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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】近接検出装置及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230911BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/042 470
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020035466
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021140286
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194767(JP,A)
【文献】特開2019-168863(JP,A)
【文献】特開2019-074465(JP,A)
【文献】特開2010-237766(JP,A)
【文献】特開2018-173907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312956(US,A1)
【文献】近接覚センサを搭載したマニピュレータの遠隔操作方式の研究-近接覚センサ出力に基づく電気刺激方式による触覚呈示手法の検証- A Research of Teleoperation System for Manipulator Mounted Proximity Sensors-Verification of Electrotactile Stimulation Method based on Proximity Sensor Outputs-,ロボティクスメカトロニクス講演会2016講演会論文集,一般社団法人日本機械学会,2016年06月08日,2421~2424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置の入力装置として利用される、前記データ処理装置のディスプレイの表示面へのユーザの手の接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に配置された前記表示面の前方を通る赤外光を出射する赤外光源と、前記表示面の外側に配置された前記赤外光の反射光を検出する光検出器とを用いて、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した左右方向の位置を検出する接近検出手段と、
前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していないときに非検出を前記データ処理装置に出力し、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出しているときに前記接近検出手段が検出した前記左右方向の位置を前記データ処理装置に出力する通知手段とを有し、
左方向と右方向とのうちの一つの方向を第1方向として、前記通知手段は、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していることを検出している期間中における、当該接近検出手段が検出した位置の第1方向への移動量が所定のしきい値を超えた後に減少したときに、非検出を前記データ処理装置に出力することを特徴とする近接検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の近接検出装置であって、
前記接近検出手段は、前記ディスプレイの表示面の下方に左右方向に並べて配置した複数の前記赤外光源と、前記ディスプレイの表示面の下方に左右方向に並べて配置した複数の前記光検出器とを備え、前記複数の赤外光源を順番に点灯し、各赤外光源が点灯しているときに前記各光検出器が検出した前記反射光より、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した左右方向の位置を検出することを特徴とする近接検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の近接検出装置と、前記データ処理装置とを備えた情報処理システムであって、
前記データ処理装置は、前記近接検出装置においてユーザの手の接近の検出が開始されたときに前記近接検出装置から出力された前記左右方向の位置を開始位置とし、前記近接検出装置から非検出が出力される直前に前記近接検出装置から出力された前記左右方向の位置を終了位置として、前記開始位置から前記終了位置までの前記第1方向の移動量が前記しきい値を超えている場合に、所定のユーザ操作の受け付けを行うユーザ操作受付手段を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
データ処理装置の入力装置として利用される、前記データ処理装置のディスプレイの表示面へのユーザの手の接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に配置された前記表示面の前方を通る赤外光を出射する赤外光源と、前記表示面の外側に配置された前記赤外光の反射光を検出する光検出器とを用いて、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した上下方向の位置を検出する接近検出手段と、
