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特許7346362速度および地表針路の保護レベルを算出するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】速度および地表針路の保護レベルを算出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/52 20100101AFI20230911BHJP
   G01S 19/37 20100101ALI20230911BHJP
【FI】
G01S19/52
G01S19/37
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105560
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021001883
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】16/445,743
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520221224
【氏名又は名称】ノバテル インク.
【氏名又は名称原語表記】NovAtel Inc.
【住所又は居所原語表記】10921 14th Street NE, Calgary, Alberta T3K 2L5, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン カリング
(72)【発明者】
【氏名】ランス デ グルート
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0182495(US,A1)
【文献】O. Garcfa Crespillo et al.,"GNSS-aided INS Integrity Concept",Proceedings of 27th International Technical Meeting of the ION Satellite Divison (ION GNSS+ 2014),Institute of Navigation,2014年09月12日,pp.2069-2077
【文献】Bruce Romney et al.,"Velocity RAIM",Proceedings of the 2013 International Technical Meeting of the Institute of Navigation (ITM 2013),Institute of Navigation,2013年01月27日,pp.301-309
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全地球測位衛星システム(GNSS)受信機であって、
少なくとも5台のGNSS衛星から受信した信号に基づいて、少なくとも5つのドップラー測定値を取得し、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたx速度上で計算し、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたy速度上で計算し、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたz速度上で計算し、
第1の選択されたドップラー測定値に対して計算された第1の選択された勾配に基づいて、x速度の保護レベルを算出し、前記第1の選択された勾配は前記x速度に対する最大計算勾配であり、
第2の選択されたドップラー測定値に対して計算された第2の選択された勾配に基づいて、y速度の保護レベルを算出し、前記第2の選択された勾配は前記y速度に対する最大計算勾配であり、
第3の選択されたドップラー測定値に対して計算された第3の選択された勾配に基づいて、z速度の保護レベルを算出し、前記第3の選択された勾配は前記z速度に対する最大計算勾配であり、
少なくとも、前記x速度の保護レベル、前記y速度の保護レベル、および前記z速度の保護レベルに基づいて、北、東、上昇(NEU)フレームの北速度の保護レベルおよび東速度の保護レベルを算出し、
前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルを、地表針路の保護レベルに変換する、
ように構成されたプロセッサを含む、
GNSS受信機。
【請求項2】
前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルが、計算された北速度、計算された東速度、前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルを利用する計算に基づいて、前記地表針路の保護レベルに変換される、請求項1記載のGNSS受信機。
【請求項3】
前記プロセッサが、さらに、
PL(NEU)=R*PL(XYZ)*R
を使用して、前記北速度の保護レベル、前記東速度の保護レベル、および上昇速度の保護レベルであるPL(NEU)を算出するように構成されており、
式中、Rが、前記GNSS受信機の位置に基づいて計算された回転行列であり、PL(XYZ)が、前記x速度の保護レベル、前記y速度の保護レベル、および前記z速度の保護レベルを含む行列であり、Rが、転置されたR行列である、
請求項1記載のGNSS受信機。
【請求項4】
前記プロセッサが、さらに、
前記地表針路の保護レベルを警報限界と比較し、
前記地表針路の保護レベルが前記警報限界を超えない場合、比較された地表針路値がサブシステムで利用できることを判別し、
前記地表針路の保護レベルが前記警報限界を超える場合、前記計算された地表針路値が前記サブシステムで利用できないことを判別する
ように構成されている、請求項3記載のGNSS受信機。
【請求項5】
前記プロセッサが、さらに、
【数1】
を使用して、前記地表針路の保護レベルPL(C.O.G)を算出するように構成されており、
式中、NorthVelが、北速度であり、EastVelが、東速度であり、PL(EastVel)が、前記東速度の保護レベルであり、PL(NorthVel)が、前記北速度の保護レベルである、
請求項1記載のGNSS受信機。
【請求項6】
前記プロセッサが、さらに、
前記少なくとも5台のGNSS衛星から受信した前記信号に基づいて、少なくとも5つの分散測定値を取得し、
