IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-食品洗浄システム 図1
  • 特許-食品洗浄システム 図2
  • 特許-食品洗浄システム 図3
  • 特許-食品洗浄システム 図4
  • 特許-食品洗浄システム 図5
  • 特許-食品洗浄システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】食品洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/02 20060101AFI20230911BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20230911BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230911BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A23N12/02 Q
B08B3/08 Z
C02F1/461 Z
A61L2/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019174182
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021048796
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 喜智
(72)【発明者】
【氏名】門脇 昌作
(72)【発明者】
【氏名】川越 大樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 修三
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097514(JP,A)
【文献】特開2007-089635(JP,A)
【文献】特開2018-050508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/00-12/06
B08B 3/00- 3/14
C02F 1/461
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水を生成する電解水生成装置と、
前記電解水生成装置により生成された電解水を事前に貯めておくための電解水タンクを含むリザーブタンクと、
被洗浄物である食品を収容する洗浄槽を有する食品洗浄装置と、
前記電解水生成装置により生成された電解水を前記洗浄槽に供給する第1の電解水供給経路と、
前記電解水タンクに貯められた電解水を前記洗浄槽に供給する第2の電解水供給経路と、
前記食品洗浄装置において食品を除菌洗浄する際に、前記第1の電解水供給経路を介した電解水の給水と前記第2の電解水供給経路を介した電解水の給水とを並行して行うことにより、前記洗浄槽に電解水を貯水する制御を行う洗浄制御部とを備え
前記リザーブタンクは、上水を事前に貯めておくための上水タンクをさらに含み、
上水道から上水を前記洗浄槽に供給する第1の上水供給経路と、
前記上水タンクに貯められた上水を前記洗浄槽に供給する第2の上水供給経路とをさらに備え、
前記洗浄制御部は、前記第1の上水供給経路を介した上水の給水と前記第2の上水供給経路を介した上水の給水とを並行して行うことにより、前記洗浄槽に上水を貯水する制御を行う、食品洗浄システム。
【請求項2】
前記第2の電解水供給経路および前記第2の上水供給経路は、独立して設けられており、
前記洗浄制御部は、前記洗浄槽に、上水で希釈した電解水を貯水する場合に、前記第1および第2の電解水供給経路を介した電解水の給水と並行して、前記第1および第2の上水供給経路を介して上水を給水する、請求項に記載の食品洗浄システム。
【請求項3】
前記第2の電解水供給経路および前記第2の上水供給経路は、途中位置において合流しており、
前記第2の電解水供給経路および前記第2の上水供給経路に共通に設けられた圧送ポンプをさらに備える、請求項に記載の食品洗浄システム。
【請求項4】
前記洗浄制御部は、前記洗浄槽内の電解水が満水レベルよりも下位の所定レベルに達した場合に、少なくとも前記第1の電解水供給経路を介した電解水の給水を継続させた状態で、前記洗浄槽内の電解水の循環処理を開始する、請求項1~のいずれかに記載の食品洗浄システム。
