(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】部品を改造するための方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230911BHJP
G05B 19/4097 20060101ALI20230911BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G05B19/4097 B
B23Q15/00 301Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019028107
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-02-08
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ケマル・メフメト・コスクン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522089(JP,A)
【文献】特開2003-030254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0121438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0284550(US,A1)
【文献】国際公開第2017/142953(WO,A1)
【文献】YU, H. et al.,Repair of defective 3D blade model based on deformation of adjacent non-defective cross-sectional curve,The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,Springer,2018年,Vol. 95,pp. 3045-3055
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
B23Q 15/00
G05B 19/18 -19/416
G06T 17/00 -19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の改修用幾何学的形状をモデル化するための方法であって、
当該方法は、
前記部品の改修を意図する部分の位置を決めるステップと、
前記部品から前記改修する部分を除去し、それによって切頭部品を取得するステップであって、前記切頭部品は切断面を含み、前記切断面は前記切断面が前記切頭部品の非切断面と交わる境界線を有する、ステップと、
前記切頭部品の画像データを取得するステップであって、前記画像データは前記切断面
及び前記境界線の少なくとも一方の画像データを含む、ステップと、
前記画像データの表現(1)をCADシステムにインポートし、それによって前記切頭部品の少なくとも一態様の表現を前記CADシステムにインポートするステップであって、前記切頭部品の前記表現は、少なくとも前記境界線の表現(3)と、前記境界線の前記表現によって囲まれる前記切断面の表現(2)
とを含む、ステップと、
前記CADシステム内に基準軸(4)を定義するステップであって、前記基準軸(4)に対する平行線は前記切断面の表現(2)を透過するステップと、
前記部品のCADモデル(5)を提供するステップと、
前記切頭部品の前記表現と前記CADモデル(5)との概略的な位置合わせを達成するように、前記CADモデル(5)と前記切頭部品の前記表現とを位置合わせするステップと、
前記CADモデル(5)の前記表面上に点(6)を定義するステップであって、前記点(6)は列(7)上に配置され、前記列(7)は、前記基準軸(4)に対して垂直に延在する平面を通って延在する等高線である、ステップと、
各列(7)について、前記列(7)に最も近い前記切断面の前記境界線の前記表現(3)上の点を決定するステップと、
並進変位(9)で各列(7)の前記点(6)を変位させるステップであって、前記変位は、前記列(7)に最も近い前記点(6)で前記境界線の前記表現に対して垂直に行われる、ステップ
と
を含
んでおり、
当該方法は、前記列(7)が前記境界線の前記表現(3)と交差するまで前記変位を継続し、それによって変形CADモデル(5’)を取得するステップをさらに含み、前記切断面の前記表現から延在する前記変形CADモデル(5’)の部分は、前記部品の改修された切断部分を表し、前記改修された切断部分のモデルを構成する、方法。
【請求項2】
前記基準軸(4)は、前記切断面の前記境界線の前記表現(3)が延在する平面に対して垂直に延在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改修される部分を除去するステップは、平坦な切断面を生成するステップを含む、請求項1
