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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230911BHJP
   G01M 11/00 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/66 X
G01M11/00 T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019207851
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021082679
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 通孝
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】成田 寿男
(72)【発明者】
【氏名】原子 翔
(72)【発明者】
【氏名】福士 樹希也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0331592(US,A1)
【文献】特開2019-35694(JP,A)
【文献】特開平5-11031(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0129283(KR,A)
【文献】特開平7-311119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01M 11/00
G01R 31/26
G01N 21/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定に使用される測定システムであって、
n本の光プローブをそれぞれ有するm個の光プローブ群を配置した光プローブアレイ(n、m:2以上の整数)と、
それぞれが前記光プローブ群のいずれかと1対1に対応し、対応する前記光プローブ群のn本の前記光プローブからそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択して出力するm個の光信号選択器と、
前記光信号選択器を制御する制御回路と
を備え、
n本の前記光プローブがそれぞれ別個の前記測定対象物と同時に光学的に接続し、
前記制御回路の制御により、前記光プローブ群に含まれるすべての前記光プローブから出力される光信号が選択されるまで、前記光信号選択器による光信号の選択の切り替えを繰り返す
ことを特徴とする測定システム。
【請求項2】
それぞれが前記光プローブ群のいずれかと1対1に対応して配置され、対応する前記光プローブ群の前記光プローブと組をなす電気プローブを有するm個の電気プローブ群と、
それぞれが前記電気プローブ群のいずれかと1対1に対応し、対応する前記電気プローブ群の前記電気プローブに電気信号を供給するm個のドライバ回路と
を更に備え、
前記測定対象物に前記電気プローブを介して入力された電気信号に応じて前記測定対象物から出力された光信号を前記光プローブが受光することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記制御回路が、前記ドライバ回路の動作と前記光信号選択器の動作を対応させて、前記ドライバ回路が電気信号を供給する前記測定対象物から出力された光信号を前記光信号選択器から出力させることを特徴とする請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
m個の前記光信号選択器からそれぞれ出力される光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号の1つを選択して出力する光電変換モジュールを更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項5】
それぞれが前記光信号選択器のいずれかと1対1に対応し、対応する前記光信号選択器から出力される光信号を第1光信号と第2光信号に分岐するm個の光分岐カプラと、
m個の前記光分岐カプラからそれぞれ出力される前記第1光信号から1つの前記第1光信号を選択して出力する選択スイッチと、
前記選択スイッチから出力される前記第1光信号を分光する分光器と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項6】
m個の前記光分岐カプラからそれぞれ出力される前記第2光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号の1つを選択して出力する光電変換モジュールを更に備えることを特徴とする請求項5に記載の測定システム。
【請求項7】
m個の前記光信号選択器からそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択し、選択した光信号を第1光信号と第2光信号に分岐する分岐スイッチと、
前記分岐スイッチから出力される前記第1光信号を分光する分光器と、
前記分岐スイッチから出力される前記第2光信号を電気信号に変換する光電変換器と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の特性の測定に使用される測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いて、電気信号と光信号を入出力信号とする光半導体素子が半導体基板に形成される。半導体基板に形成されている光半導体素子の特性を測定するために、電気信号を伝搬させる電気プローブと光信号を伝搬させる光プローブとを有する測定システムを用いて、光半導体素子とテスタなどの測定装置を接続することが有効である。
【0003】
