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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019168413
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046876
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070430(JP,A)
【文献】特開2010-151256(JP,A)
【文献】特開平01-153832(JP,A)
【文献】特開2004-190721(JP,A)
【文献】特開2006-258215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、
前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部とする主液室と副液室とに区画する仕切部材と、を備え、
前記仕切部材には、
前記主液室の隔壁の一部をなし、弾性変形可能に設けられたメンブランと、
前記主液室と前記副液室とを連通するオリフィスと、が備えられ、
前記オリフィスは、
前記主液室に向けて開口する第1連通孔と、
前記副液室に向けて開口する第2連通孔と、
前記メンブランを挟んで前記主液室の反対側に位置し前記メンブランを隔壁の一部とする中間室と、
周方向に延びる制限通路と、
前記中間室と前記制限通路とを連通する連絡孔と、を備え、
前記制限通路は、
前記主液室側に位置する主液室側通路と、
前記主液室側通路から前記副液室側に向けて延びる副液室側通路と、を備え、
前記主液室側通路、および前記副液室側通路は、周方向に延びるとともに、径方向に互いに接続されて配置され、
液体が、前記第1連通孔および前記第2連通孔のうちのいずれか一方から他方に向けて、前記制限通路を流れる際、前記主液室側通路での流通方向と、前記副液室側通路での流通方向と、が逆向きとされており、
前記メンブランは、前記主液室側及び前記中間室側の双方に向けて弾性変形可能に設けられており、
前記仕切部材は、前記中間室と前記副液室とを仕切る仕切壁を備え、
前記第2連通孔は、前記仕切壁を貫通している、防振装置。
【請求項2】
前記中間室は、前記仕切部材において、前記制限通路より径方向の内側に位置する部分に設けられている、請求項1に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、第1取付部材と第2取付部材とを連結した弾性体と、第1取付部材内の液室を、弾性体を隔壁の一部とする主液室と副液室とに区画する仕切部材と、を備えた防振装置が知られている。
この防振装置では、仕切部材に、主液室の隔壁の一部をなすメンブランと、主液室に向けて開口する第1連通孔と、副液室に向けて開口する第2連通孔と、メンブランを挟んで主液室の反対側に位置しメンブランを隔壁の一部とする中間室と、第1連通孔と第2連通孔とを連通する第1制限通路と、中間室と第2連通孔とを連通する第2制限通路と、が設けられている。
そして、防振装置に微振幅の振動が入力されると、メンブランが弾性変形することで、動ばねが低く抑えられ、微振幅より大きい振幅で、かつ同等の周波数の振動が入力されると、第1取付部材および第2取付部材が、弾性体を弾性変形させながら相対的に変位し、主液室の内圧を変動させて、例えば第1制限通路に液体を流通させることで、この振動が減衰、吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/051627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような構成の防振装置では、同等の周波数の振動が入力される場合において、微振幅より大きい振幅の範囲で入力振動の振幅が増減すると、これに追従して入力振動を減衰、吸収することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、微振幅振動の入力時の動ばねを抑えつつ、入力振動の周波数が同等であれば、微振幅より大きい振幅の範囲で入力振動の振幅が増減しても、これに追従して入力振動を減衰、吸収することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部とする主液室と副液室とに区画する仕切部材と、を備え、前記仕切部材には、前記主液室の隔壁の一部をなし、弾性変形可能に設けられたメンブランと、前記主液室と前記副液室とを連通するオリフィスと、が備えられ、前記オリフィスは、前記主液室に向けて開口する第1連通孔と、前記副液室に向けて開口する第2連通孔と、前記メンブランを挟んで前記主液室の反対側に位置し前記メンブランを隔壁の一部とする中間室と、周方向に延びる制限通路と、前記中間室と前記制限通路とを連通する連絡孔と、を備え、前記制限通路は、前記主液室側に位置する主液室側通路と、前記主液室側通路から前記副液室側に向けて延びる副液室側通路と、を備え、前記主液室側通路、および前記副液室側通路は、周方向に延びるとともに、径方向に互いに接続されて配置され、液体が、前記第1連通孔および前記第2連通孔のうちのいずれか一方から他方に向けて、前記制限通路を流れる際、前記主液室側通路での流通方向と、前記副液室側通路での流通方向と、が逆向きとされている。