又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記CADモデル(5)の前記表面上の前記点(6)を定義するステップは、ある点の変位が、前記点(6)に貼り付けられた前記CADモデル(5)の表面セグメントを前記点(6)と共に移動させ、同時に前記表面セグメントは前記隣接する点に貼り付けられたままにするように、前記CADモデル(5)の前記表面に前記点(6)を貼り付けるステップを含み、前記表面セグメントに貼り付けられた個々の点が変位すると、前記表面はそれに応じて曲がる、請求項1乃至
請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記CADモデル(5)の前記表面上の前記点(6)を定義するステップは、前記CADモデル(5)の前記表面上の格子上に前記点(6)を配置するステップを含み、前記格子は、前記基準軸(4)に垂直な平面内で前記CADモデル(5)の前記表面上に延在する層(8)からなり、前記列(7)の各々は各層(8)と一定の角度で交差する、請求項1乃至
請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記列(7)の各々は各層(8)と直角に交差する、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記列(7)を定義するステップは、各層(8)と一定の角度で前記層(8)と交差する線上に配置されたすべての点(6)を通るスプラインとして列を形成するステップを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記画像データの表現(1)をCADシステムにインポートするステップは、少なくとも1つのスプラインによって前記画像データを近似するステップと、結果として得られたスプラインデータをインポートするステップ
とを含む、請求項1乃至
請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記切頭部品の画像データを取得するステップは、前記切頭部品の3次元画像データを取得するステップを含み、前記CADモデル(5)と前記切頭部品の前記表現とを位置合わせするステップは、前記切頭部品の前記表現と前記切頭部品の前記表現に対応する前記CADモデル(5)の部分とを整合させるステップを含む、請求項1乃至
請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記切頭部品の画像データを取得するステップは、前記切頭部品の前記切断面の2次元画像データを取得するステップを含み、前記CADモデル(5)と前記切頭部品の前記画像データの表現(1)とを位置合わせするステップは、前記CADモデル(5)上の前記切断面の前記位置に対応する位置を決定し、前記CADモデル(5)を前記位置で切断し、前記切頭部品に対応する前記CADモデル(5)の前記部分を除去し、そうして切り取られたCADモデル(5’)を取得し、前記切り取られたCADモデル(5’)の結果として生じる切り取り面を、前記切頭部品の前記切断面
及び前記切断面の前記境界線のうちの少なくとも一方の前記表現(2、3)に整合させ、前記切り取られたCADモデル(5’)を前記切断面
及び前記境界線のうちの少なくとも一方の前記表現に移植し、そうして前記切頭部品の前記表現を補完し、前記部品の前記切断部分の改修用幾何学的形状の表現を提供するステップを含む、請求項1乃至
請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記改修された切断部分の前記モデルをスライスして、ツール経路(10)を生成するステップ、
及び/
又は前記改修された切断部分を機械加工するのに適したCAMプログラムを作成するために、前記改修された切断部分の前記モデルを処理するステップのうちの少なくとも一方を含む、請求項1乃至
請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記切頭部品の前記画像データを取得するステップは、前記画像データを取得する前に前記部品を改修するための工作機械での使用を意図した固定具に前記切頭部品を取り付けて、前記固定具に取り付けられた前記切頭部品を有する前記画像データを取得するステップを含み、さらに前記基準軸(4)は前記固定具を基準とする、請求項1乃至
請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
部品を改修するための方法であって、
当該方法は、請求項
11に記載の方法によって前記部品の改修用幾何学的形状をモデル化するステップと、前記部品を工作機械に提供するステップと、前記生成されたツール経路
及び/
又はCAMプログラムのうちの少なくとも一方に従って前記工作機械を動作させて前記部品を改修するステップ
とを含む方法。
【請求項14】
前記部品の改修用幾何学的形状をモデル化するステップを含み、前記切頭部品を固定具に取り付けるステップと、前記固定具に取り付けられた前記切頭部品を有する前記画像データを取得するステップであって、さらに前記基準軸(4)は前記固定具を基準とする、ステップと、前記切頭部品を前記固定具に取り付けて前記固定具を前記工作機械に取り付けるステップ
とをさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は特許請求の範囲に記載の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野では、磨耗した部品を廃棄するのではなく改修することが望ましい。他の例では、部品の一部分において改善された特性をもたらすアップグレードされた幾何学的形状を提供する際に部品をアップグレードすることが望ましい場合がある。改修は広く理解されてもよく、未使用の公称状態を単に斬新に再形成するのではなく、性能を向上させるためにアップグレードされた幾何学的形状を部品に提供することを含んでもよい。一例は、タービンエンジン、例えばガスタービンエンジン、翼形部およびブレードである。通常、それらはブレード先端部で最も強い磨耗を経験するが、全体的な輪郭は小さな磨耗を経験するかもしれない。ブレードを改修する1つの方法は、ブレードの先端部を切断すること、および物理的な先端部を改造することを含む。しかしながら、改造が公称設計データに基づいている場合には、改修された部品の表面は、切頭部品と改造された先端部分とが互いに接合する場所で表面の不連続性および段差を示すことがある。これは、残りの部分にも存在する切頭部品のわずかな磨耗の結果であり得るが、部品が最初に製造されたときの製造公差の結果でもあり得る。これらの工程は、部品の後処理を必要とし、さもなければ、ブレードの空気力学的性能に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、後処理をほとんどまたは全く必要としないように改修用幾何学的形状がモデル化されている、部品、実施形態では磨耗部品を改修するための方法を提供することが望ましいことが分かっている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の目的は、最初に述べた種類の方法を提供することである。より具体的な態様では、本方法は、残った元の部品と改造された部分との間の移行が可能な限り滑らかに、可能ならば段差なしで提供される、部品の改修用幾何学的形状をモデル化するように提供されるべきである。さらに、より具体的な態様では、本方法は、改修される部分のニアネットシェイプ製造を達成するように改修用幾何学的形状をモデル化することを可能にするべきである。
【0004】
これは請求項1に記載の主題によって達成される。
【0005】
開示される主題のさらなる効果および利点は、明示的に言及されているか否かにかかわらず、以下に提供される開示を考慮すると明らかになるであろう。
【0006】
したがって、開示されているのは、部品の改修用幾何学的形状をモデル化するための方法であって、その方法は、部品の改修を意図する部分の位置を決めるステップと、部品から改修する部分を除去し、それによって切頭部品を取得するステップと、を含む。実施形態では、本方法は部品の改修用幾何学的形状をモデル化するための方法であって、本方法は、磨耗した部品の損傷部分の位置を決めるステップと、磨耗した部品から損傷部分を除去し、それによって切頭部品を取得するステップと、を含む。上記のように、改修は必ずしも可能な限り綿密にオリジナルの幾何学的形状をスラブ的に再構築またはリシェイプすることとして理解するべきではないが、しかし、それが元の新しく未使用の状態にあったときに改修される部品と比較したときに、改修された部品にアップグレードされたまたはそうでなければ修正された形状を提供することも含んでもよい。切頭部品は、改修する領域が除去された元の部品の残りの部分であり、実施形態では、除去される修復処置を必要とする程度まで損傷または磨耗を示す領域を有する磨耗した部品であることが理解される。切頭部品は切断面を含む。切断面は、切断面が切頭部品の非切断面と交わる境界線を示す。本方法は、切断面および境界線のうちの少なくとも一方の画像データを含む切頭部品の画像データを取得するステップをさらに含む。境界線は切断面を囲み、したがって、暗黙的に切断面も表すと考えられることが理解される。画像データは、一例として、切頭部品の走査によって3次元画像データとして取得されてもよい。他の例では、画像データは、切断面の写真を撮る際に2次元画像データとして取得されてもよい。一般に、任意の画像において切断面が切頭部品の他の表面領域から明確に区別可能であることは合理的な仮定であり得る。使用済みおよび非切断面領域はつや消しに見えるかもしれないが、切断面は場合によっては光沢のある金属外観を示すことがある。つや消し表面領域と光沢表面領域との間の移行部は、切断面の境界線として容易に識別することができる。続いて、画像データの表現がCADシステムにインポートされ、それによって切頭部品の少なくとも一態様の表現がCADシステムにインポートされる。