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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230911BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20230911BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B60C11/03 300C
B60C11/12 C
B60C11/03 C
B60C9/18 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019229325
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095088
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】梶山 雄司
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 孝治
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214286(JP,A)
【文献】特開2005-053332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082411(WO,A1)
【文献】特開2012-236536(JP,A)
【文献】特開2001-063322(JP,A)
【文献】特開2013-180693(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111296(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/042256(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103070(WO,A1)
【文献】特開2017-206144(JP,A)
【文献】特開2012-056456(JP,A)
【文献】特開平07-276924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝とによって区画されたブロックを複数備えるタイヤであって、
前記タイヤの接地幅TWと、前記タイヤの最大幅SWとの比TW/SWは、0.75以上、0.95以下であり、
主ベルトを含むベルト層のタイヤ幅方向外側端は、タイヤ周方向に延び、最もタイヤ幅方向外側に形成される前記周方向溝よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
前記ブロックには、
タイヤ幅方向に延び、前記ブロックのタイヤ周方向端部に最も近い第1幅方向サイプと、
前記第1幅方向サイプとタイヤ周方向において隣接し、タイヤ幅方向に延びる第2幅方向サイプと
が形成され、
前記タイヤ周方向端部から前記第1幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離は、前記第1幅方向サイプから前記第2幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離よりも長く、
前記ブロックは、トレッド面視において、タイヤ幅方向に沿った辺の長さが、タイヤ周方向に沿った辺の長さよりも長い三角形状であり、
複数の前記ブロックの頂点部分は、タイヤ周方向において、一方の前記周方向溝側と、
他方の前記周方向溝側とに交互に位置するタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向において隣接する前記ブロック間には、タイヤ幅方向に延びるブロック間細溝が形成される請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ブロック間細溝の一端には、前記ブロック間細溝の溝幅よりも広い切欠き溝が連通する請求項に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延び、前記第1幅方向サイプ及び前記第2幅方向サイプの溝幅よりも広く、前記幅方向溝の溝幅よりも狭い幅方向細溝が形成され、
前記幅方向細溝は、前記第2幅方向サイプよりもタイヤ周方向における中央側に形成され、
前記幅方向細溝の一端は、前記ブロック内において終端する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックのタイヤ周方向における一方の壁面部分は、トレッド面視において、タイヤ周方向における凹凸を有する請求項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷雪路面の走行に適したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷雪路面の走行に適したスタッドレスタイヤなどの空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)では、氷雪路面の走行性能(以下、雪上性能)を確保するため、路面と接するブロックの形状が複雑になるとともに、サイプなどの細溝が多く形成されることが一般的である。
