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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】塗布体
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A45D34/04 515Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019207125
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021078594
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130878
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴目 朋之
(72)【発明者】
【氏名】井出 浩子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 明日香
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131329(JP,A)
【文献】特表2018-519054(JP,A)
【文献】特表2015-527127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の塗布面を有する塗布体であって、該塗布体の一端は蓋体の保持軸の先端に取り付けられ、前記塗布面には2本以上の溝部が凹設され、該2本以上の溝部が、前記塗布面において前記保持軸の軸心方向と直交する直交方向に延伸する第1溝部と、前記塗布面において前記第1溝部と各々交差する第2溝部および第3溝部とを有し、前記第2溝部および前記第3溝部は、前記塗布体の前記一端とは反対の他端側において互いに接続される塗布体。
【請求項2】
前記第1溝部が前記塗布面における前記直交方向の幅全体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の塗布体。
【請求項3】
前記保持軸の軸心方向において前記一端側から中間部にかけて塗布面の横幅が漸次広くなるとともに、もっともその横幅が広くなる前記中間部から前記他端側にかけて塗布面の横幅が漸次狭くなることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布体。
【請求項4】
前記第2溝部および前記第3溝部の距離が、前記保持軸の軸心方向において前記一端側から前記中間部にかけて漸次広くなるとともに、前記中間部から前記他端側にかけて漸次狭くなることを特徴とする請求項3に記載の塗布体。
【請求項5】
前記第1溝部が、前記中間部よりも前記一端寄りの塗布面に形成されていることを特徴とする請求項3または4いずれかに記載の塗布体。
【請求項6】
側面から見たときに全体が略くの字形状に前記中間部で屈曲していることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の塗布体。
【請求項7】
表面に静電植毛が施された請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の塗布体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布体を備えた化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料を塗布するための塗布体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状口紅やリップグロスなどの液状化粧料を塗布するための塗布具において、化粧料を口唇に塗布するための塗布体には様々なタイプのものがある。かかる塗布体には、一定量の化粧料を保持させることにより、一回の塗布動作で所定の面積を一度に塗布することができる。
【0003】
ところで、かかる塗布体の化粧料の保持量が十分ではない場合、1回の塗布動作における塗布面積が少なくなり、塗布の途中で擦れたり、仕上がりがムラになるおそれがあり、その結果、塗布動作を必要以上に繰り返して肌への負担も大きくなっていた。
【0004】
そこで、化粧料の保持量を増やす方法として、特許文献1には、2つの分岐部の間に空洞を設けた塗布体が開示されている。この塗布体は、空洞内に化粧料を保持することができるため、化粧料の保持量を多くすることができると考えられる。
【0005】
また、特許文献2、3には、塗布体をしごき部に通過させる際、化粧料を内側へ抱え込むように弾性変形させて、化粧料の保持量を多くする塗布体が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の塗布体は、空洞が塗布体の背面まで貫通した孔部であるため、使用時には化粧料が塗布体の背面側に押し出されて逃げてしまうおそれがある。
【0007】
