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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ステータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20230911BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/34 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019155276
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021035245
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】和田 昭人
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132359(WO,A1)
【文献】特開2005-143210(JP,A)
【文献】特開2014-178258(JP,A)
【文献】特開2013-158078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/25
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部および前記環状部から内周側へ突出する複数の突極部を備えたステータコアと、前記突極部に巻かれたコイルと、温度センサと、を有し、
前記温度センサは、前記環状部に対して前記ステータコアの軸線方向の一方側に配置される温度検出部を備え
前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、
前記インシュレータは、前記温度検出部の径方向の位置を規制する規制部を備え、
前記規制部は周方向に延びており、
前記温度検出部は線状であり、前記規制部に沿って周方向に延びており、
前記規制部は、周方向に延びる第1壁部と、前記第1壁部の内周側で周方向に延びる第2壁部を備え、前記温度検出部は、前記第1壁部と前記第2壁部との隙間に配置され、
前記インシュレータは、前記第1壁部の前記ステータコア側の端部と前記第2壁部の前記ステータコア側の端部とを接続する延在部を備え、
前記温度検出部の少なくとも一部は、前記延在部に前記軸線方向の一方側から接触し、
前記第1壁部は、周方向に複数配列され、
周方向で隣り合う前記第1壁部の間には、前記第1壁部の内周側と外周側とを連通する引き出し口が設けられ、
前記延在部は、前記第1壁部と接続される接続部を備え、
前記接続部の前記引き出し口側の端縁から、前記引き出し口の前記接続部とは周方向で反対側の開口縁までの距離は、前記温度検出部の長さより長いことを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記第1壁部と前記第2壁部との隙間の径方向の幅は、前記温度検出部全体を直線状にして配置可能な幅であることを特徴とする請求項に記載のステータ。
【請求項3】
前記温度センサは、前記温度検出部に接続されるリード線を備え、
前記リード線は、前記引き出し口から前記第1壁部の外周側へ引き出される際、周方向に対して前記軸線方向の一方側へ傾斜して延びていることを特徴とする請求項に記載のステータ。
【請求項4】
前記温度検出部は、前記第1壁部と前記第2壁部の間に仮固定され、接着剤により固定
されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のステータ。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載のステータと、
前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備えることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、および、ステータを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータコアにコイルを巻いたステータ、および、ステータを備えたモータが開示される。この種のステータを備えたモータでは、コイルからの発熱の影響でコイル線の焼損などの不具合が発生することを防止するため、コイル温度を監視し、検出した温度が上限温度を越えるとコイルへの通電を停止させるなどの制御が行われる。