【0003】
このようなタイヤの場合、接地圧が高くしっかりと接地するトレッド中央領域のブロックは、摩耗が順調に進行するのに対して、タイヤのクラウン形状のため接地圧が低くなり易いトレッドショルダー領域のブロックは、しっかりと接地せず、ヒール・アンド・トゥー摩耗などの偏摩耗が特に発生し易い。
【0004】
そこで、タイヤ周方向において隣接するブロック間の溝部分に底上げ部を設け、隣接するブロックを連結する構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-277814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような隣接するブロックを連結する底上げ部を設ける構造は、単純にゴムボリュームが増加してしまい、転がり抵抗(RR)が上昇する問題があり、環境に対する影響を考慮すると、必ずしも適切ではない。一方で、適切なブロック剛性を確保できないと、偏摩耗の抑制だけでなく、高い雪上性能(制駆動性能、操縦安定性など)を発揮することは難しい。
【0007】
さらに、近年では、雪上性能の中でも、特に、氷上路面での制動性能(ブレーキング)が重要視される傾向にある。氷上路面でのブレーキングでは、アンチロックブレーキシステム(ABS)が頻繁に介入することとなるため、ABSとの親和性も重要である。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ブロック自体の形状によって雪上性能、特に、ABSとの親和性を考慮した制動性能をさらに高め得るタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、タイヤ周方向に延びる周方向溝(例えば、周方向溝31, 32)と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝(例えば、ブロック間細溝130)とによって区画されたブロック(例えば、ブロック100, 150)を複数備えるタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記タイヤの接地幅TWと、前記タイヤの最大幅SWとの比TW/SWは、0.75以上、0.95以下であり、主ベルトを含むベルト層(ベルト層50)のタイヤ幅方向外側端は、タイヤ周方向に延び、最もタイヤ幅方向外側に形成される周方向溝(周方向溝35, 36)よりもタイヤ幅方向外側に位置し、前記ブロックには、タイヤ幅方向に延び、前記ブロックのタイヤ周方向端部に最も近い第1幅方向サイプ(幅方向サイプ111, 161)と、前記第1幅方向サイプとタイヤ周方向において隣接し、タイヤ幅方向に延びる第2幅方向サイプ(幅方向サイプ112, 162)とが形成され、前記タイヤ周方向端部から前記第1幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離(距離L11)は、前記第1幅方向サイプから前記第2幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離(距離L12)よりも長い。
【発明の効果】
【0010】
上述したタイヤによれば、ブロック自体の形状によって雪上性能、特に、ABSとの親和性を考慮した制動性能をさらに高め得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。
図2図2は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
図3図3は、ブロック100及びブロック150を含むトレッド20の一部平面図である。
図4図4は、ブロック200を含むトレッド20の一部平面図である。
図5図5は、ブロック300を含むトレッド20の一部平面図である。
図6図6(a)及び(b)は、実施形態に係るブロック100の作用及び効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。図1に示すように、空気入りタイヤ10は、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の幅方向溝とによって区画されたブロックを複数備える。
【0014】
空気入りタイヤ10は、氷雪路面の走行に適したタイヤであり、スタッドレスタイヤなどと呼ばれる。
【0015】
