(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】プラグイン式ブレーカ
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20230911BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20230911BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01H73/20 A
H02B1/42
H02B1/20 D
(21)【出願番号】P 2019137117
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 寛之
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-026969(JP,A)
【文献】特開2018-060708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
H02B 1/42
H02B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された複数の銅バーを、
矩形を成すハウジングの底面に設けたクリップ端子により挟持させることで、電源側端子、負荷側端子の何れかを前記銅バーに接続するプラグイン式ブレーカであって、
前記クリップ端子は、
前記ハウジングの対角線方向に階段状に3つ配置され、
前記ハウジングの底面に直交する回転軸を有して90度回転可能に取り付けられており、
前記クリップ端子を回転することで、前記銅バーの配設方向に対する前記ハウジングの配置方向を、直交する方向或いは平行する方向の何れか選択可能とし、何れかの方向で前記銅バーに連結できることを特徴とするプラグイン式ブレーカ。
【請求項2】
前記ハウジングの下部には、前記ハウジングの各側面に連続する壁を有して前記クリップ端子の周囲を覆うスカート部材が周設され、前記スカート部材の前記壁を形成する各辺には、直交する2方向に対してクリップ端子による前記銅バーの挟持を可能とする切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラグイン式ブレーカ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記電源側端子と前記負荷側端子との間の電路を接続/遮断する操作ハンドルを備えた本体と、
前記クリップ端子を備えて前記ハウジングの底部に着脱可能に配置される端子ベースとから成ることを特徴とする請求項1記載のプラグイン式ブレーカ。
【請求項4】
前記端子ベースには、前記端子ベースの各側面に連続する壁を有して前記クリップ端子の周囲を覆うスカート部材が周設され、前記スカート部材の前記壁を形成する各辺には、直交する2方向に対してクリップ端子による銅バーの挟持を可能とする切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項3記載のプラグイン式ブレーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部に銅バーに接続する端子を備えて、銅バー上に配置して接続されるプラグイン式ブレーカに関する。
【背景技術】
【0002】
底部に銅バーに接続する端子を備えた回路遮断器がある。例えば、特許文献1では、クリップ型の端子装置を備えた端子ベースを回路遮断器ハウジングの底部に連結して、プラグイン式ブレーカを形成している。
このようにブレーカの底部に端子を配置することで、分電盤内に配設された銅バーに別途連結金具を使用する事無く直接ブレーカを接続する事ができるため、部材の削減ができたし、省スペースで銅バーと分岐ブレーカとの接続を実現できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造のプラグイン式ブレーカは、銅バーの配設方向に直交する向きに電源側端子及び負荷側端子が配置される構造であり、この構造は分岐ブレーカの場合は負荷配線が銅バーに対してその横方向に引き出される。そのため、負荷配線の引き回しに都合が良く、好ましい構造となっていた。
【0005】
しかしながら、主幹ブレーカの場合、分岐ブレーカとは異なり負荷側端子が銅バーに接続されるため、プラグイン式にした場合は銅バーに対して平行な配置となる縦配置が望ましい。
この理由は以下のようである。
図8は従来の分電盤の説明図であり、この
図8を参照して説明する。電源ケーブルは通常上方から引き込まれ主幹ブレーカ21に接続される。また、
図8に示すように主幹ブレーカ21から配設されて分岐ブレーカ22が接続される銅バー23は縦に配設される。そのため、分岐ブレーカ22が銅バー23に対して横配置されるのに対して主幹ブレーカ21は縦配置される。
【0006】
そのため、主幹ブレーカをプラグイン式にしようとすると、横配置を基本とする分岐ブレーカの構成は適用できず、プラグイン式にするには新たに作製する必要があり、コスト上の問題が発生した。
