(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20230911BHJP
A01F 12/60 20060101ALI20230911BHJP
A01D 41/02 20060101ALI20230911BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A01D41/127 130
A01D41/127 100
A01F12/60
A01D41/02 Z
A01D69/00 301
(21)【出願番号】P 2020042329
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 知慶
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-246845(JP,A)
【文献】特開2014-212717(JP,A)
【文献】特開2001-169656(JP,A)
【文献】特開2019-097502(JP,A)
【文献】特開2000-188941(JP,A)
【文献】特開2019-170278(JP,A)
【文献】米国特許第05092819(US,A)
【文献】米国特許第04401909(US,A)
【文献】米国特許第05712782(US,A)
【文献】特開2016-154493(JP,A)
【文献】特開2017-060450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 47/00
A01F 12/46 - 12/60
A01D 67/00 - 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部によって刈取った穀稈を脱穀部で脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置で移送してグレンタンクに貯留し、また、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガで機外に排出するコンバインに、収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を操縦部のモニタに表示する際に、前記測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品をブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを、前記排出オーガの縦螺旋筒を中心に回動させるグレンタンクの平面視略矩形状に形成する壁の内、縦螺旋筒側に臨む後壁の外面に取付けて設けることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ブラケットをグレンタンクの側壁の端部と後壁の外方側の端部とを連結するボルトを用いて同箇所に取付けて、このブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを後壁の外方側上部寄りに設け、また、グレンタンクの後部から排出オーガの縦螺旋筒の側方側を覆う開閉自在なカバーで電装ユニットの外側方側を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記電装ユニットの電源線や信号線を縦螺旋筒の近傍に設けるモニタ側に接続するワイヤーハーネスにコネクタを介して着脱自在に接続し、前記グレンタンクを回動させる際にこのコネクタを取り外すことなく水分率や収量をモニタ側に伝達するように構成することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記穀粒の水分率を測定する水分センサユニットをグレンタンクの天井壁に取付けて、水分センサユニットの電源線や信号線をグレンタンクの後壁の外面に固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索することを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記穀粒の収量を測定する収量センサを揚穀装置に取付けて、収量センサの電源線や信号線を揚穀装置とグレンタンクの縦螺旋筒に亘って設ける連結フレームに固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を刈取って穀粒を収穫するコンバインに係り、詳しくは、コンバインに収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を操縦部のモニタに表示するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
刈取部によって刈取った稲や麦等の穀稈を脱穀部で脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置で移送してグレンタンクに貯留し、また、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガで機外に排出するコンバインは、収穫した穀粒の重量(収量)や穀粒の含水率(水分率)をその刈取作業中に知ることによって、例えば収穫した穀粒を乾燥機に張込みする際の最大穀物処理量に余裕があるか否かを見極めて作業を中断したり、乾燥機の乾燥速度を設定する際の情報として利用したい場合がある。
【0003】
そして、この場合、コンバインに水分センサや収量センサを用いて収穫した穀粒の水分率や或いは収量を測定する測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を運転室の表示装置に表示したり、印刷装置で印刷出力することが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、ロードセルによって計測された穀粒タンクに貯留された穀粒の重量、及び光学式穀粒評価装置によって穀粒の内部品質を評価された計測結果(水分等)を運転部に設けた表示装置に表示することが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-254725号公報
【文献】特開2006-81487号公報
【文献】特開2016-67217号公報
【文献】特開2016-77199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように 刈取部によって刈取った穀稈を脱穀部で脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置で移送してグレンタンクに貯留し、また、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガで機外に排出するコンバインに、収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を操縦部のモニタ(ディスプレイ)に表示すると、例えば収穫した穀粒の乾燥を行う際の情報等を刈取作業中に得られるので有用である。
【0006】