なお、スタッドレスタイヤは、スノータイヤまたはウインタータイヤなどと呼ばれてもよい。或いは、空気入りタイヤ10は、冬期に限らず、四季を通じて利用可能ないわゆるオールシーズンタイヤであっても構わない。
【0016】
空気入りタイヤ10が装着される車両の種類は特に限定されないが、一般的な乗用自動車、特に、比較的車両重量が重いSUV(Sport Utility Vehicle)に好適に用い得る。
【0017】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、複数のブロック(陸部ブロックと呼んでもよい)が設けられる。
【0018】
タイヤ赤道線CLを含む領域には、ブロック100及びブロック150が設けられる。具体的には、ブロック100とブロック150とは、タイヤ周方向において交互に設けられる。ブロック100及びブロック150は、センターブロックと呼ばれてもよい。
【0019】
なお、ブロック100及びブロック150は、必ずしもタイヤ赤道線CLと重なる位置に設けられていなくてもよい。ブロック100及びブロック150は、トレッド20に設けられる他のブロックよりもタイヤ赤道線CLよりに設けられていればよい。
【0020】
ブロック100及びブロック150は、周方向溝31及び周方向溝32によって区画される。周方向溝31のタイヤ幅方向外側には、ブロック200が設けられる。また、周方向溝32のタイヤ幅方向外側には、ブロック300が設けられる。
【0021】
ブロック200とブロック300とは、線対称の形状を有している。ブロック200及びブロック300は、セカンドブロックと呼ばれてもよい。
【0022】
ブロック200のタイヤ幅方向外側には、周方向溝35が形成される。また、ブロック300のタイヤ幅方向外側には、周方向溝36が形成される。周方向溝35及び周方向溝36は、タイヤ周方向に延び、最もタイヤ幅方向外側に形成される周方向溝である。
【0023】
4本の周方向溝、具体的には、周方向溝31、周方向溝32、周方向溝35及び周方向溝36は、タイヤ周方向に沿って延びる直線状の溝(ストレート溝)である。このような形状の溝は、平面上に展開した場合に、先の方まで見通せるため、シースルー形状、或いはシースルー溝などと呼ばれてもよい。
【0024】
また、ブロック200及びブロック300(セカンドブロック)のブロック剛性は、ブロック100及びブロック150は、必ずしもタイヤ赤道線CLと重なる位置に設けられていなくてもよい。ブロック100(センターブロック)のブロック剛性よりも高くてもよい。
【0025】
なお、ブロック剛性は、例えば、日本産業規格(JIS)の曲げ剛性の測定試験方法によって取得されてもよいし、ブロックの形状及びゴムの種類委など基づくシミュレーションによって取得されてもよい。
【0026】
本実施形態では、空気入りタイヤ10は、車両装着時における回転方向Rが指定されている。但し、空気入りタイヤ10は、必ずしも回転方向Rが指定されていなくても構わない。
【0027】
図2は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、図2では、断面ハッチングの図示は一部省略されている。
【0028】
図2に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50、ビード部60及びベルト補強層70を備える。
【0029】
また、図2に示すように、空気入りタイヤ10の接地幅TWと、空気入りタイヤ10の最大幅SWとの比TW/SWは、0.75以上、0.95以下である。
【0030】
なお、接地幅TW(及び後述する接地長も同様)とは、空気入りタイヤ10が正規内圧に設定され、正規荷重が負荷さあれた状態におけるトレッド20の接地部分の幅としてよい。
【0031】
正規内圧とは、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、正規荷重とは、JATMA YearBookにおける最大負荷能力に対応する最大負荷能力(最大荷重)である。また欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0032】
また、本実施形態では、空気入りタイヤ10は、ブロックエッヂ及びサイプエッヂに関する数値が、表1に示す範囲内となることが好ましい。
【0033】
【表1】
【0034】
1ピッチあたりの前後サイプエッヂ合計量とは、図1に示すように、1ピッチに存在するサイプの個数をNとするとき、N×αcosθ*(1ピッチに存在するサイプの数)として、それぞれのサイプ種類で計算して足し合わせた数値である。θはタイヤ幅方向に対するサイプの傾斜角度であり、αは、各サイプのθ度傾斜した方向における長さである。
【0035】
単位接地長あたりの前後サイプエッヂとは、N×αcosθ*(1ピッチに存在するサイプの数)をそれぞれのサイプ種で計算して足し合わせた数値をピッチ長で除した値である。
【0036】
前後ブロックエッヂも、前後サイプエッヂと同様であり、対象をサイプではなく、ブロックのエッヂ部分としたものである。
