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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】含フッ素重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20230911BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20230911BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20230911BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20230911BHJP
   C08G 75/04 20160101ALI20230911BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C08G65/40
C08L71/10
C08K5/03
C08K5/56
C08G75/04
C08J3/24 CEZ
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019171979
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2020125446
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019019004
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 友宏
(72)【発明者】
【氏名】福元 博基
(72)【発明者】
【氏名】久保田 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】吉成 和都
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
(72)【発明者】
【氏名】石川 真一
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-500388(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061677(WO,A1)
【文献】特開平04-325237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/48
C08G75/00-75/32
C08G79/00-79/14
C08G 2/00- 2/38
C08G61/00-61/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含み、
前記官能基を2個以上有する単量体が、ビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオール、芳香族ジアミン、芳香族ジハライド、芳香族ジボロン酸及び芳香族ジボロン酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物である、
含フッ素重合体。
【化1】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基、炭素数2~3の含フッ素アルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルコキシ基、またはハロゲン原子である)
【請求項2】
請求項1に記載の含フッ素重合体におけるフッ素部位が含フッ素アルキル基で置換されてなる、下記一般式(3)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含み、
前記官能基を2個以上有する単量体が、ビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオール、芳香族ジアミン、芳香族ジハライド、芳香族ジボロン酸及び芳香族ジボロン酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物である、
含フッ素重合体。
【化3】
(式(3)中、R~Rは、前記式(1)と同じであり、Rfは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、nは1~4の整数である)
【請求項3】
下記一般式(2)で示される化合物を含む含フッ素単量体と、官能基を2個以上有する単量体とを重合させることを特徴とする、請求項1に記載の含フッ素重合体の製造方法であって、
前記官能基を2個以上有する単量体が、ビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオール、芳香族ジアミン、芳香族ジハライド、芳香族ジボロン酸及び芳香族ジボロン酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物である、
方法。
【化2】
(式(2)中、R~Rは、前記式(1)と同じ)
【請求項4】
一般式(1)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含む含フッ素重合体と、下記一般式(4)で表わされる含フッ素アルキルハライドと
を、有機金属化合物の存在下で反応させることを特徴とする、請求項3に記載の含フッ素重合体の製造方法であって、
前記官能基を2個以上有する単量体が、ビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオール、芳香族ジアミン、芳香族ジハライド、芳香族ジボロン酸及び芳香族ジボロン酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物である、
方法。
Rf-(CH-X (4)
(式(4)中、Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、nは1~4の整数であり、Xはハロゲン原子である)
【化3】
(式(3)中、R~Rは、前記式(1)と同じであり、Rfは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、nは1~4の整数である
【請求項5】
請求項1に記載の含フッ素重合体におけるフッ素部位が架橋されてなる架橋物。
【請求項6】
請求項1に記載の含フッ素重合体と芳香族ジハライドとを、有機金属化合物の存在下で架橋反応させることを特徴とする、請求項5に記載の架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体及びその架橋物並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素重合体は、炭素-フッ素結合の性質に起因して、耐薬品性、撥水撥油性、低屈折率性、可視光透過性、低誘電率等の優れた性能を有しており、工業的に使用されている。
【0003】
一方、芳香族重合体は、剛直な分子構造に基づく高い機械的強度や耐熱性等を示し、部品材料、構造材料等として幅広く利用されている。
