(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】レーダ計測システム及びレーダ計測方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/66 20060101AFI20230911BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G01S13/66
G01S13/87
(21)【出願番号】P 2019166155
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 遼
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-313617(JP,A)
【文献】特開2000-193741(JP,A)
【文献】特開2009-166737(JP,A)
【文献】特表2017-528779(JP,A)
【文献】特開2012-007956(JP,A)
【文献】特開2014-145697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の計測区間内で目標を追跡する第1のレーダ装置と、
前記第1のレーダ装置から離隔して配置され、前記第1の計測区間と少なくとも接する第2の計測区間内で前記目標を追跡する第2のレーダ装置と、
を有し、
前記第1のレーダ装置は、前記第1の計測区間に前記目標が存在している間に追跡した前記目標の軌跡、前記目標が前記第2の計測区間に入る時刻、前記第1のレーダ装置による前記目標の追跡に用いられたフィルタのフィルタ係数を含む前記目標の情報を前記第2のレーダ装置に送信し、
前記第2のレーダ装置は、前記目標の情報に基づいて前記目標を追跡するレーダ計測システム。
【請求項2】
前記第1の計測区間と前記第2の計測区間とを合わせた範囲は、前記目標の移動距離以上の範囲である請求項1に記載のレーダ計測システム。
【請求項3】
前記第1の計測区間と前記第2の計測区間とは、重複区間を有する請求項1に記載のレーダ計測システム。
【請求項4】
前記第1のレーダ装置及び前記第2のレーダ装置を制御する制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、
前記第1の計測区間に前記目標が存在している間は前記第1のレーダ装置による前記目標の追跡を開始させるとともに前記第2のレーダ装置による前記目標の追跡を停止させ、
前記第2の計測区間に前記目標が存在している間は前記第1のレーダ装置による前記目標の追跡を停止させるとともに前記第2のレーダ装置による前記目標の追跡を開始させる請求項1に記載のレーダ計測システム。
【請求項5】
前記制御装置は、通信衛星を介して前記第1のレーダ装置及び前記第2のレーダ装置と通信する請求項
4に記載のレーダ計測システム。
【請求項6】
前記目標の移動経路は、予め決められており、
前記第1のレーダ装置と前記第2のレーダ装置とは前記目標の移動経路に沿って縦列配置されている請求項1に記載のレーダ計測システム。
【請求項7】
第1のレーダ装置
が第1の計測区間内で目標を追跡することと、
前記第1のレーダ装置が、前記第1の計測区間に前記目標が存在している間に追跡した前記目標の軌跡、前記目標が前記第1の計測区間と少なくとも接する第2の計測区間に入る時刻、前記第1のレーダ装置による前記目標の追跡に用いられたフィルタのフィルタ係数を含む前記目標の情報を前記第1のレーダ装置から離隔して配置された第2のレーダ装置に送信することと、
前
記第2のレーダ装置
が前
記第2の計測区間内で
前記目標の情報に基づいて前記目標を追跡することと、
を具備するレーダ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ計測システム及びレーダ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動する目標を追跡する装置の1つとしてレーダ装置が知られている。レーダ装置を用いて超長距離を移動する目標を追跡するためには、送信電力の増大、空中線の開口面積の拡大といったレーダ装置の大規模化が考えられる。しかしながら、目標の移動経路によっては、地表面が球形である影響等によってレーダの見通しが得られないこともある。この場合には、大規模のレーダ装置が用いられたとしても、目標を追跡することができなくなる。また、見通し外である水平線以遠を計測するレーダシステムとして、OTH(Over The Horizon)レーダが知られている。しかしながら、OTHレーダの精度は良いとは言えない。また、OTHレーダでは、その原理上、見通し内の目標の追跡はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、大規模なレーダ装置を用いなくとも、見通し内の目標に加えて、見通し外となる超遠距離の目標も追跡することができるレーダ計測システム及びレーダ計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のレーダ計測システムは、第1のレーダ装置と、第2のレーダ装置とを有する。