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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】エアフィルタ清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 41/04 20060101AFI20230911BHJP
   B01D 46/24 20060101ALI20230911BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B01D41/04
B01D46/24 Z
B60S5/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019187113
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062321
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512105598
【氏名又は名称】日立建機日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友明
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 三郎
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221422(JP,A)
【文献】特開2013-252481(JP,A)
【文献】特開2000-354718(JP,A)
【文献】特開平10-184467(JP,A)
【文献】特開2004-308458(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107019962(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-41/04
B01D46/00-46/90
B60S3/00-13/02
F02M35/08
B08B5/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の清掃室と、
前記清掃室の内部に平行に渡された2本のローラと、
前記2本のローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動装置と、
前記2本のローラの上方に位置するように前記清掃室の内部に配置されたエアノズルとを備え、
前記2本のローラの上に置いた円筒状のエアフィルタに、前記エアフィルタの内側に通した前記エアノズルから空気を吹き付けて前記エアフィルタを清掃するエアフィルタ清掃装置において、
前記エアノズルが、
前記清掃室の内部で前記2本のローラに沿って延びるノズル本体と、
前記ノズル本体の一端に設けられ空気供給源と接続するコネクタと、
下向きに開口し前記2本のローラが延びる方向に並べて配置された複数の噴射孔からなる噴射孔列とを含んで構成されており、
前記空気供給源から前記エアフィルタ清掃装置に供給される空気の全量が、前記複数の噴射孔から前記2本のローラの間に向かって下方に噴出するように構成されていることを特徴とするエアフィルタ清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアフィルタ清掃装置において、前記噴射孔列の長さは、前記2本のローラの外周面を形成する弾性材の軸方向長さより長いことを特徴とするエアフィルタ清掃装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエアフィルタ清掃装置において、
前記エアノズルは、
前記ノズル本体の内部を延びる主流路と、
前記主流路から分岐して対応する噴射孔に接続する複数の支流路と、
前記複数の支流路にそれぞれ設けられ、対応する支流路を開閉する複数の弁と
