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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230911BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230911BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L21/607 A
H01L25/04 C
H01L23/48 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019161843
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040085
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】川城 史義
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-040615(JP,A)
【文献】特開2009-044152(JP,A)
【文献】特開2013-051366(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033504(WO,A1)
【文献】特開2010-177608(JP,A)
【文献】特開2013-089784(JP,A)
【文献】特開2009-081289(JP,A)
【文献】特開2003-037260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
H01L 25/07
H01L 25/18
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の上に設けられた半導体チップと、
前記基体の上に設けられた第1超音波接合部を介して前記半導体チップと電気的に接続され、前記半導体チップと対向する第1面を有する第1端子板と、
前記第1面に設けられ第1粘着剤を含む第1粘着層と、
前記基体の上に設けられ、前記第1端子板の上に設けられ前記第1端子板と対向する第2面を有する第2端子板と、
前記第2面に設けられ第2粘着剤を含む第2粘着層と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第2端子板は、前記基体の上に設けられた第2超音波接合部を介して前記半導体チップと電気的に接続されている、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップは、第1電極と、第2電極と、第1制御電極と、を有し、
前記第1端子板は前記第1電極に電気的に接続され、
前記第2端子板は前記第2電極に電気的に接続されている、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップは、第1電極と、第2電極と、第1制御電極と、を有し、
前記第1端子板は前記第1制御電極に電気的に接続され、
前記第2端子板は前記第1電極又は前記第2電極に電気的に接続されている、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1粘着層に、前記第1超音波接合部に含まれる金属材料を含む金属片が付着している請求項1乃至請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1粘着剤はアクリル系粘着剤を含む請求項1乃至請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1粘着剤はシロキサンを含まない請求項1乃至請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基体は、絶縁板と、前記絶縁板の上に設けられた金属板と、を有し、
前記半導体チップは前記金属板の上に設けられており、
前記半導体チップの設けられていない前記金属板の部分の上に設けられ、第3粘着剤を含む第3粘着層をさらに備える請求項1乃至請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電や送電、ポンプやブロアなどの回転機、通信システムや工場などの電源装置、交流モータによる鉄道、電気自動車、家庭用電化製品等の幅広い分野に向けた、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の、電力制御用に設計されたパワー半導体チップの開発が行われている。
【0003】
