(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/36 20200101AFI20230911BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230911BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G01R31/36
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2019017474
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸原 正博
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】豊崎 智広
(72)【発明者】
【氏名】丹野 勉
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】田邉 英治
【審判官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196985(JP,A)
【文献】特開2013-187960(JP,A)
【文献】特開2016-114469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0214347(US,A1)
【文献】特開2014-59206(JP,A)
【文献】特開2013-158087(JP,A)
【文献】特開2018-63191(JP,A)
【文献】特開平9-233720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0072948(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0306450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0317152(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0109506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36- 31/396
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池ユニットの蓄電特性を蓄電池特性テーブルとして記憶する特性記憶部と、
完放電状態から満充電状態までの充電期間において充電電圧特性を実測により取得し、満充電状態から完全放電状態までの放電期間において放電電圧特性を実測により取得し、前記充電電圧特性、前記放電電圧特性並びに前記充電電圧特性及び前記放電電圧特性の取得時の温度に基づいて
、SOC変化に対するOCV特性
を推定し、推定した前記OCV特性を含む前記蓄電特性を取得する特性取得部と、
取得した前記蓄電特性に基づいて全範囲にわたるOCV特性テーブルを含めた前記蓄電池特性テーブルを更新する特性更新部と、
前記更新された前記蓄電池特性テーブルを参照して前記蓄電池ユニットのSOCを推定する推定部と、
を備えた蓄電池管理装置。
【請求項2】
前記蓄電特性は、内部抵抗特性を含み、
前記蓄電池特性テーブルは、内部抵抗特性テーブルを含み、
前記特性更新部は、
初期OCV特性及び現在のOCV特性に基づいて利用可能なSOC範囲を特定し、前記利用可能なSOC範囲が新たなSOC範囲=0~100%となるように振り分け、前記新たなSOC範囲に対応する内部抵抗値を算出することで、前記内部抵抗特性テーブルを更新する、
請求項1記載の蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記特性取得部が取得した前記蓄電特性に基づいて、前記蓄電池特性テーブルの更新が必要か否かを判定する蓄電池特性更新判定部を備え、
前記特性更新部は、前記蓄電池特性更新判定部の判定結果に基づいて前記蓄電池特性テーブルの更新が必要と判定された場合に前記蓄電池特性テーブルの更新を行う、
請求項1又は請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記蓄電池特性更新判定部は、現在の満充電容量が規定値より小さい場合に前記蓄電池特性テーブルの更新が必要であると判定する、
請求項3記載の蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記特性取得部が取得した前記蓄電特性を提示する蓄電特性提示部と、
前記蓄電池特性テーブルの更新指示の入力を受けつける指示入力部と、を備え、
前記特性更新部は、前記更新指示の入力がなされた場合に前記蓄電池特性テーブルの更新を行う、
請求項1又は請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項6】
