(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/24 20060101AFI20230911BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230911BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61K8/24
A61K8/20
A61K8/49
A61K8/73
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2019121923
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 修平
(72)【発明者】
【氏名】井手上 拓
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166966(JP,A)
【文献】特開平08-259428(JP,A)
【文献】特開平09-095457(JP,A)
【文献】SHIMABAYASHI Saburo et. al., Adsorption of Mono- and Divalent Metal Cations on Hydroxyapatite in Water,Chem. Pharm. Bull.,1981年,Vol.29, No.8,page.2116-2122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアパタイト粒子、
塩化セチルピリジニウム、並びに
、
γ-シクロデキストリ
ンを含有する口腔用組成物であって、
塩化セチルピリジニウムを0.01~1質量%、ヒドロキシアパタイト粒子を1~10質量%含有し、
ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して
、γ-シクロデキストリンを0.1~10質量部、含有する、
口腔用組成物
(ただし、塩化ナトリウムをヒドロキシアパタイト100質量部に対して0.5質量部以上含有する口腔用組成物を除く)。
【請求項2】
さらに塩化マグネシウムを、ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して、1~10質量部含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
塩化マグネシウムを0.1~10質量%含有する、請求項
2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
γ-シクロデキストリンを0.05~10質量%含有する、請求項1
~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は口腔用組成物等に関し、より詳細には塩化セチルピリジニウム及びヒドロキシアパタイト粒子を含有する口腔用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化セチルピリジニウムは、殺菌等の効果を奏することから、口腔用組成物に配合される。また、ヒドロキシアパタイトは、歯牙の再石灰化などの効果を奏することから、口腔用組成物に配合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-133937号公報
【文献】特開2014-094914号公報
【文献】特開2008-260702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、塩化セチルピリジニウム及びヒドロキシアパタイトは、いずれも口腔用組成物に配合するのに好ましい成分であるが、これら両方の成分を含有する口腔用組成物においては、ヒドロキシアパタイト粒子が強力にCPCを吸着してしまい、CPC本来の効果が奏されるのを阻害してしまうことがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ヒドロキシアパタイト粒子及びCPCを含有する口腔用組成物においては、ヒドロキシアパタイト粒子がCPCを吸着するのを抑制する手段を講じることが好ましいと考えられたため、この点に着目してさらに検討を進めたところ、ヒドロキシアパタイト粒子及びCPCに加え、さらに塩化マグネシウム又はγ-シクロデキストリンを含有する口腔用組成物では、ヒドロキシアパタイト粒子のCPC吸着が抑制されることを見出した。
【0006】
本開示は、例えば以下の項に記載の態様を包含する。
項1.
ヒドロキシアパタイト粒子、
塩化セチルピリジニウム、並びに、
塩化マグネシウム及びγ-シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1種
を含有する口腔用組成物。
項2.
ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して、塩化マグネシウムを1~10質量部含有する、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して、γ-シクロデキストリンを0.1~10質量部含有する、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
塩化セチルピリジニウムを0.01~1質量%含有する、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
塩化セチルピリジニウムを0.01~1質量%、ヒドロキシアパタイト粒子を1~10質量%含有する、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0007】
ヒドロキシアパタイト粒子のCPC吸着が抑制された口腔用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ヒドロキシアパタイト粒子及び塩化セチルピリジニウムを含有する口腔用組成物において、当該粒子に塩化セチルピリジニウムが吸着されずにどの程度水溶性を維持しているかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本開示は、口腔用組成物、特にヒドロキシアパタイト粒子及び塩化セチルピリジニウムを含む口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含される口腔用組成物は、ヒドロキシアパタイト粒子及び塩化セチルピリジニウム(CPC)を含有し、さらに塩化マグネシウム及びγ-シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する。なお、本明細書において当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」と呼ぶことがある。
【0011】
ヒドロキシアパタイト粒子としては、口腔用組成物分野において公知のヒドロキシアパタイト粒子を用いることができる。また、公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法により調製されたヒドロキシアパタイト粒子を用いることもできる。またさらに、ヒドロキシアパタイト市販品を購入して用いることもできる。例えば、富田製薬株式会社から購入して用いることができる。
【0012】
