移動する。
ここまでの工程を経て、第二面30b側から供給された接着剤52は、
図7に示すように、第一部分52a、第二部分52b、および第三部分52cを有する状態になる。この状態において、接着剤52は、支持シート30を貫通して樹脂シート1およびブロック40と接触している。
【0025】
図7に示す状態で、接着剤52が硬化されると、支持シート30と樹脂シート1とが接合されるとともに、支持シート30とブロック40とが接合され、ブロックマット51が完成する。
接着剤52が熱硬化型等の場合は、この工程において接着剤52が加熱されてもよい。この場合、樹脂シート1を構成する樹脂材料として、接着剤の硬化温度よりも高い融点を持つ材料を選択する。例えば、40℃~50℃程度の硬化反応工程が必要な接着剤を用いる場合は、樹脂シートを構成する樹脂材料の融点を65℃以上とすればよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のブロックマットの製造方法によれば、支持シート30の第二面30b側から供給した接着剤52により、樹脂シート1とブロック40との両方を支持シート30に接合することができる。したがって、支持シート30の両面に接着剤52を塗布する必要がない。その結果、遮水性に優れた施工性のよいブロックマットを、簡便に効率よく製造することができる。
【0027】
また、本実施形態のブロックマット51によれば、樹脂シート1が接合層20を備えるため、接着剤52との接合強度が高められて支持シート30と接合される。したがって、ブロックマット51において、施工後に樹脂シート1が支持シート30からはがれることが好適に抑制され、遮水性を発揮する状態を好適に持続することができる。
【0028】
さらに、接着剤52において、支持シート30と樹脂シート1とを接合する第一部分52aと、支持シート30とブロック40とを接合する第二部分52bとが、支持シート30内に位置する第三部分52cによって接続されている。したがって、樹脂シート1とブロック40とが、互いに他方の抜け止めとして作用し、支持シート30から外れることを抑制する。したがって、施工後も、支持シート30に対する樹脂シート1およびブロック40の接合状態が好適に保持される。
【0029】
本実施形態の樹脂シート1の用途は、ブロックマットの製造に限られない。すなわち、既に完成したブロックマットの支持シートに樹脂シート1を接合することにより、ブロックマットに遮水性を付与する用途にも用いることができる。
【0030】
上述した例では、ブロック載置予定箇所R1内の複数個所に接着剤52が配置されているが、本実施形態の態様はこれには限られない。
図8に示す変形例では、接着剤52がブロック40の下面の全体と接触するように配置されている。
接着剤52は、
図8の変形例の様に配置されてもよいが、ブロック載置予定箇所R1内の複数個所に比較的小さく接着剤を供給すると、接着剤の塗布量を節約したり、ブロックマットの製造過程において接着剤が支持シート外にはみ出したりすることを抑制できる利点がある。
【0031】
次に、本発明の第二実施形態について、
図9を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと同様の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図9は、本実施形態の樹脂シート101を模式的に示す断面図である。樹脂シート101は、接合層20に代えて、不織布層120を接合層として備えている。
不織布層120は、公知の不織布で構成することができ、例えば、合成繊維を絡みあわせてシート状にした不織布を例示することができる。このほかにも、天然繊維で形成された不織布を用いることもできる。また、紙も、本発明における不織布に含まれる。
【0032】
樹脂シート101の製造方法については特に制限はない。例えば、不織布層120となる不織布の一方の面に押出ラミネートにより基材層10を積層してもよいし、不織布と基材層10となる樹脂フィルムとを熱ラミネーションやドライラミネーションにより貼りあわせてもよい。
【0033】
本実施形態の樹脂シート101によれば、上述したブロックマットの製造方法において、不織布層120の表面の微細な凹凸がアンカーとして機能する。その結果、不織布層120によって、支持シート30との接合強度が高められ、施工後の支持シートからの剥離が好適に防止される。したがって、樹脂シート101を、支持シートと接合することにより、遮水性を有するブロックマットを製造したり、既に完成したブロックマットに遮水性を付与したりすることができる。
【0034】
本発明の樹脂シートおよびブロックマットについて、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実施例および比較例の内容によって何ら制限されない。
(検討1)
検討1では、第一実施形態の樹脂シートおよびブロックマットについて、実施例および比較例を示す。
【0035】
(樹脂シートの作製)
Tダイを用いてLDPE(日本ポリエチレン社製 LC600A、融点106℃)を押出成形し、厚さ200μm、300μm、400μm、500μmの基材層を作製した。同様の手順で、EVA(住友化学社製 KA-30、融点66℃)を押出成形し、厚さ200μm、300μm、400μm、500μmの基材層を作製した。
