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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】レーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/46 20060101AFI20230911BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20230911BHJP
   G01S 13/28 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G01S13/46
G01S7/02 216
G01S13/28 200
G01S13/28 210
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019116040
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001820
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-090431(JP,A)
【文献】特開平11-237473(JP,A)
【文献】特開2020-150353(JP,A)
【文献】特開平09-026474(JP,A)
【文献】特開平02-162283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0299773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信装置と受信装置とを備えるレーダシステムであって、
前記第1の送信装置は、
送信アンテナと、
前記送信アンテナで形成され異なる方向に向けた複数の送信ビームそれぞれで送信される第1の送信信号であって、前記送信ビームごとに異なる符号系列を用いた第1の送信信号を生成する信号合成部と、
前記送信ビームごとの第1の送信信号を前記送信アンテナから送信する送信部と、を備え、
前記受信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナ素子それぞれで受信した第1の受信信号から前記異なる符号系列を用いて前記第1の送信信号を抽出する信号分離部と、
前記アレイアンテナで形成され、指向方向が異なる複数の受信ビームに応じた第1の受信ウェイトを用いて、異なる符号系列の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の受信ビームそれぞれの受信ビーム信号を生成する受信ビーム形成部と、
前記第1の送信信号を含む前記受信ビーム信号ごとに、CFAR処理によって物体を検出した前記受信ビームの指向方向を特定し、前記送信ビームの指向方向を前記符号系列から特定し、前記第1の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記送信ビームの指向方向と、前記受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第1の送信信号を反射した物体の位置を特定する信号処理部と、を備える、
レーダシステム。
【請求項2】
第1の送信装置と受信装置とを備えるレーダシステムであって、
前記第1の送信装置は、
送信アンテナと、
前記送信アンテナで形成され異なる方向に向けた複数の送信ビームそれぞれで送信される第1の送信信号であって、前記送信ビームごとに異なる符号系列を用いた第1の送信信号を生成する信号合成部と、
前記送信ビームごとの第1の送信信号を前記送信アンテナから送信する送信部と、を備え、
前記受信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、
前記アレイアンテナで形成され、指向方向が異なる複数の受信ビームに応じた第1の受信ウェイトを用いて、異なる符号系列の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の受信ビームそれぞれの受信ビーム信号を生成する受信ビーム形成部と、
前記受信ビーム信号それぞれから前記異なる符号系列を用いて前記第1の送信信号を抽出する信号分離部と、
前記第1の送信信号を含む前記受信ビーム信号ごとに、CFAR処理によって物体を検出した前記受信ビームの指向方向を特定し、前記送信ビームの指向方向を前記符号系列から特定し、前記第1の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記送信ビームの指向方向と、前記受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第1の送信信号を反射した物体の位置を特定する信号処理部と、を備える、
レーダシステム。
【請求項3】
第1の送信装置と受信装置とを備えるレーダシステムであって、
前記第1の送信装置は、
送信アンテナと、
前記送信アンテナで形成され異なる方向に向けた複数の送信ビームそれぞれで送信される第1の送信信号であって、前記送信ビームごとに異なる周波数を用いた第1の送信信号を生成する信号合成部と、
前記送信ビームごとの第1の送信信号を前記送信アンテナから送信する送信部と、を備え、
前記受信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナ素子それぞれで受信した第1の受信信号を前記異なる周波数ごとの分割信号に分割する周波数分割部と、
前記アレイアンテナで形成され、指向方向が異なる複数の受信ビームに応じた第1の受信ウェイトを用いて、異なる周波数の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の受信ビームそれぞれの受信ビーム信号を生成する受信ビーム形成部と、
前記第1の送信信号を含む前記受信ビーム信号ごとに、CFAR処理によって物体を検出した前記受信ビームの指向方向を特定し、前記送信ビームの指向方向を前記周波数から特定し、前記第1の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記送信ビームの指向方向と、前記受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第1の送信信号を反射した物体の位置を特定する信号処理部と、を備える、
レーダシステム。
【請求項4】
第1の送信装置と受信装置とを備えるレーダシステムであって、
前記第1の送信装置は、
送信アンテナと、
前記送信アンテナで形成され異なる方向に向けた複数の送信ビームそれぞれで送信される第1の送信信号であって、前記送信ビームごとに異なる周波数を用いた第1の送信信号を生成する信号合成部と、
前記送信ビームごとの第1の送信信号を前記送信アンテナから送信する送信部と、を備え、
前記受信装置は、
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナと、
前記アレイアンテナで形成され、指向方向が異なる複数の受信ビームに応じた第1の受信ウェイトを用いて、異なる周波数の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の受信ビームそれぞれの受信ビーム信号を生成する受信ビーム形成部と、
