(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】マイクロカプセル製造法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/16 20060101AFI20230911BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230911BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20230911BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20230911BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230911BHJP
【FI】
B01J13/16
A61Q13/00 102
A61Q19/00
A61K8/04
A61K8/11
A23L5/00 C
(21)【出願番号】P 2019563438
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067273
(87)【国際公開番号】W WO2019002380
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラウシーヌ ワリ
(72)【発明者】
【氏名】マルレーヌ ジャクモン
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-246329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346753(US,A1)
【文献】米国特許第05962003(US,A)
【文献】国際公開第2016/162381(WO,A1)
【文献】特開2010-082527(JP,A)
【文献】特表2013-530825(JP,A)
【文献】国際公開第2007/096790(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/091877(WO,A1)
【文献】特開平08-030040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00-13/32
B01F 17/00-17/56
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルスラリーを製造する方法であって、
(i)
香油を含む油相に、モノマーを溶解させるステップ;
(ii)前記油相とは混和しない、乳化剤を含む分散相を製造するステップ;
(iii)前記油相を前記分散相に添加して二相分散体を形成するステップ;
(iv)
機械的に撹拌して界面重合を誘発
し、スラリー形態のコア-シェルマイクロカプセルを形成するステップ
を含み、
前記モノマーは、前記界面重合中に反応しやすく、それによって前記スラリー形態のマイクロカプセルが形成され
、かつ油相中のモノマーは、少なくとも1種のポリイソシアネート、ポリ塩化アシル、およびポリエポキシドからなる群より選択され;
前記分散相の含水率が、前記分散相の総重量に対し10重量%以下であり、
前記分散相が
グリセロールであ
り、
前記乳化剤が、アラビアガム、リグノスルホン酸ナトリウム塩、カゼイン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記分散相の含水率が、前記分散相の総重量に対し5重量%以下である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記分散相が水を含まない、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記分散相が、グアニジン塩、トリス-(2-アミノエチル)アミン、N,N,N´,N´-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、グアナゾール、
および/またはエタノールアミ
ンをさらに含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法により得られるコア-シェルマイクロカプセルスラリーであって、前記スラリーがその総重量に対し重量基準で10%以下の水を含む、コア-シェルマイクロカプセルスラリー。
【請求項6】
前記スラリーがその総重量に対し重量基準で5%以下の水を含む、請求項
5記載のコア-シェルマイクロカプセルスラリー。
【請求項7】
前記スラリーがその総重量に対し重量基準で3%以下の水を含む、請求項
5記載のコア-シェルマイクロカプセルスラリー。
【請求項8】
(i
)請求項
5から
7までのいずれか1項記載のマイクロカプセルスラリー;
(ii)香料担体および賦香共成分からなる群より選択される、少なくとも1種の成分;および
(iii)任意選択により香料アジュバント
を含む、賦香組成物。
【請求項9】
液体消費者製品であって、
a)前記消費者製品の総重量に対し2~65重量%の少なくとも1種の界面活性剤;
b)水または水混和性親水性有機溶媒;および
c)請求項
5から
7までのいずれか1項記載のマイクロカプセルスラリーまたは請求項
8記載の賦香組成物
を含む、消費者製品。
【請求項10】
前記液体消費者製品が、ランドリーケア製品、ホームケア製品、ボディケア製品、スキンケア製品、空気ケア製品、または衛生製品の形態である、請求項
9記載の消費者製品。
【請求項11】
粉末消費者製品であって、
a)前記消費者製品の総重量に対し2~65重量%の少なくとも1種の界面活性剤;
b)請求項
8記載の賦香組成物または請求項
5から
7までのいずれか1項記載のマイクロカプセルスラリー
を含む、消費者製品。
【請求項12】
無水消費者製品の形態である、請求項
9から
11までのいずれか1項記載の消費者製品で
ある、消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル製造法に関する。より具体的には、本発明の方法は、マイクロカプセルの製造に水を少量しか必要としないことを特徴とする。この方法により得られるマイクロカプセル、およびそのようなマイクロカプセルを含む消費者製品も、本発明の対象である。
【0002】
発明の背景
香料は、洗剤、柔軟剤、シャワージェル、シャンプーなどの消費者製品に広く使用されており、しばしば消費者が特定の製品を選ぶ決め手となるため、そうした製品において非常に重要な役割を果たしている。
【0003】
香料業界が直面している問題の一つは、発香化合物が揮発性であるため、それらがもたらす嗅覚的有益性が比較的速く失われることである。揮発性物質の放出速度を調節するには、香料を含有するマイクロカプセルなどの送達系が、コアペイロードを保護すること、そして後にトリガーを受けるとそれを放出することが必要となる。こうした系に関し業界が重要な要件としているのは、厄介なベース中でも物理的に解離したり崩壊したりせず懸濁に耐えることである。これを、送達系の安定性という点から性能と呼ぶ。たとえば、高濃度のアグレッシブな界面活性洗剤を含有する芳香付きパーソナル洗浄剤および家庭用洗浄剤では、保管中にマイクロカプセルの安定性を保つことが非常に困難である。
【0004】
上述したように、香料送達系にとって、安定性という点での性能は重要な要件である。しかし、こうした送達系は、洗浄/泡立ち段階(ブルーミング)の間も、または洗浄後の乾燥した基体(皮膚、髪、布または家の表面)上でも、香料放出という点での良好な性能も示さなければならない。
【0005】
既存のマイクロカプセル化法のなかでも、界面重合により得られたマイクロカプセルが広く用いられている。一般に、この方法の間、油相に可溶なモノマーまたはポリマー(たとえばポリイソシアネート)を用いて、かつ水相に可溶なポリマー(たとえばポリアミン、ポリオール)を用いて、水中油エマルションまたは油中水エマルションが製造される。そして特定の条件(温度、pH他)の下、油-水界面でそれらのポリマーが互いに反応して高分子シェルを形成する。こうして水性コア-シェルマイクロカプセルスラリーが得られる。
【0006】
したがって、シェルの性質は、油相と水相にそれぞれ存在するモノマーまたはポリマーの性質に左右される。たとえば、ポリイソシアネートがポリアミンと反応するとポリ尿素シェルが得られるが、ポリイソシアネートがポリオールと反応するとポリウレタンシェルが得られる。