【0004】
これらの性質を併せ持つ含フッ素芳香族重合体は、光学材料、電子材料、エンジニアリングプラスチック等の機能性材料として重要である。特許文献1には、高い耐熱性と低誘電率を示す含フッ素芳香族重合体が記載されている。しかし、溶剤への溶解性が低く、溶液プロセス等への適用ができない等の課題があった。
【0005】
特許文献2には、溶媒への溶解性を有し、耐熱性や機械的強度を高めるための架橋が可能な含フッ素芳香族重合体が記載されている。しかし、架橋には固体状態で高温条件に付すことが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-91127号公報
【文献】特開2008-56809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の背景技術に鑑み、高い耐熱性、透明性、機械的強度及び溶媒への溶解性を兼ね備え、溶液中で架橋を施すことができる新規含フッ素重合体及びその架橋物並びにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、以下に示す含フッ素重合体が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含む含フッ素重合体及びその架橋物並びにそれらの製造方法に係る発明である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基、炭素数2~3の含フッ素アルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルコキシ基、またはハロゲン原子であり、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基であることが好ましく、中でもベンゼン環におけるトリフルオロビニル基のオルト位のいずれか一方もしくは両方が置換されていることがより好ましい。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶剤への溶解性、透明性、耐熱性等を有し、溶液中での架橋反応により架橋物とすることができ、機能性材料として利用可能な新規含フッ素重合体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた重合体1の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
図2】実施例2で得られた重合体2の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
図3】実施例3で得られた重合体3の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
図4】実施例4で得られた重合体4の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
図5】実施例7で得られた重合体7の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
図6】実施例8で得られた重合体8の粉末X線回折測定の結果であり、横軸(X軸)は回折角2θ(単位はdeg)、縦軸(Y軸)は強度(単位はcps)を示し、図上部は実測値及びフィッティング値であり、図下部は実測値とフィッティング値の差分である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素重合体は、下記一般式(2)で示される化合物を含む含フッ素単量体と、官能基を2個以上有する単量体とを重合させることにより得られる。
【0016】
【化2】
【0017】
(式(2)中、R~Rは上記の式(1)と同じく、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基、炭素数2~3の含フッ素アルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルコキシ基、またはハロゲン原子である)
【0018】
本発明の一般式(2)において、ベンゼン環におけるトリフルオロビニル基のオルト位のいずれか一方もしくは両方は、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~2の含フッ素アルキル基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基、炭素数2~3の含フッ素アルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、炭素数1~2の含フッ素アルコキシ基、炭素数3~4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルコキシ基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0019】
本発明の一般式(2)で示される含フッ素単量体の具体例としては、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ビス(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ビス(パーフルオロブチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ビス(トリフルオロエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジフルオロベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,3-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,3,5-トリメチルベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,3,5-トリフルオロべンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-4,6-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2,4-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-4,5,6-トリメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2,4,5-トリメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2,4,5,6-テトラメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-4,6-ジフルオロべンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2,4,5,6-フルオロベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-4-クロロ-6-フルオロベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-2-フルオロべンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-5-フルオロ-2-(ジフルオロメチル)べンゼン、1,3-ビス(トリフルオロビニル)-5-フルオロ-2-(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-4,5-ジメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,6-ジメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,5-ジメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-4,5-ジフルオロベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,5-ジフルオロベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,4,5-トリメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,4,6-トリメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,4,5,6-テトラメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロビニル)-3,6-ビス(クロロメチル)-4,5-ジメチルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
本発明における官能基を2個以上有する単量体としては、ビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオール、芳香族ジアミン、芳香族ジハライド、芳香族ジボロン酸、芳香族ジボロン酸エステル等が挙げられる。
【0021】
ビスフェノール類の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
芳香族ジオールの具体例としては、ジヒドロキシベンゼン、テトラフルオロジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシターフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシフェナントラセン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
ビスチオフェノール類の具体例としては、4,4’-(2,2’-プロパンジイル)ビスチオフェノール、4,4‘-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2’-プロパンジイル)ビスチオフェノール、4,4‘-(ブタン-2,2-ジイル)ビスチオフェノール、4,4’-(2,2‘-プロパンジイル)ビス(2-メチルチオフェノール)、4,4’-(1,1-エタンジイル)ビスチオフェノール、4,4’-メチレンビスチオフェノール、4,4’-(2,2-プロパンジイル)ビス(2-イソプロピルチオフェノール)、4,4’-スルホニルビスチオフェノール、4,4‘―(1,1-シクロヘキサンジイル)ビスチオフェノール、4,4’-(2,2-プロパンジイル)ビス(2,6-ジブロモチオフェノール)等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】
芳香族ジチオールの具体例としては、ジメルカプトベンゼン、テトラフルオロジメルカプトベンゼン、ジメルカプトビフェニル、ジメルカプトターフェニル、ジメルカプトナフタレン、ジメルカプトアントラセン、ジメルカプトフェナントラセン、ジメルカプトジフェニルエーテル、ジメルカプトジフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
芳香族ジアミンの具体例としては、ジアミノベンゼン、テトラフルオロジアミノベンゼン、ジアミノビフェニル、ジアミノターフェニル、ジアミノナフタレン、ジアミノアントラセン、ジアミノフェナントラセン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
芳香族ジハライドの具体例としては、ジブロモベンゼン、テトラフルオロジブロモベンゼン、ジブロモビフェニル、ジブロモターフェニル、ジブロモナフタレン、ジブロモアントラセン、ジブロモフェナントラセン、ジヨードベンゼン、テトラフルオロジヨードベンゼン、ジヨードビフェニル、ジヨードターフェニル、ジヨードナフタレン、ジヨードアントラセン、ジヨードフェナントラセン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
芳香族ジボロン酸の具体例としては、ベンゼンジボロン酸、ビフェニルジボロン酸、ターフェニルジボロン酸等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
芳香族ジボロン酸エステルの具体例としては、上記芳香族ジボロン酸のピナコールエステル、カテコールエステル、ネオペンチルグリコールエステル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素重合体の製造において、2個以上の官能基を有する単量体としてビスフェノール類、芳香族ジオール、ビスチオフェノール類、芳香族ジチオールまたは芳香族ジアミンを用いる場合は、溶剤中、塩基の存在下で重合反応を行う。このとき用いられる溶剤としては、重合反応に不活性な溶剤であれば特に限定はされないが、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明において、用いられる溶剤は反応に具する含フッ素単量体に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用する。
【0031】
本発明において、重合反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0032】
本発明において、反応温度は0℃~140℃の範囲が好ましく、室温~100℃の範囲がより好ましい。反応時間は1時間~72時間の範囲が好ましく、8時間~48時間の範囲がより好ましい。
【0033】
本発明の一般式(1)で表わされる含フッ素重合体の製造において、官能基を2個以上有する単量体として芳香族ジハライドを用いる場合は、溶剤中、有機金属化合物の存在下で重合反応を行うとよい。
【0034】
用いられる溶剤としては、重合反応に不活性な溶剤であれば特に限定はされないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クメン等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
用いられる溶剤の量としては、反応に具する含フッ素単量体に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用するとよい。