【0003】
従来から、コイル温度を検出するセンサとして、リード線の先端に温度検出素子を配置したサーミスタが用いられている。サーミスタは、温度検出素子をコイルに接触させるように配置され、接着剤等によって固定される。例えば、ステータコアのティース部(突極部)に巻かれたコイルの外周面に温度検出素子を接触させて接着剤により固定する。
【0004】
特許文献1のモータでは、ステータコアに巻回されるコイルの温度を適正に検出するため、リード線の先端に設けられた温度検出素子をステータコアに設けた挿入孔に挿入している。挿入孔は、ステータコアの環状部(ヨーク部)を径方向に貫通しており、ステータコアのティース部の側面まで延びている。温度検出素子は、挿入孔に外周側から挿入され、ティース部の側面に設けられた開口を介して、ティース部に巻かれたコイルの内周部分に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-223052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイルの外周面に温度検出素子を接触させて固定する場合には、コイルの個体差等により、コイルと温度検出素子との接触の有無がばらついてしまう。コイルと温度検出素子との接触の有無がばらつくと、検出温度がばらつくという問題がある。治具等を用いて温度検出素子とコイルとを確実に接触させることもできるが、治具が必要であり、温度検出素子を取り付ける作業に手間がかかる。
【0007】
一方、特許文献1のように、ステータコアに形成した挿入孔に温度検出用のセンサを配置してコイルの内周面に接触させる場合には、ステータコアに挿入孔を設けるため、ステータコアの構造が複雑化するという問題がある。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コイル温度検出用の温度センサを備えたステータにおいて、温度センサの取付作業が容易で、且つ、検出温度のばらつきが少ない構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のステータは、環状部および前記環状部から内周側へ突出する複数の突極部を備えたステータコアと、前記突極部に巻かれたコイルと、温度センサと、を有し、前記温度センサは、前記環状部に対して前記ステータコアの軸線方向の一方側に配置される温度検出部を備え、前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、前記インシュレータは、前記温度検出部の径方向の位置を規制する規制部を備え、前記規制部は周方向に延びており、前記温度検出部は線状であり、前記規制部に沿って周方向に延びており、前記規制部は、周方向に延びる第1壁部と、前記第1壁部の内周側で周方向に延びる第2壁部を備え、前記温度検出部は、前記第1壁部と前記第2壁部との隙間に配置され、前記インシュレータは、前記第1壁部の前記ステータコア側の端部と前記第2壁部の前記ステータコア側の端部とを接続する延在部を備え、前記温度検出部の少なくとも一部は、前記延在部に前記軸線方向の一方側から接触し、前記第1壁部は、周方向に複数配列され、周方向で隣り合う前記第1壁部の間には、前記第1壁部の内周側と外周側とを連通する引き出し口が設けられ、前記延在部は、前記第1壁部と接続される接続部を備え、前記接続部の前記引き出し口側の端縁から、前記引き出し口の前記接続部とは周方向で反対側の開口縁までの距離は、前記温度検出部の長さより長いことを特徴とする。
【0010】
本発明のステータは、温度センサの温度検出部を、コイルに直接接触する位置でなく、ステータコアの環状部に対して軸線方向の一方側に配置する。このような配置にすることで、コイルの発熱によるステータコアの温度上昇が飽和状態になった段階でステータコアの温度を検出することにより、コイル温度を間接的に検出できる。このような検出方法では、温度検出部とステータコアとの距離のばらつきやステータコアとの接触の有無による検出温度のばらつきは少ない。従って、温度検出部の取付作業が容易でありながら、検出温度のばらつきを少なくすることができる。
【0011】
