(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20230911BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20230911BHJP
G01M 1/16 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q17/12
G01M1/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019102569
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519198557
【氏名又は名称】ジー・エフ マシーニング ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】GF Machining Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Roger-Federer-Allee 7,2504 Biel,Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】519198579
【氏名又は名称】インスパイア アー・ゲー フュア メヒャトロニッシェ プロドゥクツィオーンスズュステーメ ウント フェアティグングステヒニク
【氏名又は名称原語表記】inspire AG fuer mechatronische Produktionssysteme und Fertigungstechnik
【住所又は居所原語表記】Technoparkstrasse 1, 8005 Zuerich, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ポステル
(72)【発明者】
【氏名】ネルザト ビルジャン ブーダイジュ
(72)【発明者】
【氏名】フレディ クスター
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フィリップ ブスシェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー モナン
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524820(JP,A)
【文献】特開2006-043865(JP,A)
【文献】特開2015-017969(JP,A)
【文献】特開2003-090831(JP,A)
【文献】特開平10-176977(JP,A)
【文献】特開平07-113725(JP,A)
【文献】特開昭59-069245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0236529(US,A1)
【文献】米国特許第06349600(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
B23Q 17/00-23/00
G01L 5/00-5/28
G01M 1/00-1/38
G01M 5/00-7/08
G01M 13/00-13/045
G01N 29/00-29/52
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の構造的特徴を決定するためのシステム(1)であって、
a.前記工作機械に使用される工具(2)内に動的励起を誘発するように構成された励起装置(20)と、
b.前記工具において静的力を発生させるように構成された予荷重装置(10)と、
c.データセットを取得するための感知装置(30)であって、前記データセットに基づき前記工作機械の構造的特徴を決定することができる感知装置(30)と、
を含
み、
前記予荷重装置は、前記工具の回転軸の径方向または軸方向に前記工具において磁力を発生させるための少なくとも1つの永久磁石(10a,10b)を含む、
システム(1)。
【請求項2】
前記工具が回転軸の周りを回転する場合に、前記システムは、適用できる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記予荷重装置は、所定の静的力に等しい磁力を発生するように構成されている、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記予荷重装置は、前記工具の回転軸の径方向および軸方向に磁力を発生させるための少なくとも2つの永久磁石を含む、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記予荷重装置はさらに、前記永久磁石によって発生した磁力を所定の静的力に調整するための調整手段(11a,11b)を含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記調整手段は、前記永久磁石と前記工具との間の距離を変えることができ、それによって前記永久磁石によって発生した磁力を変化させることができるように、前記永久磁石に作用的に接続された少なくとも1つの微細ねじを含む、請求項