例えば、導電性材料からなる電気プローブと光ファイバや光ファイバと組み合わせたレンズなどからなる光プローブとを用いた測定が、光半導体素子の測定に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-31136号公報
【文献】特開昭60-64443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、電気プローブにより電気信号を入力して光半導体素子を駆動し、駆動された光半導体素子から出力された光信号を光プローブにより受光する測定方法が、半導体基板に形成された光半導体素子の特性の測定に使用される。この測定方法では、電気プローブや光プローブの本数が光半導体素子の1個分に対応した測定システムが使用されている。しかし、この測定システムにより半導体基板に形成された数千個から数万個の光半導体素子のすべてを1つずつ測定することは、トータルの測定時間が長いため困難である。半導体基板に形成されたすべての光半導体素子を測定できない結果、良品と不良品の判定が十分でなく、製品の歩留まりが低下する。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、半導体基板に形成された光半導体素子の測定時間の増大を抑制できる測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、n本の光プローブをそれぞれ有するm個の光プローブ群を配置した光プローブアレイ(n、m:2以上の整数)と、それぞれが光プローブ群のいずれかと1対1に対応し、対応する光プローブ群のn本の光プローブからそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択して出力するm個の光信号選択器と、光信号選択器を制御する制御回路を備える測定システムが提供される。測定システムは、制御回路の制御により、光プローブ群に含まれるすべての光プローブから出力される光信号が選択されるまで、光信号選択器による光信号の選択の切り替えを繰り返す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体基板に形成された光半導体素子の測定時間の増大を抑制できる測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る測定システムの構成を示す模式図である。
図2】測定対象物の構成例を示す模式的な平面図である。
図3】第1の実施形態に係る測定システムの光プローブと電気プローブの相対的な位置関係の例を示す模式的な平面図である。
図4】第1の実施形態に係る測定システムを用いた測定対象物の測定方法を示す模式図である。
図5】第1の実施形態に係る測定システムの光プローブアレイの構成例を示す模式的な平面図である。
図6】半導体基板の測定範囲を示す模式的な平面図である。
図7】光出力の算出方法を説明するためのグラフである。
図8】第2の実施形態に係る測定システムの構成を示す模式図である。
図9】第2の実施形態の変形例に係る測定システムの構成を示す模式図である。
図10】実施形態に係る測定システムの測定時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る測定システム1は、図1に示すように、光プローブ群111~光プローブ群11mを配置した光プローブアレイ12と、光回路部20の光信号選択器211~光信号選択器21mを備える(m:2以上の整数)。以下において、光プローブ群111~光プローブ群11mを総称して「光プローブ群11」とも称し、光信号選択器211~光信号選択器21mを総称して「光信号選択器21」とも称する。このように、測定システム1は、m個の光プローブ群11とm個の光信号選択器21を備える。光信号選択器21のそれぞれは、制御回路50によって動作が制御される。
【0012】
それぞれの光プローブ群11は、光プローブ101~光プローブ10nを有する(n:2以上の整数)。以下において、光プローブ101~光プローブ10nを総称して「光プローブ10」とも称する。つまり、光プローブアレイ12は、m×n本の光プローブ10を有する。光プローブ10には、光ファイバや、光ファイバとレンズを組み合わせた構成などを採用可能である。例えば、n芯の光ファイバを一列に配列した構成の光プローブ群11を使用し、この光プローブ群11をm個配列して、n×m個の光プローブ10をマトリクス状に配置した光プローブアレイ12を構成する。
【0013】
光信号選択器21は、それぞれが光プローブ群11のいずれかと1対1に対応している。光信号選択器21は、対応する光プローブ群11のn本の光プローブ10からそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択して出力する。例えば、光プローブ群11iに対応する光信号選択器21iは、光プローブ群11iの光プローブ10からそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択する(1≦i≦m)。
【0014】
このため、光信号選択器21に、光プローブ101からの光信号が入射する第1チャネルから光プローブ10nからの光信号が入射する第nチャネルまで、n個の入力チャネルを有する光スイッチなどを使用する。そして、光信号選択器21は、n個の入力チャネルからそれぞれ入力した光信号から選択した1つの光信号を出力端子から出力する。光信号選択器21がいずれの光信号を選択するかは、制御回路50により設定される。詳細は後述するが、測定システム1は、制御回路50の制御により、光プローブ群11に含まれるすべての光プローブ10から出力される光信号が選択されるまで、光信号選択器21による光信号の選択の切り替えを繰り返す。
【0015】
また、測定システム1は、電気プローブ群311~電気プローブ群31mを配置した電気プローブアレイ32と、電気回路部40のドライバ回路411~ドライバ回路41mを備える。以下において、電気プローブ群311~電気プローブ群31mを総称して「電気プローブ群31」とも称し、ドライバ回路411~ドライバ回路41mを総称して「ドライバ回路41」とも称する。このように、測定システム1は、m個の電気プローブ群31とm個のドライバ回路41を備える。
【0016】
電気プローブ群31は、それぞれが光プローブ群11のいずれかと1対1に対応して配置される。そして、電気プローブ群31は、対応する光プローブ群11の光プローブ10と組をなす電気プローブ301~電気プローブ30nを有する。以下において、電気プローブ301~電気プローブ30nを総称して「電気プローブ30」とも称する。詳細は後述するが、組をなす光プローブ10と電気プローブ30により、1つの測定対象物100について1つずつ用意されるプローブユニットが構成される。なお、プローブユニットに含まれる電気プローブ30の本数は1本とは限られないが、以下ではプローブユニットに含まれる電気プローブ30が1本である場合を例示的に説明する。
【0017】
上記のように、それぞれの電気プローブ群31はn本の電気プローブ30を有する。したがって、電気プローブアレイ32は、m×n本の電気プローブ30を有する。電気プローブ30の材料は、例えば金属などの導電性材料である。電気プローブ30として、カンチレバー型、垂直ニードル型、垂直スプリング型などを採用可能である。
【0018】
ドライバ回路41は それぞれが電気プローブ群31のいずれかと1対1に対応し、対応する電気プローブ群31に含まれる電気プローブ30に電気信号を供給する。例えば、電気プローブ群31iに対応するドライバ回路41iは、電気プローブ群31iのいずれかの電気プローブ30に電気信号を供給する(1≦i≦m)。ドライバ回路41の動作は、制御回路50によって制御される。なお、ドライバ回路41によって電気信号が供給される電気プローブ30は任意に設定可能である。例えば、電気プローブ群31に含まれるすべての電気プローブ30に同時に電気信号を供給してもよいし、電気プローブ群31に含まれる一部の電気プローブ30に選択的に電気信号を供給してもよい。なお、電気プローブ群31の電気プローブ30のいずれに電気信号を供給するかは、制御回路50によって選択される。
【0019】
測定システム1の光回路部20は、m個の光信号選択器21からそれぞれ出力される光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号の1つを選択して出力する光電変換モジュール22を有する。光電変換モジュール22は、m個の入力チャネルと1つの出力端子を有する。なお、光回路部20では、光信号の伝搬経路が光ファイバなどの光導波路により構成される。例えば、光信号選択器21のそれぞれが、光電変換モジュール22と光ファイバによって接続される。また、光信号選択器21のそれぞれが、対応する光プローブ群11の光プローブ10と光ファイバによって接続される。
【0020】
光電変換モジュール22は、例えば、それぞれが光信号選択器21のいずれかと1対1に対応するm個の光電変換部により構成される。光電変換部は、対応する光信号選択器21から出力される光信号を電気信号に変換して出力する。そして、光電変換モジュール22は、m個の光電変換部の出力する電気信号から1つの電気信号を選択して出力する。光電変換モジュール22の動作は、制御回路50によって制御される。制御回路50の制御により、光電変換モジュール22は、m個の光信号選択器21から出力される光信号をそれぞれ変換した電気信号を順に出力する。
【0021】
測定システム1は、光電変換モジュール22から出力される測定データを記憶するデータ処理装置51を備える。なお、データ処理装置51に、光電変換モジュール22から出力される測定データを処理し、処理データを記憶する機能を持たせてもよい。
【0022】
測定対象物は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などの光半導体素子である。例えば図2に示すように、測定対象物100は光発光部の光半導体素子110と電気信号端子120を有する。測定対象物100の測定では、光プローブ10と光半導体素子110を光学的に接続し、電気プローブ30と電気信号端子120を電気的に接続する。なお、「光学的に接続」とは、直接に接触している接続や離間した領域を光が伝搬する接続を含む概念である。例えば、電気プローブ30を介して入力された電気信号に応じて測定対象物100から出力された光信号を、光プローブ10が受光する。
【0023】
このため、光プローブ10の光半導体素子110と光学的に接続する先端と電気プローブ30の電気信号端子120と接続する先端の相対的な位置関係が、光半導体素子110と電気信号端子120の相対的な位置関係に対応する。図3に、図2に示した測定対象物100に対応した光プローブ10の先端と電気プローブ30の先端の相対的な位置関係を示す。
【0024】
図3に示すように、1つの測定対象物100について、光プローブ10と組をなす電気プローブ30によって1つのプローブユニットが構成される。なお、制御回路50は、同一のプローブユニットを構成する光プローブ10と電気プローブ30が連動するように、光信号選択器21とドライバ回路41を制御する。すなわち、ドライバ回路41が電気信号を供給する電気プローブ30と、光信号選択器21が光信号を出力する入力チャネルに接続する光プローブ10が、1つのプローブユニットを構成する。
【0025】
なお、図3では、1つのプローブユニットを構成する光プローブ10と電気プローブ30の本数が1本ずつである場合を例示的に示した。しかし、プローブユニットに含まれる光プローブ10と電気プローブ30の本数は、測定対象物100の構成や測定内容に応じて任意に設定することができる。例えば、測定対象物100に接地端子がある場合、プローブユニットを構成する電気プローブ30を2本にする。そして、1本の電気プローブ30を測定対象物100の電気信号端子120に接続し、他の1本の電気プローブ30を測定対象物100の接地端子に接続する。