を備えていることを特徴とするエアフィルタ清掃装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエアフィルタ清掃装置において、前記2本のローラの外周面が弾性材で形成されていることを特徴とするエアフィルタ清掃装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエアフィルタ清掃装置において、前記清掃室は、吸気口と、前記吸気口に取り付けた逆止弁又は開閉蓋とを備えていることを特徴とするエアフィルタ清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、ホイールローダ、クレーン等の建設機械を含む産業機械のエンジンに燃焼用の空気を供給する吸気配管に設置されるエアフィルタを清掃するためのエアフィルタ清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械では、土砂の掘削や積込等の高負荷作業を行うことからエンジンは定格の一定回転数で駆動され、エンジンには大流量の空気を供給する必要がある。掘削作業等では多くの塵埃が発生するので、油圧ショベルのエンジンの吸気配管には塵埃を捕集するエアフィルタを設ける必要がある。エアフィルタにはエンジン稼働時間の経過に伴って塵埃が堆積していくので定期的な清掃を要する。それに対し、円筒状のエアフィルタを水平にセットし、これを回転させながら内周側と外周側の双方から空気を吹き付けてエアフィルタの目に堆積した塵埃を取り除く清掃装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-1871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエアフィルタ清掃装置には、水平方向に平行に延びる2本のローラと、これらローラの上下に配置した内ノズル及び外ノズルとが備わっている。この装置構成の場合、内ノズルを内側に通した状態で2本のローラの上に置くだけでエアフィルタを簡単にセットすることができる。
【0005】
しかし、同文献のエアフィルタ清掃装置においては、横置きのエアフィルタの内周面及び外周面の最下点に対して内ノズルと外ノズルにより上下から空気が吹き付けられる。両ノズルから噴射される空気によりエアフィルタに与えられる外力は互いに打ち消し合い、清掃中に2本のローラとエアフィルタとの間に作用する接触圧力は主としてエアフィルタの自重に依拠することとなる。この場合、ローラが回転してエアフィルタが自転して動的な状態に移行すると、ローラとの接触圧力が弱まってエアフィルタの安定性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、自転するエアフィルタの安定性を向上させることができるエアフィルタ清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、箱状の清掃室と、前記清掃室の内部に平行に渡された2本のローラと、前記2本のローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動装置と、前記2本のローラの上方に位置するように前記清掃室の内部に配置されたエアノズルとを備え、前記2本のローラの上に置いた円筒状のエアフィルタに、前記エアフィルタの内側に通した前記エアノズルから空気を吹き付けて前記エアフィルタを清掃するエアフィルタ清掃装置において、前記エアノズルが、前記清掃室の内部で前記2本のローラに沿って延びるノズル本体と、前記ノズル本体の一端に設けられ空気供給源と接続するコネクタと、下向きに開口し前記2本のローラが延びる方向に並べて配置された複数の噴射孔からなる噴射孔列とを含んで構成されており、前記空気供給源から前記エアフィルタ清掃装置に供給される空気の全量が、前記複数の噴射孔から前記2本のローラの間に向かって下方に噴出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自転するエアフィルタの安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るエアフィルタ清掃装置の正面図
図2図1中の矢印II方向から見たエアフィルタ清掃装置の側面図
図3図2中の矢印III方向から見たエアフィルタ清掃装置の背面図
図4図2中のIV-IV線によるエアフィルタ清掃装置の矢視断面図
