(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】洗面ボウル付きカウンターの製造方法、洗面ボウルの取り付け構造及び洗面ボウル付きカウンター
(51)【国際特許分類】
A47K 1/00 20060101AFI20230911BHJP
E03C 1/33 20060101ALI20230911BHJP
A47B 67/02 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A47K1/00 Q
E03C1/33 Z
A47B67/02 502M
A47B67/02 502N
(21)【出願番号】P 2020026011
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】室 尚吾
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-241080(JP,A)
【文献】特開2001-299474(JP,A)
【文献】特開2001-240108(JP,A)
【文献】特開平11-123114(JP,A)
【文献】特開2013-150739(JP,A)
【文献】特開2012-183167(JP,A)
【文献】実開平03-072971(JP,U)
【文献】特開2008-173195(JP,A)
【文献】特開2008-110013(JP,A)
【文献】特開2020-110415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/00
E03C 1/33
A47B 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)のステップに基づく洗面ボウル付きカウンターの製造方法。
(a)天板(10)に洗面ボウル(20)の内寸法より大きい寸法の開口部(30)を穿設するステップ、
(b)前記洗面ボウルを、前記洗面ボウルのフランジ部分(21)が前記開口部の内側に一部はみ出すように天板と接合するステップ、
(c)前記の一部はみ出した洗面ボウルのフランジ部分を切削し、前記洗面ボウルの内側の上部(U)に直線部(22)を形成するステップ、
(d)前記直線部(22)から下方に向けて滑らかな曲面(
23,28)を形成し、仕上げるステップ。
【請求項2】
木口面(11)が傾斜面(15,16)を有していることを特徴とする請求項1記載の洗面ボウル付きカウンターの製造方法。
【請求項3】
前記洗面ボウルのフランジ部分の幅Tと、前記一部はみ出した洗面ボウルのフランジ部分の幅tとについて、下記数1が成立することを特徴とする請求項1
又は2記載の洗面ボウル付きカウンターの製造方法。
【数1】
【請求項4】
前記直線部の前記天板と前記洗面ボウルとの接合部(S)からの距離をm、前記天板の厚みをMとした時、数2が成立することを特徴とする請求項1
~3いずれか1項記載の洗面ボウル付きカウンターの製造方法。
【数2】
【請求項5】
前記天板と前記
洗面ボウルは材質が異なることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の洗面ボウル付きカウンターの製造方法。
【請求項6】
天板(10)の開口部(30)と洗面ボウル(20)がシームレス接合部(S)を有し、前記
シームレス接合部(S)から下方の前記洗面ボウル内側の上部に直線部(22)を有し、前記直線部(22)から下方に向けて滑らかな曲面(23,28)を有することを特徴とする洗面ボウル付きカウンター。
【請求項7】
木口面(11)が傾斜面(15,16)を有していることを特徴とする請求項6記載の洗面ボウル付きカウンター。
【請求項8】
前記天板の開口部の木口面の厚み(M)と、前記直線部(22)の前記天板と前記洗面ボウルとの接合部(S)からの距離(m)について、下記数2が成り立つことを特徴とする請求項6
又は7に記載の洗面ボウル付きカウンター。
【数2】
【請求項9】
前記天板と前記
洗面ボウルは材質が異なることを特徴とする請求項6,7又は8記載の洗面ボウル付きカウンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗面ボウル付きカウンターの製造方法、洗面ボウルの取り付け構造及び洗面ボウル付きカウンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板に開口部を設け、洗面ボウルの上端を天板の裏側に接着するアンダーシンク法が知られている。洗面ボウル内側の寸法より天板の開口が小さく設計することで、接着面が上から見えないようにしている。
【0003】
近年では、天板の開口部と洗面ボウルの開口部をシームレスに接合して、見栄えを良くするシームアンダー法が知られており、
図9に示すように天板(10´)に穿設した開口部より幾分大きい内寸法の洗面ボウル(20´)を用いて、フランジ部分(21´)を天板がはみ出すように天板側に収めて接合(