5記載のシステム。
【請求項7】
前記所定の静的力は、前記工具が切削しているときの平均切削力に等しい、請求項
3から
6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記励起装置は、インパクトハンマ
ーである、請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記励起装置は、自動インパクトハンマー(21)である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記感知装置は、前記工具の位置を測定するための少なくとも1つの非接触変位トランスデューサ(31)を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記非接触変位トランスデューサは、容量センサ、渦電流センサまたはレーザ振動計である、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記感知装置は、衝撃力の大きさを測定するための第1の力センサ(32)を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、コントローラ(50)をさらに含み、
前記コントローラ(50)は、前記励起装置を制御し、前記感知装置によって取得されたデータセットを受信し、受信した前記データセットに基づいて前記工具の構造的特徴を決定するように構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記工具において前記予荷重装置によって発生した力を測定するために、前記システム内に第2の力センサが統合されている、
請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
工作機械の特徴を決定するための方法であって、前記方法は、
a.工作機械内のスピンドルに工具を取り付けるステップと、
b.請求項1から14までのいずれか1項記載のシステムを、工具の近傍で、励起装置が工具内で動的力を誘発することができかつ予荷重装置が工具に静的力を加えることができる位置に、安定的に配置するステップと、
c.工具を回転状態で操作するステップと、
d.励起装置により工具内で動的力を誘発するステップと、
e.感知装置によりデータセットを取得するステップと、
f.取得したデータセットに基づいて前記工作機械の構造的特徴を決定するステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記方法は、
a.工具において永久磁石によって発生した磁力を調整手段によって所定の静的力に調整するステップと、
b.インパクトハンマーによって工具内に衝撃力を誘発するステップと、
c.第1の力センサによって前記衝撃力の大きさを測定するステップと、
d.非接触変位トランスデューサによって工具の位置を測定するステップと、
を含む、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工プロセスの結果を予測し、それによってその最適化を可能にするためには、工作機械の構造的特徴、より具体的には機械加工プロセスで使用される工具の先端における結果として生じるその挙動を正確に知る必要がある。例えば、フライス加工プロセスにおいて、機械加工条件下での工作機械の構造的特徴と切削プロセスとの間の相互作用を予測することは、いわゆる安定ローブ線図を決定することを可能にする。この安定ローブ線図は、工具の回転速度、すなわちスピンドルおよび切削深さに関して、回生現象によって誘発される切削工具と工作物との間の自励的なびびり振動を受けるプロセスの安定限界を表す。
【0003】
安定ローブ図の計算に必要な構造的特徴は、工具と工作物との間の動的コンプライアンスである。この動的コンプライアンスは、工具先端と工作物との間に作用する対応力に関する工具先端と工作物との間の相対変位の周波数応答関数によって定められる。
【0004】
構造的特徴を識別するために、計装化インパクトハンマーによる衝撃試験が一般的に使用される。この計装化インパクトハンマーは、試験構造体、例えば工具の打撃によって励起力パルスを試験構造体に導入し、力センサの統合によって発生した力の測定を可能にする装置である。工具における周波数応答関数は、工具内に誘発された衝撃力に対する応答を測定することによって決定されている。工具と工作物との間の動的コンプライアンスを得るためには、周波数応答関数も工作物側で測定し、次いで工具側で得られたものと組み合わせる必要がある。
【0005】
