(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】導電性三次元物品
(51)【国際特許分類】
B29C 64/188 20170101AFI20230911BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230911BHJP
B29C 64/30 20170101ALI20230911BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230911BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B29C64/188
B29C64/106
B29C64/30
B33Y10/00
H01B13/00 503Z
(21)【出願番号】P 2019121146
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アデラ・ゴレデマ
(72)【発明者】
【氏名】チャド・エス・スミッソン
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・エヌ・クレティエン
(72)【発明者】
【氏名】ビビー・エスタ・エイブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ホジャ・セイイェド・ジャマリ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/060084(WO,A1)
【文献】特開2017-155220(JP,A)
【文献】特開2014-034602(JP,A)
【文献】特開2011-009743(JP,A)
【文献】特開2013-227576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
H01B 13/00-13/34
H01B 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物品を含む三次元(3D)物品の形成方法であって、
第1の3D構造材料を用意することと、
前記第1の3D構造材料の表面に、金属ナノ粒子インク組成物を堆積させることと、
前記金属ナノ粒子インク組成物を、60℃~100℃の温度でアニールして、前記第1の3D構造材料上に前記導電性物品を形成することと、
任意に前記導電性物品上に第2の3D構造材料を形成することと、
前記第1の3D構造材料および/または前記任意の第2の3D構造材料を溶融し、それによって自立型導電性物品を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子インク組成物が、
インクビヒクルと、
前記インクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子と、を含み、前記金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子に結合される2種以上の有機安定化基を含み、第1の有機安定化基のアルキル部分が、第2の有機安定化基のアルキル部分よりも長い炭素鎖長を有し、前記第1の有機安定化基が、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の有機安定化基が、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、TEMによって測定される場合
、0.5nm
~100nmの範囲のサイズを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記インクビヒクルが、第1の溶媒および第2の溶媒を含み、前記第1の溶媒が、無極性で、1気圧で160℃を超える沸点を有し、前記第2の溶媒が、1気圧で230℃を超える沸点を有し、前記第2の溶媒が、芳香族炭化水素であり、前記第1の溶媒より高い沸点を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の溶媒が、少なくとも1つの環式基を有する飽和または不飽和C
10~C
20炭化水素であり、前記第2の溶媒が、C
10~C
18アリールシクロアルカンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶媒が、ビシクロヘキサン、デカリン、ナフタレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物であり、前記第2の溶媒が、フェニルシクロヘキサンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の3D構造材料および前記任意の第2の3D構造材料が、
相変化材料を用意することと、
前記相変化材料を吐出温度に加熱することと、
前記相変化材料を互いの上に層状に吐出させることであって、後続の層を吐出する前に、各層を冷却および/または固化させる、吐出させることと、
前記冷却および/または固化層から、前記第1の3D構造材料および前記任意の第2の3D構造材料を形成することと、を含むプロセスによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記相変化材料が、結晶質化合物および非晶質化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶質化合物が、ジベンジルヘキサン-1,6-ジイルジカルバメート、テレフタル酸ジステアリル、ポリエチレンワックス、(L)-酒石酸ジ-フェニルエチル、これらの立体異性体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質化合物が、水素化アビエチン酸のトリグリセリド、アビトールEコハク酸、アビトールE酒石酸、酒石酸ジメントール、酒石酸t-ブチルシクロヘキシル-シクロヘキシル、クエン酸トリメントール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記吐出
により形成される層を冷却および/または固化させるのに
、1~10秒かかる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記相変化材料が
、30℃の温度
で10
4cps
~10
6cpsの粘度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記相変化材料
の粘度が、前記アニール工程の後に変化しない、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
自立型導電性物品の形成方法であって、
第1の3D構造材料を用意する工程と、
前記第1の3D構造材料の表面に、導電性金属インク組成物を堆積させる工程と、
前記導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D造形材料上
に導電性物品を形成する工程と、
前記第1の3D構造材料を溶融し、それによって自立型導電性物品を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項16】
前記
導電性金属インク組成物が、
インクビヒクルと、
前記インクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子と、を含み、前記金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子に結合される2種以上の有機安定化基を含み、前記2種以上の有機安定化基が、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノオクタン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリブチルアミン、およびトリヘキシルアミンからなる群から選択される、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元(3D)導電性物体を含む3D物品の形成方法に関する。より具体的には、本開示は、3D導電性物品が3D構造材料の表面上に形成されるか、または3D導電性物品が形成されて、3D構造材料内に埋め込まれる実施形態を提供する。本開示はまた、自立型3D導電性物体を3D構造材料上に形成し、次いで3D導電性物体から3D構造材料を分離または除去する方法も提供する。
【0002】
印刷機能性物品は、対話および多機能装置が組み立てられるというよりむしろ印刷される、プリンテッドエレクトロニクスの延長である。形状、形態、および構造、ならびにエレクトロニクスおよび他の機能を印刷する能力は、自動車および鉄道、航空宇宙、軍事、家電、ならびにその他多くの用途のための新規でスマートな構成部品への道を開くであろう。
【0003】
導電性3D物品は、自動車および鉄道、航空宇宙、軍事、家電、ならびにその他多くの用途のためのスマート構成部品を作り出すことにおいて多くの用途を有する。これらのスマート構成部品は、3D印刷物品内に導電性トラックおよびエレクトロニクスなどの機能性要素を含む。このような機能性要素は、価値の高い製品を作り出す。ほとんどの3D印刷物品は、高分子材料から製造されている。3D印刷構造エレクトロニクスを製作するためには、3D印刷に使用される構造材料と相溶性のある高導電性材料が必要である。導電性インクは、非常に高い温度でアニールされる必要があり、これは高分子3D印刷構造の溶融/軟化を引き起こし得る。導電性3D物品の製作を可能にするために、構造材料と相溶性のある導電性インクを特定する必要性がある。
【0004】
本開示は、導電性物品を含む三次元(3D)物品の形成方法を提供し、本方法は、第1の3D構造材料を用意することと、第1の3D構造材料の表面に、金属ナノ粒子インク組成物を堆積させることと、金属ナノ粒子インク組成物を、60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D構造材料上に導電性物品を形成することと、任意に導電性物品上に第2の3D構造材料を形成することと、を含む。
【0005】
特定の実施形態では、本開示は、埋め込まれた導電性物品を含む3D物品の形成方法を提供する。本方法は、第1の3D構造材料を用意することと、第1の3D構造材料の表面に、導電性金属インク組成物を堆積させることと、導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D構造材料上に導電性物品を形成することと、導電性物品上に第2の3D構造材料を形成し、それによって導電性物品をその中に埋め込むことと、を含む。
【0006】
