(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】回転式粘度計を用いて物質の粘度を特定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
G01N11/14 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019085101
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】A 50365/2018
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A 50376/2018
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513304183
【氏名又は名称】アントン パール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Anton Paar GmbH
【住所又は居所原語表記】Anton-Paar-Strasse 20, A-8054 Graz-Strassgang, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ パニツキ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クラクスナー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ライター
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/142333(WO,A1)
【文献】ソ連国特許発明第01245948(SU,A)
【文献】特開平01-263533(JP,A)
【文献】特開平03-267738(JP,A)
【文献】特開平09-033421(JP,A)
【文献】特開平08-015121(JP,A)
【文献】特開平06-207898(JP,A)
【文献】特開平09-126981(JP,A)
【文献】米国特許第04765180(US,A)
【文献】西独国特許出願公開第03731317(DE,A1)
【文献】米国特許第04878378(US,A)
【文献】特開2017-003350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00~13/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部(4)によって駆動される測定回転軸(1)と、最大角度変位(φ
max)および最適角度変位(φ
opt)を有す
る弾性的な連結要素(6)と、前記測定回転軸(1)の一方の端部に配置されかつ試料(9)に供給可能な測定体(3)と、を含む回転式粘度計(10)を用いて、物質の粘度を特定する方法であって、
前記最適角度変位(φ
opt)は、前記最大角度変位(φ
max)よりも小さく、
前記測定回転軸(1)は、前記連結要素(6)を介して前記駆動部(4)に接続されており、
前記駆動部(4)と前記測定回転軸(1)との間の角度変位(φ)が測定動作時に測定可能であるように、前記測定回転軸(1)に対して配置されかつ構成されている角度測定ユニット(8)が設けられており、
前記回転式粘度計(10)は、前記角度測定ユニット(8)によって測定した、前記連結要素(6)の前記角度変位(φ)が供給される評価ユニット(12)を有しており、前記連結要素(6)の前記最適角度変位(φ
opt)は、前記評価ユニット(12)に格納されているかまたは前記測定を開始する前に前記評価ユニット(12)に供給され、
・第1のステップにおいて、前記試料(9)が中にある測定ビーカ(7)に前記測定体(3)を浸し、
・第2のステップにおいて、
前記測定回転軸(1)の前記回転数(n)が初期回転数(n
0)
を有する第1の測定点(P
0)から出発して、少なくとも2つの後続の測定点(P
1、P
2)において
前記測定回転軸(1)の前記回転数(n)がそれぞれの回転数(n
1、n
2)を有するように
、前記測定回転軸(1)が前記駆動部(4)によって駆動されることにより前記測定回転軸(1)の前記回転数(n)を段階的に増大させ、個々の前記測定点(P
0、P
1、P
2)において前記駆動部(4)と前記測定回転軸(1)との間のそれぞれの前記角度変位(φ
0、φ
1、φ
2)を
、前記角度測定ユニット(8)によって特定し、
・第3のステップにおいて、
前記評価ユニット(12)により、前記測定点(P
0、P
1、P
2)において特定した測定値を使用して、前記試料(9)に対し、前記回転数(n)と前記角度変位(φ)との間の関係についての推定関数(φ=f(n,t))を特定し、
・第4のステップにおいて、
前記評価ユニット(12)により、前記推定関数(φ=f(n,t))に基づいて、前もって定めた最適角度変位(φ
opt)が生じる最適回転数(n
opt)を特定し、
・第5のステップにおいて
、前記最適回転数(n
opt)において、
前記評価ユニット(12)により、前記試料(9)の粘度測定を実行する、
方法。
【請求項2】
前記最適角度変位(φ
opt)は、前記連結要素(6)の前記最大角度変位(φ
max)の少なくとも75%であ