また、特許文献2、3の塗布体の場合、しごき部を通過させる際の変形しやすさが、使用時には却って口唇への塗布体のフィット感を損なう原因となるおそれがあった。特に、特許文献2や特許文献3の塗布体のように溝部を設けたものは、塗布時に薄肉となっている溝部に集中して応力がかかるため、使用時にはより一層変形しやすくなっていた。
【0008】
【文献】特開2006-326320
【文献】特開2014-33720
【文献】特許第4847607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、従来の塗布体のかかる欠点を克服し、塗布面における化粧料の保持量が多く、使用時には塗布体の変形を防いでフィット感を損なうことなく塗布することができる塗布体の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、少なくとも一の塗布面を有する塗布体であって、該塗布面には2本以上の溝部が凹設され、該2本以上の溝部が該塗布面の少なくとも1箇所において互いに交差するように延伸している塗布体である。
【0011】
また本発明は、2本以上の溝部が、該塗布体を保持するための保持軸の軸心方向と同方向に延伸する縦溝部、保持軸の軸心方向と垂直方向に延伸する横溝部、もしくはその他の方向に延伸する斜め溝部より選択された、互いに異なる方向へ延伸する溝部の組み合わせであることを特徴とする前記塗布体である。
【0012】
また本発明は、前記2本以上の溝部のうち、少なくとも1本の溝部が、延伸する途中で途切れた箇所を有する非連続な線で形成されていることを特徴とする塗布体である。
【0013】
また本発明は、少なくとも一の塗布面を有する塗布体であって、該塗布面には2本以上の溝部が凹設され、該2本以上の溝部のうち、少なくとも1本の溝部が延伸する途中で途切れた箇所を有する非連続な線で形成され、該溝部の途切れた部分における延長線と、その他の溝部が、塗布面の少なくとも1箇所において互いに交差するように延伸していることを特徴とする塗布体である。
【0014】
また本発明は、少なくとも一の塗布面を有する塗布体であって、該塗布面には2本以上の溝部が凹設され、該2本以上の溝部のうち、少なくとも2本の溝部が、延伸する途中で途切れた箇所を有する非連続な線で形成され、それらの非連続な線で形成された溝部のうち、一の溝部の途切れた部分における延長線と、その他の溝部の途切れた部分における延長線が、塗布面の少なくとも1箇所において互いに交差するように延伸していることを特徴とする塗布体である。
【0015】
また本発明は、前記縦溝部、前記横溝部、もしくは前記斜め溝部のいずれかが、1本ないし3本で形成されていることを特徴とする塗布体である。
【0016】
また本発明は、前記溝部が、直線、曲線もしくはそれらの組み合わせからなることを特徴とする塗布体である。
【0017】
また本発明は、蓋体の保持軸に取り付け可能に形成された軸部の先端に設けられていることを特徴とする前記塗布体である。
【0018】
また本発明は、基端部から中間部にかけて塗布面の横幅が漸次広くなるとともに、もっともその横幅が広くなる中間部から先端部にかけて塗布面の横幅が漸次狭くなることを特徴とする前記塗布体である。
【0019】
また本発明は、横溝部が、中間部よりも基端部寄りの塗布面に形成されていることを特徴とする前記塗布体である。
【0020】
また本発明は、側面から見たときに全体が略くの字形状に中間部で屈曲していることを特徴とする前記塗布体である。
【0021】
また本発明は、表面に静電植毛が施された前記塗布体である。
【0022】
さらに本発明は、前記塗布体を備えた化粧料塗布具である。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる塗布体は、塗布面に複数の溝部を設けることにより、塗布面の表面積が増えるため、塗布面における化粧料の保持量が多くなる。これにより、一回あたりの塗布動作における塗布面積を多くすることができる。
【0024】
本発明にかかる塗布体は、一回あたりの塗布面積を大きくすることで、塗布動作を減らすことができる。塗布動作の減少は、塗布のかすれを防止するとともに、化粧料を均一に塗布できるため有利である。また、肌への負担軽減にもつながる。
【0025】
また、本発明にかかる塗布体は、塗布時に塗布体にかかる応力が特定の溝部に集中することなく異なる方向へ延伸する複数の溝部へと分散する。これにより、特定の溝部に応力が集中した場合に生じる塗布体の変形を防ぐことができ、使用時の口唇へのフィット感を損なうことがない。
【0026】
さらに、本発明にかかる塗布体は、しごき部を通過する際など特定方向から応力がかかる場合はかかる応力に応じて適切に変形することを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の塗布体を備えた化粧料塗布具の容器部分を断面で表した図。
図2】(a)本発明の塗布体の正面図、(b)同断面図。