尚、
図8に示す従来の主幹ブレーカ21は、連結金具24を使用して負荷側端子を銅バー23に連結している。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、分岐ブレーカと主幹ブレーカの双方に適用できるよう、銅バーの配設方向に対して直交方向/平行方向の何れでも対応できる構造を備えたプラグイン式ブレーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、平行に配置された複数の銅バーを、矩形を成すハウジングの底面に設けたクリップ端子により挟持させることで、電源側端子、負荷側端子の何れかを銅バーに接続するプラグイン式ブレーカであって、クリップ端子は、ハウジングの対角線方向に階段状に3つ配置され、ハウジングの底面に直交する回転軸を有して90度回転可能に取り付けられており、クリップ端子を回転することで、銅バーの配設方向に対するハウジングの配置方向を、直交する方向或いは平行する方向の何れか選択可能とし、何れかの方向で銅バーに連結できることを特徴する。
この構成によれば、銅バーに接続するためのクリップ端子を90度回転できるため、ブレーカの銅バーに対する接続方向を直交方向/平行方向の何れにも対応させることができ、組み付ける向きが異なる分岐ブレーカ、主幹ブレーカの双方に対してハウジングの共通化を図ることができ、コストを抑制できる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、ハウジングの下部には、ハウジングの各側面に連続する壁を有してクリップ端子の周囲を覆うスカート部材が周設され、スカート部材の壁を形成する各辺には、直交する2方向に対してクリップ端子による銅バーの挟持を可能とする切り欠きが形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、スカート部材により下方に突出したクリップ端子を保護できるし、銅バー装着時にはハウジング下部の銅バーが周囲から閉塞されるため、塵等の付着等を防止できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、ハウジングは、電源側端子と負荷側端子との間の電路を接続/遮断する操作ハンドルを備えた本体と、クリップ端子を備えてハウジングの底部に着脱可能に配置される端子ベースとから成ることを特徴とする。
この構成によれば、ハウジングは本体とクリップ端子を備えた端子ベースとを分離できるため、主幹ブレーカと分岐ブレーカの端子ベースの共通化を図ることができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、端子ベースには、端子ベースの各側面に連続する壁を有してクリップ端子の周囲を覆うスカート部材が周設され、スカート部材の壁を形成する各辺には、直交する2方向に対してクリップ端子による銅バーの挟持を可能とする切り欠きが形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、スカート部材によりクリップ端子を保護できるし、銅バー装着時にはハウジング下部の銅バーを閉塞するため、塵等の付着等を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅バーに接続するためのクリップ端子を90度回転できるため、ブレーカの銅バーに対する接続方向を直交方向/平行方向の何れにも対応させることができ、組み付ける向きが異なる分岐ブレーカ、主幹ブレーカの双方に対してハウジングの共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るプラグイン式ブレーカの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のプラグイン式ブレーカを下方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のプラグイン式ブレーカの底面図である。
【
図4】
図3の状態からクリップ端子を90度回転した底面図である。
【
図5】クリップ端子の回転構造を示す斜視説明図であり、(a)は
図3の状態のクリップ端子を示し、(b)は
図4の状態のクリップ端子を示している。
【
図6】クリップ端子と銅バーの関係を示す説明図であり、(a)は
図5(a)に対応する説明図、(b)は
図5(b)に対応する説明図である。
【
図7】主幹ブレーカ及び分岐ブレーカをプラグイン式ブレーカとした分電盤の正面図である。
【
図8】主幹ブレーカとプラグイン式の分岐ブレーカを組み付けた従来の分電盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1~3は本発明に係るプラグイン式ブレーカの一例を示し、
図1は斜視図、
図2は下方から見た斜視図、
図3は底面図である。プラグイン式ブレーカ1(以下、単に「ブレーカ」と称する。)は、ハウジング10の後端部に電源側端子2、前端部に負荷側端子3、上面中央に電源側端子2と負荷側端子3の間の電路をオン/オフ操作する操作ハンドル4を有し、ハウジング10の底面10aに銅バーに連結するためのクリップ端子5を備えている。