しかし、このような情報を得るために収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段や、この測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品をコンバインに備えると高価になって、これらの測定装置を格別必要とせず従来通りの安価なコンバインを望むユーザーにあっては不要なものとなる。そこで、これらの測定装置をキットとして必要とするユーザーに提供してコンバインに後付けしたり、或いはこれらの測定装置をコンバインを出荷する前に組み込んで提供することが望ましい。
【0007】
そこで、前述のように測定装置をコンバインに後付けしたり、コンバインを出荷する前に組み込むことになるが、この測定装置は少なからぬ重量と体積を備えるからコンバインに備える各部に悪影響を及ぼすこと無く、また、測定装置のメンテナンスも考えてこれを適切な場所に設置する必要がある。しかし、既に知られている特許文献1~3では、個々の水分率や収量を測定する測定手段(センサ)の設置位置等については説明されているが、測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品の設置場所等については説明されていない。
【0008】
なお唯一、特許文献4において示される光学式穀粒評価装置では、穀粒タンクにおける前側壁の運転部側にそのサンプリング部とは別に光学式穀粒評価装置の制御ユニット等を設けることが説明されているが、他方のロードセルの測定結果に基づいて穀粒タンクに貯留させた穀粒の重量を計測するために必要となると思われる制御ユニットについては説明がなく、また、ロードセルが表示装置に直接に接続されているから、表示装置側に係る制御ユニットが設けてあることが想定される。
【0009】
従って、特許文献4においては、測定手段と測定手段を制御する電子制御ユニット等を含む電装品を1組に纏めて穀粒タンクの壁に取付けて設けたり、水分率や収量を計測する測定手段とこれら測定手段を制御する電子制御ユニット等を含む電装品を2組に分けて別々に設けることが示され、例えば、単一の電子制御ユニットによって夫々の測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算して、この電子制御ユニット等を含む電装品を纏めて測定手段とは別にコンバインの適所に設けるようなことは示されていない。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑み、水分率や或いは収量の測定装置をコンバインに後付けする際等に、水分率や収量の測定手段を制御する電子制御ユニットを含む電装品をコンバインに備える各部に悪影響を及ぼすこと無く、また、測定装置のメンテナンスも考えてこれを適切な場所に取付けて設けることができるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第1に、刈取部によって刈取った穀稈を脱穀部で脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置で移送してグレンタンクに貯留し、また、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガで機外に排出するコンバインに、収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を操縦部のモニタに表示する際に、前記測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品をブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを、前記排出オーガの縦螺旋筒を中心に回動させるグレンタンクの平面視略矩形状に形成する壁の内、縦螺旋筒側に臨む後壁の外面に取付けて設けることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第2に、前記ブラケットをグレンタンクの側壁の端部と後壁の外方側の端部とを連結するボルトを用いて同箇所に取付けて、このブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを後壁の外方側上部寄りに設け、また、グレンタンクの後部から排出オーガの縦螺旋筒の側方側を覆う開閉自在なカバーで電装ユニットの外側方側を覆うことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第3に、前記電装ユニットの電源線や信号線を縦螺旋筒の近傍に設けるモニタ側に接続するワイヤーハーネスにコネクタを介して着脱自在に接続し、前記グレンタンクを回動させる際にこのコネクタを取り外すことなく水分率や収量をモニタ側に伝達するように構成することを特徴とする。
【0014】
そして、本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第4に、前記穀粒の水分率を測定する水分センサユニットをグレンタンクの天井壁に取付けて、水分センサユニットの電源線や信号線をグレンタンクの後壁の外面に固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索することを特徴とする。
【0015】
そのうえ、本発明のコンバインは、上記課題を解決するため第5に、前記穀粒の収量を測定する収量センサを揚穀装置に取付けて、収量センサの電源線や信号線を揚穀装置とグレンタンクの縦螺旋筒に亘って設ける連結フレームに固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンバインによれば、刈取部によって刈取った穀稈を脱穀部で脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置で移送してグレンタンクに貯留し、また、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガで機外に排出するコンバインに、収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を設け、この測定手段から得られた水分率や収量を操縦部のモニタに表示する際に、前記測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品をブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを、前記排出オーガの縦螺旋筒を中心に回動させるグレンタンクの平面視略矩形状に形成する壁の内、縦螺旋筒側に臨む後壁の外面に取付けて設ける。
【0017】
そのため、収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段を、例えば収穫した穀粒を貯留するグレンタンクや揚穀装置に取付けて設け、また、測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品を電装ユニットとしてグレンタンクの後壁の外面にブラケットを介して纏めて取付けて設けると、水分率や或いは収量の測定装置をコンバインに一時に後付けして設けることができる。しかも、測定手段と電装ユニットを1組としてグレンタンクの1つの壁に取付けると重量が増して壁の強度が不足する虞があるが、これを分散して取付けることによって格別補強等を行わずに夫々を取付けて設けることができる。