特定の実施形態では、本開示は、自立型導電性物品の形成方法を提供し、本方法は、第1の3D構造材料を用意する工程と、第1の3D構造材料の表面に、導電性金属インク組成物を堆積させる工程と、導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D構造材料上に導電性物品を形成する工程と、第1の3D構造材料を溶融し、それによって自立型導電性物品を形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書に開示される様々な実施形態のための印刷システムを示す概略図である。
【
図2】本明細書に開示される実施形態から作製される埋め込みアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書での開示は、三次元(3D)印刷物品の作製プロセスを提供する。3D印刷物品は、導電性物品を含む。実施形態では、3D印刷物品は、支持構造材料上に印刷される導電性物品を含む。実施形態では、3D印刷物品は、構造材料内に埋め込まれる導電性物品を含む。実施形態では、3D印刷物品は、自立型部品または導電性物品を含む物体であり得る。実施形態では、3D印刷物品は、導電性物品のみを含有する。
【0009】
3D物品は、導電性トレースおよびエレクトロニクスなどの機能性要素の3D印刷構造への組み込みによって構築され得る。これにより機能性が向上し、価値の高い製品を作り出す。実施形態では、3D印刷物品は、アンテナ、センサ、インダクタ、ヒータ、マイクロシステム、プリント回路基板、発光ダイオード、および他の電子構成部品などの様々な異なる用途に利用され得る。3D印刷構造エレクトロニクスを製作するためには、3D印刷に使用される構造材料と相溶性のある導電性材料が必要である。ほとんどの入手可能である導電性インクは、高い温度でアニールされる必要があり、これは高分子3D印刷構造の溶融/軟化を引き起こし得る。導電性3D物品の製作を可能にするために、構造材料と相溶性のある導電性インクを特定する必要性がある。
【0010】
3D印刷物品の形成プロセスが、本明細書に開示される。3D印刷物品は、3D支持構造材料上に導電性トレースまたはラインを印刷することによって製作された。このプロセスは、支持プラットフォームとして第1の構造材料を用意することを含む。第1の構造材料は、相変化材料を用意することと、相変化材料を吐出温度に加熱することと、相変化材料を互いの上に層状に吐出させることであって、後続の層を吐出する前に、各層を冷却および/または固化させる、吐出させることと、第1の3D構造材料を形成することと、によって形成され得る。
【0011】
相変化材料の組成は、本明細書では以下により詳細に開示される。相変化材料の成分は、一緒に混合され、続いて約80℃~約120℃の実施形態の温度に加熱し、均質なインク組成物が得られるまで撹拌し、続いて相変化材料を周囲温度(典型的には、約20℃~約25℃)に冷却することができる。
【0012】
相変化材料は、一般に、吐出温度(例えば、吐出温度は、約80℃~約125℃、または約100℃~約120℃などの、約60℃~約125℃であり得る)で、約5~約20センチポアズ、または約7~約15センチポアズなどの、約2~約30センチポアズの溶融粘度を示す。
【0013】
実施形態では、相変化材料は、低温、具体的には約60℃~約125℃、または約80℃~約100℃、または約100℃~約120℃などの、約130℃未満の温度で吐出され得る。
【0014】
相変化材料が液体状態にある吐出温度から、相変化材料がゲル状態に転化するゲル転移温度まで冷却すると、インク粘度が急速に大きく増加する可能性がある。
【0015】
相変化材料からの第1の3D構造材料の印刷プロセスは、各吐出層の吐出温度を約45℃~約25℃、または約40℃~約25℃などの、約50℃~約25℃の温度に冷却して、最上層に後続の層を吐出する前に固化させることを含む。相変化材料の層状堆積は、望ましい高さおよびサイズの3D構造材料が形成されるまで繰り返すことができる。実施形態では、相変化材料の連続層が堆積されて、選択された高さおよび形状を有する構造材料、例えば、高さが約1~約10,000マイクロメートルの物体を形成し得る。実施形態では、相変化材料の第1および各連続層の厚さは、約0.52~約5.5mm、約1.02~約5mm、約1.52~約4.5mm、または約2.02~約4mmなどの、約0.02~約6mmであり得る。
【0016】
このプロセスは、第1の3D構造材料の表面に、金属ナノ粒子インク組成物を堆積させることと、導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D構造材料上に導電性物品を形成することと、を含む。
【0017】
金属ナノ粒子インク組成物の組成は、本明細書では以下により詳細に開示される。
【0018】
このプロセスは、導電性金属物品および/または第1の構造材料の上面の少なくとも一部を被覆する第2の構造材料を堆積させることをさらに含み、それによって導電性金属を構造材料内に埋め込み得る。導電性金属物品は、第1の構造材料(底部)と第2の構造材料(上部)との間に挟まれ得る。第2の構造材料は、相変化材料を用意することと、相変化材料を吐出温度に加熱することと、相変化材料を互いの上に層状に吐出させることであって、後続の層を吐出する前に、各層を冷却および/または固化させる、吐出させることと、第2の3D構造材料を形成することと、によって形成され得る。
【0019】
第2の構造材料の相変化材料は、第1の構造材料の相変化材料と同一であっても異なっていてもよい。第2の構造材料の相変化材料を加熱することは、第1の構造材料の相変化材料と同一であってもよい。
【0020】
図1は、本明細書に開示される実施形態による印刷のためのシステム10の概略図を示す。示されるように、システム10は、第1第2の3D構造材料100を堆積するようにプログラムされた3Dプリンタ11を含み得る。3Dプリンタ11は、複数の吐出システムを備えたインクジェットプリンタ、または複数の吐出システムを備えたエアロゾルプリンタ、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0021】
次いで、金属ナノ粒子インク組成物110が、プリンタ16によって第1第2の3D構造材料100に塗布される。プリンタ16は、エアロゾルプリンタまたはおよびインクジェットプリンタであり得る。金属ナノ粒子インク組成物110は、加熱器17、または実施形態では光硬化装置によって加熱され、金属導電性インク組成物110を導電性トレース111にアニールする。光硬化は、熱パルスを用いて達成される。熱パルスは、非常に速い(ミリ秒)ので、3D構造材料は、パルス中に有意な温度上昇を経験しない。そのような低温で3D構造を硬化させることは、3D構造の構造的完全性に影響を及ぼさない。
【0022】
加熱器17は、オーブン、もしくはホットプレートまたはホットエアガンなどの加熱プラテンを含み得る。
【0023】
プリンタシステム10は、アニールされた導電性トレース111上に第2の3D造形材料120を堆積させるための3Dプリンタ18を含む。プリンタ18は、エアロゾルプリンタまたはおよびインクジェットプリンタであり得る。3Dプリンタ11および3Dプリンタ18は、単一のプリンタであり得る。プリンタ18は、導電性トレース111上に熱またはUV硬化性組成物を堆積させ得る。
【0024】
導電性トレース111は、第1の構造材料101および第2の構造材料120内に埋め込まれる。実施形態では、最終製品は、その中に埋め込まれた導電性トレースを有する3D印刷物品である。
【0025】
様々な実施形態では、プリンタ11、16、および18は、コーティングされる組成物のためのリザーバに接続される複数のプリントヘッドを有する単一のプリンタであり得る。各プリントヘッドは、特定の組成物を吐出するように構成され得る。複数のプリントヘッドは、エアロゾルプリントヘッドもしくはインクジェットプリントヘッド、またはその両方を含み得る。以下の議論の目的のために、複数の異なるプリントヘッドを有する単一のプリンタも指す、異なるプリンタが識別される。
【0026】
様々な実施形態では、
図1は、埋め込まれた導電性トレースを有する3D物品を生成するための印刷システム10を示す。印刷システム10は、3Dプリンタ11、金属ナノ粒子インクプリンタ16、加熱システム17、および第2の3Dプリンタ18に結合される制御システム30を含み得る。実施形態では、3Dプリンタ11および3Dプリンタ18は、1つのプリンタであり得、それに応じて製品の流れが調整される。実施形態では、3Dプリンタ11、プリンタ16、および3Dプリンタ18は、複数のプリントヘッドを有する1つのプリンタであり得る。制御システム30は、3Dプリンタ11、金属ナノ粒子インクプリンタ16、加熱システム17、第2の3Dプリンタ18の動作に指示を与える、かつ/または、さもなければ動作を制御するように構成され得る。
【0027】
制御システム30は、3Dプリンタ11、金属導電性インクプリンタ16、加熱システム17、第2の3Dプリンタ18に機械的にまたは電気的に接続され得る。制御システム30は、3Dプリンタ11、金属ナノ粒子インクプリンタ16、加熱システム17、第2の3Dプリンタ18を制御することができるコンピュータ化された、機械的、または電気機械的装置であり得る。一実施形態では、制御システム30は、3Dプリンタ11、金属ナノ粒子インクプリンタ16、加熱システム17、第2の3Dプリンタ18に動作指示を与え得るコンピュータ化された装置であり得る。別の実施形態では、制御システム30は、オペレータによって使用可能な機械的装置を含み得る。この場合、オペレータは、制御システム30を物理的に操作することができ(例えば、レバーを引くことによって)、それは3Dプリンタ11、金属導電性インクプリンタ16、加熱システム17、第2の3Dプリンタ18を作動させ得る。別の実施形態では、制御システム30は、電気機械装置であり得る。
【0028】
相変化材料
相変化材料は、本明細書で調製される導電性物品を、印刷された3D構造材料の上および/または内部に、支持および/または埋め込むための3D構造材料として使用され得る。相変化物質は、結晶質化合物および非晶質化合物を含み得る。結晶質化合物対非晶質化合物の重量比は、一般に、約60:40~約95:5、約65:35~約95:5、または約70:30~約90:10である。一実施形態では、結晶質化合物と非晶質化合物の重量比は、それぞれ70:30である。別の実施形態では、結晶質化合物と非晶質化合物の重量比は、それぞれ80:20である。第1の構造材料中の結晶質化合物対非晶質化合物の重量比は、第2の構造材料の重量比と同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
各成分は、相変化材料に特定の特性を付与し、構成成分のブレンドは、優れた堅牢性を示す材料を提供する。
【0030】