第1のレーダ装置は、第1の計測区間内で目標を追跡する。第2のレーダ装置は、第1のレーダ装置から離隔して配置され、第1の計測区間と少なくとも接する第2の計測区間内で目標を追跡する。第1のレーダ装置は、第1の計測区間に前記目標が存在している間に追跡した前記目標の軌跡、目標が前記第2の計測区間に入る時刻、第1のレーダ装置による前記目標の追跡に用いられたフィルタのフィルタ係数を含む目標の情報を第2のレーダ装置に送信する。第2のレーダ装置は、目標の情報に基づいて目標を追跡する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るレーダ計測システムの一例の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、1台のレーダ装置の一例の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における1台のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係るレーダ計測システムの一例の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における1台のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るレーダ計測システムの一例の構成を示す図である。
図1に示すように、レーダ計測システム1は、N台のレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nを有する。第1の実施形態のレーダ計測システム1は、移動する目標TをN台のレーダ装置によって追跡する。目標Tは、例えば空中を飛翔する飛翔体である。目標30は、移動する物体であればよく、特に限定されない。以下では、目標Tは、予定された移動経路Rを移動するものとして説明を続ける。
【0008】
レーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nは、例えばd(km)間隔で目標Tの移動経路Rに沿って縦列配置される。つまり、レーダ装置11は、目標Tの出発点に最も近い位置に配置され、それ以降のレーダ装置は順次に目標Tの出発点から遠い位置に配置される。そして、レーダ装置1Nは、目標Tの出発点から最も遠い位置に配置される。それぞれのレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nは、それぞれに割り当てられた計測区間a1、a2、…、a(N-1)、aN内で目標Tを追跡する。それぞれのレーダ装置に割り当てられる計測区間は、例えばそれぞれのレーダ装置の送信電力及び空中線の開口面積によって決められる。例えば、レーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nについて、自己位置が異なるだけの同一の構成であるならば、
図1に示すように、それぞれのレーダ装置には同一距離の計測区間が割り当てられる。ここで、隣り合うレーダ装置の計測区間は少なくとも接していればよいが、重複していることが望ましい。
【0009】
また、レーダ装置の台数N及び間隔dは、それぞれのレーダ装置に割り当てられる計測区間と、システム全体として要求される計測区間とによって決められてよい。例えば、目標Tの移動経路Rが既知である場合、N台のレーダ装置の計測区間a1、a2、…、a(N-1)、aNを合わせたシステム全体としての計測区間A(km)が目標Tの移動距離D(km)以上の範囲になるように、つまり以下の式が満たされるように、レーダ装置の台数N及び間隔dが決められてよい。
A≒(a1+a2+…a(N-1)+aN)≧D
【0010】
以下、レーダ装置の構成を説明する。なお、以下ではレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nは同一の構成を有するものとして、そのうちの1つの構成について説明する。
図2は、1台のレーダ装置の一例の構成を示す図である。
図2に示すように、レーダ装置は、空中線101と、送受切替部102と、送信処理部103と、受信処理部104と、通信部105と、電源106とを有する。
【0011】
空中線101は、電波を送信し、また、電波を受信する。空中線101の構成は、特に限定されるものではない。
【0012】
送受切替部102は、空中線101と送信処理部103とを接続する又は空中線101と受信処理部104とを接続するように、空中線101の接続先を切り替えるスイッチである。
【0013】
送信処理部103は、電波の送信のための処理をする。送信処理部103は、変調部1031と、送信部1032とを有する。
【0014】
変調部1031は、レーダ装置から送信される電波を生成するための信号を変調する。変調部1031は、変調を電気回路によって行うように構成されていてもよいし、ソフトフェア処理によって行うように構成されていてもよい。
【0015】
送信部1032は、例えばマグネトロンを有する。変調部1031で変調された信号は送受切替部102を介して空中線101に出力される。
【0016】
