IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図1
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図2
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図3
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図4
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図5
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図6
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図7
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図8
  • 特許-部品実装方法及び部品実装装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】部品実装方法及び部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230911BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K13/08 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020099649
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193717
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昂太郎
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168619(JP,A)
【文献】特開2017-195264(JP,A)
【文献】特開2019-40966(JP,A)
【文献】特開2016-58604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装用のヘッド及び第1、第2撮像部を有しかつ基台に対して移動可能に設けられたヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニットにより、所定の作業位置に配置された基板に部品を実装する部品実装装置における部品実装方法であって、
部品の実装動作の開始前に、前記基台に備えられた複数のマークのうち、第1撮像部に割り当てられた第1マークを当該第1撮像部により撮像するとともに、第2撮像部に割り当てられた第2マークを当該第2撮像部により撮像し、それらの画像データから第1、第2マークの位置情報の初期値である初期情報を取得する初期情報取得工程と、
前記初期情報取得工程後に所定のタイミングで繰り返し実行される工程であって、第1、第2マークの位置情報を再取得する位置情報再取得工程と、
前記初期情報取得工程で取得された第1、第2マークの前記初期情報と前記位置情報再取得工程で取得された第1、第2マークの位置情報とに基づき、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形による当該ヘッドユニットの移動誤差を補正するための補正情報を求める補正情報算出工程と、
部品の実装動作における前記ヘッドユニットの移動目標位置を前記補正情報に基づき補正する位置補正工程と、
前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達しているか否かを判定する判定工程と、を含み、
前記位置情報再取得工程において、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達していない場合には、第1、第2撮像部によりそれぞれ割り当てられたマークを撮像して第1、第2マーク全ての位置情報を再取得する一方、駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられたマークを撮像して当該マークの位置情報のみを再取得し、
前記補正情報算出工程では、前記位置情報再取得工程で取得された第1、第2マークの位置情報として、それぞれ、最も直近の位置情報再取得工程で取得された最新の位置情報に基づいて前記補正情報を求める、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装方法において、
前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、前記位置情報再取得工程として、前記第1撮像部により第1マークを撮像して当該第1マークの位置情報を再取得する第1の位置情報再取得工程と、前記第2撮像部により第2マークを撮像して当該第2マークの位置情報を再取得する第2の位置情報再取得工程とを、前記所定のタイミングが到来する毎に交互に実行する、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品実装方法において、
前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合であってかつ前記位置情報再取得工程において第1撮像部により第1マークが撮像されて当該第1マークの位置情報のみが取得された場合には、前記補正情報算出工程において、第1マークの前回の位置情報に対する当該最新の位置情報の変化量を求めるとともに、当該変化量に基づき第2マークの最新の位置情報を補正し、第1マークの最新の位置情報と第2マークの補正後の最新の位置情報とに基づき前記補正情報を算出し、
前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合であってかつ前記位置情報再取得工程において第2撮像部により第2マークが撮像されて当該第2マークの位置情報のみが取得された場合には、前記補正情報算出工程において、第2マークの前回の位置情報に対する当該最新の位置情報の変化量を求めるとともに、当該変化量に基づき第1マークの最新の位置情報を補正し、第2マークの最新の位置情報と第1マークの補正後の最新の位置情報とに基づき前記補正情報を算出する、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項4】
請求項3に記載の部品実装方法において、
前記第1マークと前記第2マークとは共通のマークである、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の部品実装方法において、
前記位置情報再取得工程が実行された後、次回の位置情報再取得工程を実行するタイミングが到来する前に実装動作の中断期間が発生した場合には、当該中断期間に、第1、第2マークの位置情報のうち次回の前記位置情報再取得工程で再取得すべき位置情報の一部又は全部を先行して取得する先行処理を実行する、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項6】
請求項5に記載の部品実装方法において、
前記位置情報再取得工程が実行された後、予め設定された禁止期間が経過している場合にのみ、前記先行処理を実行する、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の部品実装方法において、
前記第1撮像部に複数の前記第1マークが割り当てられるとともに、前記第2撮像部に複数の前記第1マークが割り当てられている場合であって、
前記位置情報再取得工程において、駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、前記第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられた複数のマークのうち何れか1つのマークを撮像して当該マークの位置情報のみを再取得する、ことを特徴とする部品実装方法。
【請求項8】
部品実装用のヘッド及び第1、第2撮像部を有しかつ基台に対して移動可能に設けられたヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニットにより、所定の作業位置に配置された基板に部品を実装する部品実装装置であって、
基台上に備えられた複数のマークと、
前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部と、
前記ヘッドユニットの駆動機構の熱変形が飽和状態に達しているか否かを判定する判定部と、
前記ヘッドユニットの移動目標位置を補正する補正部と、を含み、
前記制御部は、部品の実装動作の開始前に、前記複数のマークのうち、第1撮像部に割り当てられた第1マークを当該第1撮像部により撮像するとともに、第2撮像部に割り当てられた第2マークを当該第2撮像部により撮像し、それらの画像データから前記複数のマークの位置情報の初期値である初期情報を取得する初期情報取得動作と、この初期情報取得動作の後に所定のタイミングで繰り返し実行される動作であって、第1、第2マークの位置情報を再取得する位置情報再取得動作と、を実行し、
前記補正部は、第1、第2マークの前記初期情報と前記位置情報再取得動作で取得された第1、第2マークの位置情報とに基づき、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形による当該ヘッドユニットの移動誤差を補正するための補正情報を算出するとともに、前記ヘッドユニットの移動目標位置を前記補正情報に基づき補正し、