図3】(a)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(b)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図。
図4】(a)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(b)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(c)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(d)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(e)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図、(f)本発明の塗布体の異なる実施態様の正面図。
図5】本発明の塗布体で植毛加工を施したものの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の塗布体の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0029】
図1は、本発明に係る塗布体1を備えた化粧料塗布具であって、容器本体4部分を断面図で表したものである。図に示すように、本発明の塗布体1は、蓋体3より垂設された保持軸31の先端に設けられている。なお、容器本体4の頸部41の内周面にはしごき部材42が設けられ、塗布体1を容器本体4内から引き抜く際にしごき部材42のしごき部43によって塗布体1に付着している余分な化粧料5がしごき落とされる。
【0030】
図2(a)は本発明の塗布体1の正面図、図2(b)は同断面図である。図に示すように、本実施態様の塗布体1は、棒状の軸部2の先端部に設けられた可撓性を有する薄手の小片であって、その厚みはその基端部111から先端部113にかけて漸減するとともに、その横幅は基端部111から中間部112にかけて漸次広くなり、中間部112において最も広くなるとともに、中間部112から先端部113にかけて漸次狭くなるように形成されている。塗布体1の基端部111に連設された軸部2は、蓋体3の保持軸31に取り付け可能に形成され、保持軸31内に形成された縦孔(図示せず)にかかる軸部2を挿入することにより塗布体1を保持軸31に対して固定することができる。なお、塗布体1の保持軸31への固定手段はこれに限定されない。
【0031】
塗布体1は、図2(a)の正面図で表されている面が塗布面11となる。そして、本実施態様の塗布体1は、図2(b)で示すように、側面から見たときに全体が略くの字形状に中間部112で屈曲し、中間部112において塗布面11側が谷状に凹んでいる。逆に、塗布面11の裏面では、中間部112部分が稜線状に突出している。
【0032】
塗布面11は、中間部112より上方の塗布面11aと、中間部112より下方の塗布面11bにより構成されている。これらのうち、塗布面11aは、基端部111から中間部112にかけて軸部2の軸心21の前方から該軸心21へ近接し、中間部112近傍において該軸心21よりも後退するように傾斜している。また、塗布面11bは、中間部112から先端部113にかけて軸心21よりも後方から該軸心21へ近接するように傾斜している。すなわち、軸部2の軸心21を鉛直方向としたときに、塗布面11aは鉛直方向よりも下方へ向くように傾斜し、逆に、塗布面11bは鉛直方向よりも上方へ向くように傾斜している。
【0033】
このように、本実施態様の塗布面11は中間部112を境に、塗布面11aは軸部2の軸心21よりも下方へ向くように傾斜し、逆に、塗布面11bは軸心21よりも上方へ向くように傾斜しているが、塗布面11の態様はこれに限らず、中間部112で屈曲させずに連続する平坦な塗布面としてもよく、また、中間部112で屈曲させる場合であっても、中間部112よりも上方もしくは下方のいずれかの塗布面11a、11bを傾斜させずに軸心21の延長線と平行に形成してもよい。
【0034】
本発明の塗布体1の塗布面11には2本以上の溝部が凹設され、該2本以上の溝部が塗布面11の少なくとも1箇所において互いに交差するように延伸している。かかる溝部は縦溝部13、横溝部12、もしくは斜め溝部14により構成されるが、これらのうち、縦溝部13は塗布体1を保持するための保持軸31の軸心方向と同方向に延伸し、横溝部12は保持軸31の軸心方向と垂直方向に延伸し、さらに、斜め溝部14はその他の方向に延伸するものとする。以下、溝部の具体的な態様について説明する。なお、溝部の本数については、図2、3のように、その一部が繋がって形成されているものについても、塗布面11において延伸している部分の本数を基準に数えるものとする。また、図4(e)、(f)のように溝部12が延伸する途中で途切れるものについても、1本の溝部として数えるものとする。
【0035】