【0026】
図4に、測定システム1を用いた測定対象物100の測定方法の例を示す。図4のZ軸方向に沿って、測定対象物100が形成された半導体基板300の上方に光プローブ10や電気プローブ30が配置されている。なお、Z軸方向に垂直な平面をXY平面として、紙面の左右方向をX軸方向、紙面に垂直な方向をY軸方向としている。なお、図4では制御回路50やデータ処理装置51は図示を省略している。
【0027】
半導体基板300は、例えばガリウムヒ素(GaAs)基板やシリコン(Si)基板などである。ステージ65に搭載された半導体基板300の主面に、Z軸方向からみて複数の測定対象物100が等間隔でアレイ状に形成されている。ここで、半導体基板300に形成された測定対象物100のX軸方向の間隔をピッチPxとし、Y軸方向の間隔をピッチPyとする。
【0028】
図4に示した測定システム1は、光プローブアレイ12を保持する光プローブヘッド61と、電気プローブアレイ32を保持する電気プローブヘッド63を備える。図4に示すように、光プローブ群11の光プローブ101~光プローブ10nがX軸方向に沿って配列するように、光プローブヘッド61が光プローブアレイ12を保持する。一方、図5に示すように、光プローブ群111~光プローブ群11mがY軸方向に沿ってピッチPyで配列して、光プローブアレイ12が構成されている。
【0029】
このように、光プローブヘッド61は、m×n本の光プローブ10をアレイ状に配置した構成の光プローブアレイ12を保持する。また、電気プローブヘッド63は、それぞれがプローブユニットを構成する電気プローブ30をアレイ状に配置した電気プローブアレイ32を保持する。光プローブ10と電気プローブ30のそれぞれは、X軸方向に沿ってピッチPxで等間隔に配置され、Y軸方向に沿ってピッチPyで等間隔に配置される。
【0030】
光プローブヘッド61は、光プローブ駆動装置62の制御によってZ軸方向に移動する。これにより、光プローブ10の先端と測定対象物100とのZ軸方向に沿った距離の微調整が可能である。また、電気プローブヘッド63は、電気プローブ駆動装置64の制御によってZ軸方向に移動する。これにより、電気プローブ30の先端と測定対象物100とのZ軸方向に沿った距離の微調整が可能である。
【0031】
光プローブヘッド61および電気プローブヘッド63と測定対象物100とのX軸方向およびY軸方向の位置合わせは、例えばステージ駆動装置66によってステージ65を移動させることにより可能である。また、ステージ駆動装置66によってZ軸方向を中心軸としてステージ65を回転させることにより、Z軸方向を中心とする回転方向(以下、「Z軸回転方向」という。)について、測定対象物100に対して光プローブ10と電気プローブ30の位置を調整できる。
【0032】
なお、ステージ65の位置を固定し、光プローブヘッド61および電気プローブヘッド63をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させてもよい。すなわち、光プローブ駆動装置62および電気プローブ駆動装置64によって、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100との相対的な位置を調整してもよい。
【0033】
上記のように、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100の位置合わせが可能である。なお、光プローブヘッド61の位置と電気プローブヘッド63の位置を独立して制御できるように、測定システム1を構成してもよい。或いは、光プローブヘッド61と電気プローブヘッド63の位置を固定し、ステージ65をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向およびZ軸回転方向に動かして、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100との相対的な位置を調整する方法も可能である。このように、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100の位置合わせに、様々な調整方法を使用することができる。
【0034】
図4に示した測定システム1では、電気プローブ30によって、半導体基板300に形成された測定対象物100の電気信号端子に電気信号を印加する。電気信号によって駆動された測定対象物100の光半導体素子から光信号Lが出力され、この光信号Lが光プローブ10により受光される。
【0035】
以下に、図4に示した測定システム1を用いた測定方法の例を説明する。まず、上記に説明した方法により、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100の位置合わせを行う。このとき、測定対象物100の光半導体素子110と光プローブ10とが最適な状態で光学的に接続されるように、測定対象物100と光プローブ10の位置合わせを行う。例えば、光プローブアレイ12の両端の光プローブ101および光プローブ10nからの光信号が入力された光電変換モジュール22の出力を、光プローブ10と測定対象物100の相対的な位置を微小に動かしながらモニタする。そして、光プローブ101および光プローブ10nに光信号が最も強く入射する位置で、光プローブ10と測定対象物100の位置を固定する。
【0036】
