(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/363 20060101AFI20230911BHJP
F16K 31/40 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
F16K31/363
F16K31/40 A
(21)【出願番号】P 2019023927
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕平
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035884(JP,A)
【文献】実開昭57-093679(JP,U)
【文献】特開2010-144928(JP,A)
【文献】実開昭61-054567(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール収容孔を有するスプール収容ブロックと、
スプール本体部、前記スプール本体部の径よりも大きな径を有するスプール大径部、並びに、軸線方向の一端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記軸線方向の他端側となる部分及び前記スプール収容ブロックで少なくとも一部が区画される室に通じる流路、を有し、前記スプール収容孔内に移動可能に収容されるスプールと、
圧力源流路に通じる圧力源ポートを有するとともに、前記スプールを収容するケーシングと、
前記ケーシングに収容されるとともに、前記圧力源ポートを閉鎖及び開放するポペットと、
を備えた、流量制御弁。
【請求項2】
前記スプール本体部は、前記一端に位置する一端面を有し、
前記スプール大径部は、前記他端側を向く作用面を有し、
前記一端面の面積と前記作用面の面積とは同一である、請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記スプール大径部は、前記スプールの前記一端及び前記他端から離間した中間部に位置する、請求項1又は2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記スプール大径部は、前記一端側を向く他の作用面を有し、
前記スプールは、前記スプールの他端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記一端側となる部分及び前記スプール収容ブロックの間に位置する他の室に通じる他の流路を有する、請求項1~3のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記スプールは、ソレノイドの駆動力で前記スプール収容孔内を移動する、請求項1~4のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記ポペットは、前記ポペットの先端面に開口する絞り部を有する、請求項1~5のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項7】
前記スプール収容ブロックと前記ポペットとの間に形成された圧力室を有し、
前記圧力源ポート及び前記絞り部を介して、前記圧力源流路から前記圧力室に油が流れ込む、請求項6に記載の流量制御弁。
【請求項8】
前記スプールと前記ポペットとの間に配置されたスプール押付けスプリングを有する、請求項1~7のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項9】
前記スプール収容ブロックと前記ポペットとの間に配置されたポペット押付けスプリングを有する、請求項1~8のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項10】
スプール収容孔を有するスプール収容ブロックと、
軸線方向の一端に位置する一端面を有するスプール本体部、前記スプール本体部の径よりも大きな径を有して前記一端及び前記軸線方向の他端から離間した中間部に位置し、前記他端側を向く作用面及び前記一端側を向く他の作用面を有し、前記一端面の面積と前記作用面の面積とが同一であるスプール大径部、並びに、前記一端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記他端側となる部分及び前記スプール収容ブロックで少なくとも一部が区画される室に通じる流路並びに前記他端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記一端側となる部分及び前記スプール収容ブロックで少なくとも一部が区画される他の室に通じる他の流路、を有し、ソレノイドの駆動力で前記スプール収容孔内を移動可能であるスプールと、
圧力源流路に通じる圧力源ポートを有するとともに、前記スプールを収容するケーシングと、
前記ケーシングに収容されるとともに、前記圧力源ポートを閉鎖及び開放するポペットと、
を備えた、流量制御弁。
【請求項11】
軸線方向に沿った一側及び他側に移動可能に配置されたスプール本体部及び前記スプール本体部の径よりも大きな径を有するスプール大径部を有するスプールと、
前記スプール本体部の前記一側の端部で少なくとも一部が区画され、前記スプール本体部を前記一側から前記他側へ向けて押す押圧力を生じる圧力室と、
前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記
他側となる部分で少なくとも一部が区画され、前記スプール大径部を前記他側から前記一側へ向けて押し、前記圧力室による押圧力の少なくとも一部を打ち消す他の押圧力を生じる室と、
ソレノイドの駆動力を受けて前記スプール本体部が前記他側から前記一側へ移動したときに、前記圧力室から流量が制御されるべき制御流路へ向かう油の流量を制御可能な圧力室連絡流路と、
圧力源流路に通じる圧力源ポートを有するとともに、前記スプールを収容するケーシングと、
前記ケーシングに収容されるとともに、前記圧力源ポートを閉鎖及び開放するポペットと、
