(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
G01S13/90 191
(21)【出願番号】P 2019163203
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 智士
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169643(JP,A)
【文献】特開2008-249673(JP,A)
【文献】特開平05-323123(JP,A)
【文献】特開2013-068687(JP,A)
【文献】特開2013-210268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0160353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナにより受信された受信信号を用いて画像を生成し、
前記生成した画像に基づいてIQデータを生成する生成部と、
前記IQデータを
用いて位相情報及び振幅情報を生成し、前記位相情報及び前記振幅情報を含む画像データをストレージに格納する変換部と、
を具備
し、
前記変換部は、位相情報が定義されていない画像フォーマットを用いて前記画像データを生成し、前記画像フォーマットのうち位相情報が定義されていない第1部分領域に前記生成した位相情報を設定する
レーダ装置。
【請求項2】
前記画像フォーマットの前記第1部分領域は、透明度を表すアルファ値を格納するためのアルファチャンネルである
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記画像フォーマットは、輝度情報を表す第2部分領域を含み、
前記変換部は、前記画像フォーマットの前記第2部分領域に前記生成した振幅情報を設定する
請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記画像フォーマットは、PNG、又はJPEG-XRである
請求項1乃至3のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記ストレージは、前記画像データを格納する画像データ領域を含み、
前記画像データ領域は、前記位相情報を格納する第1領域と、前記振幅情報を格納する第2領域とを含む
請求項1
乃至4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記ストレージに格納された
前記画像データを取得する取得部をさらに具備し、
前記生成部は、前記取得部により取得された
前記画像データ
を用いて、前記画像フォーマットと異なる形式の画像を生成する
請求項
1乃至5のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記生成部により再度生成された画像を用いて、前記位相情報及び前記振幅情報を含む画像データを生成する
請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記生成部は、SAR(Synthetic Aperture Radar)画像、又はISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar)画像
を生成する
請求項1乃至
7のいずれかに記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)方式、又は逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)方式により画像を生成し、このレーダ画像を用いて、船舶等の目標を類別するレーダ装置が知られている。レーダ装置により生成されたレーダ画像を保存する際には、例えば、画像化処理後のIQデータをフォーマット変換し、IQデータを輝度情報に変換する。そして、この輝度情報を画像データとしてストレージに保存する。
【0003】
レーダ画像を輝度情報のみからなる一般的な画像フォーマットに変換してしまうと、レーダ画像として重要である位相情報がなくなってしまう。位相情報がなくなると、位相情報を利用した画像処理ができなくなるため、レーダ画像特有の処理(オートフォーカス処理、又はインターフェロメトリ処理など)を行うことが難しくなる。
【0004】
位相を利用した画像処理を行うためには、一般的な画像フォーマットに変換した画像データ以外に、独自の非圧縮形式の画像データ(生データ)をストレージに保存しておくことが必要である。しかし、独自の非圧縮形式の生データはデータサイズが大きく、また、画像を再生するのに独自のソフトウェアが必要となるため、非効率である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】吉田 孝、「改訂レーダ技術」、電子情報通信学会、平成8年10月1日(初版)、pp. 280 - 283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、位相情報を有する画像データを保存することが可能なレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るレーダ装置は、アンテナにより受信された受信信号を用いて画像を生成し、前記画像に対応するIQデータを生成する生成部と、前記IQデータをフォーマット変換し、位相情報及び振幅情報を含む画像データを生成して出力する変換部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した画像処理部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るレーダ装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、データ構造を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、画像データの再処理動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る画像処理部及びストレージの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るレーダ装置のデータ変換動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
[1] 第1実施形態