図5図1に示したエアフィルタ清掃装置に備わったエアノズルとローラの位置関係の説明図
図6図1に示したエアフィルタ清掃装置に備わったエアノズルの部分拡大図
図7図6中のVII-VII線によるエアノズルの矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
-エアフィルタ清掃装置-
図1は本発明の一実施形態に係るエアフィルタ清掃装置の正面図である。図2図1中の矢印II方向から見たエアフィルタ清掃装置の側面図、図3図2中の矢印III方向から見たエアフィルタ清掃装置の背面図である。図4図2中のIV-IV線によるエアフィルタ清掃装置の矢視断面図である。図5図1に示したエアフィルタ清掃装置に備わったエアノズルとローラの位置関係の説明図である。図6はエアノズルの部分拡大図、図7図6中のVII-VII線によるエアノズルの矢視断面図である。図1及び図2では説明のため清掃室の内部の主要な要素を透視して表してある。図3では後述する駆動装置6やブラケット12が図示省略されている。以下の説明において、図4中の上下をエアフィルタ清掃装置1(以下、清掃装置1と略称する)の左右、同図中の右左を清掃装置1の前後とする。
【0012】
図1図7に示したように、清掃装置1は、支持脚2、清掃室3、ローラ4,5、駆動装置6、エアノズル7、操作装置8を含んで構成されている。この清掃装置1は、2本のローラ4,5の上に置いた円筒状のエアフィルタFに、エアフィルタFの内側に通したエアノズル7から空気を吹き付けてエアフィルタFを清掃する装置である。エアフィルタFは、油圧ショベル、ホイールローダ、クレーン等の建設機械を含む産業機械のエンジンに供給される燃焼用の空気を清浄化する部品であり、エンジンに燃焼用の空気を供給する吸気配管から取り外された部品である。
【0013】
・支持脚
支持脚2は清掃装置1の基礎構造体であり、接地して清掃室3を支持する。支持脚2の構成は特に限定されないが、本実施形態ではアングル材等の複数の鋼材を架台状に組んだ構成である。清掃室3を直接地面や汎用的な台に置く構成とする場合等には、支持脚2は省略することができる。また、清掃装置1の設置場所の変更頻度が高い場合には、支持脚2の下部にキャスタを設けて可搬式にすることもできる。
【0014】
・清掃室
清掃室3はエアフィルタFを収容して清掃処理を行うハウジングであり、支持脚2の上部に支持されている。清掃室3は、側部壁面3a~3d、上部壁面3e及び下部壁面3fによって箱型に形成されている。側壁面3aは正面側の壁面、側壁面3bは側壁面3aに対向する背面側の壁面、側壁面3cは左側の壁面、側壁面3dは右側の壁面である。正面の側壁面3aには開口3H(図1)が形成されている。開口3HはエアフィルタFを清掃室3に対して出し入れするのに十分な大きさを持つ。開口3Hは開閉扉9により開閉される。開閉扉9は左右の側壁面3c,3dの一方(本例では側壁面3c)に対して上下2つの蝶番10を介して取り付けられている。また、開閉扉9は左右の側壁面3c,3dの他方(本例では側壁面3d)に設けたロック部材11(掛け金)により開閉扉9は開口3Hを閉じた状態で保持される。開閉扉9の上半部には透明な2つの窓9aが左右に並べて設けられており、清掃室3の内部の様子、例えば清掃中のエアフィルタFの状態を窓9aから確認することができる。背面側の側壁面3bにはブラケット12がボルト等で取り付けられている。上部壁面3eは清掃室3の上部を閉塞する四角形状の天井面であり、吊ボルト13(図1では図示省略)により四隅が固定されている。本実施形態では、側壁面3a~3d及び上部壁面3eはいずれも四角形状(本例では正方形)の平板で構成されている。
【0015】
下部壁面3fは清掃室3の下部を閉塞する底面であり、下方に向かって窄まった四角錐状に形成されてエアフィルタFから分離された塵埃を収集する漏斗の役割を果たす。下部壁面3fの下端には排出口(不図示)が開口しており、この開口に接続する中空の排出管3faが下部壁面3fに溶接等で固定されている。排出管3faには集塵装置(不図示)のホースXが接続される。集塵装置には、市販の掃除機を含めた吸引装置を適宜適用することができる。集塵装置を清掃装置1に備え付けても良い。
【0016】