【請求項5】
前記洗浄制御部は、前記循環処理による洗浄サイクルが終了するよりも前に、前記洗浄槽への電解水の供給を停止するとともに、前記洗浄槽内の電解水の有効塩素濃度の計測を開始し、
前記洗浄制御部は、計測した有効塩素濃度が所定値未満であれば前記洗浄サイクルを終了し、前記所定値以上であれば前記洗浄サイクルを繰り返し実行し、
当該食品洗浄システムは、前記洗浄槽内の電解水の有効塩素濃度が計測されている期間、前記電解水生成装置で生成された電解水の供給先を、前記洗浄槽から前記リザーブタンクに切り替えて、前記電解水タンクに電解水を補充するリザーブ制御部をさらに備える、請求項に記載の食品洗浄システム。
【請求項6】
前記電解水生成装置は、基準濃度の電解水を生成する標準モードと、前記基準濃度よりも高い濃度の電解水を生成する高濃度モードとを有しており、
前記洗浄制御部は、1回目の洗浄サイクルにおいて、前記電解水生成装置を前記標準モードで作動させ、2回目以降の洗浄サイクルを開始する際に、前記電解水生成装置による電解水の生成モードを、前記標準モードから前記高濃度モードに切り替える、請求項に記載の食品洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を用いて青果などの食品を洗浄する食品洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微酸性電解水(次亜塩素酸水)などの電解水を用いて、食品を洗浄する食品洗浄装置が存在する。特開2019-97514号公報(特許文献1)には、電解水による一定時間の洗浄後の有効塩素濃度の測定結果に応じて、殺菌力を高めた時短洗浄モードを次の洗浄モードとして決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-97514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電解水の濃度を調整することによって、洗浄サイクルの繰り返しを防止することは可能であるが、食品の洗浄時間をより効率的に短縮できる技術が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、食品の洗浄時間を効率的に短縮することのできる食品洗浄システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に従う食品洗浄システムは、電解水を生成する電解水生成装置と、電解水生成装置により生成された電解水を事前に貯めておくための電解水タンクを含むリザーブタンクと、被洗浄物である食品を収容する洗浄槽を有する食品洗浄装置と、電解水生成装置により生成された電解水を洗浄槽に供給する第1の電解水供給経路と、電解水タンクに貯められた電解水を洗浄槽に供給する第2の電解水供給経路と、洗浄制御部とを備える。洗浄制御部は、食品洗浄装置において食品を除菌洗浄する際に、第1の電解水供給経路を介した電解水の給水と第2の電解水供給経路を介した電解水の給水とを並行して行うことにより、洗浄槽に電解水を貯水する制御を行う。
【0007】
好ましくは、リザーブタンクは、上水を事前に貯めておくための上水タンクをさらに含み、上水道から上水を洗浄槽に供給する第1の上水供給経路と、上水タンクに貯められた上水を洗浄槽に供給する第2の上水供給経路とをさらに備える。この場合、洗浄制御部は、たとえば食品をすすぎ洗浄する際に、第1の上水供給経路を介した上水の給水と第2の上水供給経路を介した上水の給水とを並行して行うことにより、洗浄槽に上水を貯水する制御を行うことが望ましい。
【0008】
好ましくは、第2の電解水供給経路および第2の上水供給経路は、独立して設けられている。この場合、洗浄制御部は、洗浄槽に、上水で希釈した電解水を貯水する場合に、第1および第2の電解水供給経路を介した電解水の給水と並行して、第1および第2の上水供給経路を介して上水を給水することができる。
【0009】
あるいは、第2の電解水供給経路および第2の上水供給経路は、途中位置において合流していてもよい。この場合、食品洗浄システムは、第2の電解水供給経路および第2の上水供給経路に共通の圧送ポンプを備えていればよい。
【0010】