【0007】
本発明の防振装置によれば、液体が、第1連通孔および第2連通孔のうちのいずれか一方から他方に向けて、制限通路を流れる際、主液室側通路での流通方向と、副液室側通路での流通方向と、が逆向きとされているので、例えば、主液室側通路、および副液室側通路が周方向に直結されて、各前記流通方向が同じ向きになっている場合と比べて、入力振動の振幅の増減、つまり制限通路を流れる液体の流速の増減に合わせて、液体の流通抵抗を増減させやすくすることができる。これにより、微振幅振動の入力時の動ばねを抑えつつ、入力振動の周波数が同等であれば、微振幅より大きい振幅の範囲で入力振動の振幅が増減しても、これに追従して制限通路内で液柱共振を生じさせ、入力振動を減衰、吸収することができる。
主液室と副液室とを連通するオリフィスが、メンブランを隔壁の一部とする中間室、および中間室と制限通路とを連通する連絡孔を有しているので、振動入力時に、連絡孔を通して液体を中間室に流入および流出させつつ、メンブランを弾性変形させることが可能になり、動ばねを低く抑えることができる。
【0008】
メンブランが、主液室および中間室それぞれの隔壁の一部をなすように弾性変形可能に設けられていて、例えば、主液室および中間室の双方に連通した収容室内に移動可能に収容された、いわゆるガタメンブランではないので、振動入力時に、メンブランが他の部材に衝突して打音が生ずるのを抑制することができる。
主液室側通路、および副液室側通路が、周方向に延びるとともに、径方向に互いに接続されて配置されているので、防振装置の軸方向のかさ張りを抑えることができる。
【0009】
オリフィスが、第1連通孔、第2連通孔、中間室、制限通路、および連絡孔を備えているので、大きな振幅の振動が入力されたときに、第1連通孔および第2連通孔のうちのいずれか一方を通してオリフィス内に流入した液体が、連絡孔を通過することで、例えば、中間室と制限通路とに分岐されたり、液体の流通方向を変化させたりすること等が可能になる。これにより、大きな振幅の振動が入力されたときに、第1連通孔および第2連通孔のうちのいずれか他方から流出する液体の流速および流量を抑えることが可能になり、主液室で気泡が発生しにくくなり、気泡が崩壊することに起因する異音が、主液室で発生するのを抑制することができる。
【0010】
ここで、前記中間室は、前記仕切部材において、前記制限通路より径方向の内側に位置する部分に設けられてもよい。
【0011】
この場合、中間室が、仕切部材において、制限通路より径方向の内側に位置する部分に設けられているので、中間室および制限通路を効率よく配設することが可能になり、仕切部材が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0012】
また、前記仕切部材は、前記中間室と前記副液室とを仕切る仕切壁を備え、前記第2連通孔は、前記仕切壁を貫通してもよい。
【0013】
この場合、第2連通孔が、中間室と副液室とを仕切る仕切壁に形成された貫通孔となっているので、振動入力時に、メンブランが弾性変形したときに、液体が、第2連通孔を通して中間室と副液室との間を往来することとなり、動ばねを確実に抑えることができるとともに、周波数が比較的高い、例えばアイドル振動、若しくはこもり音等を減衰、吸収することができる。
【0014】
また、前記主液室側通路における周方向の一方の端部は、前記第1連通孔を通して前記主液室に連通し、前記主液室側通路における周方向の他方の端部は、前記副液室側通路における周方向の一方の端部に接続孔を通して連通し、前記副液室側通路における周方向の他方の端部は、前記第2連通孔を通して前記副液室に連通してもよい。
【0015】