前記受信ビーム信号それぞれを前記異なる周波数ごとの分割信号に分割する周波数分割部と、
前記第1の送信信号を含む分割信号に対応する前記受信ビーム信号ごとに、CFAR処理によって物体を検出した前記受信ビームの指向方向を特定し、前記送信ビームの指向方向を前記周波数から特定し、前記第1の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記送信ビームの指向方向と、前記受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第1の送信信号を反射した物体の位置を特定する信号処理部と、を備える、
レーダシステム。
【請求項5】
前記信号処理部により特定された前記物体の位置に向けた第2の送信ビームにて第2の送信信号を送信する第2の送信装置を備え、
前記受信ビーム形成部は、前記信号処理部により特定された物体の位置に向けた、指向方向が異なる複数の第2の受信ビームに応じた第2の受信ウェイトを用いて、異なる符号系列の第2の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の第2の受信ビームそれぞれの第2の受信ビーム信号を生成し、
前記信号処理部は、前記受信ビーム信号に対して前記CFAR処理に用いたしきい値より小さいしきい値を用いて、前記第2の受信ビーム信号ごとに、前記CFAR処理によって前記物体を検出し、前記物体を検出した前記第2の受信ビームの指向方向を特定し、前記第2の送信ビームの指向方向を前記符号系列から特定し、前記第2の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記第2の送信ビームの指向方向と、前記第2の受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第2の送信信号を反射した前記物体の位置を特定する、
請求項1又は請求項2のレーダシステム。
【請求項6】
前記信号処理部により特定された前記物体の位置に向けた第2の送信ビームにて第2の送信信号を送信する第2の送信装置を備え、
前記受信ビーム形成部は、前記信号処理部により特定された物体の位置に向けた、指向方向が異なる複数の第2の受信ビームに応じた第2の受信ウェイトを用いて、異なる周波数の第2の送信ビームごとに、前記指向方向が異なる複数の第2の受信ビームそれぞれの第2の受信ビーム信号を生成し、
前記信号処理部は、前記受信ビーム信号に対して前記CFAR処理に用いたしきい値より小さいしきい値を用いて、前記第2の受信ビーム信号ごとに、前記CFAR処理によって前記物体を検出し、前記物体を検出した前記第2の受信ビームの指向方向を特定し、前記第2の送信ビームの指向方向を前記周波数から特定し、前記第2の送信装置及び前記受信装置の位置と、前記第2の送信ビームの指向方向と、前記第2の受信ビームの指向方向とに基づいて、前記第2の送信信号を反射した前記物体の位置を特定する、
請求項3又は請求項4のレーダシステム。
【請求項7】
前記第2の送信装置は、前記信号処理部により特定された前記物体の位置までの距離に応じて、前記第2の送信信号を送信する間隔を決定する、
請求項5又は請求項6のレーダシステム。
【請求項8】
前記第2の送信装置と前記受信装置とは、一つの装置として形成される、
請求項5から請求項7のいずれか一項のレーダシステム。
【請求項9】
前記送信部は、前記送信ビームごとの第1の送信信号を前記送信アンテナから時分割で送信する、
請求項1から請求項のいずれか一項のレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
送信装置と受信装置とが離隔した位置にあるマルチスタティック・レーダシステムにおいて、捜索対象としての目標の位置を同定するためには、送信装置から目標を経由した受信装置までの距離や、受信装置における受信角度が必要となる。前述の距離を測定するためには、送信装置と受信装置との時刻同期が必要となる。例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号を利用することで装置間の時刻同期が行われている。しかし、GPS衛星から信号を受信できない場所では時刻同期が行えず、目標の捜索が行えなかったり、行えたとしても精度が著しく劣化したりする場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Merrill I. Skolnik, "Introduction to radar systems," McGRAW-HILL Inc., 1980, pp.428-430
【文献】吉田、「改訂 レーダ技術」、電子情報通信学会、1996年、pp.134-135
【文献】吉田、「改訂 レーダ技術」、電子情報通信学会、1996年、pp.289-291
【文献】Jian Li, Petre Stoica, "MIMO Radar Signal Processing," John Wiley & Sons, Inc., 2009, pp.1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、送信装置と受信装置との時刻同期を行わずとも目標の位置を特定できるレーダシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のレーダシステムは、第1の送信装置と受信装置とを持つ。第1の送信装置は、送信アンテナと、信号合成部と、送信部とを持つ。信号合成部は、送信アンテナで形成され異なる方向に向けた複数の送信ビームそれぞれで送信される第1の送信信号であって、送信ビームごとに異なる符号系列を用いた第1の送信信号を生成する。送信部は、送信ビームごとの第1の送信信号を送信アンテナから送信する。受信装置は、アレイアンテナと、信号分離部と、受信ビーム形成部と、信号処理部とを持つ。アレイアンテナは、複数のアンテナ素子を有する。信号分離部は、複数のアンテナ素子それぞれで受信した第1の受信信号から異なる符号系列を用いて第1の送信信号を抽出する。受信ビーム形成部は、アレイアンテナで形成され、指向方向が異なる複数の受信ビームに応じた第1の受信ウェイトを用いて、異なる符号系列の送信ビームごとに、指向方向が異なる複数の受信ビームそれぞれの受信ビーム信号を生成する。信号処理部は、受信ビーム信号ごとに、CFAR処理によって物体を検出した受信ビームの指向方向を特定し、送信ビームの指向方向を符号系列から特定し、第1の送信装置及び受信装置の位置と、送信ビームの指向方向と、受信ビームの指向方向とに基づいて、第1の送信信号を反射した物体の位置を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のレーダシステムが備える送信側の装置と受信側の装置との配置例を示す図。
図2】第1の実施形態のレーダシステムが目標を検出する処理の概要を示す図。
図3】第1の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図。
図4】第1の実施形態における送信装置の構成例を示す図。
図5】第1の実施形態における送受信装置の構成例を示す図。
図6】第1の実施形態におけるアレイアンテナに係る座標系の一例を示す図。