ることを特徴とする、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記測定回転軸(1)の前記回転数(n)が前記初期回転数(n
0
)を有する前記第1の測定点(P
0
)において、前記測定体(3)は、停止状態であることを特徴とする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記試料(9)の前記粘度の前記測定のために、異なる粘度を有するそれぞれの試料(9)に対してそれぞれ最適な特性を有する、所定の個数の測定回転軸(1)および/または測定体(3)を用意し、
前記方法の前記第1のステップ~第3のステップに対し、任意の第1の測定回転軸(1)および/または測定体(3)を使用し、
前記第4のステップにおいて、特定した前記最適回転数(n
opt)および/または前記推定関数(φ=f(n,t))と、前記測定に対して規定されかつ定められた回転数(n
soll)と、を比較し、
現在の前記試料および/または前もって測定した基準流体に対する、前記測定回転軸(1)および/または前記測定体(3)の前記特性に基づいて、検査対象の前記試料(9)に対する最適測定回転軸(1)および/または最適測定体(3)を特定し、
前記第5のステップにおいて、前記試料(9)の前記粘度の前記測定に対し、特定した前記最適測定回転軸(1)を使用することを特徴とする、
請求項
1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
特定した前記最適測定回転軸(1)および/または前記最適測定体(3)を用いて、前記第1のステップ~前記第4のステップを繰り返すことを特徴とする、
請求項
4記載の方法。
【請求項6】
前記第2のステップにおいて、前記第1の測定点(P
0)から出発して、それぞれの回転数(n
1、n
2)を有する、それぞれの後続の前記測定点(P
1、P
2)において、前記測定回転軸(1)の前記回転数(n)を2倍にすることを特徴とする、
請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1のステップにおいてまたは前記第2のステップの開始時に、前記第1の測定点(P
0)における前記角度変位(φ
0)を、定められた値
に較正するかまたはリセットすることを特徴とする、
請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記定められた値は、0°であることを特徴とする、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
それぞれの測定点(P
0、P
1、P
2)におけるそれぞれの前記角度変位(φ
0、φ
1、φ
2)を、定常状態において特定することを特徴とする、
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記角度変位(φ
0、φ
1、φ
2)の2つの測定値の差分を形成し、無限インパルス応答フィルタを使用することにより、前記推定関数(φ=f(n,t))を特定することを特徴とする、
請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
パラメタ推定のために再帰最小二乗アルゴリズムまたはカルマンフィルタを使用することにより、前記推定関数(φ=f(n,t))を特定することを特徴とする、
請求項1から
10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第2のステップにおいて、前もって定めた最大角度変位(φ
max)が生じるまで前記回転数(n)を増大させ
、前記最大角度変位(φ
max)が生じた際に前記測定を中断することを特徴とする、
請求項1から
11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記推定関数(φ=f(n,t))を特定するために、所定の個数のモデルパラメタおよび/または予想モデルおよび/または基準物質によって特定した較正モデルを使用することを特徴とする、
請求項1から
12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記試料(9)の前記粘度の前記測定のために、それぞれ異なる最適角度変位(φ
opt)を有し、異なる粘度を有する試料(9)に対してそれぞれ最適な特性を有する、所定の個数の交換可能な連結要素(6)および/または角度測定ユニット(8)および/または回転式粘度計(10)を用意し、
前記評価ユニット(12)またはそれぞれの前記評価ユニット(12)に、前記連結要素(6)のそれぞれの最適角度変位(φ
opt)が格納されているか、または前記測定を開始する前に前記評価ユニット(12)に供給し、
前記第1のステップにおいて、前記方法の前記第1のステップ~第3のステップおよび/または第4のステップに対し、任意の第1の連結要素(6)および/または任意の第1の角度測定ユニット(8)および/または任意の第1の回転式粘度計(10)を使用し、
前記第4のステップにおいて、特定した前記最適回転数(n
opt)および/または前記推定関数(φ=f(n,t))と、前記測定に対して規定されかつ定められた回転数(n
soll)と、を比較し、
前記連結要素(6)および/または前記角度測定ユニット(8)の前記特性に基づいて、検査対象の前記試料(9)に対する最適連結要素(6)および/または最適角度測定ユニット(8)を特定して前記粘度の前記測定に使用することを特徴とする、