相変化配合物中の結晶質化合物は、冷却時に急速な結晶化を介して相変化を引き起こす。結晶質化合物はまた、最終印刷物体の構造を設定し、非晶質化合物の粘着性を低減させることによって硬い三次元物体を作り出す。結晶質化合物は、約140℃で結晶化、比較的低い粘度(≦12センチポアズ(cps)、または約0.5~約10cps、または約1~約10cps)、および室温で高い粘度(>106cps)を示す。結晶質化合物は、材料の相変化を決定づけるので、次の層をより速く印刷する能力を促進するために急速な結晶化が必要とされる。示差走査熱量測定(DSC)(10℃/分で、-50~200~-50℃)によって、望ましい結晶質化合物は、鋭い結晶化および融解ピークを示し、それらの間のΔTは55℃未満である。より低い温度での吐出を提供するためには、融点は、150℃未満、または以下の実施形態において、約145~約140℃でなければならない。実施形態では、融点は、65℃超であり、最大65℃、または約66℃、または約67℃超の温度で放置した後に構造的完全性を提供する。好適な結晶質化合物の例としては、ジベンジルヘキサン-1,6-ジイルジカルバメート(米国特許第8,968,452号参照)、テレフタル酸ジステアリル(DST)(米国特許第8,741,043号参照)、(L)-酒石酸ジ-フェニルエチル(米国特許第8,465,579号参照)、ポリエチレンワックス(Baker Petrolite、Tulsa、Okla.から市販されている、POLYWAX 500(PE 500))、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的な結晶質化合物の構造は以下のとおりである。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
非晶質化合物は、粘着性を与え、印刷された三次元物体に堅牢性を付与する。本実施形態では、望ましい非晶質化合物は、約140℃で比較的低い粘度(<102センチポアズ(cps)、または約1~約100cps、または約5~約95cps)、しかし室温で非常に高い粘度(>106cps)を有する。140℃での低い粘度は、広い配合許容範囲を与え、一方室温での高い粘度は、堅牢性を付与する。非晶質化合物は、Tg(ガラス転移温度)を有するが、DSC(10℃/分で、-50~200~-50℃)による結晶化および融解ピークを示さない。相変化材料に所望の靭性および柔軟性を付与するために、Tg値は、典型的には、約1~約50℃、または約1~約40℃、または約1~約35℃である。選択された非晶質化合物は、1000g/mol未満、または約100~約1000g/mol、または約200~約1000g/mol、または約300~約1000g/molなどの低分子量を有する。ポリマーなどの高分子量非晶質化合物は、高温で粘性の粘着性液体になるが、望ましい温度でプリントヘッドを用いて吐出するには高すぎる粘度を有する。
【0035】
特定の実施形態では、非晶質化合物は、メントールと酒石酸のジエステル(DMT)、および異性体である(米国特許第8,500,896号参照)。酒石酸は、ワイン産業からの一般的な副生成物である生物再生可能材料であり得る。メントールもまた、それが供給される場所に応じて、生物再生可能材料であり得る。DMTの構造を以下に示す。
【0036】
【0037】
実施形態では、非晶質化合物は、シクロヘキサノール、t-ブチルシクロヘキサノール、および酒石酸(1:1:1のモル比)の混合物のエステルである。TBCTは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,500,896号に概説されている開示に従って合成され得る。TBCTの構造を以下に示す。
【0038】
【0039】
実施形態では、非晶質化合物は、以下の構造を有するクエン酸トリメントール(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,287,632号参照)である。
【0040】
【0041】
相変化材料のための他の好適な非晶質化合物としては、ロジン化またはロジンエステルが挙げられ、これは、メタノール、グリセロール(1,2,3-トリヒドロキシプロパン)、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メントール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1,3-プロパンジオール)、フェノール、ターシャリーブチルフェノールなどのアルコール、ならびに酒石酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ドデカン二酸、およびセバシン酸などの酸に基づくモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エステルであり得る。好適なロジン化エステルとしては、約300~約1200の数平均分子量Mn、および約300~約2000の重量平均分子量Mwを有するものが挙げられ、約16~約80個の炭素原子を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。好適なロジン化エステルは、限定されないが、約0~約300の酸価を有する。ロジン酸を含む、約30~約400の酸価を有する、いくらかの酸官能基を有するモノエステルを含むモノエステルが任意に組み込まれ得る。本明細書で使用される場合、「ロジン化エステル」または「ロジンエステル」は、エステル化されているロジン酸を同義的に指す。このようなロジン酸は、様々な種類の樹木、主にマツおよび他の針葉樹から滲出される天然に存在する樹脂質の酸を含み得る。市販されている好適なロジンエステルとしては、ABALYN(登録商標)ロジンメチルエステル、PENTALYN(登録商標)A ロジンペンタエリスリトールエステル、PEXALYN(登録商標)9085 ロジングリセロールエステル、PEXALYN(登録商標)T ロジンペンタエリスリトールエステル、PINOVA(登録商標)Ester Gum 8BG ロジングリセロールエステル、FORAL(登録商標)85 ハロゲン化ロジングリセロールエステル、FORAL(登録商標)105 ヒドロアビエチン(ロジン)酸のペンタエリスリトールエステル、FORAL(登録商標)3085 水素化ロジングリセロールエステル、HERCOLYN(登録商標)D 水素化ロジンメチルエステル、PENTALYN(登録商標)H ロジンペンタエリスリトールエステル、以上すべてはPinovaから市販;ARAKAWA(登録商標)Ester Gum G、ARAKAWA(登録商標)Ester Gum AA-L、ARAKAWA(登録商標)Ester Gum AAV、ARAKAWA(登録商標)Ester Gum AT、以上はArakawa Chemical Industries,Ltd.から市販のロジンエステル;ARAKAWA(登録商標)Ester Gum HP、ARAKAWA(登録商標)Ester Gum H、ARAKAWA(登録商標)Ester Gum HT、以上はArakawa Chemical Industries,Ltd.から市販の水素化ロジンエステル;ARAKAWA(登録商標)S-80、ARAKAWA(登録商標)S-100、ARAKAWA(登録商標)S-115、ARAKAWA(登録商標)A-75、ARAKAWA(登録商標)A-100、ARAKAWA(登録商標)A-115、ARAKAWA(登録商標)A-125、ARAKAWA(登録商標)L、ARAKAWA(登録商標)A-18、以上はArakawa Chemical Industries,Ltd.から市販の安定化されたロジンエステル;ARAKAWA(登録商標)KE-311およびKE-100レジン、水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリド、Arakawa Chemical Industries,Ltd.から市販;ARAKAWA(登録商標)KE-359 水素化ロジンエステルおよびARAKAWA(登録商標)D-6011 不均化ロジンエステル、Arakawa Chemical Industries,Ltd.から市販;ならびにSYLVALITE(登録商標)RE 10L、SYLVALITE(登録商標)RE 80HP、SYLVALITE(登録商標)RE 85L、SYLVALITE(登録商標)RE 100XL、SYLVALITE(登録商標)RE 100L、SYLVALITE(登録商標)RE 105L、SYLVALITE(登録商標)RE 110L、SYLVATAC(登録商標)RE 25、SYLVATAC(登録商標)RE 40、SYLVATAC(登録商標)RE 85、SYLVATAC(登録商標)RE 98、以上すべてはArizona Chemicalから市販;PERMALYN(商標)5095 ロジングリセロールエステル、PERMALYN(商標)5095-C ロジングリセロールエステル、PERMALYN(商標)5110 ロジンペンタエリスリトールエステル、PERMALYN(商標)5110-C ロジンペンタエリスリトールエステル、PERMALYN(商標)6110 ロジンペンタエリスリトールエステル、PERMALYN(商標)6110-M ロジンペンタエリスリトールエステル、PERMALYN(商標)8120 ロジンペンタエリスリトールエステル、STAYBELITE(商標)Ester3-E 部分水素化ロジンエステル、STAYBELITE(商標)Ester5-E 部分水素化ロジンエステル、およびSTAYBELITE(商標)Ester10-E 部分水素化ロジンエステル、以上すべてはEastman Kodakから市販;ならびにARAKAWA(登録商標)ESTER E-720およびSUPER ESTER E-730-55、以上はArakawa Chemical Industries,Ltd.から市販のロジンエステルラテックスが挙げられる。
【0042】
相変化材料のためのさらに他の好適な非晶質化合物は、以下の構造を有するコハク酸または酒石酸とビトールEアルコールとのエステルを含む。
【0043】
【0044】
【0045】
アビトールE酒石酸ジエステル
非晶質構成成分を合成するために、コハク酸または酒石酸をABITOL E(商標)アルコール(Hercules,Inc.(Wilmington,DE)から入手可能)と反応させた。ABITOL Eは、代表的な構造によって示され、ヒドロアビエチルアルコール(CAS[13393-93-6])、水素化ロジンのメチルエステル(CAS[8050-15-5])、および脱カルボキシル化ロジン(CAS[8050-18-8])を含む。アビトールEは、マツ樹液、およびトウモロコシまたはモロコシから得られる生物ベースのコハク酸から誘導される樹脂である。
【0046】
実施形態では、非晶質化合物は、エステル樹脂(例えば、KE-100樹脂(Arakawa Chemical Industries(USA),Inc.,Chocago,ILLから得られる水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリド))、アビトールEコハク酸、アビトールE酒石酸、酒石酸ジメントール、酒石酸t-ブチルシクロヘキシル-シクロヘキシル、クエン酸トリメントール、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
