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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】電池ボックス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20230911BHJP
   H01M 50/256 20210101ALI20230911BHJP
【FI】
H01M50/244 Z
H01M50/256 201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019088928
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020184483
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆暁
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-005776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0148176(US,A1)
【文献】特開2014-110145(JP,A)
【文献】特開2016-018757(JP,A)
【文献】特開2007-294273(JP,A)
【文献】特開2004-031116(JP,A)
【文献】特開2002-096865(JP,A)
【文献】実開平05-055448(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電源とする機器に用いられ、正極端子と負極端子とを備えた電池を、包装材によって包装された電池パックの状態で収納可能な電池ボックスであって、
前記電池パックが交換可能に収納される収納空間と、前記収納空間内に突出する接点と、
前記収納空間の内方に、前記接点を格納可能に突出させる接点突出機構と、
を備え、
前記接点は、先端側に、前記包装材を破断する破断部を備え、
前記接点突出機構は、前記電池パックを前記収納空間に収納させる動作に連動して前記接点の先端側を当該収納空間内に突出させ、
前記接点突出機構により前記収納空間内に前記接点が突出すると、前記破断部により前記包装材が破断されるとともに、前記接点が前記電池パック内の前記電池の前記正極端子及び前記負極端子と導通状態で接触する、
ことを特徴とする電池ボックス。
【請求項2】
前記収納空間を開閉可能に閉鎖する蓋を備え、前記接点突出機構は、前記蓋が閉じられると前記接点を当該収納空間内に突出させる、ことを特徴とする請求項に記載の電池ボックス。
【請求項3】
前記接点突出機構は、前記収納空間内に前記電池パックを収納させる動作に連動して前記接点を当該収納空間内に突出させるリンク機構で構成されていることを特徴とする請求項に記載の電池ボックス。
【請求項4】
筒軸方向の一端に正極端子を備え、他端に負極端子を備えた筒形の電池が収納され、前記収納空間は、前記正極端子が前記筒軸の一方向に向けた状態で当該筒軸と直交する方向に並列に配置された複数個の前記電池を、前記電池パックの状態で収納できることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の電池ボックス。
【請求項5】
配線によって複数個の前記電池が直列接続されることを特徴とする請求項に記載の電池ボックス。
【請求項6】
配線によって複数個の前記電池が並列接続されることを特徴とする請求項に記載の電池ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電池ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ乾電池などの円筒形電池を電源とした機器には、電池を収納するための電池ボックスが設けられているものがある。また、複数個の電池を電源として用いる機器の電池ボックスには、複数個の電池を、互いの円筒軸が平行となるように並列に配置させた状態で収納するものがある(非特許文献1参照)。
【0003】
並列に配置された複数の電池を電気的に直列に接続する電池ボックスは、各電池の正極端子と負極端子のそれぞれに接触する端子(以下、接点と言うことがある)を備え、直列接続される複数個の電池は、隣り合う電池同士で正極端子と負極端子とが互い違いとなるように電池ボックスに収納される。また、電池ボックスにおいて、複数の電池が直列接続されてなる集合電池の両端電極に対応する接点は、外部回路に接続され、他の接点は、隣り合う電池同士が直列接続されるように、隣り合う接点同士で接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社タカチ電気工業、”埋込電池ボックス”、[online]、[平成31年4月9日検索]、インターネット<URL:http://www.takachi-el.co.jp/data/pdf/2016-12-031.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池ボックスにおいて、使用済みの電池を新しい電池に交換する場合、新旧の電池が同じ銘柄であると、電池ボックスから取り出した使用済みの電池と、これらから電池ボックスに収納しようとする新しい電池との区別がつき難く、誤って古い電池を再度電池ボックスに収納してしまうことがある。そして、複数個の電池を収納する電池ボックスでは、新旧の電池を混在させてしまう可能性がある。
