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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】建設機械のブーム伸縮制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/693 20060101AFI20230911BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B66C23/693 H
B66C23/42 A
B66C23/693 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019126221
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021011348
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山本 諒
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-112196(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0533415(KR,B1)
【文献】特開2018-095434(JP,A)
【文献】特開2012-166918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/693
B66C 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初段となるベースブーム部材と、前記ベースブーム部材に対して伸縮可能な複数の伸縮ブーム部材と、を備える多段ブームが設けられ、前記複数の伸縮ブーム部材は、前記ベースブーム部材に対して1段だけ前方段になる第1の伸縮ブーム部材と、前記第1の伸縮ブーム部材に対して1段だけ前方段になる第2の伸縮ブーム部材と、を備える建設機械において、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮を制御するブーム伸縮制御装置であって、
第1のモード及び第2のモードのそれぞれで前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮制御可能であり、
前記第1のモードでは、前記第1の伸縮ブーム部材が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、前記第2の伸縮ブーム部材を伸長可能にするとともに、前記第1の伸縮ブーム部材に対して前方段の伸縮ブーム部材のいずれもが最収縮状態であることに少なくとも基づいて、前記第1の伸縮ブーム部材を収縮可能にし、
前記第2のモードでは、前記第1の伸縮ブーム部材が前記最伸長状態でなくても、前記第2の伸縮ブーム部材を伸長可能にするとともに、前記第1の伸縮ブーム部材に対して前方段の前記伸縮ブーム部材のいずれか1つ以上が前記最収縮状態でなくても、前記第1の伸縮ブーム部材を収縮可能にし、
前記多段ブームの最収縮状態からの前記多段ブームの伸長量が第1の閾値以下であることを含む第1の条件を満たす場合、及び、前記多段ブームの最伸長状態からの前記多段ブームの収縮量が第2の閾値以下であることを含む第2の条件を満たす場合のそれぞれにおいて、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮の制御を切替え可能にし、
前記多段ブームの前記最収縮状態からの前記多段ブームの前記伸長量が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記多段ブームの前記最伸長状態からの前記多段ブームの前記収縮量が前記第2の閾値より大きい範囲では、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮の制御を、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で切替え不可能にする、
コントローラを具備する、ブーム伸縮制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記最収縮状態からの前記多段ブームの前記伸長量が前記第1の閾値以下であることに加えて、前記多段ブームに掛かる荷重が荷重閾値以下であることを前記第1の条件として設定し、
前記コントローラは、前記最伸長状態からの前記多段ブームの前記収縮量が前記第2の閾値以下であることに加えて、前記多段ブームに掛かる前記荷重が前記荷重閾値以下であることを前記第2の条件として設定する、
請求項1のブーム伸縮制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1の条件及び前記第2の条件のいずれも満たさない状態において、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮の制御を切替える操作が入力されると、前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる、請求項1又は2のブーム伸縮制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のブーム伸縮制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、初段(1段目)となるベースブーム部材と、ベースブーム部材に対して伸縮可能な複数の伸縮ブーム部材と、備える多段ブームが、開示されている。また、特許文献1には、多段ブームの複数の伸縮ブーム部材の伸縮を制御するブーム伸縮制御装置が、開示されている。このブーム伸縮制御装置は、多段ブームの伸長において、後方段(下段)の伸縮ブーム部材から順番に伸長可能にする。このため、3段目を形成する伸縮ブーム部材は、2段目を形成する伸縮ブーム部材が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、伸長可能になる。一方、多段ブームの収縮においては、ブーム伸縮制御装置は、前方段(上段)の伸縮ブーム部材から順番に収縮可能にする。このため、2段目を形成する伸縮ブーム部材は、2段目に対して前方段を形成する伸縮ブーム部材のいずれもが最収縮状態であることに少なくとも基づいて、収縮可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭50-26146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多段ブームを用いた作業では、作業内容によっては、後方段(下段)の伸縮ブーム部材から順番ではなく、作業内容に対応した適切な順番で複数の伸縮ブーム部材を伸長可能なほうが、好ましい場合がある。例えば、2段目の伸縮ブーム部材を最収縮状態で維持したまま3段目の伸縮ブーム部材を最伸長状態まで伸長することが、作業効率及び安全性等の観点から好ましいことがある。同様に、作業内容によっては、前方段(上段)の伸縮ブーム部材から順番ではなく、作業内容に対応した適切な順番に複数の伸縮ブーム部材を収縮可能なほうが、好ましい場合がある。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、多段ブームの複数の伸縮ブーム部材を、作業内容に対応した適切な順番で伸長可能及び収縮可能にする建設機械のブーム伸縮制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様は、初段となるベースブーム部材と、前記ベースブーム部材に対して伸縮可能な複数の伸縮ブーム部材と、を備える多段ブームが設けられ、前記複数の伸縮ブーム部材は、前記ベースブーム部材に対して1段だけ前方段になる第1の伸縮ブーム部材と、前記第1の伸縮ブーム部材に対して1段だけ前方段になる第2の伸縮ブーム部材と、を備える建設機械において、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮を制御するブーム伸縮制御装置であって、第1のモード及び第2のモードのそれぞれで前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮制御可能であり、前記第1のモードでは、前記第1の伸縮ブーム部材が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、前記第2の伸縮ブーム部材を伸長可能にするとともに、 前記第1の伸縮ブーム部材に対して前方段の伸縮ブーム部材のいずれもが最収縮状態であることに少なくとも基づいて、前記第1の伸縮ブーム部材を収縮可能にし 、前記第2のモードでは、 前記第1の伸縮ブーム部材が前記最伸長状態でなくても、前記第2の伸縮ブーム部材を伸長可能にするとともに、前記第1の伸縮ブーム部材に対して前方段の前記伸縮ブーム部材のいずれか1つ以上が前記最収縮状態でなくても、前記第1の伸縮ブーム部材を収縮可能にし、前記多段ブームの最収縮状態からの前記多段ブームの伸長量が第1の閾値以下であることを含む第1の条件を満たす場合、及び、前記多段ブームの最伸長状態からの前記多段ブームの収縮量が第2の閾値以下であることを含む第2の条件を満たす場合のそれぞれにおいて、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮の制御を切替え可能にし、前記多段ブームの前記最収縮状態からの前記多段ブームの前記伸長量が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記多段ブームの前記最伸長状態からの前記多段ブームの前記収縮量が前記第2の閾値より大きい範囲では、前記複数の伸縮ブーム部材の伸縮の制御を、前記第1のモードと前記第2のモードとの間で切替え不可能にする、コントローラを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多段ブームの複数の伸縮ブーム部材を、作業内容に対応した適切な順番で伸長可能及び収縮可能にする建設機械のブーム伸縮制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る多段ブームの構成を示し、(a)は2つ伸縮シリンダーの最収縮状態を、(b)は一方の伸縮シリンダー(第1の伸縮シリンダー)の最伸長状態、かつ、他方の伸縮シリンダー(第2の伸縮シリンダー)の最収縮状態を、(c)は一方の伸縮シリンダー(第1の伸縮シリンダー)の最収縮状態、かつ、他方の伸縮シリンダー(第2の伸縮シリンダー)の最伸長状態を、(d)は2つ伸縮シリンダーの最伸長状態を、それぞれ示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る多段ブームのブーム部材(伸縮ブーム部材)の伸縮を制御するブーム伸縮制御装置が設けられるシステムを概略的に示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る切替え弁の作動を制御する構成の一例を示す概略図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るタッチパネルにおける表示画面の一例を示す概略図である。