を備えた流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れる流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の流体回路において、当該流体回路中を流れる流体の流量を制御する流量制御弁が用いられている。例えば、油圧を用いて駆動される建設車両等の作業機械においては、作業機械の各油圧アクチュエータへ作動油を供給するための油圧回路や、方向切換弁等の油圧装置を動作させるパイロット圧を供給するための油圧回路に、当該油圧回路中を流れる油の流量を制御する流量制御弁が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ソレノイドアクチュエータ、パイロット体及びパイロットポペットを備えた電気油圧パイロット弁が開示されている。この電気油圧パイロット弁では、第1制御チャンバの内圧は、パイロットポペット内に設けられた制御路を通じてパイロット制御チャンバに通じる。このとき、パイロット体の先端はパイロットピストン内に設けられたパイロット通路を閉じて、パイロット制御チャンバと出口間における液体の流れを遮断する。閉じ込められた圧力は、パイロットポペットをパイロットポペットシートに押し付ける。これにより、電気油圧パイロット弁の入口と出口間の流れが遮断される。ソレノイドアクチュエータが励起されると、パイロット体が上方に移動してパイロット通路が開くとともに、パイロット制御チャンバ内の圧力が放出路へ放出される。パイロット制御チャンバとパイロット通路間の開口が予め定められたサイズに達すると、パイロットポペットはパイロット体を追って移動する。この動きはパイロット体の先端をパイロット通路の方に戻して、パイロット通路を通る流れを減少させる。パイロット通路の流れが平衡状態となると、パイロットポペットはその動きを止めて開放位置を維持する。
【0004】
このような電気油圧パイロット弁によれば、ソレノイドアクチュエータに印加する電流を選択的に制御することによって、電気油圧パイロット弁を通過する液体の流れを比例的に制御することができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された制御弁では、パイロット体はその先端に、パイロット制御チャンバ内の圧力、すなわち制御路を介して通じる第1制御チャンバの内圧、を受ける。第1制御チャンバの内圧は比較的高くなっていることから、パイロット体を第1制御チャンバの内圧に抗して移動させるためには、大きな力を必要とする。したがって、パイロット体を駆動する駆動力を発生するためのソレノイドアクチュエータとして、大きな駆動力を発生させることが可能なソレノイドアクチュエータを用いる必要があった。この場合、電気油圧パイロット弁全体が大型化するとともに、コストも増大する問題があった。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、比較的小さな力で動作させることが可能な流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による流量制御弁は、
スプール収容孔を有するスプール収容ブロックと、
スプール本体部、前記スプール本体部の径よりも大きな径を有するスプール大径部、並びに、軸線方向の一端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記軸線方向の他端側となる部分及び前記スプール収容ブロックの間に位置する室に通じる流路、を有し、前記スプール収容孔内に移動可能に収容されるスプールと、
を備える。
【0009】
本発明による流量制御弁において、
前記スプール本体部は、前記一端に位置する一端面を有し、
前記スプール大径部は、前記他端側を向く作用面を有し、
前記一端面の面積と前記作用面の面積とは同一であってもよい。
【0010】
本発明による流量制御弁において、
前記スプール大径部は、前記スプールの前記一端及び前記他端から離間した中間部に位置してもよい。
【0011】
本発明による流量制御弁において、
前記スプール大径部は、前記一端側を向く他の作用面を有し、
前記スプールは、前記スプールの他端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記一端側となる部分及び前記スプール収容ブロックの間に位置する他の室に通じる他の流路を有してもよい。
【0012】
本発明による流量制御弁において、
前記スプールは、ソレノイドの駆動力で前記スプール収容孔内を移動してもよい。
【0013】
本発明による流量制御弁は、
スプール収容孔を有するスプール収容ブロックと、
軸線方向の一端に位置する一端面を有するスプール本体部、前記スプール本体部の径よりも大きな径を有して前記一端及び前記軸線方向の他端から離間した中間部に位置し、前記他端側を向く作用面及び前記一端側を向く他の作用面を有し、前記一端面の面積と前記作用面の面積とが同一であるスプール大径部、並びに、前記一端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記他端側となる部分及び前記スプール収容ブロックの間に位置する室に通じる流路並びに前記他端側に開口するとともに、前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記一端側となる部分及び前記スプール収容ブロックの間に位置する他の室に通じる他の流路、を有し、ソレノイドの駆動力で前記スプール収容孔内を移動可能であるスプールと、
を備える。
【0014】
本発明による流量制御弁は、
軸線方向に沿った一側及び他側に移動可能に配置されたスプール本体部及び前記スプール本体部の径よりも大きな径を有するスプール大径部を有するスプールと、
前記スプール本体部の前記一側の端部で少なくとも一部が区画され、前記スプール本体部を前記一側から前記他側へ向けて押す押圧力を生じる圧力室と、
前記スプール本体部の前記スプール大径部よりも前記他端側となる部分で少なくとも一部が区画され、前記スプール大径部を前記他側から前記一側へ向けて押し、前記圧力室による押圧力の少なくとも一部を打ち消す他の押圧力を生じる室と、
ソレノイドの駆動力を受けて前記スプール本体部が前記他側から前記一側へ移動したときに、前記圧力室から流量が制御されるべき制御流路へ向かう油の流量を制御可能な圧力室連絡流路と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的小さな力で動作させることが可能な流量制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、被取付部材に取り付けられた状態で流量制御弁を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のIIが付された部分を拡大して示す図であり、閉鎖状態において流量制御弁を示す。
【
図3】
図3は、
図2に対応する図であり、流通状態において流量制御弁を示す。
【
図4】
図4は、流量制御弁のスプールを示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す断面と直交するスプールの断面を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
図1~
図7は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。
図1は、被取付部材90に取り付けられた状態で流量制御弁10を示す断面図であり、
図2及び
図3は、
図1のIIが付された部分を拡大して示す図である。