前記蓄電特性提示部は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末に対して前記蓄電特性を提示し、
前記指示入力部は、前記ネットワークを介して前記ユーザ端末からの前記更新指示の入力を受けつける、
請求項5記載の蓄電池管理装置。
【請求項7】
前記特性取得部は、充放電時に前記蓄電池ユニットから出力される前記蓄電池ユニットの温度を含む蓄電池情報に基づいて前記温度におけるSOC変化に対する蓄電特性を取得する、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項8】
前記蓄電特性は、満充電容量を含む、
請求項7に記載の蓄電池管理装置。
【請求項9】
前記蓄電池情報は、前記蓄電池ユニットの電流、電圧及び温度を含む、
請求項7記載の蓄電池管理装置。
【請求項10】
蓄電池ユニットの蓄電特性を蓄電池特性テーブルとして記憶する特性記憶部を備えた蓄電池管理装置で実行される方法であって、
完放電状態から満充電状態までの充電期間において充電電圧特性を実測により取得し、満充電状態から完全放電状態までの放電期間において放電電圧特性を実測により取得し、前記充電電圧特性、前記放電電圧特性並びに前記充電電圧特性及び前記放電電圧特性の取得時の温度に基づいて
、SOC変化に対するOCV特性
を推定し、推定した前記OCV特性を含む前記蓄電特性を取得する過程と、
取得した前記蓄電特性に基づいて全範囲にわたるOCV特性テーブルを含めた前記蓄電池特性テーブルを更新する過程と、
前記更新された前記蓄電池特性テーブルを参照して前記蓄電池ユニットのSOCを推定する過程と、
を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の変動抑制用途等に蓄電池システムの導入が進んでいる。こうした蓄電池システムでは15~20年に及ぶ長期運用と高い稼働率が求められる。
しかしながら、蓄電池は経時的な劣化進行が不可避であるため、蓄電池のSOC(State Of Charge:充電状態)等の状態推定に用いる蓄電池特性テーブル(OCV(Open Circuit Voltage:開回路電圧)や内部抵抗のSOC及び温度特性テーブル)は劣化に応じて更新する必要がある。
蓄電池特性テーブルの更新方法としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術は、蓄電池が劣化した際のOCV特性テーブルを複数保有し、これらを平均化することで劣化時の蓄電池特性テーブルを補正している。
しかし、個々の蓄電池の劣化は一様ではなく使用条件により様々であるため、平均化ではなく対象となる蓄電池固有の劣化特性に対応する必要がある。
【0005】
特に蓄電池特性の中でも内部抵抗は温度の条件によって大きく変化するため、運用中の実システムにおいて蓄電池使用温度の全範囲で内部抵抗の温度特性を取得することは現実的ではなかった。
そこで、本発明は、適切、かつ、容易に蓄電池特性テーブル補正して、蓄電池の劣化に対応可能な蓄電池管理装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、実施形態の蓄電池管理装置は、蓄電池ユニットの蓄電特性を蓄電池特性テーブルとして記憶する特性記憶部と、完放電状態から満充電状態までの充電期間において充電電圧特性を実測により取得し、満充電状態から完全放電状態までの放電期間において放電電圧特性を実測により取得し、前記充電電圧特性、前記放電電圧特性並びに前記充電電圧特性及び前記放電電圧特性の取得時の温度に基づいて、SOC変化に対するOCV特性を推定し、推定した前記OCV特性を含む前記蓄電特性を取得する特性取得部と、取得した蓄電特性に基づいて全範囲にわたるOCV特性テーブルを含めた蓄電池特性テーブルを更新する特性更新部と、更新された蓄電池特性テーブルを参照して蓄電池ユニットのSOCを推定する推定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の蓄電池システムの概要構成ブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
【
図3】
図3は、蓄電池ユニット11の概要構成ブロック図である。
【
図4】
図4は、蓄電池特性テーブルとしてのOCV特性テーブルの一例の説明図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の蓄電池システムの概要構成ブロック図である。
【
図6】
図6は、蓄電池特性テーブルである内部抵抗特性テーブルの更新例の説明図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態の処理フローチャートである。
【
図10】
図10は、第5実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
【
図11】
図11は、第5実施形態の処理フローチャートである。
【
図12】