当業者であれば、「表現」をインポートすることが、CADシステムがCADシステムの仮想空間内の切頭部品の少なくとも一態様の仮想モデルを構築し表現することを可能にするデータをインポートすることを意味することを容易に認識するであろう。この点において、画像データはデータフォーマットに適合し、CADシステムによって要求される他の境界条件を満たすために準備される必要があり得ることは明らかである。これは、場合によっては、画像データをデジタル化し、使用される特定のCADシステムに適したフォーマットでそれらを提供することを含んでもよい。さらに、画像データは2次元データである場合があるので、これらのデータは切頭部品全体を表すのではなく、2次元画像データによってカバーされる切頭部品の一態様のみを表すことができる。当業者はさらに、本明細書の枠組み内で、かつCADシステムに関して、切頭部品の表現、または単に切頭部品を参照することを容易に理解するであろうし、この要約用語は、切頭部品の少なくとも一態様の表現として理解すべきである。切頭部品の表現は、少なくとも切断面の境界線の表現を含み、これは次に、境界線の表現によって囲まれる切断面の表現を少なくとも暗黙的に定義する。基準軸はCADシステムにおいて定義され、基準軸対する平行線が切断面の表現を透過する。特定の実施形態では、基準軸は切断面に対して垂直に定義されてもよい。本方法は、部品のCADモデルを提供することをさらに含む。場合によっては、未使用の公称の新しい状態にある部品のCADモデルを提供することができる。他の例では、改訂版または他の修正版の部品のCADモデルを提供することができる。これは、部品を改善された性能をもたらす幾何学的形状にグレードアップするために、あるいは元の形状とは異なる改修された部品を提供するために有益であり得る。より一般的には、提供されるCADモデルは、達成される状態、すなわち、再利用されることが意図されている改修された部品のための幾何学的形状における部品のCADモデルと呼ぶことができる。さらに、CADモデルおよび切頭部品の表現は、切頭部品の表現およびCADモデルの概略的な位置合わせを達成するように位置合わせされる。後者は、最良の適合を達成するように、CADモデルと切頭部品の表現とを位置合わせすることを含むことができる。切頭部品に対応するCADモデルの3次元画像データ部分は、切頭部品の画像データの表現と最もよく整合する関係にすることができる。2次元画像データのみが利用可能である場合には、CADモデルの対応する断面図は、切断面の表現と最もよく整合する関係にすることができるか、または断面図の境界線は、切断面の境界線の表現と最もよく整合する関係にすることができる。一般に、実際の部品の幾何学的形状は、CADモデルによって提供される理想的な公称幾何学的形状から逸脱することに留意されたい。上述のように、これは、製造公差および/または部品の磨耗、あるいは部品の使用を中止した際の部品の表面上の残留物の形成に起因する可能性がある。したがって、CADモデルは、切頭部品の表現、または切断面の境界線にそれぞれ完全には適合しない。最良の整合を達成するための方法およびアルゴリズムは当技術分野において公知である。あるいは、整合は、CADオペレータによって手動で実行されてもよい。さらに理解されるように、当業者であれば、CADシステムの仮想空間における切頭部品の表現またはCADモデルであれ、物体または表面の仮想表現を変位させる可能性に気づき、どのように変位させるかを容易に知るであろう。さらに、基準軸は切頭部品の表現と固定関係にあるので、CADシステムにおける切頭部品の表現のいかなる回転運動も基準軸の同一の回転運動をもたらすであろうことが理解される。本方法はさらに、CADモデルの表面上に点を定義するステップを含み、この点は列上に配置され、列は基準軸に垂直な平面を通って延在する等高線である。各列について、その列に最も近い切断面の境界線の表現上の点が決定され、各列のデータ点は並進変位で変位され、変位は、列に最も近い点で境界線の表現に対して垂直に行われ、行が境界線の表現と交差するまで変位を継続する。したがって、CADモデルは、切断面の表現から延在する連続的で実質的にシームレスな改修用幾何学的形状を提供するように変形され、それによって変形CADモデルが得られる。切断面の表現から延在する変形CADモデルの部分は、部品の改修された切断部分を表し、改修された切断部分のモデルを構成する。
【0007】
やはり、部品は、修復を必要とする程度まで損傷を受けまたはそれ故に改修する程度まで磨耗した領域を含む磨耗した部品であり得るが、一般的には領域がアップグレードされた幾何学的形状が提供されることが意図される部品であり得るので、この領域は、本開示の文脈で使用されるように、改修されることを意図していることが理解される。
【0008】
本開示の枠組みの中で、不定冠詞「a」または「an」の使用は決して単数を規定しておらず、多数の指定された部材または特徴の存在を排除しないことに留意されたい。したがって、それは「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という意味で読むべきである。