また、かかるパワー半導体チップを用いた、パワーモジュールとしての半導体装置の開発が行われている。このような半導体装置には、高電流密度化、低損失化、高放熱化等のスペックが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4371151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性の高い半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、基体と、基体の上に設けられた半導体チップと、基体の上に設けられた第1超音波接合部を介して半導体チップと電気的に接続され、半導体チップと対向する第1面を有する第1端子板と、第1面に設けられ第1粘着剤を含む第1粘着層と、基体の上に設けられ、第1端子板の上に設けられ第1端子板と対向する第2面を有する第2端子板と、第2面に設けられ第2粘着剤を含む第2粘着層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2】第1実施形態の第1半導体チップ及び第2半導体チップの模式図である。
図3】第1実施形態の電力変換装置の模式回路図である。
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態の比較形態となる半導体装置の模式断面図である。
図6】第2実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材には同一の符号を付す場合がある。また、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態の半導体装置は、基体と、基体の上に設けられた半導体チップと、基体の上に設けられた第1超音波接合部を介して半導体チップと電気的に接続され、半導体チップと対向する第1面を有する第1端子板と、第1面に設けられ第1粘着剤を含む第1粘着層と、を備える。
【0011】
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。
【0012】
半導体装置100は、ベース材2と、第1絶縁板12と、第2絶縁板14と、第1金属板16と、第2金属板18と、第3金属板20と、第4金属板22と、第5金属板24と、第1半導体チップ26と、第2半導体チップ28と、第1接合材30と、第2接合材32と、第3接合材34と、第4接合材36と、ボンディングワイヤ38aと、ボンディングワイヤ38bと、第1超音波接合部50と、第2超音波接合部52と、第3超音波接合部54と、第1粘着層60と、第2粘着層62と、第3粘着層64と、第1金属片70と、第2金属片72と、第3金属片74と、放熱板80と、サーマルインターフェースマテリアル(TMI:Thermal Interface Material)82と、ケース84と、封止材(ゲル)86と、蓋88と、第1端子板90と、第2端子板92と、第3端子板94と、ネジ96と、ワッシャー98と、を備える。
【0013】
放熱板80は、下部にフィン81を有する。放熱板80は、後述する半導体チップ等から発生した熱を放熱するために用いられる。
【0014】
ベース材2は、放熱板80の上に設けられている。ベース材2は、Cu(銅)又はAl(アルミニウム)等の金属で形成されている。なお、ベース材2は、Cu系の合金、Al系の合金又はその他の合金で形成されていても良い。また、ベース材2は、例えばCu板材の表面にNi(ニッケル)等によるめっきがされたものであっても良い。
【0015】
第1基体40(基体の一例)は、第5金属板24と、第2絶縁板14と、第1金属板16と、第2金属板18と、を有する。
【0016】
第5金属板24は、ベース材2の上に、例えば第4接合材36を用いて接合されている。第2絶縁板14は、第5金属板24の上に設けられている。第1金属板16及び第2金属板18は、第2絶縁板14の上に設けられている。
【0017】
第2基体42は、第4金属板22と、第1絶縁板12と、第3金属板20と、を有する。
【0018】
第4金属板22は、ベース材2の上に、例えば第2接合材32を用いて接合されている。第1絶縁板12は、第4金属板22の上に設けられている。第3金属板20は、第1絶縁板12の上に設けられている。
【0019】
第1絶縁板12及び第2絶縁板14は、例えばAlN(窒化アルミニウム)やSiN(窒化シリコン)、Al(酸化アルミニウム(アルミナ))等で形成された板材である。
【0020】
第1金属板16、第2金属板18、第3金属板20、第4金属板22、及び第5金属板24は、例えばCu(銅)で形成された金属板であり、回路配線として用いられる。例えば、第3金属板20及び第4金属板22は、第1絶縁板12の表面に、図示しないろう材等を用いて接合されている。第3金属板20は、第1絶縁板12の一方の表面に接合されている。第4金属板22は、第1絶縁板12の他方の表面に接合されている。例えば、第1金属板16、第2金属板18及び第5金属板24は、第2絶縁板14の表面に、図示しないろう材等を用いて接合されている。例えば、第1金属板16及び第2金属板18は、第2絶縁板14の一方の表面に接合されている。第5金属板24は、第2絶縁板14の他方の表面に接合されている。
【0021】