図12は、特性比較問合せ画面の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の蓄電池システムの概要構成ブロック図である。
蓄電池システム10は、大別すると、複数の蓄電池モジュールを備え、負荷として機能する電力管理対象装置Xに対して電力を供給し、あるいは、電源あるいは負荷のいずれかとして機能する電力管理対象装置Xに対して蓄電あるいは電力供給を行う蓄電池ユニット11と、蓄電池ユニット11の管理を行う蓄電池管理装置12と、を備えている。
【0009】
[1]第1実施形態
図2は、第1実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
蓄電池管理装置12は、蓄電池ユニット11から取得した蓄電池情報(電流、電圧、温度等)に基づいてOCV(Open Circuit Voltage)特性を取得するOCV特性取得部21と、後述する蓄電池特性テーブルを記憶する蓄電池特性記憶部22を有し、蓄電池ユニット11から取得した蓄電池情報(電流、電圧、温度等)BTIに基づいて蓄電池特性記憶部22を参照して蓄電池ユニットのSOC(State Of Charge)を推定するSOC推定部23と、OCV特性取得部21が取得したOCV特性Socvに基づいて、蓄電池特性記憶部22に記憶されている蓄電池特性テーブルTB1を更新する蓄電池特性更新部24と、蓄電池ユニット11の充放電の制御を行う充放電制御部25と、を備えている。
【0010】
図3は、蓄電池ユニット11の概要構成ブロック図である。
蓄電池ユニット11は、直並列接続された複数の蓄電池モジュール31と、複数の蓄電池モジュール31を制御するBMU(Battery Management Unit)32と、を備えている。
【0011】
各蓄電池モジュール31は、直並列接続された複数の蓄電池セル33と、各蓄電池セル33の温度、電圧等を監視するCMU(Cell Monitoring Unit)34と、を備えている。
上記蓄電池システム10の構成において、OCV特性とは、OCVのSOC及び温度に対する特性のことである。
【0012】
図4は、蓄電池特性テーブルとしてのOCV特性テーブルの一例の説明図である。
蓄電池特性テーブルTB1としてのOCV特性テーブルは、蓄電池ユニット11の温度とSOCの組合せに応じたOCVの値が記述されている。
図4において、AA、AB、…、FH、FIは、OCVの値を示している。
例えば、SOC=50%の場合の温度21度におけるOCVの値は、「BE」である。
【0013】
したがって、OCV特性テーブルを参照することで、蓄電池ユニット11の温度と、蓄電池情報から取得されるOCVの値と、に基づいてSOC推定値が取得できる。
具体的には、
図3の例の場合、蓄電池ユニット11の温度=22℃であり、取得されるOCVの値=「CD」であれば、SOC推定値=49%となる。また、蓄電池ユニット11の温度=24℃であり、取得されるOCVの値=「EH」であれば、SOC推定値=99%となる。
【0014】
次にOCV特性の更新について説明する。
OCV特性及び満充電容量を取得するには、実測して求めることが望ましい。
そこで、OCV特性取得部21は、充放電時の蓄電池ユニット11から出力される蓄電池情報(電流、電圧、温度)BTIからSOC変化に対するOCV特性及び満充電容量を取得する。
【0015】
以下の説明においては、取得(測定)期間中における蓄電池ユニット11の温度はほぼ一定であることが望ましく、充放電制御部25からの指令で取得を行うものとする。また、初期状態において、蓄電池ユニット11は、完放電状態(放電終止電圧に到達している状態)にあるものとする。
【0016】
まず充放電制御部25は、蓄電池ユニット11において完放電状態から満充電状態(充電終止電圧に到達している状態)まで充電を行わせる。
この完放電状態から満充電状態までの充電期間において、OCV特性取得部21は、充電電圧特性(充電時SOC-閉路電圧特性)と満充電容量を取得する。
【0017】
そして、OCV特性取得部21は、蓄電池情報BTIに含まれる電圧情報から充電終止電圧に到達した状態を、当該時点(測定時点)におけるSOC100%の状態として把握する。
次に充放電制御部25は、蓄電池ユニット11において満充電状態から完全放電状態まで放電を行わせる。
【0018】
この満充電状態から完全放電状態までの放電期間において、OCV特性取得部21は、放電電圧特性(放電時SOC-閉路電圧特性)を取得する。
そして、OCV特性取得部21は、蓄電池情報BTIに含まれる電圧情報から放電終止電圧に到達した状態を当該時点(測定時点)におけるSOC0%の状態として把握する。
【0019】
続いてOCV特性取得部21は、取得時の温度、充電電圧特性及び放電電圧特性に基づいてOCV特性を推定する。具体的には、同一容量における充電電圧と放電電圧との平均値を算出するなどによりOCV特性を推定して、取得時の温度におけるOCV特性として取得することとなる。