標準的なインパクトハンマーを使用した測定条件は、通常、特に工具側の機械加工中の負荷条件とは大きく異なっている。これは、安全上の理由から、インパクトハンマーの使用は非回転工具でのみ推奨されるが、機械加工中のスピンドルシャフトの回転は、結果として生じる工具先端の動特性に大きく影響する可能性があることによる。さらに、機械加工プロセスによって発生する機械的負荷は、静的および動的力成分の追加として表すことができる。静的成分は平均的な機械加工力に対応するが、ハンマーによって発生する衝撃はいかなる静的荷重成分も誘発しない。それゆえ、負荷パラメータまたは工具の回転速度への強い依存性を示す構造では、機械加工条件と測定条件との違いによって重大な予測誤差が引き起こされる可能性がある。これは、シャフトがアンギュラコンタクトボールベアリングによって支持されているスピンドルでの典型的なケースである。結果として生じる接触角、ベアリングシステムの各剛性は、シャフトの回転速度によって影響を受ける。そのようなベアリングの剛性はまた、ベアリングの予荷重にも依存する。機械加工プロセスは、軸受の有効予荷重を増減させ、かつ結果として生じる剛性を潜在的に変更する傾向がある重大な静的負荷を発生しやすい。
【0006】
さらに、操作者によって扱われるハンマーの手動操作のために、衝撃の大きさおよび位置が著しく変化する可能性があり、それは結果として生じる周波数応答において、重大な変動につながり、したがって大きな測定不確実性をもたらす。これは、衝撃試験によって誘発されるエネルギーが少ない、共振ピークから離れた周波数範囲において特に当てはまるが、それでも安定ローブ線図の予測には関連がある。
【0007】
欧州特許第2824440号(EP 2824440)には、モード衝撃試験のためのシステムが記載されている。このシステムは、第1のコンポーネントセットと、第1のコンポーネントセットとは別個の第2のコンポーネントセットと、を含む。第1のコンポーネントセットおよび第2のコンポーネントセットは、モーダル衝撃試験のためのモーダル衝撃試験システムを含む。モーダル衝撃試験システムの衝撃システムは、動作速度で回転する試験要素に衝撃を与えるように構成されている。
【0008】
工作機械の構造的特徴を決定するための既知のシステムおよび方法は、測定条件が切削工具の回転との組み合わせにおいて機械加工プロセスによって発生する可能性がある静的荷重の影響を考慮しておらず、したがって実際の機械加工条件とは異なり、それによって予測誤差が引き起こされるという点で不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術の解決手段の欠点を回避する、工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0010】
特に、本発明の課題は、決定された構造的特徴の精度を向上させる、工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる課題は、より自動化されたセットアップを可能にする、工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、これらの課題は、独立請求項の特徴によって解決される。さらに、好ましいさらなる実施形態は、従属請求項および以下の説明から明らかとなる。
【0013】
欧州特許第2916187号は、びびり振動中央データベースを含むびびり振動データベースシステムに関する。この中央データベースには、工作機械の機械加工条件およびびびり振動条件に対応するデータが供給される。びびり振動中央データベースに供給されるデータは、びびり振動データベースシステムに含まれる少なくとも2つの個々の工作機械から取得され収集される。データは実際の条件に基づくびびり振動安定マップの生成のためにびびり振動中央データベースに送信される。本発明において開示されるシステムおよび方法は、工作機械の構造的特徴を決定するために欧州特許第2916187号に開示されたびびり振動データベースシステムに適用可能である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、工作機械の構造的特徴を決定するためのシステムは、励起装置、予荷重装置および感知装置を含む。励起装置は、工作機械で使用される工具、特に工具の円筒形部分に動的励起を誘発するように構成されている。予荷重装置は、工具に静的な力(以下静的力とも称する)を発生させるように構成されている。感知装置は、それに基づき工具の構造的特徴を決定することができるデータセットを取得するために適用される。構造が特定の要因に強く依存する場合には、機械加工条件の典型的な測定条件において構造的特徴を決定する必要がある。励起装置と予荷重装置を含むシステムを適用することにより、動的負荷と静的負荷の両方を工具に導入することができる。したがって、機械加工条件を測定条件において正確にシミュレートすることができる。
【0015】
好ましい一実施形態では、このシステムは、工具が回転軸周りに回転する場合に適用することができる。工具の回転中に工具内に動的励起が誘発されると、より信頼性の高い周波数応答関数を得ることができ、これは結果として構造的特徴の正確な決定につながる。この実施形態は、フライス加工プロセスで使用されるような工作機械の構造的特徴を決定するのに特に有利である。フライス加工は、工具が回転している間に工具先端と加工物との間に周期的な切削力を発生させる断続的な切削プロセスである。この結果として生じる負荷は、径方向と軸方向の両方における静的および動的切削力成分の組み合わせとして表すことができる。予荷重装置は、平均切削力を表す静的力を発生させることができる。したがって、本発明によるシステムは、機械加工条件のより典型的な測定条件において工具先端の構造的特徴の決定を保証し、工作機械の構造的特徴をより正確に予測することができる。論理的には、フライス加工プロセスのより正確な安定ローブ線図を得ることができる。