この場合、主液室側通路における周方向の両端部が、第1連通孔および接続孔に各別に連通し、副液室側通路における周方向の両端部が、接続孔および第2連通孔に各別に連通しているので、制限通路の流路長を確保することが可能になり、制限通路の共振周波数等を容易にチューニングすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微振幅振動の入力時の動ばねを抑えつつ、入力振動の周波数が同等であれば、微振幅より大きい振幅の範囲で入力振動の振幅が増減しても、これに追従して入力振動を減衰、吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
図2図1の防振装置のII-II線矢視段面である。
図3】第2実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
図4図3の防振装置のIV-IV線矢視段面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、第1実施形態に係る防振装置を、図1および図2を参照しながら説明する。
防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、および他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11と第2取付部材12とを連結した弾性体13と、第1取付部材11内の液室14を、弾性体13を隔壁の一部とする主液室15と副液室16とに区画する仕切部材17と、を備えている。
この防振装置1が、例えば自動車のエンジンマウントとして使用される場合、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結され、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。
【0019】
図示の例では、仕切部材17は、液室14を、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う軸方向に沿って、主液室15と副液室16とに区画している。
以下、仕切部材17に対して軸方向に沿う主液室15側を上側といい、副液室16側を下側という。防振装置1を軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
第1取付部材11は、上側に位置する上筒部11aと、上筒部11aより内径および外径が小さく、かつ下側に位置する下筒部11bと、上筒部11aと下筒部11bとを連結し全周にわたって連続して延びる絞り部11cと、を備えている。下筒部11bの内周面は、被覆ゴムにより覆われている。被覆ゴムは、弾性体13と一体に形成されている。
【0021】
第2取付部材12は、棒状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配設されている。第2取付部材12は、第1取付部材11の径方向の内側に配置されている。第2取付部材12における軸方向の中間部に、径方向の外側に向けて突出したフランジ部12aが形成されている。第2取付部材12の上端面に雌ねじ部12bが形成されている。第2取付部材12のうち、フランジ部12aより下側に位置する部分に、下側に向かうに従い、縮径したテーパ部12cが形成されている。フランジ部12aは、第1取付部材11より上側に位置している。第2取付部材12の下端部は、第1取付部材11の上端開口縁より下側に位置している。
【0022】
弾性体13は、環状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配設されている。弾性体13は、第1取付部材11の上筒部11aと第2取付部材12のテーパ部12cとを連結している。弾性体13の外周側は、第1取付部材11における上筒部11aおよび絞り部11cの各内周面に一体に加硫接着されている。弾性体13の内周側は、第2取付部材12のテーパ部12cに加硫接着されている。弾性体13は、径方向の外側から内側に向かうに従い、上側に向けて延びている。弾性体13により、第1取付部材11の上端開口部が密閉されている。
弾性体13は、第2取付部材12のフランジ部12aの上面、下面、および外周面を一体に覆うストッパゴム32と一体に形成されている。
【0023】
第1取付部材11の下端部内には、被覆ゴムを介して、筒状のダイヤフラムリング18が液密に嵌合されている。ダイヤフラムリング18の内周面に、ゴム材料等で弾性変形可能に形成されたダイヤフラム19の外周部が加硫接着されている。ダイヤフラムリング18は、第1取付部材11の下端部が径方向の内側に向けて加締められることで、第1取付部材11に固定されている。ダイヤフラム19は、第1取付部材11の下端開口部を密閉している。
ダイヤフラム19および弾性体13により、液体が封入される液室14が第1取付部材11内に画成されている。液室14に封入される液体としては、例えばエチレングリコール、水、若しくはシリコーンオイル等が挙げられる。