【0036】
本発明において、重合反応に用いられる有機金属化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム試薬;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等の有機リチウムアミド試薬;リチウム金属等を挙げることができ、好ましくは有機リチウム試薬であり、特に好ましくはn-ブチルリチウムである。
【0037】
本発明において、反応温度は-100℃~100℃の範囲が好ましく、-80℃~室温の範囲がより好ましい。反応時間は1時間~72時間の範囲が好ましく、8時間~48時間の範囲がより好ましい。
【0038】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素重合体の製造において、官能基を2個以上有する単量体として芳香族ジボロン酸または芳香族ジボロン酸エステルを用いる場合は、溶剤中、塩基及び触媒の存在下で重合反応を行う。
【0039】
用いられる溶剤としては、重合反応に不活性な溶剤であれば特に限定はされないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クメン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0040】
用いられる溶剤の量としては、反応に具する含フッ素単量体に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用するとよい。
【0041】
重合反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。
【0042】
重合反応に用いられる触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩が挙げられる。さらに、π-アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム等並びに、該パラジウム塩またはパラジウム錯体に配位子が配位した錯体等が挙げられる。
【0043】
配位子としては、遷移金属に配位可能な配位子であれば特に限定されないが、ホスフィン配位子が好ましく、3級ホスフィン配位子がより好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert-ブチルジフェニルホスフィン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2,5-キシリル)ホスフィン、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等が挙げられる。第三級ホスフィンとパラジウム塩又はパラジウム錯体とのモル比は、1:10~10:1が好ましく、1:2~5:1がさらに好ましい。
【0044】
本発明において、反応温度は0℃~140℃の範囲が好ましく、室温~100℃の範囲がより好ましい。反応時間は1時間~72時間の範囲が好ましく、8時間~48時間の範囲がより好ましい。
【0045】
重合反応の終了後、得られた含フッ素重合体を任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から含フッ素重合体を回収する方法としては、再沈殿等公知の方法が挙げられる。
【0046】
本発明の含フッ素重合体の重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは3,000~200,000の範囲である。
【0047】
本発明の一般式(1)で示される構造単位を含む含フッ素重合体は、化合物構造式中のフッ素原子と炭素原子との結合部位であるフッ素部位を反応点として、下記一般式(4)で示される含フッ素アルキルハライドを、有機金属化合物の存在下で反応させる。この反応により、下記一般式(3)で表わされる単量体、すなわち構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含む含フッ素重合体とすることができる。
【0048】
【化3】
【0049】
(式(3)中、R~Rは、前記式(1)と同じであり、Rfは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、nは1~4の整数である)
【0050】
Rf-(CH-X (4)
【0051】
(式(4)中、Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、nは1~4の整数であり、Xはハロゲン原子である)
【0052】
本発明に係る含フッ素アルキルハライドが示される一般式(4)において、Rfは直鎖又は分岐の炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、直鎖の炭素数1~10のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0053】
本発明に係る含フッ素アルキルハライドが示される一般式(4)において、Rfの具体的構造としては、C-、C-、C13-、C17-、C1021-、(CFCF-、(CFCF-(CF-、(CFCF-(CF-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明に係る含フッ素アルキルハライドが示される一般式(4)において、nは1~4の整数であり、2~4が好ましく、2がより好ましい。
【0055】
本発明に係る含フッ素アルキルハライドが示される一般式(4)において、Xはハロゲン原子であり、臭素原子またはヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子がより好ましい。
【0056】
本発明に係る含フッ素アルキルハライドは、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本発明における一般式(3)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含む含フッ素重合体の製造に用いる有機金属化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物;リチウム金属等を挙げることができ、好ましくは有機リチウム化合物であり、特に好ましくはtert-ブチルリチウムである。
【0058】
本発明における一般式(3)で表わされる構造単位及び官能基を2個以上有する単量体に由来する構造単位を含む含フッ素重合体の製造に適用可能な溶剤としては、反応に不活性な溶剤であれば特に限定はされないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クメン等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0059】
溶剤は反応に具する含フッ素重合体に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用するとよい。
【0060】