【0016】
一実施形態では、予荷重装置は工具に磁力を発生させるように構成されている。発生した磁力は所定の静的力に等しい。
【0017】
一変形例では、予荷重装置は、工具において工具の回転軸の径方向または軸方向に磁力を発生させるための少なくとも1つの永久磁石を含む。
【0018】
別の変形例では、磁力は電磁石によって発生する。予荷重装置は、コアの周りにコイルを含む。コアとして強磁性材料を使用することができる。コイルに電流を流すことによって、磁場が発生する。この変形例は、電流の変更によって磁場を急速に変えられる利点を有する。
【0019】
強磁性体または反磁性体のような磁界の存在下で磁化されやすい材料で作られた工具の場合、工具の近くに配置された永久磁石は引き寄せる反発磁力を発生し、それは、永久磁石と工具との間の距離、永久磁石によって発生する磁場強度、両物体の幾何形状、および工具材料の透磁率に依存する。所定の予荷重を達成するために永久磁石と工具との間に設定する距離は、典型的には有限要素法を用いて計算することができるか、あるいは予荷重装置と工作機械テーブルとの間の力経路内に力センサを配置することによって測定することができる。
【0020】
好ましい一変形例では、予荷重装置は、工具において工具の回転軸の径方向および軸方向に磁力を発生させるための少なくとも2つの永久磁石を含む。この変形例では、第1の磁力は、回転軸の径方向に配置された第1の永久磁石によって回転軸の径方向に発生しており、それに対して、第2の磁力は、回転軸の軸方向に配置された第2永久磁石によって回転軸の軸方向に発生している。所定の静的力は、径方向と軸方向の成分を含み得る。システム内に2つの永久磁石を独立して統合することにより、静的力の2つの成分を、測定条件に個別に導入することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、予荷重装置は、永久磁石によって発生した磁力を所定の静的力に調整するための調整手段をさらに含む。回転工具の近傍に配置された永久磁石は、静荷重を発生させる。
【0022】
一変形例では、調整手段は、永久磁石と工具との間の距離を変えることができ、それによって永久磁石によって発生した磁力を変化させることができるように、永久磁石に作用的に接続された少なくとも1つの微細ねじを含む。この微細ねじによって工具と磁石との間のギャップを調整することにより、所定の静的力、例えば切削力の静的成分に等しい力を発生させることが可能である。これはシステムの柔軟性を高めると同時に工具に作用する静的力のレベルを簡単な方法で調整することができる。
【0023】
永久磁石によって発生した磁力を変えるための他の変形例は、工具と機械テーブルとの間の位置を調整することである。例えば、機械軸を制御することにより、工具は、永久磁石と工具との間の距離を変えることができるように再配置することができる。機械軸は正確に制御することができるので、距離および結果として生じる磁力を正確に制御することが可能である。
【0024】
一実施形態では、そのときの工具が切削工具である場合、所定の静的力は切削力の静的成分である。切削工具は、特定の機械加工プロセスに限定されるものではない。それは、旋削、成形、フライス加工、穿孔、研削など、さまざまな機械加工プロセスで使用される切削工具であり得る。
【0025】
フライス加工プロセスの適用において、予荷重装置によってシミュレートするための平均切削力は、典型的には500Nまでに達し得る。そのような大きさのオーダーは、例えば、直径50mmの円筒形ネオジム-鉄-ホウ素永久磁石を使用し、直径が30mmの強磁性材料で作られた工具を用いて永久磁石とこの工具の間の距離を約1mmに考慮することで達成することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、励起装置は、インパクトハンマーを使用することによって衝撃力を誘発するように構成されている。好ましい変形例では、調整可能な正確な励起の発生を可能にするために自動計装化インパクトハンマー装置が選択されている。この自動インパクトハンマー装置は、目標物体に衝撃を与えるときに、適切な衝撃力を発生させるために端部先端を自動的に動かす作動システムを使用する。自動インパクトハンマーは、調整可能で反復可能な衝撃の発生を可能にさせ、通常は、端部先端と作動システムとの間に配置された力センサを装備している。特に、衝撃力は、工具の円筒形部分、例えば切削工具の切削部分の上の部分に誘発される。しかしながら、切削部分は形成されていないが同じ構造的特徴で特徴付けられるダミー工具を使用することも考慮すべきである。
【0027】
いくつかの実施形態では、感知装置は、工具の位置の偏差が導出されるように、工具の位置を測定するための少なくとも1つの非接触変位トランスデューサを含む。2つの非接触変位トランスデューサが測定中にそれらが工具の径方向平面に直交して配置されるように配置することは有利である。