【0018】
そして、この場合、排出オーガの縦螺旋筒とグレンタンクの後壁の間にはグレンタンクを縦螺旋筒を中心に回動させるために所定のスペースが存在し、この空きスペースを有効に活用して電装ユニットをグレンタンクの後壁の外面に機体の外側方から取付けて、グレンタンクや縦螺旋筒等の各部に悪影響を及ぼすことなく設けることができ、また、取付けた電装ユニットのメンテナンスも機体の外側方から容易に行うことができる。
【0019】
なお、グレンタンクを排出オーガの縦螺旋筒を中心に回動させて機体の外側方に回動させると、電装ユニットのメンテナンス等を機体の中央側から行うこともできる。また、例えば、収量の測定手段を揚穀装置に取付ける場合は、揚穀装置の機体外側方側が開放されるので測定手段を機体の中央側において取付けて設けることができ、さらに、穀粒の水分率の測定手段はグレンタンクの上方から取付けて設けることができ、全体に周囲の装置等に邪魔されずに簡単に後付けすることができる。
【0020】
また、前述の水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを、コンバインの各部を制御する既存の電子制御ユニットを用いて構成しようとすると、既存の電子制御ユニットに水分率や或いは収量の測定手段の信号を入力するアナログ入力ポートや、測定手段側の装置を作動させる電動モータ等のアクチュエータを駆動する出力ポート等が必要になると共に、プログラムの追加によって演算負荷等が増大して、既存の電子制御ユニットを能力のある新たなユニットに変更しなければならないといった虞がある。
【0021】
しかし、前述のように水分率や収量を演算してモニタに表示させる電子制御ユニットを含む電装品を電装ユニットとして新たに設けると、既存の電子制御ユニットは入出力ポート数等を何ら変更することなくコンバインの各部を最大限その能力を生かしてそのまま制御することができ、また、水分率や或いは収量の測定装置を制御する電子制御ユニットは、その制御を行うに足る能力を備えたものを用いてコストを下げ、少なくとも測定装置を取付けて設けない場合は、格別値上げの必要のない安価なコンバインを提供することができ、測定装置を後付けできるからといって値上げの必要はない。
【0022】
また、本発明のコンバインによれば、前記ブラケットをグレンタンクの側壁の端部と後壁の外方側の端部とを連結するボルトを用いて同箇所に取付けて、このブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを後壁の外方側上部寄りに設け、また、グレンタンクの後部から排出オーガの縦螺旋筒の側方側を覆う開閉自在なカバーで電装ユニットの外側方側を覆う。
【0023】
そのため、通常、グレンタンクの側壁の端部と後壁の外方側の端部とをボルトを用いて連結してグレンタンクの穀粒を貯留する収容空間を形成するが、水分率や或いは収量の電装ユニットをグレンタンクの後壁の外面に取付けて設ける際に、このボルトの一部を取り外して、ブラケットを強度を備えた同箇所に取り外したボルトを用いて取付け、このブラケットに纏めて取付ける電装ユニットを後壁の外方側上部寄りに新たなボルトを用いることなく強固に取付けて、電装品の嫌う振動を抑えて設けることができる。
【0024】
また、グレンタンクの後部から排出オーガの縦螺旋筒の側方側を覆うカバーを、グレンタンクの回動の際に縦螺旋筒等との当接防止のために開閉自在に設けるが、このカバーよって機体内方側に設ける電装ユニットの外側方側を覆うことができ、例えば立木の枝等が電装ユニットに当接して電装ユニットが損傷する等の不具合を未然に防止することができる。また、グレンタンクの後壁の外方側上部寄りに設ける電装ユニットのメンテナンスを行う場合には、カバーを開くと電装ユニットが目前に現れるのでメンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
さらに、本発明のコンバインによれば、前記電装ユニットの電源線や信号線を縦螺旋筒の近傍に設けるモニタ側に接続するワイヤーハーネスにコネクタを介して着脱自在に接続し、前記グレンタンクを回動させる際にこのコネクタを取り外すことなく水分率や収量をモニタ側に伝達するように構成する。つまり、電装ユニットは排出オーガの縦螺旋筒を中心に回動させるグレンタンクの平面視略矩形状に形成する壁の内、縦螺旋筒側に臨む後壁の外面に取付けて設けるから、例えば機体中央側の機器のメンテナンスのためにグレンタンクを回動させると電装ユニットもグレンタンクと共に回動する。
【0026】
しかし、この場合、モニタ側に接続するワイヤーハーネスに対してコネクタを介して接続する電装ユニットの電源線や信号線の端部は、グレンタンクを回動させる縦螺旋筒の近傍に設けるワイヤーハーネス側のコネクタを中心に回動しようとするから、電源線や信号線のワイヤーハーネスとの接続に必要とする長さは回動の前後に拘らずあまり変化することはなく、多少余裕をみて長くはするが極端に長さが足らなくなって外れたり切断してしまうといった不具合を生ずる虞はない。従って、メンテナンスのためにグレンタンクを回動させる度に、コネクタを取り外したり連結するといった煩わしい作業を無くすことができる。
【0027】
また、電装ユニットをグレンタンクの縦螺旋筒側に臨む後壁の外面に取付けて設ける際に、電装ユニットの電源線や信号線の端部を同箇所の近傍に設けるワイヤーハーネスにコネクタのオスメスを連結して接続すれば、電装ユニット側からモニタ側への信号伝達を即座に行うことができる。そのため、電装ユニットの取付けと同時に同箇所において電装ユニットとモニタ側との信号線や電源線の接続作業を能率的に迅速に完了させることができる。なお、ワイヤーハーネスに設ける電装ユニットとモニタ側を接続する信号線や電源線は、水分率や或いは収量の測定装置を後付けすることができるようにワイヤーハーネスに他の配線と共に用意しておくので、ワイヤーハーネスを改めて配策し直す必要はない。
【0028】
そして、本発明のコンバインによれば、前記穀粒の水分率を測定する水分センサユニットをグレンタンクの天井壁に取付けて、水分センサユニットの電源線や信号線をグレンタンクの後壁の外面に固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索する。そのため、水分率の測定手段を構成する水分センサユニットの取付作業を終えた後、水分センサユニットと電装ユニットを接続する電源線や信号線をグレンタンクの後壁の外面に固定具を用いて固定しながら配策することができ、グレンタンクの後壁の外方側において他の装置等に邪魔されることなく、両者の接続をグレンタンクの後壁を利用して確実に、また、迅速に接続作業を完了させることができる。
【0029】