本発明のステータは、前記ステータコアに取り付けられるインシュレータを備え、前記インシュレータは、前記温度検出部の径方向の位置を規制する規制部を備える。このようにすると、温度検出部の位置を規制できるので、温度検出部の位置決めが容易である。また、温度検出部の位置精度を高めることができるので、検出温度のばらつきを抑制できる。
【0012】
本発明のステータは、前記規制部は周方向に延びており、前記温度検出部は線状であり、前記規制部に沿って周方向に延びている。このように配置すると、温度検出部を変形させずに配置できるので、温度検出部の取付作業が容易である。
【0013】
本発明のステータは、前記規制部は、周方向に延びる第1壁部と、前記第1壁部の内周側で周方向に延びる第2壁部を備え、前記温度検出部は、前記第1壁部と前記第2壁部との隙間に配置される。このようにすると、温度検出部の位置を外周側だけでなく内周側からも規定できるので、温度検出部の径方向の位置を規定できる。
【0014】
本発明において、前記第1壁部と前記第2壁部との隙間の径方向の幅は、前記温度検出部全体を直線状にして配置できる幅であることが好ましい。このようにすると、温度検出部を直線状にして配置できる。従って、温度検出部を変形させずに配置でき、温度検出部の取付作業も容易である。
【0015】
本発明のステータは、前記インシュレータは、前記第1壁部の前記ステータコア側の端部と前記第2壁部の前記ステータコア側の端部とを接続する延在部を備え、前記温度検出部の少なくとも一部は、前記延在部に前記軸線方向の一方側から接触する。このようにすると、延在部と接触させることによって温度検出部の軸線方向の位置を規定できる。従って、温度検出部とステータコアとの距離を規定できる。
【0016】
本発明のステータは、前記第1壁部は、周方向に複数配列され、周方向で隣り合う前記第1壁部の間には、前記第1壁部の内周側と外周側とを連通する引き出し口が設けられ、前記延在部は、前記第1壁部と接続される接続部を備え、前記接続部と前記引き出し口との周方向の距離は、前記温度検出部の長さより長い。このようにすると、接続部と引き出し口との間に温度検出部を曲げずに配置できるので、温度センサをほぼ直線状にして配置できる。
【0017】
本発明において、前記温度センサは、前記温度検出部に接続されるリード線を備え、前記リード線は、前記引き出し口から前記第1壁部の外周側へ引き出される際、周方向に対して前記軸線方向の一方側へ傾斜して延びていることが好ましい。このように、引き出し口から斜めにリード線を引き出すようにした場合には、ステータの軸線方向の一方側もしくは他方側に配置される部材と温度センサとが干渉することを回避できる。
【0018】
本発明において、前記温度検出部は、前記第1壁部と前記第2壁部の間に仮固定され、接着剤により本固定されることが好ましい。このようにすると、温度検出部を仮固定できるので、接着剤により固定する際の作業性が良好である。
【0019】
次に、本発明のモータは、上記のステータと、前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、温度センサの温度検出部を、ステータコアの環状部に対して軸線方向の一方側に配置するので、コイルの発熱によるステータコアの温度上昇が飽和状態になった段階でステータコアの温度を検出することにより、コイル温度を間接的に検出できる。従って、温度検出部とステータコアとの距離のばらつきやステータコアとの接触の有無による検出温度のばらつきは少ないので、温度検出部の取付作業が容易でありながら、検出温度のばらつきを少なくすることができる。また、温度検出部の位置を規制できるので、温度検出部の位置決めが容易である。また、温度検出部の位置精度を高めることができるので、検出温度のばらつきを抑制できる。また、温度検出部を変形させずに配置できるので、温度検出部の取付作業が容易である。さらに、温度検出部の位置を外周側だけでなく内周側からも規定できるので、温度検出部の径方向の位置を規定できる。また、延在部と接触させることによって温度検出部の軸線方向の位置を規定できる。従って、温度検出部とステータコアとの距離を規定できる。加えて、接続部と引き出し口との間に温度検出部を曲げずに配置できるので、温度センサをほぼ直線状にして配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用したステータの斜視図である。
図2図1のステータを備えたモータの断面図である。