【0028】
いくつかの変形例では、非接触変位トランスデューサは、容量センサもしくは渦電流センサ、またはレーザ振動計である。
【0029】
一実施形態では、感知装置は、工具に作用する衝撃力の大きさを測定するための第1の力センサを含む。周波数応答関数は、工具の測定された位置を応答信号として使用し、測定された衝撃力を入力信号として使用することによって導出することができる。
【0030】
さらなる実施形態では、システムは、励起装置を制御するように、例えば自動インパクトハンマーによって発生する衝撃力のトリガと大きさを制御するように構成されたコントローラをさらに含む。このコントローラはさらに、工具の測定位置、およびインパクトハンマーによって工具内に誘発された衝撃力などのような、感知装置によって取得されたデータセットを受信するように構成されている。データセットは、有線通信または無線通信を使用して感知装置からコントローラに転送されてもよい。ここでは、コントローラを、受信したデータセットに基づいて構造的特徴を決定するように構成することが可能である。
【0031】
自動インパクトハンマーの使用は調節可能でかつ正確な励起の発生を可能にする。それゆえ、衝撃力の大きさは、対応する機械加工プロセスの典型的な動的励起を発生させるためには較正される必要がある。自動インパクトハンマーは固定具に取り付けられており、操作者によって手動では扱われないので、発生した衝撃の高い再現性は、極限モードのより正確な特徴付けを可能にする。コントローラを使用すれば、測定手順全体を自動化することも可能である。その上さらに、インパクトハンマーは、機械の作業領域において操作者からのいかなる操作も必要としないので、操作者にいかなる怪我のリスクも負わせることなく、工具が回転している間に工具に衝撃を与えることも可能である。
【0032】
一変形例では、永久磁石によって発生した磁力は、システムに組み込まれた第2の力センサを使用して所定の静的力に較正することができる。例えば、力センサは、永久磁石と調整手段との間に配置することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、システムは、フライス加工プロセス、旋削プロセス、成形プロセス、穿孔プロセス、または研削プロセスのうちの1つに使用される工作機械の構造的特徴を決定するために使用される。
【0034】
一変形例では、その上にシステムを取り付けることができる支持手段として、機械テーブルへの自動配置または機械テーブルからの自動取り外しが可能なパレットシステムが選択されている。このパレットシステムは、通信と電力供給のためのドッキング装置を含み得る。このようにして、試験の自動化をさらに改善することができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、工作機械に使用される工作機械の特徴を決定するための方法は、以下のステップを含む。すなわち、
工作機械内の工具ホルダに工具を取り付けるステップと、
励起装置、予荷重装置および感知装置を含むシステムを、工具の近傍で、励起装置が工具内で動的力を誘発することができかつ予荷重装置が工具に静的力を加えることができる位置に、安定的に配置するステップと、
工具を回転状態で操作するステップと、
励起装置により工具内で動的力を誘発するステップと、
感知装置によりデータセットを取得するステップと、
取得したデータセットに基づいて工作機械の構造的特徴を決定するステップと、
を含む。
【0036】
好ましい実施形態では、この方法はさらに以下のステップを含む。すなわち、
工具において永久磁石によって発生した磁力を調整手段によって所定の静的力に調整するステップと、
インパクトハンマーによって工具内に衝撃力を誘発するステップと、
第1の力センサによって衝撃力の大きさを測定するステップと、
非接触変位トランスデューサによって工具の位置を測定するステップと、
を含む。
【0037】
本開示の利点および特徴を得ることができる手法を説明するために、以下では、添付の図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって、上記で簡単に説明された原理のより具体的な説明が与えられる。これらの図面は、本開示の例示的な実施形態のみを描写しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではない。本開示の原理は、添付の図面を使用することにより、さらなる具体性および詳細と共に説明および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】システムの第1の実施形態の配置構成を示した図
【
図4】システムの第2の実施形態の配置構成を示した図
【
図6】システムの第3の実施形態の配置構成を示した図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、システム1の第1の実施形態のブロック図を示す。このシステム1は、予荷重装置10と、励起装置としての自動インパクトハンマー21と、感知装置30と、を含む。予荷重装置10は、工作機械に使用される工具2に静的力を作用させるように構成され、第1の永久磁石10aと第1の調整手段11aとを含む。自動インパクトハンマー21は、工具に動的励起を誘発するために適用されている。感知装置30は、工具位置の偏差を導出できる工具の位置を測定するための非接触変位トランスデューサ31を含む。