前記制御部は、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達していない場合には、前記位置情報再取得動作として、第1、第2撮像部によりそれぞれ割り当てられたマークを撮像して第1、第2マーク全ての位置情報を再取得する一方、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられたマークのみを撮像して当該マークの位置情報を再取得し、
前記補正部は、前記位置情報再取得動作で取得された第1、第2マークの位置情報として、それぞれ、最も直近の位置情報再取得動作により取得された最新の位置情報に基づいて前記補正情報を算出する、ことを特徴とする部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニットによりプリント配線板等の基板上に電子部品等の部品を実装(搭載)することにより部品実装基板を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直交ロボット(XYロボット)等の駆動機構によりヘッドユニットを移動させてプリント配線板等の基板上に部品を実装する部品実装装置が存在する。この部品実装装置では、摩擦熱により駆動機構に熱変形(熱膨張)が生じ、この熱変形に起因してヘッドユニットの移動量に誤差が生じることが知られている。
【0003】
ヘッドユニットの移動誤差は、基板上に実装される部品(実装部品)の位置ずれを招く要因の一つとなる。そのため、従来の部品実装装置では、ヘッドユニットに搭載されたカメラで定期的に基台上に備えられたマークが撮像され、その画像データにおけるマークの位置の変化に基づき、移動時のヘッドユニットの目標位置(座標)が補正される。つまり、熱変形による移動量の誤差分だけ、ヘッドユニットの目標位置が補正されることにより、実装部品の位置ずれが抑制されるのである。この場合、2つ一組のマーク(マーク対)を装置本体上の複数箇所に設けておき、ヘッドユニットに搭載された2つのカメラで、各箇所のマーク対(2つのマーク)を同時に撮像し、各箇所で各々得られたマーク対の位置に基づき補正データを算出して、ヘッドユニットの位置を補正するような部品実装装置も開発されている(例えば、特許文献1)。このような部品実装装置によると、実装部品の位置ずれをより高度に抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-168619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動機構の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを抑制する観点からは、特許文献1のように、ヘッドユニットに搭載された2つのカメラで2つのマークを同時に撮像するのが望ましい。しかし、実際には、基台上に配置される各種機器による制約を受け、2つのカメラで同時に撮像可能な位置にマーク対を配置できない場合が多い。
【0006】
このような場合には、2つのマークのうち一方側のマークを、2つのカメラらのうちの一方側のカメラでまず撮像し、その後、ヘッドユニットを移動させて、他方側のカメラで他方側のマークを撮像する。そして、このような撮像動作を、基台の複数箇所に設けられたマーク対に対して行うことが必要となる。従って、実装部品の位置ずれを抑制する上では有利となるものの、マークの撮像に時間を要することとなり、タクトタイムの短縮化が犠牲になる場合がある。
【0007】
なお、ヘッドユニットに搭載された2つのカメラで互いに異なるマークを各々撮像する代わりに、基台上に配置された共通の複数のマークを2つのカメラで順番に撮像するものもある。このような装置も2つのカメラでマークを各々撮像して前記補正データを求めるため、実装部品の位置ずれを抑制する上で好適であるが、タクトタイムの短縮化を図る上では、先に説明した部品実装装置と同様に改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを高度に抑制しつつ、タクトタイムの短縮化にも寄与し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ヘッドユニットの駆動機構の熱変形は無限に生じるわけではなく、実装動作が継続的に実行されていると、ある程度の変形量に収束する。つまり、当該熱変形は、部品実装装置の起動後からある程度の期間は顕著に増加するが、その期間が経過すると飽和した状態となる。本願の発明者は、このような現象に着目し、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次のような部品実装方法を発明するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一の局面に係る部品実装方法は、部品実装用のヘッド及び第1、第2撮像部を有しかつ基台に対して移動可能に設けられたヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニットにより、所定の作業位置に配置された基板に部品を実装する部品実装装置における部品実装方法であって、部品の実装動作の開始前に、前記基台に備えられた複数のマークのうち、第1撮像部に割り当てられた第1マークを当該第1撮像部により撮像するとともに、第2撮像部に割り当てられた第2マークを当該第2撮像部により撮像し、それらの画像データから第1、第2マークの位置情報の初期値である初期情報を取得する初期情報取得工程と、前記初期情報取得工程後に所定のタイミングで繰り返し実行される工程であって、第1、第2マークの位置情報を再取得する位置情報再取得工程と、前記初期情報取得工程で取得された第1、第2マークの前記初期情報と前記位置情報再取得工程で取得された第1、第2マークの位置情報とに基づき、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形による当該ヘッドユニットの移動誤差を補正するための補正情報を求める補正情報算出工程と、部品の実装動作における前記ヘッドユニットの移動目標位置を前記補正情報に基づき補正する位置補正工程と、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達しているか否かを判定する判定工程と、を含み、前記位置情報再取得工程において、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達していない場合には、第1、第2撮像部によりそれぞれ割り当てられたマークを撮像して第1、第2マーク全ての位置情報を再取得する一方、駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられたマークを撮像して当該マークの位置情報のみを再取得し、前記補正情報算出工程では、前記位置情報再取得工程で取得された第1、第2マークの位置情報として、それぞれ、最も直近の位置情報再取得工程で取得された最新の位置情報に基づいて前記補正情報を求めるようにしたものである。
【0011】
この部品実装方法では、部品の実装動作が開始される前のマークの位置情報(初期情報)と、位置情報再取得工程で取得されたマークの位置情報とに基づき補正情報を求める。この場合、ヘッドユニットに搭載される2つの撮像部(第1、第2撮像部)により各々マークを撮像し、それらの画像データに基づき補正情報を求めるので、より信頼性の高い補正情報を得ることができ、よって、実装部品の位置ずれを高度に抑制することが可能になる。しかも、駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられたマークを撮像して当該マークの位置情報のみを再取得するので、常に2つの撮像部で全てのマーク(第1、第2マーク)を撮像して全てのマーク位置情報を再取得する場合に比べると、ヘッドユニットの移動量を短縮すること、ひいてはマークの位置情報を再取得する際の時間を短縮することが可能となる。なお、この場合、他方側の撮像部に割り当てられたマークについては撮像が行われないため、補正情報算出工程では、当該マークの位置情報として、既に取得済みの最新の位置情報を用いて補正情報が求められることとなるが、駆動機構の熱変形が飽和状態に達しているため、マークの位置情報に大きな変化はなく、求められる補正情報への影響は殆どない。従って、上記の部品実装方法によれば、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを抑制しながら、タクトタイムの短縮化にも寄与するものとなる。
【0012】
この方法において、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、前記位置情報再取得工程として、前記第1撮像部により第1マークを撮像して当該第1マークの位置情報を再取得する第1の位置情報再取得工程と、前記第2撮像部により第2マークを撮像して当該第2マークの位置情報を再取得する第2の位置情報再取得工程とを、前記所定のタイミングが到来する毎に交互に実行するのが好適である。
【0013】
例えば、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、常に、第1撮像部により第1マークを撮像するか、又は第2撮像部により第2マークを撮像するようにしてもよいが、この場合には、再取得されない方のマークの位置情報の信頼性が経時的に低下する虞がある。すなわち、取得済みの最新の位置情報に対して実際の位置情報(実際に撮像したとした場合の位置情報)が乖離している場合が生じ得える。この場合には、位置情報再取得工程で求められる補正情報の信頼が低下する。この点、上記のような部品実装方法によれば、第1の位置情報再取得工程と第2の位置情報取得工程とを交互に実行するので、位置情報再取得工程で求められる補正情報の信頼性をより高度に保つことが可能となる。