受信処理部104は、電波の受信のための処理をする。受信処理部104は、受信部1041と、計測部1042と、追跡演算部1043とを有する。
【0017】
受信部1041は、空中線101から送受切替部102を介して入力された信号を復調する。受信部1041は、復調を電気回路によって行うように構成されていてもよいし、ソフトフェア処理によって行うように構成されていてもよい。
【0018】
計測部1042は、受信部1041で得られた信号から目標Tについての計測値を生成する。計測値は、例えば予め定められた原点の座標に対する目標Tの方向(アジマス及びエレベーション)、距離、速度である。計測部1042は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)等のデジタル信号処理器によって、目標Tを検出するための処理を行う。計測部1042は、単一のCPU等で構成されていてもよいし、複数のCPU等で構成されていてもよい。さらに、計測部1042は、メモリ等を備えていてもよい。
【0019】
追跡演算部1043は、計測部1042で生成された目標Tについての計測値に基づいて目標Tを追跡するための追跡演算を行う。追跡演算は、例えばカルマンフィルタを用いて目標Tの軌跡を算出する演算である。追跡演算部1043は、CPU、ASIC、FPGA又はDSP等のデジタル信号処理器によって、追跡演算を行う。追跡演算部1043は、単一のCPU等で構成されていてもよいし、複数のCPU等で構成されていてもよい。さらに、追跡演算部1043は、メモリ等を備えていてもよい。
【0020】
通信部105は、レーダ装置が他のレーダ装置等と通信するための通信インターフェイスを含む。通信インターフェイスは、例えば、有線LAN(Local Area Network)、光通信といった有線通信を行うためのインターフェイスであってもよいし、無線LAN等の無線通信を行うためのインターフェイスであってもよい。
【0021】
電源106は、レーダ装置の動作のための電源である。電源106は、レーダ装置の各要素が必要とする電力を生成する。
【0022】
ここで、
図2において、目標検出部1042及び追跡演算部1043は、1つの処理部によって構成されていてもよい。
【0023】
図3は、第1の実施形態における1台のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。ステップS1において、送信部1032は、空中線101を介して電波を送信する。ステップS2において、受信部1041は、空中線101を介して目標Tからの電波を受信する。
【0024】
ステップS3において、計測部1042は、受信部1041で得られた目標Tの信号から目標についての計測値を生成する。前述したように、目標Tについての計測値は、目標Tの方向(アジマス及びエレベーション)、距離、速度を含む。
【0025】
ステップS4において、追跡演算部1043は、計測部1042で得られた目標Tについての計測値に基づいて目標Tを追跡するための追跡演算を行う。
【0026】
ステップS5において、通信部105は、目標Tに関する目標情報を例えば次段のレーダ装置に出力する。その後、
図3の処理は終了する。目標情報は、例えば目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含む。このような目標情報を次段のレーダ装置に送信することにより、次段のレーダ装置は、指定された時刻に目標Tに向けて電波を送信して目標Tの追跡を開始することができる。つまり、次段のレーダ装置は、目標Tの移動に伴う遅延も考慮して目標Tの追跡を開始することができる。また、次段のレーダ装置は、前段のレーダ装置から指定されたフィルタ係数を用いてカルマンフィルタの初期値を生成し、生成した初期値に基づいて追跡演算をすることができる。なお、ステップS5における目標情報の送信先は、次段のレーダ装置でなくてもよい。例えば、目標情報の送信先は、レーダ装置の制御装置等であってもよい。
【0027】
以上説明したように本実施形態によれば、複数のレーダ装置を配置して1つの目標を追跡することにより、超長距離を移動する目標であってもレーダ装置を大規模化することなく追跡することができる。また、山岳等を隔てて移動する目標であっても、その山岳等の先にレーダ装置が設置されていれば追跡をすることができる。つまり、本実施形態によれば、単一のレーダ装置では見通しが確保できない環境であっても追跡をすることができる。
【0028】
また、本実施形態では、複数のレーダ装置を自己位置が異なるだけの同一構成のレーダ装置を用いることもできる。この場合、システムとしての製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
また、目標の移動を制御する場合等、目標の移動経路が予め決められている場合には、その移動経路に沿ってレーダ装置が縦列配置されることにより、目標の追跡に必要なレーダ装置の数を最小限にすることができる。
【0030】
また、レーダ装置で得られた目標の情報を次段のレーダ装置に通信することにより、次段のレーダ装置において即時に目標の追跡をすることができる。これにより、複数のレーダ装置による目標の追跡が安定して行われる。また、レーダ装置で得られた目標の情報として、カルマンフィルタのフィルタ係数を次段のレーダ装置に通信することにより、次段のレーダ装置においてより良いカルマンフィルタの初期値を生成することができる。これにより、次段以降の追跡演算の精度が向上する。