【0040】
図2は、工作機械の特徴を決定するための第1の実施形態の配置構成を示す。
図2は、例えばフライス加工プロセスで使用される切削工具2aの特徴を決定する一例を示すが、しかしながら、本発明によるシステムは、フライス加工プロセスへの適用に限定されるものではない。特徴付けられる切削工具は、フライス盤のスピンドルに取り付けられている。第1の永久磁石10aは、切削工具の回転軸の近傍でかつ径方向に配置されている。第1の調整手段11aは、一方の端部が永久磁石に接続され、他方の端部は支持フレーム40に接続されている。この調整手段は、永久磁石の最適な位置決めを確実にするために支持フレームに沿ってその位置を変えることができるように配置されている。
図2に示すように、永久磁石は、工具の回転軸線の径方向において工具の近傍に位置決めされており、典型的には0.5~20mmの範囲の、工具までの距離を有する。支持アーム42は、調整手段の下方で当該調整手段と平行に第1の支持フレームに取り付けられている。非接触変位トランスデューサは、支持アーム上に配置され、工具の回転軸の径方向における測定のために位置決めされ、そして典型的には1~5mmの範囲内の工具までの距離を有する。第1の支持フレームは、第1の支持ベース41上に垂直に固定されて取り付けられている。この第1の支持ベース41は、試験中に例えば工作機械のテーブル上に安定して配置されるように設計されている。自動インパクトハンマー21は、第2の支持フレーム43上に取り付けられており、この第2の支持フレーム43は、第2の支持ベース44上に垂直に固定されて取り付けられている。この第2の支持ベースは、感知装置および予荷重装置を乱しやすい反力の伝達を防ぐように設計されている。操作者によって手動で操作される標準的なインパクトハンマーの代わりに自動インパクトハンマーを使用することによって、発生した衝撃力の再現性が高まり、したがってこのシステムの使用によって決定される構造的特徴はより正確になる。周波数応答関数を得るためには、インパクトハンマーによって誘発された衝撃力の大きさを測定しなければならない。そのため、第1の力センサ32がこの自動インパクトハンマーに統合され、特徴付けられるべき切削工具に衝撃を与える端部先端近傍の試験状態に位置決めされている。
【0041】
図2に示されるようなシステムの配置構成は、異なる動作速度で回転されるなどの機械加工条件のように、回転状態において工具の特徴を決定することを可能にする。
【0042】
図3はシステム1の第2の実施形態のブロック図を示す。この実施形態は、予荷重装置が付加的に第2の永久磁石10bと、特徴付けの精度向上のために第2の永久磁石に作用的に接続された第2の調整手段11bと、を含む点で第1の実施形態と異なる。
【0043】
図4は試験中のシステムの第2の実施形態の配置構成を示す。第2の調整手段は、第2の永久磁石が、回転軸の軸方向でかつ特徴付けられるべき工具の下方に位置決めされる試験状態にあるように、第1の支持ベース上に直接配置されている。第1の永久磁石10aおよび第2の永久磁石10bは、それぞれ、回転軸の径方向の磁力および回転軸の軸方向の力を発生する。これは、機械加工状態において切削工具2に作用する力をより正確にシミュレートすることができるという利点を提供する。フライス加工プロセスのケースでは、試験工具に作用する磁力は、機械加工条件における平均切削力に対応する。
【0044】
図5および
図6は、コントローラが統合されているシステムの第3の実施形態を示している。このコントローラは、自動インパクトハンマーを制御し、非接触変位トランスデューサおよび第1の力センサによって測定されたデータセットを受信するように構成されている。
図6は、データをセンサからコントローラに転送するために、コントローラが、ワイヤ33および34によって非接触変位トランスデューサおよび第1の力センサに接続されている変形例を示す。このコントローラは、衝撃力の調整とトリガを可能にするために、ワイヤ35によって自動インパクトハンマーにも接続されている。しかしながら、コントローラと変位トランスデューサとの間、および第1の力センサと自動インパクトハンマーとの間の無線通信も、システムの柔軟な設計を提供するために適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 システム
2 工具
2a 切削工具
3 工具先端
10 予荷重装置
10a 第1の永久磁石
10b 第2の永久磁石
11a 第1の調整手段
11b 第2の調整手段
20 励起装置
21 自動インパクトハンマー
30 感知装置
31 変位トランスデューサ
32 第1の力センサ
33 第1の出力信号
34 第2の出力信号
35 自動インパルスハンマーを制御する通信回線
40 第1の支持フレーム
41 第1の支持ベース
42 支持アーム
43 第2の支持フレーム
44 第2の支持ベース
50 コントローラ