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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】連動制御システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/30 20220101AFI20230911BHJP
   B61L 19/06 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B61L27/30
B61L19/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019141920
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021024349
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】北村 知
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 裕史
(72)【発明者】
【氏名】糸谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】翠 純平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 博孝
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205877(JP,A)
【文献】特開2018-069971(JP,A)
【文献】特開2015-071390(JP,A)
【文献】特開平11-348787(JP,A)
【文献】特開2000-057109(JP,A)
【文献】特開平10-338134(JP,A)
【文献】特開2002-302039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/30
B61L 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位の地点に設けられ、第1駅現場機器、第2駅現場機器を制御する第1制御装置、第2制御装置と、上位の地点に設けられた第3制御装置と、前記第1制御装置、前記第2制御装置と前記第3制御装置と間の通信を可能とする少なくとも2以上の地点に設けられた通信制御装置と、を有し、
前記第1制御装置および前記第2制御装置は、
前記第1駅現場機器および前記第2駅現場機器と通信可能に接続され、かつ、前記第3制御装置と双方向通信可能に接続された通信インターフェースを含み、
前記第3制御装置は、
オペレーティングシステムと、当該オペレーティングシステム上で動作するミドルウェアと、当該ミドルウェア上で動作し、前記第1制御装置および前記第2制御装置と1対1で対応付けられた第1駅対応アプリケーションソフトウェアおよび第2駅対応アプリケーションソフトウェアと、を含み、
前記ミドルウェアは、前記オペレーティングシステムの指令に基づき、前記第1駅対応アプリケーションソフトウェアおよび前記第2駅対応アプリケーションソフトウェアの第1駅制御プロセスおよび第2駅制御プロセスの何れかを動作させ、前記第1制御装置および前記第2制御装置を介して前記第1駅現場機器および前記第2駅現場機器を制御可能とし、
前記第1制御装置および前記第2制御装置は、
前記第1駅現場機器および前記第2駅現場機器を制御する駅現場制御装置のフィールドコントローラからなり、
前記第1駅現場機器を設置した側の駅のシステムを構築したあとに、前記第2駅現場機器を設置した側の隣接駅のシステムを構築する場合、
前記第1駅現場機器および前記第2駅現場機器を制御する指令業務を行うCTC中央装置と前記第2駅現場機器との間にCTC駅装置および前記第2駅現場機器の継電連動装置を配置し、
前記継電連動装置は、
前記CTC駅装置と前記第2駅現場機器および前記第1制御装置に接続し、
前記第1制御装置の前記フィールドコントローラとの間で方向回線状態を通信して、当該方向回線状態により単線方向てこ制御を行い、
前記第2駅現場機器を設置した側の隣接駅のシステムを構築したあと、前記継電連動装置と前記第2駅現場機器との接続を切断し、前記第2駅現場機器を前記第2制御装置に接続する
ことを特徴とする連動制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載された連動制御システムにおいて
前記第3制御装置は、
全線区を統合し、各駅をトータル的に管理する線区トータルシステム統合装置のプロセッサからなり、
さらに
前記第1駅対応アプリケーションソフトウェアおよび前記第2駅対応アプリケーションソフトウェアによる前記第1駅制御プロセスおよび前記第2駅制御プロセスが展開される共通メモリを含み、