好ましくは、洗浄制御部は、洗浄槽内の電解水が満水レベルよりも下位の所定レベルに達した場合に、少なくとも第1の電解水供給経路を介した電解水の給水を継続させた状態で、洗浄槽内の電解水の循環処理を開始する。
【0011】
好ましくは、洗浄制御部は、所定時間、洗浄槽内の食品を循環処理によって洗浄する洗浄サイクルを、洗浄槽内の電解水の有効塩素濃度が所定値以上となるまで繰り返し実行する。この場合、食品洗浄システムは、洗浄槽内の電解水の有効塩素濃度が計測されている期間、電解水生成装置で生成された電解水の供給先を、洗浄槽からリザーブタンクに切り替えて、電解水タンクに電解水を補充するリザーブ制御部をさらに備えることが望ましい。
【0012】
好ましくは、電解水生成装置は、基準濃度の電解水を生成する標準モードと、基準濃度よりも高い濃度の電解水を生成する高濃度モードとを有している。この場合、洗浄制御部は、1回目の洗浄サイクルにおいて、電解水生成装置を標準モードで作動させ、2回目以降の洗浄サイクルを開始する際に、電解水生成装置による電解水の生成モードを、標準モードから高濃度モードに切り替えることが、さらに望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品の洗浄時間を効率的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る食品洗浄システムの概略構成を模式的に示す図であり、(A)は外観例を示し、(B)は回路構成例を示している。
図2】本発明の実施の形態に係る食品洗浄システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る食品洗浄システムの基本動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態における除菌洗浄処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態におけるすすぎ洗浄処理を示すフローチャートである。
図6】(A)は、比較例における食品洗浄処理のタイムチャートであり、(B)は、本発明の実施の形態における食品洗浄処理のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
<概略構成>
図1は、本実施の形態に係る食品洗浄システム1の概略構成を模式的に示す図であり、(A)は外観例を示し、(B)は回路構成例を示している。
【0017】
食品洗浄システム1は、電解水を生成する生成部21を有する電解水生成装置2と、被洗浄物である食品を収容する洗浄槽31を有する食品洗浄装置3と、食品洗浄装置3による食品洗浄前に(事前に)、電解水および上水を個別に貯めておくためのリザーブタンク4とを備えている。すなわち、リザーブタンク4は、電解水生成装置2により生成された電解水を事前に貯めておくための電解水タンク41と、上水を事前に貯めておくための上水タンク42とを含んでいる。
【0018】
食品洗浄装置3の洗浄槽31への電解水の供給経路は、第1および第2の電解水供給経路E1,E2により構成されている。第1の電解水供給経路E1は、電解水生成装置2から洗浄槽31に電解水を供給する経路であり、第2の電解水供給経路E2は、電解水タンク41から洗浄槽31に電解水を供給する経路である。電解水生成装置2には、洗浄槽31へ至る第1の電解水供給経路E1と、電解水タンク41に至る第3の電解水供給経路E3とが接続されている。
【0019】
食品洗浄装置3の洗浄槽31への上水の供給経路は、第1および第2の上水供給経路W1,W2により構成されている。第1の上水供給経路W1は、上水道11から洗浄槽31に上水を供給する経路であり、第2の上水供給経路W2は、上水タンク42から洗浄槽31に上水を供給する経路である。上水道11には、洗浄槽31へ至る第1の上水供給経路W1と、上水タンク42に至る第3の上水供給経路W3とが接続されている。
【0020】
生成部21は、電気分解によって電解水を生成する。生成部21は、たとえば、無隔膜の電解槽(図示せず)を有し、希薄食塩水を電解槽内で電気分解することによって、電解水としての次亜塩素酸水を生成する。次亜塩素酸水は、除菌力のある次亜塩素酸と、酸化力の大きいヒドロキシルラジカルとを含む水である。生成部21は、たとえば40ppm(35~50ppm)程度の基準濃度の電解水を生成する標準モードと、たとえば60ppm(55~70ppm)程度の高濃度の電解水を生成する高濃度モードとを有している。