上記の位置合わせにおいて、電気プローブ30から測定対象物100に電気信号を供給しながら、測定対象物100から出力される光信号をモニタする。したがって、光プローブアレイ12と電気プローブアレイ32が一体構造の場合は、測定対象物100の電気信号端子に接触した状態で、電気プローブ30がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動する。したがって、電気信号端子と接触させた状態で例えば±15μm程度動かしても接触状態が変わらず、電気信号を電気信号端子に供給できる電気プローブ30を使用する。このため、変形可能な歪弾性特性を有する電気プローブ30が好適に使用される。例えば、電気プローブ30に、歪変動に強い構成が可能なカンチレバー型や垂直型が使用される。
【0037】
位置合わせにより、光プローブアレイ12に含まれる光プローブ10がそれぞれ別個の測定対象物100と同時に光学的に接続可能になる。この状態で、以下のように測定対象物100の測定を行う。
【0038】
まず、制御回路50が、光回路部20の光信号選択器21の動作と電気回路部40のドライバ回路41の動作を対応させる。例えば、制御回路50が、第1チャネルから入力する光信号を出力するように光信号選択器21を設定する。そして、制御回路50が、光信号選択器21の第1チャネルに接続する光プローブ10とプローブユニットを構成する電気プローブ30に電気信号を供給するように、ドライバ回路41を設定する。
【0039】
その後、ドライバ回路41から供給された電気信号が電気プローブ30を介して入力され、測定対象物100が駆動する。駆動した測定対象物100から出力された光信号は、光プローブ10を経由して、光信号選択器21に入力する。これにより、m個の測定対象物100からそれぞれ出力された光信号が、m個の光信号選択器21の第1チャネルに入力する。その後、光信号選択器21から出力されたm個の光信号が、光電変換モジュール22により光電変換される。このとき、光電変換モジュール22は、光電変換したm個の電気信号を、制御回路50の制御により順に出力する。光電変換モジュール22から出力された電気信号は、データ処理装置51に送信される。例えば、光信号の変換電力値がAD変換後シリアル処理される。
【0040】
次に、制御回路50の制御により、第2チャネルから入力する光信号を出力するように、m個の光信号選択器21による光信号の選択を切り替える。同時に、制御回路50の制御により、第2チャネルに接続する光プローブ10とプローブユニットを構成する電気プローブ30に電気信号を供給するように、m個のドライバ回路41を設定する。そして、光信号選択器21の第2チャネルに入力する光信号について、上記の第1チャネルに入力する光信号と同様の処理を実行する。その後、制御回路50によって光信号選択器21とドライバ回路41の動作を制御しながら、第3チャネルに接続する光プローブ10から出力される光信号から第nチャネルに接続する光プローブ10から出力される光信号まで、同様の処理を繰り返す。
【0041】
上記のようにして、測定システム1は、光信号選択器211~光信号選択器21mのそれぞれが選択する入力チャネルを第1チャネルから第nチャネルまで切り替えながら測定対象物100の測定を行う。すなわち、制御回路50が、ドライバ回路41の動作と光信号選択器21の動作を対応させて、ドライバ回路41が電気信号を供給した測定対象物100から出力された光信号を光信号選択器21から出力させることを繰り返す。
【0042】
これにより、図6に示したm×n個の測定対象物100が含まれる半導体基板300の測定範囲310について、測定対象物100の測定が実行される。図6において、光プローブ群11aに含まれ、光信号選択器21aの第bチャネルに接続される光プローブ10が光学的に接続する測定対象物100を、測定対象物100(a、b)と示している(1≦a≦m、1≦b≦n)。図6に矢印で示したように、測定対象物100(1、1)から測定対象物100(m、1)まで、第1チャネルに入力する光信号が処理される。次いで、測定対象物100(1、2)から測定対象物100(m、2)まで、第2チャネルに入力する光信号が処理される。そして、測定対象物100(1、n)から測定対象物100(m、n)まで第nチャネルに入力する光信号が処理されるまで、光信号の処理が繰り返される。このようにして、光プローブ10および電気プローブ30と測定対象物100との新たな位置合わせをすることなく、m×n個の測定対象物100の測定が連続的に行われる。
【0043】
その後、光プローブアレイ12および電気プローブアレイ32と半導体基板300とのXY平面の相対位置を変えて、新たな測定範囲310において測定対象物100の測定を実行する。例えば、ステージ65をZ軸方向に沿って下降させた後、X軸方向にn×Pxの距離かつY軸方向にm×Pyの距離だけ、半導体基板300に対して光プローブアレイ12および電気プローブアレイ32を相対的に移動させる。そして、測定対象物100の光半導体素子と光プローブ10とが最適な状態で光学的に接続される所定の位置まで、ステージ65をZ軸方向に沿って上昇させる。その後、新たな測定範囲310において、m×n個の測定対象物100を測定する。
【0044】
新たな測定範囲310においても、上記と同様に、光信号選択器21、ドライバ回路41および光電変換モジュール22を用いて測定対象物100を測定する。すなわち、光プローブアレイ12に含まれるすべての光プローブ10から出力される光信号が選択されるまで、光信号選択器21による光信号の選択の切り替えを繰り返す。そして、半導体基板300に形成されたすべての測定対象物100の測定が完了するまで、測定範囲310を変更しながら測定対象物100の測定を繰り返す。
【0045】
測定対象物100の測定の内容は任意に設定できる。例えば、測定対象物100が入力電流により駆動される光半導体素子である場合に、電気信号としてドライバ回路41が供給する入力電流を、0.1、0.2、・・・、9.9、10.0(mA)のように徐々に増加させる。これにより得られた測定データを用いて、測定対象物100のスロープ効率η、閾値電流Ithを算出できる。