そのうえ、本発明のコンバインによれば、前記穀粒の収量を測定する収量センサを揚穀装置に取付けて、収量センサの電源線や信号線を揚穀装置とグレンタンクの縦螺旋筒に亘って設ける連結フレームに固定具を用いて固定しながら電装ユニットに配索する。そのため、収量の測定手段を構成する収量センサの取付作業を、グレンタンクを機体の外側方に回動させた状態で終えた後、収量センサと電装ユニットを接続する電源線や信号線を揚穀装置とグレンタンクの縦螺旋筒に亘って設ける連結フレームに固定具を用いて固定しながら配策することができ、これらの配線がグレンタンクの回動によって損傷するといった不具合を防止することができる。
【0030】
なお、この場合、グレンタンクを回動させた後の機体の中央部においてグレンタンク等に邪魔されることなく、両者の接続を連結フレームを利用して確実に、また、迅速に接続作業を完了させることができる。さらに、収量センサと電装ユニットを接続する電源線や信号線は、揚穀装置に設ける収量センサから連結フレームを用いてグレンタンクを迂回して縦螺旋筒の近傍まで配策し、さらに、縦螺旋筒の近傍から電装ユニットに向けて配策するので、電装ユニットの電源線や信号線を縦螺旋筒の近傍に設けるモニタ側に接続するワイヤーハーネスにコネクタを介して着脱自在に接続する場合と同様に、グレンタンクの回動にあたって電源線や信号線の長さを外れや切断に備えて極端に長くする必要がなく、また、グレンタンクを回動させる度に接続を外したり連結するといった煩わしい作業を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】グレンタンクの前方側から見た斜視図である。
【
図4】グレンタンクの側方側から見た斜視図である。
【
図6】グレンタンクの天井壁の一部を示す斜視図である。
【
図7】水分センサユニットの取付けを説明する斜視図である。
【
図8】水分センサユニットの取付状態を示す斜視図である。
【
図10】揚穀装置に収量センサを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図11】揚穀装置に収量センサを取付けた穀粒の吐出側から見た斜視図である。
【
図12】ブラケットに電装品を纏めて取付けた状態を示す正面図である。
【
図13】グレンタンクの後壁を後方側から見た斜視図である。
【
図14】電装ユニットを後壁に取付けて設ける状態を説明する斜視図である。
【
図15】電装ユニットとワイヤーハーネスを接続する状態を示す斜視図である。
【
図16】水分センサユニットから電装ユニットに配線を接続する状態を示す斜視図である。
【
図17】連結フレームに収量センサに接続するコードを固定する状態を示す斜視図である。
【
図18】収量センサにコードを接続した状態を示す斜視図である。
【
図19】コンバインに計測装置を取付けた状態を示す斜視図である。
【
図20】コンバインに計測装置を取付けた状態を示す斜視図である。
【
図21】水分センサユニットの作動確認を行う際の状態を示す斜視図である。
【
図22】モニタの測定ボタンを押す前後の表示画面を示し、(a)は通常の表示画面、(b)は測定画面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すようにコンバイン1は、稲や麦等を刈取って穀粒を収穫する。そのため、コンバイン1は、左右のクローラ式走行装置2を下部に備えた機体フレーム(機体)3の右側前部に運転席4を備える操縦部5を設ける。また、機体フレーム3の左側前部から操縦部5の前方にかけて刈取部6を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。
【0033】
さらに、機体フレーム3の左側には脱穀部7を設けると共に、脱穀部7の右側にはグレンタンク8と排出オーガ9を設ける。そして、脱穀部7と排出オーガ9の後方にはディスク型カッター10を設ける。なお、操縦部5の後部寄り下方からグレンタンク8の前方にかけてエンジン等からなる原動部11をエンジンカバー12によって覆って設け、このエンジンは走行装置2を始めとしてコンバイン1の各部を駆動する動力源となる。
【0034】
そして、前述の刈取部6は、その前端下部に設けた分草体13とナローガイド14によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体13の間に入った刈取穀稈を引起装置15によって引起し、その後、掻込装置で掻込みながら穀稈の株元を刈刃装置16によって切断する。さらに、掻込装置によって後方に掻込んだ穀稈を、穀稈搬送装置17を構成する左右の掻込み搬送体及び穂先搬送体によって合流させ、また、合流させた穀稈を扱深搬送体18によって扱深さを調節しながら脱穀部7に搬送する。
【0035】
また、脱穀部7は、上方を覆うシリンダーカバー19の下方に略々箱状の機枠を備え、この機枠の上部に扱室を形成する。この扱室には刈取部6から搬送する穀稈を扱口に沿って挟持搬送する脱穀フイードチェン20及びシリンダカバー19に設ける挟持レールと、外周に多数植設された扱歯を備える第1扱胴と受網とを設け、脱穀フイードチェン20によって後方に搬送する穀稈の穂から穀粒を脱粒させる。
【0036】
なお、扱室内で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理室を、第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かい並列して設け、この処理室には第2扱胴と受網を設ける。さらに、第1及び第2扱胴の下方には、受網より漏下した穀粒を選別処理する揺動選別体、及び選別風を発生させる唐箕ファン等を備える選別室を設ける。
【0037】
そして、脱穀部7で脱粒させて選別した穀粒は、選別室に設ける1番螺旋によって揚穀装置21に向けて搬送し、揚穀装置21はその揚穀筒21a内に設ける揚穀螺旋軸21bの螺旋によって穀粒を上方に移送し、その終端部に設ける跳出板21cによって穀粒を吐出口21dからグレンタンク8内に放出する。また、グレンタンク8は穀粒を一時的に貯留し、満杯になると排出オーガ9を駆動してグレンタンク8内の穀粒をトラックの荷台に設置したコンテナ等に排出する。
【0038】
なお、脱穀部7の選別室に設ける2番螺旋は藁屑等が混じった2番物を2番還元装置を介して揺動選別体上に戻す。また、脱穀処理を完了した排稈は脱穀フイードチェン20の終端から排藁搬送装置によってディスク型カッター10に向けて搬送し、ディスク型カッター10は搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0039】
ここで、本発明の収穫した穀粒の水分率や或いは収量を測定して操縦部5に設けるモニタ(表示装置)22に水分率や収量を表示させる測定装置に関わるグレンタンク8と排出オーガ9等についてさらに詳細に説明する。先ず、グレンタンク8は
図3及び
図4に示すように、プレートを用いて形成する前壁23と後壁24と右側壁25と左側壁26によって構成する平面視略矩形状の上部側の貯留部8aと、この貯留部8aの下方にあって前壁27と後壁28と左右の傾斜底壁29、30によって構成する断面V字状の下部側の樋部8bを一体に連結し、また、貯留部8aの上部に天井壁31を設けて、その内部に穀粒を貯留するタンクに構成する。
【0040】
そして、排出オーガ9は