【0020】
これにより蓄電池特性更新部24は、OCV特性取得部21が取得したOCV特性に基づいて、蓄電池特性記憶部22に記憶されている蓄電池特性テーブルTB1を更新する。
【0021】
この場合において、蓄電池特性更新部24は、OCV特性取得時における蓄電池ユニット11の温度に近い温度(例えば、更新時の温度が23度であった場合、21度~25度)における蓄電池特性テーブルTB1の一部を更新することも可能である。また、蓄電池特性テーブルTB1全体を当該OCV特性取得時における蓄電池ユニット11の温度における蓄電池特性記憶部22に記憶されている更新前後のOCV特性の変化に基づいて更新するようにしてもよい。
【0022】
これらの結果、SOC推定部23は、蓄電池ユニット11から出力される蓄電池情報BTIと、蓄電池特性記憶部22に記憶されている更新された蓄電池特性テーブルTB1を利用してSOCを推定する。
【0023】
SOCを推定する方法としては、例えば、蓄電池特性テーブルTB1を用いた蓄電池モデルに対して蓄電池情報を入力し、その時点の電圧に対応するOCVや内部抵抗を利用してSOCを推定することとなる。
【0024】
したがって、本第1実施形態によれば、蓄電池特性更新部24は、OCV特性取得部21が取得した現在のOCV特性に基づき蓄電池特性記憶部22に記憶されている初期の蓄電池特性テーブルに基づいて当該時点における蓄電池特性テーブルTB1を更新することで、蓄電池セル33の劣化の影響を抑制することが可能となる。
【0025】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、現在の特定温度におけるOCV特性に基づきOCV特性テーブルを更新し、更新された最新のOCV特性テーブルを参照することで劣化時でも高精度にSOCを推定でき、蓄電池システム10のより正確な運用が行える。
【0026】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
本第2実施形態の蓄電池システムの構成は第1実施形態と同様であるので、再び
図1を参照して説明する。
【0027】
図5は、第2実施形態の蓄電池システムの概要構成ブロック図である。
本第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、蓄電池特性記憶部に蓄電池特性テーブルTB2として内部抵抗特性テーブルを記憶する点と、蓄電池特性更新部24が実際のSOCに合わせて蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新する点である。
【0028】
次に本第2実施形態の動作について説明する。
例えば、OCV特性取得部21は、蓄電池ユニット11を構成している蓄電池セル33が劣化していない初期状態において完放電状態(放電終止電圧に到達している状態)から満充電状態(充電終止電圧に到達している状態)まで充電して充電電圧特性(充電時SOC-閉路電圧特性)と満充電容量を取得し、充電終止電圧に到達した状態が、当該時点(測定時点)におけるSOC100%の状態であると把握する。さらにOCV特性取得部21は、満充電状態から完全放電状態まで放電して放電電圧特性(放電時SOC-閉路電圧特性)を取得し、放電終止電圧に到達した状態が当該時点(測定時点)におけるSOC0%の状態であると把握する。
【0029】
上述した初期状態における充電終止電圧に到達した状態の充電容量(満充電容量)が200Ah(=SOC100%:初期状態の充電容量)であるとした場合に、測定時点において充電終止電圧に到達した状態の充電容量、すなわち、測定時点の充電容量が120Ahであったとする。
測定時点における充電容量は初期状態の充電容量の120/200=60[%]となっている。
【0030】
そこで、本第2実施形態においては、初期の蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2のSOC目盛り0%~100%の6割である60%のSOC変化幅に対してSOCが0~100%変化するとみなして、蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新することとなる。
【0031】
このように更新を行う理由は、満充電容量の減少の原因は、内部抵抗の全体的な増加によって、充電端側及び放電端側における内部抵抗に起因する電圧変化量が急激に増加し、初期のSOCで利用可能であった両端部(SOC0%側及びSOC100%側)が利用できなくなり、蓄電池ユニット11の実効的な利用可能範囲が狭まることによる。
【0032】
図6は、蓄電池特性テーブルである内部抵抗特性テーブルの更新例の説明図である。
図6の例の場合、基準SOC=50%として、初期の内部抵抗特性テーブルのSOC=20%~80%(=50±30%)をSOC=0%~100%に振り分けている。
より詳細には、温度=20℃の場合、SOC=20%における内部抵抗値ZC(Ω)がSOC=0%とされ、SOC=80%における内部抵抗値ZIがSOC=100%とされる。