【0046】
なお、測定対象物100の位置情報として、測定対象物100それぞれの半導体基板300における位置を予め番地付けしておく。そして、データ処理装置51の所定の記憶領域に、番地付けされた位置と対応させて、測定対象物100の測定データや測定データを処理した処理データを格納する。半導体基板300における測定対象物100の番地付けの方法としては、例えば、カメラなどの撮像装置を用いた半導体基板300の主面の画像を処理して番地を設定する方法、半導体基板300での測定対象物100のレイアウト情報から番地を設定する方法などがある。主な処理データは、入力電流に対する測定対象物100からの光信号の出力(以下、「光出力」という。)、抵抗値、入力定格電流でのピーク波長、スペクトラムの半値全幅(FWHM)などである。
【0047】
なお、測定対象物100の光出力は、光電変換モジュール22によって光信号を光電変換した出力電流値から得られる。例えば以下のようにして、出力電流値を光出力に換算する。
【0048】
まず、基準となる光半導体素子(以下、「基準デバイス」という。)を準備する。そして、基準光パワーメータを用いて基準デバイスの空間光出力を測定する。次に、測定システム1を用いて、基準光パワーメータを用いた測定と同じ測定条件で基準デバイスを駆動させ、光電変換モジュール22で基準デバイスの出力電流値を測定する。このようにして、基準光パワーメータにより得られる基準デバイスの光出力と、光電変換モジュール22により得られる基準デバイスの出力電流値との関連を事前に調査しておく。いくつかの測定条件について基準デバイスを測定することにより、基準光パワーメータにより得られる光出力と測定システム1により得られる出力電流値の相関関係を設定できる。
【0049】
図7に、光出力と出力電流値の相関関係をプロットした例を示す。図7の縦軸は基準光パワーメータにより測定された光出力Pであり、横軸は測定システム1を用いた測定により得られた出力電流値Iである。図7に示したグラフは、基準デバイスを測定して得られた出力電流値I0に対する光出力P0、および出力電流値I1に対する光出力P1をプロットしたものである。これら2つのプロット値に対するラグランジュ補間により、以下の式(1)を用いて出力電流値Imnを光出力Pmnに換算することができる:

Pmn=(Imn-I1)×P0/(I0-I1)+(Imn-I0)×P1/(I1-I0) ・・・(1)

式(1)で、Imnは測定対象物100の出力電流値であり、Pmnは出力電流値Imnを換算した光出力である。ここで、I1≧Imn>I0とする。
【0050】
光プローブアレイ12に使用するすべての光プローブ10について上記の相関関係を予め設定しておくことにより、測定対象物100の出力電流値から光出力を容易に換算することができる。
【0051】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る測定システム1では、m×n本の光プローブ10を有する光プローブアレイ12やm×n本の電気プローブ30を有する電気プローブアレイ32を用いて、m×n個の測定対象物100について同時に位置合わせする。このため、測定システム1によれば、1個ずつ測定対象物100を光プローブ10や電気プローブ30と位置合わせする方法と比べて、位置合わせに要する時間を大幅に短縮できる。
【0052】
そして、測定システム1では、電気信号を供給する電気プローブ30をドライバ回路41により選択し、かつ、光信号を伝搬する光プローブ10を光信号選択器21により選択して、光電変換モジュール22で処理する光信号を選択する。このとき、光信号選択器21は、入力するm個の光信号から1つずつ光信号を順に選択して出力する。そして、光電変換モジュール22が、光信号選択器21から出力される光信号をそれぞれ変換したm個の電気信号を順に出力する。光信号選択器21は、m個の光信号から1つずつ光信号を順に選択することをn回繰り返す。これにより、n×m個の測定対象物100からそれぞれ出力されるすべての光信号を処理することができる。
【0053】
なお、光スイッチなどを使用した光信号選択器21による光信号の切り替え時間と比べて、光電変換モジュール22による電気信号の切り替え時間は非常に短い。このため、光電変換モジュール22におけるm個の光信号の光電変換と電気信号の出力は、ほぼ同時に行われるとみなせる。
【0054】
これに対し、m×n本の光プローブ10を有する光プローブアレイ12から出力される光信号について、n回の光信号の切り替えとm回の光信号の切り替えをそれぞれ光スイッチによって行う光スイッチ2段構成も考えられる。しかし、光スイッチによる光信号の切り替え時間は電気信号の切り替え時間に比べて非常に長い。電気信号の切り替え時間が光信号の切り替え時間に対して無視できるほど短いため、光信号の切り替えが1回である測定システム1は、光スイッチ2段構成に比べて測定時間がほぼ1/mである。したがって、測定システム1によれば、測定時間を抑制することができる。
【0055】
上記のように、測定システム1によれば、測定範囲310を変えながら繰り返し測定を行うことにより、半導体基板300に形成された測定対象物100の全数を短時間で測定できる。その結果、すべての測定対象物100について良品と不良品の判定が可能であり、測定対象物100を用いた製品の歩留まりを改善できる。
【0056】
また、測定システム1によれば、光信号選択器21やドライバ回路41の設定を切り替えながら、1台の光電変換モジュール22を用いて複数の測定対象物100からの光信号を処理することができる。このため、複数本の光プローブ10を用いて多数の測定対象物100を同時に測定する場合に、光プローブ10や電気プローブ30ごとに光電変換器やドライバ回路をそれぞれ用意する必要がない。例えば、光プローブ10の1本ごとに光電変換器を用意する場合と比較して、光電変換器の台数を1/nにできる。このため、測定システム1によれば、測定コストや測定スペースの増大を抑制できる。