[1-1] レーダ装置の構成
図1は、第1実施形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。レーダ装置10は、アンテナ11、サーキュレータ12、送信部13、受信部14、画像処理部15、ストレージ16、及び表示部17を備える。
【0011】
アンテナ11は、レーダ装置10を搭載する移動体の外装などに取り付けられ、電波を送受信する。アンテナ11は、例えば、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を有するフェーズドアレイアンテナである。
【0012】
送信部13は、所定の送信周期で送信信号を生成し、生成した送信信号を、サーキュレータ12を介してアンテナ11から、目標に向けて送信する。アンテナ11から送信された送信信号の一部は、目標で反射し、この反射されたエコー信号は、受信信号としてアンテナ11により受信される。
【0013】
サーキュレータ12は、送信信号と受信信号との経路を切り換える。サーキュレータ12は、送信部13からの送信信号をアンテナ11に伝送するとともに、アンテナ11により受信された受信信号を受信部14に伝送する。
【0014】
受信部14は、送信信号の送信周期に基づいて、アンテナ11により受信された受信信号を判別する。また、受信部14は、低雑音増幅、周波数変換、及びフィルタリング等の受信処理を、受信信号に施す。
【0015】
画像処理部15は、受信部14から受信信号を取得する。画像処理部15は、受信信号を処理し、画像を生成する。画像処理部15が処理する画像は、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)方式により取得されたさSAR画像、逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)方式により取得されたさISAR画像、又はPPI(Plan Position Indicator)画像などである。
【0016】
画像処理部15は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(図示せず)、及び記憶部(図示せず)などで構成される。記憶部は、画像処理部15の機能を実現するためのプログラム、各種データ、及び各種パラメータなどを記憶する。記憶部は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。画像処理部15の機能は、プロセッサによる演算処理により実現される。
【0017】
ストレージ16は、画像処理部15が生成した画像データを格納する。ストレージ16は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成される。なお、ストレージ16は、レーダ装置10の外に配置してもよい。
【0018】
表示部17は、画像処理部15から送信された画像を、画面に表示する。表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0019】
次に、画像処理部15の構成について説明する。
図2は、
図1に示した画像処理部15の構成を示すブロック図である。画像処理部15は、画像生成部20、データ変換部21、及び画像データ取得部22を備える。
【0020】
画像生成部20は、受信部14から受信信号を受ける。画像生成部20は、受信信号を用いて、IQデータを生成する。IQデータは、複素信号であり、同相成分データ(Iデータ)と、直交位相成分データ(Qデータ)との2つのデータで構成される。画像生成部20は、IQデータを用いて、画像を生成する。また、画像生成部20は、画像化処理後のIQデータを生成する。
【0021】
データ変換部21は、画像生成部20から画像化処理後のIQデータを受ける。データ変換部21は、IQデータをフォーマット変換する。そして、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報を含む画像データを、ストレージ16に送る。
【0022】
画像データ取得部22は、画像データの再処理工程において、ストレージ16に格納された画像データを取得する。画像データ取得部22は、取得した画像データを、画像生成部20に送る。
【0023】
[1-2] 動作
上記のように構成されたレーダ装置10の動作について説明する。
図3は、レーダ装置10の動作を説明するフローチャートである。
図4は、データ構造を説明する模式図である。
【0024】
画像生成部20は、受信部14から受信信号を受ける。画像生成部20は、この受信信号を用いて、IQデータを生成する(ステップS100)。IQデータは、振幅情報及び位相情報を含む。
【0025】
続いて、画像生成部20は、IQデータを用いて画像化処理を行い、画像を生成する(ステップS101)。生成された画像は、例えば表示部17に表示される。また、画像生成部20は、画像化処理後のIQデータ(画像IQデータと呼ぶ)を生成する(ステップS101)。画像IQデータは、位相情報及び振幅情報を含む。画像生成部20は、画像IQデータを、データ変換部21に送る。
【0026】
続いて、データ変換部21は、画像IQデータをフォーマット変換し、位相情報及び振幅情報を生成する(ステップS102)。
【0027】
続いて、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報を含む画像データをストレージ16に出力する。そして、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報をストレージ16に格納する(ステップS103)。具体的には、
図4に示すように、ストレージ16は、位相情報及び振幅情報を、画像データ領域23に格納する。画像データ領域23は、アルファチャンネル24及び輝度情報領域25を含む。位相情報は、アルファチャンネル24に格納され、振幅情報は、輝度情報領域25に格納される。
【0028】
アルファチャンネル24は、本来は、アルファ値を格納するデータ領域である。アルファ値は、透過度情報である。アルファ値は、完全な不透明(その色そのもの)から完全な透明(背景色そのもの)まで設定することができる。アルファ値は、0~1の範囲を有する。アルファ値0は透過率0%を意味し、アルファ値1は透過率100%を意味する。本実施形態では、このアルファチャンネルに位相情報を格納する。位相情報は、0~2πの情報であり、アルファ値は、0~1の情報である。位相情報の0~2πは、アルファ値の0~1に対応付けて格納される。