【0037】
表1に示すように、単位接地長あたりの前後ブロックエッヂ/前後サイプエッヂが、0.48以上、2.00以下であることが好ましい。0.48以上とすることによって、ブロックエッヂのエッヂ成分(エッヂ圧が高い)により、特に、ブロックエッヂによる路面RD(図2において不図示、図6(a)及び(b)参照)の引っ掻き効果(エッヂ効果)を効果的に向上し得る。
【0038】
また、2.00以下とすることによって、サイプエッヂのエッヂ成分により、特に、水膜の除去効果(除水性能と呼んでもよい)を効果的に高め得る。これにより、氷上路面での制動性能(氷上ブレーキ性能)が大きく向上する。
【0039】
なお、単位接地長あたりの前後ブロックエッヂ/前後サイプエッヂは、0.60以上、1.40以下であることがより好ましい。具体的な数値範囲は、タイヤサイズによって多少異なってもよいが、表1に示した数値範囲は、225/65/R17を基準としてよい。
【0040】
表1及び図1に示すピッチPとは、タイヤ周方向において同一のトレッドパターンが繰り返される間隔(長さ)と解釈されてよい。また、トレッドパターンは、複数のピッチPピッチによって構成されていてもよい。また、単位接地長とは、正規内圧及び正規荷重時における接地長を基準とした任意の接地長と解釈されてよい。但し、単位接地長は、正規内圧及び正規荷重時における接地長以下であることが好ましい。
【0041】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0042】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。本実施形態では、カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード(不図示)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコードがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0043】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。ベルト層50は、スチールコードが交錯する一対の交錯ベルトと、交錯ベルトのタイヤ径方向外側に設けられる補強ベルトとを含んでよい。交錯ベルトは、主ベルトと呼ばれてもよい。補強ベルトには、有機繊維のコードが用いられてよい。
【0044】
また、主ベルトを含むベルト層50のタイヤ幅方向外側端は、タイヤ周方向に延び、最もタイヤ幅方向外側に形成される周方向溝35, 36よりもタイヤ幅方向外側に位置してよい。
【0045】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状である。
【0046】
ベルト補強層70は、ベルト層50のタイヤ幅方向外側のそれぞれの端部(トレッドショルダーと呼んでもよい)に設けられる。具体的には、ベルト補強層70は、ベルト層50のタイヤ幅方向外側端を覆うように設けられる。ベルト補強層70には、有機繊維のコードが用いられてよい。
【0047】
ベルト補強層70のタイヤ幅方向内側端は、トレッド20の接地端(接地幅TWの位置)よりもタイヤ幅方向内側に位置することが好ましい。また、ベルト補強層70のタイヤ幅方向外側端は、トレッド20の接地端(接地幅TWの位置)よりもタイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。
【0048】
(2)ブロックの形状
次に、トレッド20に設けられる各ブロックの形状について説明する。
【0049】
(2.1)ブロック100及びブロック150
図3は、ブロック100及びブロック150を含むトレッド20の一部平面図である。図3に示すように、ブロック100及びブロック150は、タイヤ周方向において交互に設けられる。ブロック100とブロック150とは、横並びにした場合、線対称となる形状を有している。つまり、ブロック150は、ブロック100を左右反転させた形状である。
【0050】
本実施形態では、ブロック100及びブロック150は、トレッド面視において、タイヤ幅方向に沿った辺の長さが、タイヤ周方向に沿った辺の長さよりも長い三角形状である。具体的には、ブロック100及びブロック150は、概ね二等辺三角形状である。
【0051】
複数のブロックの頂点部分は、タイヤ周方向において、一方の周方向溝側と、他方の周方向溝側とに交互に位置する。具体的には、ブロック100の頂点部分100a(対頂点)、及びブロック150の頂点部分150a(対頂点)は、タイヤ周方向において、周方向溝31側と周方向溝32側とに交互に位置する。
【0052】
なお、図3に示すように、ブロック100及びブロック150の全てまたは何れかの頂点部分は、尖らないように切り欠いたような形状とし、ブロック間に切欠き状の溝部分が形成されてもよい。