図7】第2の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図。
図8】第2の実施形態における送信装置の構成例を示す図。
図9】第2の実施形態における周波数分割部が変調信号を生成する処理の一例を示す図。
図10】第2の実施形態における送受信装置の構成例を示す図。
図11】第3の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図。
図12】第3の実施形態における送信装置の構成例を示す図。
図13】第3の実施形態における送受信装置の構成例を示す図。
図14】第2の実施形態のレーダシステムにおいて送信を時分割に行う場合の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のレーダシステムを、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、同一の符号を付した構成要素は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のレーダシステムが備える送信側の装置(TX)と受信側の装置(RX)との配置例を示す図である。第1の実施形態のレーダシステムは、送信側と受信側との装置が離隔して配置されるマルチスタティック・システムである。図1に示す例では、受信側の装置が1つの場合を示しているが、受信側の装置は2つ以上であってもよい。送信側の装置(TX)は、複数の送信ビーム(T1,T2,…,TNt)を含む送信マルチビームを形成して信号を観測空間に向けて送信する。受信側の装置(RX)は、複数の受信ビーム(R1,R2,…RNr)を含む受信マルチビームを形成する。送信マルチビームと受信マルチビームとを観測空間を覆うように形成する。図1に示す例は、平面空間において送信マルチビーム及び受信マルチビームを形成する場合を示している。しかし、送信側及び受信側のそれぞれにおいて、方位角方向及び仰角方向に指向方向が異なる複数のビームを3次元の観測空間を覆うように形成してもよい。
【0009】
図2は、第1の実施形態のレーダシステムが目標を検出する処理の概要を示す図である。送信マルチビームと受信マルチビームとが重なり合って観測空間を覆うように形成されることで、送信ビームと受信ビームとの組み合わせにより観測空間のうち一部の空間を特定できる。観測空間は、図2に示すように、送信ビーム(T1,T2,…,TNt)を縦軸に、受信ビーム(R1,R2,…RNr)を横軸にとると、(Nt×Nr)個の部分空間に分割される。受信側の装置は、目標で反射された信号を検出した受信ビームと、目標で反射された信号を送信した送信ビームとの組み合わせを特定すれば、目標が位置する部分空間を特定できる。このように、送信側及び受信側の装置の位置と、送信ビームと受信ビームとのペアとに基づいて、目標の3次元位置が特定される。
【0010】
送信ビームと受信ビームとの組み合わせにより目標の位置を特定する場合、送信側の装置から目標を経由した受信側の装置までの距離を測定せずとも、目標の位置を特定することができる。すなわち、送信側と受信側との装置の間で時刻同期を行わずとも目標の位置を特定できる。第1の実施形態のレーダシステムでは、受信側の装置が複数の送信ビームを識別できるように、送信ビームごとに異なる符号系列を用いた送信信号を生成する。
【0011】
図3は、第1の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図である。図3では、送信に用いるアレイアンテナのアンテナ素子番号と、送信ビームに用いる符号数と、時間とのそれぞれの軸を組み合わせた3次元空間において送信信号が示されている。ある時刻のパルスにおいてアンテナ素子#1~#Nそれぞれから送信される信号は、送信ビームごとに異なる符号系列(b1,b2,…,bNt)を用いて変調された変調信号が合成(多重化)された信号である。すなわち、レーダシステムでは、同一パルス内で複数の送信ビームの送信信号が同時に送信する。レーダシステムでは、このような送信信号が順次送信される。送信ビームそれぞれの送信信号には異なる符号系列が割り当てられ、送信ビーム間のアイソレーションが保たれる。このような符号系列として、非特許文献1に記載のBarker符号を用いてもよいし、他の符号を用いてもよい。
【0012】
図4は、第1の実施形態における送信装置100の構成例を示す図である。送信装置100は、前述の送信側の装置(第1の送信装置)として用いられる。送信装置100は、信号生成部1、符号変調部2、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC(Digital-Analog Converter;ディジタル-アナログ変換器)6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA(High Power Amplifier;大電力増幅器)8(8-1,8-2,…,8-N)、及びN個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナを備える。DAC6、周波数変換器7、HPA8、それぞれは、各アンテナ素子10に対応してN個ずつ備えられている。
【0013】
信号生成部1は、入力する送信ビーム制御信号に応じて送信基準信号を生成し、生成した送信基準信号を符号変調部2へ供給する。送信基準信号は、例えば、送信ビーム制御信号で示される周波数、帯域幅、振幅を有する信号である。符号変調部2は、供給される送信基準信号に対してパルス変調を行い、更に、形成するNt個の送信ビームごとに割り当てられた符号系列を用いた変調を行い、Nt個の変調信号を生成する。符号変調部2は、生成したNt個の変調信号をウェイト制御部4へ供給する。符号変調部2は、パルス変調及び符号変調に加えて、送信基準信号に対して周波数変調を行ってもよい。周波数変調が行われる場合、変調信号はチャープ信号となる。
【0014】
送信ビーム制御部3は、入力する送信ビーム制御信号で示されるNt個の送信ビームそれぞれのビーム指向方向に対応する各アンテナ素子10の複素ウェイトを送信ウェイトとして、ウェイト制御部4へ供給する。送信ビーム制御部3は、ビーム指向方向に対応する各アンテナ素子10の複素ウェイトを、各アンテナ素子10の複素ウェイトをビーム指向方向ごとに記憶するテーブルから読み出してもよい。各アンテナ素子10の複素ウェイトは、低サイドローブ化の振幅ウェイトと、ビーム走査のための位相ウェイトとの組み合わせで定まる。送信マルチビームを形成する送信ビームそれぞれの指向方向は、複数の送信ビームで観測空間を覆うように定められる。
【0015】
ウェイト制御部4は、符号変調部2から供給されるNt個の変調信号ごとに、変調信号を生成した際に用いた符号系列に対応する送信ビームの複素ウェイトを乗算して、アンテナ素子10それぞれで送信される信号を算出する。すなわち、ウェイト制御部4は、Nt個の送信ビームごとに、N個のアンテナ素子10に対応する信号を算出する。ウェイト制御部4は、算出した(N×Nt)個の信号を信号合成部5へ供給する。信号合成部5は、ウェイト制御部4から供給される(N×Nt)個の信号を、N個のアンテナ素子10ごとに対応する信号を合成し、N個の合成信号を生成する。信号合成部5は、N個のアンテナ素子それぞれに対応する合成信号を、各アンテナ素子に対応するDAC6へ供給する。