【0006】
また、電池ボックスに電池を収納する際には、電池の極性を逆にして接点に接触させてしまう「逆挿」に注意する必要がある。特に、複数個の電池を並列に配置しつつ直列接続させる電池ボックスでは、隣接する円筒形電池の正極端子と負極端子とを互い違いにする必要があるため、一つあるいは複数の電池を逆挿してしまう可能性が高くなる。そして、機器の電源として放電すべき電池が逆挿されると、その電池が充電状態となる。電池がアルカリ乾電池やマンガン乾電池である場合、漏液が発生する可能性がある。もちろん、電池ボックスに新旧の電池を混在させて収納した場合も同様に漏液が発生する可能性がある。そして、電池が漏液すると、電池ボックス内の接点を腐食させ、機器が使用不能になる可能性がある。また、漏れ出た電解液がユーザーの手指に触れる可能性もある。なお、複数個の電池を交換する際には、その複数の電池が同時に購入されたもので、かつ同じ銘柄であることが望ましい。しかし、実際には、様々な銘柄の電池や保存期間が異なる電池を寄せ集めて交換する場合も多い。
【0007】
そこで本発明は、漏液が発生しても機器の汚染を最小限に止めたり、複数個の電池が並列に配置された状態で収納される場合には、電池を交換する際に新旧の電池や銘柄の異なる電池を混在させる可能性や、逆挿の可能性を激減させたりすることができる電池ボックスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、電池を電源とする機器に用いられ、正極端子と負極端子とを備えた電池を、包装材によって包装された電池パックの状態で収納可能な電池ボックスであって、
前記電池パックが交換可能に収納される収納空間と、前記収納空間内に突出する接点と、
前記収納空間の内方に、前記接点を格納可能に突出させる接点突出機構と、
を備え、
前記接点は、先端側に、前記包装材を破断する破断部を備え、
前記接点突出機構は、前記電池パックを前記収納空間に収納させる動作に連動して前記接点の先端側を当該収納空間内に突出させ、
前記接点突出機構により前記収納空間内に前記接点が突出すると、前記破断部により前記包装材が破断されるとともに、前記接点が前記電池パック内の前記電池の前記正極端子及び前記負極端子と導通状態で接触する、
ことを特徴とする電池ボックスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、漏液が発生しても機器の汚染を最小限に止めたり、複数個の電池が並列に配置された状態で収納される場合には、電池を交換する際に新旧の電池や銘柄の異なる電池を混在させる可能性や、逆挿の可能性を激減させたりすることができる電池ボックスが提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る電池ボックスに収納される電池パックを示す図である。
図2】実施例に係る電池ボックスを示す図である。
図3】実施例に係る電池ボックスに電池パックを収納する際の状態を示す図である。
図4】実施例に係る電池ボックスの内部構造を示す図である。
図5】実施例に係る電池ボックスにおける配線の接続状態を示す図である。
図6】実施例に係る電池ボックスが備える接点突出機構の変形例を示す図である。
図7】実施例に係る電池ボックスが備える接点突出機構のその他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例に係る電池ボックスについて、以下の添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
===電池パック===
筒形電池(以下、電池と言うことがある)の販売形態として、シュリンクパックがある。図1にシュリンクパックによって提供されている複数個で一組の電池(以下、電池パック10と言うことがある)を示した。図1は、四個のLR6型の円筒形アルカリ乾電池11が熱収縮フィルムからなる包装材12によって包装されてなる電池パック10であり、図1(A)、および図1(B)は、それぞれ、電池パック10を、電池11の正極端子13側、および負極端子14側から見たときの斜視図である。そして、図1(A)、図1(B)に示したように、電池パック10は、円筒軸100が互いに平行となるように、複数の電池11が並列に配置された状態で、包装材12内に密閉されてなる。
【0012】
ここで、電池の円筒軸100方向を前後方向とするとともに、正極端子13が前方に配置されていることとして前後の各方向を規定し、一つの電池パック10における電池11の配列方向を左右方向とすると、実施例に係る電池ボックスは、前後方向を揃えて左右方向に並列配置された複数個の電池11を、電池パック10の状態で収納しつつ、外部の電気回路に電気的に接続させるための構成を備えている。