図3】インシュレータの斜視図である。
図4図1のステータの平面図およびリード線の引き出し方向の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を適用したステータおよびモータの実施形態を説明する。図1は、本発明を適用したステータの斜視図である。図2は、図1のステータを備えたモータの断面図である。以下の説明では、ステータおよびモータの軸線をLとし、軸線L方向の一方側をL1、他方側をL2とする。また、軸線Lと直交する方向を径方向Yとし、軸線L回りを周方向とし、径方向内側をY1、径方向外側をY2とする。
【0023】
(ステータ)
図1図2に示すように、ステータ1は、環状部11および環状部11から内周側に突出する突極部12を備えるステータコア10と、各突極部12に取り付けられたインシュレータ20と、インシュレータ20を介して各突極部12に巻き回されたコイル30と、コイル30の温度を検出する温度センサ40を有する。ステータコア10は、板状の基材を軸線L方向に重ねた積層コアである。本形態において、突極部12の数は6である。従って、ステータコア10には6個のインシュレータ20が取り付けられている。また、ステータコア10には6個のインシュレータ20を介して、6つのコイル30が巻き回されている。ステータコア10は、周方向に6分割された分割コアを組み立てて構成される。各分割コアの周方向の中央には、突極部12が配置される。
【0024】
(モータ)
図2に示すように、モータ100は、環状のステータ1と、ステータ1の内周側に配置されるロータ2を備える。ロータ2の中心には、出力軸3が配置される。ロータ2の外周面には、図示しないマグネットが配置される。モータ100は、ステータ1が備える各コイル30に給電を行うことにより、ロータ2を軸線L回りに回転させる。本形態において、ロータ2に設けられたマグネットの磁極数は4である。なお、コイル30の数およびロータ2に設けられるマグネットの磁極数は上記の数に限定されるものではなく、他の数であってもよい。
【0025】
モータ100において、ステータ1の軸線L方向の一方側L1および他方側L2には、それぞれ、図示しない軸受部、あるいは、ロータ2の回転位置を検出するセンサ等を配置してもよい。例えば、軸受部として磁気軸受を用いる場合には、ステータ1に軸線L方向の一方側L1から当接する第1磁気軸受ユニット、およびステータ1に軸線L方向の他方側L2から当接する第2磁気軸受ユニットを配置することができる。この場合には、ステ
ータ1と第1磁気軸受ユニットとの間、および、ステータ1と第2磁気軸受ユニットの間に樹脂を浸入させて封止することができる。
【0026】
(インシュレータ)
図3は、インシュレータ20の斜視図である。インシュレータ20は、樹脂製である。インシュレータ20は、突極部12が貫通する筒部21と、筒部21の径方向Yの内側の端から張り出す内側鍔部22を備える。内側鍔部22は軸線L方向および周方向に広がる。内側鍔部22を軸線L方向から見た場合の形状は、軸線Lを中心とする円弧形状である。さらに、各インシュレータ20は、筒部21の径方向外側Y2の端から張り出す外側鍔部23を備える。外側鍔部23は軸線L方向および周方向に広がる。外側鍔部23を軸線L方向から見た場合の形状は、軸線Lを中心とする円弧形状である。図1に示すように、6つのインシュレータ20は、突極部12が筒部21に挿入された状態で、環状に配置されている。周方向で隣り合うインシュレータ20は互いに周方向で当接する。
【0027】
外側鍔部23は、筒部21の径方向外側Y2でステータコア10の環状部11のL1側に重ねられた第1コア覆い部24、および、環状部11のL2側に重ねられた第2コア覆い部25を備える。第1コア覆い部24および第2コア覆い部25のそれぞれは、軸線L方向に延びる第1壁部26と、第1壁部26の径方向内側Y1で軸線L方向に延びる第2壁部27と、ステータコア10の環状部11に沿って径方向Yおよび周方向に延びる延在部28と、を備える。延在部28は、第1壁部26のステータコア10側の端部と、第2壁部27のステータコア10側の端部とを接続する。
【0028】