図5図5は、第1の実施形態において、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることの告知の一例を示す概略図である。
図6図6は、第1のモードにおいて多段ブームを伸長させる操作が入力された際に、第1の実施形態に係るコントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
図7図7は、第1のモードにおいて多段ブームを収縮させる操作が入力された際に、第1の実施形態に係るコントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
図8図8は、第2のモードにおいて多段ブームを伸長させる操作が入力された際に、第1の実施形態に係るコントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
図9図9は、第2のモードにおいて多段ブームを収縮させる操作が入力された際に、第1の実施形態に係るコントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
図10図10は、モードを切替える操作が入力された際に、第1の実施形態に係るコントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることが告知された際に、コントローラによって行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1(a)~(d)は、第1の実施形態の多段ブーム1の構成を示す。図1(a)~(d)に示すように、多段ブーム1は、長手方向に沿って延設される。ここで、多段ブーム1では、長手方向の一方側が後方側(矢印C1側)となり、後方側とは反対側が前方側(矢印C2側)となる。図1(a)~(d)のような多段ブーム1は、クレーン等の建設機械に設けられる。多段ブームが設けられるクレーンでは、走行体(図示しない)上に旋回台(図示しない)が設けられ、旋回台に多段ブーム1の後方端部が取付けられる。走行体には、作業において地面に接地させるアウトリガ(図示しない)が設けられる。多段ブーム1は、旋回台に対して起伏可能であるとともに、旋回台と一緒に走行体に対して旋回可能である。多段ブーム1は、デリックシリンダー(図示しない)を伸長又は収縮することにより、起きる又は伏せる。また、多段ブーム1の前方端部には、ジブ等のアタッチメント(図示しない)を取付け可能である。
【0011】
図1(a)~(d)に示すように、多段ブーム1は、3つ以上の(本実施形態では5つの)ブーム部材Miを備え、ブーム部材Miのそれぞれは、多段ブーム1の長手方向に沿って延設される。ここで、iは、ブーム部材の段番を示し、多段ブーム1がn段である場合は、iは、1以上かつn以下の全ての自然数である。例えば、5段の多段ブーム1では、ブーム部材M1,M2,M3,M4,M5が、それぞれ1段目(初段)、2段目、3段目、4段目、5段目となる。多段ブーム1では、初段のブーム部材M1は、後方端部が旋回台に取付けられるベースブーム部材となる。そして、初段のブーム部材M1以外のブーム部材(M1以外のMi)は、ベースブーム部材に対して長手方向に伸縮可能な伸縮ブーム部材となる。多段ブーム1には、複数の伸縮ブーム部材が設けられ、本実施形態では、ブーム部材M2~M5が、伸縮ブーム部材となる。そして、本実施形態では、5段目のブーム部材M5が、最終段のブーム部材Maとなる。
【0012】
ブーム部材Miの中では、初段のブーム部材M1が最も外側に配置され、最終段のブーム部材Ma(本実施形態ではブーム部材M5)が最も内側に配置される。そして、ブーム部材Miの中では、段番が大きいほど、内側に配置される。また、多段ブーム1では、初段のブーム部材(ベースブーム部材)M1によって後方端が形成され、最終段のブーム部材Ma(本実施形態ではブーム部材M5)によって前方端が形成される。そして、ブーム部材Miの中では、段番が大きいほど、前方端が前方側に位置する。前述のような構成であるため、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2は、ブーム部材(ベースブーム部材)M1に対して1段だけ前方段(上段)となり、ブーム部材(第2の伸縮ブーム部材)M3は、ブーム部材M2に対して1段だけ前方段(上段)となる。そして、ブーム部材M4は、ブーム部材M5に対して1段だけ後方段(下段)となり、ブーム部材M3は、ブーム部材M4に対して1段だけ後方段(下段)となる。
【0013】
また、本実施形態では、多段ブーム1の内部に、2つの伸縮シリンダー3A,3Bが配置される。図1において、(a)では、伸縮シリンダー3A,3Bの両方が最収縮状態となり、(b)では、伸縮シリンダー(第1の伸縮シリンダー)3Aが最伸長状態で、かつ、伸縮シリンダー(第2の伸縮シリンダー)3Bが最収縮状態になる。そして、図1において、(c)では、伸縮シリンダー(第1の伸縮シリンダー)3Aが最収縮状態で、かつ、伸縮シリンダー(第2の伸縮シリンダー)3Bが最伸長状態になり、(d)では、伸縮シリンダー3A,3Bの両方が最伸長状態となる。伸縮シリンダー3A,3Bのそれぞれは、例えば油圧によって作動されることにより、伸長又は収縮する。
【0014】
本実施形態では、伸縮シリンダー3Aが伸長又は収縮することにより、2段目のブーム部材M2が長手方向に沿って移動する。これにより、ブーム部材M2は、ブーム部材M1に対して伸長又は収縮する。また、伸縮シリンダー3Bが伸長又は収縮することにより、3段目乃至5段目のブーム部材M3~M5が、同時に長手方向に沿って移動する。これにより、ブーム部材M3~M5は、同時に、ブーム部材M1に対して伸長又は収縮する。ブーム部材M2が伸長又は収縮することにより、ブーム部材M1の前方端からのブーム部材M2の前方側への突出長さが変化し、ブーム部材M3が伸長又は収縮することにより、ブーム部材M2の前方端からのブーム部材M3の前方側への突出長さが変化する。同様に、ブーム部材M4が伸長又は収縮することにより、ブーム部材M3の前方端からのブーム部材M3の前方側への突出長さが変化し、ブーム部材M5が伸長又は収縮することにより、ブーム部材M4の前方端からのブーム部材M5の前方側への突出長さが変化する。すなわち、ブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5のそれぞれでは、伸縮によって、1段だけ後方段のブーム部材(M1~M4の対応する1つ)からの突出長さが変化する。
【0015】
なお、多段ブームでは、最終段のブーム部材Ma(本実施形態ではM5)の前方端部に、ブームヘッド5が設けられる。クレーンを用いての作業時内には、ブームヘッド5からロープ(図示しない)を介してフック(図示しない)が吊下げられる。そして、フックに吊荷(図示しない)を引掛ける等することにより、吊荷を吊上げる。
【0016】
図2は、多段ブーム1のブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮を制御するブーム伸縮制御装置10が設けられるシステムを示す。図2に示すように、ブーム伸縮制御装置10には、コントローラ11が設けられる。コントローラ11は、プロセッサ及び記憶媒体を備え、プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application specific integrated circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備える集積回路又は回路構成(circuitry)等である。プロセッサは、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。プロセッサでの処理は、プロセッサ又は記憶媒体に記憶されたプログラムに従って行われる。また、記憶媒体には、プロセッサで用いられる処理プログラム、及び、プロセッサでの演算で用いられるパラメータ、関数及びテーブル等が記憶される。
【0017】
また、ブーム伸縮制御装置10を備えるシステムには、切替え弁13が設けられる。切替え弁13は、第1の作動状態と第2の作動状態との間で切替わり可能である。本実施形態では、切替え弁13は、例えば電磁弁であり、電力が供給されていない状態では、第1の作動状態(非通電状態)になる。そして、切替え弁13に電力が供給されることにより、切替え弁13は、第1の作動状態から第2の作動状態(通電状態)に切替わる。コントローラ11は、切替え弁13への電力の供給を制御することにより、切替え弁13の作動を制御する。
【0018】
本実施形態では、切替え弁13の第1の作動状態において、伸縮シリンダー3Aのみに油を供給可能になり、伸縮シリンダー3Bへは油が供給不可能になる。このため、切替え弁13の第1の作動状態では、伸縮シリンダー3Aのみが伸縮可能となり、伸縮シリンダー3Bは伸縮不可能となる。したがって、切替え弁13の第1の作動状態では、ブーム部材M2のみが伸縮可能となり、ブーム部材M3~M5は伸縮不可能となる。一方、切替え弁13の第2の作動状態において、伸縮シリンダー3Bのみに油を供給可能になり、伸縮シリンダー3Aへは油が供給不可能になる。このため、切替え弁13の第2の作動状態では、伸縮シリンダー3Bのみが伸縮可能となり、伸縮シリンダー3Aは伸縮不可能となる。したがって、切替え弁13の第2の作動状態では、ブーム部材M3~M5は伸縮可能であるが、ブーム部材M2は伸縮不可能となる。
【0019】