請求項1から
13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
駆動部(4)によって駆動される測定回転軸(1)と、最大角度変位(φ
max)および最適角度変位(φ
opt)を有す
る弾性的な連結要素(6)
と、前記測定回転軸(1)の一方の端部に配置されておりかつ試料(9)に供給可能な測定体(3)と、を含む、物質の粘度を測定する回転式粘度計(10)であって、前記最適角度変位(φ
opt)は、前記最大角度変位(φ
max)よりも小さく、前記測定回転軸(1)は、前記連結要素(6)を介して前記駆動部(4)に接続されており、
前記駆動部(4)と前記測定回転軸(1)との間の角度変位(φ)を測定動作時に測定可能であるように、前記測定回転軸(1)に対して配置かつ構成されている角度測定ユニット(8)が設けられている、回転式粘度計(10)において、
前記回転式粘度計(10)は、前記角度測定ユニット(8)によって測定された、前記連結要素(6)の前記角度変位(φ)を供給可能な評価ユニット(12)を有しており、
前記連結要素(6)の前記最適角度変位(φ
opt)は、前記評価ユニット(12)に格納されているかまたは前記測定を開始する前に前記評価ユニット(12)に供給可能であり、
前記回転式粘度計(10)および前記評価ユニット(12)は、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実行可能に構成およびプログラムされていることを特徴とする、
回転式粘度計(10)。
【請求項16】
前記弾性的な連結要素(6)は、ばねであることを特徴とする、
請求項15記載の回転式粘度計(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された、物質の粘度を特定する方法と、請求項13の上位概念に記載された、物質の粘度を測定する回転式粘度計と、に関する。
【背景技術】
【0002】
レオメータおよび粘度計により、一般に、流動媒体の流動特性が特定される。文献において、粘度計という用語とレオメータという用語との間には厳密な区別はない。一般に粘度計は、プロセス監視および製造用に粘度を検査する比較的簡単な装置であるのに対し、高精度のレオメータは、むしろ科学および研究に使用される。
【0003】
粘度の単なる相対的な測定が、ばねによって設定器および測定体の2つの軸を互いに連結し、回転式設定器に対して発生する、測定体の回転角から特定されるのに対し、高精度のレオメータに対しては、絶対値特定のために、より複雑な複数の試行の実行および複数の設定器ならびに測定体の定められた幾何学形状および間隔/ギャップ幅における付加的な測定値の特定が可能である。したがってワイセンベルグ効果の特定は、垂直力測定および検査対象の試料の別のパラメタから可能である。
【0004】
相対粘度計に一般に成り立つのは、粘度計の周囲長が増大するのに伴い、測定に使用される回転数が高くなるのに伴い、使用する測定体が、設定器に対し、測定部分がより大きく揺れ動いてしまうかもしくは遅れを生じさせることである。
【0005】
比較的簡単な粘度計のユーザは、多くの場合、高度に専門化された利用者ではなく、プロセス監視は、既知の試験装置によって行われる。未知の物質のおよび/または新しいチャージの測定の問題にこのユーザが直面するか、または試験の進行にわたって試料が大きく変化する場合、この手法は、このユーザにとって、トライアルアンドエラーにより、測定体幾何学形状および試験回転数からなる適切な組み合わせを特定することになる。同時に、このような相対測定に対しては、材料の測定のための「規定にしたがった」回転数をあらかじめ設定し、この方法に使用可能な測定体をさらに制限する一連の測定規定が存在する。
【0006】
流体の粘度を測定するために、回転式粘度計では、回転対称の測定体をこの流体に浸し、一定の回転数で駆動する。粘度計は、一定の回転数に必要な回転トルクまたは生じた角度変位を測定する。
【0007】
既知の回転数と、測定体の既知の特性と、測定した回転トルクもしくは測定した角度変位と、を用いて、試料の粘度が計算される。レオロジ研究者は、基準点としてのゼロ位置もしくはモータ軸の回転位置に対して測定される角度変位「φ」という言い方をする。
【0008】
ユーザは、試料の予想される粘度の、ユーザの経験もしくは推測に基づいて、試料流体に適合し得る回転数と、適合し得る測定体と、を選択する。慣れないユーザは、不適当な回転数および/または不適当な測定体を選択することが多い。
【0009】
回転数が低すぎるかまたは測定体が小さすぎると、使用可能な回転トルクもしくは使用可能な角度変位を測定することはできない。回転数が高すぎるかまたは測定体が大きすぎると、回転トルクセンサは、機械的な限界に(飽和状態に)達してしまう。いずれのケースにおいても、回転トルクセンサの測定領域は、最適に利用されない。というのは、測定システムの最大の精度は、測定体に応じて、最大限に測定可能な回転トルクもしくは最大角度変位の75%~95%の領域に及んでいるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、適切な回転数および測定体の選択においてユーザをサポートすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載した特徴的構成によって解決される。