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特許7346305ピリジルアミノ酢酸化合物を含有する医薬製剤
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  • 特許-ピリジルアミノ酢酸化合物を含有する医薬製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】ピリジルアミノ酢酸化合物を含有する医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20230911BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230911BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P27/06
A61K31/5575
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019562181
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048228
(87)【国際公開番号】W WO2019131901
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】62/611,017
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】川田 久
(72)【発明者】
【氏名】川端 敬子
(72)【発明者】
【氏名】シャムズ ナヴィード
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006985(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/105144(WO,A1)
【文献】小谷敬子,新しい作用機序の眼圧下降薬の開発-選択的EP2受容体作動薬 オミデネパグ イソプロピル点眼液,第37回日本眼薬理学会プログラム・講演抄録集,2017年09月,p.26
【文献】KALOUCHE, G. et al.,Activation of Prostaglandin FP and EP2 Receptors Differently Modulates Myofibroblast Transition in a,Investigative Ophthalmology & Visual Science,2016年04月,Vol. 57, Issue 4,pp. 1816-1825,https://doi.org/10.1167/iovs.15-17693
【文献】相原 一 ほか,ラタノプロスト低反応性サルにおけるタフルプロストの眼圧下降効果,日本眼科学会雑誌,2009年,Vol.113, 臨時増刊号,p.195
【文献】KOCLUK, Y. et al.,Efficacy of Monotherapy with Either Bimatoprost or Travoprost in Patients with Primary Open-Angle Gl,Turk. J. Ophthalmol.,2011年,Vol.41,p.295-298,https://doi.org/10.4274/tjo.41.36844
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する、原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、若しくは正常眼圧緑内障治療または予防するための医薬製剤であって、ラタノプロストが効果不十分な患者に投与される医薬製剤であり、前記患者が(1)前記ラタノプロストによる治療によって治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率が18%以下となる患者、又は、(2)前記ラタノプロストによる治療によって治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降幅が4.5mmHg以下となる患者である、医薬製剤。
【請求項2】
前記緑内障治療または予防が、前記ラタノプロストによって緑内障治療または予防を行った後、さらに前記有効成分によって眼圧を下げて緑内障治療または予防するものである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.001~0.003%(w/v)である、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.002%(w/v)である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が、オミデネパグ イソプロピルである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
点眼剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する緑内障治療または予防するための医薬製剤であって、前記緑内障が、オラタノプロストによる緑内障治療に抵抗性の緑内障であり、記緑内障治療に抵抗性の緑内障が、(1)前記ラタノプロストによる緑内障治療によって治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率が18%以下となる原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障又は正常眼圧緑内障、又は、(2)前記ラタノプロストによる緑内障治療によって治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降幅が4.5mmHg以下となる原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障又は正常眼圧緑内障であ、医薬製剤。
【請求項8】
前記緑内障治療または予防が、前記ラタノプロストによって緑内障治療または予防を行った後、さらに前記有効成分によって眼圧を下げて緑内障治療または予防するものである、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.001~0.003%(w/v)である、請求項7又は8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.002%(w/v)である、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が、オミデネパグ イソプロピルである、請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