【0007】
そのようなマイクロカプセルの製造法は、従来技術で広く開示されている。ポリ尿素系およびポリウレタン系のマイクロカプセルスラリーを製造する方法の例は、たとえば国際公開第2007/004166号、欧州特許出願公開第2300146号明細書、または欧州特許出願公開第2579976号明細書にも記載されている。
【0008】
マイクロカプセルの製造法は広く知られているが、多種の用途に適する安定性の高いマイクロカプセルを製造する代替法に対する需要がある。
【0009】
本発明は、この需要および業界のその他の需要を満たすものである。
【0010】
発明の概要
本方法の間、非常に少量の水の存在下で、または水を添加することさえなく、任意選択で含まれる反応物質と油相に存在するモノマーとの重合により形成される壁を形成することにより、香油などの疎水性活性成分を内包したマイクロカプセルを得ることができることを見出した。
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、マイクロカプセルスラリーを製造する方法であって、
(i)好ましくは香料である疎水性活性成分を含む油相に、モノマーを溶解させるステップ;
(ii)該油相とは混和しない、乳化剤を含む分散相を製造するステップ;
(iii)該油相を該分散相に添加して二相分散体を形成するステップ;
(iv)界面重合を誘発するのに十分な条件を加え、スラリー形態のマイクロカプセルを形成するステップ
を含み、
該モノマーは、該界面重合中に反応しやすく、それによってスラリー形態のマイクロカプセルが形成され;
該分散相の含水率が、該分散相の総重量に対し10重量%以下であることを特徴とする、方法である。
【0012】
本発明の第2の目的は、上述の方法により得られるマイクロカプセルスラリーである。
【0013】
本発明の第3および第4の目的はそれぞれ、上記マイクロカプセルスラリーを含む賦香組成物と消費者製品である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の方法にしたがい製造されたマイクロカプセルのTGA曲線を示す図である。
【
図2】本発明の方法にしたがい製造されたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の方法にしたがい製造されたマイクロカプセルの顕微鏡写真である。
【
図4】シャワージェルベース中の本発明の方法により製造されたマイクロカプセルの安定性の結果(香料漏出)を示す図である。
【0015】
特に指定のない限り、%は、組成物の重量パーセントを示すことを意味する。
【0016】
発明の詳細な説明
定義
本発明における「マイクロカプセル」または同様の用語は、コア-シェル構造を有するカプセルであって、マイクロメートル範囲の粒度分布(たとえば平均直径が約1μm~3000μmである(d(v、0.5))を有し、外側の固体のオリゴマー系シェルまたは高分子シェル、および該外側シェルに内包された内相を含むカプセルを指すものとする。
【0017】
「モノマー」とは、化学的に反応または結合してポリマーまたは超分子ポリマーを形成する、単位としての分子を意味する。一実施形態によると、モノマーは、界面重合中に反応して、スラリー形態のマイクロカプセルを形成する。マイクロカプセルは、モノマーと反応物質との反応から得られる場合もあるし、モノマーの自己重合のみから得られる場合もある。
【0018】
「ポリ尿素系」壁またはシェルとは、ポリマーが、アミノ官能架橋剤または界面重合中にさらにイソシアネート基と反応できるアミノ基を生成するイソシアネート基加水分解のいずれかによって作られる尿素結合を含むことを意味する。
【0019】
「ポリウレタン系」壁またはシェルとは、ポリマーが、界面重合中にポリオールがイソシアネート基と反応して作られるウレタン結合を含むことを意味する。
【0020】
念のため明記すると、本発明における「分散体」という表現は、異なる組成の連続相に粒子が分散している系を意味し、特にサスペンションまたはエマルションが挙げられる。
【0021】
「疎水性活性成分」とは、単成分であれ複数成分の混合物であれ、水と混合されると二相分散体を形成するあらゆる活性成分を意味する。
【0022】
疎水性活性成分は、フレーバー、フレーバー成分、香料、香料成分、栄養補助食品、化粧品、昆虫駆除剤、殺生物剤、およびそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される。
【0023】
疎水性内相に存在する昆虫駆除剤の性質およびタイプについては、本明細書ではこれ以上詳述せず、またいずれにせよ網羅しきれないが、当業者であればその一般知識に基づき、および使用目的または用途により、選択することができる。
【0024】
そのような昆虫駆除剤の例は、カバノキ、ディート(N,N-ジエチル-m-トルアミド)、レモンユーカリ(Corymbia citriodora)の精油およびその活性化合物p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、イカリジン(ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシラート)、Nepelactone、シトロネラオイル、ニームオイル、Bog Myrtle(ヤチヤナギ)、ジメチルカルバート、トリシクロデセニルアリルエーテル、IR3535(3-[N-ブチル-N-アセチル]-アミノプロピオン酸、エチルエステル、エチルヘキサンジオール、フタル酸ジメチル、メトフルトリン、インダロン、SS220、アントラニレート系昆虫忌避剤、およびそれらの混合物である。
【0025】
特定の実施形態によると、疎水性活性成分は、香料と、栄養補助食品、化粧品、昆虫駆除剤、および殺生物剤からなる群より選択される別の成分との混合物を含む。
【0026】
特定の実施形態によると、疎水性活性成分は、香料を含む。
【0027】
特定の実施形態によると、疎水性活性成分は、香料からなる。
【0028】
本明細書では「香油」とは(または「香料」も)、約20℃で液体である成分または組成物を意味する。上述の実施形態のいずれか1つによると、該香油は、賦香成分単体であっても、賦香組成物の形態で複数成分の混合物であってもよい。本明細書では「賦香成分」は、香りを与えるか変えることを主目的として用いられる化合物を意味する。換言すると、そのような成分は、賦香成分とみなされるためには、単に香りを有するというだけでなく、少なくとも組成物の香りを芳しいまたは香しいように付与または変更することができると、当業者に認識されるものでなくてはならない。本発明の目的では、賦香成分とともにその送達を改善し、向上させ、または変更する香料前駆物質、エマルション、または分散体などの物質と賦香成分との組み合わせ、ならびに香りを変更するまたは付与するという利点に加えて、持続効果、ブルーミング、悪臭に対する反作用、抗菌効果、微生物安定性、昆虫駆除などの利点を付与する組み合わせも、香油に含まれる。
【0029】
疎水性内相に存在する賦香成分の性質およびタイプについては、本明細書ではこれ以上詳述せず、またいずれにせよ網羅しきれないが、当業者であればその一般知識に基づき、および使用目的または用途、および所望の感覚刺激効果により選択することができる。一般的にいえば、これらの賦香成分は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、窒素または硫黄含有複素環化合物、および精油といった多様な化学分類群に属するものであり、該賦香共成分は天然由来でも合成由来でもよい。いずれにせよ、こうした共成分の多くは、S. Arctanderの著書“Perfume and Flavor Chemicals,” (米), 1969, Montclair, New Jerseyもしくはより最近の版、または似たような内容のほかの書籍、ならびに香料分野の膨大な特許文献といった参照文献に記載されている。また、これらの成分は、様々なタイプの賦香化合物を制御された様式で放出することが知られる化合物であってもよいことが理解される。
【0030】