前記分散測定値の逆数に基づいて、対角行列である重み行列を計算し、
前記少なくとも5台のGNSS衛星の各々の方向余弦を使用して、成形行列を計算する
ように構成されている、請求項1記載のGNSS受信機。
【請求項7】
前記プロセッサが、さらに、
Inv(G*W*G)*G*W*y=Ky
を使用して、変換行列を算出するように構成されており、
式中、Gが、転置された前記成形行列であり、Wが、前記重み行列であり、Gが、前記成形行列であり、Kが、前記変換行列であり、yが、前記少なくとも5つのドップラー測定値を含むドップラー測定値行列である、
請求項6記載のGNSS受信機。
【請求項8】
特定のドップラー測定値の勾配が、
【数2】
を使用して算出され、
式中、iが、前記特定のドップラー測定値を表し、Slopeiが、前記特定のドップラー測定値の前記勾配であり、Kjiが、前記特定のドップラー測定値およびj状態の前記変換行列からの成分値であり、σiが、前記特定のドップラー測定値に対応する特定の分散値の平方根であり、Piiが、前記特定のドップラー測定値のP行列からの対角成分値であり、前記P行列が、前記成形行列に前記変換行列を乗じたものである、
請求項7記載のGNSS受信機。
【請求項9】
全地球測位衛星システム(GNSS)受信機で求められた地表針路値の保護レベルを算出する方法であって、前記方法が、
少なくとも5台のGNSS衛星から受信した信号に基づいて、少なくとも5つのドップラー測定値を取得することと、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたx速度上で計算することと、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたy速度上で計算することと、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、前記GNSS受信機で計算されたz速度上で計算することと、
第1の選択されたドップラー測定値に対して計算された第1の選択された勾配に基づいて、x速度の保護レベルを算出することであって、前記第1の選択された勾配は前記x速度に対する最大計算勾配である、ことと、
第2の選択されたドップラー測定値に対して計算された第2の選択された勾配に基づいて、y速度の保護レベルを算出することであって、前記第2の選択された勾配は前記y速度に対する最大計算勾配である、ことと、
第3の選択されたドップラー測定値に対して計算された第3の選択された勾配に基づいて、z速度の保護レベルを算出することであって、前記第3の選択された勾配は前記z速度に対する最大計算勾配である、ことと、
少なくとも、前記x速度の保護レベル、前記y速度の保護レベル、および前記z速度の保護レベルに基づいて、北、東、上昇(NEU)フレームの北速度の保護レベルおよび東速度の保護レベルを算出することと、
前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルを、地表針路の保護レベルに変換することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルが、計算された北速度、計算された東速度、前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルを利用する計算に基づいて、前記地表針路の保護レベルに変換される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記北速度の保護レベル、前記東速度の保護レベル、および上昇速度の保護レベルであるPL(NEU)が、
PL(NEU)=R*PL(XYZ)*R
を使用して算出され、
式中、Rが、前記GNSS受信機の位置に基づいて計算された回転行列であり、PL(XYZ)が、前記x速度の保護レベル、前記y速度の保護レベル、および前記z速度の保護レベルを含む行列であり、Rが、転置されたR行列である、
請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、さらに、
前記地表針路の保護レベルを警報限界と比較することと、
前記地表針路の保護レベルが前記警報限界を超えない場合、前記地表針路値がサブシステムで利用できることを判別することと、
前記地表針路の保護レベルが前記警報限界を超える場合、前記地表針路値が前記サブシステムで利用できないことを判別することと、
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記地表針路の保護レベルPL(C.O.G)が、
【数3】
を使用して算出され、
式中、NorthVelが、北速度であり、EastVelが、東速度であり、PL(EastVel)が、前記東速度の保護レベルであり、PL(NorthVel)が、前記北速度の保護レベルである、
請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、さらに、
少なくとも5台のGNSS衛星から受信した前記信号に基づいて、少なくとも5つの分散測定値を取得することと、
前記分散測定値の逆数に基づいて、対角行列である重み行列を計算することと、
前記少なくとも5台のGNSS衛星の各々の方向余弦を使用して、成形行列を計算することと、
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、さらに、
Inv(G*W*G)*G*W*y=Ky
を使用して、変換行列を算出することを含み、
式中、Gが、転置された前記成形行列であり、Wが、前記重み行列であり、Gが、前記成形行列であり、Kが、前記変換行列であり、yが、前記少なくとも5つのドップラー測定値を含むドップラー測定値行列である、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
特定のドップラー測定値の勾配が、
【数4】
を使用して算出され、
式中、iが、前記特定のドップラー測定値を表し、Slopeiが、前記特定のドップラー測定値の前記勾配であり、Kjiが、前記特定のドップラー測定値およびj状態の前記変換行列からの成分値であり、σiが、前記特定のドップラー測定値に対応する特定の分散値の平方根であり、Piiが、前記特定のドップラー測定値のP行列からの対角成分値であり、前記P行列が、前記成形行列に前記変換行列を乗じたものである、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