図9(c))し、天板の開口部の木口面を切削して仕上げられる(
図9(d)。
【0004】
この方法によれば、アンダーシンク法や、天板の開口部の上方に洗面ボウルの外上縁を密着させるいわゆるオーバシンク法に比べ、天板の開口部の下方に洗面ボウルのフランジ部がシームレス接合されている為、意匠性が良く、また水分が自然に落ち、滞ることが無い為、汚れの蓄積が少なくカビが発生しにくいといった長所がある。
【0005】
一方、天板に用いる素材は、アクリル系人工大理石の他、メラミン化粧板を表面材とした木質系化粧板、アクリル系人工大理石、人造大理石(エンジニアードストーン)、天然石、セタミックタイル、エポキシ樹脂板等、多種多様化してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-008315号公報
【文献】特開2013-150739号公報
【文献】特開2004-33551号公報
【文献】特開2002-248059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来のシームアンダー法は、洗面ボウルの内寸法に合わせて、開口された天板の端部を切削するため天板の素材に合わせた多数の工具と専用刃物を用いる必要あった。
【0008】
また、従来のシームアンダー法による取り付け方法では、天板に洗面ボウルのフランジ部を接合した後、天板のはみ出した部分の切削加工する際、天板の素材毎に加工工具が異なるため素材毎に熟練した技能が必要であった。
【0009】
更に、組成の約90%が無機質系素材の人造大理石(エンジニアードストーン)や約100%無機質系素材の天然石、セラミックタイルの加工においては、切削した箇所の研磨が必要であり、研磨作業は湿式の手による研磨が主流であり、手間がかかる上、作業環境も悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、洗面ボウル(20)のフランジ部分(21)が前記開口部(30)の内側にはみ出した状態で天板(10)と接合することにより前記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗面ボウル付きカウンターの製造方法を採用すれば、天板の素材に関係なく、切削箇所は洗面ボウルのみであるため、一般木工用工具、例えば超鋼刃のトリマービットが使用でき、さらに乾式加工であるため、手間がかからず作業も楽に行える。また、天板素材が異なっても、加工工具と加工方法が全く同じになり、多品種の生産に適することから生産効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の洗面ボウル付きカウンターの製造方法を示す断面図。
【
図4】
図1中の(d),実施例1の洗面ボウル付きカウンターの要部拡大断面図。
【
図5】実施例2の洗面ボウル付きカウンターの要部拡大断面図。
【
図7】実施例3の洗面ボウル付きカウンターの要部拡大断面図。
【
図9】従来の洗面ボウルの取り付け方法を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は洗面ボウル付きカウンターの製造方法を示す断面図であり、先ず、天板(10)を用意して洗面ボウル(20)の内寸法より大きい寸法の開口部(30)を穿設する(
図1(a))。
【0014】
尚、開口部(30)は事前に傾斜面を有するように加工されていれば、洗面ボウルの取り付け時に専用刃物に取り替えて切削する手間も省け、開口部の形状が異なりデザインのバリエーションが増える。
【0015】
本発明に係わる天板の素材として、アクリル人工大理石、人造大理石(エンジニアードストーン)、天然石、セラミックタイル、エポキシ樹脂板等が挙げられ、洗面台や台所、机、テーブル等の天板としての耐久性、耐汚染性、耐熱性、耐水性を備えていれば特に限定はされない。
【0016】
洗面ボウルの素材としてアクリル人工大理石等の木工用切削工具、例えば超鋼刃のトリマービット等で加工できる素材であれば時に限定されない。
【0017】
次いで、洗面ボウル(20)のフランジ(21)部分の一部が天板(10)の開口部(30)の内側にはみ出るように天板(10)と接合する(
図1(b))。特に、
図2に示すようにフランジ(21)の巾(T)と、はみ出る巾(t)とは数1が成立するように開口部(30)を穿設し、洗面ボウル(20)を選択すれば、天板(10)との接合面積が確保でき、水が漏れるという不具合が生じにくく、水や汚れが溜まりにくい。
【数1】
【0018】
接合には接着剤を用いることができ、接着剤としては、水性ビニルウレタン系の接着剤、ウレタン系の接着剤、エポキシ系の接着剤、アクリル系の接着剤、エポキシアクリレート系の接着剤、酢酸ビニ系の接着剤、シリコーン系の接着剤、合成ゴム系の接着剤などが挙げられ、特に制約はない。
【0019】
次いで、木口面(11)とフランジ(21)をシームレスにするため洗面ボウル(20)の上部(U)を切削して直線部(22)を形成する(