【0031】
ここで、
図1では、レーダ装置は等間隔に配置されている。しかしながら、地形の制約等によっては、レーダ装置は等間隔に配置されなくてもよい。レーダ装置を等間隔に配置できないときには、計測区間に空きが生じないように例えばレーダ装置の台数を増やすことが望ましい。
【0032】
また、隣り合うレーダ装置の計測区間は少なくとも接していればよいが、重複していることが望ましい。レーダ装置の計測区間に重複区間があることにより、計測区間の境界部に生じる計測区間の抜けを減らすことができる。
【0033】
さらに、目標Tの移動経路Rが決められていなくてもよい。この場合、より多くの台数のレーダ装置を設置することによってシステム全体としての計測区間Aを長くすることができる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。
図4は、第2の実施形態に係るレーダ計測システムの一例の構成を示す図である。
図4に示すように、第2の実施形態に係るレーダ計測システム1は、N台のレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nと、通信衛星20と、制御装置30とを有する。第2の実施形態のレーダ計測システム1は、第1の実施形態と同様に、移動する目標TをN台のレーダ装置によって追跡する。一方、第2の実施形態では、N台のレーダ装置は、互いに直接的には情報の送受をしない。第2の実施形態では、N台のレーダ装置は、制御装置30の制御のもと、通信衛星20を介して情報の送受をする。つまり、第2の実施形態のレーダ装置は、通信部105を有していなくてもよい。勿論、第2の実施形態のレーダ装置は、通信部105を有していてもよい。
【0035】
通信衛星20は、N台のレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nのそれぞれとの間で電波の送受信が可能な経路を飛行する通信衛星である。また、通信衛星20は、制御装置30との間で電波の送受信が可能な経路を飛行する通信衛星である。
【0036】
通信衛星20は、N台のレーダ装置11、12、…、1(N-1)、1Nから、目標情報を含む電波を受信する。このとき、通信衛星20は、受信した電波から目標情報を取り出して、制御装置30への送信用の電波を生成する。そして、通信衛星20は、生成した電波を制御装置30に送信する。
【0037】
また、通信衛星20は、制御装置30から、制御対象のレーダ装置宛ての制御情報を含む電波を受信する。このとき、通信衛星20は、受信した電波から制御情報を取り出して制御対象のレーダ装置を特定し、制御対象のレーダ装置への送信用の電波を生成する。そして、通信衛星20は、生成した電波を制御対象のレーダ装置に送信する。
【0038】
制御装置30は、CPU等のプロセッサ、ROM及びRAMといったメモリを備えたコンピュータである。制御装置30は、目標情報を含む電波を通信衛星20から受信する。このとき、制御装置30は、目標情報に基づいて、制御対象のレーダ装置を制御するための制御情報を生成する。制御情報は、例えば、追跡を開始又は終了させる指示、目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含む。そして、制御装置30は、制御対象のレーダ装置のための制御情報を含む電波を通信衛星20に送信する。
【0039】
図5は、第2の実施形態における制御装置30の動作を示すフローチャートである。ステップS11において、制御装置30は、制御対象のレーダ装置を1台目のレーダ装置11に設定する。
【0040】
ステップS12において、制御装置30は、制御対象のレーダ装置宛ての追跡開始のための制御情報を含む電波を通信衛星20に向けて送信する。追跡開始のための制御情報は、例えば追跡を開始させる指示、目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含む。目標Tの移動経路Rが既知であれば、1台目のレーダ装置から目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を制御情報に含めることができる。しかしながら、目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含めることができない場合もあり得る。この場合には、制御情報は、追跡開始の指示だけを含んでいてもよい。
【0041】
ステップS13において、制御装置30は、通信衛星20から、目標情報を含む電波を受信する。
【0042】
ステップS14において、制御装置30は、目標情報を取り出し、取り出した目標情報から、目標Tが制御対象のレーダ装置の計測区間から出るか否かを判定する。例えば、目標Tの移動方向が制御対象のレーダ装置の計測区間の外に向かう方向であって、かつ、目標Tの位置が計測区間の端から所定距離内であるときには、目標Tが制御対象のレーダ装置の計測区間から出ると判定される。ステップS14において、目標Tが制御対象のレーダ装置の計測区間から出ないと判定されたときには、処理はステップS13に戻る。この場合、制御装置30は、制御対象のレーダ装置を変更しない。一方、ステップS14において、目標Tが制御対象のレーダ装置の計測区間から出ると判定されたときには、処理はステップS15に移行する。