前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していないときに非検出を前記データ処理装置に出力し、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出しているときに前記接近検出手段が検出した前記上下方向の位置を前記データ処理装置に出力する通知手段とを有し、
上方向を第1方向として、前記通知手段は、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していることを検出している期間中における、当該接近検出手段が検出した位置の第1方向への移動量が所定のしきい値を超えた後に減少したときに、非検出を前記データ処理装置に出力することを特徴とする近接検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の近接検出装置と、前記データ処理装置とを備えた情報処理システムであって、
前記データ処理装置は、前記近接検出装置においてユーザの手の接近の検出が開始されたときに前記近接検出装置から出力された前記上下方向の位置を開始位置とし、前記近接検出装置から非検出が出力される直前に前記近接検出装置から出力された前記上下方向の位置を終了位置として、前記開始位置から前記終了位置までの前記第1方向の移動量が前記しきい値を超えている場合に、所定のユーザ操作の受け付けを行うユーザ操作受付手段を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項6】
請求項3または5記載の情報処理システムであって、
当該情報処理システムは、自動車に搭載されており、
前記データ処理装置のディスプレイは、前記自動車の運転席と助手席の間に配置されていることを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術としては、ディスプレイの表示面の下辺の下方に左右に並べて配置した複数の赤外線LEDからディスプレイの表示面の前方に赤外光を照射し、フォトダイオードで、ユーザの手による赤外光の反射光を検出することにより、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検知し、ディスプレイに対する操作として受け付ける技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、この技術では、ディスプレイは、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に配置されており、主として運転者であるユーザのディスプレイに対する操作を受け付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-74465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイとして、上述した運転席と助手席の間に配置されたディスプレイのようにユーザの正面に配置されていないディスプレイを用いる場合、ユーザの手首や腕による赤外光の反射のために正しくディスプレイに対する操作を受け付けられないことがある。
【0006】
すなわち、たとえば、ディスプレイに接近させた手を左から右に所定のしきい値より大きく移動する動作を、ディスプレイに対する操作として受け付ける場合、操作するユーザがディスプレイの左側に着席したユーザであるときには、図7aのように、ユーザが左から右に手を移動していくと右に進むに従ってユーザの手や腕の傾きが大きくなる。そして、ディスプレイより右側にユーザの手が移動しているにも関わらず、ユーザの手首や腕で反射した反射光によってディスプレイの右端より左側の位置がユーザの手が接近している位置として誤検出されてしまうことがある。
【0007】
図7bは、ディスプレイの右方向を正のx方向、ディスプレイの左端のx座標を0、右端のx座標をLとして、図7aの左から右への手の移動に対して検出される位置の推移を表したものである。この図では、図7aの移動に対して、手の接近の検出が開始されたディスプレイの左端の位置Sからディスプレイの右端近くの位置Pに移動する位置の推移の検出に引き続いて、手の検出が終了した位置Eまで手が左側に戻っていく位置の推移が誤検出されている。
【0008】
次に、図7bのように検出された位置の推移に対して、手の接近の検出が開始された位置Sから手の検出が終了した位置Eまでの移動量を、手の移動量として算出すると、図7cに示す移動量Δxが算出される。
【0009】
そして、この移動量Δxが所定量Thと比較され、移動量Δxがしきい値より大きい場合に、ユーザが行った手の移動がディスプレイに対する操作として受け付けられることとなるが、図7cに示す移動量Δxは、図7bに示すPからEの間の左側に戻っていく位置の推移の誤検出のため、ユーザが実際に行った手の移動の移動量より減少しており、この減少のために、移動量Δxがしきい値を超えずにユーザが行った手の移動がディスプレイに対する操作として受け付けられないことが生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ディスプレイに接近させた手を一方向に所定の距離以上移動する動作を、ディスプレイに対する操作として受け付ける場合に、手をディスプレイ外に移動した後に発生したユーザの手首や腕による反射による位置の誤検出による操作の受け付け漏れを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