全地球測位衛星システム(GNSS)受信機であって、
少なくとも5台のGNSS衛星から少なくとも5つのドップラー測定値を取得し、
前記少なくとも5つのドップラー測定値の各々の勾配を、複数の速度状態のそれぞれの速度状態上で計算し、
第1の座標系で計算された複数の他の保護レベルから、北速度の保護レベルおよび東速度の保護レベルを算出し、前記複数の他の保護レベルは、計算された前記勾配に基づいて計算され、前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルは、前記第1の座標系とは異なる第2の座標系で計算され、
前記北速度の保護レベルおよび前記東速度の保護レベルを、地表針路の保護レベルに変換する、
ように構成されたプロセッサを含む、
GNSS受信機。
【請求項18】
前記複数の速度状態が、x速度状態、y速度状態およびz速度状態を含み、前記複数の保護レベルは、x速度の保護レベル、y速度の保護レベル、およびz速度の保護レベルを含み、前記第1の座標系は、地球中心地球固定(ECEF)フレームである、請求項17記載のGNSS受信機。
【請求項19】
前記第2の座標系が、北、東、上昇(NEU)フレームである、請求項17記載のGNSS受信機。
【請求項20】
前記GNSS受信機が、移動車両に搭載されている、請求項17記載のGNSS受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に全地球測位衛星システム(GNSS)に関し、特に、GNSS受信機で計算された速度および地表針路の保護レベルを算出するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
背景情報
従来の手法において、算出された速度の標準偏差は、速度の精度の品質推定値を表すことができる。しかしながら、標準偏差は、速度の精度において68%の信頼度しか提供しない。そのため、自動運転システム(ADS)および先進運転支援システム(ADAS)など、典型的に99%以上の信頼度を必要とする新しい自動車サブシステムでは、GNSS受信機で計算/取得された速度および/または他の関連する値(例えば地表針路)を使用することができない。
【0003】
概要
速度および地表針路の保護レベルを算出するための技法が提供される。一実施形態では、全地球測位衛星システム(GNSS)受信機は、位相範囲速度測定値(ドップラー測定値)および分散測定値を利用して、GNSS受信機で計算される速度(すなわち推定速度)および地表針路の保護レベルを算出する。
【0004】
具体的には、GNSS受信機は、少なくとも5台のGNSS衛星から衛星信号を受信することができる。次に、GNSS受信機は、既知の方法で、衛星信号の受信に基づいてドップラー測定値(すなわち観測値)を取得することができる。GNSS受信機はまた、既知の方法で、衛星信号の受信に基づいて、各ドップラー測定値の測定の精度を示す分散測定値を取得することができる。
【0005】
GNSS受信機は、分散測定値に基づいて重み(W)行列を計算することができる。具体的には、W行列は、分散測定値の逆数を含む対角行列でありうる。GNSS受信機は、ドップラー測定値とGNSS受信機で計算された速度との関係を表す成形(G)行列を計算することができる。G行列は、GNSS受信機104がそこからドップラー測定値を取得する衛星信号を送信する、各GNSS衛星の方向余弦の計算値でありうる。
【0006】
GNSS受信機は、W行列、G行列、およびドップラー測定値(例えばD×1サイズの行列(Dはドップラー測定値の数に等しい))で最小二乗法を利用して、GNSS受信機の速度状態(例えばx速度状態、y速度状態およびz速度状態)ならびにクロックバイアスを算出することができる。GNSS受信機は、各速度状態およびクロックバイアスで各ドップラー測定値の勾配を計算でき、特定のドップラー測定値で計算された勾配は、特定のドップラー測定値が各速度状態およびクロックバイアスに及ぼす影響の強さを示す。
【0007】
次に、GNSS受信機は、各速度状態(例えばx速度状態、y速度状態およびz速度状態)ならびにクロックバイアスの最大勾配を選択でき、最大勾配は、速度状態およびクロックバイアスに最も強く影響するドップラー測定値に関連づけられる。GNSS受信機は、冗長値(例えば、ドップラー測定値の数-4つの未知数)に基づいてテーブルから非中心性パラメータを選択することができ、テーブルは、既知のカイ二乗分布手法を利用して形成可能である。
【0008】
GNSS受信機は、選択した非中心性パラメータに基づいて各速度状態の最大勾配を拡大することにより、地球中心地球固定(ECEF)フレーム内の各速度状態の保護レベルを算出することができる。GNSS受信機は、GNSS受信機の位置(例えば経度および緯度)に基づいて計算される回転行列を利用して、ECEFフレーム内で算出された速度の保護レベルを北、東および上昇(NEU)速度の保護レベルに変換することができる。GNSS受信機は、北および東速度の保護レベルを、北速度、東速度、北速度の保護レベル、ならびに東速度の保護レベルを利用する地表針路の保護レベルに変換することができる。
【0009】
次に、GNSS受信機は、1つ以上の保護レベル(例えば、北、東、上昇および地表針路の保護レベル)を、サブシステム、例えば自動運転システム(ADS)または先進運転支援システム(ADAS)に送信することができる。サブシステムは、保護レベルを1つ以上の警報限界と比較して、GNSS受信機で計算された速度値および/または地表針路値をサブシステムで利用できるかどうかを判別することができる。GNSS受信機で計算された特定の値(例えば速度または地表針路)に関連づけられた保護レベルが警報限界を超えない場合、サブシステムは、安全上重要な環境において特定の値を利用することができる。有利には、計算値の精度につき99%以上のオーダーの信頼度を典型的に必要とするサブシステムは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って算出された保護レベルが警報限界を超えない場合、速度および/または地表針路を利用することができる。
【0010】
以下の説明は、添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるシステムを示す図である。
図2A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、速度および地表針路の保護レベルを算出および利用するためのフロー図である。