図2は、本実施形態の第1半導体チップ26(半導体チップの一例)及び第2半導体チップ28の模式図である。図2(a)は、本実施形態の第1半導体チップ26の模式上面図である。図2(b)は、図2(a)のA-A’断面における本実施形態の第1半導体チップ26の模式断面図である。図2(c)は、本実施形態の第2半導体チップ28の模式上面図である。図2(d)は、図2(c)のB-B’断面における本実施形態の第2半導体チップ28の模式断面図である。
【0022】
第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28は、例えば、Si(シリコン)を用いたSi-IGBTである。第1半導体チップ26は、第1エミッタ電極27a(第1電極の一例)と、第1コレクタ電極27b(第2電極の一例)と、第1ゲート電極27c(第1制御電極の一例)を有する。例えば、第1エミッタ電極27a及び第1ゲート電極27cは第1半導体チップ26の上面に、第1コレクタ電極27bは第1半導体チップ26の下面に設けられている。第2半導体チップ28は、第2エミッタ電極29aと、第2コレクタ電極29bと、第2ゲート電極29cと、を有する。例えば、第2エミッタ電極29a及び第2コレクタ電極29bは第2半導体チップ28の上面に、第2コレクタ電極29bは第2半導体チップ28の下面に設けられている。
【0023】
なお、第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28は、Si-MOSFET、Si-FRD(Fast Recovery Diode)、SiC(炭化珪素)を用いたSiC-IGBT、SiC-MOSFET又はSiC-SBD(Schottky Barrier Diode)、又はIII-V族半導体においてV族元素が窒素である窒化物半導体を用いたGaN-MOSFET等であってもかまわない。
【0024】
図1において、第1半導体チップ26は、第2金属板18の上に、例えば第3接合材34を用いて接合されている。ボンディングワイヤ38bは、第1半導体チップ26及び第2金属板18の上に設けられている。そして、ボンディングワイヤ38bは、第1エミッタ電極27a、第1コレクタ電極27b又は第1ゲート電極27cと第2金属板18を、電気的に接続している。ボンディングワイヤ38bは、例えばAl(アルミニウム)で形成され、Alを含む。
【0025】
図1において、第2半導体チップ28は、第3金属板20の上に、例えば第1接合材30を用いて接合されている。ボンディングワイヤ38aは、第2半導体チップ28及び第3金属板20の上に設けられている。そして、ボンディングワイヤ38aは、第2エミッタ電極29a、第2コレクタ電極29b又は第2ゲート電極29cと第3金属板20を、電気的に接続している。ボンディングワイヤ38aは、例えばAl(アルミニウム)で形成され、Alを含む。
【0026】
第1接合材30、第2接合材32、第3接合材34及び第4接合材36は、例えば、はんだである。第1接合材30、第2接合材32、第3接合材34及び第4接合材36としては、例えば、Pb(鉛)、Ag(銀)又はSn(スズ)を用いた、組成がPb95Sn又はPb95Ag1.5Sn3.5等で、融点が330℃程度のはんだ、Sn及びSb(アンチモン)を用いた、組成がSnSb系で融点が240℃程度のはんだ、Au(金)とSnを用いた融点が280℃程度のAuSn系のはんだ、AuとSiを用いた融点が360℃程度のAuSi系のはんだ、又はAuとGe(ゲルマニウム)を用いた融点が360℃程度のAuGe系のはんだを適宜用いることができる。なお、第1接合材30、第2接合材32、第3接合材34及び第4接合材36は、上述のはんだに限定されるものではなく、例えば他の焼結材等であってもかまわない。
【0027】
半導体装置100が有する半導体チップの数は、上記の通り、第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28の2個である。しかし、半導体チップの数はこれに限定されるものではない。例えば、半導体装置100が有する半導体チップの数は、50個以上であっても良い。
【0028】
ケース84は、例えば樹脂で形成されており、例えばベース材2の上に、第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28を取り囲むように設けられている。ケース84は、ネジ96及びワッシャー98を用いて、ベース材2の上に固定される。ケース84内には公知の封止材(ゲル)86が封入されて封止される。封止材86(ゲル)の上には蓋88が配置されている。
【0029】
サーマルインターフェースマテリアル(TMI:Thermal Interface Material)82は、ベース材2と放熱板80の間に設けられている。サーマルインターフェースマテリアル82は、例えばグリース状の部材である。サーマルインターフェースマテリアル82は、放熱板80の上に塗布される。そして、その上にベース材2が、サーマルインターフェースマテリアル82と接触した状態で配置される。サーマルインターフェースマテリアル82は、ベース材2と放熱板80の間における小さな隙間や凸凹を埋めることにより、第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28で発生した熱を効率良く放熱板80に伝達する。