点眼剤である、請求項7~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤であって、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に投与される医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、種々の病因により眼圧が上昇し、眼球の内部組織(網膜、視神経など)が障害を受けることで失明に至る危険性のある難治性の眼疾患である。緑内障の治療方法としては、眼圧下降療法が一般的であり、その代表的なものとして薬物療法、レーザー治療法、手術療法などがある。
【0003】
薬物療法には、交感神経作動薬(ジピベフリンなどの非選択性刺激薬、ブリモニジンなどのα2受容体作動薬)、交感神経遮断薬(チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロール(Metipranolol)などのβ受容体遮断薬、塩酸ブナゾシンなどのα1受容体遮断薬)、副交感神経作動薬(ピロカルピンなど)、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミドなど)、プロスタグランジン類(イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロストなど)、Rhoキナーゼ阻害剤(リパスジル)などの薬物が使用されている。
【0004】
これら薬物の中で、ラタノプロストを含有する点眼剤は、1996年に国際誕生して以来、その強力な眼圧下降作用と良好な認容性から世界各国で広く使用されている。しかしながら、ラタノプロストには効果が不十分な患者が一定数存在することが知られている。
【0005】
一方、オミデネパグは、特許文献1及び特許文献2に膨大な数のピリジルアミノ酢酸化合物の一つとして記載されている化合物である。それらピリジルアミノ酢酸化合物はEP2アゴニスト作用を有することから(特許文献2)、眼圧下降作用が期待され、緑内障治療剤となりうることが記載されている(特許文献1)。
さらに、特許文献3及び4には、オミデネパグにチモロール等の他の緑内障治療薬を組み合わせることで眼圧下降作用が増強されることが記載され、特許文献5には、オミデネパグが特定の含有量のときに特に優れた眼圧下降作用を示すことが記載され、特許文献6には、オミデネパグが高度に上昇した眼圧を伴う疾患の治療剤として有用であることが記載されている。
また、特許文献7~9には、オミデネパグを有効成分として含有する特定の製剤が記載されている。
【0006】
なお、特許文献1~9並びに本明細書に記載した文献の全ての記載内容は、本明細書の開示として援用する。
【0007】
しかしながら、いずれの文献にも、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対してどのような効果を示すかについては全く記載されておらず、また、そのような効果に関する他の文献や研究報告もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2012/0190852号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0054172号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018396号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018350号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0196541号明細書
【文献】国際公開第2017/006985号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2016/0317512号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0317664号明細書
【文献】国際公開第2017/002941号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対して効果を示す緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤を見出すことは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者等は鋭意研究した結果、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対して優れた眼圧下降作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0011】
〔1〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤であって、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に投与される医薬製剤。
〔2〕
前記緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防が、前記他の緑内障または高眼圧症治療薬によって緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防を行った後、さらに前記有効成分によって眼圧を下げて緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するものである、前記〔1〕に記載の医薬製剤。
〔3〕
前記他の緑内障または高眼圧症治療薬の有効成分がプロスタグランジンF誘導体である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の医薬製剤。
〔4〕
前記他の緑内障または高眼圧症治療薬有効成分がラタノプロストである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の医薬製剤。
〔5〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.001~0.003%(w/v)である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の医薬製剤。
〔6〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.002%(w/v)である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の医薬製剤。
〔7〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が、オミデネパグ イソプロピルである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の医薬製剤。
〔8〕
点眼剤である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の医薬製剤。