図2B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、速度および地表針路の保護レベルを算出および利用するためのフロー図である。
図3A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、計算された速度の保護レベルを示す図である。
図3B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、計算された地表針路の保護レベルを示す図である。
図4A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超える速度の保護レベルを示す図である。
図4B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超えない速度の保護レベルを示す図である。
図5A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超える地表針路の保護レベルを示す図である。
図5B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超えない地表針路の保護レベルを示す図である。
【0012】
例示的な実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、システム100は、全地球測位衛星システム(GNSS)受信機104およびアンテナ106を含む、移動可能な車両102を含む。アンテナ106は、1台以上のGNSS衛星108から1つ以上の衛星信号を受信することができる。例えば、アンテナ106は、少なくとも5台のGNSS衛星108から衛星信号を受信することができる。GNSS受信機104は、アンテナ106での衛星信号の受信に基づいて、位置、速度、地表針路および/または他の関連する値を計算することができる。
【0013】
さらに、GNSS受信機104は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実現する保護レベルプロセス110を含む。保護レベルプロセス110は、ハードウェア、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせであってよい。車両102は、さらに、1つ以上のサブシステム112を含むことができる。例えば、サブシステム112は、自動運転システム(ADS)または先進運転支援システム(ADAS)であってよく、計算値が安全上重要な環境でサブシステム112によって使用可能となるよう、典型的には、精度の99%以上の計算値の信頼度を必要とする。サブシステム112は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って求められた速度および/または地表針路の保護レベルを受信し、保護レベルを1つ以上の警報限界と比較して、速度値および/または地表針路値がサブシステム112によって安全上重要な環境で利用できるかどうかを判別することができる。システム100内のGNSS受信機104およびサブシステム112は、プロセッサ、メモリ、ストレージおよび他のハードウェア(図示せず)を含むことができる。
【0014】
図2Aおよび図2Bは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、速度および地表針路の保護レベルを算出および利用するための一連のステップのフロー図である。簡単化のために、本明細書で使用する例示的な値は、特定の数の小数桁、例えば3桁の小数桁に丸めたところがある。ただし、本明細書に記載の1つ以上の実施形態は、任意の数の少数桁に丸められる値を使用して実現可能であることが明確に企図されている。例えば、本明細書に記載の値は、より高い精度を得るために、8桁以上の少数桁に丸めることができる。
【0015】
手順200は、ステップ205で開始し、GNSS受信機104がドップラー測定値および分散測定値を取得するステップ210に続く。具体的には、アンテナ106が、少なくとも5台のGNSS衛星108から衛星信号を受信することができる。一実施形態では、アンテナ106は、15台~20台のGNSS衛星108から衛星信号を受信する。GNSS受信機104は、既知の方式で、特定の時点でアンテナ106に受信された衛星信号に基づいてドップラー測定値を取得することができる。例えば、アンテナ106が第1の時点で6台のGNSS衛星108から衛星信号を受信する場合、GNSS受信機104は、既知の方式で、それぞれが異なるGNSS衛星108に対応する6つのドップラー測定値を取得する。GNSS受信機はまた、既知の方式で、取得したドップラー測定値の各々について分散測定値を取得する。さらに、GNSS受信機は、既知の方式で、位置、速度および地表針路などを計算できる。
【0016】
一例として、アンテナ106が6台のGNSS衛星108から衛星信号を受信すると仮定する。本明細書に記載の例は、6台のGNSS衛星108から衛星信号を受信することを指すが、本明細書に記載の1つ以上の実施形態は、5台以上の任意の数のGNSS衛星108から受信した衛星信号を利用して実現可能であることが明確に企図されている。当該例では、6台のGNSS衛星108からの衛星信号の受信に基づいて、GNSS受信機104が6つのドップラー測定値を取得し、次のドップラー測定値行列、すなわち
【数1】
を形成する。ドップラー測定値行列は、ドップラー測定値を含むD×1サイズの行列であり、Dは、GNSS受信機104によって取得されたドップラー測定値の数に等しい。ドップラー測定値行列の各ドップラー測定値は、異なるGNSS衛星に対応している。第1のドップラー測定値は、第1のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応し、第2のドップラー測定値は、第2のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応し、第3のドップラー測定値は、第3のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応し、第4のドップラー測定値は、第4のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応し、第5のドップラー測定値は、第5のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応し、第6のドップラー測定値は、第6のGNSS衛星から受信した衛星信号に対応する。