本発明によって規定されるのは、物質の粘度を特定するために回転式粘度計が設けられており、この回転式粘度計が、駆動部によって駆動される測定回転軸と、最大角度変位および最適角度変位を有する、特に弾性的な連結要素と、測定回転軸の一方の端部に配置されかつ試料に供給可能な測定体と、を含んでおり、最適角度変位は、最大角度変位よりも小さく、測定回転軸が、連結要素を介して駆動部に接続されており、駆動部と測定回転軸との間の角度変位が測定動作時に測定可能であるように、測定回転軸に対して配置されかつ構成されている角度測定ユニットが設けられており、回転式粘度計が、角度測定ユニットによって測定した、連結要素の角度変位が供給される評価ユニットを有しており、連結要素の最適角度変位が、評価ユニットに格納されているかまたは測定を開始する前に評価ユニットに供給され、
・第1のステップにおいて、試料が中にある測定ビーカに測定体を浸し、
・第2のステップにおいて、初期回転数、特に停止状態を有する第1の測定点から出発して、それぞれの回転数を有する少なくとも2つの後続の測定点において、測定回転軸の回転数を段階的に増大させ、個々の測定点において駆動部と測定回転軸との間のそれぞれの角度変位を特定し、
・第3のステップにおいて、測定点において特定した測定値を使用して、試料に対し、回転数と角度変位との間の関係についての推定関数を特定し、
・第4のステップにおいて、推定関数に基づいて、前もって定めた最適角度変位が生じる最適回転数を特定し、
・第5のステップにおいて、特に最適回転数において、試料の粘度測定を実行する、ことである。
【0012】
この手法により、より良好に再現可能な測定結果と、回転数および測定体選択の際のより迅速な選択/結果形成と、が得られ、またエラーがより生じにくくなる。
【0013】
本発明の関連において、最大角度変位とは、連結要素もしくはばねが、損傷されることなく最大に伸びるか、または連結要素のさらなる弾性変形が当接部によって停止される角度変位のことと理解される。最適角度変位とは、角度測定ユニットの測定誤差が最小である連結要素の角度変位のことであると理解され、この最適角度変位は、多くの場合に、使用される連結要素においてその最大角度変位に近傍にある。
【0014】
この方法の特に有利な実施形態は、従属請求項の特徴的構成によって詳細に定められる。
【0015】
特に小さい測定誤差は、最適角度変位が、連結要素の最大角度変位の少なくとも75%であり、特に80%より大きく、好ましくは85%より大きく、特に好ましくは90%であることによって得られる。
【0016】
適切な試験セットアップの選択においてユーザをサポートするために、規定することができるのは、試料の粘度の測定のために、異なる粘度を有するそれぞれの試料に対してそれぞれ最適な特性を有する、所定の個数の測定回転軸および/または測定体を用意し、方法の第1のステップ~第3のステップに対し、任意の第1の測定回転軸および/または測定体を使用し、第4のステップにおいて、特定した最適回転数および/または推定関数と、測定に対して規定されかつ定められた回転数と、を比較し、測定回転軸および/または測定体の特性に基づいて、検査対象の試料に対する最適測定回転軸および/または最適測定体を特定し、試料の粘度の測定に対し、特定した最適測定回転軸を使用する、ことである。
【0017】
測定の精度は、特定した最適測定回転軸および/または最適測定体を用いて、第1の方法ステップ~第4の方法ステップを繰り返すことによってさらに改善することができる。
【0018】
少数の測定点によって、広い回転数領域を検査できるようにするために、規定することができるのは、第2のステップにおいて、第1の測定点から出発して、それぞれの回転数を有するそれぞれの後続の測定点において、測定回転軸の回転数を2倍にすることである。好ましくは、これは、下方の回転数領域において、例えば、連結要素もしくはばねの最大変位の10%の、測定可能な変位を生じさせる変位まで行われる。
【0019】
この方法の定められた有利な初期点を生じさせるために、規定することができるのは、第1のステップにおいて、または第2のステップの開始時に、第1の測定点における角度変位を、定められた値に、特に0°に較正するかまたはリセットすることである。
【0020】
推定関数の精度は、それぞれの測定点におけるそれぞれの角度変位を、定常状態において特定することによってさらに高めることが可能である。測定の速度は、推定関数によって、回転数および角度変位の他に、測定点の時間的な展開も推定アルゴリズムに取り入れられ、これにより、ばね変位の定常状態に到達する前に最適回転数の予想が計算されることによって高めることができる。
【0021】
有利に規定することができるのは、角度変位の2つの測定値の差分を形成し、無限インパルス応答フィルタを使用することにより、推定関数を特定するか、またはパラメタ推定のために再帰最小二乗アルゴリズムまたはカルマンフィルタを使用することにより、推定関数を特定することである。
【0022】
推定関数をさらに有利に特定することができるのは、第2のステップにおいて、前もって定めた最大角度変位が生じるまで回転数を増大させ、好適には、最大角度変位が生じた際に測定を中断する場合である。
【0023】
任意選択的に規定することができるのは、推定関数を特定するために、所定の個数のモデルパラメタおよび/または予想モデルおよび/または基準物質によって特定した較正モデルを使用することである。