【0024】
仕切部材17は、偏平な円盤状に形成されている。仕切部材17は、中心軸線Oと同軸に配設されている。仕切部材17は、第1取付部材11内に嵌合されている。仕切部材17は、第1取付部材11の絞り部11cおよびダイヤフラムリング18により軸方向に挟まれている。仕切部材17によって、第1取付部材11内の液室14が、弾性体13と仕切部材17とにより画成された主液室15と、ダイヤフラム19と仕切部材17とにより画成された副液室16と、に区画されている。ダイヤフラム19は、副液室16内への液体の流入および流出に伴い拡縮変形する。
【0025】
仕切部材17は、主液室15の隔壁の一部をなし、弾性変形可能に設けられたメンブラン31と、主液室15と副液室16とを連通するオリフィス20と、メンブラン31を径方向の外側から囲う上側部材34と、上側部材34内に嵌合された下側部材33と、上側部材34にメンブラン31を固定する環状の固定部材38と、を備えている。
なお、仕切部材17は、上側部材34、下側部材33、および固定部材38のうちの少なくとも1つを有しなくてもよく、上側部材34、下側部材33、および固定部材38は一体に形成されてもよい。
【0026】
メンブラン31は、ゴム材料等により弾性変形可能に形成されている。メンブラン31は、板状に形成されている。メンブラン31は、軸方向から見て例えば円形状を呈する。なお、メンブラン31は、軸方向から見て例えば矩形状等を呈してもよい。メンブラン31は、中心軸線Oと同軸に配設されている。メンブラン31には、軸方向に貫く貫通孔が形成されていない。メンブラン31は、振動の入力に伴う弾性変形時に、液室14内に設けられている他の部材に衝突しないように設けられている。
【0027】
上側部材34は、メンブラン31を径方向の外側から囲う固定筒部34aと、固定筒部34aの下端開口縁から径方向の内側に向けて突出した環状の固定フランジ34bと、固定筒部34aの下端開口縁から径方向の外側に向けて突出した環状の上側フランジ34cと、固定筒部34aから下側に向けて突出した外筒部34dと、外筒部34dの下端開口縁から径方向の外側に向けて突出した下側フランジ34eと、を備えている。
固定筒部34a、固定フランジ34b、上側フランジ34c、外筒部34d、および下側フランジ34eは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0028】
上側フランジ34cおよび下側フランジ34eの各外周縁は、被覆ゴムを介して下筒部11b内に嵌合されている。固定筒部34aの上端開口縁に固定部材38が載置され、不図示のボルト等によって固定部材38が上側部材34に固定されている。固定部材38および固定フランジ34bによって、メンブラン31の外周縁部が、軸方向に挟まれて固定されている。これにより、メンブラン31は、主液室15の内圧の変動に伴い、外周縁部を固定端として軸方向に弾性変形する。
【0029】
下側部材33は、上側部材34の外筒部34d内に嵌合されている。下側部材33は、環状の底板部33aと、底板部33aの内周縁から上側に向けて突出した内筒部33bと、内筒部33bの下端部内を閉塞する第1閉塞部(仕切壁)33cと、内筒部33bの上端開口縁から径方向の外側に向けて突出した環状の上板部33dと、を備えている。
底板部33a、内筒部33b、第1閉塞部33c、および上板部33dは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0030】
底板部33aの外周縁は、被覆ゴムを介して下筒部11b内に嵌合されている。底板部33aの上面のうち、外周部は、上側部材34の下側フランジ34eに当接し、内周部は、下側フランジ34eおよび外筒部34dより径方向の内側に位置している。内筒部33bは、外筒部34dの径方向の内側に配設されている。第1閉塞部33cは、底板部33aよりも上側に位置している。上板部33dの外周縁は、外筒部34d内に嵌合されている。上板部33dの上面は、固定フランジ34bの下面に当接している。
【0031】
オリフィス20は、主液室15に向けて開口する第1連通孔21と、副液室16に向けて開口する第2連通孔22と、メンブラン31を挟んで主液室15の反対側に位置しメンブラン31を隔壁の一部とする中間室35と、周方向に延びる制限通路23と、中間室35と制限通路23とを連通する連絡孔24と、を備えている。
【0032】
第1連通孔21は、上側部材34の上側フランジ34cに形成されている。