また、ハウジング10の底部周囲にはクリップ端子5を保護するスカート部材6が周設されている。
尚、ここでは3線式電路に対応する3端子を備えた構成を示し、例えば三相3線式電路に使用されるブレーカを示している。
【0015】
クリップ端子5は、コ字状に形成されて銅バーを挟持するよう構成され、ハウジング10の内部で電源側端子2、負荷側端子3の何れか一方に接続されている。具体的に、分岐ブレーカの場合は電源側端子2とクリップ端子5とが接続され、主幹ブレーカの場合は負荷側端子3とクリップ端子5とが接続されている。
3つのクリップ端子5は、ハウジング10の対角線方向に階段状に配置され、平行に配設されている3本の銅バーに対して、縦方向及び横方向のどちらの向きでも接続できるよう配置されている。
【0016】
スカート部材6は、ハウジング10の各側面に連続する壁を有し、3つのクリップ端子5の周囲を囲む四角形の枠体として形成されている。そして、クリップ端子5の位置に合わせて銅バーの挿入を可能とするスリット状の切り欠き6aが各辺に設けられている。
【0017】
図4は
図3の状態からクリップ端子5を90度回転した状態を示し、クリップ端子5は回転可能に構成されている。
図3の状態では、ハウジング10の短辺方向である横方向に配設した銅バーに対してブレーカ1が装着される構成であるが、
図4ではハウジング10の縦方向に配設した銅バーに対してブレーカ1が装着される。
【0018】
図5はクリップ端子5の回転構造を示す斜視説明図であり、(a)は
図3の状態のクリップ端子5を示し、(b)は
図4の状態のクリップ端子5を示している。また、
図6はクリップ端子5と分電盤に配置された銅バー11の関係を示す説明図であり、(a)は
図5(a)に対応する説明図、(b)は
図5(b)に対応する説明図である。
図5に示すように、クリップ端子5はハウジング底面10aに直交する回転軸14を有し、ハウジング底面10aに設けられた嵌合孔12に挿入される。
【0019】
そして
図6に示すように、嵌合孔12には扇形状の拡径部12aが周囲に形成されている一方、回転軸14にはこの切り欠きに係合する突起14aが設けられている。この拡径部12aに突起14aが係合することで、回転軸14の回転が90度の範囲に規制される。
こうしてクリップ端子5を回転操作することで、ブレーカ1を
図6(a)に示す銅バー11に直交する向きと、
図6(b)に示す銅バー11に平行する向きの何れかを選択でき、銅バー11に接続できる。
【0020】
このように、銅バー11に接続するためのクリップ端子5を90度回転できるため、ブレーカ1の銅バー11に対する接続方向を直交方向/平行方向の何れにも対応させることができる。よって、組み付ける向きが異なる分岐ブレーカ、主幹ブレーカに対してハウジング10の共通化を図ることができ、コストを抑制できる。
また、スカート部材6により下方に突出したクリップ端子5を保護できるし、銅バー11に装着した時にはハウジング10の下部の銅バー11が周囲から閉塞されるため、塵等の付着等を防止できる。
【0021】
図7は、上記構造のブレーカ1である主幹ブレーカ1a及び分岐ブレーカ1bを組み付けた分電盤を示している。分電盤の内部背面上には、3本の銅バー11で構成される主幹バーが上下方向に平行に配設されており、この銅バー11に対して主幹ブレーカ1aが縦向きに配置されて接続されている。そして、複数の分岐ブレーカ1bが横向きに配置されている。
図7に示すように、主幹ブレーカ1aと分岐ブレーカ1bとは銅バー11上に密着するよう配置される。
【0022】
このように、ハウジング底面10aに設けられたクリップ端子5を使用することで、縦配置した主幹ブレーカ1aの負荷側端子を銅バー11に接続できる。また、横配置した分岐ブレーカ1bの電源側端子を銅バー11に接続できる。
よって、別途連結金具を使用することが無いことで、主幹ブレーカ1aと分岐ブレーカ1bとを密着させて配置でき、分電盤の小型化にも貢献できる。
【0023】
尚、上記実施形態は、クリップ端子5をハウジング10の底面10aに配置し、スカート部材6を分離形成しているが、ハウジング10を操作ハンドル4を設けた本体と、クリップ端子5及びスカート部材6を備えた端子ベースとに分離形成しても良い。この場合、例えば
図1に示すブレーカ1では、30が本体、31が端子ベースとなる。
このように、ハウジング10を本体30とクリップ端子5を備えた端子ベース31とに分離しても良く、主幹ブレーカ1aと分岐ブレーカ1bの端子ベース31の共通化を図ることができ、コストを抑制できる。
【符号の説明】
【0024】
1・・プラグイン式ブレーカ、1a・・主幹ブレーカ、1b・・分岐ブレーカ、2・・電源側端子、3・・負荷側端子、4・・操作ハンドル、5・・クリップ端子、6・・スカート部材、6a・・切り欠き、11・・銅バー、12・・嵌合孔、12a・・拡径部、14・・回転軸、14a・・突起、30・・本体、31・・端子ベース、。