【0053】
ブロック100には、幅方向サイプ111、幅方向サイプ112及び幅方向サイプ113が形成される。なお、サイプとは、陸部ブロックの接地面内では閉じる細溝であり、非接地時におけるサイプの開口幅は、特に限定されないが、0.1mm~1.5mmであることが好ましい。
【0054】
幅方向サイプ111は、タイヤ幅方向に延び、ブロック100のタイヤ周方向端部に最も近い位置に形成される。本実施形態において、幅方向サイプ111は、第1幅方向サイプを構成する。
【0055】
なお、ブロック100のタイヤ周方向端部とは、ブロック100のタイヤ周方向における何れかの端部でよいが、回転方向Rとの関係では、蹴り出し側、つまり、路面RD(図6(a)及び(b)参照)に後に接する後着側の端部としてもよい。
【0056】
幅方向サイプ112は、幅方向サイプ111とタイヤ周方向において隣接し、タイヤ幅方向に延びる。本実施形態において、幅方向サイプ112は、第2幅方向サイプを構成する。
【0057】
幅方向サイプ113は、幅方向サイプ112とタイヤ周方向において隣接し、タイヤ幅方向に延びる。
【0058】
本実施形態では、幅方向サイプ111~113は、トレッド面視においてジグザグ状であるが、幅方向サイプ111~113の少なくとも何れかは、ジグザグ状でなくてもよく、例えば波状
または直線状であってもよい。また、幅方向サイプ111~113は、タイヤ幅方向に対して傾斜しているが、幅方向サイプ111~113の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向とほぼ平行でもよい。
【0059】
また、ブロック100に形成される幅方向サイプは、幅方向サイプ111及び幅方向サイプ112のように、一端が周方向溝31に連通していてもよいし、幅方向サイプ113のように、両端がブロック100内で終端していてもよい。さらに、幅方向サイプ112のように、周方向溝31側に切欠き溝状の拡幅部が形成されてもよい。
【0060】
ブロック100のタイヤ周方向端部から幅方向サイプ111までのタイヤ周方向に沿った距離L11は、幅方向サイプ111から幅方向サイプ112までのタイヤ周方向に沿った距離L12よりも長い。
【0061】
より具体的には、ブロック100に形成される幅方向サイプのタイヤ周方向における形成間隔は、蹴り出し側(後着側)において広くなっていてよい。つまり、タイヤ周方向における中央領域では、蹴り出し側の端部よりも幅方向サイプの形成間隔は、蹴り出し側よりも狭くなってもよい。
【0062】
ブロック150は、上述したように、ブロック100を左右反転させた形状を有する。以下、ブロック100と同様の部分については、適宜説明を省略する。
【0063】
図3に示すように、ブロック150には、幅方向サイプ161、幅方向サイプ162及び幅方向サイプ163が形成される。
【0064】
本実施形態において、幅方向サイプ161及び幅方向サイプ162は、第1幅方向サイプ及び第2幅方向サイプをそれぞれ構成する。
【0065】
ブロック150でも、ブロック150のタイヤ周方向端部から幅方向サイプ161までのタイヤ周方向に沿った距離L11は、幅方向サイプ161から幅方向サイプ162までのタイヤ周方向に沿った距離L12よりも長い。
【0066】
タイヤ周方向において隣接するブロック間には、タイヤ幅方向に延びるブロック間細溝130が形成される。具体的には、タイヤ周方向において隣接するブロック100とブロック150との間には、ブロック間細溝130が形成される。
【0067】
ブロック間細溝130の溝幅は、幅方向サイプの溝幅よりも広くてよいが、隣接するブロック100とブロック150との接地時に、ブロック100とブロック150とが接触する程度の溝幅とすることが好ましい。また、ブロック間細溝130もタイヤ幅方向に延びるため、幅方向溝として解釈されてよい。
【0068】
ブロック間細溝130は、タイヤ幅方向に対して傾斜している。本実施形態では、複数のブロック間細溝130のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、概ね同一であるが、タイヤ周方向において、当該傾斜角度は、多少異なっていてもよい。
【0069】
また、ブロック間細溝130の一端には、ブロック間細溝130の溝幅よりも広い切欠き溝140が連通する。
【0070】
切欠き溝140は、ブロック間細溝130の溝幅よりも広くてよいが、周方向溝31の溝幅よりは狭いことが好ましい。また、切欠き溝140のタイヤ幅方向に沿った長さは、ブロック間細溝130よりも短いことが好ましい。
【0071】
(2.2)ブロック200及びブロック300
図4は、ブロック200を含むトレッド20の一部平面図である。図5は、ブロック300を含むトレッド20の一部平面図である。上述したように、ブロック200とブロック300とは、線対称の形状を有している。
【0072】