また、ブーム伸縮制御装置10が設けられるシステムには、タッチパネル15、操作レバー16、操作スイッチ17,18及び検出スイッチ21,22が設けられる。タッチパネル15には、コントローラ11によって、多段ブーム1の伸縮に関する情報が表示される。また、タッチパネル15では、作業者等の操作によって、表示される情報を切替え可能である。
【0020】
操作レバー16では、多段ブーム1を伸長又は収縮させる操作が、入力される。操作レバー16では、例えば、作業者等によって中立位置から操作レバー16を移動させることにより、操作が入力される。この場合、多段ブーム1を伸長させる操作と多段ブーム1を収縮させる操作とでは、中立位置からの操作レバー16の移動方向が、互いに対して反対になる。切替え弁13が第1の作動状態(非通電状態)の場合において、操作レバー16で操作が入力されることにより、伸縮シリンダー3Aが伸長又は収縮する。これにより、ブーム部材M2が伸長又は収縮する。一方、切替え弁13が第2の作動状態(通電状態)の場合において、操作レバー16で操作が入力されることにより、伸縮シリンダー3Bが伸長又は収縮する。これにより、ブーム部材M3~M5が同時に伸長又は収縮する。
【0021】
コントローラ11は、後述する第1のモード(mode A)及び第2のモード(mode B)のそれぞれでブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮を制御可能である。本実施形態では、コントローラ11は、第1のモード及び第2のモードから選択した一方で多段ブーム1の伸縮を制御する。操作スイッチ17では、作業者等によって、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を切替える操作が、入力される。操作スイッチ17で操作が入力されると、コントローラ11は、後述する条件を満たす場合は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を、第1のモードと第2のモードとの間で切替える。この際、ブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御は、第1のモードから第2のモードへ切替わる、又は、第2のモードから第1のモードへ切替わる。
【0022】
また、操作スイッチ18では、作業者等によって、第1の作動状態(非通電状態)と第2の作動状態(通電状態)との間で切替え弁13を切替える操作が、入力される。操作スイッチ18で操作が入力されている状態では、コントローラ11は、後述する条件を満たす場合は、切替え弁13を、第1の作動状態と第2の作動状態との間で切替える。この際、切替え弁13は、第1の作動状態から第2の作動状態へ切替わる、又は、第2の作動状態から第1の作動状態へ切替わる。
【0023】
なお、操作レバー16及び操作スイッチ17,18等の作業者等によって操作が入力される操作装置は、レバー及びスイッチに限るものではない。例えば、操作レバー16及び操作スイッチ17,18等の代わりに、操作装置は、ボタン等であってもよく、タッチパネル15等の画面上に表示される表示ボタン、メニュー及びアイコン等のいずれかであってもよい。また、操作装置は、クレーンとは別体のリモコン及び携帯端末等のいずれかであってもよい。操作レバー16及び操作スイッチ17,18等の操作装置での作業者等の操作によって、コントローラ11に操作指令が入力される。そして、コントローラ11は、操作指令に基づいて、多段ブーム1の伸縮を制御する。また、クレーンでは、操作装置に加え、作業者等に情報を表示する表示画面等によって、ユーザーインターフェースが形成される。
【0024】
検出スイッチ21,22のそれぞれは、ON状態とOFF状態との間で切替わり可能であり、例えば、接触センサである。検出スイッチ(第1の検出スイッチ)21は、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態の場合、すなわち、ブーム部材M2が最収縮状態の場合に、ON状態となる。そして、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態から伸長することにより、すなわち、ブーム部材M2が最収縮状態から伸長することにより、検出スイッチ21は、ON状態からOFF状態に切替わる。検出スイッチ(第2の検出スイッチ)22は、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態の場合、すなわち、ブーム部材M3~M5が最収縮状態の場合に、ON状態となる。そして、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態から伸長することにより、すなわち、ブーム部材M3~M5が最収縮状態から同時に伸長することにより、検出スイッチ22は、ON状態からOFF状態に切替わる。
【0025】
図3は、切替え弁13の作動を制御する構成の一例を示す。図3に示す一例では、コントローラ11は、ポートP1~P3を有する。また、図3の一例では、前述のコントローラ11、切替え弁13及び操作スイッチ18が設けられる制御系に、電源23及びリレー回路25が設けられる。そして、リレー回路25は、コイル26及びスイッチ27を備え、スイッチ27は、3つの電気接点D1~D3を有する。コントローラ11のポートP1は、リレー回路25のコイル26の一端に電気的に接続され、コイル26の他端は、操作スイッチ18に電気的に接続される。そして、操作スイッチ18はグランド(GND)に接続される。また、コントローラ11のポートP3は、操作スイッチ18に電気的に接続される。また、コントローラ11のポートP2は、切替え弁13に電気的に接続される。そして、電源23は、リレー回路25のスイッチ27の電気接点D1に電気的に接続され、スイッチ27の電気接点D3は、切替え弁13に電気的に接続される。
【0026】
図3の一例では、電源23は、電力を出力可能であるとともに、コントローラ11は、ポートP1~P3のそれぞれから電力を出力可能である。また、リレー回路25のコイル26に電流が流れず、コイル26が励磁されていない状態では、スイッチ27において、電気接点D1は電気接点D2に電気的に接続される。図3の一例では、コントローラ11のポートP1から電力が出力され、かつ、操作スイッチ18において操作が入力されることにより、ポートP1からコイル26及び操作スイッチ18を通してグランドまで電流が流れ、コイル26が励磁される。コイル26が励磁されることにより、スイッチ27において電気接点D1が電気接点D3に電気的に接続される。これにより、電源23からの電力が切替え弁13に供給され、切替え弁13が、第1の作動状態(非通電状態)から第2の作動状態(通電状態)に切替わる。
【0027】
また、図3の一例では、コントローラ11のポートP2から電力が出力されることにより、切替え弁13に電力が供給され、切替え弁13が、第1の作動状態(非通電状態)から第2の作動状態(通電状態)に切替わる。ポートP2から電力が出力されている状態では、操作スイッチ18において操作が入力されていなくても、切替え弁13に電力が供給される。また、図3の一例では、コントローラ11のポートP3から電力が出力され、かつ、操作スイッチ18で操作が入力されることにより、ポートP3から操作スイッチ18を通してグランドまで電流が流れる。コントローラ11は、ポートP3から操作スイッチ18を通して電流が流れていることに基づいて、操作スイッチ18で操作が入力されていることを検出する。
【0028】
また、図2等に示すように、コントローラ11(プロセッサ)は、多段ブーム1の長手方向についての長さであるブーム長を取得する。ブーム長は、コードリール等の測長センサによって検出してもよく、伸縮シリンダー3A,3Bのそれぞれの伸縮状態に基づいてコントローラ11のプロセッサが算出してもよい。ある一例では、ブーム部材M2~M5の全てが最収縮状態になる多段ブーム1の最収縮状態において、ブーム長は10.8mとなり、ブーム部材M2~M5の全てが最伸長状態になる多段ブーム1の最伸長状態において、ブーム長は42.0mとなる。また、この一例では、ブーム部材M2の最伸長状態、かつ、ブーム部材M3~M5の最収縮状態において、ブーム長は18.6mとなり、ブーム部材M2の最収縮状態、かつ、ブーム部材M3~M5の最伸長状態において、ブーム長は34.2mとなる。
【0029】
また、コントローラ11は、ブームヘッド5から吊下げられるフックへのロープ(ワイヤ)の掛け数、すなわち、フックへのロープの索数を取得する。索数は、タッチパネル15又はタッチパネル15とは別の操作装置において、作業者等によって、入力される。また、コントローラ11は、取得したロープの索数に基づいて、ブームヘッド5から吊下げられるフックの重量を算出する。ある一例では、コントローラ11の記憶媒体等に、索数とフックの重量との関係を示す関数又はテーブル等が記憶される。そして、コントローラ11は、取得した索数、及び、索数とフックの重量との関係を示す関数又はテーブル等に基づいて、フックの重量を検出する。
【0030】
また、コントローラ11は、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)を取得する。多段ブーム1に掛かる荷重は、フックの重力、及び、フックによって吊上げられる吊荷の重量等を含む。ある一例では、コントローラ11は、前述のデリックシリンダー(ブーム起伏シリンダー)における油圧を取得する。この場合、コントローラ11の記憶媒体等には、デリックシリンダーにおける油圧と多段ブーム1に掛かる荷重との関係を示す関数又はテーブル等が記憶される。そして、コントローラ11は、デリックシリンダーにおける油圧、及び、記憶された関数又はテーブル等を用いて、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)を算出する。
【0031】
また、コントローラ11(プロセッサ)は、多段ブーム1に掛かる荷重の限界値として限界荷重を算出する。限界荷重は、安全に作業を行うための指標として設定され、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)が限界荷重を超える場合は、作業における安全性が低下することを、作業者等に認識させる。コントローラ11は、クレーンの姿勢に基づいて、限界荷重を算出する。ある一例では、コントローラ11の記憶媒体等に、アウトリガの張出し幅、ブーム長及びクレーンの作業半径に対する限界荷重の関係を示す関数又はテーブル等が、記憶される。そして、コントローラ11は、アウトリガの張出し幅、ブーム長及びクレーンの作業半径に関する情報を取得し、取得した情報、及び、記憶された関数又はテーブル等を用いて、限界荷重を算出する。また、コントローラ11は、限界荷重に対する実際の荷重(実荷重)の比率として、負荷率を算出する。