賦香成分は、香料業界で現在使用されている溶媒に溶解させてもよい。好ましくは、溶媒はアルコールではない。そのような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastman社より入手可能)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンもしくは他のテルペン、またはイソパラフィンである。好ましくは、溶媒は、疎水性が非常に高く、かつ立体障害が非常に大きい、たとえばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルなどである。好ましくは、香料は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは、香料は、20%未満、さらに好ましくは10%未満の溶媒を含み、これらのパーセンテージはすべて香料の総重量に対する重量基準で定められている。最も好ましくは、香料は溶媒を実質的に含まない。
【0031】
マイクロカプセルスラリー製造法
本発明の第1の目的は、マイクロカプセルスラリーを製造する方法であって、
(i)好ましくは香料である疎水性活性成分を含む油相に、モノマーを溶解させるステップ;
(ii)該油相とは混和しない、乳化剤を含む分散相を製造するステップ;
(iii)該油相を該分散相に添加して二相分散体を形成するステップ;
(iv)界面重合を誘発するのに十分な条件を加え、スラリー形態のマイクロカプセルを形成するステップ
を含み、
該モノマーは、該界面重合中に反応しやすく、それによってスラリー形態のマイクロカプセルが形成され;
該分散相の含水率が、該分散相の総重量に対し10重量%以下であることを特徴とする、方法である。
【0032】
何ら理論に縛られるものではないが、出願人は、分散相が水を少量しか含まないほうが、界面重合中の反応速度を制御しやすくなり、高品質の膜の形成につながると考える。
【0033】
さらに、水の量が少なく、水を含まないことさえあるので、本発明の方法により得られた/得られるマイクロカプセルスラリーは、水性の消費者製品に用いることができる(分散相は水とよく混和するため)のみならず、無水の消費者製品にも(乾燥ステップは一切なしで)用いることができる。
【0034】
したがって、本発明の方法により得られたマイクロカプセルは、無水消費者製品に含有させる際に乾燥させる必要がなく、費用効果的な方法となる。
【0035】
油相
本発明の方法により製造されたシェルは、特に、ステップ(i)で油相に添加されるモノマーの性質に依存する。
【0036】
本発明のある好ましい実施形態によると、本発明の方法では5~60%、より好ましくは10~50%の量の油が用いられ、これらのパーセンテージは、得られたマイクロカプセルスラリーの総重量に対する重量基準で定められている。
【0037】
一実施形態によると、ステップ(i)で添加されるモノマーは、少なくとも2つのイソシアネート官能基をもつ少なくとも1種のポリイソシアネート;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのポリ無水マレイン酸;塩化テレフタロイルまたは三塩化1,3,5-ベンゼントリカルボニルなどのポリ塩化アシル;ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]などのポリエポキシド;トリメチロールプロパントリアクリレートなどのアクリレートモノマー、およびポリアルコキシシランからなる群より選択される。
【0038】
本発明の方法で用いられるモノマーは、重量基準でマイクロカプセルスラリーの0.1~15%、好ましくは0.5~8%、より好ましくは0.5~6%の量で存在する。
【0039】
特定の実施形態によると、ステップ(i)で添加されるモノマーは、少なくとも2つのイソシアネート官能基をもつ少なくとも1種のポリイソシアネートである。
【0040】
本発明で用いられる好適なポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、およびそれらの混合物が挙げられる。該ポリイソシアネートは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むが、最高6つまで、または4つだけ含んでいてもよい。特定の実施形態によると、トリイソシアネート(3つのイソシアネート官能基)が用いられる。
【0041】
一実施形態によると、該ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである。
【0042】
本明細書では「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を含んでいるあらゆるポリイソシアネートを包含するものとする。好ましくは、芳香族ポリイソシアネートは、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチル、またはジフェニル部分、より好ましくはトルイルまたはキシリル部分を含んでいる。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ジイソシアネートのそれぞれビウレット、ポリイソシアヌレート、およびトリメチロールプロパン付加物であり、より好ましくは上述した特定の芳香族部分の1つを含んでいる。より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(Bayer社よりDesmodur(登録商標)RCという商品名で市販されている)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Bayer社よりDesmodur(登録商標)L75という商品名で市販されている)、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Mitsui Chemicals社よりTakenate(登録商標)D-110Nという商品名で市販されている)である。最も好ましい実施形態では、芳香族ポリイソシアネートは、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物である。
【0043】
別の実施形態によると、該ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を一切含まないポリイソシアネートと定義される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Mitsui Chemicals社より入手可能)、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(Bayer社よりDesmodur(登録商標)N 100という商品名で市販されている)であり、なかでもヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットがより好ましい。
【0044】
別の実施形態によると、該少なくとも1種のポリイソシアネートは、それぞれ少なくとも2つまたは3つのイソシアネート官能基を含んでいる、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物の形態であり、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。最も好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。好ましくは、混合物として用いられる場合、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートのモル比は、80:20から10:90の範囲である。
【0045】
分散相
本発明によると、含水率は、分散相の総重量に対し重量基準で10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
【0046】
特定の実施形態によると、分散相は水を含まない。
【0047】
本発明の方法が、水を添加するさらなるステップを含まないことを理解すべきである。換言すると、水が(必要な場合に)添加されるのはステップ(ii)の間だけ、つまり分散相だけである。
【0048】
一実施形態によると、分散相は親水性である。
【0049】
従来技術の公知の方法で使用される水を、グリセロール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される溶媒に代えることで、コア-シェルマイクロカプセルを得ることができることを見出した。
【0050】