【0033】
そして、
図6の左部に示した初期の蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2におけるSOC=20%~100%に相当する温度20℃における内部抵抗値ZC(Ω)~ZI(Ω)を用いて内挿演算(あるいは外挿演算)を行い、現在の内部抵抗特性テーブルのSOC=10、20、…、80、90%の内部抵抗値を算出して
図6の右部に示した様に蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新すればよい。
【0034】
この場合において、利用可能なSOCの範囲は、現在のOCV特性が初期のOCV特性に対してどのようになっているかにより異なるので、利用可能なSOCの範囲を現在のOCV特性と初期のOCV特性との比較によって振り分け方を調整しても良い。
【0035】
具体的には、初期のOCV特性と比較して、現在のOCV特性の利用可能範囲が高SOC側に偏っている場合はSOC50%以上を基準(センター位置)として振り分ければよい。
具体的には、例えば、基準SOC=60%として、初期OCV特性のSOC=30%~90%(=60±30%)をSOC=0%~100%に振り分ければよい。
【0036】
また、初期のOCV特性と比較して、現在のOCV特性の利用可能範囲が低SOC側に偏っている場合はSOC50%未満を基準(センター位置)として振り分ければよい。
具体的には、例えば、基準SOC=45%として、初期OCV特性のSOC=15%~75%(=45%±30%)をSOC=0%~100%に振り分ければよい。
【0037】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、現在のOCV特性及び満充電容量に基づき蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新し、更新した蓄電池特性テーブルTB2において、温度と内部抵抗をパラメータとしてSOCを推定することで、蓄電池セル33の劣化時においても、より高精度にSOCを推定できる。
【0038】
[3]第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。
上記第2実施形態においては、内部抵抗特性テーブルとしての蓄電池特性テーブルTB2を更新するに際し、SOC範囲の更新を行い、内部抵抗値はそのまま初期状態の値を用いる構成としていたが、本第3実施形態は、実測あるいは推定した内部抵抗値を用いてさらに蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を補正する場合の実施形態である。
【0039】
図7は、第3実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
図7において、
図5の第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付すものとする。
本第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、蓄電池ユニット11から出力される蓄電池情報(電流、電圧、温度)BTIから現在の内部抵抗特性Sirを取得する内部抵抗特性取得部26と、取得した内部抵抗特性と内部抵抗特性の初期値との関係から補正係数を算出し内部抵抗特性テーブルTB2を更新する蓄電池特性更新部27と、を備えた点である。
【0040】
上記構成において、内部抵抗特性取得部26は、蓄電池システムから出力される蓄電池情報BTIから現在の内部抵抗特性を取得あるいは推定する。ここで、内部抵抗特性とは、内部抵抗のSOC及び温度に対する特性のことである。
【0041】
現在の内部抵抗特性を取得する方法は実測して求めることが望ましいが、運用中の実システムにおいて蓄電池使用温度の全範囲で内部抵抗の温度特性を取得することは困難であるので、ここでは任意のSOC及び温度における内部抵抗値を取得するものとする。なお、システム上あるいは運用上の制約などにより実測が難しい場合は、推定して求めても良い。
【0042】
蓄電池特性更新部27は、まずOCV特性取得部21から取得した現在のOCV特性及び満充電容量に基づき蓄電池特性記憶部に記憶された蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)TB1及び蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新する。
次に、蓄電池特性更新部27は、内部抵抗特性取得部26から取得した任意のSOC及び温度における内部抵抗とその初期値との比率を補正係数αとして算出する。
【0043】
一般的に、蓄電池が劣化した場合は内部抵抗が増加するため、初期値との比率である補正係数αは1以上の値となる。