〔9〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤であって、前記緑内障が、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の他の有効成分による緑内障治療に抵抗性の緑内障であり、前記高眼圧症が、前記他の有効成分による高眼圧症治療に抵抗性の高眼圧症である、医薬製剤。
〔10〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する医薬製剤を患者に投与することを含む、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防する方法であって、前記患者が、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者である、方法。
〔11〕
前記緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防が、前記他の緑内障または高眼圧症治療薬によって緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防を行った後、さらに前記有効成分によって眼圧を下げて緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するものである、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕
前記他の緑内障または高眼圧症治療薬の有効成分がプロスタグランジンF誘導体である、前記〔10〕又は〔11〕に記載の方法。
〔13〕
前記他の緑内障または高眼圧症治療薬有効成分がラタノプロストである、前記〔10〕~〔12〕のいずれか一項に記載の方法。
〔14〕
前記医薬製剤中におけるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.001~0.003%(w/v)である、前記〔10〕~〔13〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕
前記医薬製剤中におけるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量が、0.002%(w/v)である、前記〔10〕~〔14〕のいずれか一項に記載の方法。
〔16〕
前記オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩が、オミデネパグ イソプロピルである、前記〔10〕~〔15〕のいずれか一項に記載の方法。
〔17〕
前記投与が点眼投与である、前記〔10〕~〔16〕のいずれか一項に記載の方法。
〔18〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する医薬製剤を患者に投与することを含む、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための方法であって、前記緑内障が、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の他の有効成分による緑内障治療に抵抗性の緑内障であり、前記高眼圧症が、前記他の有効成分による高眼圧症治療に抵抗性の高眼圧症である、方法。
〔19〕
オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する医薬製剤を患者に投与することを含む、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防する方法であって、以下の工程
(1)オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の他の緑内障または高眼圧症治療薬を患者に投与する第一の処置工程、
(2)上記第一の処置工程では治療が不十分若しくは予防効果が不十分であるか否か判断する工程、
(3)上記第一の処置工程では治療が不十分若しくは予防効果が不十分である場合、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する医薬製剤を患者にさらに投与する第二の処置工程、
を含む方法。
〔20〕
緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための薬剤の製造における、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の医薬製剤の使用。
【0012】
なお、前記〔1〕から〔20〕の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【0013】
後述の実施例で詳細に説明するが、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩は、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対して優れた眼圧下降作用を示すことがわかった。従って、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩は、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対しても緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】臨床試験における眼圧変化量の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[医薬製剤]
本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグは、下記式(1):

で表される化合物(CAS登録番号;1187451-41-7)であり、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸ともいう。
【0017】
本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグのエステルは、オミデネパグのカルボキシル基が炭素数1~6の1価アルコールと脱水縮合することで形成されるエステルが好ましく、より好ましくは、オミデネパグのカルボキシル基が炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数3~4の1価アルコールと脱水縮合することで形成されるエステルが好適である。具体的なエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、イソブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステル、n-ペンチルエステル又はn-ヘキシルエステルが挙げられ、好ましくは、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステルが挙げられ、より好ましくは、イソプロピルエステルが挙げられる。オミデネパグのイソプロピルエステルは、具体的には、下記式(2):