分散相に用いられる溶媒は、重量基準でマイクロカプセルスラリーの40~95%、好ましくは50~90%、より好ましくは50~80%の量で存在する。
【0051】
本発明によると、本発明の方法は、分散相の製造において、非イオン性および/またはイオン性であってもよい乳化剤の使用を含む。好適なイオン性乳化剤としては、特に、アラビアガム、スルホン酸リグニン、大豆タンパク質、カゼイン酸ナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解大豆タンパク質、加水分解セリシン、擬似コラーゲン、Biopolymer SA-N、Pentacare-NA PF、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマー、スルホナート基を有するアクリルコポリマー、アニオン性ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
好適な非イオン性乳化剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、変性ポリビニルアルコール、変性デンプン、変性セルロース、多糖類、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0053】
「変性」とは、ある変性化合物が、天然の化合物を物理的に、酵素により、または化学的に処理してその特性を変えることにより製造されていることを意味する。
【0054】
乳化剤は、好ましくは、マイクロカプセルスラリーの0.1~5.0重量%、好ましくはマイクロカプセルスラリーの0.5~2重量%の範囲の量で含まれる。
【0055】
用いられる乳化剤の性質によっては、分散相は、該乳化剤を溶解させるのに必要最低限の量の水を含有する場合がある。
【0056】
本発明のマイクロカプセルは、界面重合により形成されるシェルを有する。当業者であれば、界面重合を誘発する様々な方法を熟知している。
【0057】
一実施形態によると、分散相は求核基を含み、該求核基は好ましくは活性水素原子を有する。
【0058】
特定の実施形態によると、分散相は反応物質を含み、該反応物質は、ポリアミン、ポリオール、ポリチオール、ポリアミノアルコール、およびそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される。
【0059】
特定の実施形態によると、反応物質はポリアミンであり、グアニジン塩、トリス-(2-アミノエチル)アミン、N,N,N´,N´-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、グアナゾール、リジンなどのアミノ酸、2-アミノ-1,3-プロパンジオールなどのアミノアルコール、エタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される。
【0060】
既に述べたように、シェルの性質は、油相に存在するモノマーおよび分散相に存在する反応物質の性質に依存する。
【0061】
したがって、一実施形態によると、本発明のマイクロカプセルは、ポリ尿素系カプセルである。この特定の実施形態によると、分散相にポリアミン反応物質を添加することにより界面重合を誘発して、油相に存在するポリイソシアネートとともにポリ尿素壁を形成させる。別の実施形態によると、ポリ尿素系カプセルは、ポリアミン反応物質の添加なしで形成され、少なくとも1種のポリイソシアネートの自己重合のみから得られる。
【0062】
別の実施形態によると、本発明のマイクロカプセルは、ポリウレタン系カプセルである。この特定の実施形態によると、分散相におけるポリオールの存在(溶媒そのものであってもよく、たとえばグリセロール)および/または分散相へのポリオール反応物質の添加により界面重合を誘発して、油相に存在するポリイソシアネートとともにポリウレタン壁を形成させる。好ましくは、ポリオール反応物質は、反応に利用可能な複数のヒドロキシル基を有するモノマーのまたはポリマーのポリオール類、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0063】
別の実施形態によると、本発明のカプセルは、ポリ尿素/ポリウレタン系である。その場合、先の2つの実施形態で述べた反応物質の混合物の添加により、界面重合を誘発する。それに加えて、アミノ基とヒドロキシル基の両方をもつ架橋剤を用いて、ポリ尿素/ポリウレタン材料を生成することもできる。さらに、尿素とウレタン両方の官能性をもつポリイソシアネートを用いて、ポリ尿素/ポリウレタン材料を生成することもできる。
【0064】
別の実施形態によると、油相に存在するモノマーは、ポリ無水マレイン酸またはポリ塩化アシルであり、界面重合がポリアミン反応物質またはポリオール反応物質(分散相に存在する溶媒であってもよい)により誘発され、それぞれポリアミド系マイクロカプセル、またはポリエステル系マイクロカプセルを与える。
【0065】
別の実施形態によると、油相に存在するモノマーはポリエポキシドであり、界面重合がポリアミン反応物質の添加により誘発され、ポリアミノ-アルコール系マイクロカプセルを与える。
【0066】
別の実施形態によると、油相に存在するモノマーはポリ尿素-ポリアルコキシシランコポリマーであり、界面重合がアルコキシシラン基の加水分解および縮合により誘発される。
【0067】
特定の実施形態によると、分散相はアミノ樹脂を含む。
【0068】
一実施形態によると、二相分散体における平均液滴サイズは、1~3000μmであり、したがってマイクロカプセルのサイズは1~3000μmとなる。
【0069】
ある好ましい実施形態によると、平均液滴サイズは1~500μm、好ましくは5~50μmである。
【0070】
マイクロカプセルのサイズは、当業者が所望の用途の関数として容易に調節することができる。
【0071】
任意選択によるコーティング
本発明の特定の実施形態によると、ステップiv)の終わりに、非イオン性多糖類、カチオン性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを本発明のスラリーに添加して、マイクロカプセルに外側コーティングを形成してもよい。そのようなコーティングにより、洗い流すタイプの製品から基体へと加えられたカプセルが基体上に付着し残留しやすくなり、したがって洗浄段階でも泡立ち時にも壊れなかったカプセルの大部分が基体(皮膚、髪、布地)に移り、乾燥後に擦られてカプセルが壊れると香料を放出することができる。
【0072】
非イオン性多糖類ポリマーは当業者には周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される。
【0073】
カチオン性ポリマーも、当業者には周知である。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、より好ましくは少なくとも約1.5meq/g、しかし同じく好ましくは約7meq/g未満、より好ましくは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、米国薬局方の窒素測定用化学試験で記載されているケルダール法により決定することができる。好ましいカチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖の一部を構成することができるかまたは主鎖に直接結合している側鎖置換基に含まれていてもよい第一級、第二級、第三級および/または第四級アミン基を含む単位を含有するものから選択される。カチオン性ポリマーの重量平均(Mw)分子量は、好ましくは1万~3.5Mダルトン、より好ましくは5万~2Mダルトンである。
【0074】
特定の実施形態によると、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、四級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、四級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、およびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド系のカチオン性ポリマーを用いる。好ましくはコポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、およびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群より選択されよう。