【0014】
上記各態様の部品実装方法において、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合であってかつ前記位置情報再取得工程において第1撮像部により第1マークが撮像されて当該第1マークの位置情報のみが取得された場合には、前記補正情報算出工程において、第1マークの前回の位置情報に対する当該最新の位置情報の変化量を求めるとともに、当該変化量に基づき第2マークの最新の位置情報を補正し、第1マークの最新の位置情報と第2マークの補正後の最新の位置情報とに基づき前記補正情報を算出し、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合であってかつ前記位置情報再取得工程において第2撮像部により第2マークが撮像されて当該第2マークの位置情報のみが取得された場合には、前記補正情報算出工程において、第2マークの前回の位置情報に対する当該最新の位置情報の変化量を求めるとともに、当該変化量に基づき第1マークの最新の位置情報を補正し、第2マークの最新の位置情報と第1マークの補正後の最新の位置情報とに基づき前記補正情報を算出するようにするのが好適である。
【0015】
この方法では、要するに、第1、第2マークのうち、位置情報再取得工程において実際に撮像されたマークの位置情報の変化量に準じて、撮像されなかった方のマークの取得済みの最新の位置情報が補正される。そのため、撮像されなかった方のマークの位置情報として、取得済みの最新の位置情報をそっくりそのまま用いて補正情報を求める場合に比べて、当該補正情報の信頼性が向上する。
【0016】
この場合には、前記第1マークと前記第2マークとが共通のマークであるのが好適である。この方法によれば、第1、第2撮像部による撮像対象が同一となるので、上記のように、撮像されなかった方のマークの最新の位置情報を、撮像された第1マークの前記変化量に基づき補正した場合の当該位置情報の信頼性が高いものとなる。
【0017】
なお、上記各態様の部品実装方法において、前記位置情報再取得工程が実行された後、次回の位置情報再取得工程を実行するタイミングが到来する前に実装動作の中断期間が発生した場合には、当該中断期間に、第1、第2マークの位置情報のうち次回の前記位置情報再取得工程で再取得すべき位置情報の一部又は全部を先行して取得する先行処理を実行するようにしてもよい。
【0018】
この方法によれば、次回の位置情報再取得工程に要する時間を合理的に短縮又は省略することが可能となる。そのため、タクトタイムの短縮化に寄与するものとなる。
【0019】
なお、この場合、位置情報再取得工程が実行された後、短期間のうちに先行処理が実行されると、先行処理で取得されるマークの位置情報とその直前に取得されたマークの位置情報とが同一となるなど、先行処理の有用性が損なわれることが考えられる。
【0020】
そのため、上記部品実装方法においては、前記位置情報再取得工程が実行された後、予め設定された禁止期間が経過している場合にのみ、前記先行処理を実行するようにするのが好適である。
【0021】
上記各態様の部品実装方法において、前記第1撮像部に複数の前記第1マークが割り当てられるとともに、前記第2撮像部に複数の前記第1マークが割り当てられられている場合であって、前記位置情報再取得工程において、駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、前記第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられた複数のマークのうち何れか1つのマークを撮像して当該マークの位置情報のみを再取得するようにしてもよい。
【0022】
この方法によれば、位置情報再取得工程に要する時間を可及的に短くすることが可能となる。 一方、本発明の一の局面に係る部品実装装置は、部品実装用のヘッド及び第1、第2撮像部を有しかつ基台に対して移動可能に設けられたヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニットにより、所定の作業位置に配置された基板に部品を実装する部品実装装置であって、基台上に備えられた複数のマークと、前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部と、前記ヘッドユニットの駆動機構の熱変形が飽和状態に達しているか否かを判定する判定部と、前記ヘッドユニットの移動目標位置を補正する補正部と、を含み、前記制御部は、部品の実装動作の開始前に、前記複数のマークのうち、第1撮像部に割り当てられた第1マークを当該第1撮像部により撮像するとともに、第2撮像部に割り当てられた第2マークを当該第2撮像部により撮像し、それらの画像データから前記複数のマークの位置情報の初期値である初期情報を取得する初期情報取得動作と、この初期情報取得動作の後に所定のタイミングで繰り返し実行される動作であって、第1、第2マークの位置情報を再取得する位置情報再取得動作と、を実行し、前記補正部は、第1、第2マークの前記初期情報と前記位置情報再取得動作で取得された第1、第2マークの位置情報とに基づき、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形による当該ヘッドユニットの移動誤差を補正するための補正情報を算出するとともに、前記ヘッドユニットの移動目標位置を前記補正情報に基づき補正し、前記制御部は、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達していない場合には、前記位置情報再取得動作として、第1、第2撮像部によりそれぞれ割り当てられたマークを撮像して第1、第2マーク全ての位置情報を再取得する一方、前記駆動機構の熱変形が飽和状態に達している場合には、第1、第2撮像部のうち何れか一方側の撮像部で当該一方側の撮像部に割り当てられたマークのみを撮像して当該マークの位置情報を再取得し、前記補正部は、前記位置情報再取得動作で取得された第1、第2マークの位置情報として、それぞれ、最も直近の位置情報再取得動作により取得された最新の位置情報に基づいて前記補正情報を算出するものである。
【0023】
この部品実装装置によると、基板上に部品が実装された部品実装基板を上述した部品実装方法に基づき好適に生産することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の部品実装方法および部品実装装置によれば、ヘッドユニットの駆動機構の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを抑制しながら、タクトタイムの短縮化にも寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る部品実装装置の平面図である。
図2】上記部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
図3】補正データ取得処理の制御を示すフローチャートである。
図4】(a)~(c)は、再取得データの一例を示す表図である。
図5】(a)、(b)は、ヘッドユニットの移動経路の一例を示す部品実装装置の平面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る部品実装装置の平面図である。
図7】(a)~(c)は、再取得データの一例を示す表図である。
図8】(a)、(b)は、再取得データの一例を示す表図である。
図9】(a)、(b)は、位置データ再取得処理の制御を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の第1実施形態について詳述する。
【0027】
[部品実装装置の全体構成]
図1は、本発明に係る部品実装装置1(本発明に係る部品実装方法が使用される部品実装装置)の平面図である。部品実装装置1は、プリント配線板等の基板Pに電子部品等の部品を実装することにより、部品実装基板を生産する設備である。なお、図1中には、方向関係の明確化のためにXYZ直角座標軸を示している。X方向は水平面と平行な方向であり、Y方向は水平面上でX方向と直交する方向であり、Z方向はX方向及びY方向にそれぞれ直交する方向(上下方向)である。
【0028】
部品実装装置1は、基台2と、基板Pを搬送する基板搬送部3と、部品供給部5と、基台2に沿ってその上方を移動するヘッドユニット6と、部品認識カメラ7とを備えている。
【0029】
基板搬送部3は、基板PをX方向に搬送する一対のコンベア4を備えている。コンベア4は、ベルトコンベアである。基板搬送部3は、図1の右側(X1側)から基板Pを受け入れて作業位置(同図に示す基板Pの位置)に搬送し、実装作業終了後、基板Pを作業位置から同図の左側(X2側)に搬出する。図示を省略しているが、作業位置には、基板Pを位置決めした状態で支持する支持機構が備えられている。
【0030】
部品供給部5は、Y方向における基板搬送部3の両側(Y1側及びY2側)に各々配置されている。部品供給部5には、部品供給用のフィーダが配置されている。当例では、フィーダとして、複数のテープフィーダ5aがコンベア4に沿って並列に配置されている。テープフィーダ5aは、リボン状のテープをキャリアとして、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品(電子部品)を供給するものである。なお、部品供給部5には、部品の種類に応じて、テープフィーダ5a以外のフィーダ、例えば、筒型スティックの内部を通じて部品を供給するスティックフィーダや、トレイ上に部品を載置した状態で供給するトレイフィーダ等も配置され得る。