で表される化合物(CAS登録番号;1187451-19-9)であり、オミデネパグ イソプロピル又は(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルともいう。
【0018】
本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグの塩又はオミデネパグのエステルの塩は、薬理上許容される塩であれば特に制限されない。具体的には、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩等の金属塩;アンモニウム塩等の無機塩;又はトリエチルアミン塩若しくはグアニジン塩等の有機アミン塩等が挙げられ、好ましくは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0019】
本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩は、米国特許出願公開第2012/0190852号明細書(特許文献1)や米国特許出願公開第2011/0054172号明細書(特許文献2)に記載の方法、当該技術分野における通常の方法等に従って製造することができる。当該製造方法において、本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量、添加剤の種類や量、投与形態等の好ましい範囲は、これらの文献に記載したとおりの態様を採用できる。なお、本願で使用する「オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩」の語は、(1)オミデネパグ、(2)オミデネパグのエステル、(3)オミデネパグの塩、及び(4)オミデネパグのエステルの塩、を含む意味である。
【0020】
本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量は、特に制限されず、また投与形態にもよるが、その下限は、例えば0.000001%(w/v)であり、好ましくは0.00001%(w/v)であり、より好ましくは0.00003%(w/v)、0.0001%(w/v)、0.001(w/v)、0.01%(w/v)、0.1%(w/v)又は1%(w/v)である。上記含有量の上限は、例えば30%(w/v)、25%(w/v)、20%(w/v)、15%(w/v)又は12%(w/v)であってもよく、また、0.03%(w/v)、0.01%(w/v)、0.005%(w/v)、0.003%(w/v)又は0.0027%(w/v)であってもよい。より詳細に、上記含有量は、上記下限及び上限のいずれかを組み合わせた範囲であっても良いが、例えば、0.000001~30%(w/v)であり、好ましくは0.00001~25%(w/v)であり、より好ましくは0.00003~20%(w/v)であり、さらに好ましくは0.0001~15%(w/v)であり、特に好ましくは0.0013~12%(w/v)であり、殊更に好ましくは0.0015~10%(w/v)である。ここで、「%(w/v)」は、医薬製剤100mL中に含まれる有効成分(オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩)や添加剤(界面活性剤等)の質量(g)を意味する。例えば、オミデネパグ0.01%(w/v)とは、医薬製剤100mL中に含まれるオミデネパグの含有量が0.01gであることを意味する。
【0021】
本発明の医薬製剤が点眼剤の場合、本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量の下限は0.0003%(w/v)が好ましく、0.001%(w/v)がより好ましく、0.0013%(w/v)がさらに好ましく、0.0015%(w/v)が特に好ましい。また、上記含有量の上限は、0.03%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.005%(w/v)がさらに好ましく、0.003%(w/v)が特に好ましく、0.0027%(w/v)が殊更に好ましい。より詳細に、上記含有量は、上記下限及び上限のいずれかを組み合わせた範囲であっても良いが、0.0003~0.03%(w/v)が好ましく、0.001~0.01%(w/v)がより好ましく、0.001~0.005%(w/v)がさらに好ましく、0.001~0.003%(w/v)が特に好ましく、0.0013~0.003%(w/v)が殊更に好ましく、0.0015~0.0027%(w/v)が格別好ましい。より具体的には、0.0010%(w/v)、0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)、0.0030%(w/v)、0.005%(w/v)、0.01%(w/v)、0.03%(w/v)及びこれらの量を上限又は下限とする範囲が好ましく、0.002%(w/v)が最も好ましい。なお、上記含有量は点眼剤の好ましい例であるが、点眼剤に限られたものではない。
【0022】
本発明の医薬製剤が眼科用注射剤の場合、本発明の医薬製剤に含有されるオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩の含有量の下限は0.000001%(w/v)が好ましく、0.000003(w/v)がより好ましく、0.000005%(w/v)がさらに好ましく、0.00001%(w/v)が特に好ましく、0.00003%(w/v)が殊更に好ましい。また、上記含有量の上限は、30%(w/v)が好ましく、10%(w/v)がより好ましく、1%(w/v)がさらに好ましく、0.1%(w/v)が特に好ましく、0.01%(w/v)が殊更に好ましい。より詳細に、上記含有量は、上記下限及び上限のいずれかを組み合わせた範囲であっても良いが、0.000001~30%(w/v)が好ましく、0.000003~10%(w/v)がより好ましく、0.000005~1%(w/v)がさらに好ましく、0.00001~0.1%(w/v)が特に好ましく、0.00003~0.01%(w/v)が殊更に好ましい。なお、上記含有量は眼科用注射剤の好ましい例であるが、眼科用注射剤に限られたものではない。
【0023】
尚、本発明の医薬製剤がオミデネパグ又はそのエステルの塩を含有する場合、塩が遊離した時のオミデネパグ又はそのエステルの含有量が前記の範囲となることを意味する。
【0024】
[添加剤]
本発明の医薬製剤には、必要に応じて添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、基剤、pH調整剤等を加えることができる。
【0025】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な界面活性剤を適宜配合することができる。
界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