【0075】
市販品の具体例として、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドとのカチオン性コポリマー、BASF社製)またはLuviquat(登録商標)、たとえばPQ 11N、FC 550もしくはStyle(ポリクオタニウム-11~68またはビニルピロリドンの四級化コポリマー、BASF社製)、あるいはJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、Solvay社製)を挙げることができる。
【0076】
本発明の上述の実施形態のいずれか1つによると、上述したポリマーが約0%~5%w/w、または約0.1%~2%w/wの量で添加され、これらのパーセンテージは、ステップiv)後に得られるスラリーの総重量に対し、w/w基準で表している。当業者には、この添加されるポリマーの一部だけがマイクロカプセルシェルに含有される/付着することは、明白に理解される。
【0077】
マイクロカプセルスラリー
上記で定義したコア-シェルマイクロカプセルスラリーの製造法により得られるマイクロカプセルスラリーも、本発明の目的である。
【0078】
別の目的は、油系コアを有するコア-シェルマイクロカプセルを含むコア-シェルマイクロカプセルを含むスラリーであって、該スラリーはその総重量に対し重量基準で10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下の水を含む。
【0079】
特定の実施形態によると、スラリーは水を含まない。
【0080】
本方法について説明したすべての異なる実施形態が、マイクロカプセルスラリーに当てはまる。
【0081】
賦香組成物
本発明の別の目的は、
(i)油系コアが香料を含んでいる、上記で定義したマイクロカプセルスラリー;
(ii)香料担体および賦香共成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分;および
(iii)任意選択により香料アジュバント
を含む、賦香組成物である。
【0082】
液体香料担体としては、非限定例として、乳化系、すなわち溶媒と界面活性剤との系、または香料業界で広く用いられる溶媒を挙げることができる。香料業界で広く用いられる溶媒の性質およびタイプの詳しい説明は、網羅できるものではない。とはいえ、非限定例として、ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、またはクエン酸エチルなどの、最も広く用いられている溶媒を挙げることができる。香料担体と香料共成分を両方含む組成物では、上記以外の好適な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、たとえばIsopar(登録商標)(Exxon Chemical社製)の商品名で公知のイソパラフィン、またはDowanol(登録商標)(Dow Chemical Company社製)の商品名で公知のグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステルであってもよい。本明細書では「香料共成分」とは、芳香効果を付与するために賦香調製物または組成物に用いられる、上記で定義したマイクロカプセルではない化合物を意味する。換言すると、そのような共成分は、賦香成分とみなされるためには、単に香りを有するというだけでなく、組成物の香りを芳しいまたは香しいように付与または変更することができると、当業者に認識されるものでなくてはならない。
【0083】
賦香組成物中に存在する賦香共成分の性質およびタイプについては、本明細書ではこれ以上詳述せず、またいずれにせよ網羅しきれないが、当業者であれば自らの一般知識に基づき、および使用目的または用途、および所望の感覚刺激効果により選択することができる。一般的にいえば、これらの賦香共成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、窒素または硫黄含有複素環化合物、および精油といった多様な化学分類群に属するものであり、該賦香共成分は天然由来でも合成由来でもよい。いずれにせよ、こうした共成分の多くは、S. Arctanderの著書“Perfume and Flavor Chemicals,” (米), 1969, Montclair, New Jerseyもしくはより最近の版、または似たような内容のほかの書籍、ならびに香料分野の膨大な特許文献といった参照文献に記載されている。また、これらの共成分は、様々なタイプの賦香化合物を制御された様式で放出することが知られる化合物であってもよいことが理解される。
【0084】
本明細書では「香料アジュバント」とは、色、特定の光耐性、化学的安定性などのさらなる追加の利点を付与することができる成分という意味である。賦香ベースにおいて広く用いられるアジュバントの性質およびタイプの詳しい説明は網羅できるものではないが、そうした成分は当業者には周知であることは、記載しておかねばならない。
【0085】
好ましくは、本発明の賦香組成物は、上記で定義したマイクロカプセルを重量基準で0.05~30%、好ましくは0.1~30%含む。
【0086】
消費者製品
本発明のマイクロカプセルは、有利にも、多くの用途分野で使用でき、消費者製品に用いることができる。マイクロカプセルは液体形態で液体消費者製品に用いることもできるし、または固形消費者製品に用いることもできる。
【0087】
上記で定義したマイクロカプセルまたは上記で定義した賦香組成物を含む、好ましくはランドリーケア製品、ホームケア製品、ボディケア製品、スキンケア製品、ヘアケア製品、空気ケア製品、または衛生製品の形態の消費者製品も、本発明の目的である。
【0088】
本発明の別の目的は、液体消費者製品であって、該消費者製品は、
a)該消費者製品の総重量に対し2~65重量%の少なくとも1種の界面活性剤;
b)水または水混和性親水性有機溶媒;および
c)上記で定義したマイクロカプセルスラリー
を含み、
d)任意選択により非内包香料を含む。
【0089】
特に、
a)消費者製品の総重量に対し2~65重量%の少なくとも1種の界面活性剤;
b)水または水混和性親水性有機溶媒;および
c)上記で定義した賦香組成物
を含む液体消費者製品が、本発明の別の目的である。
【0090】
また、
a)消費者製品の総重量に対し2~65重量%の少なくとも1種の界面活性剤;および
b)上記で定義した賦香組成物またはマイクロカプセル
を含む、粉末消費者製品。
【0091】
特定の実施形態によると、消費者製品は無水である。
【0092】
実に、本発明の方法により得られるマイクロカプセルスラリーは、無水消費者製品に含有させる前に乾燥させる必要がない。さらに、分散相は無水消費者製品のベースと相溶性がある。
【0093】
「無水」とは、液体消費者製品が、その総重量に対し重量基準で約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約1%未満、さらに好ましくは約0.5%未満の水を含むことと理解すべきである。一実施形態によると、無水消費者製品は水を含まない。
【0094】
香油系コアを含むマイクロカプセルの場合、本発明の製品は、特にファインフレグランスまたは「機能性」香水類に属する製品などの賦香された消費者製品に用いることができる。機能性香水類としては、具体的には、ヘアケア、ボディ洗浄、スキンケア、衛生ケアといったパーソナルケア製品、ならびにランドリーケアおよび空気ケアといったホームケア製品が挙げられる。したがって、本発明の別の目的は、上記で定義したマイクロカプセルまたは上記で定義した賦香組成物を賦香成分として含む、賦香された消費者製品からなる。該消費者製品の香料要素は、上記で定義した香料マイクロカプセルと、自由な状態のまたは非内包香料との組み合わせであってもよいし、本明細書で開示する以外のタイプの香料マイクロカプセルとの組み合わせであってもよい。
【0095】
したがって、本発明のマイクロカプセルは、賦香された消費者製品にそのままで、または本発明の賦香組成物の一部として添加されている場合がある。
【0096】
理解しやすいように、「賦香された消費者製品」とは、それが使用される表面(たとえば、皮膚、髪、布、紙、または家の表面)または空気中(エアフレッシュナー、消臭剤など)に、種々の利点のなかでも特に賦香効果を送達することが期待される消費者製品を意味することを、述べておく必要がある。換言すると、本発明の賦香された消費者製品は、「ベース」とも呼ばれる機能性配合物と、有益な剤、特に本発明の有効量のマイクロカプセルとを含む製品である。