===実施例===
図2に実施例に係る電池ボックス1を示した。ここで、電池ボックス1に収納される電池11における前方と後方、および左右方向を、電池ボックス1における前方と後方、および左右方向にも適用するとともに、前後方向と左右方向とに直交する方向を上下方向とする。そして、図2(A)は、電池ボックス1を、前方、上下一方から見たときの斜視図であり、図2(B)は、電池ボックス1を、後方、上下他方から見たときの斜視図である。
【0013】
実施例に係る電池ボックス1は、図1に示した四個のLR6型アルカリ乾電池11を含む電池パック10を収納するものであり、図2(A)、(B)に示したように、電池11の収納空間となるケース部21が形成された矩形箱状の筐体2を備える。ケース部21は前後左右に壁面(22、23)を有するとともに、上下一方の面に開口24を有する。以下、ケース部21の上方に開口24を有していることとして上下の各方向を規定することとすると、ケース部21は、下方が閉鎖された角筒状の空間であり、電池パック10は、上方からケース部21内に収納される。なお、電池ボックス1には、ケース部21内の電池パック10が逸脱しないように、開口24を開閉自在に閉鎖するとともに、筐体2と係合して閉止状態を維持する図示しない蓋が設けられる。もちろん、蓋を設けなくても、可撓性を有する素材で筐体2を構成し、ケース部21の左右上縁辺を庇状にケース部21の内方に張り出させることでもケース部21内の電池11が開口から逸脱することを抑止することができる。いずれにしても、実施例に係る電池ボックス1は、上記非特許文献1に記載されている従来の電池ボックスと同様に、ケース部21内の電池パック10の脱落を抑止するための構成や構造を有していることが望ましい。
【0014】
実施例に係る電池ボックス1では、筐体2におけるケース部21の前方および後方に閉鎖空間25が設けられており、ケース部21の前壁面22と後壁面23とには、常設された接点がなく、接点に対応する位置に、筐体2の閉鎖空間25内に通じるスリット26が形成されている。筐体2の閉鎖空間25内には、接点を、スリット26を介して格納自在にケース部21内に突出させる接点突出機構が格納されている。
【0015】
また、筐体2における閉鎖空間25(以下、機構格納部25と言うことがある)の上面27から、接点突出機構を操作するためのスライドボタン31が突出している。また、機構格納部25の上面27には、ケース部21に収納される電池11の極性を示す「+」および「-」の極性符号28が記されている。そして、実施例に係る電池ボックス1では、図3(A)、(B)に示したように、四個一組の電池11が電池パック10の状態でケース部21に収納される。各電池11は、電池パック10の状態では、同じ極の電極端子同士(13または14)が前後一方向を向いており、電池パック10をケース部21に収納する際には、上記の極性符号28に従って、前後の向きを合わせればよい。
【0016】
図4に、接点突出機構の構造を示した。図4は、電池ボックス1を前後方向と上下方向とを含む面で切断したときの縦断面図であり、図4(A)は、ケース部21に電池パック10の状態で収納された電池11の電極端子(13、14)と接点32とが導通していないときの電池ボックス1を示しており、図4(B)は、電池11の電極端子(13、14)と接点32とが導通状態にあるときの電池ボックス1を示している。
【0017】
図4(A)、(B)に示したように、筐体2の機構格納部25内には、接点32と、その接点32をスライドボタン31に対する操作に従動させる接続部材33とが格納されている。接点32は、金属製の刃で構成されており、前後内方向側の先端34が包装材12の破断するための刃先(破断部)となっている。そして、接点32は、ケース部21内の前後の壁面(22、23)に形成されたスリット26の位置に対応して、図における紙面奥行き方向に四つ並んで配置されている。
【0018】
図4(A)に示したように、接点32は、スライドボタン31を前後外方に移動させた状態では、機構格納部25内に格納されており、この状態で電池パック10をケース部21に収納したならば、図4(B)に示したように、スライドボタン31を前後内方にスライドさせる。それによって、接点32の先端34側がスリット26を介してケース部21内に突出し、刃先である接点32の先端34が電池パック10における熱収縮フィルムからなる包装材12を破断する。そして、接点32が各電池11の電極端子(13、14)と接触し、各接点32に接続されている配線を介して外部回路と電池11とが導通状態となる。
【0019】
図5に電池ボックス1における配線4の接続状態を示した。図5(A)は、ケース部21内の四個の電池11を直列接続するための接点32と配線4との接続状態、および接点32と外部回路41との接続状態を示す図であり、図5(B)は、四個の電池11を並列接続させるための配線4の接続状態を示す図である。