【0024】
測定体として使用される種々異なるそれぞれの回転体、例えばシリンダ、ディスクは、またはパドルも、例えば泡またはワックスなどのような扱いにくい物質において「チャネル」を形成することがあり、これにより、それぞれの測定結果もしくは測定される回転トルクは、限定的にしか意味を有しない。較正データを格納することにより、回転数と角度変位と回転トルクとの間のこのような関係をより良好に特定するか、または予想することができ、ユーザは、結果を適用する前に警告されるか、かつ/または正しい試行の実行の選択において、例えば、所定の測定体タイプの選択により、測定中の試料における測定体の沈降などがサポートされることが可能である。
【0025】
同様のことは、チキソトロープ物質(この材料は、剪断下でその粘性特性が変化する)にも当てはまり、その構造は、粘度検査中に破壊され、粘度値が減少することが多い。測定中の剪断により、このような材料では、運動に必要な回転トルクが、剪断の持続時間に逆比例して減少する。ここでも、測定体を特に熟考して選択することおよびユーザに警告を発することが有利である。
【0026】
有利に規定することができるのは、試料の粘度の測定のために、異なる粘度を有する試料に対してそれぞれ最適な特性を有する、所定の個数の交換可能な連結要素および/または角度測定ユニットおよび/または回転式粘度計を用意し、第1のステップにおいて、方法の第1のステップ~第3のステップおよび/または第4のステップに対し、任意の第1の連結要素および/または任意の第1の角度測定ユニットおよび/または任意の第1の回転式粘度計を使用し、第4のステップにおいて、特定した最適回転数および/または推定関数と、測定に対して規定されかつ定められた回転数と、を比較し、連結要素および/または角度測定ユニットの特性に基づいて、検査対象の試料に対する最適連結要素および/または最適角度測定ユニットを特定して粘度の測定に使用することである。
【0027】
本発明の別の態様は、本発明による方法を容易に実施することが可能な回転式粘度計を提供することである。これは、請求項13の上位概念に記載された回転式粘度計において、特徴部分に記載された特徴的構成によって解決される。本発明によって規定されるのは、回転式粘度計が、本発明による方法を実行可能であるように構成およびプログラムされた評価ユニットを有することである。
【0028】
本発明の別の利点および実施形態は、以下の説明および添付の図面から得られる。
【0029】
以下では、特に有利ではあるが制限的なものと理解してはならない実施例に基づき、本発明を複数の図面に略示し、これらの図面を参照して例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】回転式粘度計の本発明による一実施形態の略図である。
【
図3】本発明による方法の一実施形態の経過を示す線図である。
【
図4】本発明による方法の一実施形態の経過を示す別の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明による回転式粘度計10の一実施形態が図示されている。回転式粘度計10は、測定回転軸1と、駆動部4によって駆動される中空回転軸2と、を有する。この装置は、オーストリア国特許出願公開第5の0255/2018号明細書(A50255/2018)から公知である。中空回転軸2は、中空に形成されており、この中空回転軸2内に測定回転軸1が共軸に配置されている。測定回転軸1の端部には、測定体3が配置されている。測定回転軸1および中空回転軸2は、その一方の端部が、この実施形態では上端部もしくは測定体3とは反対側の端部が、ケーシング5に突出している。ケーシング5は、中空回転軸2に接続されており、中空回転軸2と一緒に回転する。ケーシング5内には、ばねとして形成された連結要素6が配置されている。このばねは、ケーシング5と測定回転軸1との間に配置されており、これらにそれぞれ一方の端部が固定されている。測定中、測定体3は、試料9を有する測定ビーカ7に浸され、中空回転軸2は駆動部4によって駆動される。ばねが測定回転軸1およびケーシング5に固定されることにより、またケーシング5が中空回転軸2に固定されることにより、中空回転軸2もしくは測定回転軸1が駆動部4によって駆動されると、ばねは、試料9における測定体3の抵抗と、測定回転軸1に加わるその反作用トルクと、によって伸張する。連結要素6もしくはばねは、特殊な特性を有しており、最大角度変位φ
maxを有する。連結要素6もしくはばねが、最大角度変位φ
maxを越えて変形すると、これは、場合によって損傷するか、またはもはや自力では、完全には、弾性変形的に元に戻れなくなる。連結要素6もしくはばねの最適角度変位φ
optは、測定誤差が最小になる、連結要素の角度変位である。これは、多くの場合、粘度計もしくは連結要素6のメーカによって指定される。最適角度変位φ
optは、常に最大角度変位φ
maxよりも小さい。
【0032】
回転式粘度計10は、さらに、測定動作時に中空回転軸2と測定回転軸1との間の角度差分および/または角度変位φを測定できるように、測定回転軸1に配置されかつ構成された角度測定ユニット8を有する。
【0033】