【0030】
第1端子板90の一端は、第2金属板18の上に、超音波接合法により形成された第1超音波接合部50を用いて接続されている。そして、第1端子板90の一端は、第1超音波接合部50を介して、第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27a、第1コレクタ電極27b又は第1ゲート電極27cと電気的に接続されている。
【0031】
第1端子板90は、第1半導体チップ26と対向する第1面90aを有する。そして、第1端子板90の他端は、ケース84の外部に設けられている。
【0032】
第2端子板92の一端は、第1金属板16の上に、超音波接合法により形成された第2超音波接合部52により接合されている。そして、第2端子板92の一端は、第2超音波接合部52を介して、第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27a、第1コレクタ電極27b又は第1ゲート電極27cと電気的に接続されている。
【0033】
第2端子板92は、第1端子板90の上に設けられ、第1端子板90と対向する第2面92aを有する。そして、第2端子板92の他端は、ケース84の外部に設けられている。
【0034】
第3端子板94の一端は、第3金属板20の上に、超音波接合法により形成された第3超音波接合部54を用いて接続されている。そして、第3端子板94の一端は、第3超音波接合部54を介して、第2半導体チップ28の第2エミッタ電極29a、第2コレクタ電極29b又は第2ゲート電極29cと電気的に接続されている。
【0035】
第3端子板94は、第2半導体チップ28と対向する第3面94aを有する。そして、第3端子板94の他端は、ケース84の外部に設けられている。
【0036】
第1端子板90、第2端子板92及び第3端子板94は、例えば板金を用いて、例えば厚さ1mm以上1.5mm以下程度のCu製の板を成型することにより、一体の部品として形成されることが、簡易に作成できるため好ましい。しかし、第1端子板90、第2端子板92及び第3端子板94の製造方法は、これに限定されるものではない。
【0037】
第1超音波接合部50には、第1端子板90及び第2金属板18に含まれる金属材料が、含まれる。例えば、第1端子板90及び第2金属板18がCuで形成されている場合には、第1超音波接合部50にはCuが含まれる。
【0038】
第2超音波接合部52には、第2端子板92及び第1金属板16に含まれる金属材料が、含まれる。例えば、第2端子板92及び第1金属板16がCuで形成されている場合には、第2超音波接合部52にはCuが含まれる。
【0039】
第3超音波接合部54には、第3端子板94及び第3金属板20に含まれる金属材料が、含まれる。例えば、第3端子板94及び第3金属板20がCuで形成されている場合には、第3超音波接合部54にはCuが含まれる。
【0040】
図3は、本実施形態の電力変換装置200の模式回路図である。実施形態の電力変換装置200は、インバータ回路である。そして、実施形態の半導体装置100は、電力変換装置200の一部又は電力変換装置200として用いられるものである。
【0041】
電力変換装置200は、互いに並列に接続された複数のハイサイドトランジスタ222a、222b及び222cと、互いに並列に接続された複数のローサイドトランジスタ224a、224b及び224cと、を有している。そして、ハイサイドトランジスタ222aとローサイドトランジスタ224aは直列に接続されている。同様に、ハイサイドトランジスタ222bとローサイドトランジスタ224bは直列に、ハイサイドトランジスタ222cとローサイドトランジスタ224cは直列に接続されている。
【0042】
ハイサイドトランジスタ222a、222b及び222c、ローサイドトランジスタ224a、224b及び224cは、例えばIGBTであるが、MOSFET等であっても良い。なお、ハイサイドトランジスタ222a、222b及び222cの個数と、ローサイドトランジスタ224a、224b及び224cの個数は、特に限定されるものではない。ハイサイドトランジスタ222a、222b及び222c、ローサイドトランジスタ224a、224b及び224cとして、第1半導体チップ26又は第2半導体チップ28が用いられる。
【0043】
ハイサイドトランジスタ222a、222b及び222cには、直流電源210の正極212及び平滑キャパシタ220の一端が、正端子Pを介して接続されている。ローサイドトランジスタ224a、224b及び224cには、直流電源210の負極214及び平滑キャパシタ220の他端が、負端子Nを介して接続されている。
【0044】
出力端子AC(U)はハイサイドトランジスタ222aとローサイドトランジスタ224aの間に、出力端子AC(V)はハイサイドトランジスタ222bとローサイドトランジスタ224bの間に、そして出力端子AC(W)はハイサイドトランジスタ222cとローサイドトランジスタ224cの間に接続されている。