図2の実施態様では、溝部は横溝部12および斜め溝部14により構成されている。これらのうち、横溝部12は中間部112近傍に1本形成され、軸部2の軸心21に対して垂直方向に延伸している。なお、ここでは説明の便宜上、軸部2の軸心21を基準としているが、かかる軸部2の軸心21は保持軸31の軸心(図示せず)と一致するため、保持軸31の軸心を基準としてもよい。本実施態様の横溝部12は、塗布体1の中間部112よりも基端部111寄りにずれており、塗布面11aに形成されている。なお、かかる横溝部12は、図3(a)のように塗布体1の中間部112や、図3(b)のように中間部112よりも先端部113寄りに設けてもよいが、本実施態様のように基端部111寄りの塗布面11aに形成することにより、塗布面11bで横溝部12を設けていない平坦部分の面積が増え、かかる平坦部分によって効率的に塗布することができるため、好ましい。
【0036】
本実施態様の斜め溝部14は、塗布体1の基端部111側から先端部113付近までは左右2本に分かれて形成されるとともに、延伸する途中で横溝部12と交差し、その先端において繋がるように形成されている。左右2本の斜め溝部14は、塗布体1の基端部111側から横溝部12にかけて、漸次間隔が広がるように延伸し、横溝部12と交差してその延伸する角度を内側に変えるように屈曲して、先端までは漸次間隔が狭くなるように形成されている。このように、本実施態様の斜め溝部14は塗布体1の平面形状に合わせるようにその延伸角度も横溝部12との交差部分において変えているが、斜め溝部14の延伸角度は必ずしも途中で変える必要はなく、連続した直線状としてもよい。また、本実施態様の斜め溝部14は、その先端において繋がるように形成されているが、必ずしも繋げなくてもよい。さらに、本実施態様の横溝部12は両端が塗布体1の側辺部まで達しているが、図3(a)のように塗布体1の側辺部の手前で終了していてもよい。
【0037】
かかる横溝部12、斜め溝部14は、所定の幅および深さに形成されており、塗布体の大きさや厚みにより異なるが、例えば、長さが15mm、幅が10mm、厚さが2mm位の塗布体の場合、その幅は好ましくは0.3mm~3.0mm、より好ましくは0.5mm~1.5mm、また、その深さは塗布体1の当該溝部を設けた部分の厚さに対して、1/5~4/5の範囲が好ましく、更に1/3~2/3がより好ましい。
【0038】
このように、塗布面11に横溝部12、斜め溝部14を複数本設けることにより、塗布面11の表面積が増えるとともに、かかる溝部内に化粧料が保持されることになるため、塗布面11における化粧料の保持量が多くなる。これにより、一回あたりの塗布動作における塗布面積を多くすることができる。
【0039】
横溝部12、斜め溝部14を形成した部分は塗布体1の他の部分よりも肉薄になるが、使用時に塗布体1にかかる応力は特定の溝部に集中することなく複数の溝部へと分散する。これにより、特定の溝部に応力が集中した場合に生じる塗布体1の変形を防ぐことができ、使用時の口唇へのフィット感を損なうことがない。特に、本発明の横溝部12、斜め溝部14は互いに異なる方向へ延伸し、延伸する途中で交差するように形成されている。かかる構成により、塗布体1はこれら異なる方向へ同時に撓むことはないため、より確実に変形を防ぐことができる。その一方で、しごき部を通過する際など特定方向から応力がかかる場合は、かかる応力に応じて適切に変形することを妨げない。
【0040】
また、横溝部12、斜め溝部14を設けることにより、塗布面11には溝部による複数の凹凸が形成される。そして、被塗布対象となる口唇の表面は微細な凹凸があるが、塗布面11の溝部による凹凸ないし凸部の角部分で口唇表面の微細な凹凸にも適切に化粧料を塗布することができる。
【0041】
塗布面11に形成される横溝部12、縦溝部13、斜め溝部14の態様は本実施態様に限られず、図4のような様々なパターンが考えられる。なお、図4の例では、塗布体1の形状は略楕円形となっているが、塗布体1の形状はこれに限定されず、円形、矩形、正方形、その他の多角形でもよい。
【0042】
図4(a)の塗布体1は、1本の横溝部12と1本の縦溝部13が塗布面11の中央で直交するように形成されている。図4(b)では、1本の横溝部12に対して2本の縦溝部13が直交するように形成され、図4(c)では、2本の横溝部12に対して1本の縦溝部13が直交するように形成されている。さらに、図4(d)では、ともに斜めに延伸するように形成された斜め溝部14が、塗布面11の中央で交差するように形成されている。
【0043】
本発明の塗布体1の溝部は、1本の連続した線で形成されたものに限らず、延伸する途中で途切れた箇所を有する非連続な線で形成されているものであってもよい。例えば図4(e)は、横溝部12が延伸する途中で途切れるように形成されている。そして、横溝部12の途切れた部分の両側の横溝部12を繋ぐように想定した延長線121が、縦溝部13と交差している。
【0044】
さらに、図4(f)の態様では、横溝部12および縦溝部13が延伸する途中で途切れた箇所を有する非連続な線で形成されている。そして、横溝部12の途切れた部分の両側の横溝部12を繋ぐように想定した延長線121が、縦溝部13の途切れた部分の両側の縦溝部13を繋ぐように想定した延長線131と交差している。