実施形態では、相変化材料用のキャリアは、例えば10℃/分の速度での示差走査熱量測定によって測定したところ、例えば約70℃~約140℃、約75℃~約135℃、約80℃~約130℃、または約85℃~約125℃などの、約65℃~約150℃の融点を有し得る。実施形態では、得られる相変化材料は、約65℃~約140℃、または約65℃~約135℃、または約70℃~約130℃の融点を有する。実施形態では、得られる相変化材料は、約65℃~約130℃、または約66℃~約125℃、または約66℃~約120℃の結晶化点を有する。さらなる実施形態では、得られる相変化材料は、約140℃で、約1~約15cps、約2~約14cps、約3~約13cpsの粘度を有する。本実施形態の相変化材料は、冷却すると迅速な固化をもたらす。実施形態では、相変化材料は、冷却すると、約5~約15秒または約5~約8秒の時間内に1×106cpsを超える粘度を有する固体形態に達する。本明細書で使用される場合、「冷却」とは、熱を除去して、周囲温度に戻すことを意味する。具体的には、約30℃で、得られた相変化材料は、約104cps~約106cpsの粘度を有する堅牢な固体である。
【0048】
本実施形態の相変化材料は、このような従来の添加剤に関連する既知の機能を活用するために、従来の添加剤をさらに含み得る。このような添加剤としては、例えば、少なくとも1種の酸化防止剤、消泡剤、スリップ剤およびレベリング剤、清澄剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤などを含み得る。
【0049】
相変化は、形成された物体を酸化から保護するために酸化防止剤を任意に含有してもよく、またプリンタリザーバ中に加熱溶融材料として存在しながら相変化材料構成成分を酸化から保護してもよい。好適な酸化防止剤の例としては、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマミド)(IRGANOX 1098、BASFから入手可能)、2,2-ビス(4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL-205、Vertellusから入手可能)、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Aldrich)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスホナイト(ETHANOX-398、Albermarle Corporationから入手可能)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト(Aldrich)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(TCI America)、次亜リン酸トリブチルアンモニウム(Aldrich)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール(Aldrich)、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(4-メトキシベンジル)フェノール(Aldrich)、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール(Aldrich)、4-ブロモ-3,5-ジジメチルフェノール(Aldrich)、4-ブロモ-2-ニトロフェノール(Aldrich)、4-(ジエチルアミノメチル)-2,5-ジメチルフェノール(Aldrich)、3-ジメチルアミノフェノール(Aldrich)、2-アミノ-4-tert-アミルフェノール(Aldrich)、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール(Aldrich)、2,2’-メチレンジフェノール(Aldrich)、5-(ジエチルアミノ)-2-ニトロソフェノール(Aldrich)、2,6-ジクロロ-4-フルオロフェノール(Aldrich)、2,6-ジブロモフルオロフェノール(Aldrich)、α-トリフルオロ-o-クレゾール(Aldrich)、2-ブロモ-4-フルオロフェノール(Aldrich)、4-フルオロフェノール(Aldrich)、4-クロロフェニル-2-クロロ-1,1,2-トリ-フルオロエチルスルホン(Aldrich)、3,4-ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3-フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3,5-ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2-フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich)、エチル-2-(4-(4-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオネート(Aldrich)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト(Aldrich)、4-tert-アミルフェノール(Aldrich)、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich)、NAUGARD 76、NAUGARD 445、NAUGARD 512、およびNAUGARD 524(Chemtura Corporation製)など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤は、存在する場合、相変化材料の約0.25重量パーセント~約10重量パーセント、または相変化材料の約1重量パーセント~約5重量パーセントなど、任意の所望の量または有効量で相変化材料中に存在し得る。
【0050】
実施形態では、本明細書に記載される相変化材料はまた着色剤も含む。相変化材料は、染料または顔料などの着色剤を任意に含有し得る。着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)セットから、またはカスタムカラー染料もしくは顔料、または顔料の混合物から得られるスポットカラーからのいずれかであり得る。染料系着色剤は、結晶質および非晶質化合物ならびに他の任意の添加剤を含むベース組成物と混和性である。
【0051】
相変化材料は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0283758号に開示されているように、任意の所望の方法または好適な方法によって調製され得る。
【0052】
金属ナノ粒子インク組成物
金属ナノ粒子インク組成物は、インクビヒクル、およびインクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子を含む。金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子に結合される第1の有機安定化基および第2の有機安定化基の両方を含む。第1の有機安定化基のアルキル部分は、第2の有機安定化基のアルキル部分よりも長い炭素鎖長を有する。以下により詳細に議論されるように、
【0053】
第1の有機安定化基は、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。第2の有機安定化基は、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0054】
本明細書により詳細に議論されるように、少なくとも2種の異なる炭素鎖長を有する有機安定化剤を用いることによって、1つ以上の利点、例えば比較的小さいナノ粒子を形成する能力および/または粒子によって作製される導電性インクの比較的低いアニール温度が達成され得る。
【0055】
「金属ナノ粒子」で使用される「ナノ」という用語は、例えば約1nm~約70nm、または約1nm~約50nm、約1nm~約25nm、または約1nm~約10nmなどの、例えば約0.5nm~約100nmなどの、例えば100nm以下の粒子径を指す。粒径は、例えばMalvern動的光散乱技術を用いて報告されるようなZave粒径などの、TEM(透過型電子顕微鏡)またはDLS(動的光散乱)によって決定されるような金属粒子の平均直径を指す。一般的に、本明細書に記載されるプロセスから得られる金属ナノ粒子には複数の粒径が存在し得る。実施形態では、異なるサイズの金属含有ナノ粒子の存在は許容可能である。
【0056】
実施形態では、金属ナノ粒子は、(i)1種以上の金属または(ii)1種以上の金属複合体から構成される。任意の好適な金属が用いられ得る。金属の例としては、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNi、具体的にはAg、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Niなどの遷移金属、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な金属複合体としては、Au-Ag、Ag-Cu、Ag-Ni、Au-Cu、Au-Ni、Au-Ag-Cu、およびAu-Ag-Pdを挙げることができる。金属複合体としてはまた、例えばSi、C、およびGeなどの非金属も挙げることができる。金属複合体の様々な構成成分はそれぞれ、例えば約0.01重量%~約99.9重量%、具体的には約10重量%~約90重量%の範囲の量など、任意の量で、かつ結果として得られる印刷された形体に所望の導電性を提供するなど、所望の特性を提供するように調整される量で、複合体中に存在し得る。
【0057】
一実施形態では、金属ナノ粒子は銀を含む。例えば、ナノ粒子の金属は、銀、および1種、2種以上の他の金属から構成される金属合金であり得、銀は、例えばナノ粒子の少なくとも約20重量%、具体的にはナノ粒子の約50重量%超を構成する。別段の記載がない限り、金属ナノ粒子の構成成分について本明細書に列挙される重量パーセントは、ナノ粒子の一部であり得る安定化剤または酸化物形成体の重量を含まない。
【0058】
本開示のインク組成物は、任意の好適な量の金属ナノ粒子を含み得る。一実施形態では、金属ナノ粒子は、インク組成物の総重量を基準として、約30重量%~約80重量%など、約40重量%~約70重量%などの、約10重量%~約90重量%の範囲の濃度である。
【0059】