【0057】
更に、測定システム1によれば、使用する光プローブ10と電気プローブ30の本数を増加させることも容易である。例えば光プローブ群11と電気プローブ群31の個数を(m+1)個にする場合には、光信号選択器21の個数やドライバ回路41の個数を(m+1)個にすればよい。また、光プローブ群11の光プローブ10と電気プローブ群31の電気プローブ30の本数を(n+1)本とする場合、光信号選択器21の入力チャネルの個数を(n+1)個に、ドライバ回路41の出力端子数を(n+1)個にすればよい。
【0058】
なお、光プローブ10と電気プローブ30の本数の拡張が予測される場合は、入力チャネルの個数の多い光信号選択器21や、出力端子数の多いドライバ回路41を、予め準備しておくことが好ましい。これにより、光プローブ10と電気プローブ30の本数の拡張に対して対応が容易である。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る測定システム1aは、図8に示すように、光回路部20が、光信号選択器211~光信号選択器21mから出力される光信号をそれぞれ分岐する光分岐カプラ231~光分岐カプラ23mを有する。以下において、光分岐カプラ231~光分岐カプラ23mを総称して「光分岐カプラ23」とも称する。更に、図8に示す測定システム1aは、光分岐カプラ23から出力される光信号の一方が入力する選択スイッチ24、および選択スイッチ24から出力される光信号が入力する分光器25を備える。測定システム1aは、光分岐カプラ23、選択スイッチ24および分光器25を有する点が、図1に示した測定システム1と異なる。
【0060】
m個の光分岐カプラ23は、それぞれが光信号選択器21のいずれかと1対1に対応する。光分岐カプラ23は、対応する光信号選択器21から出力される光信号を第1光信号と第2光信号に分岐する。例えば、光信号選択器21iに対応する光分岐カプラ23iは、光信号選択器21iから出力される光信号を第1光信号と第2光信号に分岐する(1≦i≦m)。
【0061】
選択スイッチ24は、m個の光分岐カプラ23からそれぞれ出力される第1光信号から1つの第1光信号を選択して出力する。選択スイッチ24の動作は、制御回路50によって制御される。すなわち、制御回路50の制御により、光分岐カプラ231~光分岐カプラ23mから出力される第1光信号のいずれかが、選択スイッチ24から出力される。第1チャネルから第nチャネルまで光信号選択器21による光信号の選択が切り替わるごとに、選択スイッチ24による第1光信号の選択が行われる。
【0062】
分光器25は、選択スイッチ24から出力される第1光信号を分光する。例えば、分解能が1nm以下、イメージセンサーの蓄積時間が数msecの性能を有する分光器25が、高精度かつ短時間の測定に対して有効である。
【0063】
また、図8に示した測定システム1aは、図4を参照しながら説明した方法と同様にして、光電変換モジュール22が、m個の光分岐カプラ23からそれぞれ出力される第2光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号の1つを選択して出力する。そして、光電変換モジュール22から出力される電気信号について、所定の処理が実行される。例えば、図7に例示した出力電流値Iと光出力Pの相関関係を用いて、測定対象物100の光出力が算出される。
【0064】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る測定システム1aでは、光分岐カプラ23が光信号選択器21から出力される光信号を分岐する。このため、分光器25による光信号の分光が、光電変換モジュール22により変換された電気信号の処理と並行して実行される。したがって、図8に示す測定システム1aによれば、例えば測定対象物100の光出力の測定と分光の測定の両方を、測定時間の増大を抑制して実行できる。
【0065】
また、測定システム1aによれば、光プローブ10ごとに光電変換器や分光器をそれぞれ用意する必要がない。このため、光プローブ10の1本ごとに光電変換器や分光器を用意する場合と比較して、光電変換器の台数を1/nに、分光器の台数を1/(m×n)にできる。このため、測定システム1aによれば、測定コストや測定スペースの増大を抑制できる。
【0066】
更に、測定システム1aによれば、第1の実施形態と同様に、光電変換モジュール22による光電変換を含む測定時間を、光スイッチ2段構成と比較してほぼ1/mにできる。そして、分光器25を用いた測定時間は、光スイッチ2段構成と比較してほぼ1/2である。このように、測定システム1aによれば測定時間を短縮することができる。
【0067】
なお、上記では、光信号選択器21から出力される光信号を光分岐カプラ23によって2分岐する場合を説明したが、光信号選択器21から出力される光信号を3つ以上に分岐してもよい。例えば、光出力の測定や分光の測定と平行して、光信号の波形をモニタすることなどができる。
【0068】
<変形例>
図9に、第2の実施形態の変形例に係る測定システム1bを示す。測定システム1bでは、測定システム1aの光分岐カプラ23および選択スイッチ24の代わりに、分岐スイッチ26が使用されている。分岐スイッチ26は、m個の光信号選択器21からそれぞれ出力される光信号から1つの光信号を選択し、カップリング機能により選択した光信号を第1光信号と第2光信号に分岐する。分光器25は、分岐スイッチ26から出力される第1光信号を分光する。分岐スイッチ26から出力される第2光信号は、光電変換器27によって電気信号に変換される。通常、光電変換器27側に分岐する第2光信号を大きくとり、分光器25側に分岐する第1光信号を少な目に設定する。
【0069】