【0017】
さらに、衛星信号の受信に基づいて、GNSS受信機104は、6つの分散測定値(σ)を取得して、次のσ行列、すなわち
【数2】
を形成する。σ行列は、D×1サイズの行列であり、ここで、Dは、GNSS受信機104によって取得されたドップラー測定値の数に等しい。σ行列の各分散測定値は、異なるドップラー測定値に対応している。具体的には、第1の分散測定値は第1のドップラー測定値に対応し、第2の分散測定値は第2のドップラー測定値に対応し、以下同様である。
【0018】
手順はステップ215に続き、GNSS受信機104は速度状態およびクロックバイアスを計算する。具体的には、保護レベルプロセス110は、σ行列の分散測定値の逆数を含む重み(W)行列を計算し、W行列は、ドップラー測定値の数に等しい行および列の数を含む対角行列である。したがって、当該例では、W行列は6×6サイズの行列である。W行列の対角成分の各値は、σ行列の対応する分散測定値の逆数である。例えば、W行列の(1,1)成分値は10.204であり、これは第1の分散測定値0.098の逆数である。同様に、W行列の(2,2)成分値は25.641であり、これは第2の分散測定値0.039の逆数である。他の成分(例えば(3,3)、(4,4)、(5,5)および(6,6))の他の値も、同様の方式で計算される。残りの、例えば対角上にないW行列の成分はゼロである。当該例では、保護レベルプロセス110は、6×6サイズの行列であり、次の成分値を含むW行列、すなわち
【数3】
を計算する。
【0019】
保護レベルプロセス110はまた、ドップラー測定値とGNSS受信機104で計算された速度との間の関係を表す成形(G)行列を計算する。具体的には、G行列は、各GNSS衛星の方向余弦の計算値でありうる。具体的には、G行列は、
【数4】
となる。式中、XSat0は第1のGNSS衛星(例えば、GNSS受信機104が18.607のドップラー測定値を取得するように衛星信号を送信する第1のGNSS衛星)のx座標、XRxはGNSS受信機104のx座標、YSat0は第1のGNSS衛星のy座標、YRxはGNSS受信機104のy座標、ZSat0は第1のGNSS衛星のz座標、ZRxはGNSS受信機104のz座標、XSatnは最後のGNSS衛星(例えば、GNSS受信機が-15.292のドップラー測定値を取得するように衛星信号を送信する第6のGNSS衛星)のx座標、YSatnは最後のGNSS衛星のy座標、ZSatnは最後のGNSS衛星のz座標である。さらに、RangeSat0toRxは、第1の衛星の座標およびGNSS受信機の座標から形成され、式中、
【数5】
である。同様に、
【数6】
である。
【0020】
したがって、保護レベルプロセス110は、全てのGNSS衛星108のx、yおよびz座標ならびにGNSS受信機104のx、yおよびz座標を利用して、G行列を計算する。当該例では、G行列は6×4サイズの行列であり、次の成分値、すなわち
【数7】
が含まれている。線形システムの場合、当業者に既知であるように、y=G*x+eであり、式中、yはドップラー測定値、xは速度状態およびクロックバイアス、Gは成形行列、eはノイズである。したがって、GNSS受信機104は、最小二乗法を利用することができ、具体的には、
x=Inv(G*W*G)*G*W*y=Ky
を利用して、K(例えば、速度状態およびクロックバイアスを含む行列)を解くことができ、式中、GはG行列の転置、WはW行列、GはG行列、yはドップラー測定値行列である。したがって、保護レベルプロセス110は、K(変換行列)を解いてGNSS受信機104の速度状態およびクロックバイアスを計算することができる。当該例では、G行列、W行列およびドップラー測定値行列の値に基づいて、保護レベルプロセス110は、4×6サイズの行列である、次の成分値を含むK、すなわち
【数8】
を解く。式中、第1の行はx速度に対応し、第2の行はy速度に対応し、第3の行はz速度に対応し、第4の行はクロックバイアスに対応し、第1の列は第1のドップラー測定値に対応し、第2の列は第2のドップラー測定値に対応し、第3の列は第3のドップラー測定値に対応し、第4の列は第4のドップラー測定値に対応し、第5の列は第5のドップラー測定値に対応し、第6の列は第6のドップラー測定値に対応する。
【0021】
手順はステップ220に続き、GNSS受信機104は、G行列およびK行列に基づいてP行列を計算する。具体的には、保護レベルプロセス110は、G行列(6×4)をK行列(4×6)で乗算してP行列を計算する。当該例では、P行列には、次の成分値、すなわち
【数9】
が含まれている。
【0022】
手順はステップ225に続き、GNSS受信機104は、各速度状態およびクロックバイアスに関する各ドップラー測定値の勾配を計算する。具体的には、保護レベルプロセス110は、
【数10】
を利用して、各ドップラー測定値の勾配を計算する。式中、Slopeiはi番目のドップラー測定値の勾配(すなわち影響)、Kjiはi番目のドップラー測定値およびj状態のK行列の成分値、σiはi番目のドップラー測定値のσ行列の成分値の平方根であり、Piiはi番目のドップラー測定値のP行列からの対角成分値である。
【0023】
したがって、保護レベルプロセス110は、各速度状態およびクロックバイアスに対する各ドップラー測定値の勾配(すなわち影響)を計算する。次に、保護レベルプロセス110は、D×4サイズの行列であるSlopei行列を形成することができ、ここで、Dは、ドップラー測定値の数に等しい。Slopei行列の各行は異なるドップラー測定値に対応し、第1の列、第2の列、第3の列および第4の列はそれぞれx速度、y速度、z速度およびクロックバイアスに対応する。Slopei行列の各成分に格納されている値は、特定のドップラー測定値が特定の速度状態またはクロックバイアスに及ぼす影響を表す。
【0024】
したがって、当該例を続けると、保護レベルプロセス110は、x速度上の第1のドップラー測定値の勾配を
【数11】
と計算する。さらに、GNSS受信機104は、y速度上の第1のドップラー測定値の勾配を
【数12】
と計算する。さらに、GNNS受信機は、z速度上の第1のドップラー測定値の勾配を
【数13】
と計算する。さらに、GNSS受信機は、クロックバイアスの第1のドップラー測定値の勾配を