【0009】
さらに、当業者であれば、例えば、限定はしないが、CADシステムの仮想空間におけるデータのインポート、変位、回転およびスケーリング、CADシステムにおける点の定義およびそれらの仮想幾何学的形状への貼り付けなどの、CADシステムの基本的および高度な操作および機能に完全に精通していると考えられる。
【0010】
特定の実施形態では、基準軸は、切断面の境界線の表現が延在する平面に対して垂直に延在するように定義することができる。
【0011】
改修する部分、および実施形態では損傷部分を除去するステップは、平坦な切断面を生成するステップを含むことができる。
【0012】
さらにより具体的な実施形態では、CADモデルの表面上の点は、その点が位置する各列が、列が基準軸に垂直な平面を通って延在する位置における局所接平面上のCADモデルの表面への射影において、基準軸に垂直な平面と同一の角度を含むように定義することができる。
【0013】
他の態様では、CADモデルの表面上の点を定義するステップは、ある点の変位が、前記点に貼り付けられたCADモデルの表面セグメントを前記点と共に局所的に移動させ、同時に表面セグメントは隣接する点に貼り付けられたままにするように、CADモデルの表面に点を貼り付けるステップを含む。すなわち、前記点のうちの1つを変位させると、表面セグメントは前記点となり、隣接する点はすべての点に付着したままであり、曲がっている。モデル表面の連続性は維持され、段差やその他の不連続性は発生しない。
【0014】
さらに別の実施形態では、CADモデルの表面上の点を定義することは、CADモデルの表面上の格子上に点を配置することを含み、格子は基準軸に垂直な平面内でCADモデルの表面上に延在する層からなり、各列は各層と一定の角度で交差する。より特定の実施形態では、この角度は90°の直角であってもよい。
【0015】
使用される特定のCADシステムの機能に応じて、列を定義することは、各層に対して一定の角度で層を切断する線上に配置されたすべての点を通るスプラインとして列を形成することを含む場合に有益であることが分かる。同様に、特定の実施形態では、画像データを少なくとも1つのスプラインで近似し、その結果得られたスプラインデータをCADシステムにインポートすることが有益であることが分かる。
【0016】
上述のように、切頭部品の画像データを取得するステップは、例えばスキャンすることによって切頭部品の3次元画像データを取得するステップを含むことができる。次いで、CADモデルと切頭部品の表現とを位置合わせするステップは、切頭部品の表現と切頭部品の表現に対応するCADモデルの部分とを整合させるステップを含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、切頭部品の画像データを取得するステップは、例えば写真によって切頭部品の切断面の2次元画像データを取得するステップを含んでもよい。これらの実施形態において、CADモデルと切頭部品の画像データの表現とを位置合わせするステップは、CADモデル上の切断面の位置に対応する位置を決定し、CADモデルを前記位置で切断し、切頭部品に対応するCADモデルの部分を除去し、そうして切り取られたCADモデルを取得し、切り取られたCADモデルの結果として得られた切り取り面を切頭部品の切断面の表現に整合させ、切り取ったCADモデルを切断面の表現に移植するステップを含むことができる。この点に関して、切断面は、切断面を囲み、したがって暗黙的に切断面を画定する切断面の境界線の表現によって同等に表すことができることを理解されたい。やはり、CADモデルはそれぞれ切頭部品、切断面、または境界線の表現に完全には適合しない可能性があるので、整合は、上で概説したように、当業者に公知の任意の方法を適用する最適適合を得ることを含むことができる。整合は、場合によってはCADオペレータによって手動で実行されてもよい。したがって、切頭部品の表現は補完され、部品の切断部分の改修用幾何学的形状の表現が提供される。CADモデルの切断は、CADオペレータによって手動で行われてもよい。
【0017】
本明細書に開示した方法の実施形態は、改修切断部分のモデルをスライスすること、およびツール経路を生成すること、および/または改修される切断部分の機械加工に適したCAMプログラムを作成するために改修される切断部分のモデルを処理することをさらに含むことができる。ツール経路は、一例として、レーザークラッディングツール経路であり得る。部品を改修し、改修した切断部分を提供することは、例えば、限定されるものではないが、レーザークラッディング機またはフライス盤などの工作機械において実施することができることが理解される。切断部分を改修する方法は、特に限定されないが、例えば、選択的レーザー溶融法SLMまたは電子ビーム溶融法EBMとして知られている周知の積層造形法を含むことができる。ツール経路は、例えば積層造形法のためのツール経路であってもよい。本願の文脈では、実施形態では磨耗部品である、部品を改修するのに適した各機器は、積層造形法を実行して切頭部品の切断面上に改修された切断部分を形成するための機械を含んでおり、命名を簡単にするために、「工作機械」という用語に包含される。