そして、第2実施形態と同様の手法で得られた更新後の蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2のすべての値に対して補正係数αを乗じることで蓄電池特性記憶部22に記憶された蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2の最終的な更新を行う。
【0044】
より詳細には、補正係数をα、初期の内部抵抗をRBOL(SOC,Temp)とした場合、更新後の内部抵抗RMOL(SOC,Temp)は、次式により算出できる。
RMOL(SOC,Temp)=α×RBOL(SOC,Temp)
【0045】
以上の説明のように、本第3実施形態によれば、現在のOCV特性及び満充電容量と内部抵抗特性に基づいて蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)TB1と蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2を更新し、それを利用することで劣化時でもより高精度にSOCを推定できる。
【0046】
[4]第4実施形態
上記各実施形態においては、蓄電池特性テーブルの更新に制限を設けていなかったが、本第4実施形態は、蓄電池特性テーブルの更新に制限を設ける場合の実施形態である。
【0047】
図8は、第4実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
本第4実施形態が
図7に示した第3実施形態と異なる点は、OCV特性取得部21と内部抵抗特性取得部26とから取得した満充電容量を含む現在の蓄電池特性と蓄電池特性記憶部22に記憶された蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)TB1と蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2とを比較し、その変化量が許容範囲を逸脱しているか否かを判定する蓄電池特性更新判定部35と、蓄電池特性更新判定部35の判定結果にもとづいて変化量が許容範囲を逸脱した場合に蓄電池特性テーブルを更新する蓄電池特性更新部36と、を備えた点である。
【0048】
また、蓄電池特性更新判定部35は、現在の満充電容量が規定の閾値より小さい場合に蓄電池特性記憶部22に記憶された蓄電池特性テーブルTB1、TB2に対する蓄電池特性の変化量が許容範囲を逸脱していると判定して、蓄電池特性更新部36により蓄電池特性テーブルTB1、TB2を更新する。
【0049】
次に第4実施形態の動作についてより詳細に説明する。
図9は、第4実施形態の処理フローチャートである。
まず、OCV特性取得部21は、蓄電池ユニット11が出力した電圧、電流、温度等の蓄電池情報BTIに基づいて、OCV特性を取得して蓄電池特性更新判定部35に出力し、内部抵抗特性取得部26は、蓄電池情報BTIに基づいて内部抵抗特性を取得して蓄電池特性更新判定部35に出力する(ステップS11)。
【0050】
蓄電池特性更新判定部35は、OCV特性取得部21及び内部抵抗特性取得部26から取得した満充電容量を含む現在の蓄電池特性と、蓄電池特性記憶部22に記憶された蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)TB1と蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2に対応する蓄電池特性と、を比較し(ステップS12)、その変化量が許容範囲を逸脱しているか否かを判定する。また、蓄電池特性更新判定部35は、現在の満充電容量が規定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS13)。
【0051】
そして、蓄電池特性更新判定部35は、現在の蓄電池特性を蓄電池特性記憶部22に記憶されている蓄電池特性と比較した変化量が許容範囲を逸脱している場合、あるいは、現在の満充電容量が規定の閾値を超えた場合には(ステップS13;Yes)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を更新する旨の判定を行う。
この結果、蓄電池特性更新部36は、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を更新する(ステップS14)。
【0052】
一方、蓄電池特性更新判定部35は、現在の蓄電池特性を蓄電池特性記憶部22に記憶されている蓄電池特性と比較した変化量が許容範囲内であり、かつ、現在の満充電容量が規定の閾値以下の場合には(ステップS13;No)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2をそのまま維持する旨の判定を行い、処理を終了する。
【0053】