回転式粘度計10は、さらに評価ユニット12を有しており、粘度計10の評価ユニット12により、駆動部4の回転数を閉ループ制御もしくは開ループ制御することができ、測定値を角度測定ユニット8に供給することができる。評価ユニット12には、角度測定ユニット8によって測定した、連結要素6の角度変位φもしくは角度測定ユニット8によって測定した測定値が供給される。評価ユニット12には、さらに、連結要素6の最適角度変位φoptを格納することができるか、または測定を開始する前にこれを評価ユニット12に供給することができる。
【0034】
当業者には、さらに宝石軸、玉軸受などを備えた、測定回転軸1および測定体3を支承するさまざまな装置が公知である。さらに、簡単な測定回転軸1または中空回転軸2を使用した連結要素6および回転角測定部8の、本発明による方法に使用可能な取り付けも公知であり、これについては、例示的に、米国特許第2の679750号明細書(US 2,679,750)に記載された装置またはオーストリア国特許発明第5の08705号明細書(AT508705B1)に記載された出願人の装置を挙げる。一般に、広い粘度測定領域にわたって粘度の測定を行う際には、連結要素6の特性が異なるさまざまな回転式粘度計10が使用される。
【0035】
択一的には、連結要素6を捩り要素として構成することも可能である。したがって、例えば、測定回転軸1は、ケーシング5に接続されている端部に、測定回転軸1の軸に配置されておりかつ測定動作時に弾性的に捩れる捩り針金を有していてよい。この場合にこの捩れまたはひずみは、ひずみゲージまたは別の測定センサによって記録して評価に使用することができる。
【0036】
図3および
図4の線図に基づいて、以下では、本発明による方法の一実施形態を、例示的に説明する。
図3には、角度変位φが、時間tについてプロットされており、
図4には、角度変位φが、回転数nについてプロットされている。
【0037】
測定を開始する前、試料9が測定ビーカ7に充填され、本発明による回転式粘度計10に位置決めされる。測定回転軸1には測定体3が取り付けられ、測定ビーカ7の上に位置決めされる。第1のステップでは、測定体3が、測定ビーカ7に、またその中にある試料9に浸される。第2のステップでは、次に、停止状態から出発して回転数nが高められ、第1の測定点P0において回転数n0で動き始める。過渡過程の後、すなわち安定した角度変位φが、定められた精度内に到達すると、角度変位φ0が、角度測定ユニット8によって測定され、回転数nが第2の測定点P1に高められる。ここで回転数n1は、例えば、測定点P0の回転数の2倍であってよい。回転数n1に到達した直後、角度変位φ1が測定される。次に、点P1における過渡過程の後、角度変位φ1.1が、測定点P1における回転数n1において測定される。測定点P1から出発して、回転数nは、さらに、回転数n2を有する測定点P2に高められ、例えば2倍にされ、次に角度変位φ2の測定が、回転数n2に到達してすぐに、または角度変位φが整定した後に、すなわち定常状態において行われる。この定常状態もしくは整定状態は、それぞれの回転数nに到達した後に、測定を実行するための固定の時間間隔をあらかじめ設定することによって設定できるか、または連続した測定によって実際の角度変位φを特定することにより、または個々の測定値および閾値をあらかじめ設定することによって行うことができる。この過程は、次に後続の測定点P3、P4およびP5について繰り返される。
【0038】
第3のステップでは、評価ユニット12により、回転数n
1、n
2、n
3、n
4、n
5、…の特定した角度変位φ
0、φ
1、φ
2、φ
3、φ
4、φ
5、…に基づいて、もしくは測定点P
0、P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、…に基づいて、検査される試料9に対し、回転数nと角度変位φとの間の関係についての推定関数φ=f(n,t)(
図3)を特定する。この場合に推定関数φ=f(n,t)により、特定の測定体3によって検査したそれぞれの試料9に対し、回転数nと角度変位φとの間の関係が示される。次の第4のステップでは推定関数φ=f(n,t)を用いて、現在の測定体3およびそれぞれの試料9についての最適回転数n
optが特定される。
【0039】
しかしながら好ましくは、個々の測定点P0、P1、P2、P3、P4、P5、…における定常状態への到達を待機するのではなく、推定関数f(n)=φにより、定常状態に到達する前にすでに別の測定値もしくは現在の測定値が考慮される。すなわちここではモデル形成が、動的システムのφ=f(n,t)として行われる。これにより、定常状態において測定される少なくとも1つの初期値の後、測定を迅速に行うことが可能であり、したがって測定の持続時間が短縮される。
【0040】
駆動部4もしくは測定回転軸1に加わる回転トルクは、角度変位φと、連結要素6もしくはばねのばね定数と、の関数である。ここでは回転トルクおよび回転角は、連結要素6に対し、直線的に関係する。したがって最適角度変位φ
optは、回転式粘度計10もしくは連結要素6について示される角度変位φの100%に可能な限りに近い。というのは、この場合に、測定される回転トルクが、可能な限りに大きく、ひいては測定時に生じる相対誤差が最も小さくなるからである。したがって、ばねもしくは連結要素6に応じて、75%より大きい角度変位φが望ましく、最適回転数n
optにおける最適角度変位φ
optは、可能な限りに大きく、好ましくは、最大角度変位φの80%より大きく(
図3)、最適には85%よりも大または90%である。
図3に示した実施例において最適角度変位φ