【0018】
さらなる態様では、切頭部品の画像データを取得する前に、切頭部品は、実施形態では磨耗部品である、部品を改修するための工作機械での使用を意図した固定具に取り付けられてもよい。次いで、画像データは、前記固定具に取り付けられた切頭部品を用いて取得されてもよく、さらに基準軸は固定具を基準とする。したがって、後のステップにおける基準軸の向きおよび切頭部品の位置は、工作機械に関して周知であり、それは、実施形態では磨耗した部品である、部品を工作機械によって改修することを容易にする。
【0019】
さらに開示するのは、実施形態では磨耗部品である部品の改修方法であって、前述の方法によって部品の改修用幾何学的形状をモデル化するステップと、部品を工作機械に提供するステップと、生成されたツール経路および/またはCAMプログラムのうちの少なくとも一方に従って工作機械を動作させて部品を改修するステップと、を含む。当業者は、本方法が切頭部品の切断面の位置および工作機械に対する基準軸の向きの知識を必要とすることを容易に理解するであろう。したがって、より具体的な実施形態では、本方法は、実施形態では磨耗部品である部品の改修用幾何学的形状をモデル化するステップを含み、さらに切頭部品は、切頭部品が固定具に取り付けられた画像データを取得する前に固定具に取り付けられる。基準軸は固定具を基準とし、固定具に取り付けられた切頭部品と共に固定具は工作機械に取り付けられる。特に、切断面の位置もまた固定具を基準とすることができる。したがって、固定具が工作機械に取り付けられると、工作機械の座標系に対する基準軸の向きが分かり、工作機械の座標系における切断面の位置が分かるようになる。さらなる実施形態では、固定具は、基準軸と、固定具を基準とした座標系とを定義してもよく、これは、改修用幾何学的形状の定義およびツール経路および/またはCAMプログラムの定義における座標系として使用される。
【0020】
上述の特徴および実施形態は、互いに組み合わせることができることが理解される。特に、必ずしもすべての方法ステップが、それらが特許請求の範囲に現れる順序で実行される必要があるとは限らないことが理解される(前述の順序で技術的意味のみを意味する場合を除く)。当業者であれば、どのステップが特定の順序で実行される必要があるか、そしてどのステップに対してそれらが実行される順序が特許請求の範囲における出現と異なるかもしれないかを容易に決定することができるであろう。さらに、当業者には明白かつ明らかであるが、本開示の範囲および特許請求されている主題の範囲内でさらなる実施形態が考えられることが理解されるであろう。
【0021】
本開示の主題は、ここで、添付の図面に示す選択された例示的な実施形態によって、より詳細に説明される。図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】CADシステム内の切断面および切頭部品の切断面の境界線の表現、ならびにこれらの表現に関して定義された基準軸の例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】基準軸と共に再構築される部品の例示的な切り取られたCADモデルを示す図である。
【
図3】切断面の表現と整合された切り取られたCADモデル、およびCADモデルの表面上に定義された点、層および列を示す図である。
【
図4】切頭部品の切断面の境界線の表現と切り取られたCADモデルの切り取り面の境界線との重ね合わせの上面図である。
【
図5】切断部品の表現に適合する変形CADモデルを示す図である。
【
図6】変形CADモデルの幾何学的形状に基づくツール経路の生成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面は非常に概略的であり、説明のために必要とされない詳細は、理解および描写を容易にするため省略されていることが理解される。図面は、選択された例示的な実施形態のみを示しており、図示されていない実施形態は、本明細書に開示した範囲および/または特許請求されている主題の範囲内にあることがさらに理解される。
【0024】
本明細書に開示した主題の理解を容易にするために、タービンブレードの先端部の改修の容易に理解される例示的な実施形態を用いて方法をより詳細に説明する。これは本明細書に開示した方法を実行する特定のモードの例示的な実施形態にすぎず、特許請求の範囲に記載の方法は、独立した請求項に包含される異なる方法で、改修される種々の部品を用いて実行することができる。
【0025】
上記のように、改修は必ずしも可能な限り綿密にオリジナルの幾何学的形状をスラブ的に再構築またはリシェイプすることとして理解するべきではない。しかし、それが元の新しく未使用の状態にあったときに改修される部品と比較したときに、改修された部品にアップグレードされたあるいは修正された幾何学的形状を提供することも含むことができる。