【0021】
生成部21には、第1の電解水供給経路E1および第3の電解水供給経路E3が接続されている。電解水生成装置2は、電解水供給経路E1,E3ごとに設けられた圧送ポンプ22,24および電磁バルブ(以下「給水バルブ」という)23,25を含む。生成部21から洗浄槽31/電解水タンク41への給水量(圧送量)は、一例として8L/分程度である。
【0022】
食品洗浄装置3は、被洗浄物としての食品を収容する洗浄槽31を有している。洗浄槽31には、上記した2つの電解水供給経路E1,E2および2つの上水供給経路W1,W2に加え、循環経路30および排水経路35が接続されている。なお、洗浄槽31の満水レベルが80Lであるとすると、電解水タンク41および上水タンク42各々の容量はたとえば60Lである。電解水タンク41および上水タンク42各々の容量は、たとえば、洗浄槽31の容量の1/2以上1未満である。
【0023】
循環経路30は、洗浄槽31に設けられた吸込み口30aから洗浄槽31に設けられた戻し口30bに至る経路である。循環経路30の吸込み口30aおよび戻し口30bは、洗浄槽31の側壁部に設けられる。吸込み口30aおよび戻し口30bは、満水レベルの1/3以上2/3以下の高さに設けられることが望ましく、本実施の形態では、満水レベルの1/2付近の高さに配置されている。
【0024】
循環経路30には、循環ポンプ34が設けられている。循環ポンプ34の駆動によって、吸込み口30aから取水した洗浄槽31内の洗浄水(電解水および上水を含む)が戻し口30bから吐出される。吸込み口30aおよび戻し口30bは対角位置に設けられていることが望ましい。これにより、洗浄槽31内に発生する水流によって、洗浄槽31内の食品を効率良く洗浄することができる。
【0025】
排水経路35は、洗浄槽31の排水口35aに接続されている。排水経路35には、電磁バルブ(以下「排水バルブ」という)36が設けられている。排水バルブ36が開状態のとき、洗浄槽31内の洗浄水が排水経路35を介して排水される。排水口35aは、洗浄槽31の底壁に位置する。洗浄槽31の側壁部には、満水レベルを超えた洗浄水を排水するためのオーバーフロー口32が設けられている。
【0026】
リザーブタンク4は、第2の電解水供給経路E2および第2の上水供給経路W2の各々に設けられた圧送ポンプ43,45および電磁バルブ(以下「給水バルブ」という)44,46を含む。各タンク41,42から洗浄槽31への給水量(圧送量)は、生成部21からの供給量の1.5倍以上であり、たとえば2倍(一例として16L/分程度)である。
【0027】
上水道11に接続された第1の上水供給経路W1および第3の上水供給経路W3のそれぞれにも、電磁バルブ(以下「上水給水バルブ」という)12,13が設けられている。上水給水バルブ12,13が全開状態のときの上水の給水量は、リザーブタンク4からの給水量と同程度であってよい。
【0028】
このように、電解水供給経路E2および上水供給経路W2が独立して(並列に)設けられている場合、圧送ポンプ43,45を同時に駆動することで、リザーブタンク4から洗浄槽31に、電解水および上水の両方を同時に供給することが可能である。
【0029】
<機能構成>
図2は、本実施の形態に係る食品洗浄システム1の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0030】
食品洗浄システム1は、システム全体の制御を行う制御装置5を備えている。制御装置5は、各種演算処理を行う制御部51と、ユーザからの指示を受け付ける操作部52と、各種データおよびプログラムを記憶するための記憶部53と、計時動作を行う計時部54とを含む。
【0031】
制御部51は、上記した生成部21、循環ポンプ34、圧送ポンプ22,24,43,45、上水給水バルブ12,13、給水バルブ23,25,44,46、および排水バルブ36と電気的に接続されている。また、制御部51は、洗浄槽31内の電解水の有効塩素濃度を計測する濃度計37と電気的に接続されている。濃度計37は、たとえば循環経路30から分岐した分岐経路に設けられている。これにより、循環ポンプ34の駆動力によって、吸込み口30aから取水した電解水の一部を、濃度計37が設けられた分岐経路に分配することができる。