より具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5~100が好ましく、20~50がより好ましく、30~40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられ、ポリオキシル35ヒマシ油が最も好ましい。
【0026】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10~100が好ましく、20~80がより好ましく、40~70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が最も好ましい。
【0027】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65等が挙げられ、ポリソルベート80が最も好ましい。
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0028】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0029】
本発明の医薬製剤に界面活性剤を配合する場合、その含有量は、界面活性剤の種類等により適宜調整することができる。具体的に、下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.8%(w/v)が最も好ましい。上限は10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v))が特に好ましく、2%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、含有量は、上記下限及び上限のいずれかを組み合わせた範囲であっても良いが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.03~4%(w/v)がさらに好ましく、0.05~3%(w/v)が特に好ましく、0.1~2%(w/v)が最も好ましい。
【0030】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができる。
緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。より具体的には、リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸又はその塩としては、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。中でも、ホウ酸若しくはその塩、又は、クエン酸若しくはその塩が好ましい。
【0031】
本発明の医薬製剤に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.05~3%(w/v)がさらに好ましく、0.1~2%(w/v)が最も好ましい。
【0032】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。
等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。
イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本発明の医薬製剤に等張化剤を配合する場合、その含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.01~10%(w/v)が好ましく、0.02~7%(w/v)がより好ましく、0.1~5%(w/v)がさらに好ましく、0.5~4%(w/v)が特に好ましく、0.8~3%(w/v)が最も好ましい。
【0033】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。
安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、エデト酸二ナトリウムが特に好ましい。エデト酸ナトリウムは水和物であってもよい。本発明の医薬製剤に安定化剤を配合する場合、その含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~1%(w/v)が好ましく、0.005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.01~0.1%(w/v)が最も好ましい。
【0034】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。
防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。本発明の医薬製剤に防腐剤を配合する場合、その含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.005~0.010%(w/v)が最も好ましい。また、防腐剤を含有しない場合も好ましい。
【0035】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。
抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の医薬製剤に抗酸化剤を配合する場合、その含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.05%(w/v)が最も好ましい。
【0036】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な粘稠化剤を適宜配合することができる。
粘稠化剤の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
本発明の医薬製剤に粘稠化剤を配合する場合、その含有量は、粘稠化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.1~0.5%(w/v)が最も好ましい。
【0037】
本発明の医薬製剤には、医薬品の添加物として使用可能な基剤を適宜配合することができる。
基剤の例としては、水、生理食塩水、ジメチルスルホキシド、PEG400等のポリエチレングルコール、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、安息香酸ベンジル、白色ワセリン、流動パラフィン等が挙げられ、水、生理食塩水、ジメチルスルホキシド、PEG400が好ましい。
【0038】
本発明の医薬製剤のpHは、4.0~8.0が好ましく、4.5~7.5がより好ましく、5.0~7.0が特に好ましく、5.5~6.1が最も好ましい。また、pHが6.0~8.0であってもよい。本発明の医薬製剤は、当該pHを調整するためのpH調整剤として、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を添加してもよい。
【0039】
[用途]