【0026】
一例として、本方法はそれに応じて磨耗したタービンブレードを改修するために使用される。当業者にはよく知られているように、そのようなブレードは、例えば時折擦れることによるだけでなく、高温燃焼ガスとの比較的大きな接触面に起因して、先端部領域において著しい磨耗を経験する可能性がある。ブレードの他の部分も磨耗する可能性がある。例えば、前縁、後縁、負圧側面および正圧側面の表面はわずかに侵食されることがあり、または残留物が前記表面に堆積することがある。さらに、ブレードが最初に製造されたとき、それは製造公差などのためにすでに理想的な公称状態からわずかに逸脱している可能性がある。要約すると、数千時間の動作後のブレードの幾何学的形状は、改造されるようなブレードのCADモデルの公称幾何学的形状に完全には適合しないことが理解されよう。しかしながら、これらの使用の痕跡は、ブレードの性能への影響が無視することができるか、あるいはいずれにせよブレードを廃棄することまたはブレード全体を改修することが経済的に正当ではないほど十分に最小であることが分かる。しかし、述べたように、ブレード先端部または翼形部先端部はそれぞれ、改修を必要とする場合がある。当業者に一般的に知られている方法では、例えば切断、フライス削り、または任意の他の適切な方法によって、先端部分がブレードから取り除かれる。次いで、例えばレーザークラッディング、あるいは例えば限定はしないが、選択的レーザー溶融(SLM)または電子ビーム融解(EBM)として知られるものなどの3D印刷と同様の積層造形法によって先端部分を切頭ブレード上に再構築することができる。あるいは、交換用先端部は、切頭ブレードの切断面に溶接されてもよく、あるいは他の方法で適切に接続されてもよい。やはり、これらの手段は単に例として挙げられているだけであり、特許請求された主題を限定するものとみなすべきではない。先端部を再構築するために他の適切な方法が適用されてもよい。しかしながら、当業者には容易に理解されるように、先端部がCADモデルの公称幾何学的形状に従って再構築されると、切頭部品と再構築先端部との間の移行部にほぼ確実に段差または他の不連続性が存在する。やはり、未使用の公称の新しい状態にある部品のCADモデルを提供することができることに留意されたい。他の例では、改訂版または他の修正版の部品のCADモデルを提供することができ、これは、部品を改善された性能をもたらす幾何学的形状にグレードアップするために、あるいは元の形状とは異なる改修された部品を提供するために有益であり得る。上で概説した不完全な適合は、上で概説した理由のために、切頭部品の実際の断面形状がCADモデルの理想的な公称幾何学的形状と完全には整合しないという事実によって現れる。これらの段差または不連続性は、ブレードの空気力学的性能に望ましくない影響を与える可能性があり、したがって、先端部分が再構築された後にブレードの再加工を必要とする。これは、改修プロセスに時間と費用を追加する。
【0027】
したがって、本開示は、ニアネット形状再構築プロセスによって部品の再構築された切断部分の再加工を最小限に抑える、または回避さえもするように、ブレードまたは先端部分のそれぞれの改修用幾何学的形状をモデル化することができる方法を提案する。他の態様では、本明細書に記載の方法を適用する際に得られる改修用幾何学的形状は、潜在的に必要とされる任意の手直しをかなり容易にすることができる。
【0028】
本開示の方法によれば、ブレードの損傷した先端部分を除去した後に、切頭ブレードの画像データが得られる。本実施形態では、切頭ブレードの切断面の写真を撮影する際に二次元画像データを取得する。一般に、部品の表面は、数千時間の動作後に、つや消しで比較的暗く見えるが、切断面は光沢があり明るく見えると仮定することができる。したがって、切断面を切頭部品の使用済み表面と区別すること、および切断面が切頭部品の未切断の使用済み表面と交わる境界線を識別することが特に容易である。
【0029】
本明細書に開示した方法を実施する例示的モードの次のステップについては、
図1を参照する。画像データの表現1がCADシステムにインポートされ、スプラインデータが使用される特定のCADシステムに適している場合には、例として境界線の表現3はスプラインによって近似される。CADシステム内には、切断面の表現2が設けられており、これは境界線の表現3によって囲まれている。基準軸4は、切断面の表現2を透過するように定義される。特に、基準軸4は、この実施形態では平らな切断面である切断面に対して垂直に定義される。次のステップでは、達成すべき状態にあるブレードのCADモデルが提供される。CADモデルは、CADモデルの切断面に対応する位置で切断され、切頭部品に対応するCADモデルの断面は、CADモデルから削除される。したがって、
図2を参照すると、切り取られたCADモデル5が得られ、それに対応して基準軸4に対して位置合わせされている。
図3に示すように、切り取られたCADモデルの結果として生じる切り取り面は、切頭部品の切断面の表現と整合する。
図3および