図2では、流量制御弁10が閉鎖状態において示されており、
図3では、流量制御弁10が流通状態において示されている。
【0020】
被取付部材90は、流量制御弁10が取り付けられる部材である。被取付部材90の本体部91には、流量制御弁10が取り付けられる流量制御弁取付穴92が設けられている。流量制御弁取付穴92は、軸線方向daに沿って延びており、軸線方向daに直交する断面において略円形形状を有している。流量制御弁取付穴92は、流量制御弁取付穴92の先端側(一側)から順に第1内周溝93及び第2内周溝94を有している。第1内周溝93及び第2内周溝94は、それぞれ流量制御弁取付穴92の周方向に沿って環状に形成されている。
図1に示された例では、本体部91には、流量制御弁取付穴92の先端部に通じる圧力源流路95と、第1内周溝93に通じる制御流路96と、第2内周溝94に通じるドレン流路97と、が設けられている。圧力源流路95は図示しない圧力源に通じており、制御流路96は図示しない油圧装置に通じている。流量制御弁10が流量制御弁取付穴92に取り付けられた状態において、圧力源流路95から制御流路96へ流れる流体、とりわけ油、の流量が、流量制御弁10により制御される。ドレン流路97は、図示しないタンクに通じており、ドレン流路97に流入した油はタンクに排出される。
【0021】
流量制御弁10は、スプール収容孔31を有するスプール収容ブロック30と、スプール収容ブロック30内に移動可能に収容されたスプール40と、を備える。本実施の形態の流量制御弁10は、収容穴21を有するケーシング20と、ケーシング20に収容されたポペット60、スプール押付けスプリング12及びポペット押付けスプリング14と、をさらに備えている。
【0022】
なお、本明細書において、「軸線方向(da)」とは、スプール40の中心軸線Aが延びる方向(スプール40の長手方向)を指す。また、軸線方向daに沿った流量制御弁10の先端側(圧力源流路95に通じる側、
図1~
図5では下側)を「一側」とし、軸線方向daに沿った流量制御弁10の基端側(駆動装置80に接続される側、
図1~
図5では上側)を「他側」とする。
【0023】
ケーシング20は、スプール収容ブロック30の少なくとも一部、スプール40、ポペット60、スプール押付けスプリング12及びポペット押付けスプリング14を収容する収容穴21を有している。ケーシング20は、流量制御弁10が流量制御弁取付穴92に取り付けられた状態において、圧力源流路95に通じる圧力源ポート22と、制御流路96に通じる制御ポート23と、を有している。圧力源ポート22は、収容穴21の先端部(一側端部)から軸線方向daに沿って延びている。制御流路96は、収容穴21の側面から軸線方向daに直交する径方向に延びている。図示された例では、ケーシング20は、スプール40の中心軸線A周りの周方向に沿って配列された複数の制御ポート23を有している。収容穴21は、制御ポート23に通じる内周溝24を有している。内周溝24は、収容穴21の周方向に沿って環状に形成されている。圧力源ポート22の収容穴21側(他側)の開口部には、ポペット60のシート面63がシートするシート部25が設けられている。図示された例では、シート部25は、圧力源ポート22と内周溝24との接続部に位置している。シート部25は、軸線方向及び径方向の両方に対して傾斜した方向に延びる面で構成されており、収容穴21の周方向に沿って環状に形成されている。ケーシング20は、収容穴21とケーシング20の外面とを通じさせる第1貫通孔26及び第2貫通孔27を有している。第1貫通孔26は、流量制御弁取付穴92の内面とケーシング20の外面との間に形成される隙間16を介して収容穴21と内周溝24とを通じさせる。第2貫通孔27は、第1貫通孔26に対して他側に位置し、収容穴21と第2内周溝94とを通じさせる。
【0024】
スプール収容ブロック30は、軸線方向に延びてスプール40を収容するスプール収容孔31を有している。スプール収容孔31は、軸線方向daに沿ってスプール収容ブロック30を貫通している。スプール収容ブロック30の一側の先端には、スプリング支持面32が形成されている。スプリング支持面32は、ポペット押付けスプリング14を支持するとともに、ポペット押付けスプリング14からの押付力を受ける。図示された例では、スプール収容ブロック30は、第1ブロック30aと、第1ブロック30aの他側に位置する第2ブロック30bとで構成されている。スプール収容孔31は、第1ブロック30a及び第2ブロック30bにわたって設けられている。図示された例では、スプール収容孔31は、第1ブロック30aに設けられた第1小径孔31a及び大径孔31bと、第2ブロック30bに設けられた第2小径孔31cとで構成されている。第1小径孔31a、大径孔31b及び第2小径孔31cは、それぞれ軸線方向に延びており、第1小径孔31a、大径孔31b及び第2小径孔31cの中心軸線は互いに一致している。また、第1小径孔31a、大径孔31b及び第2小径孔31cの中心軸線は、スプール40の中心軸線Aと一致している。第1小径孔31a、大径孔31b及び第2小径孔31cは、それぞれ中心軸線と直交する断面において円形形状を有している。第1小径孔31aは大径孔31bよりも一側に位置し、大径孔31bの直径よりも小さい直径を有している。第2小径孔31cは大径孔31bよりも他側に位置し、大径孔31bの直径よりも小さい直径を有している。第1小径孔31aの直径と第2小径孔31cの直径との間の大小関係は特に限定されないが、図示された例では第1小径孔31aの直径は第2小径孔31cの直径と等しい。第1小径孔31a及び第2小径孔31cの直径は、スプール40のスプール本体部46の直径に対応しており、大径孔31bの直径は、スプール40のスプール大径部50の直径に対応している。
【0025】
第1小径孔31aには、第1内周溝33が設けられている。また、第1小径孔31aと大径孔31bとの間には、第2内周溝35が設けられている。第1内周溝33及び第2内周溝35は、それぞれスプール収容孔31の周方向に沿って環状に形成されている。スプール収容孔31の外側面には、ケーシング20の第1貫通孔26に通じる第1外周溝36と、ケーシング20の第2貫通孔27に通じる第2外周溝37とが設けられている。スプール収容ブロック30(第1ブロック30a)は、径方向に延び第1内周溝33と第1外周溝36とを通じさせる第1貫通孔38と、径方向に延び第2内周溝35と第2外周溝37とを通じさせる第2貫通孔39とを有している。図示された例では、スプール収容ブロック30(第1ブロック30a)は、周方向に沿って配列された複数の第1貫通孔38及び複数の第2貫通孔39を有している。
【0026】
流量制御弁10が被取付部材90の流量制御弁取付穴92に取り付けられた状態において、ケーシング20は流量制御弁取付穴92に対してねじ結合等により固定され、スプール収容ブロック30はケーシング20に対してねじ結合等により固定される。したがって、流量制御弁10が被取付部材90の流量制御弁取付穴92に取り付けられた状態において、ケーシング20及びスプール収容ブロック30は、被取付部材90に対して移動しない。