【0032】
また、コントローラ11は、取得したブーム長及び索数、及び、算出した負荷率等を、タッチパネル15の表示画面に表示させる。図4は、タッチパネル15における表示画面の一例を示す。図4の一例では、表示要素31は、索数を示す。そして、表示要素32は、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)を示し、表示要素33は、算出した限界荷重を示す。また、表示要素35は、ブーム長を示し、表示要素34は、負荷率を示す。表示要素34では、負荷率は、線E1で0%、線E2で90%、線E3で100%、線E4で130%となる。また、表示要素34では、負荷率の大きさを示す棒グラフは、0%から90%までの間の部分は緑色で、90%から100%までの間の部分は黄色で、100%から130%までの間の部分は赤色で、表示される。なお、図4の表示画面では、負荷率が100%の状態が示される。
【0033】
図4の一例では、表示要素36は、第1のモード及び第2のモードのいずれで多段ブーム1の伸縮が制御されているかを示す。図4の表示画面では、表示要素36において“mode A”と表示され、第1のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われていることが示される。なお、第2のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われている状態では、表示要素36において“mode B”と表示される。
【0034】
また、表示要素37は、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最収縮状態であるか否かを示し、表示要素38は、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最収縮状態であるか否かを示す。ある一例では、コントローラ11は、検出スイッチ21がON状態であるか否かに基づいて、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態であるか否かを判断し、検出スイッチ22がON状態であるか否かに基づいて、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態であるか否かを判断する。表示要素37では、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態の場合は、白抜きの長方形状の枠が点線で表示され、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態から伸長している場合は、中塗りの長方形が表示される。同様に、表示要素38では、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態の場合は、白抜きの長方形状の枠が点線で表示され、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態から伸長している場合は、中塗りの長方形が表示される。図4の表示画面では、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態から伸長した状態であり、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態であることが、示される。
【0035】
また、表示要素39は、伸縮シリンダー3A,3Bのいずれが操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象となるかを示す。表示要素39では、伸縮シリンダー3A,3Bの中で操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象となる一方は、数字の部分が白色で示される。そして、伸縮シリンダー3A,3Bの中で操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象とならない一方は、数字の部分が白色以外の色で示される。図4の表示画面では、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が、操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象となることが示され、切替え弁13が第1の作動状態であることが示される。
【0036】
また、第1のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われている場合は、表示要素37~39のそれぞれでは、白色以外の部分が緑色で示される。そして、第2のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われている場合は、表示要素37~39のそれぞれでは、白色以外の部分が橙色で示される。
【0037】
また、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を切替える操作が操作スイッチ17で入力されても、後述する条件を満たさない場合は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えを行わない。そして、この場合、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる。告知は、タッチパネル15等への画面表示、音の発信及びライトの点灯等のいずれかによって、行われる。
【0038】
図5は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることの告知の一例を示す。図5の一例では、表示要素40によって、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることが告知され、表示要素40を含むウィンドウが、タッチパネル15に重畳される。また、図5の一例のウィンドウでは、表示要素40に加えて、表示要素41~43、45~47、51~53及び表示ボタン55が示される。
【0039】
表示要素41は、前述の表示要素37と同様に、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最収縮状態であるか否かを示し、表示要素42は、前述の表示要素38と同様に、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最収縮状態であるか否かを示す。図5のウィンドウでは、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態から伸長した状態であり、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態であることが、示される。
【0040】
また、表示要素43は、前述の表示要素39と同様に、伸縮シリンダー3A,3Bのいずれが操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象となるかを示す。図5のウィンドウでは、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が、操作レバー16での操作によって伸長又は収縮する対象となることが示され、切替え弁13が第1の作動状態であることが示される。また、第1のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われている場合は、表示要素41~43のそれぞれでは、白色以外の部分が緑色で示される。そして、第2のモードで多段ブーム1の伸縮の制御が行われている場合は、表示要素41~43のそれぞれでは、白色以外の部分が橙色で示される。
【0041】
表示要素45は、リアルタイムのブーム長を示し、表示要素46は、ブーム長の目標値を示す。そして、表示要素47は、ブーム長に関して、第1のモードと第2のモードとの間での切替えを可能にする条件を満たしているか否かを示す。ブーム長に関する条件を満たしている場合は、表示要素47は緑色で示され、ブーム長に関する条件を満たしていない場合は、表示要素47は赤色で示される。図5のウィンドウでは、ブーム長を目標値である10.8m以下にすることにより、ブーム長に関して、第1のモードと第2のモードとの間での切替えを可能にする条件を満たすことが、表示要素45~47によって、告知される。そして、リアルタイムのブーム長は、目標値(10.8m)より大きいため、ブームに関する条件を満たしていないことが、表示要素45~47によって、告知される。
【0042】
表示要素51は、多段ブーム1に掛かるリアルタイムの荷重(実荷重)を示し、表示要素52は、荷重(実荷重)の目標値を示す。そして、表示要素53は、多段ブーム1に掛かる荷重に関して、第1のモードと第2のモードとの間での切替えを可能にする条件を満たしているか否かを示す。荷重に関する条件を満たしている場合は、表示要素53は緑色で示され、荷重に関する条件を満たしていない場合は、表示要素53は赤色で示される。図5のウィンドウでは、荷重を目標値である0.4t以下にすることにより、荷重に関して、第1のモードと第2のモードとの間での切替えを可能にする条件を満たすことが、表示要素51~53によって、告知される。そして、リアルタイムの荷重は、目標値(0.4t)以下であるため、荷重に関する条件を満たしていることが、表示要素51~53によって、告知される。
【0043】
表示ボタン55では、作業者等によって、操作が入力される。例えば、作業者等が表示ボタン55を押圧することにより、表示ボタン55において操作が入力される。表示ボタン55で操作が入力されることにより、図5のウィンドウが閉じられ、タッチパネル15に図5のウィンドウが表示されなくなる。
【0044】