題達成のために、本発明は、データ処理装置の入力装置として利用される、前記データ処理装置のディスプレイの表示面へのユーザの手の接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に配置された前記表示面の前方を通る赤外光を出射する赤外光源と、前記表示面の外側に配置された前記赤外光の反射光を検出する光検出器とを用いて、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した左右方向の位置を検出する接近検出手段と、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していないときに非検出を前記データ処理装置に出力し、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出しているときに前記接近検出手段が検出した前記左右方向の位置を前記データ処理装置に出力する通知手段とを設けたものである。ここで、左方向と右方向とのうちの一つの方向を第1方向として、前記通知手段は、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していることを検出している期間中における、当該接近検出手段が検出した位置の第1方向への移動量が所定のしきい値を超えた後に減少したときに、非検出を前記データ処理装置に出力する。
【0012】
ここで、このような近接検出装置は、前記接近検出手段を、前記ディスプレイの表示面の下方に左右方向に並べて配置した複数の前記赤外光源と、前記ディスプレイの表示面の下方に左右方向に並べて配置した複数の前記光検出器とを備え、前記複数の赤外光源を順番に点灯し、各赤外光源が点灯しているときに前記各光検出器が検出した前記反射光より、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した左右方向の位置を検出するものとしてもよい。
【0013】
このような近接検出装置によれば、第1方向への手の移動量がしきい値を超えた後に減少する場合に、減少の開始時に非検出をデータ処理装置に出力することにより、移動量が減少を開始する直前の位置を移動の終了位置としてデータ処理装置に認識させることができる。
【0014】
したがって、手を第1方向にしきい値超移動してディスプレイ外に移動した後に発生したユーザの手首や腕による反射による位置の誤検出によって第1方向と逆方向への手の位置の戻りが発生した場合にも、データ処理装置に、第1方向へのしきい値以上の移動に対応するユーザ操作を受け付けさせることができ、当該ユーザ操作の受け付け漏れを抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、併せて、以上の近接検出装置と、前記データ処理装置とを備えた情報処理システムも提供する、ここで、前記データ処理装置は、前記近接検出装置においてユーザの手の接近の検出が開始されたときに前記近接検出装置から出力された前記左右方向の位置を開始位置とし、前記近接検出装置から非検出が出力される直前に前記近接検出装置から出力された前記左右方向の位置を終了位置として、前記開始位置から前記終了位置までの前記第1方向の移動量が前記しきい値を超えている場合に、所定のユーザ操作の受け付けを行うユーザ操作受付手段を備えている。
【0016】
また、本発明は、前記課題達成のために、データ処理装置の入力装置として利用される、前記データ処理装置のディスプレイの表示面へのユーザの手の接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に配置された前記表示面の前方を通る赤外光を出射する赤外光源と、前記表示面の外側に配置された前記赤外光の反射光を検出する光検出器とを用いて、前記表示面へのユーザの手の接近の有無と、手が接近した上下方向の位置を検出する接近検出手段と、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していないときに非検出を前記データ処理装置に出力し、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出しているときに前記接近検出手段が検出した前記上下方向の位置を前記データ処理装置に出力する通知手段とを備えたものである。ここで、上方向を第1方向として、前記通知手段は、前記接近検出手段がユーザの手の接近を検出していることを検出している期間中における、当該接近検出手段が検出した位置の第1方向への移動量が所定のしきい値を超えた後に減少したときに、非検出を前記データ処理装置に出力する。
【0017】
このような、近接検出装置によれば、左方向もしくは右方向を第1方向とする上述した近接検出装置と同様に、上方向である第1方向へのしきい値以上の移動に対応するユーザ操作の受け付け漏れを抑制することができる。
【0018】
また、併せて本発明は、このような近接検出装置と、前記データ処理装置とを備えた情報処理システムを提供する。ここで、前記データ処理装置は、前記近接検出装置においてユーザの手の接近の検出が開始されたときに前記近接検出装置から出力された前記上下方向の位置を開始位置とし、前記近接検出装置から非検出が出力される直前に前記近接検出装置から出力された前記上下方向の位置を終了位置として、前記開始位置から前記終了位置までの前記第1方向の移動量が前記しきい値を超えている場合に、所定のユーザ操作の受け付けを行うユーザ操作受付手段を備えている。
【0019】