【0032】
制御部51は、その機能として、生成制御部61と、洗浄制御部62と、リザーブ制御部63とを有している。
【0033】
生成制御部61は、電解水生成装置2に電解水を生成させる制御を行う。生成制御部61は、生成部21を、標準モードまたは高濃度モードで作動させる。
【0034】
洗浄制御部62は、各部を制御して、洗浄槽31内の食品の洗浄処理を実行する。洗浄制御部62は、操作部52によって自動運転コースが選択された場合に、電解水による除菌洗浄処理、および、上水によるすすぎ洗浄処理を順に実行する。除菌洗浄処理では、洗浄槽31への電解水の貯水処理、および、電解水の循環処理が行われる。電解水の循環処理は所定時間(たとえば5分)行われる。すすぎ洗浄処理では、洗浄槽31への上水の貯水処理、および、上水の循環処理が行われる。上水の循環処理は、電解水の循環処理よりも短い時間(たとえば1分)行われる。なお、除菌洗浄処理においては、食品の汚れを効率的に除去するために、満水レベルの電解水をオーバーフローさせながら循環させることが望ましい。
【0035】
図6(A)には、比較例における食品洗浄処理のタイムチャートが示されている。比較例では、電解水の供給経路が、電解水生成装置2に接続された電解水供給経路E1しかなく、上水の供給経路が、上水道11に接続された上水供給経路W1しかない。
【0036】
比較例においては、電解水を満水レベルまで貯めてから、循環洗浄を開始している。この例では、早期に循環洗浄を開始するために、最初の3分程度は上水も供給している。つまり、上水で希釈した電解水が、洗浄槽に給水されている。この場合の電解水の貯水時間は、電解水のみを給水する場合の時間よりも短く、約5分である。
【0037】
比較例においても、電解水の循環処理は5分を1サイクルとし、有効塩素濃度の測定値が所定値(たとえば30ppm)以上となるまで(つまり、除菌完了と判定されるまで)、洗浄サイクルが繰り返される。図6(A)では、1回の洗浄サイクルだけで除菌完了と判定された例が示されている。
【0038】
除菌洗浄が完了すると、洗浄槽31内の電解水が排水された後に、すすぎ洗浄が開始される。すすぎ洗浄においても、上水を満水レベルまで貯めてから、循環洗浄を開始している。上水の貯水時間も約5分である。すすぎ洗浄においては、1分の循環洗浄が1回だけ行われる。すすぎ洗浄が完了すると、洗浄槽31内の上水が全て排水され、食品洗浄処理が終了する。
【0039】
この比較例では、除菌洗浄の洗浄サイクルが1回で完了したとしても、食品洗浄処理に要する時間はトータルで21分である。これに対し、本実施の形態では、上述のように、電解水供給経路および上水供給経路がそれぞれ二系統あるため、トータルの洗浄時間を短縮することができる。
【0040】
図6(B)には、本実施の形態における食品洗浄処理のタイムチャートが示されている。本実施の形態においても、洗浄開始時は上水で希釈した電解水が供給される。具体的には、電解水および上水の通常ルート、すなわち電解水供給経路E1および上水供給経路W1に加え、リザーブタンク4に接続された電解水供給経路E2および上水供給経路W2からも電解水および上水がそれぞれ給水される。この場合、電解水および上水の給水を開始してから2分程度で満水レベルになる。そのため、電解水の貯水時間は、約2分であり、比較例に比べて3分程度短縮されている。
【0041】
また、本実施の形態では、電解水の水位が満水レベルに達するよりも前に、循環洗浄を開始している。つまり、電解水の水位が循環経路30の吸込み口30aおよび戻し口30bを越えた時点で(電解水および上水の供給を開始してからたとえば1分後に)、循環洗浄を開始している。そのため、循環洗浄の洗浄サイクルが1回のみで終了した場合の除菌洗浄時間は、約6分であり、比較例に比べて4分程度短縮されている。
【0042】
すすぎ洗浄においても、上水の通常ルート、すなわち上水供給経路W1に加え、リザーブタンク4に接続された上水供給経路W2からも上水が供給される。この場合、上水の供給を開始してから約2.5分で満水レベルになる。すすぎ洗浄における循環洗浄も、上水の水位が満水レベルに達するよりも前に、すなわち循環経路30の吸込み口30aおよび戻し口30bを越えた時点で(上水の供給を開始してからたとえば1.5分後に)、開始されている。なお、すすぎ洗浄においては、上水が満水レベルに達したと同時に循環洗浄が終了してもよい。この場合のすすぎ洗浄時間は、約2.5分であり、比較例よりも3.5分程度短くなっている。