第2壁部27を軸線L方向から見た場合の形状は、環状部11に沿って周方向に湾曲する円弧形状である。図1に示すように、周方向における第2壁部27の寸法は、周方向におけるコイル30の長さ寸法よりも長い。径方向内側Y1に位置する第2壁部27の径方向の厚さは、径方向外側Y2に位置する第1壁部26の径方向の厚さより厚い。また、図2に示すように、軸線L方向における第2壁部27の高さは、軸線L方向における第1壁部26の高さよりも小さい。周方向で隣り合うインシュレータ20同士は、それぞれの第2壁部27が、互いに当接する。
【0029】
第1壁部26を軸線L方向から見た場合の形状は、第2壁部27と同軸の円弧形状である。第1壁部26は、第2壁部27の外周側を環状部11に沿って周方向に延びている。周方向における第1壁部26の寸法は、周方向における第2壁部27の寸法よりも短い。従って、周方向で隣り合う2つのインシュレータ20の第1壁部26は互いに当接しておらず、一方の第1壁部26と他方の第1壁部26との間には、引き出し口29が形成されている。
【0030】
図3に示すように、各インシュレータ20において、延在部28は、第1壁部26の周方向の中央部分と、第2壁部27の周方向の中央部分とを接続する接続部281を備える。接続部281の周方向の両側には、延在部28の径方向外側の部分を周方向に切り欠いた溝部282が設けられている。図1に示す状態にインシュレータ20を組み立てると、周方向で隣り合うインシュレータ20同士の延在部28が当接し、周方向で隣り合う2つの溝部282が接続されて、周方向に延びる円弧状の開口部283が形成される。引き出し口29は、各開口部283の周方向の中央に位置する。
【0031】
第1コア覆い部24および第2コア覆い部25のそれぞれには、第1壁部26、第2壁部27および延在部28により配線引き回し溝50が区画されている。配線引き回し溝50を軸線L方向から見た場合の平面形状は、環状部11に沿って湾曲する円弧形状である。ここで、配線引き回し溝50の径方向内側Y1に配置される第2壁部27には、コイル線引き出し部(図示せず)が形成されている。コイル30から、第2壁部27のコイル線
引き出し部を通って外周側に引き出されたコイル線(図示せず)は、配線引き回し溝50内を周方向に引き回され、引き出し口29からステータ1の外部へ引き出される。
【0032】
インシュレータ20は、軸線L方向で2つに分割された第1インシュレータ部材20Aおよび第2インシュレータ部材20Bからなる。第1インシュレータ部材20Aと第2インシュレータ部材20Bとは、同一の部材である。すなわち、第1インシュレータ部材20Aを軸線L方向で反転させれば、第2インシュレータ部材20Bとして用いることがでる。
【0033】
(温度センサ)
図4(a)は、図1のステータ1の平面図である、また、図4(b)は、リード線42の引き出し方向の説明図であり、図4(a)のA方向から見た部分側面図である。図1図4(a)に示すように、温度センサ40は、配線引き回し溝50に配置される温度検出部41と、温度検出部41に接続されるリード線42を備える。リード線42は、引き出し口29から図示しないコイル線と共にステータ1の外部へ引き出される。リード線42は、コイル線への通電を制御する制御基板(図示せず)に接続される。例えば、本形態のステータ1を備えたモータ100は、リード線42から温度センサ40の検出信号が入力される制御基板(図示せず)を備えており、温度センサ40の検出信号に基づいてコイル30への通電を制御する。
【0034】
図2に示すように、温度検出部41は、配線引き回し溝50の底部に配置され、ステータコア10の環状部11に対して軸線L方向の一方側L1に配置される。環状部11には、軸線L方向の一方側L1からインシュレータ20の延在部28が当接しており、温度検出部41は、延在部28に軸線L方向の一方側から当接する。また、本形態では、温度検出部41の一部は、延在部28を切り欠いた開口部283に配置される。開口部283には、ステータコア10の環状部11の軸線L方向の端面が露出しているので、温度検出部41は、環状部11の軸線L方向の端面に一部が接触する。従って、温度検出部41は、インシュレータ20の延在部28および環状部11を介してステータコア10の温度を検出することにより、コイル30の温度を間接的に検出する。
【0035】
図4(a)に示すように、温度検出部41は線状であり、第1壁部26の径方向内側Y1において周方向に延びる姿勢で配置される。本形態の温度センサ40はサーミスタであり、温度検出部41は、内部に抵抗素子を備えている。そのため、温度検出部41を曲げずに設置しなければならないので、配線引き回し溝50の幅は、直線状の温度検出部41を曲げずに配置できる寸法に設定されている。すなわち、第1壁部26と第2壁部27との隙間の径方向の幅D(図4(a)参照)は、温度検出部41全体を直線状にして配置することが可能な寸法に設定されている。