以上の手順で、計8種類の基材層を準備した。
【0036】
各基材層に、押出ラミネートにより、厚さ30μmまたは60μmの接合層を積層した。接合層を形成する接着性樹脂として、無水マレイン酸の共重合体(三菱ケミカル社製 モディック(登録商標))およびグリシジルメタクリレートの共重合体(住友化学社製 ボンドファースト(登録商標))のいずれかを用いた。すなわち、接合層は4種類あり、8種類の基材層との組み合わせで、樹脂シート1の実施例を32種類作製した。
接合層を設けない基材層をそのまま用いて、8種類の比較例とした。
【0037】
(ブロックマットの作製)
支持シートとして、旭化成アドバンス社製のブロックマット「ソルコマット」(登録商標)の支持シートとして使用されている合成繊維製のフィルタークロス(織布タイプ)を準備した。
各実施例および比較例の樹脂シート上に支持シートを重ね置き、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤を支持シートの上面(第二面)のブロック載置予定箇所にピンポイントでブロック1個あたり4箇所に塗布した(塗布量:5g/cm2)。その後、コンクリート製のブロックを支持シートの各載置予定箇所に置き、所定個数のコンクリート製のブロックを支持シートの第二面上に載置した後、50℃の環境で2時間静置して接着剤を硬化させた。以上により、各実施例および比較例に対応した40種類のブロックマットを作製した。
【0038】
各例のブロックマットに対して、以下の手順で樹脂シートの接合強度を評価した。
(接合強度評価)
ブロックが接合されている箇所からブロックを剥離して、樹脂シートおよび支持シートのみを備える10mm×25mmの試験片を切り出した。引張試験機に各例の試験片をセットして200mm/分の速度で剥離力量を印加し、樹脂シートと支持シートとが剥離(180°剥離)した際の力量(単位:ニュートン(N)/cm)を測定した(測定機材:オートグラフAGS-X(SHIMAZU製)。
結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1における「材破」とは、支持シートと樹脂シートとが剥離する前に、支持シートまたは樹脂シートが破断したことを示し、表1の中では最も接合強度が高いことを意味する。
表1に示すように、各実施例のブロックマットでは、いずれも比較例(接着性樹脂無し)のブロックマットに比べて、少なくとも6倍以上の接合強度を示しており、接合層により支持シートと樹脂シートとが強固に接合されていることがわかる。また、接合層が厚くなるに伴い、接合強度も上昇していることもわかるが、30μmでも10N/cm程度の接合強度が得られており、実用上問題ないことが確認できた。
また、樹脂シートの厚さが400μm以上になると接合強度が若干低下する傾向がみられたが、実用上は問題なかった。
【0041】
(検討2)
検討2では、第二実施形態の樹脂シートおよびブロックマットについて、実施例および比較例を示す。
【0042】
(樹脂シートの作製)
接合層として機能する不織布層として、ポリエチレン樹脂(融点約135℃)からなる合成繊維製の不織布(旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ社 製品名「タイベック」(登録商標)、厚さ100μm)を準備した。
この不織布層に、押出ラミネートにより、検討1と同一のEVAを積層して基材層を形成し、樹脂シート101の実施例を作製した。基材層の厚さは、200μm、300μm、400μm、500μmの4種類とした。
(ブロックマットの作製)
検討1と同様の手順で、各実施例に対応した4種類のブロックマットを作製した。
(接合強度評価)
検討1と同様の手順で、各実施例のブロックマットに対し行った。
結果を表2に示す。
【0043】
【0044】
表2に示すように、接合層を不織布で構成した検討2の各例においても、検討1と概ね同様の接合強度を有することが確認された。
【0045】
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態等の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0046】
例えば、上述の例では、支持シート上にブロックを置くことにより接着剤に第二部分が生じる例を説明したが、これに代えて、充分な量の接着剤を供給することにより、ブロックを置く前に接着剤の一部を第二面上に存在させてもよい。
【0047】
また、本発明のブロックマットおよび製造方法において、接着剤の第一部分および第二部分は、必ずしも完全な層状であるとは限らない。すなわち、本発明のブロックマットおよび製造方法においては、支持シートと樹脂シートとが直接接触している部分が存在してもよいし、支持シートとブロックとが直接接触している部分が存在してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、101 ブロックマット用樹脂シート
10 基材層
20 接合層
30 支持シート
30a 第一面
30b 第二面
40 ブロック
51 ブロックマット
52 接着剤
120 不織布層(接合層)