次に、コントローラ11による多段ブーム1の伸縮の制御について、説明する。図6は、第1のモードにおいて操作レバー16で多段ブーム1を伸長させる操作が入力された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図6に示すように、第1のモードにおいて多段ブーム1を伸長させる操作が入力されると、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Aが最伸長状態であるか否かを判断する(S101)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M2が最伸長状態であるか否かを判断する。ここで、ブーム部材M2の最伸長状態、かつ、ブーム部材M3~M5の最収縮状態におけるブーム長をL1とする。ある一例では、S101の判断において、コントローラ11は、多段ブーム1を伸長する操作が継続して入力されてもL1又はその近傍でブーム長が数秒間変化しないことに基づいて、伸縮シリンダー3Aが最伸長状態であると判断する。
【0045】
伸縮シリンダー3Aが最伸長状態でない場合は(S101-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S105)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が伸長する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Aが最伸長状態でない場合は、コントローラ11は、ポートP1,P2のいずれからも電力を出力しないことにより、切替え弁13を第1の作動状態にする。
【0046】
伸縮シリンダー3Aが最伸長状態である場合は(S101-Yes)、コントローラ11は、ブーム部材M3~M5(伸縮シリンダー3B)の最収縮状態からのブーム部材M3~M5の全体の伸長量βが基準伸長量βref以上であるか否かを判断する(S102)。すなわち、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Bの最収縮状態からの伸縮シリンダーの伸長量が基準伸長量以上であるか否かを判断する。ここで、コントローラ11は、ブーム部材M3~M5(伸縮シリンダー3B)の最収縮状態からのブーム部材M3~M5の全体の伸長量βを、取得したブーム長に基づいて算出してもよく、伸縮シリンダー3Bの伸長状態に基づいて算出してもよい。また、基準伸長量βrefは、最収縮状態から最伸長状態までのブーム部材M3~M5全体の伸長量に比べて、遥かに小さい値に設定される。ある一例では、ブーム部材M2~M5の全てが最伸長状態になる多段ブーム1の最伸長状態において、ブーム長は42.0mとなり、ブーム部材M2の最伸長状態、かつ、ブーム部材M3~M5の最収縮状態において、ブーム長は18.6mとなる。そして、コントローラ11は、基準伸長量βrefを0.5mに設定する。
【0047】
ブーム部材M3~M5の全体の伸長量βが基準伸長量βrefより小さい場合は(S102-No)、コントローラ11は、操作スイッチ18において切替え弁13を切替える操作が入力されているか否かを判断する(S103)。操作スイッチ18において操作が入力されていない場合は(S103-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S105)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作が入力されても、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)は伸長しない。一方、操作スイッチ18において操作が入力されている場合は(S103-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S104)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が伸長する。
【0048】
図3の一例では、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最伸長状態で、かつ、伸長量βが基準伸長量βrefより小さい場合は、コントローラ11は、ポートP1から電力を出力し、ポートP2から電力を出力しない。このため、操作スイッチ18で操作が入力されていない状態では、リレー回路25のコイル26が励磁されず、電源23からの電力が切替え弁13に供給されない。このため、切替え弁13は、第1の作動状態になる。一方、操作スイッチ18で操作が入力されている状態では、リレー回路25のコイル26が励磁され、電源23からの電力が切替え弁13に供給される。このため、切替え弁13は、第2の作動状態になる。
【0049】
S102においてブーム部材M3~M5の全体の伸長量βが基準伸長量βref以上の場合は(S102-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S104)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が伸長する。図3の一例では、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最伸長状態で、かつ、伸長量βが基準伸長量βref以上の場合は、コントローラ11は、ポートP2から電力を出力し、ポートP1から電力を出力しない。このため、操作スイッチ18での操作入力に関係なく、ポートP2から出力された電力が、切替え弁13に供給される。これにより、切替え弁13が第2の作動状態になる。
【0050】
前述のような処理が行われるため、第1のモードにおいて多段ブーム1を最収縮状態から最伸長状態まで伸長させる場合は、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を伸長させる操作を入力し、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を伸長させる。そして、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最伸長状態になるまで、作業者等は、多段ブーム1を伸長させる操作の入力によって、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を最伸長状態まで伸長させる。そして、ブーム部材M2が最伸長状態になると、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を伸長させる操作を入力すると同時に、操作スイッチ18において操作を入力する。これにより、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が伸長する。そして、最収縮状態からブーム部材M3~M5の全体が基準伸長量βref以上伸長すると、作業者等は、操作スイッチ18において操作を入力することなく、操作レバー16での多段ブーム1を伸長させる操作の入力のみによって、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を最伸長状態まで伸長させる。
【0051】
また、第1のモードでは、コントローラ11は、前述の処理を行うことにより、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、ブーム部材(第2の伸縮ブーム部材)M3を含むブーム部材M3~M5を伸長可能にする。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M2が最伸長状態でない場合には、ブーム部材M3~M5を伸長不可能にする。
【0052】
図7は、第1のモードにおいて操作レバー16で多段ブーム1を収縮させる操作が入力された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図7に示すように、第1のモードにおいて多段ブーム1を収縮させる操作が入力されると、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態であるか否かを判断する(S111)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M3~M5が最収縮状態であるか否かを判断する。コントローラ11は、例えば、数秒間の間に検出スイッチ22がON状態になったか否かに基づいて、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最収縮状態であるか否かを判断する。
【0053】
伸縮シリンダー3Bが最収縮状態でない場合は(S111-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S113)。このため、多段ブーム1を収縮させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が収縮する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態でない場合は、コントローラ11は、ポートP2から電力を出力し、ポートP1から電力を出力しない。これにより、ポートP2から出力された電力が切替え弁13に供給され、切替え弁13が第2の作動状態になる。
【0054】
伸縮シリンダー3Bが最収縮状態である場合は(S111-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S112)。このため、多段ブーム1を収縮させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が収縮する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Bが最収縮状態である場合は、コントローラ11は、ポートP1,P2のいずれからも電力を出力しないことにより、切替え弁13を第1の作動状態にする。
【0055】
前述のような処理が行われるため、第1のモードにおいて多段ブーム1を最伸長状態から最収縮状態まで収縮させる場合は、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を収縮させる操作を入力し、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を収縮させる。そして、作業者等は、多段ブーム1を収縮させる操作の入力によって、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を最収縮状態になるまで収縮させる。そして、ブーム部材M3~M5が最収縮状態になると、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を収縮させる操作を入力することにより、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を最収縮状態まで収縮させる。