【0031】
ヘッドユニット6は、部品供給部5から部品を取り出して基板Pに実装(搭載)するものである。ヘッドユニット6は、ヘッドユニット駆動機構8(本発明の「駆動機構」に相当する)により、X方向及びY方向に移動可能に設けられている。ヘッドユニット駆動機構8は、いわゆるX-Yロボットである。具体的には、ヘッドユニット駆動機構8は、基台2に設置された高架フレームに各々固定されたY方向に延在する一対の固定レール10と、これら固定レール10に移動自在に支持されたX方向に延在するビーム11(ユニット支持部材)と、このビーム11に螺合挿入されてY軸サーボモータ13により駆動されるボールねじ軸12とを含む。また、ヘッドユニット駆動機構8は、ビーム11に固定されて、ヘッドユニット6をX方向に移動自在に支持する固定レール14と、ヘッドユニット6に螺合挿入されてX軸サーボモータ16により駆動されるボールねじ軸15とを含む。つまり、ヘッドユニット駆動機構8は、X軸サーボモータ16の駆動によりボールねじ軸15を介してヘッドユニット6をX方向に移動させ、また、Y軸サーボモータ13の駆動によりボールねじ軸12を介してビーム11をY方向に移動させる。この構成により、ヘッドユニット駆動機構8は、基台2の上方の一定範囲内で、ヘッドユニット6をX方向及びY方向に移動させる。
【0032】
ヘッドユニット6は、Z方向(上下方向)に延びる複数の軸状のヘッド20と、これらヘッド20を駆動するヘッド駆動機構とを備えている。当例では、ヘッドユニット6は、X方向に一定間隔で一列に配列された合計5本のヘッド20を備えている。
【0033】
ヘッド駆動機構は、各ヘッド20を個別に昇降(Z方向に移動)させる昇降駆動機構と、各ヘッド20をヘッド中心軸回り(R方向)に回転させる回転駆動機構とを含む。昇降駆動機構は、各ヘッド20に各々対応する複数のZ軸サーボモータ24(図2参照)を有し、一つのZ軸サーボモータ24により一つのヘッド20を駆動する。回転駆動機構は、各ヘッド20に共通する一つのR軸サーボモータ25(図2参照)を有し、このR軸サーボモータ25により各ヘッド20を同期させて一体に駆動する。なお、各サーボモータ13、16、24、25にはエンコーダが内蔵されており、各エンコーダからの位置情報が後記制御装置30に出力される。
【0034】
各ヘッド20の先端には、部品吸着用のノズルが備えられている。各ノズルは、切替弁を介して負圧発生装置に連通している。当該負圧発生装置から各ノズルに供給される負圧により、ノズル先端に部品が吸着されて保持される。
【0035】
ヘッドユニット6には、さらに第1、第2の2つのヘッドカメラ22a、22bが備えられている。各ヘッドカメラ22a、22bは、CCDカメラやCMOSカメラ等からなる同一のカメラである。各ヘッドカメラ22a、22bは、X方向に延在する(ボールねじ軸15と平行に延在する)共通の軸線上に各々視野中心(カメラ中心)が位置し、かつX方向に互いに離間するように配置されている。当例では、ヘッドユニット6のうち、X2側の端部に第1ヘッドカメラ22a(本発明の「第1撮像部」に相当する)が、X1側の端部に第2ヘッドカメラ22b(本発明の「第2撮像部」に相当する)が各々配置されている。
【0036】
各ヘッドカメラ22a、22bは、基板Pや基台2に設けられる基準マーク(以下、単にマークと言う)を撮像してその画像データを後記制御装置30に出力するものであり、制御装置30は、この画像データに基づきマークの位置を認識する。
【0037】
基板Pに設けられるマーク(基板フィデューシャルマーク)は、作業位置に配置された基板Pとヘッドユニット6との相対的な位置関係を把握するために、各ヘッドカメラ22a、22bにより撮像されるマークである。図示を省略しているが、当該マークは、例えば基板Pの上面の角部などに備えられている。
【0038】
一方、基台2に設けられるマーク(基台フィデューシャルマーク)は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形、例えばボールねじ軸12、15の熱延び(熱膨張)により生じるヘッドユニット6の移動誤差を検出するために、各ヘッドカメラ22a、22bにより撮像されるマークである。当例では、互いに近設された主副2つのマークを一組とする3組のマーク対が、基台上の3箇所に設けられている。具体的には、第1主マーク26a及び第1副マーク26bを一組とする第1マーク対26と、第2主マーク27a及び第2副マーク27bを一組とする第2マーク対27と、第3主マーク28a及び第3副マーク28bを一組とする第3マーク対28とが設けられている。主マーク26a、27a、28aは、第1ヘッドカメラ22aにより撮像されるマークであり、副マーク26b、27b、28bは、第2ヘッドカメラ22bにより撮像されるマークである。つまり、基台2に設けられた複数のマーク26a、26b、27a、27b、28a、28bのうち、主マーク26a、27a、28aは、第1ヘッドカメラ22aに割り当てられたマーク(本発明の「第1マーク」)であり、副マーク26b、27b、28bは、第2ヘッドカメラ22bに割り当てられたマーク(本発明の「第2マーク」)であると言うことができる。
【0039】
第1マーク対26は、基板搬送部3とY2側の部品供給部5との間に配置されている。第1主マーク26a及び第1副マーク26bは、後記部品認識カメラ7のX方向両側に互いに離間して配置されている。具体的に、部品認識カメラ7のX2側に第1主マーク26aが、X1側に第1副マーク26bが各々配置されている。
【0040】
第2マーク対27は、基板搬送部3とY1側の部品供給部5との間の位置であってかつ後記部品認識カメラ7のX1側の位置に配置されている。第2主マーク27a及び第2副マーク27bは、X方向に互いに離間した位置に、第2主マーク27aがX2側に位置するように配置されている。
【0041】
第3マーク対28は、基板搬送部3とY1側の部品供給部5との間の位置であって、後記部品認識カメラ7のX2側の位置に配置されている。第3主マーク28a及び第3副マーク28bは、X方向に互いに離間した位置に、第3主マーク28aがX2側に位置するように配置されている。
【0042】
なお、第1マーク対26の各マーク26a、26bは、各ヘッドカメラ22a、22bにより同時に撮像できるように、当該ヘッドカメラ22a、22bに各々対応する配置で基台2に設けられているのが理想的である。しかし、当例では、基台2に配置される図外の機器の配置が優先される結果、当該機器を避けた余剰スペースに各マーク26a、26bが配置されている。その結果、各マーク26a、26bは、互いに各ヘッドカメラ22a、22bによる同時撮像が不可能な位置に配置されている。第2マーク対27の各マーク27a、27b、及び第3マーク対28の各マーク28a、28bも同様である。
【0043】
基台2には、さらに2つの部品認識カメラ7が配置されている。部品認識カメラ7は、各ヘッド20により部品供給部5から取り出された部品の吸着状態を認識するために、当該部品を撮像するものである。部品認識カメラ7は、各ヘッドカメラ22a、22bと同様にCCDカメラやCMOSカメラ等からなり、基板搬送部3と各部品供給部5との間の位置であって、X方向における部品供給部5の中央部に、各々上向きに配置されている。
【0044】
なお、以下の説明では、「第1~第3の主マーク26a、27a、28a」を単に主マーク26a、27a、28a」と称し、「第1~第3の副マーク26b、27b、28b」を単に「副マーク26b、27b、28b」と称し、「第1~第3の主マーク26a、27a、28a及び第1~第3の副マーク26b、27b、28び」を単に「マーク26a~28b」と称する場合ある。
【0045】
[部品実装装置の制御系]
図2は、部品実装装置1の制御装置30を示している。制御装置30は、主な構成要素として、主制御部31、記憶部32、駆動制御部33、画像処理部34及び入出力制御部35を含む。
【0046】
主制御部31は、部品実装装置1を統括的に制御するものであり、CPUやRAMなどからなるコンピュータで構成される。主制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラム及び各種データに基づき、部品実装装置1の各部の動作を制御する。具体的には、基板搬送部3による基板Pの搬送、テープフィーダ5aによる部品の供給、及びヘッドユニット6による部品実装などの各種動作を制御する。これにより、基板Pに部品が実装された部品実装基板が生産される。
【0047】
また、主制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムに基づき、所定のタイミングで、ヘッドユニット6の位置補正用のデータ(以下、補正データDCと称す/本発明の「補正情報」に相当する)を求めるべく、部品実装装置1の各部の動作を制御するとともに各種演算処理を実行する。補正データDCは、上述したヘッドユニット駆動機構8の熱変形により生じるヘッドユニット6の移動誤差を補正するためのデータである。後述する通り、主制御部31は、所定のタイミングで、各ヘッドカメラ22a、22bに、基台2に配置された前記マーク26a~28b(主マーク26a、27a、28a及び副マーク26b、27b、28b)の全部又は一部を撮像させ、その画像データから得られる各マークの位置情報に基づいて補正データDCを求める処理(位置補正用データ取得処理と称す)を実行する。部品の実装動作時には、この補正データDCに基づいて主制御部31がヘッドユニット6の移動目標位置を補正することにより、ヘッドユニット6に移動誤差が生じることが抑制される。なお、当例では、主制御部31が、本発明の「制御部」、「判定部」及び「補正部」に相当する。