【0036】
温度検出部41は、配線引き回し溝50の内側に挿入されることによってインシュレータ20に仮固定される。温度検出部41の先端部分は、第1壁部26の周方向の中央部分に接続されて径方向に延びている接続部281に載るように位置決めされる。リード線42は、温度検出部41の先端部分とは反対側から周方向へ延びて、最も近い引き出し口29からインシュレータ20の外周側へ引き出される。その際、図4(b)に示すように、引き出し口29の外部では、リード線42を斜め上方へ引き出す。すなわち、リード線42は、引き出し口29から周方向の一方側へ向かうに従って軸線L方向の一方側L1へ向かう方向へ引き出されている。
【0037】
図4(a)に示すように、インシュレータ20は、温度検出部41の先端部分が載る接続部281と、リード線42が引き出される引き出し口29との距離S0が、温度検出部41の長さS1よりも長い。従って、曲げ禁止部分である温度検出部41の長さが、温度
検出部41が配置される部分である接続部281からリード線42の引き出し位置である引き出し口29までの距離よりも短いので、温度検出部41およびリード線42をほぼ直線状にして配置することが可能になっている。
【0038】
ステータ1を製造する際には、温度検出部41を配線引き回し溝50に挿入して仮固定した状態で、配線引き回し溝50に接着剤を充填することにより、温度検出部41を本固定する。なお、配線引き回し溝50には、温度検出部41だけでなくコイル30から引き出されたコイル線(図示せず)も配置されるので、温度検出部41と共にコイル線を接着剤で固定する。接着剤は、例えば、熱硬化性の接着剤を用いることができる。例えば、本形態では、エポキシ系の熱硬化型接着剤を配線引き回し溝50に充填して温度検出部41を固定する。
【0039】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のステータ1は、環状部11および環状部11から内周側へ突出する複数の突極部12を備えたステータコア10と、突極部12に巻かれたコイル30と、温度センサ40と、を有する。温度センサ40は、環状部11に対してステータコア10の軸線L方向の一方側L1に配置される温度検出部41を備える。
【0040】
本形態では、このように、コイル温度を検出するための温度検出部41を、コイル30に直接接触する位置でなく、ステータコア10の環状部11に対して軸線L方向の一方側L1に配置する。このような配置にすることで、コイル30の発熱によるステータコア10の温度上昇が飽和状態になった段階でステータコア10の温度を検出することにより、コイル温度を間接的に検出できる。このように、ステータコア10の軸線L方向の端面を介して間接的にコイル温度を検出する方法では、温度検出部41とステータコア10との距離のばらつきやステータコア10との接触の有無による検出温度のばらつきが少ない。従って、温度検出部41の取付が容易でありながら、検出温度のばらつきが少ない。
【0041】
また、本形態では、ステータコア10に温度検出部41を挿入する挿入孔を形成するなどの加工を施す必要がなく、ステータコア10の構造が複雑化することを回避できる。また、治具を用いて温度検出部41をコイル30に対して確実に接触させるように位置決めする必要がない。従って、温度センサ40の取付作業が容易である。
【0042】
なお、温度検出部41全体を、ステータコア10の軸線L方向の端面に直接接触させるように配置してもよい。例えば、本形態では、インシュレータ20には、ステータコア10の軸線L方向の端面の一部を露出させる開口部283が設けられているので、開口部283に温度検出部41全体を配置して、温度検出部41全体をステータコア10の端面に接触させることができる。
【0043】
本形態では、ステータコア10に取り付けられるインシュレータ20を備え、インシュレータ20は、温度検出部41の径方向の位置を規制する規制部(第1壁部26、第2壁部27)を備える。従って、温度検出部41の径方向の位置を規制できるので、温度検出部41の位置決めが容易である。また、温度検出部41の位置精度を高めることができるので、検出温度のばらつきを抑制できる。