【0043】
ステップS15において、制御装置30は、制御対象のレーダ装置宛ての追跡終了のための制御情報を含む電波を通信衛星20に向けて送信する。追跡終了のための制御情報は、例えば追跡を終了させる指示を含む。
【0044】
ステップS16において、制御装置30は、制御対象のレーダ装置がまだ残っているか否かを判定する。N台目のレーダ装置1Nに対して追跡終了の制御情報を送信したときには、制御対象のレーダ装置が残っていないと判定される。ステップS16において、制御対象のレーダ装置がまだ残っていると判定されたときには、処理はステップS17に移行する。ステップS16において、制御対象のレーダ装置が残っていないと判定されたときには、
図5の処理は終了する。
【0045】
ステップS17において、制御装置30は、制御対象のレーダ装置を変更する。例えば、制御対象のレーダ装置がレーダ装置11であるとき、制御装置30は、制御対象のレーダ装置をレーダ装置12に変更する。その後、処理はステップS12に移行する。
【0046】
図6は、第2の実施形態における1台のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。ステップS21において、受信部1041は、通信衛星20から追跡開始の制御情報を含む電波を受けたか否かを判定する。ステップS21の判定は、通信衛星20から追跡開始の制御情報を含む電波を受けたと判定されるまで繰り返される。ステップS21において、通信衛星20から追跡開始の制御情報を含む電波を受けたと判定されたとき、処理はステップS22に移行する。
【0047】
ステップS22において、送信部1032は、空中線101を介して電波を送信する。ステップS23において、受信部1041は、空中線101を介して目標Tからの電波を受信する。ここで、制御情報が、目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含んでいるときには、送信部1032は、指定された時刻に目標Tに向けて電波を送信してもよい。
【0048】
ステップS24において、計測部1042は、受信部1041で得られた目標Tの信号から目標についての計測値を生成する。前述したように、目標Tについての計測値は、目標Tの方向(アジマス及びエレベーション)、距離、速度を含む。
【0049】
ステップS25において、追跡演算部1043は、計測部1042で得られた目標Tについての計測値に基づいて目標Tを追跡するための追跡演算を行う。
【0050】
ステップS26において、送信部1032は、目標Tに関する目標情報を含む電波を通信衛星20に送信する。目標情報は、例えば目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻、次段のレーダ装置における追跡演算のためのカルマンフィルタのフィルタ係数といった情報を含む。なお、目標Tの軌跡、目標Tが次段のレーダ装置の計測区間に入る時刻といった情報は、制御装置30が計算してもよい。この場合、ステップS26において、送信部1032は、ステップS24で生成された計測値を含む電波を通信衛星20に送信してもよい。
【0051】
ステップS27において、受信部1041は、通信衛星20から追跡終了の制御情報を含む電波を受けたか否かを判定する。ステップS27において、通信衛星20から追跡終了の制御情報を含む電波を受けていないと判定されたときには、処理はステップS22に戻る。ステップS27において、通信衛星20から追跡終了の制御情報を含む電波を受けたと判定されたとき、
図6の処理は終了する。
【0052】
以上説明したように、第2の実施形態においても、複数のレーダ装置を配置して1つの目標を追跡することにより、超長距離を移動する目標であってもレーダ装置を大規模化することなく追跡することができる。また、山岳等を隔てて移動する目標であっても、その山岳等の先にレーダ装置が設置されていれば追跡をすることができる。つまり、本実施形態によれば、単一のレーダ装置では見通しが確保できない環境であっても追跡をすることができる。
【0053】
さらに第2の実施形態では、複数のレーダ装置の動作を1つの制御装置によって制御することができる。また、制御装置とそれぞれのレーダ装置との通信は、通信衛星を介して行われる。これにより、それぞれのレーダ装置は、制御装置との専用の通信部を備えていなくてもよい。したがって、レーダ装置の構成は簡略化される。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 レーダ計測システム、11,12,1(N-1),1N レーダ装置、20 通信衛星、30 制御装置、101 空中線、102 送受切替部、103 送信処理部、104 受信処理部、105 通信部、106 電源、1031 変調部、1032 送信部、1041 受信部、1042 計測部、1042 目標検出部、1043 追跡演算部。