【0097】
賦香された消費者製品のその他の構成要素の性質およびタイプについては、本明細書ではこれ以上詳述せず、またいずれにせよ網羅しきれないが、当業者であれば自らの一般知識に基づき、ならびに該製品の性質および所望の効果により選択することができる。本発明のマイクロカプセルを含有させることができる消費者製品のベース配合物は、そのような製品に関する膨大な文献に記載されている。こうした配合物については本明細書では詳述しないが、いずれにしても網羅できるのものではない。そのような消費者製品を製造する当業者であれば、自らの一般知識および入手可能な文献に基づき好適な構成要素を正確に選択することができる。
【0098】
好適な香料消費者製品の非限定例は、ファインパフューム、コロン、またはアフターシェーブローションなどの香水類;液体または固形洗剤、タブレットおよびポッド、衣類柔軟剤、乾燥機用シート、布地抗菌除臭剤、アイロン水、または漂白剤などの布地ケア製品;ヘアケア製品(たとえばシャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング剤、またはヘアスプレー)、化粧品(たとえばバニシングクリーム、ボディローション、またはデオドラントもしくは制汗剤)、またはスキンケア製品(たとえば香り付き石鹸、シャワーもしくはバスムース、ボディウォッシュ、オイルもしくはジェル、バスソルト、または衛生製品)などのボディケア製品;エアフレッシュナーまたは「すぐに使える」粉末状エアフレッシュナーなどの空気ケア製品;万能クリーナー、液体またはタブレット食器洗浄剤、トイレクリーナー、または様々な表面の掃除用品、たとえば布地または硬面(床、タイル、石床など)の手入れ/再生用のスプレーおよび拭き取り剤などのホームケア製品、生理用ナプキン、おむつ、トイレットペーパーなどの衛生製品を挙げることができる。
【0099】
特定の実施形態によると、消費者製品は、シャンプー、シャワージェル、洗い流すコンディショナー、固形石鹸、または液体洗剤、衣類柔軟剤、および床クリーナーからなる群より選択される。
【0100】
ある好ましい実施形態によると、消費者製品は、シャンプーまたは洗い流すコンディショナーである。別の好ましい実施形態によると、製品は香り付き石鹸である。別の好ましい実施形態によると、製品はボディウォッシュである。別の好ましい実施形態によると、製品は布地ケア製品である。
【0101】
粉末洗剤では、配合物にいくらかでも自由水を加えると、粉末の外観に悪影響があること、そして製品全体が明らかにべたついて見えることが公知である。本発明の方法により得られるマイクロカプセルを用いれば、何ら障害なしに粉末洗剤のスラリー含有率をさらに高めることが可能である。
【0102】
本発明の別の目的は、
-粉末洗剤活性ベース、および
-本発明の方法により製造されたマイクロカプセル
を含む、粉末洗剤である。
【0103】
本発明のマイクロカプセルを含有させることができる粉末洗剤活性ベースは、そのような製品に関する膨大な文献に記載されている。こうした配合物については本明細書では詳述しないが、いずれにしても網羅できるのものではない。そのような消費者製品を製造する当業者であれば、自らの一般知識および入手可能な文献に基づき好適な構成要素を正確に選択することができる。
【0104】
液体洗剤消費者製品には、ほぼ無水の組成を有する1個ずつの液体洗剤ポッドがある。この非常に特殊なフォーマットにおける標準的なマイクロカプセルの含有レベルには制限があるが、それはスラリーに含まれる水の存在によりフィルム(一般にPvOH)が溶けやすくなるためである。
【0105】
本発明の方法により得られるマイクロカプセルを用いることで、フィルムの特性を損なうことなく、配合物中のカプセルの量を増やせる。
【0106】
本発明の別の目的は、液体洗剤ポッドであって、
-液体洗剤活性ベース、および
-本発明の方法により製造されたマイクロカプセル
を含み、
該液体洗剤活性ベースとマイクロカプセルスラリーとが、少なくとも1つの室を有するポッドに組み込まれている。
【0107】
ポッドは一般に、PVOH製フィルムからなる。
【0108】
本発明のマイクロカプセルを含有させることができる液体洗剤活性ベースは、そのような製品に関する膨大な文献に記載されている。こうした配合物については本明細書では詳述しないが、いずれにしても網羅できるのものではない。そのような消費者製品を製造する当業者であれば、自らの一般知識および入手可能な文献に基づき好適な構成要素を正確に選択することができる。
【0109】
最後に、本発明の最後の目的は、
-担体、および
-本発明の方法により製造されたマイクロカプセル
を含む、固形香り付け剤組成物である。
【0110】
一実施形態によると、固形香り付け剤組成物は、香錠の形態である。
【0111】
一般には、マイクロカプセルスラリーを溶融状態の担体と混合して均質混合物を得る。次に、この混合物を支持体上に滴下して固形化香錠を得ることができる。
【0112】
本発明では、容易に溶融し固形化できる任意の材料を、担体として用いることができる。
【0113】
一実施形態によると、担体は、PEG、脂肪アルコール、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0114】
PEGの分子量は、好ましくは1000g/molよりも大きく、好ましくは1000~8000g/molである。脂肪アルコールは、好ましくは20以上の炭素原子を有する。
【0115】
好ましくは、上記で定義した消費者製品は、0.05重量%~、好ましくは0.1重量%~15重量%の、より好ましくは0.2~5重量%の、さらに好ましくは1~5%の本発明のマイクロカプセルを含み、これらのパーセンテージは、消費者製品の総重量に対する重量基準で定められている。当然ながら、上述の濃度は、各製品の望ましい嗅覚的効果により調整することができる。
【0116】
次に、本発明を実施例によりさらに説明する。なお、特許請求の範囲に記載の本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
実施例1
本発明のポリウレタンマイクロカプセルの製造
3%(w/w)のカゼインナトリウム塩(Sigma Aldrich社製)を含有するグリセロール(Alfa Aesar社製)60gを反応器に入れ、70℃に加熱した。このグリセロール相に、香料A(表1参照)30gおよびポリイソシアネート(キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、Mitsui Chemicals社製)0.6gを含有する油相を添加してから、800RTMで5分間、機械的に撹拌してエマルションを得た。エマルションは、300RPM、70℃で、7時間置いた。その後撹拌を停止し、系を放冷した。このマイクロカプセルサスペンションの平均サイズはほぼ15μmであった。
【0118】
表1:香料Aの組成
【表1】
1)ジヒドロジャスモン酸メチル、Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ。
【0119】
実施例2
本発明のポリ(尿素-ウレタン)マイクロカプセルの製造
3%(w/w)のカゼインナトリウム塩(Sigma Aldrich社製)を含有するグリセロール相60gを反応器に入れ、70℃に加熱した。このグリセロール相に、ポリイソシアネート(キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、Mitsui Chemicals社製)0.6gと香料A(表1参照)30gとを混合して製造した油相を添加した。アンカーローターを用いて、70℃で5分間、800RPMでエマルションを得た。炭酸グアニジン(Alfa Aesar社製)0.23gをグリセロール8.8gに溶解させ、エマルションに添加した。エマルションは、300RPM、70℃で、7時間置いた。その後撹拌を停止し、系を放冷した。得られたマイクロカプセルの平均サイズはほぼ15μmであった。
【0120】
実施例3
本発明のマイクロカプセルの香料残留