なお、以上の情報処理システムは、自動車に搭載されるものであってよく、前記データ処理装置のディスプレイは、前記自動車の運転席と助手席の間に配置されているものであってよい。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ディスプレイに接近させた手を一方向に所定の距離以上移動する動作を、ディスプレイに対する操作として受け付ける場合に、手をディスプレイ外に移動した後に発生したユーザの手首や腕による反射による位置の誤検出による操作の受け付け漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るディスプレイの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る近接検出センサの配置を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る通知処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る通知処理の処理例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る近接検出センサの他の配置を示す図である。
図7】本発明の課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す。
情報処理システムは自動車に搭載されるシステムであり、カーナビゲーションアプリケーションやメディアプレイヤアプリケーション等の各種アプリケーションを実行するデータ処理装置1、データ処理装置1が映像表示に用いるディスプレイ2、近接検出装置3、データ処理装置1が利用する、その他の周辺装置4を備えている。
【0023】
ディスプレイ2は、図2に示すように、タッチパネル付のディスプレイ2は近接検出装置3と一体化されたディスプレイユニット10の形態で、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に表示面を後方に向けて配置される。
ここで、ディスプレイ2は、データ処理装置1が座標入力に用いるタッチパネルを表示面上に備えたタッチパネル付きディスプレイ2であってもよい。
なお、図示した例では、自動車は左ハンドルの自動車であり、情報処理システムの主たるユーザである運転者は、ディスプレイ2の左側からディスプレイ2に対する操作を行う。
【0024】
図1に戻り、近接検出装置3は、近接検出センサ31と近接検出コントローラ32を備えている。
近接検出センサ31は、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5の5つの赤外線LEDと、PD1とPD2の、赤外光を検出する2つのフォトダイードを備えている。
【0025】
また、近接検出コントローラ32は、LED1、LED2、LED3、LED4を駆動して発光させる駆動部321、PD1とPD2が出力する電流信号をPD1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号に変換し出力する検出部322、検出制御部323とを備えている。
【0026】
次に、図3a、bに示すように、ディスプレイ2に対して、左右方向、上下方向、前後方向を定めるものとして、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5は、当該順序で左から右に向かって、ディスプレイ2の下辺の少し下の位置に配置されている。ただし、前方向はディスプレイ2の表示方向である。
【0027】
また、PD1は、LED2とLED3の間の位置に配置され、入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し、PD2は、LED3とLED4の間の位置に配置され、それぞれ入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し出力する。
【0028】
図3a、b中の矢印は、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5の指向角の中心軸を表しており、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5は、ディスプレイ2の前方上方に向けて斜めに赤外光を照射する。
【0029】
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、駆動部321と検出部322の動作を制御すると共に検出部322が出力する強度信号が表す赤外光の強度より、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近の有無と接近した位置を検出する検出処理を繰り返し行う。
【0030】
この検出処理において、検出制御部323は、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5を順次一つずつ点灯し、PD1、PD2の出力からPD1、PD2の位置に入射した赤外光の反射光の強度を検出し、検出したPD1、PD2の位置の反射光の強度とから、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近の有無を検出すると共に、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5の位置と、検出したPD1、PD2の位置の反射光の強度との関係から、ディスプレイ2の表示面に接近しているユーザの手の左右方向の位置を算出する。