本発明において、含フッ素アルキルハライドによる置換反応の温度は-100℃~100℃の範囲が好ましく、-80℃~室温の範囲がより好ましい。反応時間は1時間~72時間の範囲が好ましく、8時間~48時間の範囲がより好ましい。
【0061】
置換反応の終了後、得られた架橋物を任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から含フッ素重合体を回収する方法としては、再沈殿等公知の方法が挙げられる。本発明の含フッ素重合体は、含フッ素アルキル基を導入することにより高い撥水撥油性を付与することができ、有用である。
【0062】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素重合体は、フッ素部位を反応点として、芳香族ジハライドを有機金属化合物の存在下で架橋反応させることにより、架橋物とすることができる。架橋物の製造に用いる芳香族ジハライドとしては、ジブロモベンゼン、テトラフルオロジブロモベンゼン、ジブロモビフェニル、ジブロモターフェニル、ジブロモナフタレン、ジブロモアントラセン、ジブロモフェナントラセン、ジヨードベンゼン、テトラフルオロジヨードベンゼン、ジヨードビフェニル、ジヨードターフェニル、ジヨードナフタレン、ジヨードアントラセン、ジヨードフェナントラセン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明における架橋物の製造に用いる有機金属化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム試薬;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等の有機リチウムアミド試薬;リチウム金属等を挙げることができ、好ましくは有機リチウム試薬であり、特に好ましくはn-ブチルリチウムである。
【0064】
本発明における架橋物の製造に適用可能な溶剤としては、架橋反応に不活性な溶剤であれば特に限定はされないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クメン等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0065】
溶剤は反応に具する含フッ素重合体に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用するとよい。
【0066】
本発明において、架橋反応温度は-100℃~100℃の範囲が好ましく、-80℃~室温の範囲がより好ましい。反応時間は1時間~72時間の範囲が好ましく、8時間~48時間の範囲がより好ましい。
【0067】
架橋反応の終了後、得られた架橋物を任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。本発明の含フッ素重合体は、架橋を施すことにより高い機械的強度や溶剤への耐性等を付与することができ、架橋物として有用である。
【実施例
【0068】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0069】
結果の解析に当たっては、下記機器を使用した。
H NMR、19F NMR、13C NMR:ブルカー・バイオスピン株式会社製AVANCE-III NMR分光計
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
装置:島津製LC-20AD
カラム:東ソー製TSKgel GMHHR-M
カラム温度:40℃
溶媒:クロロホルム
検出器:UV(254nm)、RI
TG-DTA:リガク製Thermo plus EVO高分解能作動型熱分解装置
屈折率:アタゴ製多波長屈折計DR-M2
光線透過率及びヘーズ:日本電色製ヘーズメーターNDH-20D
接触角測定:キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-500F粉末X線回折:リガク製SmartLab-SP/IUA X線回折計
【0070】
実施例1
重合体1の合成
【0071】
【化4】
【0072】
シュレンク管(50mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.20g,0.68mmol)と炭酸カリウム(0.38g,2.72mmol)、ヒドロキノン(0.076g,0.68mmol)、脱水DMF(6mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0073】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。灰色固体0.17g,収率67%で重合体1を得た。
【0074】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.25-6.85(m),3.88-3.46(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.79--103.17 (m,Z),-115.01--115.56(m,E),-150.58--151.02(m,Z),-155.63--156.38(m,E)
=4000,M=18500,M/M=4.64
d5%=364(℃)
【0075】
なお上記反応式中、nは一般式1で表わされる1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼンの重合体1中の構造単位の繰り返し数であって、2以上の整数を示し、以下においても同じである。nの数値としては本発明の重合物の分子量により自ずから定まり、2~4000程度(例えば単量体の分子量が300であれば1,000,000程度)となる。
【0076】
実施例2
重合体2の合成
【0077】
【化5】
【0078】
シュレンク管(50mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.20g,0.68mmol)と炭酸カリウム(0.37g,2.68mmol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(0.15g,0.67mmol)、脱水DMF(6mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0079】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.26g,収率79%で重合体2を得た。
【0080】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.24-6.91(m),6.82(s),3.87-3.43(m),1.67-1.61(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.20--103.36 (m,Z),-114.76--115.13(m,E),-151.00--151.38(m,Z),-156.09--156.41(m,E)
=16000,M=26000,M/M=1.63