【0020】
図5(A)に示したように、四個の電池11を直列接続させる電池ボックス1では、四個の電池11が、左右一方の端の電池11aから左右他方の電池11bに向かって、直列に接続されるように、左右方向で互いに隣接する二個の電池11の左右一方側の電池11の正極端子13に対応する接点32aと、その電池11に対して左右他方側に隣接する電池11の負極端子14に対応する接点32bとが、配線4によって接続されている。
【0021】
また、左右方向に並ぶ四個の電池11のうち、左右一方の端の電池11aの負極端子14に対応する接点32bと、左右の他方の端の電池11bの正極端子13に対応する接点32aとに接続されている配線42が電池ボックス1の外方に引き出されている。そして、その外方に引き出された配線42の端部43が外部回路41の配線44の端部45に接続されている。なお、左右一方の端の電池11aの負極端子14に対応する接点32bと、左右の他方の端の電池11bの正極端子13に対応する接点32aとに接続されている配線42はなくてもよい。すなわち、これらの端子(32a、32b)が、配線部材として、外部回路からの配線44に直接接続されていてもよい。
【0022】
また、図5(B)に示したように、四個の電池11を並列接続させる電池ボックス1では、四個の電池11の正極端子13に対応する接点32a同士、および負極端子14に対応する接点32b同士が配線4によって接続されている。また、正極端子13に対応する接点32a同士を接続させる配線4、および負極端子14に対応する接点32b同士を接続させる配線4は、それぞれ、電池ボックス1の外方に引き出される配線42に接続されている。そして、その外方に引き出された配線42の端部43が外部回路41の配線44の端部45に接続されている。なお、外方に引き出される配線42はなくてもよい。正極端子13に対応するいずれかの接点32aと、負極端子14に対応するいずれかの接点32bとが、配線部材を兼ねて、外部回路41からの配線44に直接接続されていてもよい。
【0023】
以上の構成を備えた実施例に係る電池ボックス1では、電池11を電池パック10の状態で収納できることから、電池11を交換する際に、誤って、新旧の電池11を混在させてしまうことがない。また、当然のことながら、電池パック10内の電池11は製造年月日や銘柄が同じであるため、保存期間や銘柄が異なる電池11を混在させてしまうこともない。電池パック10の状態にある複数の電池11のそれぞれは、正極端子13および負極端子14の方向が前後一方向に揃っていることから、複数の電池11を直列接続させる場合でも、隣り合う電池11の前後方向を互い違いにする必要がなく、逆挿の可能性を確実に低減させることができる。
【0024】
さらに、電池ボックス1に収納されている電池11が、使用済みの状態で放置されて過放電状態になり、結果的に漏液したとしても、電池11の内容物が電池パック10の包装材12内に留まり、漏液による電池ボックス1や機器の汚染を最小限に止めることができる。
【0025】
なお、電池パック10の包装材12には、熱収縮フィルムの内側に正極端子13や負極端子14を保護する厚紙が配置されたものがあるが、実施例に係る電池ボックス1では、このような電池パック10にも対応できるように、接点32は、熱収縮フィルムとともに厚紙も破断できる強度を有している。もちろん、接点32の強度不足が懸念される場合には、電池ボックス1、電池ボックス1を備えた機器、あるいは機器の取扱説明書などに、厚紙を有する電池パック10を使用しない旨を注意書きとして記載しておくことも考えられる。いずれにしても、実施例に係る電池ボックス1は、接点32の強度を適宜に設定することで、厚紙の有無に拘わらず電池パック10の包装材12を破断することができる。
【0026】
実施例に係る電池ボックス1では、複数の電池11同士の電気的な接続状態を自在に設定することができるため、例えば、四個の電池11のうち二個の電池11を一組にして直列に接続するとともに、二組の直列接続された電池11を並列に接続させるなど、外部回路41の電源に関わる仕様に応じて、接点32同士の導通状態を変更することができる。
===その他の実施例===
上記実施例に係る電池ボックス1における接点突出機構3は、スライドボタン31に対する手動操作によって接点32を格納可能にケース部21内に突出させていたが、接点突出機構3は、電池パック10をケース部21に収納させる動作に連動して接点32をケース部21内に突出させるように構成されていてもよい。図6図7とに、上記実施例のものとは異なる接点突出機構(103、203)を備えた電池ボックス(101、201)の縦断面図を示した。
【0027】