清掃室3の上部、具体的には側壁面3a~3dの上部及び上部壁面3eの少なくとも1か所(本実施形態では右側の側壁面3dの上部)には、図2に示したように吸気口3iと逆止弁3jが備わっている。逆止弁3jは吸気口3iに取り付けられており、吸気口3iを介する清掃室3への外気の流入を許容する一方で、吸気口3iを介する清掃室3からの空気の流出を抑止する。逆止弁3jの代わりに吸気口3iに開閉蓋(不図示)を設け、例えばエアフィルタFの清掃中(清掃空気の噴射中)に開閉蓋で吸気口3iを閉じ、集塵装置による吸引動作中に開閉蓋を外して(又は開けて)吸気口3iを開放するようにしても良い。また、清掃室3の内部は、側壁面3a~3d及び上部壁面3eで画定された上部空間と下部壁面3fで画定された下部空間とが簀子状又は網目状の仕切り14(図4)で仕切られている。仕切り14は四角錐状の下部壁面3fの上部に設けられており、工具やエアフィルタF等が下部壁面3fに落下することを防止する。
【0017】
・ローラ
ローラ4,5はエアフィルタFの外周面を下から支持する2本の支持棒であり、清掃室3の内部に平行でかつ水平に渡されている。ローラ4,5の一端は、背面側の側壁面3bを貫通して清掃室3の外部に突出しており、側壁面3bに取り付けられた軸受15によってそれぞれ回転自在に支持されている。また、ローラ4,5の他端は、正面側の側壁面3aに取り付けられた軸受(不図示)によってそれぞれ回転自在に支持されている。ローラ4,5は両持ち構造である。これらローラ4,5の外周面は弾性材16で形成されている。具体的には、ローラ4,5のエアフィルタFを載せる部分において、ローラ4,5の軸部の外周面にゴムや樹脂等の弾性材16を巻き付けた構成である。弾性材16はエアフィルタFを全長に亘って支持するように長さや位置が設定されている。ローラ4,5(弾性材16)の外径は同一であり、ローラ4,5の軸中心線は同一水平面に沿って位置している(ローラ4,5の地上からの高さは同一である)。
【0018】
・駆動装置
駆動装置6は2本のローラ4,5の少なくとも一方(本実施形態ではローラ5のみ)を回転駆動する例えばモータであり、ブラケット12の外壁面にボルト等で固定されている。駆動装置6の出力軸はブラケット12を貫通しており、軸受15から突出したローラ5の端部にカップリング17を介して接続されている。駆動装置6を作動させると、ローラ4,5のうちローラ5のみが回転する。但し、例えばローラ4,5をギヤ又はプーリ等の動力伝達機構を介して連結し、駆動装置6を駆動するとローラ4,5の双方が回転する構成としても良い。この場合、ローラ4,5は同一方向に同一回転速度で回転するように動力伝達機構を構成する。
【0019】
・エアノズル
エアノズル7はローラ4,5に置かれたエアフィルタFの内周面にのみ空気を噴射するユニットであり、清掃室3の内部において2本のローラ4,5の上方に位置しローラ4,5と平行に水平に延びている。図5に示したように、正面から見るとローラ4,5の中心を結ぶ線分の垂直二等分線L上にエアノズル7が位置し、空気の噴射孔(後述)は垂直二等分線Lに沿って鉛直下方を向いている。ローラ4,5とエアノズル7との距離(最小値)Dは、清掃対象とするエアフィルタFの厚み(最大値)Tよりも大きく設定してあり、エアフィルタFをエアノズル7に被せて(エアフィルタFにエアノズル7を通して)ローラ4,5の上に置けるようになっている。エアノズル7とローラ4,5との距離は、エアフィルタFの内側にエアノズル7を通した状態で、エアフィルタFの内壁面にエアノズル7が干渉することなくエアフィルタFをローラ4,5に載せることができる範囲で設定される。このエアノズル7は、ノズル本体7a、コネクタ7b、ノズル部7c及び空気流路7d(図6)を含んで構成されている。
【0020】
ノズル本体7aは、清掃室3の内部で2本のローラ4,5に沿って水平に延びている。ノズル本体7aの一端は背面側の側壁面3bを貫通し側壁面3bに固定されており、ブラケット12の上側において側壁面3bから清掃室3の外部に露出している。ノズル本体7aの他端は清掃室3の開閉扉9に接近している(図2)。ノズル本体7a(エアノズル7)の他端は自由端であり、ノズル本体7a(エアノズル7)は片持ち構造である。
【0021】