【0048】
記憶部32は、部品実装基板の生産プログラムなどの各種プログラムが記憶されるプログラム記憶部32aと、部品実装基板の生産に必要な各種データが記憶されるデータ記憶部32bとを含む。データ記憶部32bには、例えば部品の品種、形状及びサイズや、前記ノズルの形状及びサイズなどのデータが記憶される。また、データ記憶部32bには、位置補正用データ取得処理で求められる補正データDCや、当該処理において取得される各マーク26a~28bの位置情報が蓄積的に記憶される。
【0049】
駆動制御部33は、X、Y、Z、R軸の各サーボモータ13,16、24、25の駆動を制御するドライバであり、各サーボモータ13,16、24、25のエンコーダから送信される位置情報と主制御部31から送信される制御情報とに基づき各サーボモータ13,16、24、25の駆動を制御する。これにより、ヘッドユニット6がX方向及びY方向に移動するとともに、ヘッド20が昇降及び回転(R方向に移動)する。
【0050】
画像処理部34は、各ヘッドカメラ22a、22b及び各部品認識カメラ7から送信される画像データを取込んで、当該画像データに所定の画像処理を施すものである。主制御部31は、画像処理が施された画像データに基づき、ヘッド20(ノズル)に吸着された部品や前記マーク26a~28bなどを認識し、それらの位置情報を取得する。
【0051】
入出力制御部35は、制御装置30と外部機器との通信を制御するインターフェースである。当例では、液晶ディスプレイ等からなる表示部36と、制御装置30に対する各種情報の入力を受け付ける、キーボード等からなる操作部37とがこの入出力制御部35を介して制御装置30に接続されている。
【0052】
[位置補正用データ取得処理]
部品実装装置1では、ヘッドユニット6が部品供給部5と作業位置に位置決めされた基板Pとの間を往復移動しながら当該基板Pに部品を実装する。この部品の実装動作が継続的に実行されると、上記の通り、ヘッドユニット駆動機構8に熱変形が生じてヘッドユニット6に移動誤差が生じる。その結果、設計上の実装位置から実際の部品の実装位置がずれる現象(部品の位置ずれ)が生じる。そこで、この部品実装装置1では、所定のタイミングで以下のような位置補正用データ取得処理が実行され、当該処理により求められる補正データDCに基づき、部品実装動作時のヘッドユニット6の移動目標位置が補正される。
【0053】
図3は、位置補正用データ取得処理を示すフローチャートである。この処理は、部品実装装置1の起動と共にスタートする。位置補正用データ取得処理がスタートすると、主制御部31は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達したか否かの判断指標となるカウンタ値nを「0」にリセットし(ステップS1)、その後、「初期データDI(本発明の「初期情報」に相当する)」が取得済みか否かを判断する(ステップS3)。「初期データDI」とは、後記ステップS5の処理で取得される第1~第3のマーク対26~28の各マーク26a~28bの位置情報である。なお、「位置情報」とは、マークの位置を特定することが可能な情報であって、「座標」はその一例である。
【0054】
ステップS3でNoの場合には、主制御部31は、初期データDIを取得する処理(初期データ取得処理という)を実行する(ステップS5)。すなわち、主制御部31は、ヘッドユニット6を移動させて各ヘッドカメラ22a、22bにより各マーク26a~28bを撮像し、それらの画像データから各マーク26a~28bの位置情報を取得する。この場合、主制御部31は、例えば第1マーク対26、第2マーク対27、第3マーク対28の順番で各マークを撮像する。この場合のヘッドユニット6の概略的な動きは、図5(a)に実線矢印で示すような動きとなる。
【0055】
主制御部31は、取得した初期データDIを実装データ記憶部32bに記憶し(ステップS7)、その後、ステップS9に処理を移行する。なお、ステップS5、S7の各処理は、部品実装装置1の起動後、少なくとも部品の実装動作が開始される前に実行される。また、ステップS3の処理でYesと判断した場合には、主制御部31は、ステップS5、S7の処理をスキップしてステップS9に処理を移行する。
【0056】
ステップS9では、主制御部31は、マーク26a~28bの位置情報を再度取得するタイミング(再取得タイミング)であるか否かを判断する。ここでYesの場合には、主制御部31は、さらにカウンタ値nが予め設定された閾値N以上か否かを判断する(ステップS11)。このステップS11の判断は、後述する通り、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達しているか否かの判断である。ここでNoの場合には、主制御部31は、ステップS5の処理と同様にして、各ヘッドカメラ22a、22bにより全てのマーク26a~28bを撮像し、それらの画像データから各マーク26a~28bの位置情報を再取得する(ステップS13)。そして、再取得した各マーク26a~28bの位置情報(再取得データDRという)をデータ記憶部32bに蓄積的に記憶する(ステップS17)。
【0057】
なお、当例では設定時間が経過する毎にステップS13又は後述するステップS15で、マークの位置情報を再取得する処理(位置データ再取得処理という)が実行される。従って、ステップS9の処理では、主制御部31は、例えばタイマーによる計時時間が設定時間に達したか否かに基づき前記再取得タイミングか否かを判断する。
【0058】
主制御部31は、次に、データ記憶部32bに記憶されている初期データDIと最新の再取得データDRとに基づき、前記補正データDCを算出し、その結果をデータ記憶部32bに更新的に記憶する(ステップS19)。補正データDCは、ヘッドユニット6のX、Y各方向についての補正値として算出される。補正データDCは、初期データDIの各マーク26a~28bの位置情報と、再取得データDRの各々対応するマーク26a~28bの位置情報とのずれ量(偏差)に基づき求められるが、具体的な算出方法は周知であるため(例えば特開2018-32681号公報)、ここでは、算出方法についての具体的な説明は省略する。なお、部品の実装動作時には、主制御部31は、データ記憶部32bに記憶されている最新の補正データDCに基づきヘッドユニット6の移動目標位置を補正し、当該補正後の移動目標位置に基づきヘッドユニット6の動作を制御する。
【0059】
次に、主制御部31は、特定の一のマーク対(特定マーク対Mと称する)について、主マークのXY各方向の前記ずれ量の変化量(ΔXa、ΔYa)が閾値(Xta、Yta)以下に収束し、かつ、副マークのXY各方向の前記ずれ量の変化量(ΔXb、ΔYb)が閾値(Xtb、Ytb)以下に収束しているかを判断する(ステップS21)。
【0060】
当例では、主制御部31は、例えば第1マーク対26を特定マーク対MとしてステップS21の処理を実行する。
【0061】
詳しくは、主制御部31は、最新の再取得データDRにおける第1主マーク26aのXY各方向のずれ量(ΔXpa、ΔYpa)と、前回取得された再取得データDRにおける当該第1主マーク26aのXY各方向のずれ量(ΔXca、ΔYca)とを算出し、これらの差、つまり、ずれ量の変化量(ΔXpa-ΔXca、ΔYpa-ΔYca)が閾値(Xta、Yta)以下であるか否かを判断する。
【0062】
また、主制御部31は、最新の再取得データDRにおける第1副マーク26bのXY各方向のずれ量(ΔXpb、ΔYpb)と、前回取得された再取得データDRにおける当該第1副マーク26bのXY各方向のずれ量(ΔXcb、ΔYcb)とを算出し、これらの差、つまり、ずれ量の変化量(ΔXpb-ΔXcb、ΔYpb-ΔYcb)が閾値(Xtb、Ytb)以下であるか否かを判断する。
【0063】
そして、第1主マーク26aに関する前記変化量(ΔXpa-ΔXca、ΔYpa-ΔYca)が閾値(Xta、Yta)以下で、かつ、第1副マーク26bに関する前記変化量(ΔXpb-ΔXcb、ΔYpb-ΔYcb)が閾値(Xtb、Ytb)以下である場合に、主制御部31は、ステップS21の処理においてYesと判断する。
【0064】
ステップS21の処理でYesの場合には、主制御部31は、カウンタ値nを「1」だけインクリメントした後、ステップS3に処理を移行し、他方、Noの場合には、ステップS23の処理をスキップしてステップS1に処理を移行する。
【0065】
一方、前記ステップS11の処理においてYesの場合、すなわち、カウンタ値nが予め設定された閾値N以上であると判断した場合には、主制御部31は処理をステップS15に移行する。ステップS11の処理でYesの場合とは、要するに、ステップS21の処理でN回以上連続してYesと判断した場合、つまり、特定マーク対Mの各マークの前記ずれ量に殆ど変化が見られない場合である。従って、この場合には、主制御部31は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達していると判断して、処理をステップS15に移行する。
【0066】