【0043】
上記より、本実施の形態において食品洗浄処理に要する時間はトータルで13.5分であり、比較例よりも7.5分短縮することができる。
【0044】
ところで、食品の汚れが酷いほど、除菌洗浄における洗浄サイクルの回数が多くなってしまう。そうすると、リザーブタンク4を設けたことによって洗浄水(電解水および上水)の貯水時間を短縮できたとしても、5分の洗浄サイクルが繰り返されるとトータルの洗浄時間が長くなってしまう。
【0045】
食品の洗浄水として適用できる電解水は、80ppm以下の有効塩素濃度であればよいとされているため、常時、たとえば60ppmや70ppmなど比較的高い濃度の電解水を生成することも考えられる。しかしながら、常時、高濃度の電解水を生成すると、生成部21における電気分解の負荷の増大および電解溶液の消費量の増加を招くとともに、塩素臭によって環境が悪化するおそれがある。そのため、本実施の形態では、標準モードの電解水の有効塩素濃度を、十分な酸化力(殺菌力)を発揮できる濃度(35~50ppm)としながら、再洗浄時にのみ、生成部21による電解水の生成モードを標準モードから高濃度モードに切り替える。つまり、生成制御部61は、1回目の洗浄サイクルにおいては、生成部21を標準モードで作動させ、2回目以降の洗浄サイクルを開始する際に、生成部21を高濃度生成モードで作動させる。
【0046】
リザーブ制御部63は、リザーブタンク4に電解水および上水を貯める処理を実行する。具体的には、リザーブ制御部63は、給水バルブ25を開状態とし、圧送ポンプ24を駆動することにより、電解水生成装置2の生成部21で生成された電解水を、第3の電解水供給経路E3を介して電解水タンク41に給水する。電解水タンク41に給水される電解水の濃度は、標準モードに対応する濃度である。また、リザーブ制御部63は、上水給水バルブ13を開状態とすることで、第3の上水供給経路W3を介して上水を上水タンク42に給水する。
【0047】
リザーブ制御部63は、基本的には、洗浄制御部62による洗浄処理が実行されていない期間に、電解水および上水を各タンクの満水レベルまで貯水する制御を行う。
【0048】
<動作について>
図3は、食品洗浄システム1の基本動作を示すフローチャートである。なお、図3に示す一連の食品洗浄処理は、制御装置5の制御部51が、記憶部53に予め記憶された食品洗浄プログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、食品洗浄処理が開始される前は、各バルブは閉状態であり、循環ポンプおよび圧送ポンプはOFFである。
【0049】
操作部52を介して自動運転開始の指示が入力されると(ステップS2にてYES)、制御部51の洗浄制御部62が自動運転モードで作動する。自動運転モードでは、はじめに除菌洗浄処理が実行される(ステップS3)。除菌洗浄処理については、図4にサブルーチンを挙げて後に説明する。
【0050】
除菌洗浄処理が終わると、洗浄制御部62は、排水バルブ36を開状態とし、排水処理を実行する(ステップS4)。これにより、洗浄槽31内の電解水が、自重により排水口35aから排水される。
【0051】
排水処理が終わると、すすぎ洗浄処理が実行される(ステップS5)。すすぎ洗浄処理については、図5にサブルーチンを挙げて後に説明する。すすぎ洗浄処理が終わると、再び排水処理が実行される(ステップS6)。ここでの排水処理は、上記S4の排水処理と同様であってよい。以上で、自動洗浄処理が終了する。
【0052】
(除菌洗浄処理)
図4は、洗浄制御部62が実行する除菌洗浄処理を示すフローチャートである。
【0053】
洗浄制御部62は、まず、電解水の貯水処理を実行する(ステップS101)。具体的には、給水バルブ23,44を開状態とし、圧送ポンプ22,43をONにして、第1および第2の電解水供給経路E1,E2の双方を介して電解水を給水するとともに、上水給水バルブ12,13を開状態とし、圧送ポンプ45をONにして、第1および第2の上水供給経路W1,W2の双方を介して上水を給水する。つまり、洗浄制御部62は、第1の電解水供給経路E1を介した電解水の給水と第2の電解水供給経路E2を介した電解水の給水とを並行して行うとともに、第1の上水供給経路W1を介した上水の給水と第2の上水供給経路W2を介した上水の給水とを並行して行う。