【0027】
図4は、スプール40を示す縦断面図であり、
図5は、
図4に示す断面と直交するスプール40の断面を示す縦断面図である。スプール40は、長手方向に延びる中心軸線Aを有し、スプール収容ブロック30のスプール収容孔31内に、軸線方向daに沿って移動可能に収容されている。スプール40の中心軸線Aは、軸線方向daに沿って延びている。スプール40は、軸線方向daに沿った一端(一側端部)に位置する一端面41と、他端(他側端部)に位置する他端面44とを有している。すなわち、一端面41はスプール40の一側を向く面であり、他端面44は、スプール40の他側を向く面である。一端面41は、一側に向かって突出した突出面42と、突出面42の周囲に位置するスプリング支持面43を含んでいる。スプリング支持面43は、スプール押付けスプリング12を支持するとともに、スプール押付けスプリング12からの押付力を受ける。他端面44は、後述の第2連絡流路55に通じる切欠き部45を有している。切欠き部45は、後述の駆動装置80の駆動ロッド82が他端面44に当接した際に、駆動ロッド82が第2連絡流路55の開口部を閉塞しないように設けられる。
【0028】
スプール40は、スプール本体部46と、スプール本体部46の径よりも大きな径を有するスプール大径部50とを有する。図示された例では、スプール大径部50は、スプール40の一端及び他端から離間した中間部に位置している。スプール本体部46は、スプール大径部50の一側に位置する外周溝47を有している。外周溝47は、スプール本体部46の周方向に沿って環状に形成されている。外周溝47の一端側の端部には、軸線方向daに沿ってスプール本体部46を切り欠いた切欠き部48が形成されている。本明細書では、スプール40の一側の端部を「一端」、他側の端部を「他端」と呼ぶ。これにともなって、スプール40においては一側を「一端側」、他側を「他端側」と呼ぶこともある。
【0029】
スプール大径部50は、他端側を向く第1作用面(作用面)50aと、一端側を向く第2作用面(他の作用面)50bと、を有する。第1作用面50aは、軸線方向daに沿って延びるスプール大径部50の外面の他端側縁部と、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分における外面とを接続している。第2作用面50bは、軸線方向daに沿って延びるスプール大径部50の外面の一端側縁部と、スプール本体部46のスプール大径部50よりも一端側となる部分における外面とを接続している。図示された例では、スプール40の一端面41の面積と、第1作用面50aの面積とは互いに同一である。また、スプール40の他端面44の面積と、第2作用面50bの面積とは互いに同一である。なお、ここでの一端面41、他端面44、第1作用面50a及び第2作用面50bの面積は、それぞれ、各面41,44,50a,50bを、中心軸線A(軸線方向da)と直交する平面に対して、軸線方向daに沿って投影した場合の、当該平面上における面積とする。
【0030】
スプール大径部50は、スプール収容孔31の大径孔31b内に配置される。スプール収容孔31の第1小径孔31aと第2小径孔31cの径は、スプール大径部50の径よりも小さい。したがって、スプール大径部50は、大径孔31b内及び第2内周溝35内にわたって軸線方向daに沿って移動可能である。より詳細には、スプール40は、スプール大径部50の第1作用面50aが大径孔31bの他端部に接する位置から、スプール大径部50の第2作用面50bが第2内周溝35の一端部に接する位置までの間を、軸線方向daに沿って移動可能である。
【0031】
図1~
図3に示された例では、スプール40とスプール収容ブロック30との間には、3つの空間(第1室C1、第2室C2、第3室C3)が形成される。第1室(室)C1は、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分とスプール収容ブロック30との間に位置する。図示された例では、スプール大径部50の第1作用面50aが第1室C1に面している。この場合、第1室C1は、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分と、第1作用面50aと、スプール収容ブロック30のスプール収容孔31と、により画定される。第2室(他の室)C2は、スプール本体部46のスプール大径部50よりも一端側となる部分とスプール収容ブロック30との間に位置する。図示された例では、スプール大径部50の第2作用面50bが第2室C2に面している。この場合、第2室C2は、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分と、第2作用面50bと、スプール収容ブロック30のスプール収容孔31と、により画定される。とりわけ図示された例では、スプール収容孔31のうち第2室C2を画定する部分は第2内周溝35を含む。第3室C3は、第2室C2の一側(一端側)において、スプール本体部46のスプール大径部50よりも一端側となる部分とスプール収容ブロック30との間に位置する。とりわけ図示された例では、スプール本体部46のうち第3室C3を画定する部分は外周溝47を含み、スプール収容孔31のうち第3室C3を画定する部分は第1内周溝33を含む。
【0032】
スプール40は、軸線方向daの一端側に開口するとともに第1室C1に通じる第1連絡流路(流路)51を有する。図示された例では、第1連絡流路51は、スプール40の一端側において一端面41に開口している。とりわけ第1連絡流路51は、一端面41の突出面42に開口している。第1連絡流路51は、スプール40の内部に位置する第1連絡孔52と、スプール大径部50の外面に形成された第1連絡溝53と、を含んでいる。第1連絡孔52は、スプール40の一端側に開口し中心軸線Aに沿って延びる軸線方向部分52aと、軸線方向部分52aの他端側端部に通じるとともにスプール40の径方向に延びる径方向部分52bと、を含んでいる。第1連絡溝53は、第1連絡孔52の径方向部分52bの径方向外側部分に通じるとともに軸線方向daに沿って延びている。図示された例では、第1連絡孔52の径方向部分52bは、軸線方向部分52aの他端側端部を通ってスプール大径部50を貫通している。換言すると、径方向部分52bは、軸線方向部分52aの他端側端部から互いに180度の角度をなす反対方向に向かって延びている。そして、径方向部分52bの2つの端部のそれぞれに第1連絡溝53が接続されている。すなわち、スプール40は、中心軸線Aに対して互いに反対側に位置する2つの第1連絡溝53を有している。なお、これに限られず、スプール40は、1つの第1連絡溝53を有してもよいし、3つ以上の第1連絡溝53を有してもよい。