ステップS15では、主制御部31は、第1~第3のマーク対26~28のうち、主マーク26a、27a、28aのみ、又は副マーク26b、27b、28bのみを撮像し、撮像したマークの位置情報を再取得する処理を実行する。すなわち、このステップS15の処理も、位置データ再取得処理という点でステップS13と共通する。しかし、ステップS13では、全マーク26a~28bについて位置情報を再取得するのに対して、ステップS15では、主マーク26a、27a、28aのみ、又は副マーク26b、27b、28bのみの位置情報を再取得する。このように、当例では、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達する前後で位置データ再取得処理の内容が異なる。要するに、ステップS13の処理は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達する前の位置データ再取得処理であり、ステップS15の処理は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達した後の位置データ再取得処理である。
【0067】
なお、主制御部31は、図3の制御がスタートした後、最初のステップS15の処理では、第1ヘッドカメラ22aにより、主マーク26a、27a、28aを撮像し、それらの画像データから当該主マーク26a、27a、28aの位置情報を再取得する(本発明の「第1の位置情報再取得処理」に相当する)。そして、次回のステップS15の処理では、第2ヘッドカメラ22bにより、副マーク26b、27b、28bを撮像し、それらの画像データから当該副マーク26b、27b、28bの位置情報を再取得する(本発明の「第2の位置情報再取得処理」に相当する)。このように、主制御部31は、ステップS15の処理については、主マーク26a、27a、28aの位置情報を再取得する処理と副マーク26b、27b、28bの位置情報を再取得する処理とを、位置データ再取得処理のタイミングが到来する毎に交互に実行する。
【0068】
なお、ステップS15の処理の直後に実行されるステップS17の処理については、主制御部31は、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で再取得されたマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRを作成し、当該再取得データDRを記憶部32に記憶する。
【0069】
この点について具体的に説明する。図4(a)は、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRの一例を示している。図示の例では、各マーク26a~28bの位置情報を、初期データDIにおける各マーク26a~28bの位置情報に対するずれ量(偏差)で示している。
【0070】
例えばステップS15の処理において、主マーク26a、27a、28aの位置情報を再取得した場合には、主制御部31は、図4(a)に示す再取得データDRのうち、主マーク26a、27a、28aの位置情報のみを書き換えた、図4(b)に示すような再取得データDRを作成し(破線枠内参照)、当該再取得データDRをデータ記憶部32bに記憶する。そして、次回のステップS15の処理で副マーク26b、27b、28bの位置情報を再取得すると、主制御部31は、図4(b)に示す再取得データDRのうち、副マーク26b、27b、28bの位置情報のみを書き換えた、図4(c)に示すような再取得データDRを作成し(破線枠内参照)、当該再取得データDRをデータ記憶部32bに記憶する。
【0071】
以降、ステップS11でYesと判断し、ステップS15の位置データ再取得処理を実行した場合には、主制御部31は、ステップS17において、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で再取得されたマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRを作成し、当該再取得データDRを記憶部32に記憶する。従って、ステップS19では、記憶部32に記憶されている最新の再取得データDRに基づいて、主制御部31が補正データDCを算出する。
【0072】
なお、ステップS15で第1主マーク26aの位置情報が取得された場合には、主制御部31は、当該第1主マーク26aに関する前記変化量(ΔXpa-ΔXca、ΔYpa-ΔYca)が閾値(Xta、Yta)以下であるか否かのみに基づきステップS21の判断を行い、他方、ステップS15で第1副マーク26bの位置情報が取得された場合には、第1副マーク26bに関する前記変化量(ΔXpb-ΔXcb、ΔYpb-ΔYcb)が閾値(Xtb、Ytb)以下であるか否かのみに基づきステップS21の判断を行う。
【0073】
当例では、図3のステップS5が本発明の「初期情報取得工程」に相当し、ステップS13、S15が本発明の「位置情報再取得工程」に相当し、ステップS19が本発明の「補正情報算出工程」に相当し、ステップS11が本発明の「判定工程」に相当する。また、部品の実装動作において、主制御部31が、データ記憶部32bに記憶されている最新の補正データDCに基づきヘッドユニット6の移動目標位置を補正し、当該移動目標位置に基づきヘッドユニット6の動作を制御する工程が、本発明の「位置補正工程」に相当する。
【0074】
また、ステップS5で実行される処理(初期データ取得処理)の動作が本発明の「初期情報取得動作」に相当し、ステップS13、S15で実行される処理(位置データ再取得処理)の動作が本発明の「位置情報再取得動作」に相当する。
【0075】
[作用効果]
上記部品実装装置1によれば、ヘッドユニット6に第1、第2の2つのヘッドカメラ22a、22bが搭載され、基台2に備えられた各マーク対26~28のうち主マーク26a、27a、28aが第1ヘッドカメラ22aで、副マーク26b、27b、28bが第2ヘッドカメラ22bで各々撮像され、これにより取得される各マーク26a~28bの位置情報に基づき補正データDCが求められる。そのため、1つのヘッドカメラのみで撮像された複数のマークの位置情報に基づいて補正データが求められる場合と比べると、補正データDCの信頼性が高く、よって、部品実装基板における部品の位置ずれをより高度に抑制することが可能となる。
【0076】
しかも、上記部品実装装置1では、マーク26a~28bの位置情報を再取得する場合であって、かつ、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達している場合には、主マーク26a、27a、28a、又は副マーク26b、27b、28bの何れかのみが撮像される。そして、当該撮像されたマークの位置情報のみが書き換えられた再取得データDRが作成されて、当該再取得データDRに基づいて補正データDCが求められる。そのため、位置データ再取得処理において、常に全てのマーク26a~28bを撮像する場合に比べてヘッドユニット6の移動量が短縮される。具体的には、主マーク26a、27a、28aのみを撮像する場合のヘッドユニット6の移動経路は、概略的には、図5(a)中の破線矢印に示す通りであり、副マーク26b、27b、28bのみを撮像する場合のヘッドユニット6の移動経路は、概略的には、図5(b)中の破線矢印に示す通りである。このように、何れの場合も、ヘッドユニット6の移動量は、全てのマーク26a~28bを撮像する場合(図5(a)中の実線矢印)に比べて短縮されており、よって、その分、位置データ再取得処理に要する時間が短縮される。
【0077】
なお、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達している場合には、位置データ再取得処理において再取得される位置情報に変化が生じないか、生じていても微差に過ぎない場合が多い。そのため、主マーク26a、27a、28a、又は副マーク26b、27b、28bの何れかのみを撮像して得られたマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRに基づいて補正データDCを求める場合でも、当該補正データDCの信頼性は維持され得る。
【0078】
従って、上記部品実装装置1(部品実装方法)は、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを抑制する一方で、タクトタイムの短縮化にも寄与するものと言える。
【0079】
特に、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達している場合の位置データ再取得処理(ステップS15)については、主マーク26a、27a、28aの位置情報と、副マーク26b、27b、28bの位置情報とがマークの再取得タイミングが到来する毎に交互に実行される。そのため、この点でも補正データDCの信頼性が維持されると言える。すなわち、例えば、常に一方のマーク、例えば主マーク26a、27a、28aのみの位置情報を取得するようにしてもよいが、この場合には、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達しているとはいえ、長期的に副マーク26b、27b、28bの位置情報が更新されないことにより、当該位置情報の信頼性が低下する虞がある。すなわち、再取得データDRにおける副マーク26b、27b、28bの位置情報と、実際に副マーク26b、27b、28bを撮像して得られる位置情報とが精度上無視できない程度に乖離していることも考えられる。この場合には、補正データDCの信頼が低下し得る。この点、上記実施形態によれば、主マーク26a、27a、28aの位置情報と、副マーク26b、27b、28bの位置情報とが交互に更新されるので、再取得データDRの信頼性の低下を抑制でき、その結果、補正データDCの信頼性をより高度に確保することが可能となる。