d5%=330(℃)
【0081】
実施例3
重合体3の合成
【0082】
【化6】
【0083】
シュレンク管(50mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19 g,1.36mmol)、2,2-(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(0.11g,0.34mmol)、脱水DMF(3mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0084】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体 0.096g,収率48%で重合体3を得た。
【0085】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.41-6.91(m),6.80(s),3.90-3.33(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-64.02--64.26(m),-102.76--102.86(m,Z),-115.36--115.71(m,E),-150.18--150.29(m,Z),-154.66--155.01(m,E)
=66200,M=128500,M/M=1.94
d5%=339(℃)
【0086】
実施例4
重合体4の合成
【0087】
【化7】
【0088】
シュレンク管(50mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19g,1.36mmol)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(0.069g,0.34mmol)、脱水DMF(3mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0089】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.11g,収率72%で重合体4を得た。
【0090】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.20-6.88(m),3.88-3.51(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.82--102.90(m,Z),-115.01--115.33(m,E),-151.21--151.31(m,Z),-156.23--156.54(m,E)
=7700,M=20400,M/M=2.64
d5%=325(℃)
【0091】
実施例5
重合体5の合成
【0092】
【化8】
【0093】
シュレンク管(25mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19g,1.36mmol)、4,4‘-(1,3-ジメチルブチリデン)-ジフェノール(0.092g,0.34mmol)、脱水DMF(3mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0094】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.12g,収率67%で重合体5を得た。
【0095】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.20-6.81(m),3.87-3.41(m),2.05-1.96(m),1.66-1.56(m),0.77-0.66(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.27--102.45 (m,Z),-114.87--115.20(m,E),-151.57--151.62(m,Z),-156.18--156.50(m,E)
=22000,M=73000,M/M=3.32
d5%=344(℃)
【0096】
実施例6
重合体6の合成
【0097】
【化9】
【0098】
シュレンク管(25mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19g,1.36mmol)、カテコール(0.037g,0.34mmol)、脱水DMF(3mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0099】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.011g,収率10%で重合体6を得た。
【0100】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.31-6.70(m),6.31-5.95(m),3.86-3.20(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-103.65--104.07(m,Z),-115.95--116.43(m,E),-150.38--150.94(m,Z),-155.34--156.14(m,E)
=4000,M=4700,M/M=1.18
d5%=327(℃)
【0101】
実施例7
重合体7の合成
【0102】
【化10】
【0103】
シュレンク管(25mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19g,1.36mmol)、レゾルシノール(0.037g,0.34mmol)、脱水DMF(3mL)を加えて、アルゴン雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0104】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.054g,収率44%で重合体7を得た。
【0105】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.45-6.83(m),3.87-3.40(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.89--103.39(m,Z),-115.20--115.67(m,E),-149.86--150.27(m,Z),-154.82--155.23(m,E)
=4500,M=15900,M/M=3.53
d5%=329(℃)
【0106】
実施例8
重合体8の合成
【0107】
【化11】
【0108】
シュレンク管(20mL)に1,4-ビス(トリフルオロビニル)-2,5-ジメトキシベンゼン(0.10g,0.34mmol)と炭酸カリウム(0.19g,1.36mmol)、4,4’-チオビスベンゼンチオール(0.084g,0.34mmol)、脱水DMF(6mL)を加えて、窒素雰囲気下室温で48時間撹拌した。
【0109】
撹拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体を良溶媒としてテトラヒドロフラン、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。白色固体0.12g,収率72%で重合体8を得た。