【0056】
また、第1のモードでは、コントローラ11は、前述の処理を行うことにより、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2に対して前方段のブーム部材M3~M5のいずれもが最収縮状態であることに少なくとも基づいて、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2を収縮可能にする。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M3~M5のいずれかが最収縮状態でない場合には、ブーム部材M2を収縮不可能にする。
【0057】
図8は、第2のモードにおいて操作レバー16で多段ブーム1を伸長させる操作が入力された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図8に示すように、第2のモードにおいて多段ブーム1を伸長させる操作が入力されると、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Bが最伸長状態であるか否かを判断する(S121)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M3~M5が最伸長状態であるか否かを判断する。ここで、ブーム部材M3~M5の最伸長状態、かつ、ブーム部材M2の最収縮状態におけるブーム長をL2とする。ある一例では、S121の判断において、コントローラ11は、多段ブーム1を伸長する操作が継続して入力されてもL2又はその近傍でブーム長が数秒間変化しないことに基づいて、伸縮シリンダー3Bが最伸長状態であると判断する。
【0058】
伸縮シリンダー3Bが最伸長状態でない場合は(S121-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S125)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が伸長する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Bが最伸長状態でない場合は、コントローラ11は、ポートP2から電力を出力し、ポートP1から電力を出力しない。これにより、ポートP2から出力された電力が切替え弁13に供給され、切替え弁13が第2の作動状態になる。
【0059】
伸縮シリンダー3Bが最伸長状態である場合は(S121-Yes)、コントローラ11は、ブーム部材M2(伸縮シリンダー3A)の最収縮状態からのブーム部材M2の伸長量αが基準伸長量αref以上であるか否かを判断する(S122)。すなわち、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Aの最収縮状態からの伸縮シリンダーの伸長量が基準伸長量以上であるか否かを判断する。ここで、コントローラ11は、ブーム部材M2(伸縮シリンダー3A)の最収縮状態からのブーム部材M2の伸長量αを、取得したブーム長に基づいて算出してもよく、伸縮シリンダー3Aの伸長状態に基づいて算出してもよい。また、基準伸長量αrefは、最収縮状態から最伸長状態までのブーム部材M2の伸長量に比べて、遥かに小さい値に設定される。ある一例では、ブーム部材M2~M5の全てが最伸長状態になる多段ブーム1の最伸長状態において、ブーム長は42.0mとなり、ブーム部材M2の最収縮状態、かつ、ブーム部材M3~M5の最伸長状態において、ブーム長は34.2mとなる。そして、コントローラ11は、基準伸長量αrefを0.5mに設定する。
【0060】
ブーム部材M2の伸長量αが基準伸長量αrefより小さい場合は(S122-No)、コントローラ11は、操作スイッチ18において切替え弁13を切替える操作が入力されているか否かを判断する(S123)。操作スイッチ18において操作が入力されていない場合は(S123-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S125)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作が入力されても、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)は伸長しない。一方、操作スイッチ18において操作が入力されている場合は(S123-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S124)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が伸長する。
【0061】
図3の一例では、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最伸長状態で、かつ、伸長量αが基準伸長量αrefより小さい場合は、コントローラ11は、ポートP3から電力を出力する。このため、コントローラ11は、ポートP3から操作スイッチ18を通してグランドまで電流が流れているか否かに基づいて、操作スイッチ18で操作が入力されているか否かを判断可能である。この際、操作スイッチ18で操作が入力されていない場合は、コントローラ11は、ポートP2から電力を出力し、ポートP1から電力を出力しない。これにより、ポートP2から出力された電力が切替え弁13に供給され、切替え弁13が第2の作動状態になる。一方、操作スイッチ18で操作が入力されている場合は、コントローラ11は、ポートP1,P2のいずれからも電力を出力しないことにより、切替え弁13を第1の作動状態にする。
【0062】
S122においてブーム部材M2の伸長量αが基準伸長量αref以上の場合は(S122-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S124)。このため、多段ブーム1を伸長させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が伸長する。図3の一例では、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最伸長状態で、かつ、伸長量αが基準伸長量αref以上の場合は、コントローラ11は、ポートP1,P2のいずれからも電力を出力しないことにより、切替え弁13を第1の作動状態にする。
【0063】
前述のような処理が行われるため、第2のモードにおいて多段ブーム1を最収縮状態から最伸長状態まで伸長させる場合は、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を伸長させる操作を入力し、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を伸長させる。そして、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最伸長状態になるまで、作業者等は、多段ブーム1を伸長させる操作の入力によって、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を最伸長状態まで伸長させる。そして、ブーム部材M3~M5が最伸長状態になると、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を伸長させる操作を入力すると同時に、操作スイッチ18において操作を入力する。これにより、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が伸長する。そして、最収縮状態からブーム部材M2が基準伸長量αref以上伸長すると、作業者等は、操作スイッチ18において操作を入力することなく、操作レバー16での多段ブーム1を伸長させる操作の入力のみによって、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を最伸長状態まで伸長させる。
【0064】
また、第2のモードでは、コントローラ11は、前述の処理を行うことにより、ブーム部材M3~M5が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、ブーム部材M2を伸長可能にする。そして、第2のモードでは、コントローラ11は、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2が最伸長状態でなくても、ブーム部材(第2の伸縮ブーム部材)M3を含むブーム部材M3~M5を伸長可能にする。
【0065】
図9は、第2のモードにおいて操作レバー16で多段ブーム1を収縮させる操作が入力された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図9に示すように、第2のモードにおいて多段ブーム1を収縮させる操作が入力されると、コントローラ11は、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態であるか否かを判断する(S131)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M2が最収縮状態であるか否かを判断する。コントローラ11は、例えば、数秒間の間に検出スイッチ21がON状態になったか否かに基づいて、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最収縮状態であるか否かを判断する。
【0066】
伸縮シリンダー3Aが最収縮状態でない場合は(S131-No)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させず、切替え弁13を第1の作動状態(非通電状態)にする(S133)。このため、多段ブーム1を収縮させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が収縮する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態でない場合は、コントローラ11は、ポートP1,P2のいずれからも電力を出力しないことにより、切替え弁13を第1の作動状態にする。