optは、28 1/分の回転数(
図4)で、80%に、すなわち直線領域の終わりに位置する。
【0041】
第5のステップでは次に、推定関数φ=f(n,t)によって特定した最適回転数noptにおいて、実際の角度変位φを測定し、測定体パラメタと、駆動部4の回転数nと、回転トルクもしくは角度変位φと、から粘度を計算する。
【0042】
ばねもしくは連結要素6は、回転式粘度計10に測定体3を挿入する際に変位させられることがあるため、任意選択的には、第1のステップにおいてもしくは測定点P0において、角度変位φを近似的にまたは正確に0°にすることが可能である。このためには、例えば、モータ軸に対する測定軸1の角度変位φが測定され、0°の角度変位φを生じさせる回転数nであって、このゼロ点から出発して次に、この新しい測定点P0における角度変位φの測定によってこの方法が開始される回転数nが特定される。測定体3の動的な構成部材は、この計算を誤らせることがあるため、さらに正確な初期状態を得るために、このステップを任意に何度も繰り返してよい。
【0043】
試料9の粘度を測定する、本発明による方法の、別の任意選択的な一実施形態において、この測定方法には、所定の個数の測定回転軸1および/または測定体3が用意される。これらの測定回転軸1および測定体3は、それぞれ異なる特性を有し、これらの特性により、異なる粘度を有するそれぞれ異なる試料9に対し、最適な測定結果が提供される。第1のステップでは、任意の測定体3もしくは任意の測定回転軸1が、回転式粘度計10に取り付けられ、試料9の上に位置決めされる。次に最初の3つの方法ステップが、第1の測定回転軸1および第1の測定体3により、上で説明したように実行され、推定関数φ=f(n,t)および/または最適回転数noptが、評価ユニット12によって特定される。特定した推定関数φ=f(n,t)および/または特定した最適回転数noptは、次に、取り付けられた第1の測定回転軸1の特性と、取り付けられた第1の測定体3と、またはそれらの最大回転数nmaxと、比較される。次にこの比較から、第1の測定回転軸1もしくは取り付けられた第1の測定体3により、好ましい角度変位φoptにおいて、現在の試料9に対する測定を実行できるか否かが特定される。現在の測定回転軸1および現在の測定体3により、試料9についての最適回転数noptを達成できる場合、粘度は、最適回転数noptにされ、角度変位φがこの回転数において測定される。現在の測定回転軸1および現在の測定体3により、最適な条件下で試料9の粘度の測定を実行できないことが確認される場合、特定した推定関数φ=f(n,t)および/または特定した最適回転数noptは、試料9との組み合わせにおいて、別の測定回転軸1および測定体3の特性と比較され、最適測定体・試料の組み合わせおよび/または最適測定回転軸・試料の組み合わせが、検査対象の試料9に対して特定されてユーザに通知される。次に第5のステップにおいて、試料9の粘度が、最適測定回転軸1または最適測定体3によって特定されるか、または最適測定回転軸1および最適測定体3が探し出され、これらによって試料9の粘度の測定が、最適回転数noptもしくは最適角度変位φoptで実行されて粘度の測定がこの測定点において実行されるまで第1の方法ステップ~第4の方法ステップが繰り返される。
【0044】
推定関数φ=f(n,t)により、回転数nおよび角度変位φの他に、測定点の時間的な展開も推定アルゴリズムに取り入れられ、ひいては連結要素6もしくはばねの変位の定常状態に到達する前に最適回転数noptの予想が計算されることにより、測定の速度を高めることができる。
【0045】
任意選択的には、この方法が、付加的または択一的に交換可能な連結要素6および/または交換可能な角度測定ユニット8および/または複数の回転式粘度計10を利用できるようにすることも可能であり、特定した推定関数φ=f(n,t)に基づいて、最適角度測定ユニット8および/または最適連結要素6および/または最適回転式粘度計10、または試料9によりよく適合している回転式粘度計10を推奨するかまたは指示することでき、この場合には粘度の測定をこれらによって行うことができる。択一的には、使用している連結要素6、角度測定ユニット8、回転式粘度計10、測定回転軸1および/または測定体3により、誤ったもしくは不正確な結果が生じることの警報をユーザに出力するかもしくは表示することもできる。
【0046】
任意選択的には、本発明による方法において、連結要素6の105%の、最大ばね変位もしくは最大角度変位φmaxが生じるかまたは角度変位φmaxにおける当接に到達するまで、回転数nを高めることが可能である。この場合、この最大角度変位φmaxが生じた際には、測定を中断して、別の測定回転軸1または別の測定体3を取り付けることの推奨を出力することができる。
【0047】
択一的に規定することができるのは、本発明による方法に基づいて、例えば、規格によってあらかじめ設定された、現在の試料9に対する回転数において、測定を試みることができる否かを特定し、この場合に、この回転数nおよび現在の試料9に最適測定回転軸1、最適測定体3、最適角度測定ユニット8、最適連結要素6および/または最適回転式粘度計10を出力または表示することである。
【0048】
本発明による方法では、例えば、次の任意選択に基づいて、推定関数φ=f(n,t)を求めることができる。
【0049】