【0044】
本形態では、規制部(第1壁部26、第2壁部27)は周方向に延びている。また、温度検出部41は線状であり、規制部に沿って周方向に延びる姿勢で配置される。このようにすれば、温度検出部41を曲げずに配置できるので、温度検出部41の取付作業が容易である。
【0045】
本形態では、温度検出部41の径方向の位置を規制する規制部として、周方向に延びる
第1壁部26と、第1壁部26の内周側で周方向に延びる第2壁部27を備えており、温度検出部41は、第1壁部26と第2壁部27との隙間に配置される。従って、温度検出部41の位置を外周側だけでなく内周側からも規定できるので、温度検出部41の径方向の位置を規定できる。
【0046】
本形態では、円弧状に延びる第1壁部26と第2壁部27との隙間の径方向の幅Dは、温度検出部41全体を直線状にして配置可能な寸法になっている。従って、線状の温度検出部41をほぼ直線状にして配置できるので、温度検出部41を曲げることができない温度センサ40を用いる場合に適している。
【0047】
本形態のインシュレータ20は、第1壁部26のステータコア10側の端部と第2壁部27のステータコア10側の端部とを接続する延在部28を備えており、延在部28は、ステータコア10の軸線L方向の端面に当接する。そして、温度検出部41は、少なくとも一部が延在部28に軸線L方向の一方側L1から接触する。従って、規制部(第1壁部26、第2壁部27)によって温度検出部41の径方向の位置を規定できるのに加えて、温度検出部41の軸線L方向の位置を規定できる。これにより、温度検出部41とステータコア10との距離を規定できるので、検出温度のばらつきを抑制できる。
【0048】
本形態では、第1壁部26は、周方向に複数配列され、周方向で隣り合う第1壁部26の間には、第1壁部26の内周側と外周側とを連通する引き出し口29が設けられている。また、延在部28には、第1壁部26のステータコア10側の端部と接続される接続部281が設けられており、接続部281と引き出し口29との距離S0が温度検出部41の長さS1よりも長い。従って、引き出し口29と接続部281との間で温度検出部41を曲げずに配置できるので、温度センサ40をほぼ直線状にして配置できる。
【0049】
本形態では、温度センサ40は、温度検出部41に接続されるリード線42を備え、リード線42は、引き出し口29から第1壁部26の外周側へ引き出される際、軸線L方向の一方側L1へ向かう方向へ傾斜して延びている。このように、引き出し口29から斜め上方へリード線42を引き出すことにより、ステータ1の軸線L方向の一方側L1および他方側に配置される部材(例えば、磁気軸受ユニットやセンサユニット)と温度センサ40とが干渉することを回避できる。
【0050】
本形態では、第1壁部26および第2壁部27は、温度検出部41の径方向の位置を規定できるので、温度検出部41を取り付ける際、第1壁部26および第2壁部27の間に温度検出部41を仮固定することができる。そして、仮固定後に温度検出部41を接着剤で本固定することにより、温度検出部41を固定する際の作業性を良好にすることができる。
【0051】
なお、第1壁部26と第2壁部27の間に温度検出部41を挟んで保持できるように、第1壁部26と第2壁部27との隙間の径方向の幅Dを設定することもできる。この場合には、温度検出部41がずれにくくなるので、温度検出部41を本固定する際の作業性をより良好にすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ステータ、2…ロータ、3…出力軸、10…ステータコア、11…環状部、12…突極部、20…インシュレータ、20A…第1インシュレータ部材、20B…第2インシュレータ部材、21…筒部、22…内側鍔部、23…外側鍔部、24…第1コア覆い部、25…第2コア覆い部、26…第1壁部、27…第2壁部、28…延在部、29…引き出し口、30…コイル、40…温度センサ、41…温度検出部、42…リード線、50…配線引き回し溝、100…モータ、281…接続部、282…溝部、283…開口部、D…第
1壁部と第2壁部との隙間の径方向の幅、L…ステータの軸線、L1…一方側、L2…他方側、S0…接続部と引き出し口との距離、S1…温度検出部の長さ、Y…径方向、Y1…径方向内側、Y2…径方向外側
図1
図2
図3
図4