【数14】
と計算する。第1のドップラー測定値について保護レベルプロセス110によって計算された勾配は、第1のドップラー測定値が各速度状態およびクロックバイアスに対してどれほど強く(すなわち影響を)有しているかを表す。各速度状態およびクロックバイアスの第1のドップラー測定値に対して計算された各勾配は、Slopei行列の第1の行の対応する列に格納される。GNSS受信機104は、同様に、速度状態およびクロックバイアスの各々に対する他の各ドップラー測定値の勾配を計算して、Slopei行列を形成する。当該例では、Slopei行列には、次の成分値、すなわち
【数15】
が含まれている。Slopei行列の第1の行は、第1のドップラー測定値がx速度(第1の列)、y速度(第2の列)、z速度(第3の列)およびクロックバイアス(第4の列)に及ぼす影響に対応している。第2、第3、第4、第5および第6の行は、第2、第3、第4、第5および第6のドップラー測定値がx速度(第1の列)、y速度(第2の列)、z速度(第3の列)およびクロックバイアス(第4の列)に及ぼすそれぞれの影響に対応する。
【0025】
手順はステップ230に続き、GNSS受信機104は、どのドップラー測定値が各速度状態およびクロックバイアスに最も強く影響するかを判別する。具体的には、保護レベルプロセス110は、Slopei行列から各速度状態およびクロックバイアス(例えば列)の最大勾配値を選択することができる。当該例では、x速度の場合、保護レベルプロセス110は、Slopei行列の第1の列から最大成分値0.341を選択する。当該選択された勾配値は、第6のGNSS衛星108から受信した衛星信号に関連づけられている第6のドップラー測定値に対応するため、保護レベルプロセス110は、第6のドップラー測定値がGNSS受信機104で計算されたx速度に最も強く影響すると判別する。したがって、第6のドップラー測定値における潜在的な誤差が、GNSS受信機104で計算されたx速度に最大の誤差を引き起こすことになる。
【0026】
保護レベルプロセス110はまた、Slopei行列のy速度に対応する第2の列から0.375の最大成分値を選択する。当該選択された勾配値は、第5のGNSS衛星108から受信した衛星信号に関連づけられている第5のドップラー測定値に対応するため、保護レベルプロセス110は、第5のドップラー測定値がGNSS受信機104で計算されたy速度に最も強く影響すると判別する。したがって、第5のドップラー測定値における潜在的な誤差が、GNSS受信機104で計算されたy速度に最大の誤差を引き起こすことになる。さらに、保護レベルプロセス110は、Slopei行列のz速度に対応する第3の列から0.772の最大成分値を選択する。当該選択された勾配値は、第5のGNSS衛星から受信した衛星信号に関連づけられている第5のドップラー測定値に対応するため、GNSS受信機104は、第5のドップラー測定値がGNSS受信機104で計算されたz速度に最も強く影響すると判別する。したがって、第5のドップラー測定値における潜在的な誤差が、GNSS受信機104で計算されたz速度に最大の誤差を引き起こすことになる。
【0027】
さらに、保護レベルプロセス110はまた、Slopei行列のクロックバイアスに対応する第4の列から0.297の最大成分値を選択することができる。当該選択された勾配値は、第6のGNSS衛星から受信した衛星信号に関連づけられている第6のドップラー測定値に対応するため、GNSS受信機104は、第6のドップラー測定値がクロックバイアスに最も強く影響すると判別する。したがって、第6のドップラー測定値における潜在的な誤差が、クロックバイアスに最大の誤差を引き起こすことになる。したがって、当該例では、x速度、y速度、z速度およびクロックバイアスの最大勾配値は、それぞれ0.341、0.375、0.772および0.297となる。
【0028】
手順はステップ235に続き、GNSS受信機104は非中心性パラメータを選択する。具体的には、保護レベルプロセス110は、冗長値(例えば、ドップラー測定値の数-4つの未知数)に基づいてテーブルから非中心性パラメータを選択することができ、テーブルは、誤警報の確率および保護レベルが所望されるインテグリティの割り当てに基づいて形成可能である。より具体的には、保護レベルプロセス110は、既知の非中心カイ二乗分布手法を利用してテーブルを形成することができ、非中心性パラメータは、所望のインテグリティ割り当ての速度解で検出されない最大可能誤差を表すことができる。当該例では、冗長値(すなわち自由度)は2(例えば、6つのドップラー測定値-4つの未知数)である。さらに、当該例では、インテグリティの割り当ては1e-4(例えば99.9999%の信頼度)であり、誤警報の確率は1e-3である。1e-4のインテグリティ割り当ておよび1e-3の誤警報の確率を伴う既知の非中心カイ二乗分布手法に基づいて、保護レベルプロセス110は、既知の方式で、複数の非中心性パラメータを格納するテーブルを形成することができる。次に、GNSS受信機104は、2の冗長値を利用して75.985の非中心性パラメータを選択するためにテーブルにインデックスを付すことができる。
【0029】
手順はステップ240に続き、GNSS受信機104は、最大勾配および非中心性パラメータに基づいて、地球中心地球固定(ECEF)フレーム内の各速度状態の保護レベルを算出する。具体的には、保護レベルプロセス110は、選択された非中心性パラメータで最大勾配を拡大することにより、ECEFフレーム内の各速度状態の保護レベルを計算することができる。より具体的には、保護レベルプロセス110は、各最大勾配に、選択された非中心性パラメータの平方根を乗算して、各速度状態の保護レベルを拡大および算出する。当該例では、保護レベルプロセス110は、x速度の保護レベルを
【数16】
と算出する。さらに、保護レベルプロセス110は、y速度およびz速度の保護レベルをそれぞれ
【数17】
と算出する。各速度状態に対して算出された保護レベルは、GNSS受信機104の真の速度の統計的境界を表す。
【0030】
図3Aは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、計算された速度の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された速度値は、速度矢印301として表すことができ、保護レベルは、速度矢印301を含む幾何学的形状、例えば破線の四角形302として表すことができる。破線の四角形302のサイズ、例えば長さおよび高さは、算出された保護レベル、すなわち統計的境界に等しいかまたは統計的境界を表すことができる。したがって、破線の四角形302の領域303は、例えば特定の信頼度によって、GNSS受信機104の真の速度を含むことが保証される。