コネクタ7bは、空気供給源(不図示)に繋がるエアホース(不図示)を接続する接手であり、清掃室3の外部に露出したノズル本体7aの一端に設けられている。空気供給源としては、コンプレッサそのものの他、工場であれば場内に張り巡らされたエア配管を利用することができる。空気供給源として例えばコンプレッサを清掃装置1に備え付けても良い。
【0022】
ノズル部7cは、空気の噴射孔列を備えたフラットバー状の部材であり、ノズル本体7aの下部に設けられており、ノズル本体7aに沿って延びている(図2図6)。ノズル本体7aに直交する断面で見ると、ノズル部7cは鉛直に延びている(図7)。噴射孔列は2本のローラ4,5が延びる方向に一定間隔に並べて配置された複数の噴射孔7j(図5図6図7)からなる。隣接する噴射孔7jの間隔は狭く、例えばノズル本体7aの外径よりも十分に小さい。各噴射孔7jはノズル部7cの下面に下向きに開口し、各噴射孔7jの軸中心線はローラ4,5の間を通っている。図5には、正面から見てローラ4,5の中心を結ぶ線分の垂直二等分線Lに各噴射孔7jの軸中心線が一致した例を示している。本実施形態では、噴射孔列の長さ(噴射孔列の両端の噴射孔7jの間隔)がローラ4,5の弾性材16の軸方向長さより長く、弾性材16の設置範囲の全長が噴射孔列の設置範囲と軸方向に重複している(図2)。つまり清掃対象として想定されるエアフィルタFの軸方向長さよりも噴射孔列は長く設定されており、ローラ4,5に載せたエアフィルタFの外周面の全長(軸方向における全長)に同時に空気が吹き付けられる構成である。
【0023】
空気流路7dは、空気の入口であるコネクタ7bと出口である各噴射孔7jとを結ぶようにエアノズル7の内部に形成された流路であり、図6及び図7に示したように単一の主流路7mと複数の支流路7nとを含んで構成されている。主流路7mはノズル本体7aの内部を軸方向に延び、複数の支流路7nは主流路7mから分岐してノズル部7cの内部を延びて対応する噴射孔7jに接続している(図6)。また、エアノズル7には各噴射孔7jから噴射される空気の流量調整及び遮断をすることができる複数の弁7v(図6図7)が設けられている。複数の弁7vはノズル部7cに設けられている。本実施形態では全ての支流路7nに各1つの弁7vが対応して設けられており、各弁7vを個別に操作することで個々の支流路7nの流路を開閉したり開度調整したりすることができる。弁7vの構成は特に限定されないが、本実施形態ではニードルバルブを採用した例を図示している(図7)。ノズル部7cの側面から工具(例えば六角レンチ)を挿入し、弁7vを回して進退させることで弁操作をすることができる。
【0024】
本実施形態の清掃装置1に備わった空気系統は上記で説明した空気流路7dの1系統のみである。そのため、空気供給源から清掃装置1に供給される空気の全量が、複数の噴射孔7jから2本のローラ4,5の間に向かって下方に噴出する。エアフィルタFにはこの一方向からのみ空気が吹き付けられ、他の方向から空気が吹き付けられることがないように構成されている。
【0025】
なお、清掃室3の背面側の側壁面3bの外壁面にはリリーフバルブ18(図4にのみ図示)が取り付けられており、ブラケット12でカバーされている。このリリーフバルブ18は、エアノズル7から加圧空気が噴射されることにより清掃室3の内圧が上昇した際に清掃室3の内部の空気を逃がし、清掃室3の内圧の上限を設定圧力に規定する弁装置である。
【0026】
・操作装置
操作装置8(図1)は、駆動装置6をオンオフ操作するスイッチ8aを有する。この操作装置8には、商用電源から駆動装置6へ電気を供給するためのケーブル5b及びソケット5cが接続している。操作装置8を操作することで駆動装置6ひいてはローラ5を駆動したり停止させたりすることができる。本実施形態ではスイッチ8aをダイヤル式とし、操作量に応じてローラ5の回転速度(つまりエアフィルタFの回転速度)が調整できるように構成されている。なお、本実施形態では集塵装置や空気供給源を備えていないが、これらを実装する場合には集塵装置や空気供給源の操作用のスイッチ等を操作装置8に設けることができる。
【0027】
-エアフィルタの清掃手順-
・準備作業