図1(c))。
【0020】
この際、
図3に示すように、天板の厚みをM、直線部(22)の天板と前記洗面ボウルとの接合部(J)からの垂直距離をmとした時、数2が成立するように天板を選択し、洗面ボウルを切削すれば、切削量が少なく、切削作業の負荷が小さく、加工工具も長持ちして好ましい。
【数2】
数2を満たさない条件では洗面ボウルの内側上部(U)部分の切削量が増え、切削作業の負荷が大きく、加工工具の寿命が短くなりやすい。
【0021】
切削する道具としては、サンダー、トリマー、ルーター、グラインダーなどが挙げられ、切削部分(U)の形状や切削量に応じて適宜選択する。
【0022】
洗面ボウルの内側の上部(U)に直線部(22)を形成した後、直線部(22)から洗面ボウルの中央部にかけて、滑らかに傾斜した曲面(23)にする為に研磨して、仕上げ、接合部(J)をシームレス接合部(S)にする(
図1(d))。
図1(d)の要部拡大断面図を
図4に示す。Wは曲面の箇所であり、曲面であれば水仕舞い、水垢や汚れが滞留、衛生面、手入れなどに支障はない。
【0023】
仕上げは、トリマーやサンドペーパー、スチールたわし、研磨粒子付きスポンジ、コンパウンドワックス等の単独若しくは組み合わせて行い、研磨し、切削加工によって生じるナイフマークや地肌の荒れなどを修正し、表面が滑らかで美観を呈する面に仕上げる。
【0024】
上記の製造方法によって得られた洗面ボウル付きカウンターの構造を
図4に基づいて述べると、洗面ボウル(20)は天板(10)に接着剤を介して接合され、洗面ボウル(20)のフランジ(21)と天板(10)の木口面(11)とはシームレスに接合され、シームレス接合部(S)を有している。
【0025】
更に、シームレス接合部(S)から洗面ボウル(20)の上部(U)にかけては直線部(22)を有し、直線部(22)から下方にかけては滑らかに傾斜した曲面(23)を有している。特に直線部(22)は木口面(11)から変曲点がなく一連に続く平面であれば水仕舞いが良い上、見栄えも良く好ましい。
【0026】
図4は木口面が垂直な場合な例であるが、水仕舞いを考慮すれば
図5に示すように木口面の角度θ
1が垂直方向(垂直を0°とする。)に対して下記数3が成り立つような範囲で傾斜していても良い。
【数3】
【実施例1】
【0027】
天板
人造大理石(FIORESTONE、登録商標)を用いた厚み(M)が12mmの天板を用意し、直径が400mmの開口部を穿設した。
【0028】
洗面ボウル
内径が390mm、フランジの巾Tが10mmのアクリル系洗面ボウルを用意した。
次いで、フランジの巾(T)が10mmとなるように洗面ボウルをアクリル系の接着剤を用いて天板に接合した。(フランジのはみ出し部(t)は(400-390)/2=5mmである。)
【0029】
次いで、洗面ボウルの内面の上部(U)に超鋼刃を装着した電動トリマーを用いて、天板と洗面ボウルとの接合部からの垂直距離mが3mmとなるように切削して直線部(22)を形成した。
【0030】
次いで、下方に向けて滑らかなS字曲面を形成する為、サンドペーパーを装着した電動サンダー研磨し、耐水サンドペーパーを用いて、
図4に示す洗面ボウル付きカウンター(50)を得た。Wは10mmである。
【実施例2】
【0031】
実施例1において、
図5に示すように木口面の上部が45°に傾斜している天板を用いた以外は実施例1と同様に実施して洗面ボウル付きカウンター(51)を得た。m、Wは実施例1と同じである。この洗面ボウル付きカウンターは木口面の上部が傾斜しているため実施例1の木口面が垂直な場合に比べて角張っていない為、より怪我をしにくい。
【実施例3】
【0032】
実施例1において、
図7に示すように天板の木口面が25°に傾斜した平面で、この平面に変曲点がなく一連に続くように洗面ボウルの上部(U)も25°に傾斜した平面に切削して直線部(22)を形成した(m=10mm)以外は同様に実施して洗面ボウル付きカウンター(52)を得た。この洗面ボウル付きカウンター(52)は、
図8に示すように傾斜した直線部(22)から洗面ボウルの下方に向かっては滑らかな凸曲面(28)を有し、水仕舞いが良く、水垢や汚れが滞留しないものとなっている。この洗面ボウル付きカウンターは木口面が傾斜し、洗面ボウルの上部も傾斜している意匠である。実施例1や施例2の洗面ボウル付きカウンターに比べ、同じ加工方法でありながら開口部の形状が異なりデザインのバリエーションが増える。
【符号の説明】
【0033】
10 天板
11 木口面
20 洗面ボウル
21 フランジ
22 直線部
23 滑らかなS字曲面
28 滑らかな凸曲面
30 開口部
50 洗面ボウル付きカウンター
51 洗面ボウル付きカウンター
52 洗面ボウル付きカウンター
10´ 天板
20´ 洗面ボウル
21´ フランジ
M 木口面
m 天板と洗面ボウルとの接合部からの距離
J 接合部
S シームレス接合部
t フランジのはみ出し部
T フランジの巾
U 洗面ボウルの上部
W 滑らかな曲面の部分