図6に示した電池ボックス101は、ケース部21を閉鎖する蓋5の開閉動作に連動して接点32が突出する接点突出機構103を備えている。図5(A)は、接点32が機構格納部25内に格納された状態を示す図であり、図5(B)は、接点突出機構103の構造を示す図である。そして、図6(C)は、接点32がケース部21内に突出した状態を示す図である。図6(A)に示したように、電池ボックス101は、ケース部21を閉鎖しつつ、筐体2の上面を覆う蓋5を備えている。ここに例示した電池ボックス101では、蓋5は、筐体2の前後一端側に取り付けられたヒンジ51によって開閉するように構成されている。また、蓋5と筐体2とは、図示しない係合構造によって係合し、蓋5が閉止状態で固定されるようになっている。
【0028】
機構格納部25の上面27には、下方に押下可能なボタン131が配設されており、蓋5が開いている状態では、そのボタン131が機構格納部25の上面27から上方に突出している。接点突出機構103は、このボタン131と、ボタン131の押下動作と接点32をケース部21内に突出させる動作とを連動させるリンク機構とによって構成されている。
【0029】
リンク機構は、図6(B)に示したように、ガイド132に案内されて前後方向に移動可能な前後移動部材133、ボタン131の下方に連続してボタン131に対する押下操作を前後移動部材133の前後内方向の運動に変換する上下移動部材134、および前後方向を螺旋軸として前後移動部材133の前後内方側の端面136に取り付けられたコイルバネ135を含んで構成されている。そして、金属製の刃からなる四個の接点32が前後移動部材133の前後内方向側の端面136に取り付けられている。
【0030】
前後移動部材133の前後外方向の端面137と上下移動部材134の下端面138とは互いに対面する斜面で構成されており、これらの端面(137、138)が接触しつつ相対的に摺動することで、上下移動部材134の下方への運動が、前後移動部材133の前後内方向への運動に変換される。また、コイルバネ135が、前後移動部材133の前後内方側の端面136と、ケース部21の前後の壁面(22、23)との間に介在している。
【0031】
そして、図6(A)に示したように、蓋5が開いた状態で、ボタン131が押下されていないときは、前後移動部材133が、コイルバネ135の付勢力により、前後外方向側に移動した状態で保持され、接点32の先端が機構格納部25内に格納されるようになっている。また、前後移動部材133の前後外方向への運動が、当該前後移動部材133と上下移動部材134とが接触する上記の端面(137、138)を介して上下移動部材134を上方に移動させる運動に変換される。それによって、ボタン131が、上方に押し上げられ、機構格納部25の上面27から突出した状態となる。
【0032】
図6(C)に示したように、蓋5が閉じられるとボタン131が押下され、上下移動部材134が下方に移動する。この上下移動部材134の下方への運動は、上記の端面(137、138)によって、前後移動部材133を前方に移動させる運動に変換される。それによって、前後移動部材133が、コイルバネ135を圧縮させながら前後内方向に移動し、接点32の先端34側がケース部内に突出する。そして、刃先である接点32の先端34が、ケース部21内に突出した電池パック10の包装材12を破断し、接点32と電池パック10内の電池11の電極端子(13、14)とが導通状態となる。
【0033】
図7に示した電池ボックス201の接点突出機構203は、電池パック10をケース部21に収納する動作によって接点32と電池11の電極端子(13、14)とが導通するように構成されている。図7(A)は、接点32が機構格納部25に格納された状態を示す図であり、図7(B)は、接点32がケース部21内に突出した状態を示す図である。
【0034】
図7(A)に示したように、ケース部21の底220は、二重底で、上方の底221と下方の底222との間にコイルバネ223が介在し、コイルバネ223は、上方の底(以下、可動底221と言うことがある)が下方に押圧されると下方の底(以下、固定底222と言うことがある)との間で圧縮される。また、筐体2には、前方と後方とに加え、下方にも機構格納部224が設けられている。固定底222には、筐体2の下方の機構格納部224に連絡する孔225が形成されている。そして、移動底221の下面には、上下方向を軸方向として当該孔225に対して挿抜される棒状部材226が取り付けられている。
【0035】
接点突出機構203は、可動底221の上下方向の運動を接点32の前後方向の運動に変換するためのリンク機構によって構成されている。当該リンク機構は、固定底222を介して筐体2下方の機構格納部224に挿抜される棒状部材226の上下運動を、筐体2の前後の機構格納部227に内蔵されている接点32の前後運動に変化させるための構成を含んでいる。
【0036】
具体的には、図7(A)に示したように、棒状部材226の下端に二つのL字状のアーム228の一端が回転軸229を介して取り付けられており、移動底221が下方に押し込まれていない状態では、二つのL字状のアーム228は、それぞれ、前方または後方に延長しつつ上方に屈曲している。また、先端34が刃先になっている接点32の基端側が、L字状のアーム228の他端側と接続部材230を介して連結されている。L字状のアーム228において、接続部材230に接続されている側を先端側、棒状部材226に接続されている側を基端側とすると、接続部材230と接点32、および接続部材230とアーム228の先端側とは、それぞれ、左右方向に延長する個別の回転軸(231、232)によって連結されている。また、接続部材230は、接点32を軸支している回転軸231の上下位置がガイド233によって固定されている。それによって、接点32が前後方向にのみ移動可能となっている。