第2連通孔22は、下側部材33の底板部33aの内周部に形成されている。第2連通孔22は、第1連通孔21より径方向の内側に位置している。第2連通孔22および第1連通孔21それぞれの周方向の位置は同等になっている。第1連通孔21および第2連通孔22は、軸方向から見て径方向で隣り合っている。
中間室35は、下側部材33の内筒部33bおよび第1閉塞部33cと、メンブラン31と、により画成されている。中間室35は、軸方向から見て円形状を呈する。中間室35は、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1閉塞部33cは、中間室35と副液室16とを軸方向に仕切っている。
【0033】
制限通路23は、主液室15側に位置する主液室側通路25と、主液室側通路25から副液室16側に向けて延びる副液室側通路26と、を備えている。主液室側通路25、および副液室側通路26は、周方向に延びるとともに、径方向に互いに接続されて配置され、液体が、第1連通孔21および第2連通孔22のうちのいずれか一方から他方に向けて、制限通路23を流れる際、主液室側通路25での流通方向と、副液室側通路26での流通方向と、が逆向きとされている。
【0034】
主液室側通路25は、上側部材34における上側フランジ34c、外筒部34d、および下側フランジ34eと、下筒部11bの内周面の被覆ゴムと、により画成されている。主液室側通路25は、中心軸線Oを中心に、180°より大きく360°より小さい角度範囲にわたって設けられている。なお、この角度範囲は、180°以下でもよく、360°以上でもよい。
【0035】
ここで、上側部材34は、図2に示されるように、外筒部34dから径方向の外側に向けて突出し、外周縁が下筒部11bの内周面の被覆ゴムに嵌合した外側隔壁34fを備えている。外側隔壁34fは、主液室側通路25の周方向の両端部を画成している。
主液室側通路25における周方向の一方の端部は、上側フランジ34cの第1連通孔21と軸方向で対向している。主液室側通路25における周方向の一方の端部は、第1連通孔21を通して主液室15に連通している。
【0036】
外筒部34dにおいて、軸方向から見て、外側隔壁34fを周方向に挟む、第1連通孔21の反対側に位置する部分に、径方向に貫く接続孔27が形成されている。接続孔27および第1連通孔21は、軸方向から見て、外側隔壁34fに周方向で隣接している。
接続孔27は、主液室側通路25における周方向の他方の端部を画成する内面のうち、径方向の内側に位置して径方向の外側を向く内周面に開口している。接続孔27は、主液室側通路25における周方向の他方の端部と、副液室側通路26と、を径方向に連通している。
【0037】
副液室側通路26は、主液室側通路25よりも径方向の内側に設けられている。副液室側通路26は、下側部材33における底板部33aの内周部、内筒部33b、および上板部33dと、上側部材34の外筒部34dと、により画成されている。副液室側通路26は、下側部材33における内筒部33bおよび第1閉塞部33cと、メンブラン31と、により画成されている中間室35を径方向の外側から囲っており、中間室35は、仕切部材17において、制限通路23より径方向の内側に位置する部分に設けられている。
【0038】
副液室側通路26は、中心軸線Oを中心に、180°より大きく360°より小さい角度範囲にわたって設けられている。なお、この角度範囲は、180°以下でもよく、360°以上でもよい。副液室側通路26、および主液室側通路25それぞれの前記角度範囲は、互いに同等になっている。なお、副液室側通路26、および主液室側通路25それぞれの前記角度範囲を、互いに異ならせてもよい。
【0039】
ここで、下側部材33は、図2に示されるように、内筒部33bから径方向の外側に向けて突出し、外周縁が上側部材34の外筒部34d内に嵌合した内側隔壁33fを備えている。内側隔壁33fは、副液室側通路26の周方向の両端部を画成している。内側隔壁33fおよび外側隔壁34fそれぞれの周方向の位置は、互いに同等になっている。内側隔壁33fおよび外側隔壁34fは、径方向に連なって設けられている。副液室側通路26、および主液室側通路25それぞれの周方向の位置は、周方向の全長にわたって互いに同等になっている。なお、副液室側通路26、および主液室側通路25それぞれの周方向の位置を互いに異ならせてもよい。
【0040】
副液室側通路26における周方向の一方の端部は、外筒部34dの接続孔27と径方向で対向している。副液室側通路26における周方向の一方の端部は、接続孔27を通して主液室側通路25に連通している。
副液室側通路26における周方向の他方の端部は、底板部33aの第2連通孔22と軸方向で対向している。副液室側通路26における周方向の他方の端部は、第2連通孔22を通して副液室16に連通している。第2連通孔22、および接続孔27は、軸方向から見て、内側隔壁33fに周方向で隣接している。