【0031】
したがって、当該例では、GNSS受信機の真のx速度は、GNSS受信機104で計算されたx速度の±2.972m/sであることが99.9999%の信頼度で保証されている。同様に、GNSS受信機の真のy速度は、GNSS受信機104で計算されたy速度の±3.269m/sであることが99.9999%の信頼度で保証されている。さらに、GNSS受信機の真のz速度は、GNSS受信機104で計算されたz速度の±4.690m/sであることが99.9999%の信頼度で保証されている。有利には、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って算出される保護レベルは、従来の手法で利用される標準偏差(例えば68%)よりも計算速度の精度においてより高いレベルの信頼度(例えば99.9999%)を提供する。
【0032】
保護レベルプロセス110は、ECEFフレーム内で算出されたx速度、y速度およびz速度の保護レベルを含む対角行列PL(XYZ)行列を形成することができる。当該例では、PL(XYZ)行列は、
【数18】
となる。式中、PL(XYZ)行列の(1,1)成分はx速度の保護レベルに対応し、PL(XYZ)行列の(2,2)成分はy速度の保護レベルに対応し、PL(XYZ)行列の(3,3)成分はz速度の保護レベルに対応している。
【0033】
手順はステップ245に続き、GNSS受信機104は、ECEFフレーム内で算出された速度の保護レベルを北、東、上昇(NEU)速度の保護レベルに変換する。具体的には、保護レベルプロセス110は、GNSS受信機104の現在の位置(例えば、経度および緯度)に基づいて回転(R)行列を計算することができる。R行列は、
【数19】
を利用して計算可能である。式中、LatはGNSS受信機104の緯度の線の座標であり、LonはGNSS受信機104の経度の線の座標である。当該例では、R行列が、
【数20】
であると仮定する。
【0034】
次に、GNSS受信機は、
PL(NEU)=R*PL(XYZ)*R
を利用して、保護レベルをNEUフレームの保護レベルに変換することができる。式中、PL(NEU)は北、東および上昇の保護レベルを有する対角行列、Rは転置された回転行列、PL(XYZ)はECEFフレーム内のx速度、y速度およびz速度の保護レベルを有する対角行列、Rは回転行列である。当該例では、R行列の値とECEF保護レベルとに基づいて、保護レベルプロセス110は、北、東および上昇の保護レベルをそれぞれ3.867m/s、3.025m/sおよび4.175m/sと算出する。すなわち、PL(NEU)行列は、
【数21】
となる。式中、PL(NEU)行列の(1,1)成分は北速度の保護レベルに対応し、PL(NEU)行列の(2,2)成分は東速度の保護レベルに対応し、PL(NEU)行列の(3,3)成分は上昇速度の保護レベルに対応している。
【0035】
手順はステップ250に続き、GNSS受信機104は、北および東速度の保護レベルを地表針路上保護レベルに変換する。具体的には、保護レベルプロセス110は、本明細書に記載しているように、最小二乗法(例えばK行列)を利用して計算された速度に基づいて、北および東速度を最初に計算することができる。当該例では、計算された速度に基づいて、GNSS受信機104は北速度を-28.741m/sと計算し、東速度を-0.776m/sと計算する。次に、保護レベルプロセス110は、
【数22】
を利用して、地表針路(PL(C.O.G))の保護レベルを計算することができる。式中、NorthVelは北速度、PL(EastVel)は東速度の保護レベル、EastVelは東速度、PL(NorthVel)は北速度の保護レベルである。当該例では、これらの値に基づいて、計算された地表針路の保護レベルは6.029度または.10523597ラジアン
【数23】
となる。
【0036】
図3Bは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、計算された地表針路の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された地表針路値は、例えば真北に対して特定の方向に向けられた地表針路矢印304として表すことができる。さらに、保護レベルは、地表針路矢印304を含む幾何学的形状、例えば破線の三角形305として表すことができる。破線の三角形305のサイズは、算出された保護レベル、すなわち統計的境界に等しいかまたは統計的境界を表すことができる。したがって、破線の三角形305の領域306は、例えば特定の信頼度によって、GNSS受信機104の真の地表針路を含むことが保証される。
【0037】
したがって、当該例では、GNSS受信機104の真の地表針路は、GNSS受信機104で計算された地表針路の±6.029度であることが99.9999%の信頼度で保証されている。
【0038】
手順はステップ255に続き、GNSS受信機は1つ以上の保護レベルをサブシステム112に送信する。例えば、サブシステム112は、自動運転システム(ADS)または先進運転支援システム(ADAS)でありうる。したがって、GNSS受信機104は、有線または無線ネットワークを介してサブシステム112に1つ以上の保護レベルを提供することができる。代替実施形態では、サブシステム112は、車両102の外部にあってよく、GNSS受信機104が、有線または無線ネットワークを介して外部サブシステム112に1つ以上の保護レベルを提供してもよい。
【0039】
手順はステップ260に続き、サブシステム112は、保護レベルが警報限界を超えているかどうかを判別する。具体的には、サブシステム112は、GNSS受信機104から受信され、計算された速度または地表針路に関連づけられた保護レベルを警報限界と比較する。一実施形態では、警報限界は、システム設計のパラメータであり、サブシステム112、例えばADSまたはADASが例えば安全上重要な環境で許容しうる最大誤差に設定することができる。例えば、GNSS受信機104で計算された速度が、高精度を必要とする自動ブレーキサブシステムによって利用される場合、警報限界は、0.5m/秒、または他の何らかの精度値に設定可能である。しかしながら、GNSS受信機104で計算された速度が自動速度制御サブシステムによって利用される場合、警報限界は5m/秒、または他の何らかの精度値に設定可能である。すなわち、警報限界は、GNSS受信機104で計算された値(例えば、速度または地表針路)がサブシステムによってどのように利用されるかに基づいていてよい。