図5に示すように、グレンタンク8の樋部8bの下部に前後方向となる横螺旋軸32を横設し、この横螺旋軸32の前部側は前壁27に取付けるブラケット33にベアリングを介して軸支する。また、横螺旋軸32の前端には従動プーリ34を取付け、この従動プーリ34とエンジンによって駆動する駆動プーリ35とに亘って伝動ベルト36を巻き掛ける。
【0041】
さらに、ブラケット33にはテンションローラ37を備えるテンションアーム37aを回動自在に軸支し、このテンションアーム37aを電動モータとワイヤ38等を用いて作動させて、そのテンションローラ37が伝動ベルト36を緊張させて横螺旋軸32をエンジン動力によって駆動する入り状態と、伝動ベルト36を弛緩させてエンジンからの動力を断つ切り状態に切換え自在に設け、係るベルトテンションクラッチによって穀粒の排出クラッチ39を構成する。
【0042】
一方、横螺旋軸32の後部側は後壁28の外面に取付けて設けるケース40の内部に挿入し、このケース40の下部40aは機体フレーム3に設ける支持部に回動自在に支持させて設ける。また、ケース40の上部40bに上下方向となる第1の縦螺旋軸41を内装するパイプからなる第1の縦螺旋筒42の下部を回動自在に嵌合してこれを支持する。さらに、ケース40内にベアリングで支持する1対のヘベルギヤに横螺旋軸32の後端と第1の縦螺旋軸41の下端とを結合して、横螺旋軸32から第1の縦螺旋軸41を駆動するように構成する。
【0043】
従って、グレンタンク8に貯留する穀粒は、前述の排出クラッチ39が入りとなると横螺旋軸32に設ける螺旋によってケース40内に移送され、更にケース40内から第1の縦螺旋軸41に設ける螺旋によって第1の縦螺旋筒42の上方側に向けて移送される。また、第1の縦螺旋筒42の下部外周に多数のギヤ片を取付けて従動ギヤとなした回動リング43を取付けると共に、モータベース44を嵌めて設け、このモータベース44は機体フレーム3に立設するカッターステー45にブラケットを介して取付ける。
【0044】
そして、モータベース44には排出オーガ9を左右旋回させるギヤードモータからなる電動モータ46を取付け、この電動モータ46のピニオンギヤは第1の縦螺旋筒42の下部に設ける前述のギヤと噛み合い、電動モータ46の駆動によって第1の縦螺旋筒42を回転させることができる。また、第1の縦螺旋筒42の上下方向中間に2つのメタル47をホルダ48によって抱き合わせて設け、このホルダ48をブラケットを介してグレンタンク8の後壁24に取付け、グレンタンク8を下部のケース40と合わせて第1の縦螺旋筒42に回動自在に取付けて設ける。
【0045】
さらに、前述のメタル47と揚穀筒21aの上部寄りをグレンタンク8を避けるように屈曲させたパイプからなる連結フレーム49で連結する。従って、第1の縦螺旋筒42はモータベース44を介してカッターステー45に、また、連結フレーム49を介して揚穀筒21aに連結して、その上下方向の起立姿勢が保たれるように支えられる。また、第1の縦螺旋筒42の上部には相互に回動自在に連結する1対のエルボ状のギヤケース50、51の一方を取り付け、また、他方のギヤケース51に第3の縦螺旋筒53を折り畳み自在に設ける第2の縦螺旋筒52を取付ける。
【0046】
そして、1対のギヤケース50、51内に中継螺旋軸54をベアリングによって回転自在に軸支し、第2の縦螺旋筒52内と第3の縦螺旋筒53内に夫々第2の縦螺旋軸55と第3の縦螺旋軸56を設ける。また、第1の縦螺旋軸41の上端部と第2の縦螺旋軸55の端部を1対のギヤケース50、51に夫々ベアリングによって回転自在に軸支し、さらに、これらの軸端にベベルギヤを設けて、第1の縦螺旋軸41から中継螺旋軸54を介して第2の縦螺旋軸55及び第3の縦螺旋軸56を駆動するように構成する。
【0047】
従って、第1の縦螺旋軸41に設ける螺旋によって第1の縦螺旋筒42の上方側に向けて移送された穀粒は、中継螺旋軸54に設ける螺旋によって1対のギヤケース50、51内を通って第2の縦螺旋筒52内に導かれ、また、第2の縦螺旋軸55に設ける螺旋によって第3の縦螺旋筒53内に導かれ、更に第3の縦螺旋軸56の螺旋によって縦螺旋筒53の先端に設ける排出口57から機外に排出することができる。なお、ギヤケース50に回動自在に取付けたアーム58は第2の縦螺旋筒52に固定し、また、ギヤケース50とアーム58の先端寄りに取付ける油圧シリンダ59は第2の縦螺旋筒52と第3の縦螺旋筒53を起伏(上下動)させて排出口57の高さを変更することができる。
【0048】
なお、グレンタンク8は穀粒を貯留する際に、その底部を機体フレーム3上に載置して機体の前後方向を向く穀粒の収容位置に保持する。しかし、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集して除去するDPF60やマフラー61、走行伝動装置、或いは脱穀伝動装置等は機体フレーム3の中央部に設け、また、原動部11はグレンタンク8の前方に設けているので、これ等のメンテナンスを行う際にグレンタンク8は邪魔になる。
【0049】
そこで、グレンタンク8を第1の縦螺旋筒42を中心に機体外方側に向けて回動させてメンテナンス位置になすことができる。そして、この場合には、穀粒を排出してグレンタンク8を空にした状態で、先ずグレンタンク8の右側壁25の後部から第1の縦螺旋筒42の後部までを覆う後部カバー62をカッターステー45との係合を解除して開き、また、右の傾斜底壁29に取付ける下部カバー63を取り外す。さらに、駆動プーリ35と従動プーリ34とに亘って巻き掛けた伝動ベルト36を従動プーリ34から取り外す。
【0050】
次に、タンク固定レバー64を操作してグレンタンク8と揚穀筒21aとの間に設けるロック装置65を解除し、更にブラケット33に設けるタンク回動レバー66を引き上げて、そのローラ67を機体フレーム3の底板上に下降させて、グレンタンク8を浮き上がるように力を加えながら外方に引っ張ると、グレンタンク8を
図2に示す穀粒の収容位置から第1の縦螺旋筒42を中心に二点鎖線で示す機体外側方に向けて大きく回動させてメンテナンス位置になすことができる。
【0051】
そして、グレンタンク8をメンテナンス位置に回動させると、原動部11の後側や脱穀部7の右側が解放されて、エンジンやDPF60、脱穀部7や走行装置等のメンテナンスを行うことができる。また、グレンタンク8をメンテナンス位置から穀粒の収容位置に戻す場合は、前述と逆の手順を踏むことになる。なお、グレンタンク8をメンテナンス位置に回動すると、グレンタンク8の左側壁26の前方側上部寄りに設ける穀粒の受入口26aと揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dはその接合が離れるが、穀粒の収容位置に戻すと両者は再び接合する。
【0052】
以上、グレンタンク8と排出オーガ9等について詳細に説明したが、次に、前述のコンバイン1にキットとして後付けしたり、或いはコンバイン1を出荷する前に組み込んで提供する、収穫した穀粒の水分率や或いは収量を測定して操縦部5に設けるモニタ22に水分率や収量を表示させる測定装置について説明する。即ち、この測定装置は収穫した穀粒の水分率や或いは収量の測定手段と、測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニットを含む電装品、並びにこれ等を接続する信号線や電源線を備える。