【0031】
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323が、検出処理で検出した内容をデータ処理装置1に通知するために行う通知処理について説明する。
図4に、この通知処理の手順を示す。
図示するように、検出制御部323は、まず、検出処理において、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近が検出されているかどうかを調べ(ステップ402)、検出されていなければ、非検出をデータ処理装置1に通知し(ステップ424)、ステップ402の処理に戻る。
【0032】
一方、検出処理において接近が検出されている場合には(ステップ402)、検出処理で算出されたディスプレイ2の表示面に接近しているユーザの手の左右方向の位置を現在位置として取得し(ステップ404)、取得した現在位置を開始位置として記憶する(ステップ406)、そして、データ処理装置1に現在位置を通知する(ステップ408)。
【0033】
次に、検出制御部323は、再び、検出処理において、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近が検出されているかどうかを調べ(ステップ410)、検出されていなければ、非検出をデータ処理装置1に通知し(ステップ424)、ステップ402の処理に戻る。
【0034】
一方、検出処理において接近が検出されている場合には(ステップ410)、検出処理で算出されたディスプレイ2の表示面に接近しているユーザの手の左右方向の位置を現在位置として取得し(ステップ412)、記憶されている開始位置から取得した現在位置までの距離を移動量として算出する(ステップ414)。
【0035】
そして、移動量が所定のしきい値Thを超えているかどうかを調べる(ステップ416)。ここで、しきい値Thは、たとえば、ディスプレイ2の横幅Lの70%の値0.7Lとする。
【0036】
そして、移動量がしきい値Thを超えていなければ(ステップ416)、ステップ412で取得した現在位置を前回位置として記憶し(ステップ418)、データ処理装置1にステップ412で取得した現在位置を通知し(ステップ420)、ステップ410からの処理に戻る。
【0037】
一方、ステップ416で、移動量がしきい値Thを超えていると判定された場合には、位置戻りが発生しているかどうかを調べる(ステップ422)。
ここで、ステップ422では、前回位置が記憶されており、ステップ412で取得した現在位置が前回位置よりも開始位置に近い場合に位置戻りが発生していると判定し、他の場合に位置戻りが発生していないと判定する。なお、前回位置が記憶されていない場合も、位置戻りが発生していないと判定する。
【0038】
そして、位置戻りが発生していなければ(ステップ422)、ステップ412で取得した現在位置を前回位置として記憶し(ステップ418)、データ処理装置1にステップ412で取得した現在位置を通知し(ステップ420)、ステップ410からの処理に戻る。
【0039】
一方、位置戻りが発生している場合には、非検出をデータ処理装置1に通知し(ステップ424)、ステップ402からの処理に戻る。
以上、検出制御部323が行う通知処理について説明した。
さて、データ処理装置1は、このような通知処理による検出制御部323からの通知に基づいてユーザの操作を受け付ける。
すなわち、データ処理装置1は、手の接近の検出が開始されたときの現在位置から、手の接近の非検出が通知される直前に通知された現在位置までの右方向への移動量が、上述したしきい値Thを超えている場合に、ユーザの右移動ジェスチャ操作を受け付けて、右移動ジェスチャ操作に予め対応づけられている所定の処理を行う。
【0040】
ここで、手の接近の検出が開始されたときの現在位置とは、検出制御部323からの接近の非検出が通知された後に最初に通知された現在位置、または、非検出が通知されなくなったときの現在位置である。
【0041】
なお、手の接近の検出が開始されたときの現在位置を、検出制御部323からの接近の非検出が通知された後に最初に通知された現在位置とする場合には、起動時には、最初に通知された現在位置を、手の接近の検出が開始されたときの現在位置とする。
また、データ処理装置1は、右移動ジェスチャ操作に対応づけられている所定の処理としては、たとえば、アクティブアプリケーションの切り替えや、ディスプレイ2に表示する画面の切り替えなどを行う。
【0042】
図5に、上述した検出制御部323の通知処理の処理例を示す。
いま、ユーザが、ディスプレイ2の左側に着席した運転者であるユーザが、図5aに示すように、右移動ジェスチャ操作を行うことを意図して、ディスプレイ2に接近させた手を、ディスプレイ2の左端の位置からディスプレイ2よりも右側の位置までの右方向に移動したものとする。
【0043】
そして、ディスプレイ2より右側にユーザの手が移動した後に、ユーザの手首や腕で反射した反射光によってディスプレイ2の右端より左側の位置が、ユーザの手が接近している位置として誤検出されたものとする。
【0044】
この場合、検出制御部323の検出処理によって、ディスプレイ2の右方向を正のx方向、ディスプレイ2の左端のx座標を0、右端のx座標をLとして、図5aの左から右への手の移動に対して、図5bに示すように、ディスプレイ2の左端の位置からディスプレイ2の右端近くの位置に移動し、その後、手が左側に戻っていく位置の推移が検出される。