始めに、ロック部材11によるロックを解除して開閉扉9を開け、開口3Hから清掃室3にエアフィルタFを入れ、エアフィルタFをエアノズル7に被せて横にした(軸中心線を水平に寝かせた)状態でローラ4,5の弾性材16の上に置く。これによりエアフィルタFがローラ4,5の弾性材16に外接し、エアノズル7の全ての噴射孔7jがエアフィルタFの内周面の最下点(ローラ4,5の間)に上から正対した状態となる。このとき、軸方向位置がエアフィルタFと重ならない噴射孔7jについては、必要に応じて弁7vを操作して閉じておくことができる。軸方向位置がエアフィルタFと重なる噴射孔7jについては全て適宜の開度で開けておく。その後、開閉扉9で開口3Hを閉めてロック部材11でロックし、清掃室3を実質的に密閉状態とする。また、ソケット8cを商用電源に挿し込み、排出管3faにホースXを介して集塵装置を接続し、コネクタ7bにエアホースを介して空気供給源を接続する。エアフィルタFのセット、弁7vの操作、電源接続、集塵装置の接続、空気供給源の接続の各手順は順不同で行うことができる。
【0028】
・エアフィルタ清掃装置の動作
準備が整ったら、集塵装置のスイッチ(不図示)を入れ、吸引を開始して清掃室3の内部を負圧にし、また空気供給源のスイッチを入れてエアノズル7への空気の供給を開始する。また、操作装置8のスイッチ8aをON操作し、駆動装置6によりローラ5を回転駆動してエアフィルタFを自転させる。このとき、ローラ4は自転しないがエアフィルタFに従動して回転し、ローラ5と共にエアフィルタFを支持する。これら集塵装置による吸引、エアノズル7による空気噴射、ローラ5によるエアフィルタFの回転の開始のタイミングは順不同で行うことができる。
【0029】
以上の操作を経て、自転するエアフィルタFの内周面の最下点に対して、エアノズル7により鉛直真上から空気が噴射される。軸方向に並ぶ複数の噴射孔7jからなる噴射孔列から空気が一斉に噴射されるので、エアフィルタFの内周面の最下点を結んだラインの全長に同時に加圧空気が満遍なく吹き付けられる。エアノズル7から噴射された空気はエアフィルタFの内側から外側に鉛直下方に吹き抜け、エアフィルタFの目から清掃室3の下部壁面3fに向かって塵埃を離脱させる。同時に、エアフィルタFが自転することにより、エアフィルタFが1回転する間にエアフィルタFの全長に亘って全周が(つまりエアフィルタFの周面の全領域が)加圧空気でブローされる。エアノズル7から直下に吹き付けられる加圧空気によりエアフィルタFの外周面がローラ4,5の弾性材16に押付けられるので、エアフィルタFはローラ4,5に支持されて安定した自転運動をする。
【0030】
加圧空気によりエアフィルタFの目から離脱した塵埃は清掃室3の内部に一旦浮遊するが、清掃室3の下部壁面3fの排出管3faから吸い出されて集塵装置に収集される。
【0031】
以上のエアフィルタFの動作による所要清掃時間は目詰まり状態により異なるが、例えば数分間程度継続して実施する。この間、エアフィルタFは複数回転する。こうしてエアフィルタFの清掃動作を所定時間継続したら、エアノズル7からの空気噴射と駆動装置6によるエアフィルタFの回転を各々停止し、必要に応じて更に集塵装置を継続運転して清掃室3の内部の塵埃を排出した上で集塵装置を停止させる。こうしてエアフィルタFの清掃が完了したら、ロック部材11によるロックを解除して開閉扉9を開け、清掃室3の開口3Hから清掃済みのエアフィルタFを取り出す。
【0032】
なお、集塵装置を作動させながらエアノズル7から空気を噴射する運用方法を説明したが、最初にエアフィルタFを回転させながらエアノズル7から空気を吹き付けてエアフィルタFから塵埃を離脱させ、その後空気噴射を停止して集塵装置を作動させても良い。
【0033】
-効果-
(1)本実施形態によれば、エアノズル7に被せた状態でローラ4,5の上に寝かせて置くだけでエアフィルタFをセットでき、清掃後はローラ4,5の上から取り上げるだけでエアフィルタFを取り出すことができる。また、清掃動作中は清掃装置1への供給空気の全量がローラ4,5の間に噴射されてエアフィルタFがローラ4,5に押し付けられるので、エアフィルタFが自転して動的な状態になってもエアフィルタFとローラ4,5との十分な接触圧力が維持できる。従って、エアフィルタFを容易に脱着することができ、清掃中の自転するエアフィルタFの安定性を向上させることができる。