金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子に結合される第1の有機安定化基および第2の有機安定化基の両方などの、1種以上の有機安定化基を任意に含み、安定化されたナノ粒子複合体を形成し得る。安定化基(本明細書では安定化剤、安定化剤基、またはリガンドと称され得る)は、ナノ粒子の分散性を強化または維持するため、および/または組成物中のナノ粒子の凝集を低減させるために、一般に当技術分野で周知である。安定化基がナノ粒子に結合されるという文脈において「結合される」という用語は、安定化剤が一般にナノ粒子の表面と物理的または化学的に会合することを意味する。このように、ナノ粒子(例えば、本明細書に記載される銀ナノ粒子または他の金属ナノ粒子)は、液体溶液の外側にナノ粒子表面に安定化剤を有する。すなわち、ナノ粒子表面に安定化剤を有するナノ粒子は、ナノ粒子と安定化剤の複合体を形成するのに使用される反応混合物溶液から単離および回収され得る。したがって、安定化されたナノ粒子は、その後、印刷可能な液体を形成するために溶媒中に容易かつ均一に分散され得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、ナノ粒子と安定化剤との間の結合を説明するために使用される「物理的または化学的に会合する」という句は、化学的結合および/または他の物理的結合であり得る。化学的結合は、例えば、共有結合、水素結合、配位錯体結合、もしくはイオン結合、または異なる化学結合の混合の形態をとり得る。物理的結合は、例えば、ファンデルワールス力、もしくは双極子-双極子相互作用、または異なる物理的結合の混合の形態をとり得る。安定化剤は、連結基を介してナノ粒子に結合させることができる、またはナノ粒子自体に直接結合させることができる。
【0061】
「有機安定化基」または「有機安定化剤」における「有機」という用語は、例えば、炭素原子(複数可)の存在を指すが、有機安定化剤は、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、ハロゲンなどの1種以上の非金属ヘテロ原子を含み得る。有機安定化剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,270,694号に記載されているものなどの有機アミン安定化剤であり得る。一実施形態では、第1の有機安定化基は、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、第2の有機安定化基は、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、第1の有機安定化基は、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択することができ、第2の有機安定化基は、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、およびトリデシルアミン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0062】
一実施形態では、第1および第2の安定化剤とは異なる追加の安定化剤が使用され得る。例えば、追加の安定化剤は、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、およびドデシルアミンのうちのいずれかから任意に選択され得る。一実施形態では、2種以上の有機安定化基のうちの第1のものはドデシルアミンである。一実施形態では、2種以上の有機安定化基はドデシルアミンに加えて第2の有機アミンを含み、第2の有機アミンはヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミンおよびデシルアミンからなる群から選択される。一実施形態では、第2の有機アミンはオクチルアミンである。
【0063】
本明細書では以下の実施例に示されるように、一実施形態では、本開示のナノ粒子は、オクチルアミンとドデシルアミンバインダーとの混合物を用いて効果的に安定化され得る。オクチルアミンとドデシルアミンの両方の使用は、小さいサイズ(例えば100nm未満)の安定化された銀粒子をもたらし、100%のドデシルアミン安定化剤で作製される粒子よりも低いアニール温度を伴う。一方では、オクチルアミンのみ(例えばドデシルアミンなし)の使用では、所望の安定化を与えず、大きすぎる粒子をもたらした。ドデシルアミンとオクチルアミンの両方を用いる1つの特定の実施形態で作製された粒子から配合されたインクは、低温(例えば80℃以下)で短時間(10~30分)アニールされて、高導電性トレースを得ることができる(>10,000秒/cm)。そのような低いアニール温度は、プラスチックフィルムおよび他のポリマー物体などの、高温に敏感な多くの基板上に導電性トレースを印刷することを可能にし得る。それはまた、3D印刷によって作製されるポリマー部品上への導体(例えば、電極や他の導電性要素)の低温堆積を可能にし、それによって多くの用途のためのスマート構成部品を作り出すことを可能にするであろう。
【0064】
本開示の実施例はドデシルアミンおよびオクチルアミンを用いているが、ドデシルアミン単独と比較した場合、低減されたアニール温度を達成するために有機アミンの他の特定の組み合わせも用いられ得ることが予想される。例えば、オクチルアミンおよびドデシルアミンを用いた結果に基づいて、ドデシルアミンを単独で使用した場合より低いアニール温度を達成するために、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミンおよびデシルアミンのうちのいずれ1種が、ドデシルアミンと組み合わせて使用され得ることが予想される。ドデシルアミンを単独で使用した場合よりも低いアニール温度を達成するために、ドデシルアミンは、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミンおよびウンデシルアミンのうちの2種以上の様々な組み合わせと共に使用され得ることも予想される。
【0065】
有機アミンは、本明細書に記載されるカルボン酸-有機アミン複合体で安定化された銀ナノ粒子のように、カルボキシレート連結基または他のカルボン酸誘導連結基を介するなど、任意の所望の方法でナノ粒子に結合することができる。有機アミンは、銀ナノ粒子に結合した後、アミド基などのようなアミン以外の基と考えられる可能性がある。しかしながら、本開示の目的のために、ナノ粒子への結合の前または後のいずれかで有機アミンに言及する場合、有機アミンは、それらが結合後アミンのままでいるか否かにかかわらず、銀ナノ粒子への結合前のそれらの構造に基づいて命名されると理解されたい。
【0066】
2種以上の安定化剤が使用される場合、各安定化剤は、ナノ粒子を作製するために用いられる組成物中に、または最終ナノ粒子生成物の一部として、例えば約99(第1安定化剤):1(第2安定化剤)~約1(第1安定化剤):99(第2安定化剤)などの任意の好適な重量比で存在し得る。さらなる例として、第1および第2の有機アミンが使用される場合、所望の小さい粒径および低温アニールを提供するであろう、第1の有機アミン対第2の有機アミンの任意の好適な比率が使用され得る。例えば、ナノ粒子を作製するための組成物に用いられる第1の有機アミン対第2の有機アミンのモル比は、約1:4~約4:1、または約1:3~約3:1、または約3:2~約2:3、または約1:1などの、約1:5~約5:1の範囲であり得る。第1の有機アミンがドデシルアミンであり、第2の有機アミンがオクチルアミンである一実施態様では、ナノ粒子を作製するために用いられる有機アミンの量は、金属含有ナノ粒子を作製するための安定化剤として添加される、有機アミンの総モル量(例えば、オクチルアミンとドデシルアミンの総量)を基準として、例えばオクチルアミン約35モル%~約75モル%などの、約30モル%~約80モル%、およびドデシルアミン約65モル%~約25モル%などの、約70モル%~約20モル%の範囲であり得る。別の実施形態では、範囲は、金属含有ナノ粒子を作製するための安定化剤として添加される、有機アミンの総モル量を基準として、オクチルアミン約40モル%~約60モル%およびドデシルアミン約60モル%~約40モル%、またはオクチルアミン約45モル%~約55モル%およびドデシルアミン約55モル%~約45モル%、またはオクチルアミン約50モル%およびドデシルアミン約50モル%である。
【0067】
安定化剤の使用量は、例えば、銀化合物1モル当たり約1モル当量以上、または銀化合物1モル当り約2モル当量以上、または銀化合物1モル当り約10モル当量以上、銀化合物1モル当たり約25モル以上のモル当量以上である。銀化合物1モル当たり約1~約25モル当量の範囲外の量も用いられ得る。
【0068】
他の有機安定化剤の例としては、チオールおよびその誘導体、-OC(=S)SH(キサンチン酸)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、および他の有機界面活性剤が挙げられる。有機安定化剤は、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオールなどのチオール;例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、および1,4-ブタンジチオールなどのジチオール;またはチオールとジチオールの混合物からなる群から選択され得る。有機安定化剤は、例えば、O-メチルキサンテート、O-エチルキサンテート、O-プロピルキサントゲン酸、O-ブチルキサントゲン酸、O-ペンチルキサントゲン酸、O-ヘキシルキサントゲン酸、O-ヘプチルキサントゲン酸、O-オクチルキサントゲン酸、O-ノニルキサントゲン酸、O-デシルキサントゲン酸、O-ウンデシルキサントゲン酸、O-ドデシルキサントゲン酸などのキサントゲン酸からなる群から選択され得る。金属ナノ粒子を安定化させ得るピリジン誘導体(例えば、ドデシルピリジン)および/または有機ホスフィンを含有する有機安定化剤もまた、潜在的安定化剤として使用され得る。
【0069】
金属ナノ粒子インク組成物に用いられるインクビヒクルは、第1の溶媒および第2の溶媒を含む。第1の溶媒は非極性であり、1気圧で160℃を超える沸点を有する。第2の溶媒は芳香族炭化水素であり、1気圧で230℃を超える沸点を有し、これは第1の溶媒の沸点よりも高い沸点である。
【0070】
第1の溶媒は、1気圧で160℃を超える沸点を有する非極性溶媒であり、本開示の有機アミンで安定化された金属ナノ粒子に良好な分散安定性を提供し得る。一実施形態では、銀ナノ粒子に対する第1の溶媒の分散性は、第2の溶媒の分散性よりも良好であり得る。本明細書では、「溶媒」という用語は、固体ナノ粒子を溶解するのではなく分散させるように作用する化合物が含まれるように広く定義されるが、溶媒は、任意にインク組成物中の1種以上の他の成分に溶解性を与え得る。
【0071】
一実施形態では、第1の有機アミンは炭化水素である。本開示の目的のための「炭化水素」という用語は、完全に水素と炭素からなる有機化合物を指す。
【0072】