【0045】
例えば、第1端子板90が第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27aと電気的に接続され、第2端子板92が第1半導体チップ26の第1コレクタ電極27bと電気的に接続されている場合、又は第1端子板90が第1半導体チップ26の第1コレクタ電極27bと電気的に接続され、第2端子板92が第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27aと電気的に接続されている場合は、第1半導体チップ26により変換された電力は、第1端子板90及び第2端子板92を用いてケース84外に設けられた負荷等に接続されて用いられることができる。このように、第1端子板90及び第2端子板92は、出力端子ACとしての主端子板として機能し得る。
【0046】
また、例えば、第1端子板90が第1半導体チップ26の第1ゲート電極27cと電気的に接続され、第2端子板92が第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27a又は第1コレクタ電極27bと電気的に接続されている場合は、第1端子板90の他端は図示しないゲートドライブ回路に接続される。そして、ゲートドライブ回路により生成された信号により、第1半導体チップ26が制御される。このように、第1端子板90は、信号端子としても機能し得る。
【0047】
また、例えば、第1端子板90が第1半導体チップ26の第1エミッタ電極27a又は第1コレクタ電極27bと電気的に接続され、第2端子板92が第1半導体チップ26の第1ゲート電極27cと電気的に接続されている場合は、第2端子板92の他端は図示しないゲートドライブ回路に接続される。そして、ゲートドライブ回路により生成された信号により、第1半導体チップ26が制御される。このように、第2端子板92は、信号端子としても機能し得る。
【0048】
例えば、第3端子板94が第2半導体チップ28の第2エミッタ電極29a又は第2コレクタ電極29bと電気的に接続されている場合には、第2半導体チップ28により変換された電力は、第3端子板94を用いてケース84外に設けられた負荷等に接続されて用いられることができる。このように、第3端子板94は、出力端子ACとしての主端子板として機能し得る。
【0049】
また、例えば、第3端子板94が第2半導体チップ28の第2ゲート電極29cと電気的に接続されている場合は、第3端子板94の他端は図示しないゲートドライブ回路に接続される。そして、ゲートドライブ回路により生成された信号により、第2半導体チップ28が制御される。このように、第3端子板94は、信号端子としても機能し得る。
【0050】
第1粘着層60は、第1端子板90の第1面90aに設けられている。第1粘着層60としては、例えば、ポリイミドフィルムを用いたテープ材の粘着層を好ましく用いることができる。例えば、両方の面に粘着層が設けられたポリイミドフィルムを用いたテープ材を用い、一方の面に設けられた粘着層を用いてテープ材を第1面90aに固定し、他方の面に設けられた粘着層を第1粘着層60として用いることができる。しかし、第1粘着層60としてはこれに限定されるものではなく、例えば所定の粘着剤を第1面90aに塗布して、第1粘着層60として用いてもかまわない。
【0051】
ポリイミドフィルムは、後述するリフロー炉内の熱に耐えられるため、好ましく用いられる。なお、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材を用いたフィルムやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)材を用いたフィルム等も、好ましく用いることができる。
【0052】
第1粘着層60は、第1粘着剤を含む。第1粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。第1粘着剤は、シロキサンを含まないことが好ましい。
【0053】
第2粘着層62は、第2端子板92の第2面92aに設けられている。第2粘着層62としては、例えば、ポリイミドフィルムを用いたテープ材の粘着層を好ましく用いることができる。例えば、両方の面に粘着層が設けられたポリイミドフィルムを用いたテープ材を用い、一方の面に設けられた粘着層を用いてテープ材を第2面92aに固定し、他方の面に設けられた粘着層を第2粘着層62として用いることができる。しかし、第2粘着層62としてはこれに限定されるものではなく、例えば所定の粘着剤を第2面92aに塗布して、第2粘着層62として用いてもかまわない。
【0054】
第2粘着層62は、第2粘着剤を含む。第2粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。第2粘着剤は、シロキサンを含まないことが好ましい。
【0055】