また、ヒドロキシアパタイト粒子のメジアン径(d50)は、特に制限されるものではないが、好ましくは5μm以下、より好ましくは4.5μm以下である。該メジアン径の下限は、特に制限されないが、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上が挙げられる。より具体的には、例えば1~5μmが挙げられる。なお、該メジアン径は、レーザー回折・散乱法により測定される値である。より具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して乾式粒度分布測定により測定される値である。
【0013】
ヒドロキシアパタイト粒子は、例えば、pHが4以上7未満であるリン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合して35~85℃で反応させる工程を含む、ヒドロキシアパタイト粒子を製造する方法により調製することができる。
【0014】
リン酸アルカリ塩としては、特に制限されず、水和物及び無水物を包含する。リン酸アルカリ塩としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩が挙げられ、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0015】
リン酸アルカリ塩水溶液中のリン酸アルカリ塩の濃度は、特に制限されず、例えば3~50質量%である。該濃度は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは7~15質量%である。
【0016】
リン酸アルカリ塩水溶液のpHは、好ましくは4以上7未満である。該pHは、より好ましくは5~6.5である。なお、後述のように、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、リン酸アルカリ塩として無水物を使用し、且つ反応温度を比較的高い温度、例えば65~85℃、好ましくは70~85℃、より好ましくは75~85℃に設定することが望ましい。
【0017】
水酸化カルシウムスラリーはシュウ酸反応性を有するところ、前記水酸化カルシウムスラリーは、シュウ酸に対して特定の反応性を有する水酸化カルシウムのスラリーであることが好ましい。
【0018】
シュウ酸に対する反応性は、例えば、以下の定義で表すことができる:
シュウ酸反応性:5質量%の濃度に調製され、25±1℃に保たれた水酸化カルシウムスラリー50gに、25±1℃に保たれた0.5モル/リットルの濃度のシュウ酸水溶液40gを一気に添加し、添加後pH7.0になるまでの時間(分)。
【0019】
前記シュウ酸に対する特定の反応性としては、上記定義で表す場合、好ましくは1~40分、より好ましくは5~30分、さらに好ましくは10~20分である。
【0020】
水酸化カルシウムスラリーのBET比表面積は、好ましくは5m2/g以上、より好ましくは6m2/g以上である。該BET比表面積の上限は、特に制限されないが、例えば20m2/g、15m2/g、10m2/gである。
【0021】
シュウ酸反応性が高い(例えば上述した特定のシュウ酸に対する反応性を有する)水酸化カルシウムスラリーは、典型的には、水酸化カルシウムスラリーを磨砕処理することにより得ることができる。磨砕処理により、シュウ酸反応性をより高める(上記定義の時間をより短くする)ことができる。磨砕処理は、例えばビーズミルを用いて行われる。磨砕処理の条件としては特に制限されず、例えば特開2017-036176号公報に記載の方法に従った条件を採用することができる。
【0022】
水酸化カルシウムスラリーは、例えば、石灰石を焼成して得られる生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させることにより、調製することができる。例えば、石灰石をキルン内において約1000℃で焼成して、生石灰を生成し、この生石灰に約10倍量の熱水を投入し、30分間攪拌させることにより、水酸化カルシウムスラリーを調製することができる。
【0023】
水酸化カルシウムスラリーの固形分濃度は、特に制限されないが、例えば1~30質量%、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは6~12質量%である。
【0024】
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとの量比は、ヒドロキシアパタイト粒子を製造できる比である限り特に制限されない。該量比は、Ca/Pモル比が、好ましくは0.3~0.7、より好ましくは0.4~0.6、さらに好ましくは0.45~0.55になるように調整されることが望ましい。
【0025】
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合する態様は特に制限されない。例えば、リン酸アルカリ塩水溶液を含む反応容器に水酸化カルシウムスラリーを添加する態様(態様1)、水酸化カルシウムスラリーを含む反応容器にリン酸アルカリ塩水溶液を添加する態様(態様2)、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーを同時に反応容器に添加する態様(態様3)等が挙げられる。これらの中でも、態様1が好ましい。反応容器への上記添加の際には、通常、反応容器中の液は攪拌されている。
【0026】
反応容器への上記添加は、一定程度の時間をかけて行うことが望ましい。添加開始から添加終了までの時間は、例えば10~90分間、好ましくは20~60分間、より好ましくは20~40分間である。
【0027】
反応は、通常、攪拌下で行う。反応温度は、35~85℃である。該反応温度は、好ましくは40~75℃、より好ましくは45~70℃、さらに好ましくは50~70℃、よりさらに好ましくは55~65℃である。反応温度は、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、比較的高い温度、例えば65~85℃、好ましくは70~85℃、より好ましくは75~85℃である。反応時間(リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーが全て混合されてから開始する時間、上記態様1~3において、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーの添加が終了した時点から開始する時間)は、例えば10~180分間、好ましくは20~120分間、より好ましくは40~90分間、さらに好ましくは50~70分間である。
【0028】
上記工程により生成したヒドロキシアパタイト粒子は、必要に応じて、精製処理に供される。精製処理としては、例えばろ過処理、水洗処理等が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥処理に供することもできる。
【0029】
ヒドロキシアパタイト粒子は、口腔用組成物に、例えば1~10質量%程度含有させることができる。当該含有割合範囲の上限または下限は、例えば1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、2~8質量%又は3~7質量%であることがより好ましい。
【0030】
塩化セチルピリジニウム(CPC)の含有量としては、例えば0.01~1質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は0.95質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、0.05~0.75質量%程度又は0.1~0.5質量%程度であってもよい。