【0033】
スプール40は、軸線方向daの他端側に開口するとともに第2室C2に通じる第2連絡流路(他の流路)55を有する。図示された例では、第2連絡流路55は、スプール40の他端側において他端面44に開口している。第2連絡流路55は、スプール40の内部に位置する第2連絡孔56と、スプール大径部50の外面に形成された第2連絡溝57と、を含んでいる。第2連絡孔56は、スプール40の他端側に開口し中心軸線Aに沿って延びる軸線方向部分56aと、軸線方向部分56aの一端側端部に通じるとともにスプール40の径方向に延びる径方向部分56bと、を含んでいる。第2連絡溝57は、第2連絡孔56の径方向部分56bの径方向外側部分に通じるとともに軸線方向daに沿って延びている。図示された例では、第2連絡孔56の径方向部分56bは、軸線方向部分56aの一端側端部を通ってスプール大径部50を貫通している。換言すると、径方向部分56bは、軸線方向部分56aの一端側端部から互いに180度の角度をなす反対方向に向かって延びている。そして、径方向部分56bの2つの端部のそれぞれに第2連絡溝57が接続されている。すなわち、スプール40は、中心軸線Aに対して互いに反対側に位置する2つの第2連絡溝57を有している。なお、これに限られず、スプール40は、1つの第2連絡溝57を有してもよいし、3つ以上の第2連絡溝57を有してもよい。
【0034】
図6は、
図4のVI-VI線に対応する断面図であり、
図7は、
図4のVII-VII線に対応する断面図である。図示された例では、軸線方向daに沿って見た場合に、第1連絡孔52の径方向部分52bと、第2連絡孔56の径方向部分56bとが、互いに直交して延びている。これにより、第1連絡溝53と第2連絡溝57とは、スプール40の周方向に互いに90度の角度を有して離間している。したがって、第1連絡流路51と第2連絡流路55とは、互いに独立した流路を形成する。
【0035】
ポペット60は、ケーシング20の収容穴21内を軸線方向daに移動可能に配置されている。ポペット60は、ケーシング20の圧力源ポート22を閉鎖及び開放する本体61と、本体61内に収容されたボール70及び支持部材71と、を備えている。本体61は、圧力源ポート22の閉鎖状態において圧力源ポート22内に位置する小径部61aと、小径部61aの他側に位置する大径部61bと、を有している。本体61は、小径部61aの一端部に位置する先端面62を有している。本体61の外側面における小径部61aと大径部61bとの間には、閉鎖状態においてケーシング20のシート部25にシートするシート面63が形成されている。シート面63は、軸線方向及び径方向の両方に対して傾斜した方向に延びる面で構成されており、ポペット60の周方向に沿って環状に形成されている。
【0036】
大径部61b内には、ポペット60の他側に開口し、スプール押付けスプリング12及びポペット押付けスプリング14の少なくとも一部を収容するスプリング収容穴64が設けられている。スプリング収容穴64の一側の端部には、スプリング支持面64aが形成されている。スプリング支持面64aは、ポペット押付けスプリング14を支持するとともに、ポペット押付けスプリング14からの押付力を受ける。
【0037】
本体61は、支持部材収容穴65と、ボール収容穴66と、連絡穴67と、絞り部68と、をさらに有している。支持部材収容穴65は、他側においてスプリング収容穴64に開口し支持部材71を収容する。ボール収容穴66は、他側において支持部材収容穴65に開口しボール70を収容する。連絡穴67は、他側において支持部材収容穴65に開口し一側において絞り部68と通じている。絞り部68は、他側において連絡穴67に開口し一側において先端面62に開口している。先端面62の径方向外側には、切欠き部69が形成されている。
【0038】
支持部材71は、他側を向く面に他側に突出する突出面72と、突出面72の周囲に位置するスプリング支持面73を含んでいる。スプリング支持面73は、スプール押付けスプリング12を支持するとともに、スプール押付けスプリング12からの押付力を受ける。支持部材71は、中心軸線Aに沿って延びる貫通孔74と、貫通孔74に通じる切欠き部75と、をさらに有している。貫通孔74は、中心軸線Aに沿って延びており、支持部材71の他側において突出面72に開口している。切欠き部75は、支持部材71の一側に設けられ支持部材71の径方向に延びる溝状の切欠きで構成されている。切欠き部75は、径方向の内側において貫通孔74に通じ、径方向の外側において支持部材71の外側面に通じている。なお、切欠き部75は、必ずしも径方向の外側において支持部材71の外側面に通じていなくてもよい。切欠き部75は、ボール70が支持部材71の貫通孔74に接した際にも、ボール70により貫通孔74が完全に閉塞されず、ボール収容穴66と貫通孔74が切欠き部75を介して通じるようにされていれば、具体的形状は特に限定されない。
【0039】
絞り部68は、ケーシング20の圧力源ポート22から連絡穴67へ向かって流れる油の単位時間当たりの流量を制限する絞りとして機能する。そのため、絞り部68の断面積は、連絡穴67の断面積と比較して、十分に小さくなっている。
【0040】
ボール70は、ボール収容穴66内に収容され、ボール収容穴66内で移動可能になっている。ボール70の直径は、ボール収容穴66の直径よりも小さく且つ連絡穴67の直径よりも大きい。したがって、ボール70の全体が連絡穴67に入り込むことはない。これにより、ボール70は、連絡穴67と協働してチェック弁として機能する。具体的には、ボール70は、連絡穴67からボール収容穴66に向かう油の流れは許容する。その一方、ボール収容穴66から連絡穴67へ向かって油が流れようとする際には、ボール70が連絡穴67の他側の開口部を閉塞する。したがって、ボール収容穴66から連絡穴67に向かう油の流れは許容しない。
【0041】
スプール40とポペット60との間には、スプール押付けスプリング12が配置されている。図示された例では、スプール押付けスプリング12は、スプール40のスプリング支持面43とポペット60の支持部材71のスプリング支持面73との間に圧縮状態で配置される。したがって、スプリング支持面43,73には、それぞれスプール押付けスプリング12からの押付力が作用する。
【0042】
スプール収容ブロック30とポペット60との間には、ポペット押付けスプリング14が配置されている。図示された例では、ポペット押付けスプリング14は、スプール収容ブロック30のスプリング支持面32とポペット60のスプリング支持面64aとの間に圧縮状態で配置される。したがって、スプリング支持面32,64aには、それぞれポペット押付けスプリング14からの押付力が作用する。
【0043】