【0054】
洗浄槽31の側壁部に、これらの供給経路E1,E2,W1,W2の給水口31a~31d(図1(B))が個別に設けられている場合、4つの給水口31a~31dからの水流によって、電解水を撹拌することができる。したがって、洗浄槽31内の有効塩素濃度の均一化を図ることができる。なお、図1(B)に示した給水口31a~31dの位置および高さは一例である。
【0055】
電解水の供給開始から所定時間(たとえば1分)が経過すると(ステップS103にてYES)、洗浄制御部62は、上水の給水を停止する(ステップS105)。具体的には、上水給水バルブ12および給水バルブ46を閉状態とするとともに圧送ポンプ45をOFFにして、第1および第2の上水供給経路W1,W2を介した上水の給水を停止する。これにより、第1および第2の電解水供給経路E1,E2を介した電解水の給水のみが継続される。
【0056】
本実施の形態では、この時点において、洗浄槽31内の洗浄水(電解水)の水位は、吸込み口30aおよび戻し口30bよりも上の中レベル(所定レベル)に達しているため、第1および第2の電解水供給経路E1,E2を介した電解水の給水と並行して、電解水の循環を開始する(ステップS106)。つまり、循環ポンプ34をONにし、循環経路30を介した電解水の循環処理(洗浄サイクル)を開始する。
【0057】
電解水の供給開始から所定時間(たとえば2分)が経過し、上水の給水を停止してからたとえば1分が経過すると(ステップS107にてYES)、洗浄槽31内の電解水が満水レベルに達したと判断し、第2の電解水供給経路E2を介したリザーブタンク4からの電解水の給水を停止する(ステップS108)。これにより、循環経路30を介した電解水の循環と並行して、第1の電解水供給経路E1を介した電解水の給水だけが行われる。なお、第2の電解水供給経路E2を介した電解水の給水は、循環処理の開始と同時に終了してもよい。つまり、洗浄制御部62は、少なくとも第1の電解水供給経路E1を介した電解水の給水を継続させた状態で、循環処理を開始すればよい。
【0058】
洗浄サイクル開始から所定時間(たとえば3分)が経過すると(ステップS111にてYES)、洗浄制御部62は、電解水の給水を停止するとともに(ステップS112)、濃度計37をオンにする(ステップS113)。1サイクル終了時間(たとえば5分)よりも前に濃度計37をオンにすることで、1サイクル終了時に、安定した計測値(有効塩素濃度)を得ることができる。
【0059】
ここで、本実施の形態では、濃度計37による計測タイミングにおいて、リザーブ制御部63が、電解水のリザーブ処理を行う。つまり、濃度計37がオンとなった場合に、リザーブ開始タイミングと判断し(ステップS121にてYES)、電解水生成装置2から電解水タンク41への電解水の給水(補充)を開始する(ステップS123)。
【0060】
具体的には、給水バルブ25を開状態とし、圧送ポンプ24をONにすることで、電解水生成装置2において標準モードで生成された電解水を、第3の電解水供給経路E3を介して電解水タンク41に給水する。電解水は、水位が下がった分だけ供給されればよいため、満水レベルまで補充が完了した時点で(ステップS125にてYES)、電解水タンク41への電解水の給水を終了する(ステップS127)。
【0061】
なお、上水タンク42への上水の給水(補充)は、ステップS105において上水の供給を停止してからすすぎ洗浄が開始するまでの間に行われてもよい。
【0062】
洗浄制御部62は、洗浄サイクル終了時に濃度計37により計測された濃度が所定値以上であれば(ステップS115にてYES)、除菌が完了したと判断して、濃度計37をOFFにするとともに、循環ポンプ34を停止する(ステップS119)。これにより、除菌洗浄処理が終了し、処理はメインルーチンに戻される。なお、ステップS155での所定値は、許容範囲の下限値を示し、たとえば10ppmである。
【0063】
一方、濃度計37により計測された濃度が所定値未満であれば(ステップS115にてNO)、除菌が不十分と判断して、循環洗浄をもう1サイクル追加する。