前記第1駅制御プロセスおよび前記第2駅制御プロセスによる制御内容を結合し、前記方向回線状態を前記第1駅制御プロセスと前記第2駅制御プロセスとの間で通信して前記方向回線状態により単線方向てこ制御を行う
ことを特徴とする連動制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載された連動制御システムにおいて、
前記CTC中央装置と前記第3制御装置との間に前記CTC駅装置を模擬するCTC駅模擬装置を設け、
前記第1駅対応アプリケーションソフトウェアおよび前記第2駅対応アプリケーションソフトウェアは、独立して動作し、上位のメンテナンス用端末からリモートで停止、プログラム更新、起動を可能とした
ことを特徴とする連動制御システム。
【請求項4】
請求項に記載された連動制御システムにおいて、
各駅間の列車状態及び進行方向を示す前記方向回線状態を記憶した共有テーブルを含み、当該共有テーブルにて各駅間の閉そく管理を行い、
前記継電連動装置は、前記隣接駅が既設連動装置である場合には、当該既設連動装置に既設連動装置インターフェース変換機能を実装し、前記第1制御装置の前記フィールドコントローラとの間で前記方向回線状態の通信を可能とした
ことを特徴とする連動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道路線の特定の区間、つまり、複数の線区をトータルで制御するシステムでは、所定の区間を走行する車両の運行を管理する運行管理システムと専用のネットワークシステムと駅毎に設置された連動制御システムをもって駅毎の駅構内や沿線に設置された信号機、転てつ機などの現場機器の制御を行っている。
【0003】
また、複数の駅に設置された各駅の現場機器を1つの連動制御システムで行う集中電子連動装置がある。
【0004】
また、従来の単線線区の閉そく管理、つまり、閉そく制御は、方向てこと駅間を接続する方向回線で行っている。
【0005】
また、従来に関連技術として、特開2018-069971号公報(特許文献1)、特開2015-071390号公報(特許文献2)、特開2005-170174号公報(特許文献3)、特開2013-184545号公報(特許文献4)、などがある。
【0006】
特許文献1には「複数駅を含む線区全体の鉄道車両の進路を安全に確保するための線区集中電子連動装置であって、電子連動論理部と、複数の電子端末であって、前記線区内の各駅の管轄範囲に対応して設けられた電子端末と各駅間の1以上の管轄範囲に対応して設けられた電子端末とを含み、前記線区内の各駅及び各駅間にはそれぞれ現場機器が設けられており、前記各電子端末の管轄範囲内に存する前記現場機器がそれに対応する前記電子端末に接続されてなるものと、前記電子連動論理部と前記複数の電子端末との間で各種のデータを伝送するためのフェールセーフな伝送網とを備え、前記電子連動論理部は、前記線区全体の連動機能を集中管理し、前記伝送網及び前記電子端末を介して線区全体の前記現場機器を遠隔制御するものであることを特徴とする線区集中電子連動装置。」との記載がある。
特許文献2には「電子連動システム1は、連動主装置10と現場端末20それぞれとの間は低頻度の通信を行う疎伝送の通信回線N1で接続し、現場端末20と現場機器40との間や、現場端末20同士は、高頻度の通信を行う密伝送の通信回線N2で接続して構成されている。連動主装置10は、進路構成に係る処理を行うが現場機器40の状態の継続的な常時監視は行わず、現場端末20が現場機器40の状態の監視を行う。」という記載がある(要約書参照)。
特許文献3には「ソフトウェアシミュレーション装置は、装置内にソフトウェア論理ブロック200を有し、ソフトウェア論理ブロック200は、シミュレーションの対象となる各駅の処理(A駅処理220A、B駅処理220B及びC駅処理220C)のソフトウェアが実行される駅プロセス220と、駅プロセス220の各駅処理220A~220Cの起動条件を管理する起動管理プロセス210と、駅プロセス220の各駅処理220A~220Cでの列車検知条件と列車検知結果等の列車制御に要するデータを記憶する共有メモリ250と、を備えている。」という記載がある(要約書参照)。
特許文献4には「複数開発者によって開発される進路制御プログラムの生成方法であって、前記方法は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プロセッサによって実行されるプログラムを格納するメモリとを有する計算機を含む計算機システムにおいて実行され、前記計算機システムは、線路形状及び閉そくを含む線路情報と、前記進路制御プログラムの構成要素である制御ロジックと、を格納するデータベースを有し、前記方法は、前記プロセッサが、前記データベースに格納された線路情報を分割し、開発者の開示レベル及びスキルレベルに応じて、前記分割された線路情報を開発者に割り当てる第1のステップと、前記プロセッサが、前記分割された線路情報に含まれる閉そく及び幾何に、前記データベースに格納された制御ロジックを割り当てる第2のステップと、前記プロセッサが、前記割り当てられた制御ロジックを結合するための情報を補う第3のステップとを含むことを特徴とする進路制御プログラムの生成方法。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-069971号公報