【0041】
内筒部33bにおいて、中心軸線Oを挟んで内側隔壁33fと径方向で対向する部分に、径方向に貫く連絡孔24が形成されている。連絡孔24は、中間室35と制限通路23とを連通している。副液室側通路26における周方向の中間部が、連絡孔24を通して中間室35に連通している。連絡孔24は、副液室側通路26の内面のうち、径方向の内側に位置して径方向の外側を向く内周面に開口している。
【0042】
主液室側通路25、および副液室側通路26それぞれの流通抵抗は、互いに同等になっている。主液室側通路25の流路長は、副液室側通路26の流路長より長く、主液室側通路25の流路断面積は、副液室側通路26の流路断面積より大きくなっている。主液室側通路25、および副液室側通路26それぞれの流通抵抗は、各通路25、26の共振周波数が、例えばシェイク振動等の周波数となるようにチューニングされている。
なお、主液室側通路25、および副液室側通路26それぞれの流通抵抗を、互いに異ならせてもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された防振装置1の作用について説明する。
【0044】
防振装置1に振動が入力され、第1取付部材11と第2取付部材12とが相対的に変位すると、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに連結する弾性体13が弾性変形する。この際、主液室15の内圧が変動し、液体が、第1連通孔21、主液室側通路25、接続孔27、副液室側通路26、および第2連通孔22を通して、主液室15と副液室16との間を往来し、制限通路23内で液柱共振が生じて振動が減衰、吸収される。
また、主液室15の内圧が変動すると、メンブラン31が外周縁部を固定端として軸方向に弾性変形し、液体が連絡孔24を通して中間室35に流入および流出することにより、動ばねが抑えられる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、液体が、第1連通孔21および第2連通孔22のうちのいずれか一方から他方に向けて、制限通路23を流れる際、主液室側通路25での流通方向と、副液室側通路26での流通方向と、が逆向きとされているので、例えば、主液室側通路25、および副液室側通路26が周方向に直結されて、各前記流通方向が同じ向きになっている場合と比べて、入力振動の振幅の増減、つまり制限通路23を流れる液体の流速の増減に合わせて、液体の流通抵抗を増減させやすくすることができる。
これにより、微振幅(例えば、0.05mm~0.2mm)振動の入力時の動ばねを抑えつつ、入力振動の周波数が同等であれば、微振幅より大きい振幅の範囲(例えば、0.2mm~1.0mm)で入力振動の振幅が増減しても、これに追従して制限通路23内で液柱共振を生じさせ、入力振動を減衰、吸収することができる。
【0046】
主液室15と副液室16とを連通するオリフィス20が、メンブラン31を隔壁の一部とする中間室35、および中間室35と制限通路23とを連通する連絡孔24を有しているので、振動入力時に、連絡孔24を通して液体を中間室35に流入および流出させつつ、メンブラン31を弾性変形させることが可能になり、動ばねを低く抑えることができる。
【0047】
メンブラン31が、主液室15および中間室35それぞれの隔壁の一部をなすように弾性変形可能に設けられていて、例えば、主液室15および中間室35の双方に連通した収容室内に移動可能に収容された、いわゆるガタメンブランではないので、振動入力時に、メンブラン31が他の部材に衝突して打音が生ずるのを抑制することができる。
主液室側通路25、および副液室側通路26が、周方向に延びるとともに、径方向に互いに接続されて配置されているので、防振装置1の軸方向のかさ張りを抑えることができる。
【0048】
オリフィス20が、第1連通孔21、第2連通孔22、中間室35、制限通路23、および連絡孔24を備えているので、大きな振幅の振動が入力されたときに、第1連通孔21および第2連通孔22のうちのいずれか一方を通してオリフィス20内に流入した液体が、連絡孔24を通過することで、例えば、中間室35と制限通路23とに分岐されたり、液体の流通方向を変化させたりすること等が可能になる。
これにより、大きな振幅の振動が入力されたときに、第1連通孔21および第2連通孔22のうちのいずれか他方から流出する液体の流速および流量を抑えることが可能になり、主液室15で気泡が発生しにくくなり、気泡が崩壊することに起因する異音が、主液室15で発生するのを抑制することができる。