【0016】
DAC6それぞれは、信号合成部5から供給される合成信号をディジタル信号からアナログ信号に変換し、変換により得られた中間周波信号を周波数変換器7へ供給する。周波数変換器7それぞれは、供給される中間周波信号を高周波信号に変換し、高周波信号をHPA8へ供給する。HPA8それぞれは、供給される高周波信号を高出力増幅する。HPA8により増幅された高周波信号それぞれは、HPA8に対応するアンテナ素子10に供給され、アンテナ素子10から送信信号として送出される。このように、DAC6、周波数変換器7及びHPA8は、高周波信号を送信する送信部として動作する。以上の動作により、送信装置100は、送信ビームごとに生成された高周波信号を送信アンテナとしてのアレイアンテナから同時に送出する。
【0017】
図5は、第1の実施形態における送受信装置200の構成例を示す図である。送受信装置200は、前述の受信側の装置として用いられる。送受信装置200は、信号生成部1、符号変調部2、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA8(8-1,8-2,…,8-N)、サーキュレータ9(9-1,9-2,…,9-N)、N個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナ、LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)11(11-1,11-2,…,11-N)、周波数変換器12(12-1,12-2,…,12-N)、ADC(Analog-Digital Converter;アナログ-ディジタル変換器)13(13-1,13-2,…,13-N)、信号分離部14、受信ビーム制御部15、受信ビーム形成部16、及び信号処理部17を備える。
【0018】
DAC6、周波数変換器7、HPA8、サーキュレータ9、LNA11、周波数変換器12、及びADC13それぞれは、各アンテナ素子10に対応してN個ずつ備えられている。信号生成部1、符号変調部2、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6、周波数変換器7、及びHPA8は、前述の送信装置100に備えられるそれらと同じである。HPA8により増幅された高周波信号それぞれは、HPA8に対応するサーキュレータ9を経由してアンテナ素子10に供給され、アンテナ素子10から第2の送信信号として送出される。送受信装置200においても、送信ビームごとに生成された高周波信号がアレイアンテナから同時に送出される。
【0019】
アンテナ素子10それぞれは、対応するLNA11へ受信した受信信号(第1の受信信号)を、サーキュレータ9を経由して供給する。観測空間に捜索対象の目標としての物体が位置する場合、受信信号は、高周波信号が目標にて反射された反射信号を含む。LNA11それぞれは、供給される受信信号を低雑音増幅し、増幅した受信信号を周波数変換器12へ供給する。周波数変換器12それぞれは、供給される受信信号の周波数を中間周波数へ変換し、変換により得られた中間周波数の信号をADC13へ供給する。ADC13それぞれは、中間周波数の信号をアナログ信号からディジタル信号に変換し、得られたディジタル信号を信号分離部14へ供給する。
【0020】
信号分離部14は、アンテナ素子10それぞれに対応するADC13から供給されるN個のディジタル信号それぞれに対して、Nt個の送信ビームそれぞれに対応する符号系列ごとに相関処理を行う。ディジタル信号に高周波信号の成分が含まれる場合、高周波信号を送信した際の送信ビームに割り当てられた符号系列との相関処理により、ディジタル信号に含まれる高周波信号の成分が抽出される。すなわち、ディジタル信号に含まれる高周波信号の成分が符号系列との相関処理により分離される。ディジタル信号に複数の送信ビームに対応する高周波信号の成分が含まれる場合においても、相関処理によりそれぞれの高周波成分が分離される。信号分離部14は、N個のアンテナ素子10それぞれに対応するディジタル信号に対するNt個の符号系列ごとの相関処理により得られる(N×Nt)個の分離信号を受信ビーム形成部16へ供給する。信号分離部14は、相関処理に用いるNt個の符号系列を予め記憶していてもよい。
【0021】
受信ビーム制御部15は、受信ビーム制御信号で示されるNr個の受信ビームであって受信マルチビームを形成する受信ビームそれぞれの複素ウェイトを第1の受信ウェイトとして、受信ビーム形成部16へ供給する。各アンテナ素子10の複素ウェイトは、低サイドローブ化の振幅ウェイトと、ビーム走査のための位相ウェイトとの組み合わせで定まる。受信マルチビームを形成する受信ビームそれぞれの指向方向は、複数の受信ビームで観測空間を覆うように定められる。受信ビーム形成部16は、供給される各受信ビームの複素ウェイトを用いて、同一の符号系列で抽出されたN個の分離信号ごとに受信ビーム信号を形成する。すなわち、受信ビーム形成部16は、Nt個の送信ビームそれぞれで送信された高周波信号ごとに、Nr個の受信ビーム信号を形成する。受信ビーム形成部16は、形成した(Nt×Nr)個の受信ビーム信号を信号処理部17へ供給する。
【0022】
信号処理部17は、供給される(Nt×Nr)個の受信ビーム信号ごとに、ビーム信号に含まれる不要波の抑圧と目標抽出処理とを行う。例えば、信号処理部17は、受信ビーム信号ごとに、CFAR処理により目標の有無を判定する。信号処理部17は、目標を検出した受信ビーム信号を形成する際に用いた分離信号の抽出に用いた符号系列と、目標を検出した受信ビーム信号に対応する受信ビームとの組み合わせに基づいて、目標の位置を特定する。信号処理部17は、送信ビームの指向方向を符号系列から特定し、送信装置100及び自装置の位置と、送信ビームの指向方向と、受信ビームの指向方向とに基づいて、目標が位置する領域を特定する。信号処理部17は、検出した目標の数と、各目標の位置とを示す目標情報を出力する。
【0023】
なお、信号処理部17は、送信装置100の位置及び符号系列ごとの送信ビームの指向方向を予め記憶していてもよい。あるいは、送信装置100は、送信装置100の位置と、各符号系列に対応する送信ビームの指向方向とを高周波信号に含めて送信して、送受信装置200に通知してもよい。送信装置100から位置及び指向方向が通知される場合、信号処理部17は、送信装置100の位置及び各符号系列に対応する送信ビームの指向方向を受信信号から取得してもよい。
【0024】
送受信装置200において、送信ビーム及び受信ビームの組み合わせにより目標の位置が特定されると、送信ビーム制御部3は、目標情報に基づいて、目標の位置に向けた送信ビームに対応する各アンテナ素子10の複素ウェイトを第2の送信ウェイトとしてウェイト制御部4へ供給する。送信ビーム制御部3は、目標の位置に向けた送信ビームに対応する複素ウェイトに加えて、目標の位置の近傍に向けた送信ビームに対応する複素ウェイトをウェイト制御部4へ供給してもよい。目標の位置の近傍に向けた送信ビームは、例えば、目標が検出された部分空間に隣接する部分空間に向けられた送信ビームなどである。目標の位置とその近傍とに向けた送信ビームに対応する複素ウェイトが送信ビーム制御部3からウェイト制御部4へ供給されることにより、送受信装置200から目標とその近傍に指向方向を向けた送信ビームにて高周波信号(第2の送信信号)が送信される。