【0045】
以上説明したように、本発明の塗布体1の溝部は、横方向へ延伸する横溝部12、縦方向に延伸する縦溝部13、もしくはその他の方向に延伸する斜め溝部14より選択された互いに異なる方向へ延伸する2本以上の溝部により構成され、それらの溝部(もしくは溝部が途切れている場合はその途切れた部分における延長線)が、塗布面11の少なくとも1箇所において互いに交差するように延伸している。
【0046】
本発明の塗布体1の縦溝部13、横溝部12もしくは斜め溝部14は、それぞれ設ける本数の制限はないが、同一方向で1本ないし3本になるように形成することが好ましい。すなわち、同方向へ並列してあまり多くの溝部を形成すると、それらの溝部に沿って塗布体1が丸まるように変形してしまうおそれがあるためである。
【0047】
以上説明した各実施態様の溝部は、いずれも直線もしくは直線の組み合わせで形成されているが、形状はこれに限定されず、曲線、あるいは直線と曲線の組み合わせから構成してもよい。
【0048】
これらの溝部は、塗布面11のみならず、その裏面にも形成してもよい。また、塗布面11とその裏面の両面に形成する場合、それらの溝部は同じパターンのものでもよいし、また、塗布面11と裏面とをそれぞれ異なるパターンのものとしてもよい。なお、塗布面11の裏面は、溝部を設ける、設けないに関わらず、もうひとつの塗布面としても良いことは言うまでもない。なお、塗布体1の片面のみを塗布面11とする場合、溝部11は塗布面11のみに設ける方が、塗布面11がどちらの面なのか容易に認識することができ、また、塗布面11以外の化粧料の保持量を低減できるため、好ましい。
【0049】
さらに、上述の各実施態様では、塗布体1は蓋体3に保持軸31を介して取り付けられているタイプのものとなっているが、塗布体1はこのように容器の蓋体3に取り付けられるものに限定されず、保持軸のないスポンジタイプのものであってもよい。
【0050】
塗布体1の素材としては、しごき部を通過する際に適度に撓む程度の弾性を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系、ポリカーボネート系等のエラストマー、ポリアクリロニトリルブタジエンゴム、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリイソプレン、シリコンゴム等のゴム類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクロルニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン等の樹脂類を使用することができ、特に、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系、ポリカーボネート系等のエラストマーが好ましく使用することができる。
【0051】
図5に示すように、塗布体1にはその表面の一部もしくは全部に静電植毛を施してもよく、一部に静電植毛する場合は、例えば、塗布面11側のみに施してもよい。さらに、静電植毛の繊維の長さを部分的に変えても良く、例えば、塗布面11のうち、塗布面11aに施された静電植毛の繊維の長さと、塗布面11bに施された静電植毛の繊維の長さが互いに異なるようにしてもよい。静電植毛することにより、植毛面への化粧料の含みが良くなり、塗布体1上への化粧料の付着量をより広範囲で設定することができるとともに、塗布しやすさも向上する。
【0052】
静電植毛用の繊維として、使用可能なものであれば特に限定されないが、例としてはナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプチレンテフタレート等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再生繊維、羊毛、絹、綿、麻等の天然繊維等が挙げられる。または、天然海綿、コットンスポンジ等の微細粒子を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかる塗布体は、化粧料の分野のみならず、医薬品、接着剤などの粘性液状の内容物を塗布するための容器への応用も期待できるものであるが、リップグロス、リップカラー、リップオーバーコート、アイシャドウ、コンシーラー、美爪料等の液状化粧料用として用いたときに特に有用な効果を享受できる。
【符号の説明】
【0054】
1 … … 塗布体
2 … … 軸部
3 … … 蓋体
4 … … 容器本体
5 … … 化粧料
11 … … 塗布面
11a … … 塗布面
11b … … 塗布面
12 … … 横溝部
13 … … 縦溝部
14 … … 斜め溝部
21 … … 軸心
31 … … 保持軸
41 … … 頸部
42 … … しごき部材
43 … … しごき部
111 … … 基端部
112 … … 中間部
113 … … 先端部
121 … … 延長線
131 … … 延長線
図1
図2
図3
図4
図5