【0049】
中間室35が、仕切部材17において、制限通路23より径方向の内側に位置する部分に設けられているので、中間室35および制限通路23を効率よく配設することが可能になり、仕切部材17が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0050】
主液室側通路25における周方向の両端部が、第1連通孔21および接続孔27に各別に連通し、副液室側通路26における周方向の両端部が、接続孔27および第2連通孔22に各別に連通しているので、制限通路23の流路長を確保することが可能になり、制限通路23の共振周波数等を容易にチューニングすることができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置2を、図3および図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0052】
本実施形態では、副液室16に向けて開口する、オリフィス20の第2連通孔22が、仕切部材17の第1閉塞部33cを軸方向に貫通している。第2連通孔22は、第1閉塞部33cに複数形成されている。複数の第2連通孔22の各流路長は互いに同等になっている。第2連通孔22の内径は、全長にわたって同等になっている。複数の第2連通孔22それぞれにおける流路断面積の総和は、制限通路23の流路断面積の最小値より小さくなっている。
【0053】
中間室35と制限通路23とを連通する連絡孔24が、内筒部33bにおいて、軸方向から見て、内側隔壁33fを周方向に挟む、接続孔27の反対側に位置する部分に形成されている。連絡孔24および接続孔27は、軸方向から見て、内側隔壁33fに周方向で隣接している。副液室側通路26における周方向の他方の端部は、連絡孔24を通して中間室35に連通している。
【0054】
以上説明したように、本実施形態による防振装置2によれば、第2連通孔22が、中間室35と副液室16とを仕切る第1閉塞部33cに形成された貫通孔となっているので、振動入力時に、メンブラン31が弾性変形したときに、液体が、第2連通孔22を通して中間室35と副液室16との間を往来することとなり、動ばねを確実に抑えることができるとともに、周波数が比較的高い、例えばアイドル振動、若しくはこもり音等を減衰、吸収することができる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
副液室側通路26を、主液室側通路25よりも径方向の外側に設けてもよい。
中間室35を、仕切部材17において、制限通路23より径方向の外側に位置する部分に設けてもよい。
前記実施形態では、主液室側通路25における周方向の両端部が、第1連通孔21および接続孔27に各別に連通し、副液室側通路26における周方向の両端部が、接続孔27および第2連通孔22に各別に連通した構成を示したが、主液室側通路25における周方向の中間部が、第1連通孔21および接続孔27のうちの少なくとも一方に連通し、副液室側通路26における周方向の中間部が、接続孔27および第2連通孔22のうちの少なくとも一方に連通してもよい。
【0057】
前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室15に正圧が作用する圧縮式の防振装置1、2について説明したが、主液室15が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室16が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室15に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
本発明に係る防振装置1、2は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、車両用のキャビンマウント若しくはブッシュ、または建設機械に搭載された発電機のマウントに適用することも可能であり、或いは、工場などに設置される機械のマウントに適用することも可能である。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、2 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 弾性体
14 液室
15 主液室
16 副液室
17 仕切部材
20 オリフィス
21 第1連通孔
22 第2連通孔
23 制限通路
24 連絡孔
25 主液室側通路
26 副液室側通路
27 接続孔
31 メンブラン
33c 第1閉塞部(仕切壁)
35 中間室
図1
図2
図3
図4