【0067】
伸縮シリンダー3Aが最収縮状態である場合は(S131-Yes)、コントローラ11は、切替え弁13に電力を供給させ、切替え弁13を第2の作動状態(通電状態)にする(S132)。このため、多段ブーム1を収縮させる操作の入力に対応して、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が収縮する。図3の一例では、伸縮シリンダー3Aが最収縮状態である場合は、コントローラ11は、ポートP2から電力を出力し、ポートP1から電力を出力しない。これにより、ポートP2から出力された電力が切替え弁13に供給され、切替え弁13が第2の作動状態になる。
【0068】
前述のような処理が行われるため、第2のモードにおいて多段ブーム1を最伸長状態から最収縮状態まで収縮させる場合は、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を収縮させる操作を入力し、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を収縮させる。そして、作業者等は、多段ブーム1を収縮させる操作の入力によって、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)を最収縮状態まで収縮させる。そして、ブーム部材M2が最収縮状態になると、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を収縮させる操作を入力することにより、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)を最収縮状態まで収縮させる。
【0069】
また、第2のモードでは、コントローラ11は、前述の処理を行うことにより、ブーム部材M2が最収縮状態であることに少なくとも基づいて、ブーム部材M3~M5を収縮可能にする。そして、第2のモードでは、コントローラ11は、ブーム部材(第1の伸縮ブーム部材)M2に対して前方段のブーム部材M3~M5のいずれか1つ以上が最収縮状態でなくても、ブーム部材M2を収縮可能にする。
【0070】
多段ブーム1を備えるクレーンを用いた作業では、ブーム部材M2を最収縮状態で維持したままブーム部材M3~M5を最伸長状態まで伸長することが、作業効率及び安全性等の観点から好ましいことがある。前述のように、本実施形態のコントローラ11は、第1のモード及び第2のモードで、多段ブーム1の伸縮の制御を行うことが可能である。そして、第2のモードにおける制御では、ブーム部材M2を最収縮状態で維持したまま、ブーム部材M3~M5を最伸長状態まで伸長可能になる。したがって、多段ブーム1において、作業内容に対応した適切な伸縮状態が、実現される。
【0071】
また、本実施形態のコントローラ11は、第1のモードではブーム部材M2から伸長可能にするとともに、第2のモードではブーム部材M3~M5から伸長可能にする。このため、第1のモード及び第2のモードの中から作業内容に対応した一方を選択することにより、ブーム部材M2~M5を作業内容に対応した適切な順番で伸長可能になる。同様に、コントローラ11は、第1のモードではブーム部材M3~M5から収縮可能にするとともに、第2のモードではブーム部材M2から収縮可能にする。このため、第1のモード及び第2のモードの中から作業内容に対応した一方を選択することにより、ブーム部材M2~M5を作業内容に対応した適切な順番で収縮可能になる。
【0072】
また、本実施形態では、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を切替える操作が、操作スイッチ17において入力される。図10は、モードを切替える操作が操作スイッチ17で入力された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図10に示すように、操作スイッチ17でモードを切替える操作が入力されると、コントローラ11は、多段ブーム1の最収縮状態からの伸長量εaが閾値(第1の閾値)εath以下であるか否かを判断する(S141)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M2~M5の最収縮状態からのブーム部材M2~M5の全体の伸長量が閾値以下であるか否かを判断する。ここで、閾値εathは、最収縮状態から最伸長状態までの多段ブーム1の伸長量に比べて、遥かに小さい値に設定される。ある一例では、多段ブーム1の最収縮状態において、ブーム長は10.8mとなり、多段ブーム1の最伸長状態において、ブーム長は42.0mとなる。そして、コントローラ11は、伸長量εaの閾値εathを0.2mに設定する。このため、S141では、コントローラ11は、多段ブーム1が最収縮状態又は最収縮状態に近い状態まで収縮しているか否かを、判断する。
【0073】
伸長量εaが閾値εath以下の場合は(S141-Yes)、コントローラ11は、S142~S146の判断のいずれか1つ以上を行う。S142では、コントローラ11は、操作レバー16が中立状態であるか否か、すなわち、操作レバー16で操作が入力されているか否かを判断する。S143では、コントローラ11は、検出スイッチ21がON状態であるか否か、すなわち、伸縮シリンダー3A(ブーム部材M2)が最収縮状態であるか否かを判断する。S144では、コントローラ11は、検出スイッチ22がON状態であるか否か、すなわち、伸縮シリンダー3B(ブーム部材M3~M5)が最収縮状態であるか否かを判断する。S145では、コントローラ11は、前述した負荷率σが負荷率閾値σth以下であるか否かを判断する。ある一例では、コントローラ11は、負荷率閾値σthを100%に設定する。S146では、コントローラ11は、前述した多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)τが荷重閾値τth以下であるか否かを判断する。ある一例では、コントローラ11は、荷重閾値τthを、フックの重量の5倍に設定する。
【0074】
操作レバー16が中立状態で(S142-Yes)、検出スイッチ21,22がON状態で(S143-YesかつS144-Yes)、負荷率σが負荷率閾値σth以下で(S145-Yes)、かつ、荷重τが荷重閾値τth以下の場合は(S146-Yes)、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替える(S151)。一方、S142~S146で判断される条件のいずれか1つを満たさない場合は、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替えない(S152)。そして、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる(S152)。ある一例では、図5の一例のウィンドウをタッチパネル15に表示することにより、切替えが不可能であることを告知する。
【0075】
伸長量εaが閾値(第1の閾値)εathより大きい場合は(S141-No)、コントローラ11は、多段ブーム1の最伸長状態からの収縮量εbが閾値(第2の閾値)εbth以下であるか否かを判断する(S147)。すなわち、コントローラ11は、ブーム部材M2~M5の最伸長状態からのブーム部材M2~M5の全体の収縮量が閾値以下であるか否かを判断する。ここで、閾値εbthは、最伸長状態から最収縮状態までの多段ブーム1の収縮量に比べて、遥かに小さい値に設定される。ある一例では、多段ブーム1の最収縮状態において、ブーム長は10.8mとなり、多段ブーム1の最伸長状態において、ブーム長は42.0mとなる。そして、コントローラ11は、収縮量εbの閾値εbthを0.2mに設定する。このため、S147では、コントローラ11は、多段ブーム1が最伸長状態又は最伸長状態に近い状態まで伸長しているか否かを、判断する。
【0076】
収縮量εbが閾値εbth以下の場合は(S147-Yes)、コントローラ11は、S148~S150の判断のいずれか1つ以上を行う。S148では、S144と同様に、コントローラ11は、操作レバー16が中立状態であるか否かを判断する。S149では、S145と同様に、コントローラ11は、負荷率σが負荷率閾値σth以下であるか否かを判断する。S150では、S146と同様に、コントローラ11は、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)τが荷重閾値τth以下であるか否かを判断する。
【0077】
操作レバー16が中立状態で(S148-Yes)、負荷率σが負荷率閾値σth以下で(S149-Yes)、かつ、荷重τが荷重閾値τth以下の場合は(S150-Yes)、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替える(S153)。一方、S148~S150で判断される条件のいずれか1つを満たさない場合は、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替えず、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる(S152)。また、S147において収縮量εbが閾値εbthより大きい場合も(S147-No)、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間でブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替えず、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる(S152)。
【0078】
ここで、S141~S146で判断される条件を全て満たす場合、第1の条件を満たすものとする。また、S147~S150で判断される条件を全て満たす場合、第2の条件を満たすものとする。本実施形態では、第1の条件には、多段ブーム1の最収縮状態からの多段ブーム1の伸長量εaが閾値(第1の閾値)εath以下であること、及び、多段ブーム1に掛かる荷重τが荷重閾値τth以下であること等が含まれる。そして、第2の条件には、多段ブーム1の最伸長状態からの多段ブーム1の収縮量εbが閾値(第2の閾値)εbth以下であること、及び、多段ブーム1に掛かる荷重τが荷重閾値τth以下であること等が含まれる。