本発明における医薬製剤は、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対しても優れた眼圧下降作用を示すことから、緑内障治療若しくは予防剤、及び/又は、高眼圧症治療若しくは予防剤、及び/又は眼圧下降剤として有用である。本発明における緑内障としては、原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障、プラトー虹彩緑内障、混合型緑内障、発達緑内障、ステロイド緑内障、落屑緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障、plateau iris syndrome等が、好ましくは原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、原発閉塞隅角緑内障が挙げられ、特に本発明の医薬製剤は原発開放隅角緑内障に有効である。
【0040】
本発明の医薬製剤は、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対して投与されることが好ましい。他の緑内障または高眼圧症治療薬とは、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の有効成分(他の有効成分)を含有する緑内障または高眼圧症治療薬の中のいずれかを指し、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の有効成分とは、具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0041】
非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、ファスジルが挙げられ、中でも、プロスタグランジン類が好ましく、プロスタグランジンF誘導体がより好ましく、ラタノプロストがさらに好ましく、ラタノプロスト点眼液が特に好ましく、0.005%ラタノプロスト点眼液が最も好ましい。
【0042】
他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者とは、他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療で十分な効果が得られない患者であり、具体的には、他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療によって、治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率(眼圧下降率:[治療前眼圧(mmHg)-治療後眼圧(mmHg)]/[治療前眼圧(mmHg)]×100)が18%以下、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは15%以下、もっと好ましくは14%以下、殊更好ましくは13%以下、特に好ましくは12%以下、最も好ましくは10%以下である患者であることが好ましい。また、他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療によって、治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降幅(=眼圧変化量:[治療前眼圧(mmHg)-治療後眼圧(mmHg)])が4.5mmHg以下、好ましくは4.2mmHg以下、より好ましくは4mmHg以下、さらに好ましくは3.7mmHg以下、もっと好ましくは3.5mmHg以下、殊更好ましくは3.2mmHg以下、特に好ましくは3mmHg以下、最も好ましくは2.5mmHg以下である患者であることも好ましい。この他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療は、通常、1日1~3回、1回につき1~3滴点眼投与され、1週間以上、好ましくは2週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは2ケ月以上、特に好ましくは6ケ月以上、最も好ましくは1年以上の期間行われることが好ましい。また、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者には、副作用などのために、他の緑内障または高眼圧症治療薬を使用できない患者や治療できない患者も含まれる。なお、本発明の医薬製剤が対象とする患者は、ウシやブタ等の家畜、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、及びヒトを含む哺乳類であり、好ましくはヒトである。
【0043】
一方、本発明の医薬製剤によって、他の緑内障または高眼圧症治療薬で治療している患者の眼圧を、上述のような効果不十分と思われる程度の眼圧下降率及び眼圧変化量であっても、さらに下降させることができる。本発明の医薬製剤による治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率(眼圧下降率)は、少なくとも5%、例えば6%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは9%以上、もっと好ましくは10%以上、殊更好ましくは11%以上、特に好ましくは12%以上、最も好ましくは13%以上となることが好適である。本発明の医薬製剤による当該眼圧下降率の上限値としては、例えば40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは28%以下、もっと好ましくは26%以下、殊更好ましくは24%以下、特に好ましくは22%以下、最も好ましくは20%以下を挙げることができ、上記下限値と上限値を適宜組みあわせた範囲を適宜選択できる。好ましい本発明の医薬製剤による当該眼圧下降率は、例えば、5~40%、好ましくは7~35%、より好ましくは9~30%である。
また、本発明の医薬製剤によって、本発明の医薬製剤による治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降幅(眼圧変化量)は、少なくとも1.0mmHg以上、好ましくは1.2mmHg以上、より好ましくは1.4mmHg以上、さらに好ましくは1.6mmHg以上、もっと好ましくは1.8mmHg以上、殊更好ましくは2.0mmHg以上、特に好ましくは2.5mmHg以上、最も好ましくは2.9mmHg以上であることが好適である。本発明の医薬製剤による当該眼圧変化量の上限値としては、例えば10.0mmHg以下、好ましくは8.0mmHg以下、より好ましくは6.0mmHg以下、さらに好ましくは5.5mmHg以下、もっと好ましくは5.0mmHg以下、殊更好ましくは4.5mmHg以下、特に好ましくは4.0mmHg以下、最も好ましくは3.2mmHg以下を挙げることができ、上記下限値と上限値を適宜組みあわせた範囲を適宜選択できる。好ましい本発明の医薬製剤による当該眼圧変化量は、例えば、1.0~10.0mmHg、好ましくは1.4~8.0mmHg、より好ましくは1.8~6.0mmHgである。