【文献】特開2015-071390号公報
【文献】特開2005-170174号公報
【文献】特開2013-184545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来における集中電子連動装置では、線区全体を1つの駅構内と扱うため、システムの段階的な構築に適さないという課題があった。例えば、段階的にシステムの更新を行う場合、既設システムとの連携が困難でシステム切換に時間を要し、試験時間の確保が困難となる課題がある。
また、単線の閉そくを管理する方向回線を使用する方式では、メタリックケーブル、リレー、電源から構成されている。このため保守性の面で不都合があった。
【0009】
また、特許文献1に記載された線区集中電子連動装置では、連動装置を制御する連動論理部が冗長系の単一構成であり、線区で単一のため、連動論理プログラム(制御プロセス)が停止すると、線区全体の運転に支障を来すという課題があった。また、段階的なシステム導入が困難である。
特許文献1~4では、連動論理を機能単位、駅単位に分割することについては考慮されていない。そのため、「駅間を含む線区全体において鉄道車両の進路を安全に確保し、かつ、効率的な列車運行を図る」、「安全性を確保しつつ、設置や保守に係るコストを削減」、「複数のソフトウェアを1台のPCで効率的に検証することができる」、「分散した開発拠点で、設計作業を分割してソフトウェアを開発する際に、社外へのノウハウの流出を防止」するという効果に留まる。
【0010】
そこで、本発明では、連動論理(駅制御プロセス)を機能単位、駅単位に分割して、プログラム異常に機能単位、駅単位での機能停止を可能とし、つまり、プログラム異常を局所化し、プログラムや制御データのメンテナンスを機能単位、駅単位で行えるようにし、列車運行管理システムによる線区全体の運行を停止することがなく、システム(連動装置など)を段階的に構築することができる技術を提供することを目的とする。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の地点に設けられた第1制御装置と、各駅対応の第2制御装置および第3制御装置と、を有し、各駅対応の第2制御装置および第3制御装置は、第1制御装置と駅現場機器とを接続する通信インターフェースを含み、第1制御装置は、ミドルウェア上で動作する各駅対応の駅制御プロセスを含み、駅制御プロセス間でプロセス通信を可能とし、第1制御装置から通信インターフェースを介して各駅現場機器を制御可能としたものである。
例えば、代表的な本発明の連動制御システムの一つは、
第1の地点に設けられた第1制御装置(プロセッサ、共有メモリを含む線区トータルシステム統合装置)と、各駅対応の第2制御装置(FCを含む現場制御装置)および第3制御装置(FCを含む現場制御装置)、と、前記第1、第2制御装置間の通信を可能とする少なくとも2以上の地点に設けられた通信制御装置(SW-HUB)と、を有し、
前記各駅対応の第2制御装置および第3制御装置(FC)は、
各駅対応の駅現場機器(信号機、転てつ機)と通信可能に接続され、かつ、前記第1制御装置と双方向通信可能に接続された通信インターフェースと、
前記第1制御装置の指令を受けて前記駅現場機器(信号機、転てつ機)を制御する各駅対応の現場機器制御装置(フィールドコントロールFC)を有し、
前記第1制御装置は、
オペレーティングシステムと、当該オペレーティングシステム上で動作するミドルウェアと、当該ミドルウェア上で動作し、前記第2制御装置と1対1で対応付けらされた各駅対応のアプリケーションソフトウェアと、を含み、
前記ミドルウェアは、前記オペレーティングシステムの指令に基づき、前記各駅対応のアプリケーションソフトウェアの何れかにより駅制御アプリケーションプロセスを動作し、前記第2制御装置を介して前記各駅対応の駅現場機器(信号機、転てつ機)を制御可能とする
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、上位の制御装置である線区トータルシステム統合装置側における連動論理(駅制御プロセス)を機能単位、駅単位に分割する構成とすることにより、線区全体の運行管理システムを停止することなく、システムの更新などを段階的に構築できる。
【0013】
また、列車集中制御装置の通信路を使用した運行管理システムによれば、従来、ネットワークが複数層で構成されるため高コストで応答性が低い課題があったが、本発明によれば、例えば、ネットワーク階層、CTC駅装置、連動装置の数を削減し、コストの低減を図ることができ、係る課題を是正することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の連動制御システムの構成を示すブロック図。