【0053】
そして、この測定装置をコンバイン1に取付けて設ける要領とともに説明すると、先ず水分率の測定手段は、
図6~
図8に示すようにグレンタンク8の天井壁31の右側の前後方向中央に設けるプレート68をその取付ボルトを取外して取り除く。そして、この取り除いた穴に水分センサをケースに収めて構成する水分センサユニット69を斜めにして取っ手69aから入れて穀粒収容空間に差し込む。また、取外した取付ボルトを使用して水分センサユニット69を天井壁31に取付けて設ける。
【0054】
なお、ここで用いる水分センサユニット69は、揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dから跳出板21cによって放出する穀粒を受け止めながら繰り出す1対の送りロール69b、電極と兼用する一対の圧壊ローラ、並びに送りロール69bと圧壊ローラを回転駆動させる電動モータを備え、送りロール69bが1粒ずつ繰り出した穀粒を圧壊ローラで押し潰した状態で、その電極となる圧壊ローラ間の電気抵抗を水分測定回路によって電圧に変換して出力する。
【0055】
そのため、水分センサユニット69の送りロール69bは放出された穀粒を確実に受け止めることができるように揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dに臨むように設け、また、水分センサユニット69がグレンタンク8に放出された穀粒に埋まって検出不能にならないように前述の天井壁31の右側の前後方向中央に設ける。また、送りロール69bは水分計測の開始前に以前の受け止めた穀粒を排出するために逆転させた後、新しい穀粒を圧壊ローラに繰り出して供給するために正転させる必要があり、電動モータは正転と逆転、又停止に切り換える制御が必要となる。
【0056】
次に、収量の測定手段について説明すると、
図9~
図11に示すように揚穀螺旋軸21bの終端部に設ける跳出板21cによって跳ね出した穀粒をその吐出口21dに向けて案内する排出ケース21eに設けるプレート70をそのナットを取外して取り除く。そして、このプレート70を取り除いた穴に収量センサ71の検出板71aを収めて、取外したナットを使用して収量センサ71のケース71bを排出ケース21eの外面に取付けて設ける。
【0057】
なお、ここで用いる収量センサ71は、コラム型のロードセルを用いてグレンタンク8に放出される穀粒の流量(収量)を測定する。そのため、ロードセルはその検出板71aに跳出板21cで跳ね出した一部の穀粒を衝突させ、その際の衝突力によって発生するひずみに比例して電気抵抗が変化する4箇所のひずみゲージでホイートストンブリッジを作り、このホイートストンブリッジから印加電圧に比例し、且つひずみに比例した電圧信号を出力する。なお、この収量センサ71の出力電圧信号に基づいて、次に説明する電子制御ユニット72はグレンタンク8に放出される穀粒の全量を比例関係にあるものとして演算し穀粒の収量を推定する。
【0058】
また、以上説明した測定手段69、71を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニット72は、
図12に示すようにプレートを折り曲げて形成するブラケット73に取付けて設ける。さらに、このブラケット73には電子制御ユニット72の他に、電子制御ユニット72に規定の電圧に調節して電力を供給するDC/DCコンバータ74、水分センサユニット69に備える電動モータを正逆回転に切換えるリレー75、収量センサ71のロードセルに印加電圧を与えて出力電圧信号を増幅するアンプ76を取付けて電装ユニット77として纏める。
【0059】
そして、この電装ユニット77を排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42側に臨むグレンタンク8の後壁24の外方側上部寄りに設ける際に、先ず
図13に示すように後壁24に上下方向として取付けている支持ピン78を中心に後部カバー62を回動させて機体外側方側に開く。また、後部カバー62を開いて露出させた後壁24からボルト79を2つ取り外す。なお、このボルト79は、右側壁25の内側に後壁24側に向かうように固着した取付板25aを後壁24の外方側端部に取付けてグレンタンク8を形成するものであって、この場合、取付板25aはグレンタンク8の後壁や前壁、或いは天井壁の一部として捉えることができる。
【0060】
そこで、ボルト79を取り外すと、
図14に示すようにボルト79を取り外した後壁24の端部に取付板25aの端部を重ねた箇所に、取外したボルト79を使用してブラケット73を上下方向に取付けて、電装ユニット77をグレンタンク8の後壁24の外方側上部寄りに設ける。なお、この場合、上部側のボルト79にはキットとして備えるワッシャ80を挟み、ブラケット73の前後方向となる取付高さを調節する。
【0061】
また、
図15に示すように電装ユニット77から引き出した信号線(通信線)や電源線81を支持ピン78を設けるブラケット82の穴にワイヤバンド83を通して固定し、排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42の外側を迂回させてその後方に設けるカッターステー45に取付けるワイヤーハーネス84の枝線に2つのコネクタ85を介して接続する。さらに、
図16に示すように後壁24の傾斜する端部に取付板25aの端部を重ねて取付けるボルトを一旦取外して取付けたクランプ86に、水分センサユニット69から引き出した信号線や電源線87の中途を固定し、この信号線や電源線87を電子制御ユニット72やリレー75に接続する。
【0062】
そして、電装ユニット77のアンプ76から引き出したコード88の中途部は、
図17に示すようにカッターステー45から前方に向けて配策するワイヤーハーネス84を、第1の縦螺旋筒42と揚穀筒21aを連結する連結フレーム49に沿わせて固定するワイヤバンド83に通して同様に固定する。また、コード88の終端は
図18に示すように収量センサ71のコード接続部71cに接続し、全ての取付け並びに接続作業を終了する(
図19、
図20参照)。
【0063】
なお、前記ワイヤーハーネス84にはコンバイン1の各部を制御する図示しないメイン電子制御ユニットに備えるCAN-BUSモジュールに接続するケーブルが含まれ、前述の接続作業を終了するとこのケーブルの信号線がコネクタ85を介して電子制御ユニット72に備えるCAN-BUSモジュールに接続されて、電子制御ユニット相互の情報が取得できるようになる。また、メイン電子制御ユニットはモニタ22を制御する図示しないモニタ電子制御ユニットにCAN-BUSモジュールを介して同様に接続している。
【0064】
従って、電子制御ユニット72はメイン電子制御ユニットを介してモニタ22を制御するモニタ電子制御ユニットと接続し、水分センサユニット69や収量センサ71から得られた測定電圧に基づいて電子制御ユニット72が演算した水分率と収量の値を、モニタ電子制御ユニットに与え、これによってモニタ22に水分率と収量を表示させることができる。また、モニタ22は液晶パネルに積層したタッチパネルを備える液晶ディスプレイ(liquid crystal display)によって構成している。