好適な第1の溶媒の例としては、少なくとも1種の環式基を有する飽和または不飽和C10~C20炭化水素が挙げられる。一実施形態では、少なくとも1種の環式基は、ヘキシル基などの飽和または不飽和の炭素6個の基であり得る。一実施形態では、化合物は、連結または縮合され得る少なくとも2種の飽和または不飽和の炭素6個の環式基を含み、環式基のうちの1つまたは両方は、メチル、エチル、プロピル、またはブチルなどの直鎖または分岐鎖C1~C8ヒドロカルビル基で任意に置換される。一例として、第1の溶媒は、ビシクロへキサン、デカリン、ナフタレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物であってもよく、それらのいずれもが、直鎖または分岐鎖C1~C8ヒドロカルビル基で非置換または置換され得る。
【0073】
第1の溶媒は、160℃を超える沸点を有し得る。例えば、沸点は、1気圧で、約180℃~約240℃、または約200℃~約235℃、または約220℃~約230℃の範囲であり得る。第1の溶媒の比較的高い沸点は、比較的低い蒸気圧と相関し得る。
【0074】
第2の溶媒は、金属ナノ粒子に対して良好な分散特性を依然として提供しながら、1気圧で230℃を超える比較的高い沸点を有する任意の芳香族炭化水素であり得る。一実施形態では、芳香族炭化水素は、所望の沸点を提供するのに十分な長さの、1つ以上の直鎖、分岐鎖、または環状ヒドロカルビル基で置換されたフェニル基を含み得る。一実施形態では、第2の溶媒は、フェニルシクロヘキサンなどの、C10~C18アリールシクロアルカンである。
【0075】
第2の溶媒は、230℃を超える沸点を有し得る。例えば、沸点は、1気圧で、約235℃~約300℃、または約235℃~約260℃、または約235℃~約245℃、または約240℃の範囲であり得る。第2の溶媒の比較的高い沸点は、第1の溶媒の沸点よりも高く、また第1の溶媒の蒸気圧よりも低い比較的低い蒸気圧にも相関し得る。
【0076】
第1の溶媒と第2の溶媒の両方の組み合わせは、金属ナノ粒子の分散を促進し、均一で安定なナノ粒子分散液を提供する。一実施形態では、分散液は、室温で、1日、1週間、または1ヶ月以上などの、一定期間安定であり続ける。一実施形態では、分散液は、5℃の温度で1年以上などの、少なくとも6ヶ月間安定であり続ける。さらに、溶媒の組み合わせは、ナノ粒子の凝集を低減または防止するのに役立ち得る。金属ナノ粒子インク配合物中に第1および第2の溶媒の一定量を組み込むことによって、待ち時間などのインク印刷特性が改善され得る。
【0077】
第1および第2の溶媒に加えて、任意の他の好適な溶媒が、本開示の組成物中に任意に用いられ得る。一実施形態では、含まれる任意の溶媒は、非水性、極性、または非極性有機溶媒である。任意の溶媒の例としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、およびテトラリンなどの第2の溶媒以外の芳香族炭化水素;ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ヘキサデカン、1-ウンデカノール、2-ウンデカノール、3-ウンデカノール、4-ウンデカノール、5-ウンデカノール、6-ウンデカノール、1-ドデカノール、2-ドデカノール、3-ドデカノール、4-ドデカノール、5-ドデカノール、6-ドデカノール、1-トリデカノール、2-トリデカノール、3-トリデカノール、4-トリデカノール、5-トリデカノール、6-トリデカノール、7-トリデカノール、1-テトラデカノール、2-テトラデカノール、3-テトラデカノール、4-テトラデカノール、5-テトラデカノール、6-テトラデカノール、7-テトラデカノールなどのアルカン、アルケン、または約10~約18個の炭素原子を有するアルコール;例えばテルピネオール(α-テルピネオール)、β-テルピネオール、ゲラニオール、シネオール、セドラル、リナロール、4-テルピネオール、ラバンジュロール、シトロネロール、ネロール、メトール、ボルネオール、ヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘキサノール、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、2-(2-プロピル)-5-メチル-シクロヘキサン-1-オールなどのアルコール;例えばイソデカン、イソドデカン、およびISOPAR(登録商標)E、ISOPAR G、ISOPAR H、ISOPAR L、およびISOPAR M(上記すべてのISOPAR製品はExxon Chemical Company製)、SHELLSOL(登録商標)(Shell Chemical Company製)、SOLTROL(登録商標)(Philips Oil Co.,Ltd.製)、BEGASOL(登録商標)(Mobil Petroleum Co.,Inc.製)、IP Solvent 2835(Idemitsu Petrochemical Co.,Ltd.製)などの市販のイソパラフィン混合物などのイソパラフィン系炭化水素;ナフテン油;テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリルなどのニトリル;ジクロロメタンなどのハロゲン化溶媒;N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ならびに上記溶媒のいずれかの混合物を挙げることができる。第1および第2の溶媒に加えて、1、2、3、またはそれ以上の任意の溶媒が使用され得る。
【0078】
第1および第2の溶媒は、任意の好適な割合で存在し得る。例えば、第1の溶媒対第2の溶媒の重量比は、約99:1~約1:99、または約80:20~約20:80、または約70:30~約30:70の範囲であり得る。一実施形態では、第2の溶媒よりも第1の溶媒が多く用いられる。
【0079】
任意の極性溶媒が用いられる一実施形態では、混合物中の非極性溶媒と比較して比較的少量で使用され得る。例えば、極性溶媒対非極性溶媒の重量比は、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、または1:10、またはそれより低いなどの、2:3未満であり得る。一実施形態では、任意の溶媒は添加されず、その結果、他の成分と共に添加され得る少量(例えば、インク組成物の総重量を基準として、5重量%、または2重量%、または1重量%以下などの、10重量%未満)を除いて、実質的に第1および第2の溶媒のみが含まれる。
【0080】
第1および第2の溶媒の総量は、全組成物の重量%を基準として、金属ナノ粒子インク組成物中に、例えばインク組成物の約10重量%~約90重量%、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約70重量%、および約40重量%~約60重量%などの、少なくとも10重量%の量で存在し得る。一実施形態では、第1および第2の溶媒の総量は、インク組成物全体の重量%を基準として、少なくとも50重量%の量でインク組成物中に含まれる。
【0081】
金属ナノ粒子インク組成物の粘度範囲の例は、25℃で、約2~20cps、または約3~15cpsなどの、約1~30cpsの範囲である。
【実施例】
【0082】
本明細書では以下に記載の実施例は、本実施形態を実施する際に使用され得る異なる組成物および条件の例示である。別段の指示がない限り、すべての割合は重量による。しかしながら、本実施形態は、多くの種類の組成物を用いて実施することができ、上記の開示に従い、かつ以下に指摘されるように多くの異なる用途を有し得ることは明らかであろう。
【0083】
実施例1:ドデシルアミンで安定化された銀ナノ粒子の調製
ドデシルアミン(444.55g)、デカリン(150mL)、およびメタノール(30mL)を、3つ口丸底反応フラスコに添加し、ドデシルアミンが溶解するまで混合物をよく攪拌しながら~37℃まで加熱した。次いで、還元剤フェニルヒドラジン(32.70g)を、約5分間よく攪拌しながら溶液に添加した。酢酸銀(100g)を、35~38℃の温度範囲で~1.5から2.0時間かけて徐々に添加した。添加中に反応混合物の色が透明から暗褐色に変化し、銀ナノ粒子の形成を示した。添加後、反応混合物を40℃に加熱し、この温度で1時間撹拌した。
【0084】
粗生成物を、750mLのMeOHを10分間よく攪拌しながら添加することによって沈殿させ、次いで濾過により捕集した。捕集されたウェットケーキをガラスビーカーに移し、250mLのメタノール中で2回、30分間の撹拌を行った。最終生成物を濾過により捕集し、室温で24時間真空オーブン内で乾燥し、濃青色の安定化された銀ナノ粒子68.3gを得た。
【0085】
実施例2:新規銀ナノ粒子インクの調製
実施例1の銀ナノ粒子から新規銀ナノ粒子インク試料を調製した。インクは、ビシクロヘキサン(BCH):フェニルシクロヘキサン(重量で3:2)中に約50重量%の銀ナノ粒子を含有していた。以下の手順を使用してインクを作製した。茶色のガラス容器(120mL)中の50グラムの銀ナノ粒子粉末に、ビシクロヘキサン(30g)とフェニルシクロヘキサン(20g)の両方を添加した。得られた混合物を、オービタルミキサーを用いて約2時間穏やかに試料を振とうすることによって混合し、次いで22時間低速のロールミル上に配置した。この混合期間の後、得られた混合物を、1μmガラス繊維シリンジフィルターで濾過し、~98gの導電性銀ナノ粒子インクを得た。
【0086】
比較例3:銀ナノ粒子インク
約50重量%の銀ナノ粒子を、ビシクロヘキサン(BCH)およびフェニルシクロヘキサンの代わりにデカリン:BCH(重量で3:2)中に分散させたことを除いて、実施例2Aのものと同様である第2の銀ナノ粒子インク試料を作製した。
【0087】
比較例4:ドデシルアミンを用いた銀ナノ粒子の合成(対照)
オーバーヘッドスターラー、温度計、冷却器、およびArラインを備えた2Lの3つ口丸底フラスコに、溶融ドデシルアミン(444.77g、オーブン内50℃で一晩溶融)を添加した。反応フラスコを温水(35~40℃)に浸漬した。MeOH(29.26mL)を添加し、続いてデカリン(149.78mL)を添加した。いくらかのデカリンを用いて、フェニルヒドラジン(26.17g)を磁気撹拌しながら添加して、移動を完了させた。混合物を完全に均一になるまで撹拌し、温度を35℃で安定化させた。温度を35~40℃に維持しながら、酢酸銀粉末をフラスコの上部からゆっくり添加した。酢酸銀を120分かけて添加した。反応混合物を40℃でさらに1時間撹拌した。
【0088】
MeOH(750mL)を添加し、10分間撹拌した。反応生成物を、2枚の濾材(底部にWhatman 934AHガラス繊維紙、上部にWhatman#54濾紙)を備えたブフナー漏斗を用いて濾過した。濾過は約40分かかった。濾液は暗褐色であり、濾過ケーキは灰色がかった青色であった。
【0089】
濾液試料を茶色の瓶に入れ、アルゴンでフラッシュし、冷蔵庫に保管した。Malvern Nano ZetasizerおよびNano Sizerを用いて動的光散乱によってナノ粒子の粒径を評価した。結果を以下の表1に示す。ここで、D[1,0]は、粒子の平均サイズ(すなわち、数平均)である。
【0090】
実施例5:100%オクチルアミンを用いた銀ナノ粒子の合成