【0034】
(2)集塵装置や空気供給源として現場にある既存設備を利用できることも、構成の簡素化、コンパクト化、軽量化に貢献する。
【0035】
(3)また、エアフィルタFに対して外周側から加圧空気を吹き付けるとフィルタの目から離脱した塵埃がエアフィルタFの内周側に飛散し、エアフィルタFに再付着する可能性がある。それに対し、本実施形態ではエアフィルタFに対して加圧空気を一様に内周側から吹き付けるので、離脱した塵埃がエアフィルタFの外側に吹き飛ぶ。これによりエアフィルタFに塵埃が再付着し難く、清掃効率が向上する。
【0036】
(4)加えて、内ノズルと外ノズル、更には内ノズル及び外ノズルを軸方向に駆動するメカニズム、内ノズルをエアフィルタの径方向に位置調整するメカニズムを備えた特許文献1の装置に比べ、本実施形態の清掃装置1は格段に構成が簡素である。構成が簡素であるため軽量かつコンパクトであり、容易に移動させることができ、かつ狭い場所で使用するのにも有利である。
【0037】
(5)特許文献1の装置においては、内ノズル及び外ノズルを軸方向に移動させてエアフィルタの全体を清掃するため、フィルタ全体に空気を吹き付けるのに時間がかかる。
【0038】
それに対し、本実施形態では清掃対象であるエアフィルタよりも噴射孔列が長いため、エアノズル7を軸方向に動かすまでもなく、単にエアフィルタFを1周させるだけでフィルタ全体に空気を吹き付けることができる。これによりエアフィルタFの清掃時間を短縮できる。また、エアノズル7が固定構造であるため、ノズルを動かすメカニズムが不要であり、この点も装置構成の簡素化やコンパクト化に貢献する。
【0039】
(6)更に、各支流路7nに弁7vを設けたことで全ての支流路7nを個別に開通及び遮断することができ、空気噴射範囲をエアフィルタFの長さ等に応じて柔軟に調整することができる。必要のない箇所からの空気の噴射を遮断することで、必要箇所からの空気の噴射圧力を上昇させることができ、また清掃効率やエネルギー効率の改善にも貢献し得る。
【0040】
(7)2本のローラ4,5の外周面が弾性材16で形成されているので、弾性材16の弾性を活かしてエアフィルタFを安定に支持することができる。また、弾性材16が微視的に弾性変形することで、ローラ4,5とエアフィルタFとの接触面積が増し、ローラ4,5とエアフィルタFとの間の動力伝達効率が向上する。
【0041】
(8)清掃室3に吸気口3iを設け、吸気口3iに逆止弁3jを設けたことにより、空気噴射により清掃室3の内部が加圧されても逆止弁3jが機能して吸気口3iからの塵埃の漏洩が抑制できる。また、集塵装置を作動させて清掃室3の内部が負圧になった場合には、逆止弁3jが開いて清掃室3に外気を取り入れることができ、清掃室3の内圧を調整することができる。
【0042】
逆止弁3jの代わりに吸気口3iに開閉蓋を用いた場合でも同様の効果を得ることができる。例えばエアノズル7から加圧空気を噴射する際には、開閉蓋で吸気口3iを塞ぐことで吸気口3iからの塵埃の漏洩を抑制することができる。集塵装置を作動させて清掃室3の内部を浮遊する塵埃を吸い出す際には、開閉蓋を取外して(又は開けて)吸気口3iを開放することで、外気を清掃室3内へ取込んで清掃室3の内圧を調整することができる。
【0043】
(9)また、2本のローラ4,5の双方を駆動する構成とすると、ローラ4、の外周面の周速度が一致しない場合があり、一方のローラとエアフィルタFとの間に滑りが生じ、そのローラの弾性材16の摩耗を早めてしまう可能性がある。それに対し、本実施形態では一方のローラ5のみを駆動し、他方のローラ4はエアフィルタFに従動する構成としたので、ローラ4,5とエアフィルタFとの間の滑りの発生、ひいては弾性材16の摩耗等を抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
1…エアフィルタ清掃装置、3…清掃室、3i…吸気口、3j…逆止弁、4,5…ローラ、6…駆動装置、7…エアノズル、7a…ノズル本体、7b…コネクタ、7d…空気流路、7j…噴射孔、7m…主流路、7n…支流路、7v…弁、16…弾性材、F…エアフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7