図2】線区トータルシステム統合装置(制御装置)のプロセス構成の一例を示す図。
図3】線区トータルシステム統合装置(制御装置)のプロセス構成の他の例を示す図。
図4】線区トータルシステム統合装置のプロセス構成をもとにシステムを段階的に構築する時における単線制御方式の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
【実施例
【0016】
図1は、本発明の連動制御システムの構成を示すブロック図である。
連動制御システムは、上位の地点にある中央制御機器室に設けられた運行管理システム11(PTC:Programed Traffic Control)、線区トータルシステム統合装置12、CTC中央装置13、を含む上位装置1と、下位の地点にある各駅の現場に設置された駅現場機器41(A駅現場機器41A~N駅現場機器41N)を制御する各駅対応の駅現場制御装置31(A駅現場制御装置31A~N駅現場制御装置31N)と、中位の地点に設けられた少なくとも2つ以上の通信制御装置21、を有する。上位装置1には、後述する各駅のCTC駅装置14(図4参照)を模擬するCTC駅擬似装置15を取り込んでもよい。
【0017】
運行管理システム11は、所定の区間を走行する車両の運行を管理するものであり、列車運行ダイヤを作成・管理する情報処理装置(EDP)、列車運行ダイヤをもとに列車集中制御装置(CTC:Centralized Traffic Control/以下、CTC中央装置13と称する)やCTC駅装置14(図4参照)などを一括管理するコンピュータシステムからなる。
【0018】
CTC中央装置13は、図4を参照して後述するが、運行管理システム11からの情報をもとに、路線の一定区間の単位で信号機や分岐器(転てつ機)の連動装置を運転指令所又は列車制御所にて遠隔制御できるようにしたシステムであり、遠隔制御を可能とする通信路(伝送路)を構成する複数の通信制御装置21を有する。CTC中央装置13は、指令業務を行う場所であるCTCセンタに設置されている。
【0019】
線区トータルシステム統合装置12は、指令所に設置され、全線区を統合し、各駅、例えば、A駅~N駅をトータル的に管理するシステムであり、各駅における駅現場機器41を制御する駅現場制御装置31と1対1で対応付けされた各駅対応のアプリケーションソフトウェアによる駅制御プロセスを行うCPUなどのプロセッサ121及び各駅対応のアプリケーションソフトウェアによる駅制御プロセスを展開する共通メモリ122を含む制御装置を有する。プロセッサ121や共通メモリ122は、連動論理部(制御プロセス)を構成する。線区トータルシステム統合装置12の連動論理部(制御プロセス)については後述する。
【0020】
駅現場機器41および駅現場制御装置31は、各駅、つまり、A駅~N駅に対応するA駅現場機器41A~N駅現場機器41NおよびA駅現場制御装置31A~N駅現場制御装置31Nを含む。
【0021】
プロセッサ121は、後述するオペレーティングシステム(OS)、ミドルウェアソフトウェアによるシステム管理プロセス、アプリケーションソフトウェアによる駅制御プロセスを実行する。
【0022】
共通メモリ122は、複数のアプリケーションソフトウェア(OS)のプログラムが同時並行的にアクセスするメモリであり、単線方向てこ制御、つまり、閉そく管理する駅間の列車状態進行方向を示す方向回線の状態を記憶する共有テーブル(図示せず)を含む。
【0023】
通信制御装置21は、少なくとも2つ以上を有し、線区トータルシステム統合装置(制御装置)12との間で制御データ(制御内容)や指令などの送受信を制御するものであり、それぞれ、線区トータルシステム統合装置12のプロセッサ121(制御装置)とネットワーク(通信回線)を接続する。このネットワークとしてCTC中央装置の通信路を使用してもよい。
【0024】
駅現場機器41は、各駅の駅構内や沿線に設置される駅現場機器41A~41Nであり、信号機411A~411Nや転てつ機412A~412Nなどの保安設備の一つである。
なお、大きな駅の場合、1つの駅に複数の連動装置を導入される場合がある。例えば、横浜駅の場合、東海道本線と横須賀線の線区は分離されているが、相互に乗り入れが可能にするため、複数の連動装置が導入されている。
【0025】
駅現場制御装置31は、各駅対応のIOC(入出力コントローラ)、FC(フィールドコントローラ)および通信インターフェース313A~313N(通信IF)を含み、上位の線区トータルシステム統合装置12(制御装置)からの指令を受け、各駅(A駅~N駅)に設置された駅現場機器41A~41N(信号機、転てつ機など)を制御する。
【0026】
通信インターフェース313A~313N(通信IF)は、駅現場機器41と通信可能に接続され、かつ、通信制御装置21と上位にある線区トータルシステム統合装置12(制御装置)との間で双方向通信可能に接続されている。