図4に示すように、タイヤ周方向において隣接するブロック200間には、傾斜幅方向溝230が形成される。傾斜幅方向溝230は、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる。傾斜幅方向溝230は、単に、幅方向溝と呼ばれてもよい。
【0073】
ブロック200には、幅方向サイプ211及び幅方向サイプ212が形成される。本実施形態において、幅方向サイプ211及び幅方向サイプ212は、第1幅方向サイプ及び第2幅方向サイプをそれぞれ構成する。
【0074】
ブロック200でも、ブロック200のタイヤ周方向端部から幅方向サイプ211までのタイヤ周方向に沿った距離L21は、幅方向サイプ211から幅方向サイプ212までのタイヤ周方向に沿った距離L22よりも長い。
【0075】
ブロック200には、幅方向サイプ213~215、及び幅方向細溝216がさらに形成される。幅方向細溝216は、幅方向サイプ212よりもタイヤ周方向における中央側に形成されてよい。
【0076】
幅方向細溝216は、タイヤ幅方向に延びる。ここで、タイヤ幅方向に延びるとは、タイヤ幅方向と成す角度が概ね45度以下であればよい。
【0077】
幅方向細溝216の溝幅は、幅方向サイプ211及び幅方向サイプ212の溝幅よりも広く、傾斜幅方向溝230の溝幅よりも狭い。幅方向細溝216の一端は、ブロック200において終端する。
【0078】
また、ブロック200のタイヤ周方向における一方の壁面部分220は、トレッド面視において、タイヤ周方向における凹凸を有する。つまり、壁面部分220は、タイヤ幅方向に延びつつ、階段状となっている。
【0079】
図5に示すように、タイヤ周方向において隣接するブロック300間には、傾斜幅方向溝330が形成される。以下、ブロック200と同様の部分については、適宜説明を省略する。
【0080】
ブロック300には、幅方向サイプ311及び幅方向サイプ312が形成される。本実施形態において、幅方向サイプ311及び幅方向サイプ312は、第1幅方向サイプ及び第2幅方向サイプをそれぞれ構成する。
【0081】
ブロック300でも、ブロック300のタイヤ周方向端部から幅方向サイプ311までのタイヤ周方向に沿った距離L31は、幅方向サイプ311から幅方向サイプ312までのタイヤ周方向に沿った距離L32よりも長い。
【0082】
ブロック300には、幅方向サイプ313~315、及び幅方向細溝316がさらに形成される。幅方向細溝316は、幅方向サイプ312よりもタイヤ周方向における中央側に形成されてよい。
【0083】
また、ブロック300のタイヤ周方向における一方の壁面部分320は、トレッド面視において、タイヤ周方向における凹凸を有する。
【0084】
(3)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。図6(a)及び(b)は、本実施形態に係るブロック100の作用及び効果の説明図である。具体的には、図6(a)は、従来のブロック100Pの氷上ブレーキング時の形状を模式的に示す図である。図6(b)は、ブロック100の氷上ブレーキング時の形状を模式的に示す図である。
【0085】
上述したように、ブロック100のタイヤ周方向端部から幅方向サイプ111までのタイヤ周方向に沿った距離L11は、幅方向サイプ111から幅方向サイプ112までのタイヤ周方向に沿った距離L12よりも長い。
【0086】
このため、氷上ブレーキング時において、強い減速加速度(G)が生じた場合でも、ブロック100のタイヤ周方向端部のブロック剛性が高いため、ブロック100の踏面が路面RDから浮くような変形を起こし難い。
【0087】
一方、ブロック100Pの場合、タイヤ周方向端部のブロック剛性がどうしても低くなるため、ブロック100Pの踏面が路面RDから浮きやすく、ブロック100Pのタイヤ周方向端部の接地性が低下する。このため、タイヤ周方向端部による十分な引っ掻き効果(エッヂ効果)や除水性能を発揮することが難しい。
アンチロックブレーキシステム(ABS)なしの場合、ブレーキ開始直後は、減速Gが瞬間的に高くなるが、その後、タイヤがロックした状態となり、停止直前の速度になるまで減速Gは低いままである。
【0088】
一方、ABSありの場合、ブレーキ開始直後から停止まで高い減速Gが発生する。このため、タイヤのブロックに対しても断続的に大きな力が作用する。
【0089】
ブロック100の場合、このようにABSが作動する場合でも、ブロック100の変形、特に、タイヤ周方向端部における変形が抑制されるため、十分な路面RDとの接地面積を確保でき、接地性を損なわない。これにより、十分なエッヂ効果や除水性能を発揮できる。
【0090】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、ブロック自体の形状によって雪上性能、特に、ABSとの親和性を考慮した制動性能をさらに高め得る。
【0091】