なお、ここで定義した「本発明の医薬製剤による治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率(眼圧下降率)」及び「下降幅(眼圧変化量)」は、後述する[投与方法]の(3)に示すような第二の処置工程での眼圧の下降率及び下降幅を意味し、[投与方法]の(1)に示す第一の処置工程のような、前記他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療による眼圧降下率及び眼圧変化量を含まない。従って、オミデネパグ等を有効成分とする本発明の医薬製剤は、ラタノプロスト等を有効成分とする他の緑内障または高眼圧症治療薬の治療効果に上乗せして眼圧を下降できる。
【0044】
本発明の医薬製剤は、より強力に眼圧を下降させるために、1又は複数、好ましくは1~3の、より好ましくは、1又は2の追加の緑内障または高眼圧症治療薬と併用(例えばキットとして併用)されてもよく、追加の有効成分を含有してもよい。追加の緑内障または高眼圧症治療薬としては、特に制限はなく、具体的には、市販又は開発中の緑内障または高眼圧症治療薬等が好ましく、市販の緑内障または高眼圧症治療薬等がより好ましく、本化合物と作用機序の異なる市販の緑内障または高眼圧症治療薬等が特に好ましい。より具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などを有効成分として含有する緑内障または高眼圧症治療薬が挙げられる。追加の有効成分は、具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などが挙げられる。なお、本発明の医薬製剤が当該追加の緑内障または高眼圧症治療薬と併用される場合、又は、当該追加の有効成分を含有する場合、上述した「本発明の医薬製剤による治療前の眼圧に対する治療後の眼圧の下降率(眼圧下降率)」及び「下降幅(眼圧変化量)」は、当該追加の緑内障若しくは高眼圧症治療薬、又は、当該追加の有効成分の効果を除外した部分を意味する。
【0045】
非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、ファスジルが挙げられる。
【0046】
[投与形態]
本発明の医薬製剤は、経口でも、非経口でも投与することができ、例えば、点眼投与、硝子体内投与、結膜嚢内投与、前房内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与又は涙点プラグ投与であってもよい。本発明の医薬製剤の剤形としては、点眼剤、眼軟膏、注射剤、涙点プラグ、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、特に点眼剤、眼科用注射剤、涙点プラグが好ましい。眼科用注射剤としては、硝子体内投与、前房内投与、結膜嚢内投与、前房内投与、結膜下投与又はテノン嚢下投与用の注射剤が挙げられる。本発明の医薬製剤の剤形は、薬品の技術分野における通常の方法に従って製造することができる。錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、上記の添加剤のほか、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤等を必要に応じて使用して、製剤化することができる。
【0047】
本発明の医薬製剤は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の容器を用いることができ、点眼剤として使用する場合は、点眼のし易さ(容器の硬さ)や本化合物の安定性等の観点で、ポリエチレン製の容器に入れて保存することが好ましい。
【0048】
[用法・用量]
本発明の医薬製剤の用法・用量は、所望の薬効を奏するのに十分な用法・用量であれば特に制限はなく、疾患の症状、患者の年齢や体重、医薬製剤の剤形等に応じて適宜選択できる。
具体的には、点眼剤の場合、1回量1~5滴、好ましくは1~3滴、より好ましくは1~2滴、特に好ましくは1滴を、1日1~4回、好ましくは1日1~3回、より好ましくは1日1~2回、特に好ましくは1日1回を、毎日~1週間毎に点眼投与することができる。1日1回1滴を毎日、点眼投与することが好ましい。ここで、1滴は、通常、約0.01~約0.1mLであり、好ましくは、約0.015~約0.07mLであり、より好ましくは、約0.02~約0.05mLであり、特に好ましくは約0.03mLである。
【0049】
眼科用注射剤の場合は、1回につき、1~1000μLが好ましく、5~700μLがより好ましく、10~500μLがさらに好ましく、20~300μLが最も好ましい。薬物の投与量では、0.0001~30000μg/eyeが好ましく、0.0005~10000μg/eyeがより好ましく、0.001~5000μg/eyeが最も好ましい。本発明の医薬製剤を眼科用注射剤で連続して投与する場合、所望の薬効を奏するのに十分であれば投与間隔に特に制限はないが、1週間に1回~3年に1回の間隔で投与されるのが好ましく、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、1年に1回、2年に1回又は3年に1回の間隔で投与されるのがより好ましく、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回又は6カ月に1回の間隔で投与されるのが最も好ましい。また、投与間隔は適宜変更することができる。
【0050】
経口剤の場合は、1日当り0.01~5000mg、好ましくは0.1~1000mgを1~数回(2~5回、好ましくは2~3回)に分けて投与することができる。
【0051】
[投与方法]
本発明の医薬製剤は、上記他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療又は予防で十分な効果が得られない又は得られないと見込まれる場合に、続いて投与される。すなわち、本発明の医薬製剤の投与方法は、
(1)オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の上記他の有効成分により緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防する第一の処置工程、
(2)上記第一の処置工程では治療が不十分若しくは予防効果が不十分であるか否か判断する任意工程、
(3)前記第一の処置工程に続き、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する医薬製剤を投与して緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防する第二の処置工程、
を含む。
上記のような投与方法に基づいて本発明の医薬製剤を患者に投与することにより、上記他の有効成分による治療または予防による効果にかかわらず、若しくは当該効果が不十分であった場合に、本発明の医薬製剤により追加的に眼圧降下作用等が得られることとなり、さらに緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防することができる。
【0052】