【0080】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る部品実装装置100(本発明に係る部品実装方法が使用される部品実装装置)の平面図である。部品実装装置100の基本的な構成は、第1実施形態の部品実装装置1と同等である。よって、以下の部品実装装置100の説明では、第1実施形態の部品実装装置1と共通する部分については同一符号を付して説明を省略(又は簡略)し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0081】
図6に示すように、第2実施形態の部品実装装置100の基台2には、第1~第3のマーク対26~28の代わりに、第1~第3のマーク46~48(以下、単にマーク46~48と称する場合がある)が備えられている。第1~第3のマーク46~48は、例えば、第1実施形態の第1~第3の主マーク26a、27a、28aと同じ位置に設けられている。
【0082】
第1実施形態の部品実装装置1では、主マーク26a、27a、28aが第1ヘッドカメラ22aにより撮像され、副マーク26b、27b、28bが第2ヘッドカメラ22bにより撮像される。これに対して、第2実施形態の部品実装装置100では、各マーク46~48が両方のヘッドカメラ22a、22bで撮像される。すなわち、第2実施形態では、第1ヘッドカメラ22aに割り当てられているマークと、第2ヘッドカメラ22bに割り当てられているマークとが同一である。この点が第1実施形態の部品実装装置1と第2実施形態の部品実装装置1との主たる相違点である。
【0083】
第2実施形態では、位置補正用データ取得処理(図3)の内容も、以下の点が第1実施形態と相違する。
【0084】
まず、ステップS5の初期データ取得処理では、主制御部31は、各ヘッドカメラ22a、22bでそれぞれマーク46~48を撮像する。これにより、初期データDIとして、第1ヘッドカメラ22aの撮像に基づくマーク46~48の位置情報と、第2ヘッドカメラ22bの撮像に基づくマーク46~48の位置情報とを取得する。
【0085】
ステップS13の位置データ再取得処理では、上記のステップS5と同様に、主制御部31は、各ヘッドカメラ22a、22bでそれぞれマーク46~48を撮像し、再取得データDRとして、各ヘッドカメラ22a、22bの撮像に基づくマーク46~48の位置情報を再取得する。図7(a)は、データ記憶部32bに記憶される再取得データDRの一例を示している。図7(a)の例も、図4の例と同様に、各マーク46~48の位置情報を、初期データDIの各マーク46~48の位置情報に対するずれ量(偏差)で示している。
【0086】
ステップS15の位置データ再取得処理では、主制御部31は、第1ヘッドカメラ22aのみ、又は第2ヘッドカメラ22bのみでマーク46~48を撮像し、ヘッドカメラ22a、22bのうちの何れか一方のみの撮像に基づくマーク46~48の位置情報を再取得する。この場合、主制御部31は、図3の制御がスタートした後、最初のステップS15の処理では、第1ヘッドカメラ22aのみによりマーク46~48を撮像し、それらの画像データから当該マーク46~48の位置情報を再取得する(本発明の「第1の位置情報再取得処理」に相当する)。そして、次回のステップS15の処理では、第2ヘッドカメラ22bのみによりマーク46~48を撮像し、それらの画像データから当該マーク46~48の位置情報を再取得する(本発明の「第2の位置情報再取得処理」に相当する)。このように、主制御部31は、ステップS15の処理については、第1ヘッドカメラ22aのみの撮像に基づきマーク46~48の位置情報を再取得する処理と、第2ヘッドカメラ22bのみの撮像に基づきマーク46~48の位置情報を再取得する処理とを、位置データ再取得処理のタイミングが到来する毎に交互に実行する。
【0087】
ステップS15の処理の直後に実行されるステップS17の処理については、主制御部31は、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で再取得されたマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRを作成し、当該再取得データDRを記憶部32に記憶する。
【0088】
具体的には次の通りである。例えば図7(a)に示す再取得データDRがデータ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRとする。この状況で、ステップS15において、第1ヘッドカメラ22aの撮像のみに基づきマーク46~48の位置情報を再取得した場合には、主制御部31は、図7(a)に示す再取得データDRのうち、第1ヘッドカメラ22aの撮像に基づくマーク46~48の位置情報のみを書き換えた、図7(b)に示すような再取得データDRを作成し(破線枠内参照)、当該再取得データDRをデータ記憶部32bに記憶する。そして、次回のステップS15の処理で、第2ヘッドカメラ22bの撮像のみに基づきマーク46~48の位置情報を再取得すると、主制御部31は、図7(b)に示す再取得データDRのうち、第2ヘッドカメラ22bの撮像に基づくマーク46~48の位置情報のみを書き換えた、図7(c)に示すような再取得データDRを作成し(破線枠内参照)、当該再取得データDRをデータ記憶部32bに記憶する。
【0089】
以降、ステップS11でYesと判断して、ステップS15の位置データ再取得処理を実行した場合には、ステップS17において、主制御部31は、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で再取得されたマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRを作成し、当該再取得データDRを記憶部32に記憶する。
【0090】
以上のような第2実施形態の部品実装装置100についても、第1実施形態の部品実装装置1と同様の作用効果を享受することができる。すなわち、この部品実装装置100によれば、ヘッドユニット6に搭載された2つのヘッドカメラ22a、22bで基台2に備えられたマーク46~48が各々撮像され、各ヘッドカメラ22a、22bの撮像に基づき取得される各マーク46~48の位置情報に基づき補正データDCが算出される。そのため、1つのヘッドカメラのみで撮像された複数のマークの位置情報に基づいて補正データが算出される場合に比べると、補正データDCの信頼性が高く、部品実装基板における部品の位置ずれをより高度に抑制することができる。
【0091】
しかも、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形が飽和状態に達している場合には(ステップS11でYes)、第1ヘッドカメラ22a、又は第2ヘッドカメラ22bの何れか一方のみでマーク46~48が撮像され(ステップS15)、これにより再取得されたマークの位置情報のみが書き換えられた再取得データDRが作成される(ステップS17)。そして、当該再取得データDRに基づいて補正データDCが求められる(ステップS19)。そのため、常に両方のヘッドカメラ22a、22bでマーク46~48を撮像する場合に比べると、ヘッドユニット6の移動量が短縮され、その分、位置データ再取得処理に要する時間も短縮される。
【0092】
従って、第2実施形態の部品実装装置100(部品実装方法)によれば、第1実施形態の部品実装装置1と同様に、ヘッドユニット駆動機構8の熱変形に起因する実装部品の位置ずれを抑制する一方で、タクトタイムの短縮化にも寄与するものとなる。
【0093】
なお、この第2実施形態においては、ステップS15の位置データ再取得処理が実行された直後のステップS17の処理として、上述したような処理(図7(b)、(c)を用いて説明した処理)に代えて、以下のような処理が実行されるようにしてもよい。なお、以下の説明では、便宜上、第1ヘッドカメラ22aが撮像した画像データに基づき再取得されるマーク46~48の位置情報を「第1再取得情報」と称し、第2ヘッドカメラ22bが撮像した画像に基づき再取得されるマーク46~48の位置情報を「第2再取得情報」と称する。
【0094】
例えば図7(a)に示す再取得データDRが、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRとする。この状況で、ステップS15において、第1再取得情報を取得した場合には、主制御部31は、図8(a)に示すような再取得データDRを作成してデータ記憶部32bに記憶する。
【0095】
この再取得データDRの第1再取得情報(図8(a)の破線枠部)は、ステップS15で実際に取得された情報である。一方、第2再取得情報は、この実際に取得した第1再取得情報に基づき、図7(a)に示す再取得データDRの第2再取得情報(すなわち最新の第2取得情報)を補正した情報である。具体的には、図7(a)に示す前回の第1再取得情報に対する今回の第1再取得情報の変化量だけ、図7(a)に示す第2再取得情報をオフセットした位置情報である。
【0096】
例えば、第1マーク46の位置情報(X方向、Y方向)のみに着目した場合、主制御部31は、図7(a)に示す前回の第1再取得情報(-0.002、0.004)に対する今回取得した第1再取得情報(-0001、0.002)の変化量(+0.001,-0.002)を算出するとともに、当該変化量に基づき、図7(a)に示す第2再取得情報(-0.001,0.005)をオフセット補正した情報(0.000,0.003)を算出し、実際に取得された第1再取得情報と当該補正後の第2再取得情報とで構成される再取得データDR(図8(a))をデータ記憶部32bに記憶する。
【0097】