これにより、線区トータルシステム統合装置12(制御装置)から各駅現場制御装置を介して各駅現場機器を制御することができ、応答性向上を図ることができる。また、通信制御装置も削減することが可能である。
【0027】
図2は、線区トータルシステム統合装置12(制御装置)のプロセス構成の一例を示す図である。
【0028】
線区トータルシステム統合装置12における制御装置(プロセッサ121)は、その連動論理部、つまり、プロセス構成として、ハードウェア120(プロセッサ121、共通メモリ122)上で動作するオペレーションシステム123(OS)、オペレーションシステム123(OS)上で動作するミドルウェア124(システム管理プロセス)、ミドルウェア124(システム管理プロセス)上で動作するアプリケーションソフトウェア125(各駅/A駅~N駅の駅制御プロセス125A~125N)を有する。
【0029】
ハードウェア120は、プロセッサ121/共通メモリ122を含む。
プロセッサ121は、それぞれのアプリケーションソフトウェア125における各制御プロセス(A駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125N)を実行する。
【0030】
また、プロセッサ121は、アプリケーションソフトウェア125の各駅制御プロセス125A~125Nによる制御データ(制御内容)を結合し、不可分操作として共通メモリ122上で処理する。
【0031】
アプリケーションソフトウェア125による各駅制御プロセス125A~125Nは、共通メモリ122で展開される。
【0032】
ミドルウェア124(システム管理プロセス)は、オペレーションシステム123(OS)の指令に基づき、アプリケーションソフトウェア125のA駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125Nの何れか動作する連動制御システムを構成する。
【0033】
アプリケーションソフトウェア125は、通信制御装置21や各駅の現場制御装置31A~31Nなどと1対1で対応付けされている。
つまり、通信制御装置21や各駅の駅現場制御装置31A~31Nなどと1対1で対応付けされたそれぞれのアプリケーションソフトウェア125は、プロセッサ121により動作し、それぞれのアプリケーションソフトウェアによる制御データ(制御内容)を作成する。
それぞれのアプリケーションソフトウェアは、独立して動作するものであって、同一機能を実装している。
【0034】
また、それぞれのアプリケーションソフトウェア125は、異なる機能を実装することも可能である。そして、例えば、上位にある指令所に設置されたメンテナンス用端末(図示せず)からの指令を受けて、リモートで各駅の駅現場制御装置31A~31Nによる駅現場機器41A~41Nの停止やプログラム更新、起動ができるようにする。
【0035】
それぞれのアプリケーションソフトウェア125における駅制御プロセス125A~125N(A駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125N)の、各駅(A駅~N駅)間では、プロセス間通信(Interprocess Communication)、つまり、列車の運転方向を示す方向回線の状態を複数プロセス間で方向回線の状態を示すデータをやりとりする。そして、方向回線の状態をもって、単線方向てこ制御を可能とする。
この方向回線の状態は、例えば、共有メモリの共有テーブルに記憶し、これをもって、駅間の閉そく管理を行う。なお、線区全体を1つの構内として扱い、連動表に記載により方向てこを参照してもよい。連動表は、隣接駅の方向てこ条件を記述する。
【0036】
以上述べたように、ミドルウェア124上でアプリケーションソフトウェア125における各駅対応のA駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125Nを動作させていることから、各駅対応のA駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125Nにて各駅A~NのA駅現場機器41A~N駅現場機器41NやA駅現場制御装置31A~N駅現場制御装置31Nの構築が可能となり、つまり、連動論理(駅制御プロセス)を機能単位、駅単位に分割してシステム構築を行うことができ、線区全体の運行を停止することなく、実施することが可能である。
【0037】
図3は、線区トータルシステム統合装置12(制御装置)のプロセス構成の他の例を示す図である。
【0038】
線区トータルシステム統合装置12は、そのプロセス構成として、ハードウェア120(プロセッサ121、共通メモリ122)上で動作する仮想オペレーションシステム123’(仮想OS)、仮想オペレーションシステム123’(OS)上で動作する各駅(A駅~N駅)の駅OS(A駅OS1241A~N駅OS1241N)、駅OS上で動作する各駅(A駅~N駅)の駅システム管理プロセス(A駅システム管理プロセス1242A~N駅システム管理プロセス1242N)、駅システム管理プロセス(A駅システム管理プロセス1242A~N駅システム管理プロセス1242N)上で動作するアプリケーションソフトウェア125(A駅制御プロセス125A~N駅制御プロセス125N)で構成してもよい。