【0025】
送受信装置200から目標とその近傍に指向方向を向けた送信ビームにて高周波信号が送信されると、受信ビーム制御部15は、目標の位置とその近傍とに向けた受信ビームに対応する複素ウェイトを第2の受信ウェイトとして受信ビーム形成部16へ供給する。受信ビーム形成部16は、供給される複素ウェイトを用いて、各アンテナ素子10で受信された受信信号(第2の受信信号)から受信ビーム信号(第2の受信ビーム信号)を生成し、生成した受信ビーム信号を信号処理部17へ供給する。信号処理部17は、目標の位置とその近傍とに向けた受信ビームに対応する受信ビーム信号を用いたモノスタティック観測により、目標の位置をより高い精度で同定する。
【0026】
目標とその近傍に指向方向を向けた送信ビームを用いた目標の観測では、既に目標が位置する領域が特定できているため、その領域におけるCFAR処理のしきい値を小さくすることで目標感度を高くできる。例えば、このとき用いるCFAR処理のしきい値として、送信装置100から送信された高周波信号(第1の送信信号)の反射信号を受信した場合に用いるしきい値より小さい値を用いることができる。また、符号変調部2は、既に特定されている目標の位置までの距離に応じて、送信する高周波信号(第2の送信信号)のパルス間隔(Pulse Repetition Interval)を決定してもよい。複数の目標が検出された場合、各目標に向けた送信に要する時間の割り当てを効率化でき、各目標の観測、探索及び追尾などの精度を改善できる。
【0027】
なお、検出される目標の位置に対する精度が、送信ビーム及び受信ビームの組み合わせにより特定される目標の位置で充分である場合、目標とその近傍に指向方向を向けた送信ビーム及び受信ビームを用いた処理を省いてもよい。この場合、第1の実施形態のレーダシステムにおける受信側の装置は、図5に示した送受信装置200が備える送信に係る機能を備えずともよい。すなわち、受信側の装置として、N個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナ、LNA11(11-1,11-2,…,11-N)、周波数変換器12(12-1,12-2,…,12-N)、ADC13(13-1,13-2,…,13-N)、信号分離部14、受信ビーム制御部15、受信ビーム形成部16、及び信号処理部17を備える受信装置を用いてもよい。
【0028】
また、送受信装置200に代えて、前述の受信装置と、図4に示した送信装置100とを用いてもよい。2つの装置を送受信装置200に代えて用いる場合、受信装置と第2の送信装置としての送信装置100とを近くに配置して、送信ビーム及び受信ビームの組み合わせで特定した目標の位置に基づいて、より高い精度で目標の位置を同定してもよい。
【0029】
以下、送信装置100及び送受信装置200において行われる送信に係る処理を以下に定式化する。図6は、第1の実施形態におけるアレイアンテナに係る座標系の一例を示す図である。XYZ軸の3次元座標系がアレイアンテナの位相中心を原点として設定されている。図6に示す座標系において、アレイアンテナが有するアンテナ素子10それぞれから送信される信号Xen(アンテナ素子の番号:n=1,2,…,N)は式(1)で与えられる。
【0030】
【数1】
式(1)において、各アンテナ素子10の信号Xenに含まれ、Nt個の送信ビームそれぞれに対応する成分Xnm、すなわちウェイト制御部4が出力する信号は、式(2)で与えられる。
【0031】
【数2】
式(2)において、m(=1,2,…,Nt)は送信ビームの番号を示し、fは高周波信号のキャリア周波数を示し、tはパルス幅内における時間を示す。codemは、m番目の送信ビームに割り当てられた符号系列を示す。符号系列codemの符号長は、符号系列codemで変調された信号のパルス幅と一致する。[xn,yn,zn]は、n番目のアンテナ素子10の位置座標を示す。位置座標の基準位置は、アレイアンテナの位相中心である。式(2)における[kx,ky,kz]は、式(3)で与えられる。
【0032】
【数3】
式(3)において、λは高周波信号の波長を示し、AZ、ELはアレイアンテナから見た方位角(Azimuth)方向、仰角(Elevation)方向ぞれぞれの角度を示す。
【0033】
式(2)において、Wanmは、m番目の送信ビームにおけるn番目のアンテナ素子に対するサイドローブ低減用のウェイトを示す。Wpnmは、m番目の送信ビームにおけるn番目のアンテナ素子に対するビーム指向方向を制御する複素ウェイトを示す。サイドローブ低減用のウェイトは、非特許文献2に記載のテイラー分布などがある。ビーム指向方向を制御する複素ウェイトWpnmは、式(4)で表現できる。
【0034】
【数4】
式(4)における[kpxm,kpym,kpzm]は、式(5)で与えられる。
【0035】
【数5】
式(5)において、AZm、ELmは、アレイアンテナの位相中心から見たm番目の送信ビームの方位角(Azimuth)方向、仰角(Elevation)方向それぞれのビーム指向角を示す。
【0036】
式(1)で示されるように、各アンテナ素子10では、送信ビームそれぞれの信号が重畳(合成)された信号となる。重畳された信号間のアイソレーションは、符号系列(変調符号)により保たれている。
【0037】
送信マルチビームで送出される送信ビーム信号(高周波信号)Ymは、式(1)で与えられる各アンテナ素子10の信号Xenを加算合成した、式(6)で示される。
【0038】
【数6】
【0039】
次に、送受信装置200においてにおいて行われる受信に係る処理を定式化する。各アンテナ素子10で受信される信号Xrnmは、式(7)となる。
【0040】
【数7】
式(7)において、n(=1,2,…,N)とm(=1,2,…,Nr)とは、アンテナ素子10の番号と受信ビームの番号とをそれぞれ示す。なお、送信と受信とに用いるアンテナ素子10の数を同じNとしているが、送信に用いるアンテナ素子10の数と受信に用いるアンテナ素子10の数とが異なっていてもよい。Atgtは目標で反射した反射信号の振幅を示し、fは高周波信号のキャリア周波数を示し、ftgtは反射信号のドップラ周波数を示す。codemは、m番目の送信ビームに割り当てられた符号系列を示す。[xn,yn,zn]は、n番目のアンテナ素子10の位置座標を示す。式(7)における[kx,ky,kz]は、式(8)で与えられる。
【0041】
【数8】
式(8)において、λは、反射信号の波長を示し、AZ、ELは、アレイアンテナの位相中心から見た方位角(Azimuth)方向、仰角(Elevation)方向それぞれの観測角を示す。
【0042】
説明を簡単にするために目標が1つの場合を示したが、目標が複数ある場合は式(7)で示される信号Xrnmを目標数分加算することになる。信号分離部14は、式(7)で与えられる受信信号Xrnmに対する、キャリア周波数と符号系列とを用いて反射信号の分離を行い、式(9)で表される分離信号Xrnm_divを得る。
【0043】
【数9】
【0044】
受信ビーム形成部16は、各受信ビームに対応する受信ビーム信号Yrmを式(10)のDBF(非特許文献3)による演算で形成する。
【0045】
【数10】