【0065】
そこで、前述の水分センサユニット69や収量センサ71の作動確認を行う場合には、グレンタンク8をメンテナンス位置に回動させ、操縦部5に設けるエンジンのスタータスイッチをONにする。この場合、
図21に示すようにグレンタンク8の天井壁31に設ける点検口を覆う透明板89を通して水分センサユニット69の送りロール69bを見ることができるので、送りロール69bが電子制御ユニット72によって逆転動作していることを確認する。
【0066】
また、電子制御ユニット72は送りロール69bを一定時間逆転作動させると停止させるのでこの点も確認する。さらに、電子制御ユニット72は、メイン電子制御ユニットに接続するパワークラッチスイッチによって脱穀部7、或いは脱穀部7と共に刈取部6にエンジン動力が伝達されたことを検出すると、送りロール69bを正転動作させるので、この点も確認できたら水分センサユニット69は正常に作動することを確認することができる。
【0067】
一方、パワークラッチスイッチによって脱穀部7と共に刈取部6にエンジン動力が伝達された状態で
図22(a)に示すようにモニタ22の通常表示画面で測定ボタンを押すと、
図22(b)に示すように電子制御ユニット72によって収穫した穀粒の収量を積算した「積算収量」と穀粒の「水分率」を表示する測定画面に切り替えることができる。そして、この状態で
図11に示すロードセルの検出板71aを指で軽く衝撃を与えると、電子制御ユニット72は積算収量の値を増やすので、これをモニタ22の「積算収量」で確認する。
【0068】
なお、モニタ22の測定画面には燃料リセットボタンが押されるまでにエンジンによって消費された積算燃料消費量を合わせて表示するが、これはメイン電子制御ユニットがその役割を担う。また、収量リセットボタンを押すと電子制御ユニット72は積算収量をゼロにリセットする。さらに、刈取作物切替ボタンを押す度に稲、小麦、大麦の各ランプの点灯状態が遷移する。そして、これによって電子制御ユニット72は水分センサユニット69や収量センサ71からの出力電圧に基づく水分率や収量の値を作物に合わせて変更してモニタ22に表示させる。
【0069】
以上、電子制御ユニット72が備えるプログラムによって水分センサユニット69を作動させたり、モニタ22に表示させる制御内容について説明したが、コンバイン1に水分率や或いは収量の測定手段と、測定手段を制御しながら得られた測定値から水分率や収量を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニット72を含む電装品(電装ユニット77)、並びにこれ等を接続する信号線や電源線を備える測定装置を後付けする際の作用効果を纏めると、電装ユニット77は排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42を中心に回動させるグレンタンク8の平面視略矩形状に形成する壁の内、第1の縦螺旋筒42側に臨む後壁24の外面に取付けて設けるため、コンバイン1に一時に電装品を後付けして設けることができる。
【0070】
また、測定手段69、71と電装ユニット77を1組としてグレンタンク8の1つの壁に取付けると重量が増して壁の強度が不足する虞があるが、これを分散して取付けることによって格別補強等を行わずに夫々を取付けて設けることができる。そして、この場合、排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42とグレンタンク8の後壁24の間には、グレンタンク8を第1の縦螺旋筒42を中心に回動させるために所定のスペースが存在し、この空きスペースを有効に活用して電装ユニット77をグレンタンク8の後壁24の外面に機体の外側方から取付けて、グレンタンク8や第1の縦螺旋筒42等の各部に悪影響を及ぼすことなく設けることができ、また、取付けた電装ユニット77のメンテナンスも機体の外側方から容易に行うことができる。
【0071】
なお、グレンタンク8を排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42を中心に回動させて機体の外側方に回動させると、電装ユニット77のメンテナンス等を機体の中央側から行うこともできる。また、例えば、収量を測定する収量センサ71を揚穀装置21に取付ける場合は、揚穀装置21の機体外側方側が開放されるので収量センサ71を機体の中央側において取付けて設けることができ、さらに、穀粒の水分率を測定する水分センサユニット69はグレンタンク8の上方から取付けて設けることができ、全体に周囲の装置等に邪魔されずに簡単に後付けすることができる。
【0072】
また、前述の水分率や収量を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニット72を、コンバイン1の各部を制御する既存のメイン電子制御ユニットを用いて構成しようとすると、既存のメイン電子制御ユニットに水分率や或いは収量を測定する測定手段69、71の信号を入力するアナログ入力ポートや、測定手段69、71側の装置を作動させる電動モータ等のアクチュエータを駆動する出力ポート等が必要になると共に、プログラムの追加によって演算負荷等が増大して、既存のメイン電子制御ユニットを能力のある新たなユニットに変更しなければならないといった虞がある。
【0073】
しかし、前述のように水分率や収量を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニット72を含む電装品を電装ユニット77として新たに設けると、既存のメイン電子制御ユニットは入出力ポート数等を何ら変更することなくコンバイン1の各部を最大限その能力を生かしてそのまま制御することができ、また、水分率や或いは収量の測定装置69、71を制御する電子制御ユニット72は、その制御を行うに足る能力を備えたものを用いてコストを下げ、少なくとも測定装置を取付けて設けない場合は、格別値上げの必要のない安価なコンバイン1を提供することができ、測定装置を後付けできるからといって値上げの必要はない。
【0074】
また、電装ユニット77を取付けるブラケット73をグレンタンク8の右側壁25の端部25aと後壁24の外方側の端部とを連結するボルトを用いて同箇所に取付けて、このブラケット73に纏めて取付ける電装ユニット77を後壁24の外方側上部寄りに設け、また、グレンタンク8の後部から排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42の側方側を覆う開閉自在な後部カバー62で電装ユニット77の外側方側を覆う。
【0075】