【0045】
また、図5bに示す位置の推移に対して検出制御部323の通知処理のステップ414算出される移動量は図5cに示すように、右方向への移動量dxが漸増した後に、減少していくものとなる。
【0046】
ここで、通知処理のステップ416で用いるしきい値Thが、ディスプレイ2の横幅Lの70%の値0.7Lであるものとすると、ユーザは右移動ジェスチャ操作を行うことを意図して、図5aのように手を左から右へしきい値Thの0.7L以上大きく動かすので、図5cに示すように、右方向への移動量dxの最大値、すなわわち、減少を始める直前の移動量dxはしきい値Thの0.7Lを超える。そして、図5bの移動量dxがしきい値Th0.7Lを超えた後の減少を始める時点Pdで、通知処理のステップ422で位置戻りの発生が検出される
この場合、接近の検出の開始点Sの時点から、位置戻りの発生が検出されるPdまでは、検出処理で検出したユーザの手の左右方向の位置である現在位置が検出制御部323からデータ処理装置1に通知され、位置戻りの発生が検出されるPdの時点で、非検出が検出制御部323からデータ処理装置1に通知される。
【0047】
結果、データ処理装置1では、図5dに示すように、手の接近の検出が開始されたときの現在位置xSから、手の接近の非検出が通知されるPdの時点の直前に通知された現在位置xPd-1までの右方向への移動量が移動量Δxとして算出され、この移動量Δxは、移動量dxが減少を始める直前の移動量dxとなるので、しきい値Thの0.7Lを超え、データ処理装置1おいて、ユーザの右移動ジェスチャ操作が受け付けられる。
【0048】
よって、本実施形態によれば、ディスプレイ2に接近させた手を右方向にしきい値Th移動する動作を、ユーザの右移動ジェスチャ操作として受け付ける場合に、手をディスプレイ2外に移動した後に発生したユーザの手首や腕による反射による位置の誤検出によるユーザの右移動ジェスチャ操作の受け付け漏れを抑制することができる。
【0049】
なお、検出制御部323の通知処理では、位置戻りの発生が検出されたPdの時点で非検出をデータ処理装置1に通知した後は、検出処理で検出した現在位置のデータ処理装置1への通知を再開する。そして、データ処理装置1において、図5dに示す、Pdの時点で非検出を通知された後に最初に通知された現在位置xPd+1から次の非検出通知直前の現在位置xEまでの移動量に応じて、ユーザ操作の受け付けが行われることとなるが、ディスプレイ2より右側にユーザの手が移動した後にユーザの手首や腕で反射した反射光によって誤検出される位置の変化は小さいので、手の小さい移動に対して受け付けるユーザ操作を設けないことにより、誤検出された位置の移動に対してユーザ操作を受け付けてしまうことを抑止できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態は、ディスプレイ2に接近させた手を右方向にしきい値Th超移動する動作を、ユーザの右移動ジェスチャ操作として受け付ける場合について説明したが、本実施形態は、データ処理装置1において、ディスプレイ2に接近させた手を左方向にしきい値Th超移動する動作を、ユーザの左移動ジェスチャ操作として受け付ける場合にも、以上の説明の左と右を置換することにより同様に適用することができる。
【0051】
また、本実施形態は、以上の説明の左を下に右を上に置換して適用してもよい。すなわち、この場合には、図6a、bに示すように、赤外線LEDとフォトダイードをディスプレイ2の左辺の外側に上下に並べて配置して、検出制御部323の検出処理によって、接近した手の上下方向の位置を検出し、データ処理装置1において、ディスプレイ2に接近させた手を上方向にしきい値Th超移動する動作を、ユーザの上移動ジェスチャ操作として受け付けて所定の処理を行う。ただし、赤外線LEDとフォトダイードは、ディスプレイ2の右辺の外側に上下に並べて配置するようにしてもよい。
【0052】
ここで、ユーザがディスプレイ2に接近させた手を上方向に移動する上移動ジェスチャ操作を行った場合、図6cに示すように、ディスプレイ2より上側にユーザの手が移動しているにも関わらず、ユーザの手首や腕で反射した反射光によってディスプレイ2の上端より下側の位置がユーザの手が接近している位置として誤検出され、上述した右移動ジェスチャ操作と同様に、検出される手の位置がディスプレイ2の下側の位置からディスプレイ2の上端近くの位置に移動した後下側に戻っていく位置戻りが発生することがある。
【0053】
そして、本実施形態を適用することにより、このような位置戻りが発生した場合にも、通知処理により、検出された手の位置の上方への移動量がしきい値を超えた後に減少を開始する時点で非検出がデータ処理装置に通知されるので、上移動ジェスチャ操作の受け付け漏れを抑制することができる。
また、以上では、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置にディスプレイ2を設けた情報処理システムへの適用を例にとり説明したが、本実施形態は、任意の情報処理システムに同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…データ処理装置、2…ディスプレイ、3…近接検出装置、4…周辺装置、10…ディスプレイユニット、31…近接検出センサ、32…近接検出コントローラ、321…駆動部、322…検出部、323…検出制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7