本実施形態では、空気入りタイヤ10の接地幅TWと、空気入りタイヤ10の最大幅SWとの比TW/SWは、0.75以上、0.95以下である。TW/SWが0.75以上であるため、十分なトレッド20の接地面積を確保でき、雪上性能の向上に貢献する。
【0092】
また、TW/SWが0.95以下であるため、トレッド20及びタイヤサイド部30の発熱を抑制でき、耐久性にも影響を与えない。さらに、ブロックを連結する底上げ部なども設けられないため、単なるゴムボリュームの増加による転がり抵抗の上昇も回避し得る。
【0093】
本実施形態では、ブロック100及びブロック150は、トレッド面視において、タイヤ幅方向に沿った辺の長さが、タイヤ周方向に沿った辺の長さよりも長い三角形状でもよい。また、ブロック100及びブロック150の頂点部分100a及び頂点部分150aは、タイヤ周方向において、周方向溝31側と、周方向溝32側とに交互に位置してよい。このため、ブロック100とブロック150とが、タイヤ周方向において繰り返されるブロック列の剛性を効果的に高め得る。これにより、雪上性能をさらに向上し得る。
【0094】
本実施形態では、タイヤ周方向において隣接するブロック100とブロック150との間には、ブロック間細溝130が形成されてよい。隣接するブロック100とブロック150との接地時には、隣接するブロック100とブロック150とが接触して支え合うことができ、隣接するブロック100とブロック150のブロック剛性をさらに高め得る。これにより、雪上性能をさらに向上し得る。
【0095】
また、ブロック間細溝130の一端には、ブロック間細溝130の溝幅よりも広い切欠き溝140が連通する。このため、切欠き溝140によるエッジ効果及び雪柱せん断力を高め得る。これにより、雪上性能、特に、積雪路面での性能を向上し得る。
【0096】
本実施形態では、ブロック200には、タイヤ幅方向に延び、幅方向サイプ211及び幅方向サイプ212の溝幅よりも広く、傾斜幅方向溝230の溝幅よりも狭い幅方向細溝216が形成されてよい。幅方向細溝216は、幅方向サイプ212よりもタイヤ周方向における中央側に形成され、幅方向細溝216の一端は、ブロック200内において終端する。また、ブロック300にも同形状の幅方向細溝316が形成されてよい。
【0097】
このため、幅方向細溝216及び幅方向細溝316によるエッジ効果及び雪柱せん断力を高め得る。これにより、雪上性能、特に、積雪路面での性能を向上し得る。
【0098】
本実施形態では、ブロック200(ブロック300)の壁面部分220(壁面部分320)は、トレッド面視において、タイヤ周方向における凹凸を有する。このため、壁面部分220によるエッジ効果を高め得る。これにより、雪上性能、特に、積雪路面での性能を向上し得る。
【0099】
(4)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0100】
例えば、上述した実施形態では、全てのブロックにおいて、タイヤ周方向端部から第1幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離が、第1幅方向サイプから第2幅方向サイプまでのタイヤ周方向に沿った距離よりも長くなっていたが、必ずしも全てのブロックがこのような形状を有していなくても構わない。例えば、特に氷上ブレーキ性能に影響するブロック100及びブロック150のみが、このような形状を有していてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10の回転方向Rが指定されていたが、上述したように、回転方向Rは必ずしも指定されなくても構わない。回転方向Rが指定されない場合、逆側のタイヤ周方向端部においても、上述したような幅方向サイプの位置関係を有することが好ましい。
【0102】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0103】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
30 タイヤサイド部
31, 32, 35, 36 周方向溝
40 カーカス
50 ベルト層
60 ビード部
70 ベルト補強層
100, 100P ブロック
100a 頂点部分
111, 112, 113 幅方向サイプ
130 ブロック間細溝
140 切欠き溝
150 ブロック
150a 頂点部分
161, 162, 163 幅方向サイプ
200 ブロック
211, 212, 213 幅方向サイプ
216 幅方向細溝
220 壁面部分
230 傾斜幅方向溝
300 ブロック
311, 312, 313 幅方向サイプ
316 幅方向細溝
320 壁面部分
330 傾斜幅方向溝
CL タイヤ赤道線
R 回転方向
RD 路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6