実施例1および2で製造したマイクロカプセルを水で3回洗ってグリセロールを除去し、熱重量分析器(TGA、Mettler-Toledo社、スイス国)で分析してそれらの香料残留について評価した。マイクロカプセル試料(10~20mg)を酸化アルミニウムるつぼに入れ、温度制御下、および20mL/分の一定の窒素流のもとで、TGAにより残質量を決定した。試料を10℃/分のペースで25℃から50℃に加熱し、次いで約2時間、温度を一定に維持した。結果を
図1に示す。両方とも、等温曲線が、良好な香料残留度を表す横ばい状態を示している。
【0121】
実施例4
本発明のポリ(尿素-ウレタン)マイクロカプセルの製造
1%(w/w)のポリビニルピロリドン(Sigma Aldrich社製)および1%(w/w)のポリ(1-ビニルピロリドンco-酢酸ビニル)(Sigma Aldrich社製)を含有するグリセロール相60gを反応器に入れ、50℃に加熱した。このグリセロール相に、ポリイソシアネート(キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate
(登録商標)D-110N、Mitsui Chemicals社製)2gおよび香料A(表1参照)30gを50℃で溶解させて製造した油相を添加した。この混合物をアンカーローターで、50℃で3分間、600RPMで撹拌してエマルションを得た。1,2-ジアミノシクロヘキサン(Sigma Aldrich社製)0.28gをグリセロール7.7gと混合してエマルションに添加し、これを300RPM、50℃で、5時間置いた。重合プロセスが終わると撹拌を停止し、系を放冷した。得られたマイクロカプセルの平均サイズはほぼ10μmであった(
図2aおよび2b参照)。
【0122】
実施例5
本発明のポリ(アミノ-アルコール)マイクロカプセルの製造
カプセルA5:
3%(w/w)のカゼインナトリウムを含有するグリセロール相60gを反応器に入れ、70℃に加熱した。このグリセロール相に、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド](Sigma Aldrich社製)0.6gを香料A(表1参照)30gに溶解させて製造した油相を添加した。アンカーローターで、70℃で3分間、600RPMでせん断して乳化を得た。トリス-2-アミノエチルアミン(Sigma Aldrich社製)0.2gをグリセロール9.1gと混合してエマルションに添加し、これを70℃で6時間、そして80℃で一晩、300RPMで撹拌した。撹拌を停止し、系を放冷した。得られたマイクロカプセルの平均サイズはほぼ10μmであった。
【0123】
カプセルB5:
カゼインナトリウム(3重量%)のグリセロール溶液(60g)を反応器に入れた。このグリセロール相に、トリメチロールトリグリシジルエーテル(2.02g、Sigma Aldrich社)および香料B(30g)で構成される油相を室温で滴下した。得られた混合物を、アンカーローターで、50℃で2分間、600RPMで撹拌してエマルションを得た。次に、1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.14g、Sigma Aldrich社)のグリセロール(5g)溶液を1時間かけて添加した。この反応混合物を、50℃で1時間、そして80℃で4時間、300rpmで撹拌した。
【0124】
表2:香料Bの組成
【表2】
1)Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ
2)IFFの商標;酢酸2-tert-ブチル-1-シクロヘキシル。
【0125】
カプセルC5:
カゼイン(3重量%)のグリセロール溶液(60g)を反応器に入れた。このグリセロール相に、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド](1.20g、Sigma Aldrich社)および香料B(30g)で構成される油相を室温で滴下した。得られた混合物を、アンカーローターで、50℃で2分間、600RPMで撹拌してエマルションを得た。次に、トリス-2-アミノエチルアミン(2.70g、Sigma Aldrich社)のグリセロール(2g)溶液を1時間かけて添加した。この反応混合物を、50℃で1時間、600rpmで撹拌した。DABCO(0.05g)のグリセロール(2.5g)溶液を添加し、この反応混合物を80℃で2時間温めた。
【0126】
カプセルD5:
カゼイン(3重量%)のグリセロール溶液(60g)を反応器に入れた。このグリセロール相に、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド](1.20g、Sigma Aldrich社)および香料B(30g)で構成される油相を室温で滴下した。得られた混合物を、アンカーローターで、50℃で2分間、600RPMで撹拌してエマルションを得た。次に、2-エタノールアミン(2.70g、Sigma Aldrich社)のグリセロール(2g)溶液を1時間かけて添加した。この反応混合物を、50℃で1時間、600rpmで撹拌した。DABCO(0.05g)のグリセロール(2.5g)溶液を添加し、この反応混合物を80℃で2時間温めた。
【0127】
実施例6
本発明のポリ(尿素-アルキルシロキサン)マイクロカプセルの製造
油相の製造:Neobee(Stepan社製)1gで希釈した1,2-ジアミノシクロヘキサン0.23gと、Neobee 1gで希釈した1,2-ジアミノプロパン(Sigma Aldrich社製)0.037gとを室温で混合して製造した2種類のアミンの溶液を、香料C(表3参照)10gに60℃で溶解させた1.26の3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(Sigma Aldrich社製)に連続して添加した。この反応混合物を60℃で1時間置いた。
【0128】
1%(w/w)のSuperstabアラビアガム(Nexira社)、1%(w/w)のリグノスルホン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich社)、および5%(w/w)の脱イオン水を含有するグリセロール60gを反応器に入れ、50℃に維持した。油相を50℃に加熱し、このグリセロール相に添加した。アンカーローターで、50℃で3分間、600RPMで撹拌して乳化を得た。このエマルションの温度を75℃まで上げ、10%HCl溶液10gを1時間かけて添加した。このエマルションを、75℃で5時間、機械的に撹拌した。次いで10%アンモニア溶液10gを1時間かけて添加し、系を75℃で16時間放置した。マイクロカプセル化プロセスが終わると撹拌を停止し、系を放冷した。得られたマイクロカプセルを
図3に示す。マイクロカプセルの平均サイズはほぼ15μmであった。
【0129】
表3:香料Cの組成
【表3】
1)ジヒドロジャスモン酸メチル、Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ
2)1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、IFF社製、米国
3)ペンタデセノリド、Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ。
【0130】
実施例7
本発明のポリアミドマイクロカプセルの製造
連続相の製造:
Superstabアラビアガム(Nexira社)3gを、10%(w/w)の脱イオン水を含有するグリセロール97gに室温で溶解させ、反応器に入れた。このグリセロール相に、塩化テレフタロイル(Sigma Aldrich社)2.03gおよび香料D30gで構成される油相を室温で滴下した。得られた混合物をアンカーローターで3分間600RPMで撹拌してエマルションを得た。次に、トリス-2-アミノエチルアミン(Sigma Aldrich社)5.85gを1時間かけて添加した。この反応混合物を室温で4時間、300RPMで撹拌した。平均サイズ40μmのマイクロカプセルが得られた。
【0131】
香料Dは、質量が等しい5種の香料成分:サリチル酸ヘキシル、Romascone(登録商標)1)、Cyclosal2)、Vertenex(登録商標)3)、およびVerdox(登録商標)4)を混合して製造した。
1)(メチル2,2-ジメチル-6-メチレン-1-シクロヘキサンカルボキシラート、Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ);