磁気撹拌子、温度計、冷却器、およびArラインを備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、オクチルアミン(31.01g)を添加した。フラスコを温水(35~40℃)に浸漬した。MeOH(1.50mL)を添加し、続いてデカリン(7.49mL)を添加した。いくらかのデカリンを用いて、フェニルヒドラジン(1.31g)を撹拌しながら添加して、移動を完了させた。混合物を完全に均一になるまで撹拌し、温度を35℃で安定化させた。温度を40℃未満に維持しながら、ゆっくりと酢酸銀粉末を添加した。酢酸銀を添加すると溶液は褐色に変わった。酢酸銀を45分かけて加えた。反応混合物を40℃でさらに1時間撹拌した。
【0091】
MeOH(7.5mL)を添加し、10分間撹拌したところ、その間にフラスコの壁に青いコーティングが形成され、これはナノ粒子の形成を示していた。反応生成物を、2枚の濾材(底部にWhatman 934AHガラス繊維紙、上部にWhatman#54濾紙)を備えたブフナー漏斗上で濾過して、青色がかった灰色の濾過ケーキおよび褐色の濾液を得た。濾過ケーキをMeOH(25mL)で洗浄した。濾過ケーキを30mLの茶色の瓶に入れ、アルゴンでフラッシュし、冷蔵庫に保管した。Malvern動的光散乱を用いてナノ粒子の粒径を評価し、その結果を以下の表1に示す。
【0092】
実施例6:20:80のドデシルアミン対オクチルアミンの比を用いた銀ナノ粒子の合成
磁気撹拌子、温度計、冷却器、およびArラインを備えた100mLの3つ口丸底反応フラスコに、溶融ドデシルアミン(22.21g)およびオクチルアミン(79.21g)を添加した。反応フラスコを、温水(35~40℃)に浸漬し、MeOH(7.5mL)を添加して、続いてデカリン(75mL)を添加した。次いで、いくらかのデカリンを用いて、フェニルヒドラジン(13.09g)を撹拌しながら添加して、移動を完了させた。混合物を完全に均一になるまで撹拌し、温度を35℃で安定化させた。温度を35~40℃に維持しながら、酢酸銀(25g)粉末を反応フラスコの上部からゆっくり添加した。酢酸銀を50分かけて添加し、反応混合物を40℃でさらに1時間撹拌した。MeOH(187.5mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。反応生成物を、2枚の濾材(底部にWhatman 934AHガラス繊維紙、上部にWhatman#54濾紙)を備えたブフナー漏斗上で濾過した。濾過は約15分かかった。濾液は暗褐色であり、ウェット濾過ケーキは青色がかった灰色であった。ウェット濾過ケーキを30mlの茶色の瓶に入れ、アルゴンでフラッシュし、冷蔵庫に保管した。Malvern Nano ZetasizerおよびNano Sizerを用いて動的光散乱によってナノ粒子のZave粒径を評価した。結果を以下の表1に示す。ここで、D[1,0]は、粒子の数平均(すなわち、平均)サイズである。銀含有量(灰分)を、MLS PYRO高温マイクロ波灰分炉を用いて評価した。データを以下の表1に示す。
【0093】
実施例7:30:70のドデシルアミン対オクチルアミンの比を用いた銀ナノ粒子の合成
30:70のドデシルアミン対オクチルアミンの比を使用したことを除いて、実施例6と同様の手順を用いて銀ナノ粒子を合成した。
【0094】
実施例8:50:50のドデシルアミン対オクチルアミンの比を用いた銀ナノ粒子の合成
50:50のドデシルアミン対オクチルアミンの比を使用したことを除いて、実施例6と同様の手順を用いて銀ナノ粒子を合成した。
【0095】
実施例9:60:40のドデシルアミン対オクチルアミンの比を用いた銀ナノ粒子の合成
60:40のドデシルアミン対オクチルアミンの比を使用したことを除いて、実施例6と同様の手順を用いて銀ナノ粒子を合成した。
【0096】
実施例10:60:40のドデシルアミン対オクチルアミンの比を用いた銀ナノ粒子の大規模合成
スケールを10倍にしたことを除いて、実施例9と同様の手順を用いて銀ナノ粒子を合成した。
【0097】
【0098】
安定化剤としてより高い割合のオクチルアミン(70~100%)を用いて粒子を合成しようとする最初の試みは、表1の実施例5~7に示されるZaveによって示されるように、大きすぎる粒子の形成をもたらし、したがって成功したと見なされなかった。表1の実施例8~10に示されるように、50~60%のドデシルアミンと40~50%のオクチルアミンの混合物は、許容される粒径を有する粒子を与えた。以下の実施例に記載されるように、インクはいくつかの銀ナノ粒子を用いて配合された。
【0099】
比較例11A:銀濃縮物の調製(対照)
US2010/0240758A1の実施例2に概説されているように調製された銀ナノ粒子(250.57g)を、風袋引きステンレス鋼ジャケットビーカーに添加した。ビシクロヘキサン(94.50g)を添加して、溶媒をスパチュラで撹拌した。ビーカーを26℃に設定した浴中にクランプで固定した。鋸歯状撹拌機をビーカー内に下げ、400RPMに設定した。窒素セプタム針をビーカー内で底から1cmのところまで下げた。混合物を10分間撹拌した後、撹拌を止めた。混合物中の銀粒子の大きな塊をスパチュラで砕いた。攪拌を合計4時間続けて、以下の特性を有する銀濃縮物を得た:灰分(60.55%)、Zave(19.4nm)、およびD[1,0]7.4nm。濃縮物を2つの250mLアンバーガラス瓶に分注し、アルゴンでパージした。瓶を白色のテープで密封して、冷蔵庫に保管した。
【0100】
比較例11B:銀ナノ粒子インクの調製(対照)
対照実施例11Aの銀ナノ粒子濃縮物(109.65g)を予め秤量した120mLのアンバー瓶に移し、再度秤量した。ビシクロヘキサン(10.16g)およびフェニルシクロヘキサン(30.01g)を添加した。混合物をアルゴンで覆い、3Mテープで密封し、ラベル付けしてMovil Rod上に一晩(約18時間)配置した。得られたインクを1μm Pall Acrodiscガラス繊維シリンジフィルターで濾過し、予め秤量したアンバーガラス瓶に移し、最終インクとしてラベル付けした。瓶をアルゴンでパージし、白色の3Mテープで密封して冷蔵庫に保存した。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0101】
実施例12A:銀濃縮物の調製
磁気撹拌子を備えた25mL丸底フラスコに実施例6の銀ナノ粒子(7.4g)を添加し、フラスコを水浴に浸漬し、氷を添加することによって温度を8℃に維持した。ビシクロヘキサン(2.0g)を添加し、長い針を用いてアルゴンを混合物中に深くパージした。混合物を8℃で1.5時間および23℃で6時間撹拌(700rpm)し、以下の特性を有する銀濃縮物を得た:灰分(69.38%)。濃縮物を30mLの茶色の瓶に移し、アルゴンでフラッシュし、冷蔵庫に保管した。
【0102】
実施例12B:銀ナノ粒子インクの調製
実施例12Aの銀ナノ粒子濃縮物(6.80g)を予め秤量した30mLのアンバー瓶に移し、再度秤量した。濃縮物にビシクロヘキサン(3.58g)およびフェニルシクロヘキサン(2.14g)を添加した。混合物をアルゴンで覆い、3Mテープで密封し、ラベル付けして2時間オービタルミキサー上に配置し、続いて22時間Movil Rod上で回転させた。得られたインクを1μm Pall Acrodiscガラス繊維シリンジフィルターを通して濾過し、予め秤量したアンバーガラス瓶に移し、最終インクとしてラベルを付けし、アルゴンでパージし、白色の3Mテープで密封し、冷蔵庫に保管した。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0103】
実施例13A:銀濃縮物の調製
実施例7の銀ナノ粒子を使用して、関連する銀濃縮物を作製したことを除いて、実施例12Aの手順と同様の手順に従った。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0104】
実施例13B:銀ナノ粒子インクの調製
実施例13Aの銀濃縮物を使用して、銀インクを作製したことを除いて、実施例12Bの手順と同様の手順に従った。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0105】
実施例14A:銀濃縮物の調製
実施例8の銀ナノ粒子を使用して、銀濃縮物を作製したことを除いて、実施例12Aの手順と同様の手順に従った。
【0106】
実施例14B:銀ナノ粒子インクの調製
実施例14Aの銀濃縮物を使用して、銀インクを作製したことを除いて、実施例12Bの手順と同様の手順に従った。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0107】
実施例15A:銀濃縮物の調製
実施例10の銀ナノ粒子を使用して、銀濃縮物を作製したことを除いて、実施例12Aの手順と同様の手順に従った。
【0108】
実施例15B:銀ナノ粒子インクの調製
実施例15Aの銀濃縮物を使用して、銀インクを作製したことを除いて、実施例12Bの手順と同様の手順に従った。以下の表2は、インク配合および得られたインク特性を示す。
【0109】
【0110】
表2のインクを、Dimatixインクジェットプリンタを用いてガラス基板上に吐出させた。得られた膜を以下の表3に示すように異なる温度でアニールした。アニールした膜の導電率を、抵抗を測定するためのKeithley 4200A-CSC、および膜厚を測定するためのDektak触針式プロファイルを用いて決定した。本開示のナノ粒子インク(例えば、実施例14Bおよび15Bのインク)は、実施例11Bの対照インクと比較してより低い温度で高導電性の膜を与え、安定化剤としてオクチルアミンとドデシルアミンの組み合わせの使用が、アニール温度を有意に低減させたことを示した。
【0111】
【0112】
上記の結果によって示されるように、オクチルアミンとドデシルアミンバインダーの混合物を用いて、銀ナノ粒子を効果的に安定化させた。オクチルアミンのより低い沸点は、100%ドデシルアミン安定化剤を含む粒子よりも低いアニール温度を有する粒子をもたらした。粒子は非常に小さい粒径を有していた。本開示の粒子から配合されたインクジェットインクは、非常に低い温度(例えば、60℃)で、短時間(例えば、10~30分)でアニールすることができて、高導電性のトレース(例えば、>10,000秒/cm)を得た。これにより、プラスチックフィルムや高分子物体などの、高温に敏感な多くの基板上に導電性トレースを印刷することが可能になり、多くの用途のためのスマート構成部品を作り出すことを可能にするであろう。
【0113】
実施例16:相変化材料の調製
相変化インクを、以下の表4に従ってインク構成成分を用いて調製した(相変化材料1~4)。
【0114】
【0115】
その内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,753,441号に開示されている手順に従ってテレフタル酸ジステアリルを調製した。
【0116】
相変化材料1の調製