式(10)における、Wanmはサイドローブ低減用のウェイトを示し、Wpnmは受信ビームのビーム指向方向制御用の複素ウェイトを示す。Wpnmは、式(11)で表現できる。
【0046】
【数11】
式(11)における[kpxm,kpym,kpzm]は、式(12)で与えられる。
【0047】
【数12】
式(12)において、AZm、ELmは、アレイアンテナの位相中心から見たm番目の受信ビームの方位角(Azimuth)方向、仰角(Elevation)方向それぞれのビーム指向角を示す。
【0048】
信号処理部17は、式(10)で得られる受信ビーム信号を用いた信号処理により、目標を検出する。受信ビーム信号に対する信号処理により目標が検出され、目標を検出した受信ビーム信号を形成する際に用いた分離信号の抽出に用いた符号系列が得られる。信号処理部17は、得られた符号系列に対応する送信ビーム(T1~TNt)と、受信ビーム信号に対応する受信ビーム(R1~RNr)とのペアにより、観測領域の一部の領域を目標が位置する領域として同定できる。目標の概略位置を取得する目的であれば、同定された領域を示す目標情報が出力される。また、精度の高い目標の位置を取得する場合、送受信装置200は、前述のモノスタティック観測を行うことにより、目標の位置を取得し、取得した目標の位置を示す目標情報を出力する。
【0049】
第1の実施形態のレーダシステムによれば、受信信号から高周波信号の成分(第1の送信信号)が抽出された際に用いた符号系列で特定される送信ビームの指向方向と、受信ビームと指向方向の組み合わせにより目標が位置する領域を特定することができ、送信装置と受信装置との時刻同期を行わずとも目標の位置を特定できる。ところで、送信ファンビームと受信マルチビームとを組み合わせたマルチスタティック・レーダシステムでは、受信側から見た目標の方向が特定できるに過ぎない。一方、第1の実施形態のレーダシステムは、目標の位置を特定でき、更に精度の高い目標の位置の取得も可能である。
【0050】
第1の実施形態のレーダシステムは、送信マルチビームと受信マルチビームとを形成して、観測空間における目標検出を行う。送信マルチビームと受信マルチビームとを組み合わせた処理は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)の一形態と言える(非特許文献4)。一般に、MIMOの送信及び受信の処理は、アンテナ素子レベル(エレメントスペース;Element-Space(ES))で行われる。一方で、第1の実施形態におけるレーダシステムは、ビームレベル(ビームスペース;Beam-Space(BS))で送信及び受信の処理を行っていると言える。
【0051】
ビームスペース(BS)型MIMOでは、形成する送信ビームの数と送信信号を生成する際に用いる符号系列の数とが一致している。一方、エレメントスペース(ES)型MIMOでは、形成する送信ビームの数を減らして観測空間を限定しても、使用する符号系列の数を減らすことができない。BS型MIMOは、観測空間を限定して、送信ビーム数を減らすことで、送信信号を生成する際に必要となる符号系列を減らすことができ、送信処理における演算負荷を軽減できるメリットがある。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、異なる符号系列を用いることで、送信ビーム間のアイソレーションを確保しているが、符号系列による符号変調では充分なアイソレーションを得られない場合がある。そこで、第2の実施形態では、送信ビームに異なる周波数を割り当てることで送信ビーム間のアイソレーションを確保するレーダシステムについて説明する。
【0053】
図7は、第2の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図である。図7では、アレイアンテナのアンテナ素子番号と周波数と時間とのそれぞれの軸を組み合わせた3次元において送信信号が示されている。ある時刻のパルスにおいてアンテナ素子#1~#Nそれぞれから送信される信号は、送信ビームごとに割り当てられた異なる周波数帯域(f1,f2,…,fNt)の信号が合成された信号である。すなわち、第2の実施形態のレーダシステムでは、同一パルス内で周波数帯域が異なる複数の送信ビームを同時に送信する。第2の実施形態のレーダシステムでは、このような送信信号が順次送信される。
【0054】
図8は、第2の実施形態における送信装置100Aの構成例を示す図である。送信装置100Aは、レーダシステムにおける送信側の装置として用いられる。送信装置100Aは、信号生成部1、周波数分割部2a、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA8(8-1,8-2,…,8-N)、及びN個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナを備える。第2の実施形態における送信装置100Aは、符号変調部2に代えて周波数分割部2aを備える点において、第1の実施形態における送信装置100と異なる。
【0055】
周波数分割部2aは、送信ビーム間のアイソレーションを確保するために、送信ビームごとに割り当てられた異なる周波数帯域ごとに送信基準信号を分割して、Nt個の分割信号を生成する。図9は、第2の実施形態における周波数分割部2aが変調信号を生成する処理の一例を示す図である。周波数分割部2aは、信号生成部1から供給される送信基準信号に対してFFTを行い、送信基準信号を周波数軸の信号に変換する。周波数分割部2aは、Nt個の送信ビームそれぞれに割り当てられた分割帯域ごとに周波数軸の信号を帯域分割して、Nt個の分割帯域信号を生成する。周波数分割部2aは、分割帯域信号それぞれにおける分割帯域以外の帯域の成分を0埋めした後に逆FFTを行い、時間軸の信号を生成する。周波数分割部2aは、Nt個の時間軸の信号に対してパルス変調を行って変調信号を生成する。周波数分割部2aは、生成したNt個の変調信号をウェイト制御部4へ供給する。周波数分割部2aは、更に周波数変調を行い、変調信号としてチャープ信号を生成してもよい。
【0056】
図10は、第2の実施形態における送受信装置200Aの構成例を示す図である。送受信装置200Aは、レーダシステムにおける受信側の装置として用いられる。送受信装置200Aは、信号生成部1、周波数分割部2a、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA8(8-1,8-2,…,8-N)、サーキュレータ9(9-1,9-2,…,9-N)、N個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナ、LNA11(11-1,11-2,…,11-N)、周波数変換器12(12-1,12-2,…,12-N)、ADC13(13-1,13-2,…,13-N)、周波数分割部14a、受信ビーム制御部15、受信ビーム形成部16、及び信号処理部17を備える。第2の実施形態における送受信装置200Aは、符号変調部2及び信号分離部14に代えて周波数分割部2a及び周波数分割部14aを備える点において、第1の実施形態における送受信装置200と異なる。
【0057】