図4を合わせて検討することによって明らかになるように、切り取られたCADモデルは切断面の表現に完全には適合せず、したがって、
図4で特に明らかにされるように、切り取られたCADモデルの切り取り面の境界線51は、境界線の表現3と完全には一致しない。再び
図3を参照する。点6はCADモデルの外面上に定義される。これらの点は、いわゆる層8の交点または節点上に位置するように定義され、CADモデルの外面上で基準軸4に垂直な平面内に延在する線であり、いわゆる列7である。これはCADモデルの外面に延在する線で、一定の角度で、特に直角に層と交差する。点は、点の変位の際に多数の点によって広がる表面セグメントが点と共に変位するようにCADモデルに貼り付けられるが、表面セグメントの他の点に貼り付けられたままである。したがって、任意の単一点が変位すると、CADモデルの表面の連続性は維持されるが、その点に接続されている任意の表面セグメントは曲がる。したがって、CADモデルに貼り付けられた単一または複数の点を変位させることによって、連続面を有する変形CADモデルが生成される。
【0030】
図4を再度参照すると、切頭部品の切断面の境界線と切り取られたCADモデルの切り取り面の境界線51との整合された表現3の平面図を示しており、ブレードの改修された先端部分を表す幾何学的形状をモデル化するためにCADモデルがどのように変形されるかが概説されている。各列に対して、その列に最も近い境界線の表現3上の点が決定される。続いて、その列内のすべてのデータ点、または別の観点ではその列全体が、その列に最も近い点で境界線の表現に対して垂直な直線平行変位で移動する。この変位は、列が境界線の表現と交差するまで繰り返し実行される。選択された列、またはそれらの選択された列上のデータ点の変位は、それぞれ矢印9で示されている。点がCADモデルの表面に貼り付けられると、CADモデルの連続的な表面が維持されたまま、表面は点と共に曲がって移動する。さらなる態様では、変位は、列に最も近い点での境界線の表現と基準軸4の両方に垂直な軌跡に沿って実行されてもよい。
図4により、この変位がすべての列に対して実行された後に、切り取られたCADモデルの切り取り面の境界線が切頭部品の境界線の表現3と妥当な公差内で一致するように、変形CADモデルが成形される。当業者はさらに、適合の品質および正確さがCADモデルの表面上に定義された列の数に依存することを理解するであろう。当業者はさらに、要求される精度、または許容可能な公差について妥当な見積もりを完全に行うことができ、したがって、CADモデルの表面上に定義されるべき列の数および点の数を決定することができるであろう。
【0031】
図5は、切頭部品の切断面の表現に適合する変形された切り取られたCADモデル5’を示し、これは、変形された切り取られたCADモデル5’が切断面の境界線の表現3と同一平面上にあることを示す。
図6に示すように、ブレードの改修用幾何学的形状を表す変形された切り取られたCADモデルに基づいて、例えばブレードの改修用先端部分をニアネットシェイプエンティティとして製造することを可能にするレーザークラッディングツール経路を生成することができる。他の実施形態では、改修された先端部分を製造するための、および/または他の方法で改修されたブレードの幾何学的形状を作り直すための他の方法のためのツール経路またはCAMデータを生成することができる。場合によっては、画像データを取得する前にブレードを固定具に取り付けることができる。ブレードの幾何学的形状、特に切断面の位置、ならびに基準軸は、固定具を基準とすることができる。固定具は、CADシステムで実行されるすべての操作が参照することができる座標系を定義することができる。切頭部品がしっかりと取り付けられた固定具は、次いで、変形CADモデルから取得されたツール経路またはCAMデータに従った操作が実行される工作機械に取り付けることができる。この場合、すべての幾何学的形状データは、画像データを取得する際、CADシステム内で、および工作機械内で操作を実行する際に、1つの固有の座標系を参照する。容易に理解されるように、本明細書に記載の方法を実行するこの特定のモードでは、幾何学的形状データの変換および工作機械における切断面の再参照が必要とされないので、優れた精度が得られる。
【0032】
本開示の主題は、例示的な実施形態によって説明されているが、これらは、特許請求された発明の範囲を限定することを決して意図するものではないことが理解される。特許請求の範囲は、本明細書に明示的に図示または開示されていない実施形態をカバーし、本開示の教示を実施する例示的な態様において開示された実施形態から逸脱する実施形態は、依然として特許請求の範囲によって包含されることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0033】
1 画像データの表現
2 切断面の表現
3 境界線の表現
4 基準軸
5 CADモデル
5’ 変形された切り取られたCADモデル
6 点
7 列
8 層
9 矢印
51 境界線