したがって、現在の蓄電池特性を蓄電池特性記憶部22に記憶されている蓄電池特性と比較した変化量が許容範囲内であり、かつ、現在の満充電容量が規定の閾値以下である場合には、当該時点における蓄電池特性テーブルTB1、TB2は実体の蓄電池特性とかけ離れていないとして蓄電池特性テーブルTB1、TB2が更新されることはなく、制御基準が不連続となり、蓄電池システム運用の安定性が損なわれるのを回避できる。
【0054】
さらに、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要とされる場合には、確実に更新でき、更新後の蓄電池特性テーブルTB1、TB2を利用することにより蓄電池セル33の劣化時でもより高精度にSOCを推定できる。
【0055】
[5]第5実施形態
上記各実施形態は、蓄電池システムが自動的に蓄電池特性テーブルを更新する場合のものであったが、本実施形態は、蓄電池システムから出力される蓄電池情報(電流、電圧、温度)BTIをリモートで(遠隔で)収集しユーザ(オペレータ)に現在の蓄電池特性を提示することで蓄電池特性テーブルを更新するか否かを判定させ、更新の指示がなされた場合に蓄電池特性テーブルを更新する実施形態である。
【0056】
図10は、第5実施形態の蓄電池システムの要部概要構成ブロック図である。
図10において、
図8と同様の部分には同一の符号を付すものとする。
本第5実施形態が、
図8の第4実施形態と異なる点は、OCV特性取得部21と内部抵抗特性取得部26とから取得した満充電容量を含む現在の蓄電池特性を、ネットワーク41を介して通信可能に接続されたユーザ端末42に対し提示する蓄電池特性提示部37と、ユーザ端末42からネットワーク41を介して入力された更新指示入力を受けつける指示入力部38と、指示入力部38を介して入力されるユーザ端末42からの更新指示に基づいて蓄電池特性テーブルを更新する蓄電池特性更新部39と、を備えた点である。
【0057】
図11は、第5実施形態の処理フローチャートである。
まず、OCV特性取得部21は、蓄電池ユニット11が出力した電圧、電流、温度等の蓄電池情報BTIに基づいて、OCV特性を取得して蓄電池特性提示部37に出力し、内部抵抗特性取得部26は、蓄電池情報BTIに基づいて内部抵抗特性を取得して蓄電池特性提示部37に出力する(ステップS21)。
【0058】
蓄電池特性提示部37は、OCV特性取得部21及び内部抵抗特性取得部26から取得した満充電容量を含む現在の蓄電池特性をネットワーク41を介して通信可能に接続されたユーザ端末42に対し、現在の蓄電池特性を提示する。
【0059】
これによりユーザ端末42の表示画面には、蓄電池特性記憶部22に記憶された蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)TB1と蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)TB2に対応する蓄電池特性を更新するか否かの入力を促すための特性比較問合せ画面を表示する(ステップS22)。
したがって、ユーザ端末42のユーザは、表示された特性比較問合せ画面に基づいて判断を行うこととなる。
【0060】
図12は、特性比較問合せ画面の一例の説明図である。
図12(A)は、蓄電池特性として蓄電池の容量について特性比較問合せを行っている特性比較問合せ画面の一例である。
ユーザ端末42の表示画面に表示される特性比較問合せ画面51は、蓄電池システム10の初期容量を表示する初期容量表示部52と、現在の容量を表示する現在容量表示部53と、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新の指示を行う更新指示ボタン54と、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新の指示を行わない(キャンセルする)非更新指示ボタン55と、を備えている。
【0061】
したがって、ユーザは、初期容量表示部52に表示された蓄電池システム10の初期容量と、現在容量表示部53に表示された蓄電池システム10の現在容量と、を比較し、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要と判断した場合には、更新指示ボタン54の操作を行う(タッチパネルであれば、タッチ操作を行い、ディスプレイであればポインティングデバイス等による操作を行う)ことで、ネットワーク41及び指示入力部38を介して蓄電池特性更新部39に対し、指示入力として更新指示を行う。
【0062】
これにより蓄電池特性更新部39は、更新指示がなされたか否かを判別し(ステップS23)、更新指示がなされたと判別して(ステップS23;Yes)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を更新する(ステップS24)。
【0063】