【0064】
このとき(つまり、次の洗浄サイクル開始時に)、洗浄制御部62は、電解水生成装置2における電解水の生成モードを標準モードから高濃度モードに切り替えて(ステップS117)、第1の電解水供給経路E1を介した電解水の給水を再開する(ステップS118)。生成制御部61は、モード切り替えの指令を受けると、電解水生成装置2の生成部21に高濃度の電解水を生成させる。これにより、2回目の洗浄サイクル以降は、高濃度の電解水が、第1の電解水供給経路E1を介して洗浄槽31に給水される。
【0065】
高濃度の電解水の給水が再開されると、ステップS111に戻り、上述の洗浄サイクルを繰り返す。
【0066】
(すすぎ洗浄処理)
図5は、洗浄制御部62が実行するすすぎ洗浄処理を示すフローチャートである。
【0067】
洗浄制御部62は、まず、上水の貯水処理を実行する(ステップS201)。すなわち、上水給水バルブ12,13を開状態とし、圧送ポンプ45をONにして、第1および第2の上水供給経路W1,W2の双方を介して洗浄槽31への上水の給水を開始する。つまり、洗浄制御部62は、第1の上水供給経路W1を介した上水の給水と第2の上水供給経路W2を介した上水の給水とを並行して行う。
【0068】
上水の給水が開始されてから所定時間(たとえば1.5分)が経過すると(ステップS203にてYES)、上水の給水を継続したまま、洗浄水(上水)の循環を開始する(ステップS205)。つまり、循環ポンプ34をONにし、循環経路30を介した洗浄水の循環処理を開始する。
【0069】
洗浄水の循環処理は、所定時間(たとえば1分)行われる。洗浄水の循環処理を開始してから所定時間が経過すると(ステップS207にてYES)、上水の給水および循環を停止する(ステップS211)。以上ですすぎ洗浄処理が終了し、処理はメインルーチンに戻される。
【0070】
以上説明した本実施の形態によれば、食品洗浄システム1がリザーブタンク4を備えるため、洗浄槽31への電解水および上水の給水を、それぞれ二系統で実施することができる。これにより、電解水および上水の貯水処理に要する時間を短縮することができる。したがって、循環洗浄の時間を、図6(A)に示した比較例と同じ時間としたままで、トータルの食品洗浄時間を効率的に短縮できる。
【0071】
なお、本実施の形態では、電解水の貯水処理の際に、電解水および上水の各々を二系統で給水する例について説明したが、上水は通常ルートの一系統であってもよい。つまり、洗浄制御部62は、洗浄槽31に電解水を貯水する際に、少なくとも、第1の電解水供給経路E1を介した電解水の給水と第2の電解水供給経路E2を介した電解水の給水とを並行して行えばよい。
【0072】
この場合、リザーブタンク4に接続された第2の電解水供給経路E2および第2の上水供給経路W2は、途中位置において合流していてもよい。つまり、リザーブタンク4から食品洗浄装置3に引き出される配管は、1本であってもよい。この場合、リザーブタンク4から洗浄槽31に、電解水および上水が選択的に供給される。このように、リザーブタンク4から食品洗浄装置3に引き出される配管を1本とする場合、圧送ポンプを、第2の電解水供給経路E2および第2の上水供給経路W2に共通(1つ)とすることができるため、食品洗浄システム1の製造コストおよび消費電力を抑えることができる。
【0073】
あるいは、本実施の形態では、リザーブタンク4が電解水タンク41および上水タンク42を含むこととしたが、リザーブタンク4は電解水タンク41だけを含んでいてもよい。この場合であっても、電解水の貯水時間を短縮できるため、食品洗浄時間の短縮を図ることができる。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 食品洗浄システム、2 電解水生成装置、3 食品洗浄装置、4 リザーブタンク、5 制御装置、11 上水道、21 生成部、30 循環経路、31 洗浄槽、35 排水経路、37 濃度計、41 電解水タンク、42 上水タンク、E1 第1の電解水供給経路、E12 第2の電解水供給経路、E3 第3の電解水供給経路、W1 12の上水供給経路、W2 第2の上水供給経路、W3 第3の上水供給経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6