【0039】
図4は、システムを段階的に構築する場合における単線制御方式の一例を説明する図である。
【0040】
システムを段階的に構築する場合、例えば、A駅のシステムを構築した後にB駅に関するシステムを構築する場合は、B駅現場制御装置31BにB駅継電連動装置315Bを配置し、かつ、指令所におけるCTC中央装置13とB駅現場制御装置31BにおけるB駅現場機器制御装置310BおよびB駅継電連動装置315Bとの間にCTC中央装置13より制御されるCTC駅装置14を配置する。
【0041】
このとき、B駅現場機器制御装置310Bは、スイッチ314BによりB駅現場機器41Bと切り離しておき、B駅現場機器制御装置310Bを構築する。
そして、この間は、CTC中央装置13、CTC駅装置14、B駅継電連動装置315B、B駅現場機器41BのルートでB駅現場機器41Bの制御を可能とする。
【0042】
B駅継電連動装置315Bは、A駅現場制御装置31A側のFC312Aとの間で方向回線の状態通信を行い、A駅現場制御装置31AとB駅現場制御装置31Bとを連動させる。
【0043】
このとき、A駅側が既存連動装置(非継電連動装置)である場合には、既存連動装置側にB駅継電連動装置315Bと間の方向回線の状態通信を可能とするインターフェース(I/F)変換する機能を予め実装しておく。つまり、リレー入出力を既設連動装置インターフェース変換する機能とは、リレー入出力データ(方向回線の状態を示すデータ)を既設連動装置に適したデータに変換する機能である。
本例では、1駅に複数の連動装置を指令所や駅に設置し、相互の排他制御を可能としている。
【0044】
つまり、システムの構築中は、CTC中央装置13、CTC駅装置14、B駅継電連動装置315B、B駅現場機器41Bのルートを利用してB駅現場機器41Bの制御を可能とする。
【0045】
B駅のシステムを構築したあとは、B駅継電連動装置315BとB駅現場機器41Bとの接続を切り離し、B駅現場制御装置31BとB駅現場機器41Bとをスイッチ314Bにより接続する。
【0046】
そして、線区トータルシステム統合装置12におけるハードウェア120(プロセッサ121/共通メモリ122)、オペレーションシステム123(OS)、ミドルウェア124(システム管理プロセス)、アプリケーションソフトウェア125(B駅制御プロセス)、通信制御装置21、駅現場制御装置31(B駅現場制御装置31B)、駅現場機器41(B駅現場機器41B)のルートでB駅現場機器41Bの制御を可能とする。
【0047】
したがって、このようにシステムを構築したあとは、CTC駅装置14やB駅継電連動装置315Bおよびそれらを接続する伝送路は、不要となるので、削除することができ、最終的には、図1に示すような構成を採ることができる。
また、システムの構築は、単一の継電連動装置(B駅継電連動装置315B)をもって複数の駅の連動制御が可能であり、現場側の装置構成を簡略化することができる。
【0048】
上述した実施例によれば、連動制御システムによって、線区トータルを制御するようにしているので、連動装置などの駅設置機器を削減することができる。
また、連動論理部(駅制御プロセス)と制御装置(通信制御部)をネットワークで接続する構成とすることにより、連動装置などの駅設置機器を削減などにより、応答性の低下や導入コスト高を改善し、応答性の向上と導入コストを削減することができる。
また、システムを段階的に構成する場合、他駅に影響しない装置、オペレーションシステム、ミドルウェア、アプリケーションプロセスで安全性を確保することができる。
また、線区トータルシステム統合装置12と各現場制御装置の間にCTC模擬装置15を設け、CTC中央装置13に接続可能とし、各駅のCTC駅装置を模擬してもよい。CTC駅模擬装置15は、線区トータルシステム統合装置12に取り込んでもよい。
【0049】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 連動制御システム
11 運行管理システム
12 線区トータルシステム統合装置
121 プロセッサ
122 共通メモリ
123 オペレーションシステム(OS)
124 ミドルウェア/システム管理プロセス
125 アプリケーションソフトウェア
125A~125N A駅制御プロセス~N駅制御プロセス
13 CTC中央装置
14 CTC駅装置
15 CTC駅模擬装置
21 通信制御装置
31 駅現場制御装置
31A~31N A駅現場制御装置~N駅現場制御装置
41 駅現場機器
41A~41N A駅現場機器~N駅現場機器
411A~411N 信号機
412A~412N 転てつ機
図1
図2
図3
図4