第3粘着層64は、第3端子板94の第3面94aに設けられている。第3粘着層64としては、例えば、ポリイミドフィルムを用いたテープ材の粘着層を好ましく用いることができる。例えば、両方の面に粘着層が設けられたポリイミドフィルムを用いたテープ材を用い、一方の面に設けられた粘着層を用いてテープ材を第3面94aに固定し、他方の面に設けられた粘着層を第3粘着層64として用いることができる。しかし、第3粘着層64としてはこれに限定されるものではなく、例えば所定の粘着剤を第3面94aに塗布して、第3粘着層64として用いてもかまわない。
【0056】
第3粘着層64は、第3粘着剤を含む。第3粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。第3粘着剤は、シロキサンを含まないことが好ましい。
【0057】
第1粘着層60、第2粘着層62及び第3粘着層64には、それぞれ第1金属片70、第2金属片72及び第3金属片74が付着している。第1金属片70、第2金属片72及び第3金属片74は、第1超音波接合部50、第2超音波接合部52又は第3超音波接合部54に含まれる金属材料を含む。
【0058】
図4は、本実施形態の半導体装置100の製造方法を示すフローチャートである。
【0059】
まず、「ダイマウント」として、第4金属板22及び第3金属板20が接合された第1絶縁板12を準備する。次に、第3金属板20と第2半導体チップ28を、第1接合材30を用いて接合する。また、第5金属板24、第1金属板16及び第2金属板18が接合された第2絶縁板14を準備する。次に、第2金属板18と第1半導体チップ26を、第3接合材34を用いて接合する。これらの接合は、例えば、公知のリフロー炉内で行われる(S10)。
【0060】
次に、「ワイヤボンディング」として、ボンディングワイヤ38aを用いて、第2半導体チップ28と第3金属板20を電気的に接続する。また、ボンディングワイヤ38bを用いて、第1半導体チップ26と第2金属板18を電気的に接続する(S20)。
【0061】
次に、「電気選別」として、第1半導体チップ26及び第2半導体チップ28の電気特性を、例えば市販の半導体テスタを用いて、テストを行う(S30)。
【0062】
次に、「ベース付」として、ベース材2の上面と第4金属板22を、第2接合材32を用いて接合する。また、ベース材2の上面と第5金属板24を、第4接合材36を用いて接合する。(S40)。
【0063】
次に、「基板間ワイヤボンディング」として、第1半導体チップ26と第2半導体チップ28を、適宜、図示しないボンディングワイヤを用いて電気的に接続する(S50)。
【0064】
次に、「ケース付」として、ベース材2の上に、第1半導体チップ26、第2半導体チップ28を取り囲むように、ケース84を配置する。そして、例えばネジ96及びワッシャー98を用いて、ケース84をベース材2の上に固定する(S60)。
【0065】
次に、「信号端子接合」として、例えば第1端子板90が第1半導体チップ26の第1ゲート電極27cに電気的に接合される場合には、超音波接合法を用いて第1端子板90と第2金属板18を接合して、第1超音波接合部50を形成する。これにより、第1端子板90と第1半導体チップ26の第1ゲート電極27cを電気的に接続する(S70)。
【0066】
次に、「エアブロー」として、市販のエアガン等を用いて空気を吹き付けることにより、第1端子板90と第2金属板18の接合により生じた金属片を取り除く。なおこのときに、あわせて市販の加振機等を用いて加振する(振動させる)ことにより、第1端子板90と第2金属板18の接合により生じた金属片を除去しても良い。また、上記の空気の吹き付けや加振は、製造途中の半導体装置の向きをひっくり返して行っても良い(S80)。
【0067】
次に、「主端子板1接合」(S90)と「エアブロー」(S100)、「主端子板2接合」(S110)と「エアブロー」(S120)、「主端子板3接合」(S130)と「エアブロー」(S140)として、「信号端子接合」(S70)及び「エアブロー」(S80)と同様のプロセスを繰り返して、超音波接合法を用いて第2端子板92と第1金属板16を接合して、第2超音波接合部52を形成する。また、超音波接合法を用いて第3端子板94と第3金属板20を接合して、第3超音波接合部54を形成する。
【0068】
次に、「ゲル封止」として、ケース84内を、封止材(ゲル)86により封止する。そして、封止材86の上に蓋88を配置する(S150)。これにより、パワーモジュールとしての半導体装置100を得る。
【0069】
以下、本実施形態の半導体装置の作用効果を記載する。
【0070】
図5は、本実施形態の比較形態となる半導体装置800の模式断面図である。半導体装置800においては、第1粘着層60、第2粘着層62及び第3粘着層64が設けられていない。
【0071】
端子板と金属板の接合は、従前ははんだにより行われていた。しかし、本実施形態の半導体装置のように大きな電流が流れるためそれに伴う発熱が大きくなる場合は、はんだが熱で溶けてしまうことがある。そこで、超音波接合法を用いて端子板と金属板を接合して、熱によりはんだが溶けることを防止することが行われていた。
【0072】