【0110】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.42-7.25(m),7.07-7.6.88(m),3.83-3.63(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-103.10--103.71(m,Z),-113.43--113.55(m,E),-122.69--123.23(m,Z),-124.21--124.74(m,E)
=20500,M=42800,M/M=2.09
d5%=346(℃)
【0111】
本発明の重合体はいずれもTd5%が300℃を超えており、高い耐熱性を有していた。
【0112】
実施例9
重合体3の100mgを酢酸エチルに溶解して5重量%の溶液とし、直径50mmのPFA製シャーレに展開した後、60℃のオーブンで6時間乾燥し、膜厚30μmの無色透明フィルムを得た。他の重合体1、2、4、5および8も同様の方法で無色透明フィルムを得た。これらの結果から、本発明の重合体は溶剤への溶解性と透明性を有していることがわかった。
【0113】
得られた重合体3からなるフィルムの光学特性及び撥水性(水接触角)を測定した。なお接触角は、1μLの純水をフィルム表面に滴下し、顕微鏡で真横から液滴を撮影した画像からθ/2法にて求めた。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
光学測定から、重合体3からなるフィルムは高い光線透過率を有していた。また、接触角測定から、重合体3は撥水性を示すことがわかった。
【0116】
実施例10
実施例1~実施例4及び実施例7、8で得られた重合体1~重合体4、重合体7および重合体8の粉末X線回折測定結果を、それぞれ図1図6に示す。
【0117】
粉末X線回折測定結果から、本発明の重合体はいずれもブロードな回折パターンを与え、非晶質(アモルファス)であることが確認された。このことから、本発明の含フッ素重合体は、高い透明性を与えるものと考えられる。
【0118】
実施例11
架橋物1’の合成
【0119】
【化11】
【0120】
シュレンク管(30mL)に4,4’-ジブロモビフェニル(0.34 g,1.08mmol)と脱水THF(3mL)を加えた。その後、窒素雰囲気下で反応容器を-78℃まで冷却してからn-ブチルリチウム(1.57Mヘキサン溶液,1.4mL,2.3mmol)を滴下し、1時間撹拌した後、実施例1で得た重合体(1)(0.10g,0.27mmol)のTHF(3mL)溶液を加えた。24時間攪拌後、蒸留水(200mL)が入った三角フラスコに反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。
【0121】
撹拌後、テフロン(登録商標)濾紙を用いて吸引濾過を行い、濾紙に残った固体をクロロホルムで洗浄した。黄色固体0.088g,収率68%で有機溶媒に不溶の架橋物(1)’を得た。
【0122】
実施例11について、上記反応式に示すように重合体1を、n-ブチルリチウムの存在下で芳香族ジハライドである4,4’-ジブロモビフェニルと反応させることで、重合体1に記載中の一般式1で表わされる構造単位のフッ素部位(フッ素原子と炭素原子との結合部位)において架橋反応が生じ、芳香族ジハライドが結合して結合鎖が伸長すると共に、他の構造単位とも結合して架橋を起こすものと思われる。その結果、有機溶媒に不溶の架橋物1’が得られている。
【0123】
なお上記反応式中、nは重合体1に記載中の一般式1で表わされる構造単位の繰り返し数であって、2以上の整数である。またmは架橋物1’における芳香族ジハライドに由来するビフェニルの結合の数を示す。
【0124】
実施例12
重合体(3)’の合成
【0125】
【化12】
【0126】
シュレンク管(50mL)に1H,1H,2H,2H-トリフルオロデカフルオロ-n-オクチルヨージド(0.32g, 0.67mmol)と脱水ジエチルエーテル(4mL)を加えた。その後、窒素雰囲気下で反応容器を-78℃まで冷却し、t-ブチルリチウム(1.61Mペンタン溶液, 0.90mL, 1.38mmol)を滴下し、10分間攪拌した後、さらに0℃で10分間攪拌した。再び-78℃まで冷却し、10分間攪拌後、重合体3(0.10g, 0.16mmol)の脱水ジエチルエーテル(3mL)溶液を加えた。20時間攪拌した後、塩酸(1N)を用いて反応を停止し、ジエチルエーテルを用いて抽出、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行った。ろ液は減圧留去してから、ヘキサンで洗浄した。黄色固体0.10g, 収率50%で重合体3’を得た。
【0127】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm) δ=7.46-6.71(m),3.92-3.20(m),2.93-2.77(m),2.50-2.25(m)
19F NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-63.97--64.56(m),-80.72--81.51(m),-102.34--103.19(m,Z),-111.96--112.62(m),-114.75--115.31(m),-115.31--115.96(m,E)-121.63--122.55(m)-122.68--124.33,-125.97--127.00(m),-145.22--145.89(m),-146.62--147.49(m),-149.96--150.55(m),-154.65--155.17(m,E)
【0128】
実施例12について、上記反応式に示すように重合体3をt-ブチルリチウムの存在下、含フッ素アルキルハライドである1H,1H,2H,2H-トリフルオロデカフルオロ-n-オクチルヨージドと反応させることで、重合体3に記載中の一般式1で表わされる構造単位のフッ素部位(フッ素原子と炭素原子との結合部位)において置換反応が生じ、含フッ素アルキル基が結合するものと考えられる。その結果、重合体3’が得られている。
【0129】
実施例13
重合体3’100mgを酢酸エチルに溶解して100mgを酢酸エチルに溶解して5重量%の溶液とし、直径50mmのPFA製シャーレに展開した後、60℃のオーブンで6時間乾燥し、膜厚30μmの無色透明フィルムを得た。
【0130】
得られた重合体3’からなるフィルムの撥水性(水接触角)を実施例9と同様の方法で測定したところ、接触角は104°であり、重合体3からなるフィルムと比較して撥水性が向上していることが分かった。さらに、重合体3’からなるフィルムの撥油性(ヘキサデカン接触角)を実施例9と同様の方法で測定したところ、接触角は59°であり、ヘキサデカンが浸透した重合体3からなるフィルムと比較して撥油性を示すことが確認された。実施例12に記載の反応により、含フッ素アルキル基が結合した結果、撥水撥油性が向上したものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6