【0040】
ステップ260において、保護レベルが警報限界を超えると判別された場合、手順はステップ265に続き、サブシステム112は、GNSS受信機104で計算された値(例えば速度または地表針路)がサブシステム112によって利用不能であると判別する。例えば、サブシステムが自動ブレーキサブシステムであり、警報限界が0.5m/sであると仮定する。この場合、速度状態の各保護レベル(3.867m/s、3.025m/sおよび4.175m/s)は、0.5m/sの警報限界を超えているため、サブシステム112は、GNSS受信機104で計算された速度が、例えば安全上重要な環境ではサブシステム112によって利用不能であると判別する。
【0041】
図4Aは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超える速度の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された速度は、速度矢印401として表すことができる。さらに、保護レベルは、算出された保護レベル、すなわち統計的境界に等しいかまたは統計的境界を表すサイズを有する破線の四角形402によって表すことができる。実線の四角形403は、例えば、サブシステム112、例えばADSまたはADASが許容しうる最大誤差である警報限界を表すことができる。図4Aから分かるように、保護レベルを表す破線の四角形402は、警報限界を表す実線の四角形403を超える。したがって、このような状況では、サブシステム112は計算された速度を使用することができない。次に、ステップ265から、手順はステップ210に続き、図2Aおよび図2Bの一連のステップを繰り返すことができる。
【0042】
図5Aは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超える地表針路の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された地表針路は、地表針路矢印501として表すことができる。さらに、保護レベルは、算出された保護レベル、すなわち統計的境界に等しいかまたは統計的境界を表すサイズを有する破線の三角形502によって表すことができる。実線の三角形503は、例えば、サブシステム112、例えばADSまたはADASが許容しうる最大誤差である警報限界を表すことができる。図5Aから分かるように、保護レベルを表す破線の三角形502は、警報限界を表す実線の三角形503を超える。したがって、このような状況では、サブシステム112は、計算された地表針路を使用することができない。
【0043】
ステップ260において、保護レベルが警報限界を超えないと判別された場合、手順はステップ270に続き、サブシステム112は、GNSS受信機104で計算された値(例えば速度または地表針路)がサブシステム112によって利用可能であると判別する。例えば、サブシステムが自動速度制御サブシステムであり、警報限界が5m/sであると仮定する。この場合、速度状態の各保護レベル(3.867m/s、3.025m/s、および4.175m/s)は、5m/sの警報限界を超えないため、サブシステム112は、GNSS受信機104で計算された速度が、例えば安全上重要な環境で、サブシステム112によって利用可能であると判別する。
【0044】
図4Bは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超えない速度の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された速度は、速度矢印404として表すことができる。さらに、保護レベルは、算出された保護レベルに等しいかまたは算出された保護レベルを表すサイズを有する破線の四角形405によって表すことができる。実線の四角形406は、例えば、サブシステム112、例えばADSまたはADASが許容しうる最大誤差である警報限界を表すことができる。図4Bから分かるように、保護レベルを表す破線の四角形405は、警報限界を表す実線の四角形406を超えない。したがって、このような状況では、サブシステム112は計算された速度を使用することができる。
【0045】
図5Bは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、警報限界を超えない地表針路の保護レベルを示す図である。具体的には、計算された地表針路は、地表針路矢印504として表すことができる。さらに、保護レベルは、算出された保護レベルに等しいかまたは算出された保護レベルを表すサイズを有する破線の三角形505によって表すことができる。実線の三角形506は、例えば、サブシステム112、例えばADSまたはADASが許容しうる最大誤差である警報限界を表すことができる。図5Bから分かるように、保護レベルを表す破線の三角形505は、警報限界を表す実線の三角形506を超えない。したがって、このような状況では、サブシステム112は計算された地表針路を使用することができる。
【0046】
次に、ステップ270から、手順はステップ210に続き、図2Aおよび図2Bの一連のステップを繰り返すことができる。有利には、通常、計算値の精度が99%以上の信頼度を必要とするサブシステムは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って算出された保護レベルが警報限界を超えない場合、速度および/または地表針路を利用することができる。
【0047】
上述の説明では、特定の例示的な実施形態を説明した。しかしながら、説明した実施形態に対して、これらの利点の一部または全部を達成しつつ、他の変形および修正を行えることは明らかであろう。したがって、上述の説明は、例示に過ぎず、本開示の範囲を他の方法で限定するものではない。添付の特許請求の範囲の目的は、本開示の真の精神および範囲内にあるこうした全ての変形および修正を網羅することである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B