一方、ユーザは、初期容量表示部52に表示された蓄電池システム10の初期容量と、現在容量表示部53に表示された蓄電池システム10の現在容量と、を比較し、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要無いと判断した場合には、非更新指示ボタン55の操作を行うことで、ネットワーク41及び指示入力部38を介して蓄電池特性更新部36に対し、指示入力として非更新指示を行う。
【0064】
これにより蓄電池特性更新部39は、更新指示がなされたか否かを判別し(ステップS23)、更新指示がなされなかったと判別して(ステップS23;No)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を維持したままとする。
【0065】
図12(B)は、蓄電池特性として内部抵抗値について特性比較問合せを行っている特性比較問合せ画面の一例である。
ユーザ端末42の表示画面に表示される特性比較問合せ画面61は、蓄電池システム10の初期内部抵抗値を表示する初期内部抵抗値表示部62と、現在の内部抵抗値を表示する現在内部抵抗値表示部63と、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新の指示を行う更新指示ボタン64と、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新の指示を行わない(キャンセルする)非更新指示ボタン65と、を備えている。
【0066】
したがって、ユーザは、初期内部抵抗値表示部62に表示された蓄電池システム10の初期内部抵抗値と、現在内部抵抗値表示部63に表示された蓄電池システム10の現在の内部抵抗値と、を比較し、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要と判断した場合には、更新指示ボタン64の操作を行うことで、ネットワーク41及び指示入力部38を介して蓄電池特性更新部39に対し、指示入力として更新指示を行う。
【0067】
これにより蓄電池特性更新部39は、更新指示がなされたか否かを判別し(ステップS23)、更新指示がなされたと判別して(ステップS23;Yes)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を更新する(ステップS24)。
【0068】
一方、ユーザは、初期内部抵抗値表示部62に表示された蓄電池システム10の初期内部抵抗値と、現在内部抵抗値表示部63に表示された蓄電池システム10の現在の内部抵抗値と、を比較し、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要無いと判断した場合には、非更新指示ボタン65の操作を行うことで、ネットワーク41及び指示入力部38を介して蓄電池特性更新部39に対し、指示入力として非更新指示を行う。
【0069】
これにより蓄電池特性更新部39は、更新指示がなされたか否かを判別し(ステップS23)、更新指示がなされなかったと判別して(ステップS23;No)、蓄電池特性テーブルTB1、TB2を維持したままとする。
【0070】
したがって、ユーザは、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新を行った方が蓄電池システムの運用上好ましい判断される場合に、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新を行うことができ、制御基準が不連続となり、蓄電池システム運用の安定性が損なわれるのを回避できる。
【0071】
さらに、蓄電池特性テーブルTB1、TB2の更新が必要とされる場合には、確実に更新でき、更新後の蓄電池特性テーブルTB1、TB2を利用することにより蓄電池セル33の劣化時でもより高精度にSOCを推定できる。
さらにユーザは、蓄電池システム10の設置現場から離れた場所にいても、現在の蓄電池特性を把握できる、蓄電池特性テーブルの更新をより確実なタイミングで実行することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 蓄電池システム
11 蓄電池ユニット
12 蓄電池管理装置
21 OCV特性取得部
22 蓄電池特性記憶部
23 SOC推定部
24 蓄電池特性更新部
25 充放電制御部
26 内部抵抗特性取得部
27 蓄電池特性更新部
31 蓄電池モジュール
32 BMU
33 蓄電池セル
35 蓄電池特性更新判定部
36 蓄電池特性更新部
37 蓄電池特性提示部
38 指示入力部
39 蓄電池特性更新部
41 ネットワーク
42 ユーザ端末
51 特性比較問合せ画面
52 初期容量表示部
53 現在容量表示部
54 更新指示ボタン
55 非更新指示ボタン
61 特性比較問合せ画面
62 初期内部抵抗値表示部
63 現在内部抵抗値表示部
64 更新指示ボタン
65 非更新指示ボタン
BTI 蓄電池情報
Sir 内部抵抗特性
Socv OCV特性
TB1 蓄電池特性テーブル(OCV特性テーブル)
TB2 蓄電池特性テーブル(内部抵抗特性テーブル)
X 電力管理対象装置。