分岐スイッチ26には、m個の入力チャネルを有する光スイッチなどが使用される。分岐スイッチ26の動作は、制御回路50によって制御される。すなわち、制御回路50の制御により、光信号選択器211~光信号選択器21mから出力される光信号から1個の光信号が選択される。そして、分岐スイッチ26が、選択した光信号を第1光信号と第2光信号に分岐して出力する。分岐スイッチ26は、制御回路50の制御により、m個の第1光信号と第2光信号を順に出力する。
【0070】
上記のように、測定システム1bは、光信号の分岐を光分岐カプラ23ではなく分岐スイッチ26により行うことが、図8に示した測定システム1aと異なる。測定システム1bでは、分岐スイッチ26の切り替えによって、m本の光プローブ10から出力される光信号を順に分岐し、分岐した光信号が光電変換器27と分光器25にそれぞれ入力する。これにより、例えば測定対象物100の出力特性と分光特性が同時に測定される。
【0071】
以下に、光回路部20の光信号選択器21や選択スイッチ24、分岐スイッチ26に光スイッチを使用する場合について、測定システム1、測定システム1aおよび測定システム1bの測定時間を比較する。通常、光回路部20に使用する光スイッチの切り替え時間tsは、数msec~数十msecである。一方、電気信号を切り替えるドライバ回路41の切り替え時間tdは、数nsec~数μsecである。つまり、ts>>tdであり、測定対象物100の測定時間は、ほぼ光スイッチの切り替え時間tsと光電変換の処理時間tmに依存する。
【0072】
したがって、図1に示した測定システム1の測定時間Tp1は、TP1=(m×n)×(ts+tm)で表される。一方、図8に示した測定システム1aの測定時間Tp2は、TP2=(m×n)×(ts+tm)+m×(ts+tm2)で表される。ここで、tm2は、分光器25による光信号の処理時間である。また、図9に示した測定システム1bの測定時間Tp3は、Tp3=(m×n)×(ts+tm+tm2)で表される。
【0073】
図10に、測定システム1、測定システム1aおよび測定システム1bを使用してm×n個の測定対象物100を測定した測定時間を示す。図10の横軸は光スイッチの切り替え回数nであり、縦軸は測定時間Tpである。図10に示すように、測定システム1bによる測定時間Tp3は、測定システム1による測定時間Tp1や測定システム1aによる測定時間Tp2と比較して長い。これは、測定システム1bでは、光信号選択器21の切り替えにより選択された入力チャネルごとにm回の分岐スイッチ26の切り替えを行うためである。つまり、測定システム1や測定システム1aに比べて、測定システム1bでは光スイッチによる光信号の切り替え回数がm倍になり、光信号の切り替えの回数が増加する分の測定時間が増大する。
【0074】
例えば、m=4、n=12、ts=40(msec)、tm=100(msec)、tm2=1000(msec)の場合、Tp1=6720(msec)、Tp2=10880(msec)、Tp3=54720(msec)である。
【0075】
なお、分光特性を測定する分光器25の測定時間が長いのは、分光器25の受光部に使用するイメージセンサーの蓄積時間をある程度長く調整することで、最適な波長ごとの測定精度の出力値を得るためである。例えば、48個の測定対象物100の測定に要する時間は、図1に示した測定システム1の場合は、約6.7秒である。一方、分光器25を有する図8に示した測定システム1a場合は、約11秒である。また、図9に示した測定システム1bの場合は、約55秒である。このように、分光器25による測定を含む場合で、測定システム1bに比べて、測定システム1aでは測定時間が1/5程度である。
【0076】
上記のように、特に測定システム1や測定システム1aでは、半導体基板300に形成された複数の測定対象物100の測定時間を大幅に短縮することができる。なお、測定時間をより短縮するには、光スイッチの切り替え時間tsおよび光信号の処理時間tmの短縮が有効である。また、分光特性も測定する場合には、分光器25のイメージセンサーの蓄積時間の最適化による処理時間tm2の短縮が、測定時間の短縮に有効である。
【0077】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0078】
例えば、上記では、n芯の光プローブ群11をm個配列して光プローブアレイ12を構成する例を説明したが、m芯の光プローブ10列をn個配列して構成した光プローブアレイ12を使用してもよい。また、光信号選択器21に、光スイッチ以外の光学装置を使用してもよい。例えば、合流器として光カプラなどを光信号選択器21に使用してもよい。
【0079】
また、上記では、プローブユニットに含まれる光プローブ10や電気プローブ30が1本である場合を例示的に説明した。しかし、プローブユニットに含まれる光プローブ10や電気プローブ30の本数は1本ずつに限られない。例えば、1本の光プローブ10と2本の電気プローブ30によりプローブユニットを構成してもよい。
【0080】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
1…測定システム
10…光プローブ
111~11m…光プローブ群
12…光プローブアレイ
20…光回路部
211~21m…光信号選択器
22…光電変換モジュール
231~23m…光分岐カプラ
24…選択スイッチ
25…分光器
26…分岐スイッチ
27…光電変換器
30…電気プローブ
311~31m…電気プローブ群
32…電気プローブアレイ
40…電気回路部
411~41m…ドライバ回路
50…制御回路
51…データ処理装置
61…光プローブヘッド
62…光プローブ駆動装置
63…電気プローブヘッド
64…電気プローブ駆動装置
100…測定対象物
300…半導体基板
310…測定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10