スプール収容ブロック30とポペット60との間には、圧力室Cpが形成される。圧力室Cpには、ケーシング20の圧力源ポート22、ポペット60の絞り部68、連絡穴67、ボール収容穴66、支持部材収容穴及びスプリング収容穴64を介して、被取付部材90の圧力源流路95から油が流れ込む。
【0044】
被取付部材90の流量制御弁取付穴92とケーシング20の外面との間、ケーシング20の収容穴21とスプール収容ブロック30の外面との間には、それぞれ、油の漏出を防止するためのOリング等の密封部材18が配置される。
【0045】
スプール40の軸線方向daに沿った移動は、駆動装置80により制御される。駆動装置80は、駆動ロッド82と駆動部84とを有している。図示された例では、駆動部84はソレノイドにより生じる駆動力により、駆動ロッド82を軸線方向daに沿って一側へ向かって駆動する。駆動ロッド82は、スプール40の他端面44に当接して、スプール40を軸線方向daに沿って移動させる。すなわち、図示された例では、スプール40は、ソレノイドの駆動力でスプール収容孔31内を軸線方向daに沿って移動する。なお、これに限られず、駆動部84はパイロット圧等の他の駆動力により駆動ロッド82を駆動するように構成されてもよい。なお、駆動装置80と流量制御弁10との結合部には、駆動装置80と流量制御弁10とに囲まれたロッド室Crが形成される。図示された例では、ロッド室Crは、駆動装置80とスプール収容ブロック30(第2ブロック30b)により画定される。ロッド室Cr内には、駆動装置80の駆動ロッド82及びスプール40の他端部(他端面44)が配置される。
【0046】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施の形態の流量制御弁10の動作について説明する。
【0047】
図2に示されているように、駆動装置80の駆動ロッド82が最も後退している場合、すなわち駆動ロッド82が最も他側に位置している場合、スプール40はスプール押付けスプリング12の押付力により、最も他側(後退位置)に位置する。詳細には、スプール押付けスプリング12の押付力がスプール40のスプリング支持面43に作用し、これにより、スプール40は後退位置に位置する。このとき、スプール40の他端面44は駆動装置80の駆動ロッド82に接触している。
【0048】
このとき、スプール40とスプール収容ブロック30との間に形成される第2室C2は、スプール収容ブロック30の第2貫通孔39、第2外周溝37、ケーシング20の第2貫通孔27、被取付部材90の第2内周溝94を介して、ドレン流路97に通じている。また、第3室C3は、スプール収容ブロック30の第1貫通孔38、第1外周溝36、ケーシング20の第1貫通孔26、流量制御弁取付穴92の内面とケーシング20の外面との間に形成される隙間16、被取付部材90の第1内周溝93を介して、制御流路96に通じている。スプール40は、圧力室Cpと第3室C3との間を閉塞している。
【0049】
圧力室Cpには、ケーシング20の圧力源ポート22、ポペット60の絞り部68、連絡穴67、ボール収容穴66、支持部材収容穴及びスプリング収容穴64を介して、被取付部材90の圧力源流路95から油が流れ込む。絞り部68は、圧力源ポート22から連絡穴67へ向かって流れる油の単位時間当たりの流量を制限する。したがって、圧力源流路95に高い油圧が作用すると、ある時間の経過後に、圧力室Cp内にも圧力源流路95と同じ油圧が作用する。
【0050】
ポペット60の大径部61bにおける他側を向く面(他側面)には、圧力室Cp内の圧力によりポペット60を一側へ向けて押す押圧力が作用する。また、小径部61aにおける一側を向く面(一側面)には、圧力源流路95内の圧力によりポペット60を他側へ向けて押す押圧力が作用する。大径部61bの他側面の面積は、大径部61bを、中心軸線A(軸線方向da)と直交する平面に対して、軸線方向daに沿って投影した場合の、当該平面上における面積と等しい。また、小径部61aの一側面の面積は、小径部61aを、中心軸線A(軸線方向da)と直交する平面に対して、軸線方向daに沿って投影した場合の、当該平面上における面積と等しい。図示された例では、大径部61bの他側面の面積は、小径部61aの一側面の面積よりも大きい。したがって、大径部61bの他側面に作用する、ポペット60を一側へ向けて押す押圧力は、小径部61aの一側面に作用する、ポペット60を他側へ向けて押す押圧力よりも大きい。また、ポペット60は、支持部材71のスプリング支持面73を介して、ポペット押付けスプリング14からポペット60を一側へ向けて押す押圧力を受ける。これにより、ポペット60は、圧力室Cp内の圧力によりポペット60を一側へ向けて押す押圧力と圧力源流路95内の圧力によりポペット60を他側へ向けて押す押圧力との差分、及び、ポペット押付けスプリング14から受ける押圧力、によりケーシング20のシート部25に対して押し付けられる。より詳細には、ポペット60のシート面63がケーシング20のシート部25に対して押し付けられる。このとき、
図2に示すように、ポペット60は最も一側(閉鎖位置)に位置し、流量制御弁10は圧力源流路95から制御流路96へ通じる流路を閉鎖する閉鎖状態となる。
【0051】
次に、流量制御弁10を閉鎖状態から流通状態へ移行させるための動作について説明する。駆動装置80の駆動部84を駆動させて駆動ロッド82を軸線方向daに沿って一側に向けて移動させると、駆動ロッド82に押されてスプール40も軸線方向daに沿って一側(前進位置)へ移動する。本実施の形態では、駆動部84はソレノイドアクチュエータを含んでおり、このソレノイドアクチュエータで生じる駆動力により、駆動ロッド82が一側に向けて移動する。
【0052】
圧力室Cp内に作用する圧力により、スプール40には、一端面41を介して他側に向かう押圧力が生じる。スプール40は、一端面41に開口するとともに第1室(室)C1に通じる第1連絡流路(流路)51を有する。また、スプール40のスプール大径部50の第1作用面(作用面)50aは、第1室C1に面している。これにより、第1作用面50aには、スプール40の一端面41に作用する圧力と同じ圧力が作用する。すなわち、第1室C1に作用する圧力により、スプール40には、第1作用面50aを介して一側に向かう押圧力が生じる。したがって、スプール40に対して第1作用面50aを介して生じる一側に向かう押圧力が、一端面41を介して他側に向かう押圧力の少なくとも一部を打ち消す(相殺する)。これにより、圧力室Cp内の圧力により生じるスプール40を他側に向かって押す押圧力を効果的に低減させることができ、駆動装置80に必要とされる駆動力を減少させることが可能になる。したがって、駆動装置80を小型化し、駆動装置80にかかるコストを低減させることができる。
【0053】