2)((+-)-3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、Firmenich SA製、スイス国ジュネーブ);
3)(酢酸4-tert-ブチル-1-シクロヘキシル、International Flavors and Fragrances社製、米国);
4)(酢酸2-tert-ブチル-1-シクロヘキシル、International Flavors and Fragrances社製、米国)。
【0132】
実施例8
本発明のポリ(尿素-ウレタン)マイクロカプセルの製造
1%(w/w)のポリビニルアルコールMowiol 18-88(Sigma Aldrich社)および5%(w/w)の脱イオン水を含有するグリセロール溶液60gを反応器に入れ、50℃に加熱した。このグリセロール相に、ポリイソシアネート(キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、Mitsui Chemicals社製)2gと香料D30gとを室温で溶解させて製造した油相を添加した。得られた混合物を3分間600RPMで撹拌してエマルションを得た。エマルションの温度を70℃まで上げる間、撹拌速度を300RPMまで落とした。炭酸グアニジン0.23gをグリセロール7.85gに溶解させて反応器に加え、反応混合物を70℃で7時間撹拌した。得られたマイクロカプセルの平均サイズはほぼ15μmであった。
【0133】
実施例9
本発明のポリエステルマイクロカプセルの製造
カプセルA9
10%(w/w)の脱イオン水を含有するグリセロール97g中Superstabアラビアガム(3g、Nexira社)の溶液95gを、トリメチロールプロパン(2.7g、Sigma-Aldrich社)の存在下、反応器に入れた。このグリセロール相に、塩化1,3,5-ベンゼントリカルボニル(1.77g、Sigma Aldrich社)および香料B(25g)で構成される油相を室温で滴下した。得られた混合物をアンカーローターで、室温で3分間、600RPMで撹拌してエマルションを得た。次に、トリエタノールアミン(2.98g、Sigma Aldrich社)のグリセロール(5g)溶液を滴下した。この反応混合物を、30℃で2時間、600rpmで撹拌してから、120℃で2時間、そっと撹拌した。
【0134】
カプセルB9
150mLビーカーに、PVP(22.36g、1重量%、BASF社製)およびPVP-co-PVAc(22.36g、1重量%、BASF社製)のグリセロール溶液を入れた。このグリセロール相に、トリエタノールアミン(0.95g、Aldrich社製)およびトリエチルアミン(1.29g、Aldrich社製)を添加した。反応混合物を室温で機械的スタラーで撹拌した。
【0135】
50mLフラスコ内で塩化テレフタロイル(1.29g、Aldrich社製)と香料D(19.93g、Firmenich SA製)とを15分間の磁気撹拌で混合して、油相を得た。機械的に強く撹拌しながら、この油相をグリセロール相に滴下して、エマルションを得た。この反応混合物をマイクロカプセルが形成するまで室温で撹拌した。
【0136】
実施例10
シャワージェルベース中の安定性性能
シャワージェル組成物(表4参照)中の本発明の方法により得られたマイクロカプセルの安定性性能を評価した。
【0137】
表4:シャワージェルベースの組成
【表4】
1)EDETA B POWDER(BASF社)
2)CARBOPOL AQUA SF-1ポリマー(NOVEON社)
3)ZETESOL AO 328 U(ZSCHIMMER&SCHWARZ社)
4)水酸化ナトリウム20%水溶液
5)TEGO-BETAIN F 50(GOLDSCHMIDT社)
6)KATHON CG(ROHM&HAAS社)。
【0138】
実施例8で製造したマイクロカプセルを、香料含有率0.5%となるようにシャワージェルベース(表4参照)に入れた。この試料を室温で保持し、異なる時点でベース中の自由な状態の香料を定量することで、マイクロカプセルの安定性を評価した。
図4に示す結果は、シャワージェルベース中のマイクロカプセルの良好な保存安定性を示している。
【0139】
実施例11
本発明の方法により製造されたマイクロカプセルを含む衣類柔軟剤ベース配合物
実施例5で製造したマイクロカプセルD5(0.19g)を、香料含有率0.11%となるように衣類柔軟剤ベース(49.8g、表5参照)に入れる。
【0140】
【0141】
実施例12
本発明の方法により製造されたマイクロカプセルを含む粉末洗剤配合物
実施例8で得られたマイクロカプセルを、市販の粉末洗剤(Persil Universal、Henkel社製、ドイツ国)に1%と1.5%の含有率でそれぞれ含有させる。
【0142】
粉末洗剤の配合:過炭酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、炭素数10~13のアルキル誘導体(derivs)ナトリウム塩、炭酸ナトリウム、硫酸、炭素数12~18のモノアルキルエステルナトリウム塩、エトキシル化アルコール類。
【0143】
実施例13
本発明の方法により製造されたマイクロカプセルを含む液体洗剤1回分の配合物
実施例8で得られたマイクロカプセルを、1.5%および3%のスラリーの割合で、Unilever社より市販されている、標準単位用量が1室に入ってPVOH小袋に充填されたPersil Small & Mighty Bio Capsules(Unilever社製、英国)と呼ばれる液体洗剤ベースに入れる。
【0144】
Persil small & mighty bio capsulesの配合:mea-ドデシルベンゼンスルホナート(mea-dodecylbenzesulfonate)、mea-水素化ココアート、プロピレングリコール、c12-15 pareth-7、水、グリセリン、ポリビニルアルコール、香料、五ナトリウムエチレンジアミンテトラメチレンホスホナート、エタノールアミン、ソルビトール、mea-スルファート、pvp、サブチリシン、グリコール、ブチルフェニルメチルプロピオナール(butylphenyl methypropional)、デンプン、ヘキシルシンナマル(hexal cinaamal)、ボロン酸、(4,ホルミルフェナール)、リモネン、リナロール(lianlool)、ジスルホン酸ジスチリルビフェニル二ナトリウム(dosodium distyrylbiphenyl disulfonate)、アルファ-イソメチルイオノン、タルク、アミラーゼ、高分子青色色素、塩化ナトリウム、マンナナーゼ(mannamase)、高分子黄色色素。
【0145】
同じカプセルを、1.5%および3%のスラリーの割合で、P&G社より市販されている、標準単位用量が複数室に入ってPVOH小袋に充填されたAriel Pods Capsuleと呼ばれる液体洗剤ベースに入れる。
【0146】
Ariel pods capsulesの配合:mea-ドデシルベンゼンスルホナート、プロピレングリコール、c12-14 pareth-7、mea-硫酸ラウレス、水、peiエトキシレート、グリセリン、香料、peg/酢酸ビニルコポリマー、ドデシルベンゼンスルホン酸、亜硫酸カリウム、塩化マグネシウム、peg/ppg-10/2プロピルヘプチルエーテル、サリチル酸ベンジル、水添ひまし油、エタノールアミン、ポリスチレン、ヘキシルシンナマル、シトロネロール、ブチルフェニルメチルプロピオナール、ギ酸ナトリウム、ソルビトール、プロテアーゼ、リナロール、クマリン、トリプロピレングリコール、2-プロペン酸、エテニルベンゼンを有するポリマー、ジスルホン酸ジスチリルビフェニル二ナトリウム、ゲラニオール、硫酸、グリコシダーゼ、酢酸ナトリウム、セルラーゼ、色素、硫酸ラウリルナトリウム、硫酸ナトリウム、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム。
【0147】
実施例14
本発明の方法により製造されたマイクロカプセルを含むポリエチレングリコール系固形香り付け剤
ポリエチレングリコール(PEG)4000 29.1gを加熱して無色透明の液体を得る。この溶融PEGに、実施例8で製造したマイクロカプセルスラリー0.9gを添加し、混合物を磁気撹拌バーで手短に撹拌して、均質の混合物を得る。次いで、この液状カプセル分散体をステンレス鋼のプレート上に滴下する(そうして香錠を得る)か、紐様にゆっくりと連続的に注ぐ。PEG香錠が固形化してから回収する。紐様の場合は該PEG材を小片化し、やはり最終的に固形香り付け剤として洗濯用途に用いる。