周波数分割部14aは、各アンテナ素子10に対応するADC13から供給されるN個のディジタル信号それぞれを、各送信ビームに割り当てられた周波数帯域に周波数分離して(N×Nt)個の分割信号を生成する。周波数分割部14aは、生成した(N×Nt)個の分割信号を受信ビーム形成部16へ供給する。受信ビーム形成部16は、受信ビーム制御部15から供給される各受信ビームの複素ウェイトを用いて、送信ビームに割り当てられた周波数帯域ごとに受信ビーム信号を形成する。すなわち、受信ビーム形成部16は、送信ビームに割り当てられた周波数帯域ごとに、Nr個の受信ビーム信号を形成する。受信ビーム形成部16は、形成した(Nt×Nr)個の受信ビーム信号を信号処理部17へ供給する。
【0058】
次に、送信装置100A及び送受信装置200Aにおいて行われる送信に係る処理を以下に定式化する。アレイアンテナが有するアンテナ素子10それぞれから送信される信号Xen(アンテナ素子の番号:n=1,2,…,N)は式(13)で与えられる。
【0059】
【数13】
式(13)において、各アンテナ素子10の信号Xenに含まれ、Nt個の送信ビームそれぞれに対応する成分Xnm、すなわちウェイト制御部4が出力する信号は、式(14)で与えられる。
【0060】
【数14】
式(14)において、m(=1,2,…,Nt)は送信ビームの番号を示し、fは高周波信号のキャリア周波数を示し、tはパルス幅内における時間を示す。Δtは分割帯域の周波数を示し、[xn,yn,zn]はn番目のアンテナ素子10の位置座標を示す。位置座標の基準位置は、アレイアンテナの位相中心である。
【0061】
式(14)における[kx,ky,kz]は、前述の式(3)で与えられる。また、式(14)において、Wanmは、m番目の送信ビームにおけるn番目のアンテナ素子に対するサイドローブ低減用のウェイトを示す。Wpnmは、m番目の送信ビームにおけるn番目のアンテナ素子に対するビーム指向方向を制御する複素ウェイトを示し、前述の式(4)で表現できる。
【0062】
式(14)におけるΔfm(m=1,2,…,Nt)は、各送信ビームに割り当てられる分割帯域の周波数に対応する。式(13)に示されるように、各アンテナ素子10では、送信ビームそれぞれに対応する信号が重畳(合成)された信号が送信される。第2の実施形態のレーダシステムでは、送信ビーム間のアイソレーションを周波数分割で確保していることになる。
【0063】
次に、送受信装置200においてにおいて行われる受信に係る処理を定式化する。各アンテナ素子10で受信される信号Xrnmは、式(15)となる。
【0064】
【数15】
式(15)において、n(=1,2,…,N)とm(=1,2,…,Nr)とは、アンテナ素子10の番号と受信ビームの番号とをそれぞれ示す。Atgtは、目標で反射した反射信号の振幅を示し、fは高周波信号のキャリア周波数を示し、ftgtは反射信号のドップラ周波数を示す。Δtは分割帯域の周波数を示し、[xn,yn,zn]はn番目のアンテナ素子10の位置座標を示す。式(15)における[kx,ky,kz]は、前述の式(8)で与えられる。
【0065】
説明を簡単にするために目標が1つの場合を示したが、目標が複数ある場合は式(15)で示される信号Xrnmを目標数分加算することになる。周波数分割部14aは、式(15)で与えられる受信信号Xrnmに対する、キャリア周波数と各分割帯域Δfmとを用いて反射信号の周波数分離を行い、式(16)で表される分割信号Xrnm_divを得る。
【0066】
【数16】
【0067】
受信ビーム形成部16は、各受信ビームに対応する受信ビーム信号Yrmを式(17)のDBFによる演算で形成する。
【0068】
【数17】
式(17)における[kpxm,kpym,kpzm]は、前述の式(12)で与えられる。
【0069】
信号処理部17は、式(17)で得られる受信ビーム信号を用いた信号処理により、目標を検出する。受信ビーム信号に対する信号処理により目標が検出され、目標を検出した受信ビーム信号の周波数が得られる。信号処理部17は、得られた周波数に対応する送信ビーム(T1~TNt)と、受信ビーム信号に対応する受信ビーム(R1~RNr)とのペアにより、観測領域の一部の領域を目標が位置する領域として同定できる。目標の概略位置を取得する目的であれば、同定された領域を示す目標情報が出力される。また、精度の高い目標の位置を取得する場合、送受信装置200Aは、第1の実施形態において説明したモノスタティック観測を行うことにより、目標の位置を取得し、取得した目標の位置を示す目標情報を出力する。
【0070】
第2の実施形態のレーダシステムによれば、受信ビーム信号に含まれる高周波信号の成分(第1の送信信号)の周波数で特定される送信ビームの指向方向と、高周波信号の成分を含む受信ビームと指向方向の組み合わせにより目標が位置する領域を特定することができ、送信装置と受信装置との時刻同期を行わずとも目標の位置を特定できる。
【0071】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、送信マルチビームを同時に形成して送信を行う送信装置100、100A及び送受信装置200、200Aを説明した。第3の実施形態では、送信ビームを形成する手法として、第1及び第2の実施形態と異なる手法を説明する。第3の実施形態では、観測空間を覆う複数の送信ビームを時分割に形成する。すなわち、送信ビーム間のアイソレーションは、符号系列又は周波数分割の一方と時分割との組み合わせにより確保される。
【0072】
図11は、第3の実施形態のレーダシステムにおいて送信される信号の概要を示す図である。図11では、アレイアンテナのアンテナ素子番号と振幅と時間とのそれぞれの軸を組み合わせた3次元空間において送信信号が示されている。ある時刻のパルスにおいてアンテナ素子#1~#Nそれぞれから送信される信号は、パルスを時分割して送信ビーム(T1,T2,…,TNt)それぞれに対応するサブパルスを符号系列(b1,b2,…,bNt)で変調し、サブパルスごとに式(2)又は式(14)で用いられる送信ビーム形成用の複素ウェイトを用いて時分割に送信ビームを形成することで得られる。第3の実施形態のレーダシステムでは、このような送信信号が順次送信される。
【0073】
図12は、第3の実施形態における送信装置100Bの構成例を示す図である。送信装置100Bは、レーダシステムにおける送信側の装置として用いられる。送信装置100Bは、信号生成部1、符号変調部2b、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA8(8-1,8-2,…,8-N)、及びN個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナを備える。第3の実施形態における送信装置100Bは、符号変調部2に代えて符号変調部2bを備える点において、第1の実施形態における送信装置100と異なる。
【0074】
符号変調部2bは、信号生成部1から供給される送信基準信号を送信ビームそれぞれに対応するサブパルスに分割し、サブパルスそれぞれに対してパルス変調を行う。符号変調部2bは、パルス変調したサブパルスに対し、形成するNt個の送信ビームごとに割り当てられた符号系列を用いた変調を行い、Nt個の変調信号を生成する。符号変調部2は、生成したNt個の変調信号を順にウェイト制御部4へ供給する。符号変調部2bは、パルス変調及び符号変調に加えて、サブパルスそれぞれに対して周波数変調を行ってもよい。周波数変調が行われる場合、変調信号はチャープ信号となる。符号変調部2bがNt個の変調信号を順にウェイト制御部4へ供給することにより、各送信ビームによる高周波信号の送信が時分割で順に行われる。