とりわけ本実施の形態の流量制御弁10では、一端面41の面積と第1作用面50aの面積とは互いに同一である。この場合、一端面41を介して他側に向かう押圧力と第1作用面50aを介して一側に向かう押圧力とは互いに打ち消し合う。したがって、スプール押付けスプリング12の押付力のみが、スプール40を他側に向かって押す押圧力となる。すなわち、駆動装置80は、スプール押付けスプリング12の押付力に抗してスプール40を押すだけで、スプール40を前進位置へ向けて移動させることができる。この場合、駆動装置80に必要とされる駆動力をさらに減少させることが可能になる。したがって、駆動装置80をさらに小型化し、駆動装置80にかかるコストをさらに低減させることができる。
【0054】
また、駆動装置80の駆動ロッド82及びスプール40の移動にともなってロッド室Cr内の容積が変動し、ロッド室Cr内に保持された油に正又は負の圧力が生じ得る。ロッド室Cr内に作用する圧力により、スプール40には、他端面44を介して一側又は他側に向かう押圧力が生じる。スプール40は、他端面44に開口するとともに第2室(他の室)C2に通じる第2連絡流路(他の流路)55を有する。また、スプール40のスプール大径部50の第2作用面(他の作用面)50bは、第2室C2に面している。これにより、第2作用面50bには、スプール40の他端面44に作用する圧力と同じ圧力が作用する。すなわち、第2室C2に作用する圧力により、スプール40には、第2作用面50bを介して他側又は一側に向かう押圧力が生じる。したがって、スプール40に対して第2作用面50bを介して生じる他側又は一側に向かう押圧力が、他端面44を介して一側又は他側に向かう押圧力の少なくとも一部を打ち消す(相殺する)。これにより、ロッド室Cr内の圧力により生じるスプール40に作用する押圧力を効果的に低減させることができ、スプール40を安定して動作させることが可能になる。
【0055】
とりわけ本実施の形態の流量制御弁10では、他端面44の面積と第2作用面50bの面積とは互いに同一である。この場合、他端面44を介して一側に向かう押圧力と第2作用面50bを介して他側に向かう押圧力とは互いに打ち消し合う。したがって、スプール40をさらに安定して動作させることが可能になる。
【0056】
さらに、本実施の形態の流量制御弁10では、第2室C2は、スプール収容ブロック30の第2貫通孔39、第2外周溝37、ケーシング20の第2貫通孔27、被取付部材90の第2内周溝94を介して、常にドレン流路97に通じている。これにより、ロッド室Cr及び第2室C2内に保持された油はドレン流路97に排出され、ロッド室Cr及び第2室C2内には油圧が作用しない。したがって、スプール40をさらに安定して動作させることが可能になる。
【0057】
スプール40が前進位置へ向けて移動すると、スプール40の外周溝47に連続して設けられた切欠き部48が圧力室Cpに通じる。これにより、切欠き部48を介して圧力室Cpと第3室C3とが通じる。上述のように、第3室C3は、常に制御流路96に通じている。すなわち、スプール40が前進位置へ向けて移動すると、圧力室Cpと制御流路96とが第3室C3を介して通じる。圧力室Cpと制御流路96とが通じると、圧力室Cp内の油が制御流路96へ流れることにより、圧力室Cp内の圧力が急激に低下する。したがって、本実施の形態では、外周溝47及び切欠き部48が、駆動装置80の駆動部84(ソレノイド)の駆動力を受けてスプール本体部46が他側から一側へ移動したときに、圧力室Cpから流量が制御されるべき制御流路96へ向かう油の流量を制御可能な圧力室連絡流路を構成する。その一方、ポペット60の絞り部68は、圧力源流路95から圧力室Cpへ向かって流れる油の単位時間当たりの流量を制限する。
【0058】
圧力室Cp内の圧力及びポペット押付けスプリング14の押付力によるポペット60を一側に押す力が、圧力源流路95の圧力によるポペット60を他側に押す力よりも小さくなると、ポペット60は軸線方向daに沿って他側に移動して、ポペット60のシート面63がケーシング20のシート部25から離れる。これにより、ポペット60の切欠き部69を介してケーシング20の圧力源ポート22と内周溝24とが通じる。すなわち、圧力源ポート22、切欠き部69、内周溝24、制御ポート23及び被取付部材90の第1内周溝93を介して、圧力源流路95と制御流路96とが通じる。これにより、流量制御弁10は
図3に示す流通状態となり、圧力源流路95から制御流路96へ向けて油が流れる。
【0059】
このとき、圧力室Cpと制御流路96とが通じていることから、圧力源流路95から制御流路96へ流れ込んだ油が圧力室Cpにも流れ込み、圧力室Cp内の圧力が上昇する。圧力室内Cpの圧力及びポペット押付けスプリング14の押付力によるポペット60を一側に押す力が、圧力源流路95の圧力によるポペット60を他側に押す力を超えると、ポペット60は一側に移動して、ポペット60の切欠き部69を介した圧力源流路95と制御流路96との間の開口面積が減少する。これによりポペット60の切欠き部69が絞りとして機能し、圧力源流路95から制御流路96へ向けて流れる油の流量が減少し、制御流路96内及び圧力室Cp内の圧力が減少する。これにともなって、ポペット60は他側へ移動し、ポペット60の切欠き部69による圧力源流路95と制御流路96との間の開口面積が増大する。そして、圧力室内Cpの圧力及びポペット押付けスプリング14の押付力によるポペット60を一側に押す力と、圧力源流路95の圧力によるポペット60を他側に押す力とが釣り合った場所でポペット60が停止し、このときの切欠き部69による圧力源流路95と制御流路96との間の開口面積に対応した流量で、圧力源流路95から制御流路96へ向けて油が流れる。駆動装置80の駆動部84により、駆動ロッド82の軸線方向daに沿った一側への突出量を制御することで、ポペット60の停止位置を制御することができる。すなわち、駆動ロッド82の軸線方向daに沿った一側への突出量を制御することで、圧力源流路95から制御流路96へ向けて流れる油の流量を制御することが可能である。
【0060】
次に、流量制御弁10を流通状態から再度閉鎖状態へ移行させるための動作について説明する。駆動装置80の駆動ロッド82を他側へ後退させると、スプール40がスプール押付けスプリング12の押付力により後退位置へ向けて後退し、スプール40により圧力室内Cpと第3室C3との間が閉塞される。その後、ポペット60の絞り部68を介して圧力源流路95から圧力室Cpに油が流れ込むことにより、圧力室Cp内の圧力が上昇する。圧力室Cp内の圧力及びポペット押付けスプリング14によるポペット60を一側に押す力が、圧力源流路95の圧力によるポペット60を他側に押す力を超えると、ポペット60は一側に移動してケーシング20のシート部25に押付けられる。これにより、流量制御弁10は、
図2に示す閉鎖状態に復帰する。
【0061】