そして、次回のステップS15の処理において、実際に第2再取得情報を取得すると、主制御部31は、図8(b)に示すような再取得データDRを作成してデータ記憶部32bに記憶する。この再取得データDRの第2再取得情報(図8(b)の破線枠部)は、ステップS15で実際に取得された情報である。一方、第1再取得情報は、実際に取得した第2再取得情報に基づき、図8(a)に示す再取得データDRの第1再取得情報(すなわち最新の第1取得情報)を補正した情報である。具体的には、図8(a)に示す前回の第2再取得情報に対する今回の第2再取得情報の変化量だけ、図8(a)に示す第1再取得情報をオフセットした位置情報である。
【0098】
このように、第1再取得情報及び第2再取得情報のうち、実際に取得された再取得情報の変化量に準じて、取得されてない方の再取得情報を補正するようにしてもよい。このような構成によれば、取得されてない方の再取得情報として取得済みの再取得情報をそのまま用いる場合(上述した図7(b)、(c)の例)に比べて、再取得データDRの信頼性、ひいてはステップS19で求められる補正データDCの信頼性を向上させることが可能となる。
【0099】
なお、図8(a)、(b)を用いて説明したような第2実施形態の位置補正用データ取得処理は、第1実施形態のように、各ヘッドカメラ22a、22bで互いに異なるマークを撮像してそれらの位置情報を取得する構成についても同様に適用可能である。しかし、当該位置補正用データ取得処理は、第1再取得情報及び第2再取得情報のうち、実際に取得された再取得情報の変化量をそのまま用いて、取得されてない方の再取得情報を補正する。そのため、再取得データDRの信頼性、ひいては補正データDCの信頼性を確保する観点からは、各ヘッドカメラ22a、22bにより互いに共通するマーク46~48を撮像してそれらの位置情報を取得する第2実施形態の構成に適していると言える。
【0100】
[変形例等]
以上説明した部品実装装置1、100は、本発明に係る部品実装装置の好ましい実施形態の例示であって、部品実装装置1,100の具体的な構成や、この部品実装装置1,00で使用される上記部品実装方法の具体的な内容は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成(方法)を採用することも可能である。
【0101】
(1)実施形態では、設定時間が経過するタイミングで位置データ再取得処理(ステップS13、S15)が実行されるが、例えば、作業位置から部品実装基板が搬出される期間や、作業位置へ新たな基板Pが搬入される期間など部品の実装動作が中断される期間(中断期間と称する)を利用して、一部又は全部のマークの位置情報を先行して(前倒しで)再取得するようにしてもよい。以下、この点について具体的に説明する。
【0102】
図9(a)は、第1実施形態の部品実装装置1におけるマーク26a~28bの位置情報の再取得のタイミング(図3のステップS15の位置データ再取得処理のタイミング)を示すタイミングチャートである。図中の丸印は、マーク26a~28bのうち実際に撮像されて位置情報が取得されるマークを示している。すなわち、主制御部31は、主マーク26a、27a、28aの位置情報の再取得をt1時点に開始し、このt1時点から設定時間T0が経過したt2時点で副マーク26b、27b、28bの位置情報の再取得を開始する。その後、設定時間T0が経過する度に、主マーク26a、27a、28aの位置情報の再取得と、副マーク26b、27b、28bの位置情報の再取得とを交互に実行する。
【0103】
ここで、例えば図9(b)に示すように、t1時点の経過後、設定時間T0が経過する前にヘッドユニット6の実装動作に中断期間が発生した場合には、主制御部31は、その中断期間の長さに応じて、次回の位置データ再取得処理で取得予定の副マーク26b、27b、28bの一部又は全部の位置情報を先行して取得する処理(先行処理という)を実行する。図示の例では、2つの副マーク26b、27bの位置情報が中断期間中(t1・2時点~t1・3時点)に再取得されている。そして、中断期間中に位置情報を再取得できなかったマークが生じた場合には、主制御部31は、t1時点から設定時間T0が経過したt2時点、すなわち本来の再取得タイミングで、残りのマーク(当例では第3副マーク28b)の位置情報を再取得する。
【0104】
なお、先行処理を実行した場合には、主制御部31は、先行処理が開始された時点(t1・2時点)を基準に、次の設定時間T0を計時する。
【0105】
以上のような構成によれば、実装動作の中断期間を利用して位置データ再取得処理の一部又は全部を先行して実行できるため、常に一定の時間間隔で(設定時間T0の経過毎に)位置データ再取得処理を実行する場合に比べて、部品実装装置1のタクトタイムの短縮化に寄与するものとなる。なお、この場合には、図9(b)に示すように、禁止期間T1を設定するのが望ましい。つまり、位置データ再取得処理が実行された後、当該禁止期間T1の経過後(t1・1時点以降)に中断期間が発生する場合にのみ、主制御部31が先行処理を実行するようにし、中断期間が発生した場合でもそれが禁止期間T1の経過前であれば、先行処理の実行を禁止するのが好適である。これは、位置データ再取得処理が実行される時間間隔が短いと、再取得される位置情報と前回の位置情報とが同一になる可能性が高く、位置データ再取得処理で取得される位置情報の有用性が損なわれるためである。
【0106】
なお、ここでは、先行処理について、図3のステップS15の位置データ再取得処理が定期的に実行される場合を例に説明したが、先行処理は、図3のステップS13、S15の位置データ再取得処理に拘わらず実行可能である。
【0107】
(2)第1実施形態では、図3のステップ15の位置データ再取得処理において、主制御部31は、3つの主マーク26a、27a、28a、又は3つの副マーク26b、27b、28bを撮像してそれらの位置情報を再取得するが、主マーク26a、27a、28aのうちの何れか一つ(例えば第1主マーク26a)、又は副マーク26b、27b、28bのうちの何れか一つ(例えば第1副マーク26b)を撮像して、その位置情報を再取得するようにしてもよい。この構成(方法)によれば、位置データ再取得処理において撮像すべきマークの数が1つとなるため、当該処理に要する時間を可及的に短くすることが可能となる。この場合、ステップS17の処理については、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で再取得されたマークの位置情報のみ、つまり、撮像された1つのマークの位置情報のみを書き換えた再取得データDRを作成し、当該再取得データDRをデータ記憶部32bに記憶するようにする。
【0108】
なお、3つのマークのうち何れか一つを撮像するという当該構成(方法)は、第2実施形態についても同様に適用可能である。つまり、第1ヘッドカメラ22aにより第1~第3のマーク46~48のうち何れか一つを撮像して、又は第2ヘッドカメラ22bにより第1~第3のマーク46~48のうちの何れか一つを撮像してその位置情報を再取得するようにしてもよい。
【0109】
この際、第1再取得情報及び第2再取得情報のうち、実際に取得された再取得情報と、その変化量に準じて、取得されてない方の再取得情報を補正(オフセット)した再取得情報とを再取得データDRとする場合には、以下のようにすればよい。すなわち、データ記憶部32bに記憶されている最新の再取得データDRのうち、ステップS15で実際に再取得されたマークの位置情報のみ、つまり、実施に撮像された一つマークの位置情報のみを書き換え、その他のマークの位置情報については、実際に取得された前記一つのマークの位置情報の変化量に準じて補正(オフセット)する。例えば、第1ヘッドカメラ22aの撮像により第1マーク46の位置情報のみが実際に取得された場合には、データ記憶部32bに記憶されている再取得データDRのうち、第1ヘッドカメラ22aの実際の撮像に基づく第1マーク46の位置情報のみを書き替え、第1ヘッドカメラ22aの撮像に基づく他のマーク(第2、第3マーク47、48)の位置情報、および第2ヘッドカメラ22bの撮像に基づく第1~第3のマーク46~48の位置情報については、実際に取得された第1マーク46の位置情報の変化量に準じて再取得データDRを補正し、これを新たな再取得データDRとしてデータ記憶部32bに記憶するようにする。 (3)実施形態の位置補正用データ取得処理(図3)では、主制御部31は、設定時間が経過するタイミングで位置データ再取得処理(ステップS13、S15)を実行しているが、勿論、設定時間以外のタイミングで位置データ再取得処理を実行するようにしてもよい。例えば、基板Pの生産数や生産ロット数が所定値に達した時点で位置データ再取得処理を実行するようにしてもよい。
【0110】
(4)実施形態のステップS21の処理では、特定マーク対Mにおける主マーク及び副マークの双方について、ずれ量の変化量が閾値以下に収束しているか否かを判断しているが、例えば、主マーク又は副マークの何れか一方について、前記ずれ量の変化量が閾値以下に収束しているか否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1、100 部品実装装置
2 基台
6 ヘッドユニット
8 ヘッドユニット駆動機構
20 ヘッド
22a 第1ヘッドカメラ(第1撮像部)
22b 第2ヘッドカメラ(第2撮像部)
26 第1マーク対
26a 第1主マーク
26b 第1副マーク
27 第2マーク対
27a 第2主マーク
27b 第2副マーク
28 第3マーク対
28a 第3主マーク
28b 第3副マーク
30 制御装置
31 主制御部(制御部、判定部、補正部)
32 記憶部
32a プログラム記憶部
32b データ記憶部
46 第1マーク
47 第2マーク
48 第3マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9