【0029】
アルファチャンネルを持つ画像フォーマットとしては、PNG、又はJPEG-XRなどが挙げられる。すなわち、本実施形態では、一般的な画像フォーマットに、位相情報及び振幅情報を含む画像データを格納することができる。
【0030】
(画像データの再処理動作)
次に、ストレージ16に格納された画像データの再処理動作について説明する。
図5は、画像データの再処理動作を説明するフローチャートである。ストレージ16には、位相情報及び振幅情報を含む画像データが格納されている。
【0031】
画像データ取得部22は、ストレージ16から画像データを取得する(ステップS200)。取得された画像データは、位相情報及び振幅情報を含む。取得された画像データは、画像生成部20に送られる。
【0032】
続いて、画像生成部20は、画像データを再処理(又は後処理)する(ステップS201)。画像データの再処理には、例えば、オートフォーカス処理、又はインターフェロメトリ処理などが含まれる。また、画像生成部20は、再処理後の画像IQデータを生成する(ステップS201)。画像IQデータは、データ変換部21に送られる。
【0033】
続いて、データ変換部21は、再処理後の画像IQデータをフォーマット変換し、位相情報及び振幅情報を生成する(ステップS202)。
【0034】
続いて、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報をストレージ16に出力する。そして、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報を含む画像データをストレージ16に格納する(ステップS203)。このように、本実施形態では、位相情報が必要な画像データの再処理を実現できる。
【0035】
[1-3] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、画像生成部20は、受信信号から画像を生成するとともに、画像化処理後のIQデータ(画像IQデータ)を生成する。データ変換部21は、画像IQデータをフォーマット変換し、位相情報及び振幅情報を含む画像データを生成する。そして、ストレージ16は、位相情報をアルファチャンネル24に格納し、振幅情報を輝度情報領域25に格納する。
【0036】
従って第1実施形態によれば、位相情報及び振幅情報を含む画像データをストレージ16に格納することができる。すなわち、位相情報及び振幅情報を含む画像データを、一般的な画像フォーマットで格納しておくことができる。
【0037】
また、格納された画像データを用いて、位相情報を利用した画像処理を行うことができる。例えば、レーダ画像特有の処理(オートフォーカス処理、又はインターフェロメトリ処理など)を行うことができる。
【0038】
また、格納された画像データに一般的な画像フォーマットを用いているため、画像データの再利用やソフト開発が容易となる。
【0039】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、画像IQデータをそのままストレージ16に格納する。そして、ストレージ16に格納された画像IQデータをフォーマット変換するようにしている。
【0040】
[2-1] 画像処理部15及びストレージ16の構成
図6は、第2実施形態に係る画像処理部15及びストレージ16の構成を示すブロック図である。
【0041】
ストレージ16は、Rawデータ(生データ)を格納するRawデータ領域26を含む。Rawデータは、フォーマット変換されていない非圧縮形式のデータであり、すなわち、画像生成部20が生成した画像IQデータである。
【0042】
画像生成部20は、画像IQデータをストレージ16のRawデータ領域26に格納する。
【0043】
画像データ取得部22は、ストレージ16からRawデータを取得する。画像データ取得部22は、取得したRawデータをデータ変換部21に送る。
【0044】
[2-2] 動作
上記のように構成されたレーダ装置10の動作について説明する。
【0045】
画像生成部20が画像IQデータ及び画像を生成する動作は、第1実施形態と同じである。画像生成部20は、画像IQデータをRawデータとして、ストレージ16に格納する。ストレージ16は、Rawデータを、Rawデータ領域26に格納する。このように、第2実施形態では、Rawデータをストレージ16に格納しておくことができる。
【0046】
図7は、レーダ装置10のデータ変換動作を説明するフローチャートである。
【0047】
画像データ取得部22は、ストレージ16からRawデータを取得する(ステップS300)。画像データ取得部22は、取得したRawデータを、データ変換部21に送る。
【0048】
続いて、データ変換部21は、Rawデータをフォーマット変換し、位相情報及び振幅情報を生成する(ステップS301)。
【0049】
続いて、データ変換部21は、位相情報及び振幅情報を含む画像データをストレージ16に格納する(ステップS203)。ストレージ16は、位相情報をアルファチャンネル24に格納し、振幅情報を輝度情報領域25に格納する。
【0050】
[2-3] 第2実施形態の効果
第2実施形態によれば、Rawデータから再度、位相情報及び振幅情報を含む画像データを生成できる。よって、画像データを再処理した後でも、最初の状態の画像データを再度生成できる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0051】
なお、上記実施形態では、位相情報をアルファチャンネルに格納するようにしている。しかし、これに限定されず、位相情報をアルファチャンネル以外のデータ領域に格納してもよい。例えば、位相情報は、画像フォーマットのうち、画素の色を表すRGB情報を格納するデータ領域などに格納してもよい。
【0052】
また、画像IQデータをフォーマット変換して得られる位相情報及び振幅情報を、一般的な画像フォーマットのうち上記説明したデータ領域以外の任意のデータ領域に格納してもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10…レーダ装置、11…アンテナ、12…サーキュレータ、13…送信部、14…受信部、15…画像処理部、16…ストレージ、17…表示部、20…画像生成部、21…データ変換部、22…画像データ取得部、23…画像データ領域、24…アルファチャンネル、25…輝度情報領域、26…Rawデータ領域。