本発明の流量制御弁10は、スプール収容孔31を有するスプール収容ブロック30と、スプール本体部46、スプール本体部46の径よりも大きな径を有するスプール大径部50、並びに、軸線方向daの一端側に開口するとともに、スプール本体部46のスプール大径部50よりも軸線方向daの他端側となる部分及びスプール収容ブロック30の間に位置する室C1に通じる流路51、を有し、スプール収容孔31内に移動可能に収容されるスプール40と、を備える。
【0062】
また、本発明の流量制御弁10は、スプール収容孔31を有するスプール収容ブロック30と、軸線方向daの一端に位置する一端面41を有するスプール本体部46、スプール本体部46の径よりも大きな径を有して一端及び軸線方向daの他端から離間した中間部に位置し、他端側を向く作用面50a及び一端側を向く他の作用面50bを有し、一端面41の面積と作用面50aの面積とが同一であるスプール大径部50、並びに、一端側に開口するとともに、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分及びスプール収容ブロック30の間に位置する室C1に通じる流路51並びに他端側に開口するとともに、スプール本体部46のスプール大径部50よりも一端側となる部分及びスプール収容ブロック30の間に位置する他の室C2に通じる他の流路55、を有し、ソレノイドの駆動力でスプール収容孔31内を移動可能であるスプール40と、を備える。
【0063】
また、本発明による流量制御弁10は、軸線方向daに沿った一側及び他側に移動可能に配置されたスプール本体部46及びスプール本体部46の径よりも大きな径を有するスプール大径部50を有するスプール40と、スプール本体部46の一側の端部で少なくとも一部が区画され、スプール本体部46を一側から他側へ向けて押す押圧力を生じる圧力室Cpと、スプール本体部46のスプール大径部50よりも他端側となる部分で少なくとも一部が区画され、スプール大径部50を他側から一側へ向けて押し、圧力室Cpによる押圧力の少なくとも一部を打ち消す他の押圧力を生じる室C1と、ソレノイド(駆動部84)の駆動力を受けてスプール本体部46が他側から一側へ移動したときに、圧力室Cpから流量が制御されるべき制御流路96へ向かう油の流量を制御可能な圧力室連絡流路(47,48)と、を備える。
【0064】
このような流量制御弁10によれば、スプール40における室C1に面する部分に、スプール40の一端側に作用する圧力と同じ圧力が作用し、スプール40に軸線方向daの一側に向かう押圧力が生じる。したがって、スプール40における室C1に面する部分に生じる一側に向かう押圧力が、スプール40の一端側に生じる他側に向かう押圧力の少なくとも一部を打ち消す(相殺する)。これにより、スプール40の一端側に作用する圧力により生じるスプール40を他側に向かって押す押圧力を効果的に低減させることができ、駆動装置80に必要とされる駆動力を減少させることが可能になる。したがって、駆動装置80を小型化し、駆動装置80にかかるコストを低減させることができる。
【0065】
本発明の流量制御弁10では、スプール本体部46は、一端に位置する一端面41を有し、スプール大径部50は、他端側を向く作用面50aを有し、一端面41の面積と作用面50aの面積とは同一である。
【0066】
このような流量制御弁10によれば、一端面41を介して他側に向かう押圧力と作用面50aを介して一側に向かう押圧力とは互いに打ち消し合う。したがって、スプール押付けスプリング12の押付力のみが、スプール40を他側に向かって押す押圧力となる。すなわち、駆動装置80は、スプール押付けスプリング12の押付力に抗してスプール40を押すだけで、スプール40を前進位置へ向けて移動させることができる。この場合、駆動装置80に必要とされる駆動力をさらに減少させることが可能になる。したがって、駆動装置80をさらに小型化し、駆動装置80にかかるコストをさらに低減させることができる。
【0067】
本発明の流量制御弁10では、スプール大径部50は、スプール40の一端及び他端から離間した中間部に位置する。
【0068】
このような流量制御弁10によれば、一端面41の面積と作用面50aの面積とを互いに独立して調整することができるので、スプール40の設計の自由度を向上させることができる。これにより、一端面41の面積と作用面50aの面積とを同一とすることも容易に可能となる。
【0069】
本発明の流量制御弁10では、スプール大径部50は、一端側を向く他の作用面50bを有し、スプール40は、スプール40の他端側に開口するとともに、スプール本体部46のスプール大径部50よりも一端側となる部分及びスプール収容ブロック30の間に位置する他の室C2に通じる他の流路55を有する。
【0070】
このような流量制御弁10によれば、スプール40における他の室C2に面する部分に、スプール40の他端側に作用する正又は負の圧力と同じ圧力が作用し、スプール40に軸線方向daの他側又は一側に向かう押圧力が生じる。したがって、スプール40に対して他の作用面50bを介して生じる他側又は一側に向かう押圧力が、スプール40の他端側を介して一側又は他側に向かう押圧力の少なくとも一部を打ち消す(相殺する)。これにより、ロッド室Cr内の圧力により生じるスプール40に作用する押圧力を効果的に低減させることができ、スプール40を安定して動作させることが可能になる。
【0071】
本発明の流量制御弁10では、スプール40は、ソレノイドの駆動力でスプール収容孔31内を移動する。
【0072】
大きな駆動力を出力可能なソレノイドアクチュエータは、一般的に大型であり且つ高価である。これに対して、本発明の流量制御弁10によれば、スプール40を移動させるために必要とされる駆動力を小さくすることができるので、スプール40がソレノイドの駆動力でスプール収容孔31内を移動する場合にも、スプール40の駆動源として、駆動力が比較的小さく、小型であり安価なソレノイドアクチュエータを用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 流量制御弁
12 スプール押付けスプリング
14 ポペット押付けスプリング
16 隙間
20 ケーシング
21 収容穴
22 圧力源ポート
23 制御ポート
25 シート部
30 スプール収容ブロック
30a 第1ブロック
30b 第2ブロック
31 スプール収容孔
40 スプール
41 一端面
44 他端面
46 スプール本体部
47 外周溝(圧力室連絡流路)
48 切欠き部(圧力室連絡流路)
50 スプール大径部
50a 第1作用面(作用面)
50b 第2作用面(他の作用面)
51 第1連絡流路(流路)
55 第2連絡流路(他の流路)
60 ポペット
61 本体
63 シート面
68 絞り部
69 切欠き部
70 ボール
71 支持部材
80 駆動装置
82 駆動ロッド
84 駆動部
90 被取付部材
91 本体部
92 流量制御弁取付穴
95 圧力源流路
96 制御流路
97 ドレン流路
A 中心軸線
C1 第1室(室)
C2 第2室(他の室)
C3 第3室
Cp 圧力室
Cr ロッド室