【0037】
そして、図7(B)に示したように、ケース部21内に収納された電池パック10によって移動底221を押し下げると、二つのL字状のアーム228の基端側が互いに近接するように揺動し、ガイド233に案内された接続部材230を介して接点32が前後内方向に移動し、ケース部21内に突出する。なお、図7に示した電池ボックス201では、電池パック10が圧縮状態にあるコイルバネ223によって押し上げられないように、蓋5が、図示しない筐体2との係合構造によって閉止状態を維持し、移動底221が、電池パック10によって押し下げられた状態を維持する。蓋5を開ければ、移動底221がコイルバネ223によって上方に押し上げられ、接点32が筐体2における前後の機構格納部227に格納される。また、電池パック10の上側がケース部21の外方に突出し、電池パック10を容易に取り出せるようになる。
【0038】
なお、蓋5の開閉動作や電池パック10の収納動作に連動させて接点32をケース部21内に突出させる接点突出機構(103、203)の具体的な構成や構造については、図6図7に示した例に限らず、種々のリンク機構によって実現することができる。
【0039】
上記実施例に係る電池ボックス(1、101、201)では、接点32が刃で構成されていたが、針状などであってもよい。接点32は、電池パック10の包装材12を破断、あるいは貫通可能な先端形状を有する導電体で構成されていればよい。
【0040】
四個の電池11を含む電池パック10は、例えば、八個の電池11が収納された電池パック10の包装材12を左右方向に二等分となるように破断して得た二つの四個一組の電池パック10の一方であってもよい。もちろん、ケース部21に収納される電池11の数は、四個に限らない。
【0041】
実施例に係る電池ボックス(1、101、201)のケース部21に、包装材12によって包装されていない状態の電池11を収納してもよい。実施例に係る電池ボックス(1、101、201)は、電池パック10の状態にない電池11であっても、電池11が、正極と負極の電極端子(13、14)のそれぞれが前後一方向に向いた状態でケース部21に収納されるため、逆挿などが発生し難いという効果を奏するものとなる。
【0042】
実施例に係る電池ボックス(1、101、201)のケース部21が、一個の電池11を収納するように構成されていてもよい。実施例に係る電池ボックス(1、101、201)のケース部21に一個の電池11が収納される場合であっても、その一個の電池11が電池パック10の状態であれば、電池ボックス(1、101、201)は、過放電などによって漏液が発生した場合に、包装材12の中に電池11の内容物が留まり、接点32や機器が汚染され難いという効果を奏するものとなる。
【0043】
電池ボックス(1、103、203)のケース部21は、9V型006Pなど、筒軸100方向の一端側に正極端子13と負極端子14の双方が配置されている角型乾電池を収納するように構成されていてもよい。そして、スリット26が、ケース部21の前後一方の壁面(22、または23)に設けられ、接点突出機構(3、103、203)が、そのスリット26を介して接点32をケース部21内に突出させるように構成されていればよい。
【0044】
電池ボックス(1、101、203)の接点突出機構(3、103、203)を省略することもできる。例えば、接点32をケース部21内に突出させておく。また、接点32の先端34に前後外方向に力が加わった際には、接点32が前後外方向に移動するように接点32をバネなどによって前後内方向に付勢させておく。それによって、ケース部21内に電池パック10が収納される際、接点32の先端34が、バネの付勢力に抗して前後外方向に押圧され、接点32が、前後外方向に移動しつつ、先端34で包装材12を破断する。そして、電池パック10がケース部21内に収納された状態では、バネの付勢力によって接点32の先端34が電池11の電極端子(13、14)に押しつけられて、接点32と電極端子(13、14)とが導通状態となる。
【符号の説明】
【0045】
1,101,201 電池ボックス、2 筐体、3,103,203 接点突出機構、
4,42,44 配線、5 蓋、10 電池パック、11 円筒形電池、12 包装材、13 正極端子、14 負極端子、21 ケース部、22,23 ケース部の壁面、
25,224,227 機構格納部、26 スリット、28 極性符号、
24 ケース部の開口、32 接点、34 接点の先端、41 外部回路、
51 蓋のヒンジ、100 電池の筒軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7