着色剤が本明細書の相変化材料1に含まれなかったことを除いて、米国特許第7,381,254号の実施例IIに開示されている手順に従って相変化材料1を調製した。米国特許第7,381,254号の開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0117】
相変化材料2の調製
相変化材料2を、米国特許第8,741,043号に開示されている手順に従って、テレフタル酸ジステアリルとTBCTをビーカー内で、130℃で約1時間撹拌しながら溶融混合することによって調製した。得られた混合物をアルミニウム皿に注ぎ入れ、室温に冷却した。
【0118】
相変化材料3の調製
相変化材料3を、テレフタル酸ジステアリルとSylvatac RE 40(米国特許第9,120,943号に開示されている市販のロジンエステル)をビーカー内で、130℃で約1時間撹拌しながら溶融混合することによって調製した。得られた混合物をアルミニウム皿に注ぎ入れ、室温に冷却した。
【0119】
相変化材料4の調製
着色剤が本明細書の相変化材料4に含まれなかったことを除いて、米国特許第8,741,043号の実施例Iに開示されている手順に従って相変化材料4を調製した。
【0120】
実施例17:UV硬化性オーバーコート材料の調製
UV硬化性オーバーコート材料を、少なくとも1種のオリゴマー、および少なくとも1種の2官能性または多官能性モノマー(3官能性以上のモノマー)を磁気撹拌棒を用いてガラス容器に添加することによって調製する。組成物をVario-Mag(登録商標)加熱撹拌ブロック上で約85℃で約20分間撹拌する。組成物を混合して、均質な液体混合物を形成した後、任意の追加の単官能モノマーおよび少なくとも1種の光開始剤を添加し、さらに約30分間混合して、最終混合UV硬化性組成物を得る。UV硬化性組成物を、1μm濾布(Parkerから入手可能)を通して濾過する。UV硬化性組成物を表5に示す。
【0121】
【0122】
25mm平行プレートおよびペルチェ加熱システムを備えたAresG2レオメーターを用いて粘度を測定した。UV硬化性組成物の試料を102℃でレオメーターに載せ、平衡化させ、次いで10rad/秒で1.5℃/分の速度で温度を25℃まで掃引した。
【0123】
実施例18:埋め込まれた3D導電性物体の調製
図2は、実施例16で調製された相変化材料(すなわち、相変化材料1~4)の3D構造上に完全に印刷されたアンテナが製作されることを示す。上記に開示された材料の相溶性およびそれらを使用して3D印刷物品を印刷する能力を実証すること。本開示の金属ナノ粒子インク組成物を、アンテナを製作するために使用する。
図2は、3D構造を形成するために本明細書に記載されるプロセスを用いて、基部40を形成する第1の構造材料を示す。金属ナノ粒子インクを第1の構造材料上に吐出して、導電性トレース42を形成する。Dimatixインクジェットプリンタを用いてインクを吐出させる。導電性ラインを従来のオーブン内で、80℃で20分間アニールする。実施例17のUV硬化性オーバーコート材料を、導電性トレース42の上にコーティングする。オーバーコート実施例17を、5mmのランプと基板との間隙で、100%出力で500msの間LED硬化を用いて硬化させる。UV光をPhoseon FireJet FJ200 150-20(発光窓寸法[mm])395nm(波長)および8W/cm
2(電力)によって供給する。次いで、硬化オーバーコート組成物17の上に第2の構造材料を吐出させて、トップコート46を形成し、それによって導電性トレース42を形成し、トップコート46と基部40との間に埋め込む。構造46を構造40と同じ手段で製作する。LED44は、導電性トレース42に接続されている。LEDが接続された3D印刷アンテナがワイヤレス発光体に接触する場合、LEDが点灯してアンテナが機能していることを示す。実施例18は、本明細書に開示されたプロセスが完全に印刷された電子回路を作製するために使用され得ることを示した。
【0124】
実施例19:自立型アンテナの調製
実施例18の印刷された導電性アンテナを約90℃の温度で加熱する。
図2の相変化構造材料40および46が溶けて自立型アンテナが残る。
(付記)
項目1:導電性物品を含む三次元(3D)物品の形成方法であって、
第1の3D構造材料を用意することと、
前記第1の3D構造材料の表面に、金属ナノ粒子インク組成物を堆積させることと、
前記金属ナノ粒子インク組成物を、60℃~100℃の温度でアニールして、前記第1の3D構造材料上に前記導電性物品を形成することと、
任意に前記導電性物品上に第2の3D構造材料を形成することと、を含む、方法。
項目2:前記金属ナノ粒子インク組成物が、
インクビヒクルと、
前記インクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子と、を含み、前記金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子に結合される2種以上の有機安定化基を含み、
第1の有機安定化基のアルキル部分が、第2の有機安定化基のアルキル部分よりも長い炭素鎖長を有し、前記第1の有機安定化基が、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の有機安定化基が、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
項目3:前記金属ナノ粒子が、TEMによって測定される場合、約0.5nm~約100nmの範囲のサイズを有する、項目2に記載の方法。
項目4:前記金属ナノ粒子が、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、項目2に記載の方法。
項目5:前記インクビヒクルが、第1の溶媒および第2の溶媒を含み、前記第1の溶媒が、無極性で、1気圧で160℃を超える沸点を有し、前記第2の溶媒が、1気圧で230℃を超える沸点を有し、前記第2の溶媒が、芳香族炭化水素であり、前記第1の溶媒より高い沸点を有する、項目2に記載の方法。
項目6:前記第1の溶媒が、少なくとも1つの環式基を有する飽和または不飽和C
10
~C
20
炭化水素であり、前記第2の溶媒が、C
10
~C
18
アリールシクロアルカンである、項目5に記載の方法。
項目7:前記第1の溶媒が、ビシクロヘキサン、デカリン、ナフタレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物であり、前記第2の溶媒が、フェニルシクロヘキサンである、項目5に記載の方法。
項目8:前記第1の3D構造材料および前記任意の第2の3D構造材料が、
相変化材料を用意することと、
前記相変化材料を吐出温度に加熱することと、
前記相変化材料を互いの上に層状に吐出させることであって、後続の層を吐出する前に、各層を冷却および/または固化させる、吐出させることと、
前記冷却および/または固化層から、前記第1の3D構造材料および前記任意の第2の3D構造材料を形成することと、を含むプロセスによって形成される、項目1に記載の方法。
項目9:前記相変化材料が、結晶質化合物および非晶質化合物を含む、項目8に記載の方法。
項目10:前記結晶質化合物が、ジベンジルヘキサン-1,6-ジイルジカルバメート、テレフタル酸ジステアリル、ポリエチレンワックス、(L)-酒石酸ジ-フェニルエチル、これらの立体異性体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
項目11:前記非晶質化合物が、水素化アビエチン酸のトリグリセリド、アビトールEコハク酸、アビトールE酒石酸、酒石酸ジメントール、酒石酸t-ブチルシクロヘキシル-シクロヘキシル、クエン酸トリメントール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
項目12:前記吐出層を冷却および/または固化させるのに、約1~約10秒かかる、項目8に記載の方法。
項目13:前記相変化材料が、約30℃の温度で約10
4
cps~約10
6
cpsの粘度を有する、項目8に記載の方法。
項目14:前記相変化材料の前記粘度が、前記アニール工程の後に変化しない、項目8に記載の方法。
項目15:前記第1の3D構造材料および/または前記任意の第2の3D構造材料を溶融し、それによって自立型導電性物品を形成することをさらに含む、項目1に記載の方法。
項目16:埋め込まれた導電性物品を含む三次元(3D)物品の形成方法であって、
第1の3D構造材料を用意することと、
前記第1の3D構造材料の表面に、導電性金属インク組成物を堆積させることと、
前記導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、前記第1の3D構造材料上に前記導電性物品を形成することと、
前記導電性物品上に第2の3D構造材料を形成し、それによって前記導電性物品をその中に埋め込むことと、を含む、方法。
項目17:前記金属ナノ粒子インク組成物が、
インクビヒクルと、
前記インクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子と、を含み、前記金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子に結合される第1の有機安定化基および第2の有機安定化基の両方を含み、前記第1の有機安定化基のアルキル部分が、前記第2の有機安定化基のアルキル部分よりも長い炭素鎖長を有し、前記第1の有機安定化基が、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の有機安定化基が、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目16に記載の方法。
項目18:前記第1の3D構造材料および前記第2の3D構造材料の両方が、相変化材料を含み、前記相変化材料が、結晶質化合物および非晶質化合物を含む、項目16に記載の方法。
項目19:自立型導電性物品の形成方法であって、
第1の3D構造材料を用意する工程と、
前記第1の3D構造材料の表面に、導電性金属インク組成物を堆積させる工程と、
前記導電性金属インク組成物を60℃~100℃の温度でアニールして、第1の3D造形材料上に前記導電性物品を形成する工程と、
前記第1の3D構造材料を溶融し、それによって自立型導電性物品を形成する工程と、を含む、方法。
項目20:前記金属ナノ粒子インク組成物が、
インクビヒクルと、
前記インクビヒクル中に分散される複数の金属ナノ粒子と、を含み、前記金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子に結合される2種以上の有機安定化基を含み、前記2種以上の有機安定化基が、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノオクタン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリブチルアミン、およびトリヘキシルアミンからなる群から選択される、項目19に記載の方法。