【0075】
図13は、第3の実施形態における送受信装置200Bの構成例を示す図である。送受信装置200Bは、信号生成部1、符号変調部2b、送信ビーム制御部3、ウェイト制御部4、信号合成部5、DAC6(6-1,6-2,…,6-N)、周波数変換器7(7-1,7-2,…,7-N)、HPA8(8-1,8-2,…,8-N)、サーキュレータ9(9-1,9-2,…,9-N)、N個のアンテナ素子10(10-1,10-2,…,10-N)を有するアレイアンテナ、LNA11(11-1,11-2,…,11-N)、周波数変換器12(12-1,12-2,…,12-N)、ADC13(13-1,13-2,…,13-N)、信号分離部14、受信ビーム制御部15、受信ビーム形成部16、及び信号処理部17を備える。第3の実施形態における送受信装置200Bは、符号変調部2に代えて符号変調部2bを備える点において、第1の実施形態における送受信装置200と異なる。
【0076】
第3の実施形態における目標の検出及び3次元位置を同定する動作は、第1の実施形態における動作と同じであるので、その説明を省略する。第3の実施形態のレーダシステムによれば、1パルス幅を長くできる場合には、多数の送信ビームを時分割に形成でき、送信パルス間のアイソレーションを高く保つことができる。また、第3の実施形態のレーダシステムは、送信マルチビームの形成に要する回路を必要としないため、送信に係る回路の回路規模の増加を抑えつつ、送信側と受信側との装置の間で時刻同期を行わずに目標の位置を特定できる。
【0077】
図12及び図13において、送信ビームごとに異なる符号系列を用いて生成された高周波信号を時分割で送信する送信装置100B及び送受信装置200Bの構成例を示した。第2の実施形態におけるレーダシステムにおいても、送信ビームごとに異なる周波数を用いて生成された高周波信号を時分割で送信するように、送信装置100A及び送受信装置200Aを変更してもよい。送信ビームごとに時分割で送信を行う場合、周波数分割部2aが、送信基準信号から生成したNt個の変調信号を順にウェイト制御部4へ供給することにより、各送信ビームによる高周波信号の送信が時分割で順に行われる。
【0078】
図14は、第2の実施形態のレーダシステムにおいて送信を時分割に行う場合の概要を示す図である。図14では、アレイアンテナのアンテナ素子番号と振幅と時間とのそれぞれの軸を組み合わせた3次元空間において送信信号が示されている。ある時刻のパルスにおいてアンテナ素子#1~#Nそれぞれから送信される信号は、パルスを送信ビーム(T1,T2,…,TNt)それぞれに割り当てられた異なる周波数帯域(f1,f2,…,fNt)のサブパルスに周波数分割し、サブパルスそれぞれに対してパルス変調を行い、サブパルスごとに式(2)又は式(14)で用いられる送信ビーム形成用の複素ウェイトを用いて送信ビームを形成することで得られる。
【0079】
(変形例)
各実施形態におけるレーダシステムの構成を説明したが、以下のように変更を加えてもよい。第1及び第3の実施形態の送受信装置200、200Bでは、ADC13から供給されるN個のディジタル信号に対して、信号分離部14が高周波信号(送信信号)の成分を抽出した後に、受信ビーム形成部16が受信ビーム信号を形成する構成を説明した。しかし、信号分離部14と受信ビーム形成部16との動作順序を入れ替えてもよい。具体的には、受信ビーム形成部16が、ADC13から供給されるN個のディジタル信号から各受信ビームに対応する受信ビーム信号を生成し、信号分離部14が、各受信ビーム信号に対して符号系列との相関処理を行い、各受信ビーム信号に含まれる高周波信号(第1の送信信号)の成分を抽出してもよい。
【0080】
また、第2の実施形態の送受信装置200Aにおいても、周波数分割部14aと受信ビーム形成部16との動作順序を入れ替えてもよい。具体的には、受信ビーム形成部16が、ADC13から供給されるN個のディジタル信号から各受信ビームに対応する受信ビーム信号を生成し、周波数分割部14aが、各受信ビーム信号に対して分割帯域ごとの分割信号に分割することで、各受信ビーム信号に含まれる高周波信号(第1の送信信号)の成分を抽出してもよい。
【0081】
また、第1~第3の実施形態のレーダシステムにおいて、送信側の装置として送信装置100、100A、100Bを用いる構成例を説明したが、送受信装置200、200A、200Bを送信側の装置として用いてもよい。
【0082】
また、第1~第3の実施形態のレーダシステムにおける送信装置100、100A、100Bがアレイアンテナを送信アンテナとして備える構成について説明したが、送信装置100、100A、100Bは、送信ビームを形成できる他のアンテナをアレイアンテナに代えて送信アンテナとして備えてもよい。例えば、誘導体レンズを用いたレンズアンテナや、ホーンアンテナ、パラボラアンテナを送信ビーム数分備えたり、ルーネベルクレンズ、フォスタースキャナ、イーグルスキャナ式のアンテナなどの機械式ビーム走査アンテナを備えたりしてもよい。
【0083】
上記の実施形態における送信装置及び送受信装置は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、CPUがプログラムを実行することにより、送信基準信号の生成、送信基準信号から合成信号を生成する処理、ADC13から供給されるディジタル信号から受信ビーム信号を生成する処理を行ってもよい。CPUは、補助記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、送信装置における一部又はすべての動作と、送受信装置における一部又はすべての動作とを行ってもよい。また、送信装置及び送受信装置における動作のすべて又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0084】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、高周波信号の成分(第1の送信信号)が抽出された際に用いた符号系列と、高周波信号の成分が抽出された受信ビーム信号に対応する受信ビームとの組み合わせに基づいて、高周波信号を反射した物体の位置を特定する信号処理部を持つことにより、符号系列で特定される送信ビームの指向方向と、受信ビームと指向方向との組み合わせにより目標が位置する領域を特定することができ、送信装置と受信装置との時刻同期を行わずとも目標の位置を特定できる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…信号生成部、2,2b…符号変調部、2a…周波数分割部、3…送信ビーム制御部、4…ウェイト制御部、5…信号合成部、6…DAC、7…周波数変換器、8…HAP、9…サーキュレータ、10…アンテナ素子、11…LNA、12…周波数変換器、13…ADC、14…信号分離部、14a…周波数分割部、15…受信ビーム制御部、16…受信ビーム形成部、17…信号処理部、100,100A,100B…送信装置、200,200A,200B…送受信装置
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