【0079】
前述のように、モードを切替える操作が操作スイッチ17で入力されると、コントローラ11は、第1の条件を満たすか否か、及び、第2の条件を満たすか否かを判断する。そして、コントローラ11は、第1の条件を満たす場合、及び、第2の条件を満たす場合のそれぞれにおいて、第1のモードと第2のモードとの間で、ブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を切替え可能にする。一方、コントローラ11は、第1の条件及び第2の条件のいずれも満たさない場合は、モードを切替える操作が操作スイッチ17で入力されても、第1のモードと第2のモードとの間で、ブーム部材(伸縮ブーム部材)M2~M5の伸縮の制御を切替えない。この場合、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることを告知させる。告知が行われることにより、作業者等は、モードを切替え可能な条件を満たしていないことを、認識可能になる。
【0080】
また、本実施形態では、前述のようにコントローラ11によって処理が行われるため、最収縮状態からの多段ブーム1の伸長量εaが閾値εath以下の状態において、第1の条件に含まれる他の条件を満たせば、モードの切替えが可能である。そして、最伸長状態からの多段ブーム1の収縮量εbが閾値εbth以下の状態でも、第2の条件に含まれる他の条件を満たせば、モードの切替えが可能である。このため、本実施形態では、多段ブーム1の最収縮状態、及び、多段ブーム1の最伸長状態の中で、多段ブーム1のリアルタイムの伸縮状態に対応した適切な一方で、作業者等は、第1のモードと第2のモードとの間を切替えることが可能になる。
【0081】
例えば、クレーンを用いた作業時には、第1のモードで多段ブーム1を最伸長状態まで伸長させて作業を行った後、ブーム部材M2を最収縮状態にし、かつ、ブーム部材M3~M5を最伸長状態にして作業を行うことがある。この場合、多段ブーム1を最伸長状態まで伸長させて作業を行った後、作業者等は、多段ブーム1が最伸長状態で維持された状態で、操作スイッチ17で操作を入力する。これにより、第2の条件に含まれる他の条件を満たせば、コントローラ11は、第1のモードから第2のモードに切替える。そして、第2のモードに切替わった後、作業者等は、操作レバー16において多段ブーム1を収縮させる操作を入力することにより、ブーム部材M3~M5を最伸長状態で維持したまま、ブーム部材M2を最収縮状態まで収縮する。したがって、本実施形態では、多段ブーム1の最伸長状態から多段ブーム1の最収縮状態まで多段ブーム1を一旦収縮することなく、ブーム部材M2を最収縮状態にし、かつ、ブーム部材M3~M5を最伸長状態にすることが可能になる。前述のように、本実施形態では、リアルタイムの伸縮状態から次の伸縮状態へ多段ブーム1を変化させる作業において、手間が低減され、作業効率が向上する。
【0082】
図11は、図5のウィンドウ表示等の第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることが告知された際に、コントローラ11によって行われる処理を示す。図11に示すように、切替えが不可能であることが告知されると、コントローラ11は、表示ボタン55において操作が入力されたか否かを判断する(S161)。表示ボタン55において操作が入力された場合は(S161-Yes)、コントローラ11は、図5のウィンドウを閉じる等して、告知を終了する(S172)。
【0083】
表示ボタン55において操作が入力されていない場合は(S161-No)、コントローラ11は、多段ブーム1の最収縮状態からの伸長量εaが閾値(第1の閾値)εath以下であるか否かを判断する(S162)。伸長量εaが閾値εath以下の場合は(S162-Yes)、コントローラ11は、S163~S167の判断のいずれか1つ以上を行う。S163では、S142と同様に、コントローラ11は、操作レバー16が中立状態であるか否かを判断する。S164では、S143と同様に、コントローラ11は、検出スイッチ21がON状態であるか否かを判断する。S165では、S144と同様に、コントローラ11は、検出スイッチ22がON状態であるか否かを判断する。S166では、S145と同様に、コントローラ11は、負荷率σが負荷率閾値σth以下であるか否かを判断する。S167では、S146と同様に、コントローラ11は、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)τが荷重閾値τth以下であるか否かを判断する。
【0084】
操作レバー16が中立状態で(S163-Yes)、検出スイッチ21,22がON状態で(S164-YesかつS165-Yes)、負荷率σが負荷率閾値σth以下で(S166-Yes)、かつ、荷重τが荷重閾値τth以下の場合は(S167-Yes)、コントローラ11は、切替え不可能であることの告知を終了する(S173)。一方、S163~S167で判断される条件のいずれか1つを満たさない場合は、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることの告知を継続する(S174)。
【0085】
伸長量εaが閾値(第1の閾値)εathより大きい場合は(S162-No)、コントローラ11は、多段ブーム1の最伸長状態からの収縮量εbが閾値(第2の閾値)εbth以下であるか否かを判断する(S168)。収縮量εbが閾値εbth以下の場合は(S168-Yes)、コントローラ11は、S169~S171の判断のいずれか1つ以上を行う。S169では、S148と同様に、コントローラ11は、操作レバー16が中立状態であるか否かを判断する。S170では、S149と同様に、コントローラ11は、負荷率σが負荷率閾値σth以下であるか否かを判断する。S171では、S150と同様に、コントローラ11は、多段ブーム1に掛かる荷重(実荷重)τが荷重閾値τth以下であるか否かを判断する。
【0086】
操作レバー16が中立状態で(S169-Yes)、負荷率σが負荷率閾値σth以下で(S170-Yes)、かつ、荷重τが荷重閾値τth以下の場合は(S171-Yes)、コントローラ11は、切替え不可能であることの告知を終了する(S175)。一方、S169~S171で判断される条件のいずれか1つを満たさない場合は、コントローラ11は、第1のモードと第2のモードとの間での切替えが不可能であることの告知を継続する(S174)。また、S168において収縮量εbが閾値εbthより大きい場合も(S168-No)、コントローラ11は、切替えが不可能であることの告知を継続する(S174)。
【0087】
前述のように、モードを切替えが不可能であることが告知されると、コントローラ11は、表示ボタン55で操作が入力される、又は、前述の第1の条件又は第2の条件を満たすことにより、告知を終了する。すなわち、作業者等によって表示ボタン55で操作が入力されない限り、コントローラ11は、第1の条件及び第2の条件のいずれかを満たすまで、告知を継続する。このため、作業者等は、表示ボタン55で操作を入力しない限り、モードを切替え可能な条件を満たしているか否か、リアルタイムで認識可能になる。
【0088】
(変形例)
前述の実施形態等では、伸縮シリンダー3Aの作動によって2段目ブーム部材M2が伸長又は収縮し、伸縮シリンダー3Bの作動によって3~5段目のブーム部材M3~M5が同時に伸長又は収縮するが、これに限るものではない。ある変形例では、2~5段目のブーム部材M2~M5のそれぞれに対応して1つずつ伸縮リンダーが設けられてもよい。この場合、コントローラ11は、第1のモードにおいて、後方段(下段)のブーム部材(伸縮ブーム部材)から順番に伸長可能にする。このため、本変形例でも、第1のモードにおいて、コントローラ11は、2段目のブーム部材M2が最伸長状態であることに少なくとも基づいて、3段目のブーム部材M3を伸長可能にする。また、本変形例では、コントローラ11は、第1のモードにおいて、前方段(上段)のブーム部材(伸縮ブーム部材)から順番に収縮可能にする。このため、本変形例でも、第1のモードにおいて、コントローラ11は、2段目に対して前方段のブーム部材M3~M5のいずれもが最収縮状態であることに少なくとも基づいて、2段目のブーム部材M2を収縮可能にする。
【0089】
また、本変形例でも、第2のモードにおいて、コントローラ11は、2段目のブーム部材M2が最伸長状態でなくても、3段目のブーム部材M3を伸長可能にする。そして、第2のモードにおいて、コントローラ11は、2段目に対して前方段のブーム部材M3~M5のいずれか1つ以上が最収縮状態でなくても、2段目のブーム部材M2を収縮可能にする。また、本変形例でも、コントローラ11は、多段ブーム1の最収縮状態からの多段ブーム1の伸長量εaが閾値εath以下であることを含む第1の条件を満たす場合、第1のモードと第2のモードとの間で、ブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替え可能にする。そして、本変形例でも、コントローラ11は、多段ブーム1の最伸長状態からの多段ブーム1の収縮量εbが閾値εbth以下であることを含む第2の条件を満たす場合、第1のモードと第2のモードとの間で、ブーム部材M2~M5の伸縮の制御を切替え可能にする。このため、本変形例でも、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0090】
また、前述の実施形態等では、伸縮ブーム部材となるブーム部材M2~M5が4つ設けられる5段の多段ブームであるが、ベースブーム部材及び複数の伸縮ブーム部材を備える3段以上の多段ブームであれば、前述の制御を適用可能である。この場合も、前述の実施形態等と同様にして、第1のモード及び第2のモードそれぞれにおける多段ブーム1の伸縮の制御が行われる。そして、第1のモードと第2のモードとの間の切替え操作が入力された場合は、前述の実施形態等と同様にして、コントローラ11によって処理が行われる。
【0091】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0092】
1…多段ブーム、3A,3B…伸縮シリンダー、10…ブーム伸縮制御装置、11…コントローラ、13…切替え弁、17,18…操作スイッチ、Mi…ブーム部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11