例えば、2つの測定値の差分形成と、これに続く2次の「無限インパルス応答フィルタ」と、によって変位の変化の計算を実現し、この結果に基づいて推定関数φ=f(n,t)を特定することが可能である。
【0050】
任意選択的には、再帰最小二乗アルゴリズムを用いてオンラインでリアルタイムに低次の離散時間のシステムモデルを識別し、そのパラメタから推定関数φ=f(n,t)を計算することも可能である。この場合に測定は、別の複数の測定点Pにおいて継続され、計算した推定関数φ=f(n,t)は、これが数値的に安定するまで、すなわち定められた期間および別の複数の点Pにわたって、定められた領域内に一定にとどまるまで新たに特定され、次に推定関数φ=f(n,t)が確定されて、この方法が継続される。
【0051】
択一的には、パラメタ推定のためにカルマンフィルタを用いてオンラインでリアルタイムに低次の時間離散のシステムモデルを識別し、そのパラメタから推定関数φ=f(n,t)を計算することも可能である。計算したこの推定関数φ=f(n,t)が別の複数の点Pにおいて数値的に安定すると直ちに、すなわち所定の期間にわたって定められた域内に入ると直ちに、推定関数φ=f(n,t)が確定されて、上記の方法が継続される。
【0052】
別の任意選択的な一実施形態では、付加的なテーブル、モデルパラメタおよび/または値、基準物質の較正モデルおよび関数も格納することができ、これらは、推定関数φ=f(n,t)の作製時に取り入れられる。
【0053】
図2では、線図において、適切な測定体3の選択が示されている。回転式粘度計10もしくはその連結要素6は、最適角度変位φ
optを有する。測定体3およびその特性S1による、純粋にニュートン流体的な試料9の振る舞いにより、すでに低い回転数において、特定した推定関数φ=f(n,t)に基づいて示されるのは、この測定体・試料組み合わせによっては、最大変位角φ
maxの95%の最適変位角が、最も高い許容される最大回転数n
maxに到達する前には可能でないことである。
【0054】
回転数nと、角度変位φおよび評価ユニット12に格納されている、回転トルクの計算と、の関係から、この試料9もしくはその粘度に対し、最善の特性S2を備えた適切な測定体・回転数の組み合わせもしくは測定体3を提案することができる。ここでは、ユーザに利用可能な測定体3を考慮することができる。利用可能な測定体3、測定回転軸1および回転数nにより、試行を実行できない場合には、回転式粘度計10または連結要素6の交換がユーザに推奨される。
【0055】
図3には、提案された推定関数φ=f(n,t)による実際の測定の測定点P
0、P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、…の時間経過が示されている。値をわかり易くするため、それぞれの角度変位φが、時間軸tについて示されている。ここでは、本発明にしたがい、回転数nは、ゼロから出発して、測定点P
0における約10%の角度変位φに到達するまで、2倍にされる。この測定値は、ここでは好ましくは比較的高い精度で特定され、すなわち角度変位φ
0は、整定された定常状態において特定される。これ以降、後続の回転数領域は、特に、検査される液体もしくは試料9の厳密にニュートン流体的な振る舞いがある場合には、回転数nの急峻な増大で経過し得る。
【0056】
好ましい一実施形態において、上記の方法もしくは推定関数φ=f(n,t)および測定点Pもしくは回転数nおよび角度変位φについて値の対は、定常状態に到達することがなくても実行することが可能である。この場合には最適回転数noptに到達した際に、連結要素6の定常的な角度変位φを求めるために、ひいては回転トルクを十分な精度で特定するために、ここでも多くの測定点Pを特定する。
【0057】
択一的にはここでも測定を終了して、実際に測定することなく、測定を実行するための最適なパラメタをユーザに示すことができる。
【0058】
別の一実施形態では、推定関数φ=f(n,t)を作成するために、液体がその静的な粘度にしたがって特徴付けられ、その際に、例えば構造粘性流体と、ダイラタント流体と、ニュートン流体と、が区別される。このためには、例えば、時間的により新しい値が好ましい、小さい時定数を有する「指数関数的忘却」の分だけ、再帰最小二乗アルゴリズムが拡張される。本発明による方法において個々のステップを実行する間、回転数nおよび角度変位φの測定データに基づき、動的な伝達関数を計算し、その係数から、整定状態における増大を推定し、ここから静的な剪断速度・剪断応力特性曲線上の測定点を生成する。この特性曲線の経過から、評価ユニット12により、粘度の特性が特定される。このために、測定点間の勾配の変化が観察される。正の変化の際にはダイラタント流体が推定され、負の変化の際には構造粘性流体が推定され、小さい変化もしくは線形の変化の際にはニュートン流体が推定され、つぎにこの特性が、推定関数φ=f(n,t)の作成の際に考慮される。
【0059】
別の一実施形態では、剪断速度・剪断応力特性曲線を、いくつかの測定点Pにしたがい、低次の多項式によって近似もしくは外挿し、最適な剪断応力もしくは角度変位φに対する回転数値nを計算することができる。このためには、任意選択的かつ/または付加的には、種々異なる測定体によるそれぞれの特性に対し、モデル物質による較正曲線を格納し、特定した推定関数φ=f(n,t)から、種々異なる測定体3によるこの較正曲線を使用して、試行の実行の最適な組み合わせを予想し、かつ/または提案することができる。