上記投与方法をより具体的に説明すると、まず第1に本発明のオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩以外の上記他の緑内障または高眼圧症治療薬(他の有効成分)を投与し、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防を行う。その後、当該他の有効成分では治療効果が不十分又は予防効果が不十分であると見込まれる場合、「当該他の有効成分による緑内障治療に抵抗性の緑内障」または「当該他の有効成分による高眼圧症治療に抵抗性の高眼圧症」であると判断し、引き続き、本発明のオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩を投与する。ここで「治療効果が不十分である」及び「予防効果が不十分であると見込まれる」場合とは、上述した「他の緑内障または高眼圧症治療薬による治療で十分な効果が得られない患者」の眼圧降下率及び眼圧降下幅程度の場合の他、眼圧の絶対値が依然として緑内障や高眼圧症と判断される程度に高い状態、例えば、22mmHg以上、好ましくは21.5mmHg以上、より好ましくは21mmHg以上、さらに好ましくは20.5mmHg以上、特に好ましくは20mmHg以上である場合も含む。このような上記他の有効成分の投与によっても引き続き緑内障や高眼圧症が治癒等しない若しくは再発の潜在的危険性が残る場合、第2次的投与手段として本発明の医薬製剤が使用されることが適当である。このように、本発明の医薬製剤は、これまではラタノプロスト等の上記他の有効成分による緑内障若しくは高眼圧症の治療等が不十分であった場合の他、当該他の有効成分で十分治療または予防が完了していたと思われていた場合も、さらに進んで治療または予防を完了させることができるという予想外の作用効果を奏するものであり、かつ、従来とは異質の課題を解決するものである。
例えば、他の有効成分としてラタノプロストを挙げると、ラタノプロストによって緑内障若しくは高眼圧症の治療及び予防を行った後、さらに眼圧の下降が必要な場合、又は、ラタノプロストでは治療または予防後に眼圧の再上昇(リバウンド)が起こる又は見込まれる場合に、本発明の医薬製剤によって当該眼圧下降の要求又は眼圧の再上昇(リバウンド)防止に対する効果が期待できる。
【0053】
以下に本発明の製剤例及び臨床試験結果に関する実施例を示す。尚、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0054】
[製剤例]
本発明のオミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩は、上記のような医薬製剤の製造に使用することができる。以下に本発明の医薬製剤における代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。
【0055】
[製剤例1]
点眼剤1(100mL中)
オミデネパグ イソプロピル 0.002g
ホウ酸 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリソルベート80 0.5g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0056】
[製剤例2]
点眼剤2(100mL中)
オミデネパグ イソプロピル 0.002g
リン酸二水素ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ビタミンE TPGS 0.8g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0057】
[製剤例3]
点眼剤3(100mL中)
オミデネパグ イソプロピル 0.002g
クエン酸三ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0058】
[製剤例4]
注射剤1(100mL中)
オミデネパグ 0.003g
PEG400 適量
【0059】
[製剤例5]
注射剤2(100mL中)
オミデネパグ 0.0003g
PEG400 適量
【0060】
なお、前記製剤例1~5において、オミデネパグおよび/又は添加剤の種類および/又は配合量を適宜調整することで、所望の医薬製剤を得ることができる。特に、前記製剤例1~5のオミデネパグの配合量を、0.001g、0.0011g、0.0012g、0.0013g、0.0014g、0.0015g、0.0016g、0.0017g、0.0018g、0.0019g、0.0021g、0.0022g、0.0023g、0.0024g、0.0025g、0.0026g、0.0027g、0.0028g、0.0029g、0.003gとすることで、所望の医薬製剤を得ることができる。
【0061】
[臨床試験]
他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対するオミデネパグ イソプロピルの効果を検討した。
【0062】
1.点眼剤の調製
精製水にオミデネパグ イソプロピル、ポリオキシル35ヒマシ油、グリセリン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物を溶解させ、pH調整後、精製水を加えて全量調整し、0.002%(w/v)オミデネパグ イソプロピル点眼剤Aを製造した。
【0063】
2.試験方法
原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象に1~4週間のウォッシュアウト(washout)期間の後、導入期(-8週~ベースライン)としてラタノプロスト点眼液0.005%を8週間にわたって1日1回1滴、両眼点眼した。導入期終了時に点眼開始時からの眼圧の下降率が15%以下であったラタノプロスト点眼液治療抵抗性の原発開放隅角緑内障(ヒト、21人)又は高眼圧症患者(ヒト、5人)が治療期(ベースライン~4週)に移行し、上記0.002%(w/v)オミデネパグ イソプロピル点眼剤Aを4週間にわたって、1日1回1滴(約0.03mL)、毎日両眼点眼した。
【0064】
3.試験結果及び考察
結果を図1に示す。
【0065】
導入期のラタノプロスト点眼液0.005%から治療期の0.002%(w/v)オミデネパグ イソプロピル点眼剤に切り替えた時点(ベースライン)から治療期終了時点(4週)となる点眼後4週の眼圧変化量(平均値±標準誤差)は-2.99±0.43mmHgであり、統計的に有意な眼圧下降(P<0.0001)が認められ、ベースラインの時点の眼圧に対する治療期終了時点(4週)の眼圧の下降率(眼圧下降率)は13.2%であった。このことから、オミデネパグ イソプロピルは、ラタノプロスト治療抵抗性の患者に対して、ラタノプロスト点眼時以上に優れた眼圧を下降させることがわかった。
以上から、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩は、他の緑内障または高眼圧症治療薬が効果不十分な患者に対して優れた眼圧下降作用を示すことがわかった。
図1