そのため、通常、グレンタンク8の右側壁25の端部25aと後壁24の外方側の端部とをボルトを用いて連結してグレンタンク8の穀粒を貯留する収容空間を形成するが、水分率や或いは収量の電装ユニット77をグレンタンク8の後壁24の外面に取付けて設ける際に、このボルトの一部を取り外して、ブラケット73を右側壁25の端部25aと後壁24を重ね合わせて強度を備えた同箇所に取り外したボルトを用いて取付け、このブラケット73に纏めて取付ける電装ユニット77を後壁24の外方側上部寄りに新たなボルトを用いることなく強固に取付けて、電装品の嫌う振動を抑えて設けることができる。なお、電装ユニット77は機体の中央部に設けるDPF60やマフラー61から離して設けることができるので熱的な悪影響が及ぶこともなく、横螺旋軸32が回転する際の振動の影響もあまり受けることがない。
【0076】
また、グレンタンク8の後部から排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42の側方側を覆う後部カバー62を、グレンタンク8の回動の際に縦螺旋筒42等との当接防止のために開閉自在に設けるが、このカバー62よって機体内方側に設ける電装ユニット77の外側方側を覆うことができ、例えば立木の枝等が電装ユニット77に当接して電装ユニット77が損傷する等の不具合を未然に防止することができる。また、グレンタンク8の後壁24の外方側上部寄りに設ける電装ユニット77のメンテナンスを行う場合には、カバー62を開くと電装ユニット77が目前に現れるのでメンテナンスを容易に行うことができる。
【0077】
さらに、電装ユニット77の電源線や信号線を第1の縦螺旋筒42の近傍に設けるモニタ22側に接続するワイヤーハーネス84にコネクタ85を介して着脱自在に接続し、グレンタンク8を回動させる際にこのコネクタ84を取り外すことなく水分率や収量をモニタ22側に伝達するように構成する。つまり、電装ユニット77は排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42を中心に回動させるグレンタンク8の平面視略矩形状に形成する壁の内、第1の縦螺旋筒42側に臨む後壁24の外面に取付けて設けるから、例えば機体中央側の機器のメンテナンスのためにグレンタンク8を回動させると電装ユニット77もグレンタンク8と共に回動する。
【0078】
しかし、この場合、モニタ22側に接続するワイヤーハーネス84に対してコネクタ85を介して接続する電装ユニット77の電源線や信号線の端部は、グレンタンク8を回動させる第1の縦螺旋筒42の近傍に設けるワイヤーハーネス84側のコネクタ85を中心に回動しようとするから、電源線や信号線のワイヤーハーネス84との接続に必要とする長さは回動の前後に拘らずあまり変化することはなく、多少余裕をみて長くはするが極端に長さが足らなくなってコネクタ85の接続が外れたり電源線や信号線が切断してしまうといった不具合を生ずる虞はない。従って、メンテナンスのためにグレンタンク8を回動させる度に、コネクタ85を取り外したり連結するといった煩わしい作業を無くすことができる。
【0079】
また、電装ユニット77をグレンタンク8の第1の縦螺旋筒42側に臨む後壁24の外面に取付けて設ける際に、電装ユニット77の電源線や信号線の端部を同箇所の近傍に設けるワイヤーハーネス84にコネクタ85のオスメスを連結して接続すれば、電装ユニット77側からモニタ22側への信号伝達を即座に行うことができる。そのため、電装ユニット77の取付けと同時に同箇所において電装ユニット77とモニタ22側との信号線や電源線の接続作業を能率的に迅速に完了させることができる。なお、ワイヤーハーネス84に設ける電装ユニット77とモニタ22側を接続する信号線や電源線は、水分率や或いは収量の測定装置を後付けすることができるようにワイヤーハーネス84に他の配線と共に用意しておくので、ワイヤーハーネス84を改めて配策し直す必要はない。
【0080】
そして、穀粒の水分率を測定する水分センサユニット69をグレンタンク8の天井壁31に取付けて、水分センサユニット69の電源線や信号線をグレンタンク8の後壁24の外面に固定具となるクランプ86を用いて固定しながら電装ユニット77に配索する。そのため、水分率を測定する測定手段を構成する水分センサユニット69の取付作業を終えた後、水分センサユニット69と電装ユニット77を接続する電源線や信号線をグレンタンク8の後壁24の外面に固定具86を用いて固定しながら配策することができ、グレンタンク8の後壁24の外方側において他の装置等に邪魔されることなく、両者の接続をグレンタンク8の後壁24を利用して確実に、また、迅速に接続作業を完了させることができる。
【0081】
そのうえ、穀粒の収量を測定する収量センサ71を揚穀装置21に取付けて、収量センサ71の電源線や信号線(コード88)を揚穀装置21とグレンタンク8の第1の縦螺旋筒42に亘って設ける連結フレーム49に固定具となるワイヤバンド83を用いて固定しながら電装ユニット77に配索する。そのため、収量を測定する測定手段を構成する収量センサ71の取付作業を、グレンタンク8を機体の外側方に回動させた状態で終えた後、収量センサ71と電装ユニット77を接続する電源線や信号線88を揚穀装置21とグレンタンク8の第1の縦螺旋筒42に亘って設ける連結フレーム49に固定具83を用いて固定しながら配策することができ、これらの配線がグレンタンク8の回動によって損傷するといった不具合を防止することができる。
【0082】
なお、この場合、グレンタンク8を回動させた後の機体の中央部においてグレンタンク8等に邪魔されることなく、両者の接続を連結フレーム49を利用して確実に、また、迅速に接続作業を完了させることができる。さらに、収量センサ71と電装ユニット77を接続する電源線や信号線88は、揚穀装置21に設ける収量センサ71から連結フレーム49を用いてグレンタンク8を迂回して第1の縦螺旋筒42の近傍まで配策し、さらに、第1の縦螺旋筒42の近傍から電装ユニット77に向けて配策するので、電装ユニット77の電源線や信号線を第1の縦螺旋筒42の近傍に設けるモニタ22側に接続するワイヤーハーネス84にコネクタ85を介して着脱自在に接続する場合と同様に、グレンタンク8の回動にあたって電源線や信号線88の長さを外れや切断に備えて極端に長くする必要がなく、また、グレンタンク8を回動させる度に接続を外したり連結するといった煩わしい作業を無くすことができる。
【0083】
以上、本発明のコンバイン1の実施形態について説明したが、収穫した穀粒の水分率のみを測定手段として備えるコンバインに構成してもよく、また、収量センサ71をグレンタンク8の受入口26aの近傍の右側壁や天井壁に設けて穀粒の収量を計測したり、グレンタンク8の重量をコンバイン1が走行を停止した際にロードセルによって計量してグレンタンク8に貯留する穀粒の収量を予測して計測したり、或いは、穀粒の水分率を特許文献4に記載される光学式穀粒評価装置等によって計測してもよく、本発明は前記実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0084】
1 コンバイン
5 操縦部
6 刈取部
7 脱穀部
8 グレンタンク
9 排出オーガ
21 揚穀装置
22 モニタ(表示装置)
24 後壁
42 第1の縦螺旋筒(縦螺旋筒)
69 水分センサユニット(水分率の測定手段)
71 収量センサ(収量の測定手段)
72 電子制御ユニット
73 ブラケット
77 電装ユニット