【0031】
塩化マグネシウムの含有量としては、例えば0.1~10質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、0.1~8質量%程度又は0.2~6質量%程度であってもよい。また、塩化マグネシウムの含有量は、例えば、ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して、1~10質量部程度が好ましい。当該範囲の上限または下限は、例えば1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量部であってもよい。例えば当該範囲は、2~9質量部又は3~8質量であってもよい。
【0032】
γ-シクロデキストリンの含有量としては、例えば0.05~10質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、0.1~8質量%程度又は0.2~5質量%程度であってもよい。また、γ-シクロデキストリンの含有量は、例えば、ヒドロキシアパタイト粒子10質量部に対して、0.1~10質量部程度が好ましい。当該範囲の上限または下限は、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量部であってもよい。例えば、当該範囲は、0.5~5質量部又は1~3質量部であってもよい。
【0033】
本開示の口腔用組成物は、常法により製造することができ、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品としても用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、塗布剤等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ペースト剤、液剤、スプレー剤、ジェル剤、塗布剤であることが好ましく、練歯磨剤、ペースト剤、ジェル剤がより好ましい。
【0034】
本開示の口腔用組成物には、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0035】
例えば、薬効成分として、CPC以外の殺菌剤を配合してもよい。例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ヒノキチオール等が挙げられる。またさらに、殺菌剤以外の薬効成分を配合することもできる。例えば、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、フッ化ナトリウム等を配合してもよい。薬効成分は単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。中でも、乳酸アルミニウム及び硝酸カリウムは、知覚過敏予防のための薬効成分であるため、本開示の口腔用組成物に配合するのに特に好ましい。
【0036】
その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が例示される。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が例示される。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が例示される。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0037】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を配合し得る。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらは、組成物全量に対して0.01~1質量%配合することができる。
【0038】
また、粘結剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ジェランガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリンなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、グリセリン、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0040】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を単独又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0041】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0042】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%が例示される。
【0043】
また、基剤として、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を単独または2種以上を組み合わせて添加することも可能である。
【0044】
なお、以上の任意成分の記載は例示であり、用い得る任意成分を限定するものではない。
【0045】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0046】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0047】
以下に、例に基づいて本開示の主題をより詳細に説明するが、本開示の主題はこれらの例に限定されるものではない。
【0048】
製造例1:ヒドロキシアパタイト粒子の調製
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積:6.7m2/g シュウ酸反応性:15分30秒 特開第2017-036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉末)を得た。
【0049】
ヒドロキシアパタイト粒子及び塩化セチルピリジニウム含有口腔用組成物の検討
製造例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子(製造例1手順製造HAp)若しくは市販ヒドロキシアパタイト粒子(市販HAp:富田製薬株式会社製)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、並びに塩化マグネシウムまたはγ-シクロデキストリンを用いて口腔用組成物を調製した。具体的には、表1に示す各成分を混合して(より具体的には、CPCが溶解した蒸留水に塩化マグネシウムまたはγ-シクロデキストリンを混ぜて攪拌した後、ヒドロキシアパタイト粒子を混合して)、各口腔用組成物分野を調製した。なお、表1に示す各成分の数値は質量%を示す。当該口腔用組成物を、ボルテックスミキサーを用いて20秒間振とう撹拌し、遠心分離によって水に不溶な成分を沈降し、水溶性の上清を得た。当該上清及び0.05%CPC水溶液(参考例1a)2mLに抽出液(10mMラウリル硫酸ナトリウム-40mMクエン酸緩衝液(pH3.0)/アセトニトリル=25/75(体積比))を加え全量を20mLにし、HPLC((株)島津製作所社製、超高速液体クロマトグラフ Nexeraシステム)を用いて、各組成物中のCPCの量(μg)を求めた。結果を
図1に示す。
【0050】