しかし、超音波接合法を用いる場合には、端子板と金属板を互いにこすりつけて接合をするために、端子板及び金属板に含まれる屑が、金属片として生じ得る。金属片は半導体装置内のどの部分に滞留するかわからない。このため、上記の金属片に起因して、半導体装置に流れる電流のリーク、ショート、又は絶縁不良が生じ得ることが問題となっていた。
【0073】
また、上述の金属片を除去するために、「エアブロー」、「加振」、水系洗浄液等の洗浄液を用いた洗浄をおこなっても、うまく除去できないことが問題となっていた。上記のように半導体装置内の半導体チップの数は、50個以上と、大変多くなることがある。これは、半導体装置100の電流定格をできるだけ大きくするためである。しかし、半導体チップの数が増加すると、端子板の数も増加し、金属片が端子板にひっかかって除去されづらくなる。特に、図1に示したように、第1端子板90の上に第2端子板92が覆い被さるような構造となる場合には、ますます金属片の除去が困難になるという問題があった。
【0074】
そこで、本実施形態の半導体装置100においては、第1端子板90の、第1半導体チップ26と対向する第1面90aに、第1粘着層60を設ける。また、第2端子板92の、第1端子板90と対向する第2面92aに、第2粘着層62を設ける。さらに、第3端子板94の、第2半導体チップ28と対向する第3面94aに、第3粘着層64を設ける。これにより、第1粘着層60、第2粘着層62及び第3粘着層64に金属片を付着させて、半導体装置に流れる電流のリーク、ショート、又は絶縁不良を抑制することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置の提供が可能となる。
【0075】
アクリル系粘着剤は強い粘着力を有するため、第1粘着剤、第2粘着剤及び第3粘着剤として好ましく用いられる。一方、第1粘着剤、第2粘着剤及び第3粘着剤は、シロキサンを含まないことが好ましい。良好に粘着が行われないことがあるためである。
【0076】
本実施形態の半導体装置によれば、信頼性の高い半導体装置の提供が可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
本実施形態の半導体装置は、基体は、絶縁板と、絶縁板の上に設けられた金属板と、を有し、半導体チップは金属板の上に設けられており、半導体チップの設けられていない金属板の部分の上に設けられ、第3粘着剤を含む第3粘着層をさらに備える点で、第1実施形態の半導体装置と異なっている。ここで、第1実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0078】
図5は、本実施形態の半導体装置110の模式断面図である。
【0079】
第1半導体チップ26が設けられていない第1金属板16の部分の上に、第4粘着剤を含む第4粘着層65及び第5粘着剤を含む第5粘着層66が設けられている。
【0080】
また、第2絶縁板14(絶縁板の一例)の上の第2金属板18(金属板の一例)の上に、第2半導体チップ28(半導体チップの一例)が設けられている。そして、第2半導体チップ28が設けられていない第2金属板18の部分の上に、第6粘着剤(第3粘着剤の一例)を含む第6粘着層67(第3粘着層の一例)及び第7粘着剤を含む第7粘着層68が設けられている。
【0081】
超音波接合法により生じる金属片は、端子板の側よりも、超音波接合が行われる際の重力のため、基体(金属板)の側に落下して飛び散りやすい。そこで、半導体チップが設けられていない金属板の部分の上に粘着層を設けることにより、このような金属片を付着させて、信頼性の高い半導体装置の提供を可能とすることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
2 ベース材
12 第1絶縁板
14 第2絶縁板
16 第1金属板
18 第2金属板
20 第3金属板
22 第4金属板
24 第5金属板
26 第1半導体チップ
27a 第1ソース電極
27b 第1ドレイン電極
27c 第1ゲート電極
28 第2半導体チップ
29a 第2ソース電極
29b 第2ドレイン電極
29c 第2ゲート電極
30 第1接合材
32 第2接合材
34 第3接合材
36 第4接合材
38a ボンディングワイヤ
38b ボンディングワイヤ
40 第1基体
42 第2基体
50 第1超音波接合部
52 第2超音波接合部
54 第3超音波接合部
60 第1粘着層
62 第2粘着層
64 第3粘着層
65 第4粘着層
66 第5粘着層
67 第6粘着層
68 第7粘着層
70 第1金属片
72 第2金属片
74 第3金属片
80 放熱板
81 フィン
82 サーマルインターフェースマテリアル(TMI:Thermal Interface Material)
84 ケース
86 封止材(ゲル)
88 蓋
90 第1端子板
90a 第1面
92 第2端子板
92a 第2面
94 第3端子板
94a 第3面
96 ネジ
98 ワッシャー
100 半導体装置
110 半導体装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6